説明

ガスタービン装置

【課題】デトネーション燃焼器にて発生する燃焼生成ガスの衝撃を緩和するとともに,安定した回転動力を得ることができるガスタービン装置を提供すること。
【解決手段】デトネーション燃焼器2は,インナーチューブ23と,そのインナーチューブ23を覆うアウターチューブ24とを有し,インナーチューブ23から排出された燃焼生成ガスの折り返し流路26を構成している。さらに,デトネーション燃焼器2は,アウターチューブ24の閉塞端243に円錐状の反射部244を設けることとしている。この円錐状の反射部244によって,インナーチューブ23の出口端233から排出された燃焼ガスは,複雑に反射を繰り返すことによりその圧力が平準化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,デトネーションを利用した燃焼器(以下,「デトネーション燃焼器」とする)を備えたガスタービン装置に関する。さらに詳細には,デトネーション燃焼器にて発生する燃焼生成ガスの衝撃を緩和することができるガスタービン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,ガスタービン装置は,レシプロエンジン等と比較して部品点数が少なく,小型化が可能であり,メンテナンスが容易であるといった点から,さまざまな分野で利用されている。このガスタービン装置の例としては,例えば特許文献1や特許文献2に開示されているものがある。
【0003】
ガスタービン装置の適用例として,ガスタービン発電システムを図6に示す。このガスタービン発電システムでは,圧縮機1と,燃焼器20と,タービン3と,発電機4とが設けられている。圧縮機1は,燃焼用の空気を圧縮するためのものである。燃焼器20は,圧縮された空気を燃料とともに燃焼させるためのものである。タービン3は,圧縮機1および発電機4を回転駆動させるためのものである。このガスタービン発電システムでは,圧縮機1によって圧縮された空気を燃焼器20に送り込み,燃焼器20から排出される燃焼生成ガスによってタービン3を回転させる。そして,タービン3が回転することにより発電機4が回転し電力が得られるのである。
【0004】
また,近年,熱効率の向上や,さらなる低コスト化の要請から,通常の燃焼器に換えてデトネーション燃焼器を備えたガスタービン装置が開発されている。図7は通常の燃焼器の熱効率とデトネーション燃焼器の熱効率とを示す図である。図7中の横軸に示した圧力比は,圧縮前後における空気の圧力の比である。図7に示すように,同じ圧力比であればデトネーション燃焼器の方が高効率である。デトネーション燃焼器としては,例えば特許文献3に開示されているものがある。
【特許文献1】特開2003−120332号公報
【特許文献2】特開2002−317649号公報
【特許文献3】特開2000−258181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,ガスタービン装置にデトネーション燃焼器を適用した場合には次の問題があった。すなわち,デトネーション燃焼器にて排出される燃焼生成ガスは,非常に高圧である。そのため,燃焼生成ガスが直接タービンのブレードに衝突することで,タービンのブレードが損傷してしまうことがある。また,タービンのブレードにて撥ね返された燃焼生成ガスがデトネーション燃料器へ逆流し,燃焼を不安定にさせることがある。
【0006】
一方,燃焼生成ガスの衝撃を抑制するには,空気の圧力比を低くすればよい。しかしながら,デトネーション燃焼器では,一瞬だけ高圧な状態が発生し,その後は低圧な状態となる。そのため,この一瞬の超高圧状態を回避しながら,その後の時間はなるべく高圧状態を維持する方が効率的である。従って,圧縮圧力のピーク値を下げた場合に,確かに一瞬の高圧状態によるタービンの損傷を免れる効果があるが,その後の時間において全体的に低圧となり,結果として効率が悪くなってしまう。
【0007】
そこで本出願人は,デトネーション燃焼器からの燃焼生成ガスによる衝撃を緩和し,安定した回転動力を得ることができるガスタービン装置を提案している(特願2003−368765号)。このガスタービン装置では,図8に示すように内部でデトネーションを生じさせるインナーチューブ23と,そのインナーチューブ23を覆うアウターチューブ24とを有している。また,インナーチューブ23の側壁には切抜きが設けられている。
【0008】
デトネーションによる衝撃波(燃焼生成ガス)は,インナーチューブ23内を伝播する。そして,インナーチューブ23の切抜きから漏出した燃焼生成ガスは,アウターチューブ24に付設された出口管25を介してタービン3に送り込まれる。また,インナーチューブ23の出口端から排出された燃焼生成ガスは,アウターチューブ24の閉塞端243にて撥ね返される。そして,撥ね返された燃焼生成ガスは,インナーチューブ23とアウターチューブ24との隙間を伝播し,出口管25を介してタービン3に送り込まれる。すなわち,インナーチューブ23から排出される高圧の燃焼生成ガスは,切抜きによって分散されるとともに,アウターチューブ24によって形成された折り返し流路26内を伝播することで減圧される。これにより,インナーチューブ23から直接伝播する衝撃波の平準化を図ることができ,タービンのブレードの損傷が抑制されるのである。
