説明

ガスセンサの被水防止装置

【課題】内燃機関の吸気管に設けられたガスセンサの検出部に、凝縮水が付着して損傷するのを防止すると共に、ガス成分の検出精度を高く維持する。
【解決手段】ディーゼルエンジン10の吸気マニホールド17において、空燃比センサ58の検出部58aが吸気流路中に突設されている。検出部58aにはガス検出素子58bが内蔵され、検出部58aの吸気上流側に遮水カバー62を設けている。遮水カバー62は、先端部が根元部より吸気上流側に傾斜した傾斜壁62aと、傾斜壁62aの先端部に形成された底壁62bと、底壁62bの周縁に形成された堰62cとで構成され、堰62cによって水滴wを貯留する凹部62dが形成されている。遮水カバー62によって吸気aに含まれる水滴wが空燃比センサ58に付着することによる熱衝撃からガス検出素子58bを保護する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気管に設けられたガスセンサの検出部が、吸気に含まれる凝縮水の付着による熱衝撃で損傷するのを防止可能にしたガスセンサの被水防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関の吸気管や排気管には、吸気中の特定ガス成分を検出するセンサが設けられている。このようなセンサとして、例えば、ジルコニアなどの固体電解質からなるガス検出素子を用い、O濃度を検出する空燃比センサや、排気中のNO濃度を検出するNOセンサ等がある。これらのセンサでは、ガス検出素子を内蔵した検出部が、吸気又は排気に曝される位置に配置される。該検出部の内部に被検出ガスが導入され、ガス検出素子によって特定ガス成分を検出する。例えば、空燃比センサの検出部にはヒータが内蔵され、このヒータを用いてガス検出素子を高温に加熱し活性化することで、特定ガス成分を検出する。
【0003】
エンジンの停止後など、吸気又は排気の温度が低下した時、凝縮水が生成する。前記センサのガス検出素子は、熱衝撃に弱いセラミックで形成されているため、低温の凝縮水がガス検出素子に付着すると、ガス検出素子が急冷され、熱衝撃によりガス検出素子にクラックや割れが発生するおそれがある。内燃機関の運転中高温の排気は、凝縮水の生成量は少ないため、あまり問題とならない。一方、吸気流路、特に、インタークーラが設けられた吸気流路では、インタークーラで吸気が冷却されるため、インタークーラの下流側で凝縮水が生成しやすい。一方、燃料の燃焼により水蒸気が生成されるため、吸気より排気の方が水蒸気分圧が高い。そのため、特に、排気を再循環するEGR装置を備えた内燃機関では、インタークーラの下流側吸気流路で凝縮水が生成しやすい。
【0004】
特許文献1には、排気マニホールドに設けられたガスセンサに対する被水防止手段が開示されている。この被水防止手段は、排気流路に突出配置された検出部の周囲に、ガスセンサと一体に、凝縮水の浸入を防止する円筒形の保護カバーを形成し、ガス検出素子に凝縮水が付着するのを防止している。
【0005】
特許文献2にも、同様に水平方向に配置された排気管に設けられたガスセンサに対する被水防止手段が開示されている。この被水防止手段は、ガスセンサの上流側に整流板を設け、この整流板によって排気をガスセンサから離れる方向に偏向させ、凝縮水がガス検出素子に付着する確率を低減させるものである。
【0006】
特許文献3には、吸気管に設けられたサージタンクにガスセンサを配置する場合の被水防止手段が開示されている。この被水防止手段は、サージタンクの内部空間に検出部が露出するように取り付けられたガスセンサに対し、検出部を取り巻くように環状凸部を形成している。この環状凸部によってサージタンクの壁面を伝って流れてくる凝縮水やオイルを堰き止めるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−83230号公報
【特許文献2】特開2007−321593号公報
