説明

ガスタービン吸気塔にミスト噴霧ノズルを最適に配置する最適配置方法

【課題】ガスタービンに供給される燃焼空気を効果的かつ均一に冷却できるようなミスト噴霧ノズルを備えたガスタービン吸気塔及び該噴霧ノズルの最適配置方法を提供する。
【解決手段】吸気塔10は、大気中からガスタービン燃焼用空気を取り込む空気取入口11aが設けられた吸気口部11と、空気を浄化する吸気フィルタ14を収納する吸気フィルタ室13と、吸気口部11と吸気フィルタ室13とを連結して吸気通路を形成するダクト部12と、吸気通路内に複数のミスト噴霧ノズル21と、を備える。ミスト噴霧ノズル21は吸気口部11又はダクト部12の吸気通路内に配置される。ミスト噴霧ノズル21の個数は吸気通路内の風速に比例して調整して、噴霧されたミスト濃度が吸気フィルタ前面14aにおいて均一になるようにミスト噴霧ノズルが最適に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば火力発電所等に使用されるガスタービンの吸気塔及びガスタービン吸気塔にミスト噴霧する方法に関し、詳細には、ガスタービン吸気塔の吸気通路内に設けられたミスト噴霧ノズルを用いて吸気された空気を効果的にかつ均一に冷却してガスタービン出力を飛躍的に増大しようとするものに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンに供給される燃焼用空気は、大気中から吸気通路を経てガスタービンの空気圧縮機に取り込まれる。通常、ガスタービンが定格出力で運転する場合には、燃焼用空気の体積流量は、空気圧縮機の回転数が一定であることから常に同一であるが、その重量流量は、大気温度が低く空気密度が高いときは大きく、大気温度が高く空気密度の低いときは小さくなる。
【0003】
また、ガスタービンの出力は、燃焼ガスの重量流量と燃焼ガス温度とに比例するが、通常、ガスタービンは、燃焼ガス温度を一定とするように運転されることから、例えば夏場のように大気温度が高くなると燃焼ガスの重量流量が減少し、ガスタービン出力が減少することになる。なお、ガスタービンを定格出力ではない状態で運転(部分負荷運転)する場合も同様に、重量流量の減少に伴いガスタービン出力が減少する傾向がある。
【0004】
このため、従来より、吸気通路内で水などの冷媒を加圧してノズルより噴霧し、吸気に混入させ、冷媒が蒸発する際の気化熱で吸気を直接冷却する装置が知られている。例えば、本願の出願人は、特許文献1に開示するように、吸気塔10の吸気口部の上流側にあたる空気取入口11aの縁部に沿って配設され内部に圧力水が注入されるパイプ220と、このパイプ220に取り付けられ圧力水を霧状に外部に放出する複数のスプレーノズル210とを備えた水噴霧手段200(以下、「既存水噴霧装置」と呼ぶ。)を開発して上記問題の解決にあたっている(図16を参照)。
【0005】
この既存水噴霧装置200は、例えば、吸気塔10の空気取入口11aに184個のスプレーノズル210を一定間隔で設置し、2kg/cmの圧力で噴霧粒径165μmの水を噴霧させた場合、燃焼用空気温度が2.1℃低下し、ガスタービン出力が1.9MW増加できるといった実績を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3181084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、既存水噴霧装置200のような従来技術では、噴霧された水粒子の粒径が比較的大きいため、水粒子がスプレーノズル210から取入口に設置されたフィルタに到達するまでに十分に気化しきれずにフィルタにおいて目詰まりを起こしてしまう場合がある。また、フィルタ目詰まりの発生は、フィルタを通過する空気の圧力損失の増大を招き、ガスタービンに供給する空気量が低減してしまう。
【0008】
さらに、この気化しきれない水粒子がフィルタを通過しガスタービンに流入すると、水滴のまま空気圧縮機の動静翼に直接衝突し、翼のエロージョンの発生要因となってしまう。このように、噴霧した水粒子をいかに効率良く気化させるかが課題であった。
【0009】
また、既存水噴霧装置200は、吸気口部の外側に配置されていたため、燃焼用空気を冷却すべき噴霧水が全て吸気塔10の内部に流入せず、一部落下して吸気口部付近の屋上面30が水浸しになることもあった。このように水噴霧を行うスプレーノズル210の最適な配置位置、配置数、噴霧量を求めることも同様に解決すべき課題であった。
【0010】
加えて、既存水噴霧装置200で達成している燃焼用空気温度低減効果(2.1℃)やガスタービン出力向上(1.9MW出力増加)にさらなる改善の要望があった。
【0011】
そこで、本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、吸気塔から吸入されガスタービンに供給される燃焼空気を効果的かつ均一に冷却できるようなミスト噴霧ノズルを備えたガスタービン吸気塔及び該噴霧ノズルの最適配置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係るガスタービン吸気塔は、
