説明

ガスタービン及びガスタービンの保守点検方法

【課題】エアダクトを吊り上げずにガスタービンを保守点検できること。
【解決手段】ガスタービン1は、燃料を燃焼させた燃焼ガスのエネルギーによってロータ10を回転させて回転エネルギーをロータ10から取り出すガスタービン本体100と、ガスタービン本体100に取り付けされて空気を圧縮する圧縮部へ空気を導く入口ケーシング121と、入口ケーシング121と連結されて大気から取り入れた空気をガスタービン本体100へ導く吸気室31と、ロータ10が移動される際にロータ10が通過または存在する範囲を全て含んで吸気室31に形成される切欠部34とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン及びガスタービンの保守点検方法に関し、さらに詳しくは、保守点検の際にガスタービン本体が吊り上げられるガスタービン及びガスタービンの保守点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料を燃焼させた燃焼ガスからエネルギーを取り出す装置としてガスタービンがある。ガスタービンは、例えば、燃焼に圧縮した空気を供給して燃焼させることで発生する燃焼ガスのエネルギーを用いてタービンを回転させてロータから回転エネルギーを出力する。
【0003】
例えば、特許文献1には、軸受スパンの外側のオーバハング部分にスラスト軸受カラーを有する高速回転用ロータにおいて、スラスト軸受カラーより外側に軸部分がない構造にすると共に、上記オーバハング部分の軸部分を中空にすることで、定格速度におけるロータの振動特性を単純化し、バランシングが容易な高速回転用ロータを提供するガスタービンが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−118201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで一般的に、ガスタービンは例えばガスタービンの保守点検の際にクレーンによって吊り上げられる。この際、通常は、ガスタービン本体に空気を供給するエアダクトを前記クレーンによって吊り上げる必要がある。これにより、ガスタービンの保守点検に係る作業が複雑化するおそれがある。また、エアダクトをクレーンで吊り上げるため、ガスタービンを保守点検するのに必要な施設が大型化するおそれがある。特許文献1に開示されている技術は、振動特性には着目されているが、このようなガスタービンの保守点検に関しては着目されていない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、エアダクトを吊り上げずにガスタービンを保守点検できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るガスタービンは、燃料を燃焼させた燃焼ガスのエネルギーによって回転体を回転させて回転エネルギーを前記回転体から取り出すガスタービン本体と、前記ガスタービン本体に取り付けられて前記空気を圧縮する圧縮部へ前記空気を導く空気吸入部材と、前記回転体が移動される際に前記回転体との干渉を避けるように形成されると共に前記空気吸入部材と連結されて大気から取り入れた前記空気を前記圧縮部へ導く吸気室と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成により、本発明に係るガスタービンは、前記回転体が移動される時、例えば前記ガスタービンが保守点検される際に、前記回転体が前記吸気室と干渉しない。よって、前記ガスタービンは、前記ガスタービンが保守点検される際に前記エアダクトが例えばクレーンによって吊り上げられて移動されなくてもよい。
【0009】
本発明の好ましい態様としては、前記吸気室は、前記回転体が移動される際に前記回転体が通過または存在する範囲を全て含んで前記吸気室に形成される開口を備えることが望ましい。
【0010】
上記構成により、本発明に係るガスタービンは、前記回転体が移動される時、例えば前記ガスタービンが保守点検される際に、前記回転体が前記吸気室と干渉しない。よって、前記ガスタービンは、前記ガスタービンが保守点検される際に前記吸気室が例えばクレーンによって吊り上げられて移動されなくてもよい。
【0011】