【0009】
図9は,前述した衝撃波緩衝機構を設けていないデトネーション燃焼器,具体的には図8に示したデトネーション燃焼器であってインナーチューブ23のうちアウターチューブ24に覆われた部位を取り除いたもの(つまり,通常のデトネーション燃焼器)について,出口での圧力を測定した結果を示している。図9中の横軸は,着火からの経過時間を意味している。図9に示すように,着火から1.6ms後に衝撃波による大きな圧力上昇が確認された。すなわち,デトネーションによる衝撃波が着火から1.5ms後に出口に達していることがわかる。さらに,着火から3.8ms後には,アウターチューブ24の閉塞端243にて反射した衝撃波による圧力上昇が確認された。
【0010】
一方,図10は,図8に示したデトネーション燃焼器の出口での圧力変動を示している。図10に示すように,着火から1.5ms後付近の圧力変動が小さく,直接伝播する衝撃波の平準化が図られていることが確認された。
【0011】
しかしながら,前述のガスタービン装置であっても次のような問題があった。すなわち,図10に示したように着火から3.8ms後にアウターチューブ24の閉塞端243にて撥ね返された衝撃波(以下,「反射衝撃波」とする)が出口に達し,急激な圧力変動を生じさせている。この反射衝撃波による圧力変動は,直接伝播する衝撃波ほどではないが,連続して安定した運転を行うための障害となる。
【0012】
本発明は,前記した従来のガスタービン装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,デトネーション燃焼器にて発生する燃焼生成ガスの衝撃を緩和するとともに,安定した回転動力を得ることができるガスタービン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題の解決を目的としてなされたガスタービン装置は,デトネーションを生じさせ,そのデトネーションによる燃焼生成ガスを排出する燃焼器と,前記燃焼器から排出された燃焼生成ガスにて回転動力を得るタービンとを備えたガスタービン装置であって,燃焼器は,内部でデトネーションを生じさせるデトネーション管と,内径がデトネーション管の外径よりも大きく,デトネーション管の出口端を収容し,デトネーション管の出口端と対向する側の端部が閉塞端である収容管と,収容管と結合し,デトネーション管と収容管との隙間に流れ込んだ燃焼生成ガスをタービンに向けて排出させる排出管と,収容管の内側であってデトネーションによる衝撃波を反射する部位に位置し,テーパ状に突起した形状をなす反射部とを備えるものである。
【0014】
すなわち,本発明のガスタービン装置の燃焼器は,デトネーションによる燃焼生成ガスを排出するデトネーション管と,そのデトネーション管を収容する収容管とを有している。さらに,収容管のうち,少なくともデトネーション管の出口端と対向する端部は閉塞端である。そのため,デトネーション管の出口端から排出された燃焼生成ガスは,その閉塞端にて撥ね返され,その一部が収容管とデトネーション管との隙間によって形成された折り返し流路を伝播する。すなわち,デトネーション管から排出された高圧の燃焼生成ガスは,直接タービンに衝突することなく,デトネーション管および収容管にて形成された複雑な流路を伝播する。
【0015】
また,収容管のうち,デトネーションによる衝撃波を反射する部位には,テーパ状に突起した形状をなす反射部が設けられている。収容管のうちの衝撃波を反射する部位としては,例えばデトネーション管の出口端と対向する側の閉塞端部が該当する。このテーパ状の反射部により,デトネーション管内を伝播する燃焼生成ガスがデトネーション管の内側壁面に向けて反射することになる。すなわち,反射部に達した衝撃波の波面が分散し,デトネーション管内で何度も反射を繰り返すことになる。これにより,衝撃波の圧力が徐々に減衰し,収容管の出口での急激な圧力上昇が抑えられるとともに衝撃波の平準化が図られる。したがって,連続して安定した運転を行うことができる。
【0016】
例えば,反射部は,前記収容管のうちの前記デトネーション管の出口端と対向する側の端部に位置し,テーパ角度が60度以下であり,その先端がデトネーション管内に位置することとするとよりよい。このような反射部を設けることにより,燃焼生成ガスは反射部の反射面とデトネーション管の内側壁面との間で何度も反射を繰り返すことになる。そのため,徐々に減圧しながら収容管の閉塞端部に達する。その後,燃焼生成ガスは,収容管の内側壁面や反射部の反射面との間で複雑な反射を繰り返すことで,結果的に収容管の閉塞端部から反射される。反射された燃焼生成ガスの一部は,デトネーション管と収容管との間の流路中を,さらに反射を繰り返しつつ伝播する。これにより,衝撃波の平準化が図られる。
【0017】
また,デトネーション管の側壁には,収容管に収容されている位置に,デトネーション管の出口端に向かうほどその幅が狭い切抜きが設けられていることとするとよりよい。さらにその切抜きは,デトネーション管の側壁のうち,収容管の出口と対向する部位から円周方向に略90度回転させた位置からデトネーション管の長手方向に延びた線上に位置することとするとよりよい。