大気中からガスタービン燃焼用空気を取り込む空気取入口が設けられた吸気口部と、
前記空気を浄化する吸気フィルタを収納する吸気フィルタ室と、
前記吸気口部と前記吸気フィルタ室とを連結して吸気通路を形成するダクト部と、
前記吸気通路内に複数のミスト噴霧ノズルと、を備え、
前記ミスト噴霧ノズルの配置位置は前記吸気口部又は前記ダクト部の吸気通路内とし、
前記ミスト噴霧ノズルの個数は前記吸気通路内の風速に比例して調整して、
噴霧されたミスト濃度が前記吸気フィルタ前面において均一になるように前記ミスト噴霧ノズルが最適配置されていることを特徴とするように構成したものである。
【0013】
上記課題を解決するために、さらに、本発明に係るミスト噴霧ノズルの最適配置方法は以下の構成を含むように構成したものである。すなわち、吸気通路と吸気フィルタを有するガスタービン吸気塔にミスト噴霧ノズルを最適に配置する最適配置方法は、
前記吸気通路内の風速分布を計算するステップと、
前記風速分布に基づいてミスト噴霧ノズル配置位置を選択するステップと、
前記配置位置の流路断面に複数の前記ミスト噴霧ノズルを配置し、さらにノズル系統に区分するステップと、
前記ノズル系統のうち一系統に属する前記ミスト噴霧ノズルだけがミスト噴霧された場合の前記吸気フィルタ前面の濃度分布を前記ノズル系統毎に計算するステップと、
前記ノズル系統毎にミスト噴霧された場合の前記濃度分布結果を用いて、複数のノズル系統に属する前記ミスト噴霧ノズルからミストが噴霧された場合に前記吸気フィルタ前面の濃度が最も均一になるように前記ノズル系統毎にノズル個数を調整するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明に係るミスト噴霧ノズルの最適配置方法は、
前記ノズル系統毎にミスト噴霧された場合の前記濃度分布結果により、前記ノズル系統相互の相関関数を求めて前記ノズル系統をグループに分けるステップと、
同一の前記グループの間で前記ミスト噴霧ノズルを再配置するステップと、をさらに含むように構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上記のような構成によれば、ノズルから噴霧されたミストが、空気が吸気フィルタに流入するまでに効率的に気化できるようになり、吸気フィルタから流入しガスタービンに供給される空気は均一に冷却される。これにより、燃焼空気の重量流量を増加させ、ガスタービン出力を飛躍的に増加させることができる。特に、夏場などの大気温度上昇によるガスタービン出力の減少の課題を簡易に解決することができる。
【0016】
また、上記のような構成によれば、ノズルから噴霧されたミストが、空気が吸気フィルタに流入するまでに効率的に気化できるようになり、従来の技術によって発生しうる不具合であるフィルタ目詰まりの問題を排除することができる。また、タービン翼のエロージョンが発生するおそれもない。
【0017】
また、従来の水噴霧装置では、空気冷却に効果のない箇所にも多数のノズルが配置されていたが、本発明の方法によれば、必要な配置位置に必要な数だけノズルを配置することができ、また、障害物の存在により所望の数だけノズルを配置できない場合が生じても、同様の濃度拡散効果を奏する別の代替位置にノズルを配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る吸気塔の吸気通路を示した断面図である。
【図2】本発明に係る吸気塔の吸気通路内の空気の流れを示した透視斜視図である。
【図3】ミストノズル最適配置方法を説明したフローチャートである。(実施例1)
【図4】実施例1の数値解析モデル(気流解析用計算メッシュ)を示した図である。
【図5】実施例1の数値解析結果(気流分布)を示した図である。
【図6】実施例1の数値解析結果(濃度分布、ノズル候補位置A)を示した図である。
【図7】実施例1の数値解析結果(濃度分布、ノズル候補位置B)を示した図である。
【図8】実施例1の数値解析結果(濃度分布、ノズル候補位置C)を示した図である。
【図9】ミストノズル最適配置方法を説明したフローチャートである。(実施例2)
【図10】ミストノズルの配置と系統区分の一例を示した図である。
【図11】実施例2の濃度解析ステップでのミスト噴霧条件を説明した図である。
【図12】(a)及び(b)は隣り合うノズル系統相互の濃度結果の相関関係を示し、(c)は、相関関係から求められたノズル系統のグループ分けを示した図である。
【図13】実施例2の最適配置方法により得られた系統毎のミスト噴霧量(a)と、ミストノズル配置数(b)とを示した図である。
【図14】実施例2の数値解析結果(濃度分布、ノズル配置位置A)を示した図である。
【図15】ガスタービン出力の経時変化の実測値を示した図である。
【図16】既存水噴霧装置を示した図である。(従来技術)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づき説明するが、本発明は、下記の具体的な実施形態に何等限定されるものではない。
【0020】