ここで、前記エアダクトを前記クレーンで吊り上げる場合、前記エアダクトを前記クレーンが収容される建屋に収納する必要がある。しかし、前記ガスタービンは、保守点検の際、前記エアダクトが前記クレーンで吊り上げられる必要がない。よって、前記ガスタービンは、前記エアダクトが前記建屋に収容される必要がない。これにより、前記ガスタービンは、前記ガスタービン本体を収容する前記建屋の大きさが低減される。
【0012】
本発明の好ましい態様としては、前記回転体に取り外しできるように直接連結される発電機用入力軸と、前記発電機用入力軸が回転することにより発電する発電機と、を備えることが望ましい。
【0013】
上記構成により、本発明に係るガスタービンは、保守点検の際、前記発電機が前記回転体から取り外される。これにより、前記ガスタービンは、保守点検の際に移動される要素数を低減できる。よって、前記ガスタービンは、保守点検の際の前記回転体の移動を容易化できる。
【0014】
本発明の好ましい態様としては、前記回転体に取り外しできるように中間軸を介して連結される発電機用入力軸と、前記発電機用入力軸が回転することにより発電する発電機と、を備えることが望ましい。
【0015】
上記構成により、本発明に係るガスタービンは、保守点検の際に前記中間軸が取り外される。これにより、前記回転体は、前記発電機用から取り外される。なお、前記発電機と前記回転体とは、所定の間隔をおいて離れて配置される。よって、前記ガスタービンは、前記中間軸を介して前記回転体と前記発電機とが連結されることによって、前記回転体において前記発電機と連結される部分の長さを縮小できる。これにより、前記ガスタービンは、保守点検の際の前記回転体の移動量を低減できる。
【0016】
本発明の好ましい態様としては、前記中間軸は、孔が形成されることが望ましい。
【0017】
一般的に、質量のバランスが同じ部材では、質量が小さい部材ほど回転する際の振動は低減される。本発明に係るガスタービンは、前記中間軸に孔が形成される。これにより、前記中間軸は、質量が低減される。よって、前記ガスタービンは、前記回転体の回転を前記発電機に伝える際の振動を低減できる。
【0018】
本発明の好ましい態様としては、前記開口に取り外しできるように設けられて、前記吸気室に形成される前記開口を覆うカバーを備えることが望ましい。
【0019】
上記構成により、前記ガスタービンは、前記開口から漏出する空気の流量を低減できる。
【0020】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るガスタービンの保守点検方法は、燃料を燃焼させた燃焼ガスのエネルギーによって回転体を回転させて回転エネルギーを前記回転体から取り出すガスタービン本体と、大気から取り入れた前記空気を前記圧縮部へ導く吸気室と、前記吸気室に取り外しできるように連結され、前記空気を圧縮する圧縮部へ前記空気を導く空気吸入部材と、前記回転体が移動される際に前記回転体が通過または存在する範囲を全て含んで前記吸気室に形成される開口と、前記回転体に取り外しできるように連結されて前記回転体の回転が伝えられる発電機用入力軸と、前記発電機用入力軸が回転することにより発電する発電機と、前記開口に取り外しできるように設けられて、前記開口を覆うカバーとを含んで構成されるガスタービンを保守点検する際、前記カバーを取り外す手順と、前記空気吸入部材を前記吸気室から取り外す手順と、前記発電機用入力軸を前記回転体から取り外す手順と、前記ガスタービンが設置される床から離れる方向に前記回転体を移動する手順と、を備えることを特徴とする。
【0021】
上記構成により、本発明に係るガスタービンの保守点検方法は、前記回転体が移動される時、例えば前記ガスタービンが保守点検される際に、前記ガスタービン本体と前記吸気室に形成される前記開口とを干渉させない。よって、前記ガスタービンの保守点検方法は、前記ガスタービン本体が保守点検される際に前記エアダクトを例えばクレーンによって吊り上げて移動する必要がない。
【0022】
ここで、前記エアダクトを前記クレーンで吊り上げる場合、前記エアダクトを前記クレーンが収容される建屋に収納する必要がある。しかし、前記ガスタービンの保守点検方法は、保守点検の際、前記エアダクトが前記クレーンで吊り上げられる必要がない。よって、前記ガスタービンの保守点検方法は、前記エアダクトが前記建屋に収容される必要がない。これにより、前記ガスタービンの保守点検方法は、前記ガスタービン本体を収容する前記建屋の大きさが低減される。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、エアダクトを吊り上げずにガスタービン本体を保守点検できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0025】