【特許文献3】特開2003−65171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された被水防止手段は、ガス検出素子を円筒形の保護カバーで覆うため、排気がガス検出素子に導かれにくくなり、ガス成分の検出精度が低下するという問題がある。また、ガスセンサと保護カバーとが一体形成されるタイプでは、ガスセンサの容積が大となって取付場所が制限されると共に、検出部と保護カバーとの距離を確保するのが難しくなる。特許文献2に開示された被水防止手段は、整流板で吸気を偏向させるだけでは、ガスセンサに対する被水防止効果はあまり向上しないという問題がある。特許文献3に開示された被水防止手段は、サージタンクの壁面を伝って流れてくる凝縮水は阻止できるが、吸気に含まれる凝縮水に対する被水防止効果は期待できないという問題がある。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、吸気流路に突出配置されるガスセンサの検出部が、吸気に含まれる凝縮水の付着による熱衝撃で損傷するのを防止すると共に、ガス成分の検出精度を高く維持できるガスセンサの被水防止装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、本発明のガスセンサの被水防止装置は、内燃機関の吸気流路に設けられ、検出部が吸気流路に突出配置されたガスセンサの被水防止装置において、ガスセンサより吸気上流側の吸気管壁に、先端部が根元部より上流側に位置するように吸気管壁に配置され、かつ吸気流路内に突出した突出量がガスセンサの検出部の突出量より大きい遮水カバーを設けたものである。
【0011】
検出部の吸気上流側で、前記遮水カバーによりガスセンサの検出部を覆うことで、吸気に含まれる凝縮水が検出部に付着するのを防止できる。また、遮水カバーに当る吸気が遮水カバーに沿って遮水カバーの後ろ側に迂回するとき、重量の軽い気体のみ迂回させ、重量が大きい凝縮水には大きな慣性力が働くため、凝縮水を吸気の迂回流から離脱させることができる。こうして凝縮水が除去された吸気のみが検出部へ流れるため、該検出部に凝縮水が付着するのを防止できる。これによって、検出部の熱衝撃をなくし、ガス検出素子にクラックや割れが発生するのを防止できる。
【0012】
遮水カバーの先端部は根元部より上流側に傾斜しているので、遮水カバーと検出部間の間隔を広げることができる。そのため、凝縮水が離脱した吸気が検出部に迂回するのが容易である。従って、該吸気と検出部との接触が良好になり、ガス成分の検出精度を高く維持できる。
【0013】
本発明において、遮水カバーの先端領域で吸気上流側前面に捕水構造を形成するとよい。これによって、遮水カバーの前面に付着した凝縮水を該捕水構造に貯留できる。そのため、遮水カバーに付着した凝縮水が再飛散して検出部に付着するのを防止できる。前記捕水構造に貯留した凝縮水は、稼動中の内燃機関の熱で徐々に気化するので、捕水部に貯留された貯留水が捕水構造から溢れる可能性は少ない。遮水カバーの吸気流路への突出量は、検出部の突出量より大きくしてあるので、万一、捕水構造から貯留水が溢れた場合でも、貯留水が検出部に付着する可能性は少ない。
【0014】
前記捕水構造は、例えば、遮水カバーの先端領域で上流側前面側に凝縮水を貯留する凹部を形成したものであるとよい。これによって、捕水構造を簡易かつ低コストで製作できると共に、凝縮水の捕集が容易になる。
【0015】
本発明において、遮水カバーは、吸気流に対し交差する方向に配置された平坦な板状体で構成されているとよい。これによって、遮水カバーの製造が容易になり、遮水カバーを低コストで製造できる。また、遮水カバーが検出部の周囲を覆う構造ではなく、先端部と検出部との間隔が広いので、凝縮水の離脱した吸気が遮水カバーを迂回するのが容易である。そのため、該吸気と検出部との接触が良好であり、ガス成分の検出精度を高く維持できる。
【0016】
本発明において、遮水カバーは、中央域が両端域より吸気上流側に突出した円弧状の板状体で構成されているとよい。これによって、遮水カバーに当る吸気は遮水カバーに沿って下流側にスムーズに流れるので、吸気の圧力損失を低減できる。また、検出部の周囲を覆う構造ではなく、先端部と検出部との間隔が広いので、凝縮水が離脱した吸気が遮水カバーを迂回するのが容易である。そのため、該吸気と検出部との接触が良好であり、ガス成分の検出精度を高く維持できる。
【0017】
本発明において、遮水カバーは、中央域が両端域より吸気下流側に突出した円弧状の板状体で構成されているとよい。これによって、遮水カバー前面に付着した凝縮水の捕集効果を向上できる。また、遮水カバーの両端で遮水カバーと検出部と間隔を広く取ることができるので、凝縮水が離脱した吸気が検出部に容易に接触でき、ガス成分の検出精度を高く維持できる。
【0018】