図1及び図2は、本実施形態で説明する火力発電所設備の一部である吸気塔10の断面図及び透視斜視図を示している。吸気塔10は、吸気口部11と、ダクト部12と、吸気フィルタ室13と、を備える。吸気口部11とダクト部12と吸気フィルタ室13とは夫々、空洞状の矩形断面を有する。なお、吸気塔10は、火力発電所設備の屋上30を挟んで複数個(図示の場合、左右対称となるように2個)設けられている。また、火力発電所設備は仕切り板40によって縦方向に分割されており、図示の吸気塔10と同様な構成をした複数の吸気塔(図示せず)が配置されている。なお、本実施形態では、ダクト部12の壁と吸気フィルタ室13の壁との一部が仕切り板40をなす。
【0021】
吸気口部11には、大気中に開口された空気取入口11aが設けられ、ガスタービン燃焼用空気はこの空気取入口11aを通して吸気塔10に吸引される。ダクト部12は、吸気口部11と、後述する吸気フィルタ室13と、を連結し、吸気塔10内の吸気通路を形成する。吸気フィルタ室13には、吸気塔10に流入した空気を浄化する複数(図示の場合、吸気フィルタ室13の排出側壁に4層)の吸気フィルタ14が収納されており、吸気フィルタ室13の排出側壁の開口部はこの吸気フィルタ14の数に応じて区分されている。従って、吸気口部11からダクト部12を通して吸気フィルタ室13を流入した空気は、複数の吸気フィルタ14のいずれかを通過し、浄化されて合流チャンバ15に排出される。
【0022】
ここで、吸気フィルタ14には、図示しないが、入口側(図示の前面14aの付近)にウェザールーバーが設けられ、合流チャンバ15に近い出口側にHEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)フィルタが設けられている。
【0023】
合流チャンバ15では、左右両側の吸気塔10から吸気された空気が集められる。合流チャンバ15に一旦集められた空気は、図1及び図2に示すように、合流チャンバ15の側壁に突設されたチャンバダクト16を通って、吸気塔10の下部に載置されたガスタービン50に燃焼用空気として供給される。
【0024】
なお、図2に示すように、吸気口部11をダクト部12の側面に突設し、その空気取入口11aをこの吸気口部11の底面に設置したのは、冬場の雪の吹き込みを防ぐためである。このような構成のため、吸気口部11とダクト部12と吸気フィルタ室13とによって形成された吸気通路は、コの字(C字)状の曲がり部を有した通路となっている。しかしながら、本発明の吸気塔10における吸気通路の構成はこれに限定されるものではない。
【0025】
ここで、本発明に係る吸気塔10は、例えば、吸気口部11又はダクト部12の吸気通路断面に複数のミスト噴霧ノズル(以下、単に「ノズル」と呼ぶ)21が設けられたミスト噴霧装置20を備える。ノズル21から噴霧されるミストは、10〜30μm程度の粒径を有した霧状の液滴(例えば、水滴)であり、既存水噴霧装置200に比べて、発生するミストの粒径がはるかに小さいことから気化熱を効率良く利用できる。
【0026】
なお、上述した既存水噴霧装置200は吸気口部11の下方に空気取入口11aの縁部に沿って設置されている。一方、本発明のミスト噴霧装置20は、好ましくは吸気塔10の吸気通路内部に設けられるが、既存水噴霧装置200と同様に空気取入口11aの下方に設置してもよい。
【0027】
ミスト噴霧装置20は、既存水噴霧装置200の場合と同様に、その配置方法によっては、噴霧ミストの不十分な気化による不具合を発生させることになるため、ノズル21の配置位置、配置数、噴霧量等の設計パラメータを慎重かつ適切に決定する必要がある。そこで、本願の発明者は、以下に詳述するノズル最適配置方法を見出し、この方法に基づいてノズル21の設計パラメータの最適値を導いている。
【実施例1】
【0028】
図3に本発明に係るノズル最適配置方法のフローチャートの一例(実施例1)を示す。まず、吸気塔10内の吸気通路の流れ場を解析する流体解析モデルを構築し、その流れ場を数値解析する(ステップS1)。
【0029】
次に、流れ場の解析結果をもとにミスト噴霧装置20を配置するための候補位置を選択し、この候補位置の流路断面に均等(格子状)に複数のノズル21を追加した濃度解析モデルを構築する(ステップS2)。さらに、候補位置毎に構築された濃度解析モデルについて湿度濃度分布の数値解析を行う(ステップS3)。ここで、濃度解析にあたっては、上述のように均等に配置された全てのノズル21から同一量のミストが噴霧されていると仮定する。
【0030】
次に、吸気フィルタ14の前面14aでの濃度分布のバラツキが最も小さくなる候補位置をノズル配置位置に設定する(ステップS4)。
【0031】
次に、図4〜図8を用いて、実施例1の各ステップS1〜S4を詳細に説明する。ステップS1の数値解析(気流解析)を行うに当たっては、汎用の数値流体解析ソフトウェアを用いて実行してもよく、また、C言語などのプログラム言語により独自に作成された計算プログラムを用いて実行してもよい。
【0032】
〔数値解析ソフトウェア〕