図1は、本実施形態に係るガスタービンの構成を示す模式図である。本実施形態に係るガスタービン本体100は、ガスタービン1の中核をなす要素である。図1に示すように、ガスタービン本体100は、床GNDに設置される。ガスタービン本体100は、流体の流れの上流側から下流側に向けて順に、圧縮部120と、燃焼部130と、タービン部110と、排気部140とを含んで構成される。
【0026】
圧縮部120は空気を加圧して、燃焼部130へ加圧された空気を送り出す。燃焼部130は、前記加圧された空気に燃料を供給する。そして、燃焼部130は、燃料を燃焼させる。タービン部110は、燃焼部130から送り出された前記燃焼ガスが持つエネルギーを回転エネルギーに変換する。排気部140は、前記燃焼ガスを大気へと排出する。
【0027】
圧縮部120は、空気吸入部材としての入口ケーシング121と、圧縮部筐体122と、圧縮部側静翼123と、圧縮部側動翼124とを含んで構成される。入口ケーシング121は、大気から空気を圧縮部筐体122に取り込む。複数の圧縮部側静翼123と複数の圧縮部側動翼124とは、圧縮部筐体122内に交互に設けられる。
【0028】
タービン部110は、タービン部車室111と、タービン部側静翼112と、タービン部側動翼113とを含んで構成される。複数のタービン部側静翼112と複数のタービン部側動翼113とは、タービン部車室111内に交互に配設される。排気部140は、タービン部110に連続する排気ディフューザ141を有する。排気ディフューザ141は、タービン部110を通過した排気ガスの動圧を静圧に変換する。
【0029】
ガスタービン本体100は、回転体としてのロータ10を有する。ロータ10は、圧縮部120、燃焼部130、タービン部110、排気部140の中心部を貫通するように設けられる。ロータ10は、圧縮部120側の端部が軸受151により回転自在に支持され、排気部140側の端部が軸受152により回転自在に支持される。
【0030】
また、ロータ10には複数のディスク114が固定される。ディスク114には、圧縮部側動翼124及びタービン部側動翼113が連結される。ロータ10の圧縮部120側の端部には、図2に示す発電機60の発電機用入力軸61が連結される。ロータ10と発電機60との接続部の構成については、後に詳細に説明する。
【0031】
ガスタービン本体100は、まず、圧縮部120の入口ケーシング121から空気を取り込む。取り込まれた空気は、複数の圧縮部側静翼123と圧縮部側動翼124とによって圧縮される。これにより、前記空気は、高温・高圧の圧縮空気となる。続いて、燃焼部130は、前記圧縮空気に対して所定の燃料を供給して前記燃料を燃焼させる。
【0032】
続いて、タービン部110を構成する複数のタービン部側静翼112と複数のタービン部側動翼113とは、燃焼部130で生成された高温・高圧の燃焼ガスが有するエネルギーを回転エネルギーに変換する。タービン部側動翼113は、前記回転エネルギーをロータ10に伝える。これにより、ロータ10が回転運動する。
【0033】
上記構成により、ガスタービン本体100は、ロータ10に連結された図2に示す発電機60を駆動する。なお、タービン部110を通過後の排気ガスは、排気部140の排気ディフューザ141で動圧が静圧に変換された後、大気に放出される。
【0034】
図2は、本実施形態に係るガスタービン本体と発電機との接続部周辺の構成を示す模式図である。図3は、本実施形態に係るガスタービンの全体の構成を示す模式図である。
【0035】
ガスタービン1は、図2に示すように、中間軸としてのジャックシャフト20を備える。ジャックシャフト20は、一方の端部が発電機60の発電機用入力軸61と取り外しできるように連結される。また、ジャックシャフト20は、他方の端部がロータ10と取り外しできるように連結される。つまり、ジャックシャフト20は、発電機用入力軸61とロータ10とを直接連結する。これにより、ジャックシャフト20は、ロータ10の回転を発電機60へ伝える。
【0036】
ジャックシャフト20は、例えば略円筒形状に形成される。つまり、ジャックシャフト20は、軸線方向に貫通孔が形成される。これにより、ジャックシャフト20は、質量が低減される。ここで、質量のバランスが同じであれば、回転体は質量が小さいほど、回転する際の振動が低減される。よって、ジャックシャフト20は、ロータ10の回転を発電機60に伝える際の振動が低減される。