本発明において、遮水カバーは、検出部を囲むように配置され、先端部が根元部より拡径された円錐形の板状体で構成されているとよい。これによって、遮水カバーの前面に付着した凝縮水の一部は、吸気の流れにより遮水カバーの根元部に押し出され、該根元部に貯留される。根元部に貯留された凝縮水は、稼動中の内燃機関の熱で徐々に気化するか、あるいは下方へ流れ落ちる。該凝縮水は、遮水カバーの先端前面に捕水構造が設けられているときは、該捕水構造に捕集される。そのため、検出部に付着することはない。また、この遮水カバーは先端部が拡径されているので、凝縮水が離脱した吸気が遮水カバー後方へ迂回するのを容易である。従って、検出部によるガス成分の検出精度を高く維持できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、内燃機関の吸気流路に設けられ、検出部が吸気流路に突出配置されたガスセンサの被水防止装置において、ガスセンサより吸気上流側の吸気管壁に、先端部が根元部より上流側に位置するように吸気管壁に配置され、かつ吸気流路に突出した突出量がガスセンサの検出部の突出量より大きい遮水カバーを設けたので、吸気中の凝縮水が検出部に付着し、その熱衝撃によりガス検出素子が損傷するのを防止できる。
【0020】
また、吸気が遮水カバーを迂回するとき、重量が大きい凝縮水は迂回流から離脱するため、凝縮水が離脱した吸気のみ検出部に流れ、これによって、吸気と検出部との良好な接触を維持できるので、ガス成分の検出精度を高く維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明装置の第1実施形態に係るディーゼルエンジンの全体構成図である。
【図2】図1の一部拡大断面図である。
【図3】図2中のA―A線に沿う断面図である。
【図4】本発明装置の第2実施形態に係る一部拡大断面図である。
【図5】本発明装置の第3実施形態に係る一部拡大断面図である。
【図6】本発明装置の第4実施形態に係る一部拡大断面図である。
【図7】図6中のB―B線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0023】
(実施形態1)
本発明をディーゼルエンジンに適用した第1実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。図1は、本発明装置を適用したディーゼルエンジンの全体を示すブロック線図である。図1において、本実施形態のディーゼルエンジン10は、複数のシリンダブロック12が設けられ、各シリンダブロック12の上部にシリンダヘッド14が設けられている。各シリンダヘッド14の中央に燃料噴射装置16が設けられ、シリンダヘッド14の燃料噴射装置16の両側に、吸気導入部及び排気排出部が設けられている。該吸気導入部は、吸気マニホールド17を介して吸気配管18に接続され、該排気排出部は、排気マニホールド19を介して排気管20に接続されている。
【0024】
吸気配管18及び排気管20の途中に、吸気配管18に設けられたコンプレッサ及び排気管20に設けられた排気タービンからなる可変翼型過給機22が設けられている。過給機22より下流側の排気管20には、ディーゼル・パーティキュレート・フィルタを備えた排ガス浄化装置24が設けられている。過給機22の上流側排気管20と過給機22の下流側吸気配管18とを接続する高圧EGR管26と、高圧EGR管26に介設され、EGRガスを浄化する排ガス浄化装置28と、高圧EGR管26の出口部に設けられ、高圧EGR管26を流れるEGRガスの流量を調節可能な高圧EGRバルブ30とからなる高圧EGR装置32が設けられている。
【0025】
過給機22の下流側排気管20と過給機22の上流側吸気配管18とを接続する低圧EGR管34と、低圧EGR管34に介設された低圧EGRクーラ36と、EGR管34の出口部に設けられ、低圧EGR管34を流れるEGRガスの流量を調節可能な低圧EGRバルブ37とからなる低圧EGR装置38が設けられている。
【0026】
過給機22の下流側吸気配管18に、吸気を冷却するインタークーラ40が設けられている。吸気配管18の入口18aには、吸気フィルタ42と、吸気フィルタ42の下流側に、吸気流量を検出するエアフローセンサ44及び吸気温度センサ46が設けられている。また、これらセンサの下流側吸気管及びインタークーラ下流側の吸気管に、シリンダ内に吸引される吸気量を調節する吸気スロットル弁50及び52が設けられている。各吸気マニホールド17には、吸気温度センサ54、吸気圧力を検出するブーストセンサ56及び空燃比センサ58が設けられている。
【0027】
ディーゼルエンジン10の運転開始で、排気eによって過給機22の排気タービンが駆動され、過給機22のコンプレッサによって吸気配管18へ圧縮空気が送られる。また、前記各センサ類から検出信号がECU60に入力される。ECU60は、これらの検出信号に応じて、可変翼型過給機22の排気タービンの翼角度、吸気スロットル弁50,52、EGRバルブ30、36、燃料噴射装置16、及びインタークーラ40の冷却能力等を制御する。