以下に汎用数値解析ソフトウェアとして、構造格子系汎用三次元熱流体解析システムであるSTREAM Ver.7(ソフトウェアクレイドル社製)を用いて、上記ステップS1〜S4を実行した一例を示す。なお、STREAMは、流れと熱のみならず、物質拡散、結露・蒸発、化学反応、粒子追跡、自由表面なども解析対象として扱うことが可能である。従って、本実施例に示す気流解析(ステップS1)及び濃度解析(ステップS2,S3)は、この熱流体解析システムSTREAMのみを利用して解析を実行している。
【0033】
〔数値解析を実行するための計算条件〕
次に、ステップS1〜S3の数値解析(気流解析及び濃度解析)を実行する際の計算条件を以下の表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表1に示すように、ステップS1の気流解析条件の乱流モデルには標準k−εモデル(等温条件)を用いている。また、気流解析モデルの境界条件として、吸気通路を構成する吸気口部11、ダクト部12、及び吸気フィルタ室13の壁面での風速には、一般化対数則を用いている。また、空気が流入する吸気口部11の空気取入口11aでは自由流入条件を設定している。吸気フィルタ14内のウェザールーバー部分は開口率35%のパネルで構成され、吸気フィルタ14内のHEPAフィルタは、以下の数式で示されたP−Q特性(Pは静圧、Qは風量を意味)を有すると想定した。
【0036】
【数1】

【0037】
ここで、Pは圧力(Pa)、Lはフィルタ厚(m)、ρはフィルタを通過する空気密度(kg/m)、Vはフィルタ内の風速(m/s)である。また、ダクト部12上流の風量を15640m/minに設定している。
【0038】
〔数値解析モデル〕
図4にステップS1の数値解析モデルの解析モデル(計算格子つまりメッシュ)の一例を示す。この図4は、吸気塔10の奥行方向の中央断面に沿った解析メッシュである。また、吸気塔1は図1及び2に示すように左右の吸気通路構造が対称であるため、本実施例の数値解析では、片側(図4では左側)の吸気通路だけを解析モデルとして利用し、計算時間の軽減を図っている。
【0039】
以上のような計算条件及び解析モデルの下で、本発明では、吸気塔10の吸気通路内を流れる定常状態の流れ場(風速分布)を計算する(ステップS1)。
【0040】
〔湿度分布(濃度分布)の数値解析〕
次に、ステップS1の気流解析結果(風速分布結果)より、本実施例では、図4に示すように、ノズル配置用の候補位置をダクト部下流位置A、ダクト部中央位置B、ダクト部上流位置Cの三箇所に決定し、いずれかのノズル配置候補位置の流路断面に複数のノズル21を追加した濃度解析モデルを構築し(ステップS2)、吸気塔10内の濃度分布を解析する(ステップS3)。ステップS2及びS3に関して、本実施例では上述の通りノズル配置候補位置を三箇所挙げたため、3つの濃度解析モデルが構築され、それぞれの濃度解析モデルについて濃度分布が計算されることになる。
【0041】
ここで、いずれのノズル配置候補位置の流路断面において、合計350個(=5×70)のノズル21がこの流路断面に均等(格子状)に配置された状態でミスト噴霧されることを想定してステップS3の濃度解析を行っている。
【0042】
また、各ノズル21では同一水量(基準化した1g/s)のガス状のミストを噴射させ、全てのノズルで合計350g/sの水量が噴射されていると仮定している。従って、平均の湿度濃度は、この合計噴射量を空気風量で除算することにより、1.34g/m(=(350g/s)÷(15640m/min))となる。
【0043】
本実施例のステップS2及びS3では、上述したように、ステップS1の気流解析で利用した数値解析ソフトウェア(STREAM)を使用して濃度解析モデルの構築及び濃度分布の計算を行っている。なお、表1に示すように、ステップS3の計算負荷軽減のために、ステップS1で求められた風速分布を利用してミストの拡散解析のみを行って湿度分布を計算している。また、拡散解析を行うにあたっては、移流状態(乱流拡散のみを考慮)に設定し、ミストの粒子径やミスト粒子の重力沈降を考慮していない(表1参照)。
【0044】
〔数値解析結果(実施例1)〕
図5にステップS1により解析された数値解析結果(風速分布)の一例を示す。図5は、具体的には、吸気塔10の奥行方向中心断面における風速分布を示す。吸気口部11では、ダクト部12に近づく程、風速が増加する傾向がある。ダクト部12では、壁側の風速が比較的に高い傾向があり、吸気フィルタ側に風速の低い循環流が形成される部分が認められる。この気流解析結果により、吸気塔10内の気流は仕切り板40に沿って吸気フィルタ室13の下部へ流れ、いずれかの吸気フィルタ14に吸い込まれる流れ場となっていることがわかる。
【0045】
図6は、ダクト部下流位置Aにノズル21を均一に配置した場合の吸気塔10内部の濃度分布を示す。この場合、ダクト部12内で発生する風速の低い循環流によりノズル2121から噴霧されたミストがダクト部上流位置Cにまで巻き上げられ、この循環流発生部分およびその後流部分(吸気フィルタ室13の一部)に比較的高濃度のミストが生じていることがわかる。一方、吸気フィルタ室13の壁側部分では風速が高いため、ミスト濃度は低い。さらに、吸気フィルタ前面14aでは濃度分布のバラツキが大きく、上層部・蒸気タービン側で高濃度のミストが生じる傾向がある。
【0046】