【0037】
なお、前記貫通孔は、軸線方向に形成されなくてもよい。また、ジャックシャフト20は、貫通孔に代えて、貫通しない孔を備えてもよい。このような構成であっても、ジャックシャフト20は、質量が低減される。よって、ジャックシャフト20は、ロータ10の回転を発電機60に伝える際の振動が低減される。
【0038】
エアダクト30は、例えば、ガスタービン本体100の入口ケーシング121に吸気室31を介して接続される。エアダクト30は、図3に示すように、エアダクト吸気部32を有する。エアダクト吸気部32は、ガスタービン本体100を収容する建屋40の外部の大気に開口する。なお、エアダクト吸気部32には、空気中に含まれる塵を取り除くエアクリーナ36が設けられる。
【0039】
吸気室31は、一方の開口がエアダクト30に連結され、他方の開口が入口ケーシング121に連結される。これにより、吸気室31はエアダクト30内の空気を入口ケーシング121に導く。また、吸気室31は、吸気室開口部33を有する。ここで、吸気室31は、発電機60と、ガスタービン本体100との間に配置される。吸気室開口部33は、ロータ10が吸気室31を貫通するための開口である。
【0040】
入口ケーシング121は、一方の開口が吸気室31に連結され、他方の端部がガスタービン本体100の圧縮部120に連結される。入口ケーシング121は、吸気室31とガスタービン本体100の圧縮部120から取り外しできるように連結される。上記構成により、エアダクト吸気部32から取り込まれた空気は、エアダクト30を介して、吸気室31へ導かれる。吸気室31に導かれた空気は、入口ケーシング121を介してガスタービン本体100の圧縮部120へ供給される。
【0041】
図4は、本実施形態に係る吸気室をガスタービン部側から示す模式図である。図4に示すように、吸気室31は、開口としての切欠部34が形成される。切欠部34は、吸気室31を形成する壁面に形成される。切欠部34は、吸気室開口部33を含み、吸気室開口部33からエアダクト30側の壁面に形成される。本実施形態では、切欠部34は、長方形状であって、吸気室開口部33側は円弧状に欠く形状である。
【0042】
切欠部34には、カバー35が設けられる。カバー35は、切欠部34を隙間無く覆って設けられる。これにより、カバー35は、吸気室31内の密閉性を保つ。カバー35が取り外されると、切欠部34は吸気室開口部33と連通して開口を形成する。
【0043】
ここで、図2に示すガスタービン本体100のロータ10は、保守点検の際、図3に示すクレーン50によって床GNDから吊り上げられて移動させられる。ガスタービン本体100の保守点検時に、カバー35は取り外される。これにより、切欠部34が現れる。切欠部34は、ロータ10がクレーン50によって吊り上げられて移動させられる際に、ロータ10と吸気室31との接触を回避するために設けられる。その結果、ロータ10の吊り上げ移動の際、クレーンが水平方向に移動させられる距離が小さくなる。
【0044】
また、切欠部34は、吸気室31に例えば一箇所形成されるが、本実施形態はこれに限定されない。切欠部34は、吸気室31に複数箇所形成されてもよい。つまりガスタービン1は、ロータ10がクレーン50によって吊り上げられて移動させられる際に、ロータ10が通過または存在する範囲に含まれる部分全てに開口が形成されればよい。
【0045】
ガスタービン1は、保守点検の際、まず、カバー35が吸気室31から取り外される。次に、ガスタービン1は、入口ケーシング121が吸気室31とガスタービン本体100の圧縮部120とから取り外される。次に、ガスタービン1は、ジャックシャフト20がロータ10から取り外される。
【0046】
次に、ガスタービン1は、図3に示すクレーン50によって図2に示すロータ10が矢印AR11が示すように床GNDから離れる方向へ吊り上げられる。この時、入口ケーシング121及びカバー35は上述のように吸気室31から取り外されている。よって、ロータ10は、吸気室31と干渉しない。
【0047】
次に、床GNDからロータ10が離れると、ガスタービン1は、矢印AR12が示すように、吸気室31から離れる方向にロータ10が移動される。この時、ロータ10は、床GNDから離れる方向にロータ10がさらに移動した際に、ジャックシャフト20側の端部が吸気室31と干渉しない位置まで移動される。つまり、ロータ10のジャックシャフト20側の端部が、鉛直方向において吸気室31と対向しない位置まで移動される。