【0028】
なお、本実施形態のディーゼルエンジン10において、吸気マニホールド17に空燃比センサ58を設けた理由は、空燃比センサ58で吸気aの実際の酸素濃度を検出し、該検出値に基づいて、燃料噴射装置16の燃料噴射量をコントロールすると共に、EGRガス量を調整し、排気中NO量を最小限に抑えるためである。
【0029】
図2は、本実施形態の一部拡大断面図である。吸気配管18に吸気マニホールド17が接続されている。吸気マニホールド17は、シリンダブロックに設けられた複数のシリンダと同数の分岐管からなり、夫々シリンダヘッド14に接続されている。吸気配管18の上流側にはインタークーラ40が設けられ、吸気配管18及び吸気マニホールド17は、水平方向に配置されている。吸気マニホールド17の上部壁に空燃比センサ58が装着されている。
【0030】
空燃比センサ58は、検出部58aが吸気流路に突出した状態で吸気マニホールド17の管壁に装着されている。検出部58aに内蔵されたガス検出素子58bで、吸気中の酸素濃度を検出することで、最適燃料噴射量を算出している。検出部58aの吸気上流側には、遮水カバー62が固着されている。図3に示すように、遮水カバー62は、平坦な板状体からなる傾斜壁62aと、傾斜壁62aの先端に一体形成された平坦な細幅の板状体からなる底壁62bと、底壁62bの周縁に一体形成された堰62cとから構成されている。そして、堰62cによって、傾斜壁62aの先端部に、凝縮水wを貯留する凹部62dが形成されている。
【0031】
傾斜壁62aは、先端部が、根元部より吸気上流側に位置するように傾斜し、これによって、先端部と検出部58aとの間隔を大きく取っている。また、遮水カバー62の吸気流路側突出量Lは、検出部58aの吸気流路側突出量Lより大きくなるように構成されている。また、遮水カバー62の幅Tは、検出部58aの径Tより大幅に大きくなるように構成されている。
【0032】
かかる構成において、吸気流は、検出部58aの上流側で遮水カバー62に接触し、吸気aに含まれる水滴(凝縮水)wは、遮水カバー62の傾斜壁62aの前面に付着する。傾斜壁62aに付着した水滴wは、重力により傾斜壁62aに沿って流下し、凹部62dに貯留する。こうして、傾斜壁62aに付着した凝縮水wは、凹部62dに貯留され、飛散しない。ガス検出素子58bの突出量L<遮水カバー62の突出量L、及びガス検出素子58bの径T<遮水カバー62の幅Tであるので、直進する吸気流が、遮水カバー62を迂回せずに、検出部58aに接触することはない。
【0033】
遮水カバー62に到達した吸気aは、傾斜壁62aに沿って迂回し、傾斜壁62aの背面側に回り込むが、その際、重量が重い水滴wには、大きな慣性力が働くので、回り込むことができず、迂回流から離脱し、重量が軽い気相部のみ迂回する。そのため、検出部58aに水滴wが接触するのを防止できる。従って、検出部58aに内蔵されたガス検出素子58bの熱衝撃を回避でき、ガス検出素子58bにクラックや割れが生じるのを防止できる。
【0034】
また、遮水カバー62の先端部が吸気上流側に傾斜しているので、該先端部と検出部58aとの間隔を十分取ることができる。そのため、水滴wが離脱した吸気aが遮水カバー62の後方に迂回するこが容易になる。従って、吸気aとガス検出素子58bとの接触を良好に維持でき、ガス検出素子58bによる酸素成分の検出精度を高く維持できる。また、遮水カバー62は、主要部が平坦な板状体の傾斜壁62aで構成されているので、低コストで製造できる。
【0035】
なお、凹部62dに貯留された水滴wは、稼動中のディーゼルエンジン10の熱で徐々に気化するので、凹部62dから溢れる可能性は少ない。遮水カバー62は、吸気マニホールド17の成形加工時に、同時に一体成形するようにすれば、遮水カバー62の取付け工程を簡素化できる。
【0036】
(実施形態2)
次に、本発明をディーゼルエンジンに適用した第2実施形態を図4により説明する。図4は、第1実施形態の図3に相当する平面視断面図である。本実施形態では、検出部58aの吸気上流側に遮水カバー64が設けられている。遮水カバー64の傾斜壁64aは、先端部が根元部より吸気上流側に位置するように傾斜し、かつ中央域が両端域より吸気上流側に突出した円弧状の板状体で構成されている。そして、底壁64bも円弧状の傾斜壁64aに合わせて、対抗する2辺が円弧状に形成され、堰64cも、底壁64bに合わせて、主要な一辺が円弧状に形成されている。これによって、傾斜壁64aの先端部に円弧状の水滴貯留用凹部64dを形成している。