図7は、ダクト部中央位置Bにノズル21を均一に配置した場合の吸気塔10内部の濃度分布を示す。この場合の濃度分布は、上述したダクト部下流位置Aでの濃度分布と略同様の傾向を示しているが、相対的に濃度のバラツキは小さくなっていることがわかる。
【0047】
図8は、ダクト部上流位置Cにノズル21を均一に配置した場合の吸気塔10内部の濃度分布を示す。この図8に示すように、ノズル21下流にあたるダクト部12の上流領域でのミスト濃度は、比較的高い。さらに、ダクト部12の下流領域や吸気フィルタ室13では、水ミストがよく混合され、全体的に濃度が低いことがわかる。さらに、吸気フィルタ前面14aでのミスト濃度のバラツキも非常に小さく、該フィルタ前面14aの4層のいずれの層のどの位置においてもほぼ平均濃度(約1.34g/m)になっていることがわかる。
【0048】
以上の解析結果より、吸気フィルタ前面14aでの濃度分布のバラツキが最も小さくなるダクト部上流位置Cをノズル配置位置に設定することが最適であるということになる。従って、この最適ノズル配置位置の流路断面に複数個のノズル21を均等に配置すればよいことになる。
【実施例2】
【0049】
図9に本発明に係るノズル最適配置方法のフローチャートの別の実施例(実施例2)を示す。実施例2では、まず、実施例1の場合と同様に、吸気塔10の吸気通路の気流解析モデルを構築し、その流れ場を数値解析する(ステップS11)。このステップS11は、上述した実施例1のステップS1と同様であるため、解析メッシュ、計算条件等の説明など、詳細な説明は省略する。
【0050】
〔ノズル配置位置〕
次に、ステップS11での流れ場の解析結果をもとにノズル配置位置を決定し、この配置位置の流路断面に均等(格子状)に複数のノズル21を追加した濃度解析モデルを構築する(ステップS12)。なお、ステップS12では、実施例1で説明したようなノズル配置用の候補位置を複数用意する必要は無い。
【0051】
また、ノズル配置位置の決定にあたっては、実機(火力発電所設備に実際に配置されている吸気塔)の取付可能条件を考慮して決定しても良い。例えば、実施例1では、ステップS1の気流解析結果によって3つの候補位置A,B,Cが挙げられたが、ミスト噴霧装置20を実機の吸気通路内に取り付けるにあたっては、梁や配管などの障害物の存在によって候補位置BやCには取付困難な場合がある。
【0052】
しかしながら、上述のように実際的にミスト噴霧装置20を配置できる場所が制約され(例えば、ノズル配置可能な位置が前記候補位置A(図4参照)のみに限られ)、ステップS11の気流解析結果からはミスト噴霧装置21の配置位置Aが必ずしも最適ではない場合であっても、実施例2のノズル最適配置方法を用いれば、その配置位置Aの流路断面でのノズル21の最適な配置位置、配置数、噴射量を求めること(つまり、流路断面内でのノズル配置の重み付けを行うこと)ができ、これに従ってノズル21を配置すれば、吸気フィルタ21を通過する空気の湿度濃度(及び吸気温度)を均一にし、ひいてはガスタービン50の出力を増加させることができる。
【0053】
〔ノズルの系統区分〕
次に、ステップS12で構築された濃度解析モデルの複数のノズル21を系統に区分し、各系統のノズル21が吸気フィルタ前面14aに与える濃度分布を数値解析する(ステップS13)。
【0054】
なお、ステップS13及び該ステップ以降のステップの説明で用いる「系統」(又は、「ノズル系統」)とは、吸気塔10の吸気通路断面(流路断面)に配置された複数のノズル21のうち、隣接しあう複数(所望の数、例えば5個)のノズル21をまとめた一つの集合を意味する。このようにノズル21を系統区分した理由は、ステップS13以降の後述する濃度解析、相関解析、グループ分け、及び最適配置分析をこの系統毎に行うことになるが、ノズル21を系統区分せずに一つ一つの単独のノズル21についてステップS13以降のステップを実行するよりも解析(計算)負荷の軽減を図ることができるとともに、流路断面におけるミスト噴霧の局所的な影響を適切な程度に(つまり系統区分された領域レベルで)把握できるからである。
【0055】
ここで、図10にノズル21の配置と系統区分の一例を示す。図10に示すように350個のノズル21がダクト部下流位置A(図4参照)の流路断面に均等に配置される。具体的には、流路断面の奥行方向(図示では、ガスタービン側〜蒸気タービン側)に70個のノズル21が、流路断面の厚さ方向(図示では壁側〜吸気フィルタ側)に5列(図示では、A〜E)並んでいる。この奥行方向に配置された70個のノズル21を5個をひとまとまりとして系統区分すると、一列あたり14系統に区分され、5列で合計70系統に区分されることになる。この系統区分に従えば、例えば、最上列(A列)の最も左側に存在する5個のノズル21は、A−01系統に配置されるノズルと命名されることになる。
【0056】