【0048】
ここで、矢印AR11が示すように、床GNDから離れる方向にロータ10が移動される範囲中で吸気室31の最も入口ケーシング121側の部分を通り、かつ床GNDと垂直な仮想の面から、ロータ10の発電機60側の端部までの距離を距離DIM01とする。
【0049】
ロータ10は、距離DIM01以上、矢印AR12が示すように吸気室31から離れる方向に移動する。つまり、距離DIM01が小さいほど、ガスタービン1は、ロータ10の図3に示すクレーン50での移動量が低減される。
【0050】
ガスタービン1は、上述のように取り外しできるジャックシャフト20を介してロータ10と発電機用入力軸61とが連結される。よって、ガスタービン本体100と発電機60との距離が一定のとき、ジャックシャフト20を介さずロータ10が発電機用入力軸61に連結される場合よりも、ガスタービン1は、距離DIM01が縮小される。
【0051】
よって、ガスタービン1は、ロータ10の図3に示すクレーン50での移動量が低減される。これにより、ガスタービン1は、保守点検に係る作業時間と、作業員の労働量とを低減できる。また、ガスタービン1は、クレーン50の移動量が低減されることにより、クレーン50のレールが小型化される。これにより、ガスタービン1は、クレーン50を収容する図3に示す建屋40が小型化される。
【0052】
また、ガスタービン1は、ガスタービン本体100と発電機60との距離が小さく設定される方がより好ましい。これにより、ガスタービン1は、距離DIM01の大きさをさらに縮小できる。よって、ガスタービン1は、より良好に、ロータ10の図3に示すクレーン50での移動量が低減される。これにより、ガスタービン1は、保守点検に係る作業時間と、作業員の労働量とをさらに低減できる。また、ガスタービン1は、クレーン50の移動量が低減されることにより、クレーン50のレールがさらに小型化される。これにより、ガスタービン1は、クレーン50を収容する図3に示す建屋40が小型化される。
【0053】
矢印AR12が示すように吸気室31から離れる方向にロータ10が移動されると、ガスタービン1は、矢印AR13が示すように、床GNDから離れる方向にロータ10が移動される。この時、ロータ10は保守点検されるのに必要な高さまで床GNDから離れる方向に移動される。
【0054】
図5は、従来のガスタービンの全体の構成を示す模式図である。ここで、図5に示す従来のガスタービン2は、保守点検の際、ロータがクレーン50で吊り上げられる前に、まずエアダクト230をクレーン50で吊り上げて取り外される。これにより、エアダクト230は、クレーン50が存在する建屋240に少なくとも取り外される部分が収容されている必要がある。
【0055】
また、クレーン50は、エアダクト230を吊り上げるために、エアダクト230の取り外される部分よりも、床GNDから高い位置に設置されなければならない。これにより、図5に示す建屋240は、図3に示す建屋40よりも大型化するおそれがある。
【0056】
しかしながら、ガスタービン1は、上述のように保守点検の際にエアダクト30や吸気室31がクレーンで吊り上げられない。これにより、ガスタービン本体100を収容する建屋40に設けられるクレーン50は、少なくともガスタービン本体100よりも高い位置に設けられればよい。よって、ガスタービン1は、ガスタービン本体100を収容する建屋40の床GNDから天井部までの高さが低減される。
【0057】
また、ガスタービン1は、保守点検の際であってもエアダクト30が移動されない。よって、ガスタービン1は、エアダクト30が建屋40の外部に設けられてもよい。これらにより、ガスタービン1は、ガスタービン本体100を収容する建屋40の大きさが低減される。
【0058】
また、ガスタービン1は、エアダクト30が取り外されないため、保守点検されるのに必要な時間が低減される。また、ガスタービン1は、ガスタービン本体100の保守点検に係る作業をする作業員の労働量を低減できる。
【0059】
図6は、本実施形態に係るガスタービン本体と発電機との接続部周辺の他の構成を示す模式図である。なお、ロータ10とジャックシャフト20との連結部は、図6に示すように床GNDから離れる方向にロータ10が移動される範囲中で吸気室31の最も入口ケーシング121側の部分を通り、かつ床GNDと垂直な仮想の面を基準としたときに、発電機60と反対側の領域に配置されてもよい。つまり、ロータ10とジャックシャフト20との連結部は、鉛直方向において吸気室31と対向しない位置に設けられる。すなわち、図2に示す距離DIM01を正の値とすると、図6に示す距離DIM01は負の値となる。