【0037】
第1実施形態と同様に、遮水カバー64の吸気流路側突出量は、ガス検出素子58bの吸気流路側突出量より大きく構成され、かつ遮水カバー64の幅Tは、ガス検出素子58bの径Tより大幅に大きく構成されている。その他の構成も第1実施形態と同一である。
【0038】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、遮水カバー64によって、吸気中の水滴wが検出部58aに付着するのを防止できる。また、遮水カバー64の先端部と検出部58aとの間隔を大きく取り、かつ遮水カバー64は検出部58aの周囲を覆う構成ではないので、遮水カバー64を迂回し、迂回時に水滴wが離脱した吸気が検出部58aに容易に回り込むことができる。そのため、吸気中酸素成分の検出精度を高く維持できる。また、傾斜壁64aが、中央域が吸気上流側に突出した円弧状に形成されているので、第1実施形態と比べて、吸気aの圧力損失を低減できる。
【0039】
(実施形態3)
次に、本発明をディーゼルエンジンに適用した第3実施形態を図5により説明する。本実施形態では、検出部58aの吸気上流側に遮水カバー66が設けられている。遮水カバー66の傾斜壁66aは、先端部が根元部より吸気上流側に位置するように傾斜していると共に、傾斜壁66aは、中央域が両端域より吸気下流側に突出した円弧状の板状体で構成されている。そして、底壁66bも傾斜壁66aに合わせて、対抗する2辺が円弧状に形成され、堰66cも、底壁66bに合わせて、主要な一辺が円弧状に曲折されている。これによって、傾斜壁66aの先端部に円弧状の凝縮水貯留用凹部66dを形成している。
【0040】
第1実施形態と同様に、遮水カバー66の吸気流路側突出量は、ガス検出素子58bの吸気流路側突出量より大きく、かつ遮水カバー66の幅Tは、ガス検出素子58bの径Tより大幅に大きく構成されている。その他の構成も第1実施形態と同一である。
【0041】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、遮水カバー66によって、検出部58aに吸気中の水滴wが付着するのを防止できる。また、遮水カバー66の先端部とガス検出素子58bとの間隔を大きく取り、かつ遮水カバー66は検出部58aの周囲を覆う構成ではないので、遮水カバー66を迂回し、迂回時に水滴wが離脱した吸気が検出部58aに容易に回り込むことができる。そのため、検出部58aに内蔵されたガス検出素子58bの吸気中酸素成分の検出精度を高く維持できる。また、傾斜壁66aの中央域が吸気下流側に突出した円弧状に形成されているので、第1実施形態と比べて、傾斜壁66aの前面に付着した水滴wの捕集効果を向上できる。
【0042】
(実施形態4)
次に、本発明装置をディーゼルエンジンに適用した第4実施形態を図6及び図7により説明する。本実施形態は、吸気管18の内壁に、検出部58aの周囲を覆うように、円錐形の遮水カバー68を設けている。遮水カバー68は、先端部が根元部より拡径された円錐形の傾斜壁68aと、傾斜壁68aの先端部に形成されたリング状の底壁68bと、底壁68bのリング状端縁に形成されたリング状の堰68cとから構成されている。堰68cによって傾斜壁68aの先端部に水滴wを貯留するための凹部68dが形成されている。遮水カバー68の吸気流路側突出量Lは、検出部58aの吸気流路側突出量Lより大きくなるように構成されている。
【0043】
かかる構成において、吸気aは、傾斜壁68aの前面に当ると、吸気aに含まれる水滴wが傾斜壁68aに付着する。付着した水滴wの一部は、吸気aの流れにより遮水カバー68の根元部に押し出され、該根元部に貯留される。傾斜壁68aに付着した他の水滴wは、傾斜壁68aに沿って下流側へ飛散する。さらに他の水滴wは重力により傾斜壁68aを伝って落下し、凹部68dに流下する。
【0044】
本実施形態によれば、遮水カバー68の吸気流路側突出量L>検出部58aの吸気流路側突出量Lであるので、吸気中に含まれる水滴wは、検出部58aに付着しない。こうして、検出部58aに凝縮水wが付着するのを防止できるので、検出部58aに内蔵されたガス検出素子58bの熱衝撃を回避でき、ガス検出素子58bにクラックや割れが生じるのを防止できる。
【0045】
また、遮水カバー68の先端部が根元部より拡径され、該先端部と検出部58aとの間に十分な間隔を確保できるので、遮水カバー68を迂回し、迂回時に水滴wが離脱した吸気が検出部58aに容易に回り込むことができる。そのため、ガス検出素子58bの酸素成分の検出精度は低下しない。さらに、遮水カバー68はガスセンサ58と一体に設けられていないので、傾斜壁68aと検出部58aとの間隔を大きく取ることができると共に、取付け場所の自由度を広げることができる。