ここで、図11を参照しながら、実施例2の濃度解析(ステップS13)を実行するためのミスト噴霧条件を説明する。ステップS13では、ノズル系統のうち一系統に属するノズル21だけがミスト噴霧されるように条件設定し、このミスト噴霧条件の下で濃度解析を行う(特に、吸気フィルタ前面14aの濃度分布を計算する)。上述したように、図示の例では系統が70系統存在し、このうちの一系統毎にミスト噴霧した場合の濃度解析を行うため、ステップ13の数値計算は70回(70パターン分)実行され、吸気フィルタ前面14aの濃度分布結果(前面14aでは40点の濃度結果が計算)が70個得られることになる。なお、70パターンの前記濃度分布を計算するために必要な風速分布は、実施例1と同様にステップS11の解析結果を利用しており、いずれパターンの計算にあっても同一の風速分布が入力される。
【0057】
なお、ステップS13の濃度解析を実行する際の計算条件は、上記ミスト噴霧条件を一系統のみで噴霧する点を除いては、実施例1と同様である。(例えば、ステップS12及びS13で用いた解析ソフトウェアや計算条件は実施例1の場合(表1参照)と同様である。)
【0058】
なお、吸気フィルタ前面14aは、上述の通り、上下方向に4層に分かれている。ステップS13では、各層をさらに均等の幅で10個の領域に分割して(4層合計で40個の領域に分割して)、領域毎のミスト濃度を計算している。
【0059】
次に、図9及び図11に示すように、ステップS13によって求められた系統毎の濃度分布結果より、ノズル系統相互の相関関係を求め、ノズル系統をグループ分けする(ステップS14)。以下に、ステップS14でまず実行するノズル系統相互の相関解析を詳述し、次に得られた相関関係を利用したノズル系統のグループ分けについて詳述する。
【0060】
〔ノズル系統相互の相関関係〕
図12(a)及び(b)は、隣り合う系統相互の濃度結果の相関関係を示したものであり、詳しくは、(a)はA−01系統とA−02系統の相関関係を示し、(b)はA−01系統とB−01系統の相関関係を示している。具体的には、図12(a)では、A−01系統に配置されたノズル21だけをミスト噴霧した場合の吸気フィルタ前面14aの濃度結果(吸気フィルタ前面14aを40領域に分けているので40点の濃度)を横軸にとり、A−02系統に配置されたノズルだけをミスト噴霧した場合の吸気フィルタ前面14aの濃度結果(同様に40点の濃度)を縦軸にとって、40点についての相関関係を示したものである。もし仮に、A−01系統の吸気フィルタ前面14aの濃度分布(40領域の各値)とA−02系統の吸気フィルタ前面14aの濃度分布(40領域の各値)とが全て一致していた場合には、図示の黒丸印の点は全て直線上にのることになる。
【0061】
この図12(a)によりA−01系統とA−02系統とでは、吸気フィルタ前面の濃度分布の相関が高く(R=0.98、ここでRは決定係数)、濃度分布が類似していることがわかる。一方、図12(b)により、A−01系統とB−01系統とは、上述のA−01系統とA−02系統と同様に隣り合う系統であるが、吸気フィルタ前面14aでの濃度分布の相関は低く(R=0.74)、濃度分布が相違していることがわかる。従って、隣り合う系統であっても、吸気フィルタ前面14aの濃度分布に与える影響が類似するものと、異なるものとがあることがわかる。
【0062】
〔ノズル系統のグループ分け〕
上述のように、吸気フィルタ前面14aの濃度に関して系統相互の相関関係が導かれ、相関係数が高い系統の組(例えば、Rが0.9以上となる組)を拾い出し、クラスター分析により、これらの組を同一のグループとするノズル系統のグループ分けを行う(ステップS14)。
【0063】
図12(c)にノズル系統のグループ分けの一例を示す。図示のように、吸気フィルタ前面14aの濃度分布に与える影響が類似する系統は、それぞれア〜コのグループに分けられている。例えば、グループ「ア」は、A−01系統、A−02系統、A−03系統、A−04系統、及びA−05系統を含むグループであり、A−01系統のノズルから噴霧した際の吸気フィルタ前面14aの濃度分布と、グループ「ア」内の他の系統(例えば、A−02系統)のノズルから噴霧した際の吸気フィルタ前面の濃度分布とがほぼ同じ状況であることを意味する。また、ア〜コのグループ分けがなされていない系統(図示では白抜き部分、例えば、B−05系統)は、他の系統との相関関係が低く、吸気フィルタ前面の濃度分布に関して独自性の高い系統であることを意味する。
【0064】
障害物の存在を考慮して同じグループの中でノズルの再配置を行う(ステップS15)。上述のように、火力発電所設備に実際に設けられた吸気塔10にノズル21の配置を計画する場合には、梁や室内照明機器などの障害物の存在により、一部のノズル21が配置流路断面の所望の局所領域に配置できないことがあることが予想される。しがしながら、上記のようなグループ分けを行うことにより、ある系統で配置できなかったノズル21を同じグループに属する別の系統位置(障害物のない領域)に置き換えても同等の濃度拡散効果が得られることになるため、設計の自由度が格段に向上することになる。
【0065】
さらに、ノズル最適配置分析を行い、各系統のノズル21の配置個数又は噴霧量を決定する(ステップS16)。このステップ16は、ステップS13によって得られた系統毎の吸気フィルタ前面14aでの濃度解析結果を用いて、吸気フィルタ前面14aの濃度分布のばらつき(分散)を最小とするような各系統でのノズル21の個数や噴霧量を計算するものである。上記の例では、系統の数jはj=1〜70、吸気フィルタ前面14aの濃度分布の分割面iはi=1〜40面であることから、40個からなる濃度解析結果が70系統分を利用されることになる。