【0060】
この場合、ガスタービン1は、保守点検される際に、矢印AR14が示すように、床GNDから離れる方向にのみロータ10が移動される。この時、ロータ10は保守点検されるのに必要な高さまで床GNDから離れる方向に移動される。これにより、ガスタービン1は、吸気室31から離れる方向にロータ10が移動されない。
【0061】
これにより、ガスタービン1は、ロータ10の図3に示すクレーン50での移動量が低減される。よって、ガスタービン1は、保守点検に係る作業時間と、作業員の労働量とを低減できる。また、ガスタービン1は、クレーン50の移動量が低減されることにより、クレーン50のレールが小型化される。これにより、ガスタービン1は、クレーン50を収容する図3に示す建屋40が小型化される。
【0062】
ここで、図2及び図6において、発電機60の最も入口ケーシング121側の部分を通り、かつ床GNDと垂直な仮想の面から、ロータ10までの距離を距離DIM02とする。一般的に、ガスタービン1は、距離DIM02が小さく設定される方が好ましい。距離DIM02が小さいほど、ガスタービン1はロータ10の振動が低減される。
【0063】
しかしながら、エアダクト30の設計や配置の関係上、距離DIM02を一定に保ちつつ、距離DIM01の大きさを低減できない場合は、ガスタービン1は、ロータ10の振動が許容される程度に距離DIM01の大きさと距離DIM02の大きさとを設定されると好ましい。これにより、ガスタービン1は、ロータ10の振動を低減しつつ、ロータ10の図3に示すクレーン50での移動量が低減される。
【0064】
なお、この場合、ロータ10が図3示すクレーンで吊り上げられる際に、ロータ10は、吸気室31と完全に干渉しない。よって、吸気室31は、切欠部34が形成されなくてもよい。また、吸気室31は、カバー35を備えなくてもよい。これにより、ガスタービン1は、構成が簡素化されて、部品点数が低減される。また、ガスタービン1は、ガスタービン1の製作に必要なコストが低減される。
【0065】
図7は、本実施形態に係るガスタービン本体と発電機との接続部周辺の他の構成を示す模式図である。なお、ガスタービン1は、例えば、図7に示すように、ロータ10と発電機60の発電機用入力軸61とが、ジャックシャフト20を介さずに直接連結されてもよい。
【0066】
但し、ジャックシャフト20は、上述のように軸線方向に貫通孔が形成される。これにより、ロータ10と発電機用入力軸61とが直接連結される場合よりも、ジャックシャフト20を介してロータ10と発電機用入力軸61とが連結される場合の方が、ガスタービン1は、ロータ10と発電機用入力軸61との連結部の質量が低減される。これにより、ガスタービン1は、ロータ10の振動が低減される。
【0067】
そこで、本実施形態では、例えば、発電機用入力軸61は、軸線方向に孔が形成される。これにより、ガスタービン1は、ジャックシャフト20を備えずとも、ロータ10と発電機用入力軸61との連結部の質量が低減される。
【0068】
また、距離DIM02が一定の場合、ガスタービン1は、発電機用入力軸61の軸線方向の長さがより長く設定される方が好ましい。これにより、ガスタービン1は、距離DIM01の大きさが低減される。
【0069】
よって、ガスタービン1は、ロータ10の図3に示すクレーン50での移動量が低減される。これにより、ガスタービン1は、保守点検に係る作業時間と、作業員の労働量とを低減できる。また、ガスタービン1は、クレーン50の移動量が低減されることにより、クレーン50のレールを小型化できる。これにより、ガスタービン1は、クレーン50を収容する図3に示す建屋40が小型化される。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上のように、本実施形態に係るガスタービンは、ガスタービン本体が保守点検の際に移動されるガスタービンに有用であり、特に、エアダクトをクレーンによって吊り上げずに保守点検が行われるガスタービンに適している。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本実施形態に係るガスタービンの構成を示す模式図である。