【0046】
なお、第1〜第4実施形態は、いずれも遮水カバーの傾斜壁の先端部に、水滴貯留用の凹部を形成しているが、かかる凹部を形成せず、傾斜壁のみで構成された遮水カバーとしてもよい。かかる遮水カバーでも、ガス検出素子を水滴wから保護できると共に、酸素成分の検出精度を高く維持できる。また、第1〜第4実施形態は、いずれも吸気マニホールドに遮水カバーを設けた例であるが、遮水カバーの設置位置は、吸気マニホールドに限らず、吸気管の他の場所又はサージタンク等に設けてもよい。
【0047】
また、第1〜第4実施形態において、水滴貯留用凹部に、水滴wを吸着可能な性質をもつシートを貼着するようにしてもよい。これによって、該凹部の水滴捕集効果を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、内燃機関の吸気配管に設けられたガスセンサを、吸気に含まれる凝縮水による熱衝撃から保護し、かつガス成分の検出精度を高く維持できる。
【符号の説明】
【0049】
10 ディーゼルエンジン
12 シリンダブロック
14 シリンダヘッド
16 燃料噴射装置
17 吸気マニホールド
18 吸気配管
18a 入口
19 排気マニホールド
20 排気管
22 過給機
24、28 排ガス浄化装置
26 高圧EGR管
30 高圧EGRバルブ
32 高圧EGR装置
34 低圧EGR管
36 低圧EGRクーラ
37 低圧EGRバルブ
38 低圧EGR装置
40 インタークーラ
42 吸気フィルタ
44 エアフローセンサ
46,54 吸気温度センサ
50,52 吸気スロットル弁
56 ブーストセンサ
58 空燃比センサ
58a 検出部
58b ガス検出素子
60 ECU
62,64,66,68 遮水カバー
62a、64a、66a、68a 傾斜壁
62b、64b、66b、68b 底壁
62c、64c、66c、68c 堰
62d、64d、66d、68d 凹部
a 吸気
e 排気
w 水滴(凝縮水)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気流路に設けられ、検出部が吸気流路内に突出配置されたガスセンサの被水防止装置において、
前記ガスセンサより吸気上流側の吸気管壁に、先端部が根元部より吸気上流側に位置するように吸気管壁に配置され、かつ吸気流路内に突出した突出量が前記ガスセンサの検出部の突出量より大きい遮水カバーを設けたことを特徴とするガスセンサの被水防止装置。
【請求項2】
前記遮水カバーの先端領域で吸気上流側前面に捕水構造を形成してなることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサの被水防止装置。
【請求項3】
前記捕水構造が、前記遮水カバーの先端領域で上流側前面側に凝縮水を貯留する凹部を形成したものであることを特徴とする請求項2に記載のガスセンサの被水防止装置。
【請求項4】
前記遮水カバーは、吸気流に対し交差する方向に配置された平坦な板状体で構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載のガスセンサの被水防止装置。
【請求項5】
前記遮水カバーは、中央域が両端域より吸気上流側に突出した円弧状の板状体で構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載のガスセンサの被水防止装置。
【請求項6】
前記遮水カバーは、中央域が両端域より吸気下流側に突出した円弧状の板状体で構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載のガスセンサの被水防止装置。
【請求項7】
前記遮水カバーは、前記検出部を囲むように配置され、先端部が根元部より拡径された円錐形の板状体で構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載のガスセンサの被水防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−53593(P2013−53593A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193365(P2011−193365)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)