【0066】
ステップS16の最適配置分析は、下記の数式(数1及び数2)に示すように、系統jに対してステップS13で解析された吸気フィルタ前面14aの分割面iでの濃度結果C(i)(系統毎のノズル配置個数は5個で解析)をもと、ノズル個数N(j)を0〜15個に変化させた場合の分割面iでの濃度R(i,j)を系統毎(j=1〜70)に計算し、吸気フィルタ前面14aの濃度のばらつきE(基準濃度Coからの濃度差の二乗和)が最小になるときの各系統jのノズル個数N(j)を算出する。なお、上記ばらつきEの代わりに、Eを吸気フィルタ前面14aの分割面iの総数で除した分散(標本分散)や、該分散の平方根である標準偏差を用いて上記最適配置分析を行うようにしてもよい。
【0067】
【数2】

【0068】
【数3】

【0069】
なお、ステップ16の上記最適配置分析に必要な計算は、例えば、マイクロソフト社製のマイクロソフトエクセル(登録商標)に付属の数式ソルバーを用いて簡単に実行することができる。
【0070】
以上の最適配置分析により、吸気フィルタ前面14aでの濃度分布が最小となるような、各系統位置のノズル配置個数やノズルミスト噴霧量を決定することが可能となる。
【0071】
図13(a)は、ノズル21の合計配置数(総数)の調整を行わずに、吸気フィルタ前面14aでの濃度分布を最小とする各系統位置でのミスト噴霧量を示す。また、図13(b)は、噴霧量が同一のノズル21の総数を350個に限定した場合の各系統位置でのノズル21の最適配置数を示す。この図13(b)より、特定の系統位置においてはノズル21を全く配置する必要がないことがわかる。
【0072】
また、図13(a)及び(b)から、A列及びB列のいずれの系統(A−01乃至A−014、及び、B−01乃至B−014)においてもノズル配置数又はミスト噴霧量を大きく設定すべきであることがわかる。さらに、A列とB列とを相対的に比較すると、A列の系統に属するノズル配置数又はミスト噴霧量をより大きく設定すべきであることがわかる。このA列は、吸気塔10の吸気通路構造において最も仕切り板40に近い流路断面領域に相当し、ステップS11で得られた気流解析の結果(図5参照)から最も風速が高い領域に相当する。従って、上記濃度解析及び気流解析の結果から、ノズル21の個数や噴霧量は吸気通路内の風速に比例して調整されるべきであることが明らかになった。
【0073】
なお、ステップS11〜S16によって決定されたノズル配置及びノズル個数をもとに、濃度解析を行うための吸気通路モデルを構築し、濃度解析を行い、吸気フィルタ前面14aの濃度分布を確認した。
【0074】
〔数値解析結果(実施例2)〕
図14は、上記実施例2のノズル最適配置方法によりダクト部下流位置A(図4参照)にミスト噴霧装置20を配置し、その流路断面にノズル21を系統毎に最適に配置した場合の吸気塔10の濃度分布(数値解析結果)を示す。図14に示すように、吸気フィルタ室13およびその下流側の吸気フィルタ前面14aでは、各点の濃度が平均濃度(1.34g/m)とほぼ同等であり、均一な濃度分布が得られている。この効果は、ダクト部下流位置Aの流路断面にノズル21を均等(格子状)に配置した場合の濃度分布(図6に示す数値解析結果)と比較すれば明らかである。
【0075】
なお、本発明のミスト噴霧装置20を実際の吸気塔10に配置して効果確認を行った。すなわち、約350個のノズル21をそれぞれ左右の吸気塔10のダクト部下流位置A(図4参照)に配置して(合計約700個のノズル21)、ガスタービン50の出力変化を実測した。本効果確認においては、ダクト部下流位置Aでの流路断面にノズル21を取付可能な範囲で均等(格子状)に配置・噴霧させて実験を行った(なお、上記実施例2に示したようなノズルを最適に配置させた状態での実験を行っていない。)
【0076】
図15は、ガスタービン出力の経時変化の一例を示す。大気温度が28〜30℃、大気湿度が約46%の下で最大出力運転中のガスタービン50に、午前10時頃からミスト噴霧を開始し、11時頃から最大水量で噴霧した。この図15の結果より、噴霧の前後で、約7,5℃の吸気温度が低減し、タービン出力が約13MW増加(約6%の出力増加)するという非常に良好な結果が得られた。
【0077】
図15の効果確認の実験結果を考察する。(1)この効果確認のおける実機での実験条件が、上述とおり、実施例2で示したような最適なノズル配置となっていないこと、及び、(2)同一のノズル配置位置A(図4参照)においてノズル21をその流路断面に最適に配置させた場合の数値解析結果(図14参照)が、ノズル21をその流路断面に均等に配置させた場合の数値解析結果(図6参照)よりも大幅にミスト拡散効果が高いこと、などの点を鑑みると、ノズル21を実施例2に示したように最適なノズル配置で実機の吸気塔10に取り付け、ミスト噴霧させれば、さらなるタービン出力の増加が得られることが見込まれる。
【0078】
本発明は、以上のように構成されているので、以下のような作用効果を奏する。