【図2】本実施形態に係るガスタービン本体と発電機との接続部周辺の構成を示す模式図である。
【図3】本実施形態に係るガスタービンの全体の構成を示す模式図である。
【図4】本実施形態に係る吸気室をガスタービン部側から示す模式図である。
【図5】従来のガスタービンの全体の構成を示す模式図である。
【図6】本実施形態に係るガスタービン本体と発電機との接続部周辺の他の構成を示す模式図である。
【図7】本実施形態に係るガスタービン本体と発電機との接続部周辺の他の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0072】
1、2 ガスタービン
10 ロータ
20 ジャックシャフト
30、230 エアダクト
31 吸気室
32 エアダクト吸気部
33 吸気室開口部
34 切欠部
35 カバー
36 エアクリーナ
40、240 建屋
50 クレーン
60 発電機
61 発電機用入力軸
100 ガスタービン本体
110 タービン部
111 タービン部車室
112 タービン部側静翼
113 タービン部側動翼
114 ディスク
120 圧縮部
121 入口ケーシング
122 圧縮部筐体
123 圧縮部側静翼
124 圧縮部側動翼
130 燃焼部
140 排気部
141 排気ディフューザ
151、152 軸受
GND 床

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させた燃焼ガスのエネルギーによって回転体を回転させて回転エネルギーを前記回転体から取り出すガスタービン本体と、
前記ガスタービン本体に取り付けられて前記空気を圧縮する圧縮部へ前記空気を導く空気吸入部材と、
前記回転体が移動される際に前記回転体との干渉を避けるように形成されると共に前記空気吸入部材と連結されて大気から取り入れた前記空気を前記圧縮部へ導く吸気室と、
を備えることを特徴とするガスタービン。
【請求項2】
前記吸気室は、前記回転体が移動される際に前記回転体が通過または存在する範囲を全て含んで前記吸気室に形成される開口を備えることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン。
【請求項3】
前記回転体に取り外しできるように直接連結される発電機用入力軸と、
前記発電機用入力軸が回転することにより発電する発電機と、
を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスタービン。
【請求項4】
前記回転体に取り外しできるように中間軸を介して連結される発電機用入力軸と、
前記発電機用入力軸が回転することにより発電する発電機と、
を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスタービン。
【請求項5】
前記中間軸は、孔が形成されることを特徴とする請求項4に記載のガスタービン。
【請求項6】
前記開口に取り外しできるように設けられて、前記吸気室に形成される前記開口を覆うカバーを備えることを特徴とする請求項2に記載のガスタービン。
【請求項7】
燃料を燃焼させた燃焼ガスのエネルギーによって回転体を回転させて回転エネルギーを前記回転体から取り出すガスタービン本体と、前記回転体が移動される際に前記回転体との干渉を避けるように形成されると共に前記空気吸入部材と連結されて大気から取り入れた前記空気を前記圧縮部へ導く吸気室と、前記吸気室に取り外しできるように連結され、前記空気を圧縮する圧縮部へ前記空気を導く空気吸入部材と、前記回転体が移動される際に前記回転体が通過または存在する範囲を全て含んで前記吸気室に形成される開口と、前記回転体に取り外しできるように連結されて前記回転体の回転が伝えられる発電機用入力軸と、前記発電機用入力軸が回転することにより発電する発電機と、前記開口に取り外しできるように設けられて、前記開口を覆うカバーとを含んで構成されるガスタービンを保守点検する際、
前記カバーを取り外す手順と、
前記空気吸入部材を前記吸気室から取り外す手順と、
前記発電機用入力軸を前記回転体から取り外す手順と、
前記ガスタービンが設置される床から離れる方向に前記回転体を移動する手順と、
を備えることを特徴とするガスタービンの保守点検方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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