【0079】
上記のような構成によれば、ノズルから噴霧されたミストが、空気が吸気フィルタに流入するまでに効率的に気化できるようになり、吸気フィルタから流入しガスタービンに供給される空気は均一に冷却される。これにより、燃焼空気の重量流量を増加させ、ガスタービン出力を飛躍的に増加させることができる。特に、夏場などの大気温度上昇によるガスタービン出力の減少の課題を簡易に解決することができる。
【0080】
また、上記のような構成によれば、ノズルから噴霧されたミストが、空気が吸気フィルタに流入するまでに効率的に気化できるようになり、従来の技術によって発生しうる不具合であるフィルタ目詰まりの問題を排除することができる。また、タービン翼のエロージョンが発生するおそれもない。
【0081】
また、従来の水噴霧装置では、空気冷却に効果のない箇所にも多数のノズルが配置されていたが、本発明の方法によれば、必要な配置位置に必要な数だけノズルを配置することができ、また、障害物の存在により所望の数だけノズルを配置できない場合が生じても、同様の濃度拡散効果を奏する別の代替位置にノズルを配置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、ガスタービンの出力を飛躍的に増加させる大変有望な技術であり、産業上利用可能である。
【0083】
本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0084】
10 吸気塔
11 吸気口部
11a 空気取入口
12 ダクト部
13 吸気フィルタ室
14 吸気フィルタ
14a 吸気フィルタ前面
15 合流チャンバ
16 チャンバダクト
20 ミスト噴霧装置
21 ミスト噴霧ノズル
30 火力発電所設備の屋上
40 仕切り板
50 ガスタービン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気中からガスタービン燃焼用空気を取り込む空気取入口が設けられた吸気口部と、
前記空気を浄化する吸気フィルタを収納する吸気フィルタ室と、
前記吸気口部と前記吸気フィルタ室とを連結して吸気通路を形成するダクト部と、
前記吸気通路内に複数のミスト噴霧ノズルと、を備え、
前記ミスト噴霧ノズルの配置位置は前記吸気口部又は前記ダクト部の吸気通路内とし、
前記ミスト噴霧ノズルの個数は前記吸気通路内の風速に比例して調整して、
噴霧されたミスト濃度が前記吸気フィルタ前面において均一になるように前記ミスト噴霧ノズルが最適配置されていることを特徴とするガスタービン吸気塔。
【請求項2】
吸気通路と吸気フィルタを有するガスタービン吸気塔にミスト噴霧ノズルを最適に配置する最適配置方法であって、
前記吸気通路内の風速分布を計算するステップと、
前記風速分布に基づいてミスト噴霧ノズル配置位置を選択するステップと、
前記配置位置の流路断面に複数の前記ミスト噴霧ノズルを配置し、さらにノズル系統に区分するステップと、
前記ノズル系統のうち一系統に属する前記ミスト噴霧ノズルだけがミスト噴霧された場合の前記吸気フィルタ前面の濃度分布を前記ノズル系統毎に計算するステップと、
前記ノズル系統毎にミスト噴霧された場合の前記濃度分布結果を用いて、複数のノズル系統に属する前記ミスト噴霧ノズルからミストが噴霧された場合に前記吸気フィルタ前面の濃度が最も均一になるように前記ノズル系統毎にノズル個数を調整するステップと、
を含むことを特徴とするガスタービン吸気塔にミスト噴霧ノズルを最適に配置する最適配置方法。
【請求項3】
前記ノズル系統毎にミスト噴霧された場合の前記濃度分布結果により、前記ノズル系統相互の相関関数を求めて前記ノズル系統をグループに分けるステップと、
同一の前記グループの間で前記ミスト噴霧ノズルを再配置するステップと、をさらに含んだ請求項2に記載の最適配置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図9】
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【図15】
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【図16】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−249043(P2010−249043A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99974(P2009−99974)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【特許番号】特許第4563489号(P4563489)
【特許公報発行日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人 火力原子力発電技術協会、平成20年度火力原子力発電大会 論文集、平成21年2月26日
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【出願人】(304027279)国立大学法人 新潟大学 (310)