【0018】
すなわち,この切抜きから燃焼生成ガスが漏出することにより,衝撃波が分散される。また,その切抜きの幅は,デトネーション管の出口端側ほど広い。衝撃波は,一般に,狭い流路から広い流路に伝播すると,波面が拡大されて減衰する。このことから,燃焼生成ガスの減圧が促進される。なお,「切抜き」は,デトネーション管の側壁に囲まれた状態に限らず,デトネーション管の端部から切り取られた形状(切欠き)であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば,デトネーション管の出口端を収容管で覆うことにより,直接伝播する衝撃波の平準化が図られている。さらに,衝撃波を反射する部位にテーパ状の反射部を設けることにより,反射衝撃波の平準化も図られている。よって,デトネーション燃焼器にて発生する燃焼生成ガスの衝撃を緩和するとともに,安定した回転動力を得ることができるガスタービン装置が実現されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお,本実施の形態は,ガスタービン発電システムに本発明のパルスデトネーション燃焼器を備えたガスタービン装置を適用したものである。
【0021】
実施の形態に係るガスタービン発電システム100は,図1に示すように圧縮機1と,デトネーション燃焼器2と,タービン3と,発電機4とを備えている。本形態のガスタービン発電システム100には,複数のデトネーション燃焼器2が設けられており,各デトネーション燃焼器2がタービン3の回転軸10を取り囲むように配置されている。また,タービン3の回転軸10は,圧縮機1および発電機4と一体的に結合されている。そのため,タービン3が回転することで,圧縮機1および発電機4も回転する。
【0022】
圧縮機1は,取り込んだ空気を圧縮して,その圧縮空気をデトネーション燃焼器2に供給するものである。圧縮機1には,回転軸10を中心として複数のブレードが設けられており,このブレードが回転することで空気を圧縮する。また,各デトネーション燃焼器2は,圧縮空気と燃料とを燃焼管内で混合し,その混合気を基にデトネーションを発生させることで高圧の燃焼生成ガスを発生させるものである。デトネーション燃焼器2の詳細については後述する。タービン3は,圧縮機1および発電機4を回転駆動するためのものである。タービン3にも,複数のブレードが設けられており,このブレードに燃焼生成ガスが衝突することで回転動力を得ることができる。また,発電機4は,回転軸10と結合された発電ロータが回転することで電力を発生させる。
【0023】
次に,デトネーション燃焼器2について詳細に説明する。デトネーション燃焼器2は,図2に示すように燃料供給ノズル21と,着火源22と,インナーチューブ23と,アウターチューブ24と,出口管25とを備えている。インナーチューブ23は,直径が108mmの円筒管であり,内側でデトネーションを発生させるとともにそのデトネーションによる衝撃波を拡散させるものである。インナーチューブ23の入口端232には,燃料供給ノズル21が設けられており,燃料および圧縮空気がインナーチューブ23内に供給される。そして,インナーチューブ23内では,圧縮空気と燃料との混合気に着火することでデトネーションを発生させる。一方,インナーチューブ23の出口端233からは,燃焼(デトネーション)による燃焼生成ガスが排出される。
【0024】
また,アウターチューブ24は,両端242,243とも閉塞端であり,直径が134mmの円筒管である。このアウターチューブ24の直径は,インナーチューブ23の直径よりも大きい。そして,アウターチューブ24は,インナーチューブ23の出口端233を収容するように配置されている。なお,アウターチューブ24の閉塞端243は,インナーチューブ23の出口端233と接しておらず,出口端233を塞いでしまうものではない。そのため,インナーチューブ23の出口端233とアウターチューブ24の閉塞端243との間には隙間がある。さらに,インナーチューブ23の外面とアウターチューブ24の内面との間にも隙間があり,その隙間が燃焼生成ガスの伝播流路26となっている。すなわち,アウターチューブ24の閉塞端243にて撥ね返された燃焼生成ガスをインナーチューブ23内の流れの方向と逆方向に伝播させるための折り返し流路26となっている。
【0025】
また,アウターチューブ24の閉塞端243の内側には,円錐状の反射部244が設けられている。具体的に反射部244は,直径が100mmで,高さが400mmである。つまり,円錐のテーパ角度(図2中の角度θ)がおよそ7度となっている。反射部244は,所定のテーパ角度が設けられていればよく,円錐状に限るものではない。例えば,角錐状のものであってもよい。また,テーパ角度は,衝撃波をインナーチューブ23の内側壁面に反射可能な角度であればよい。具体的にテーパ角度θは,次の条件式(1)を満たす範囲内であることが好ましい。
1/16<tanθ<√3 (1)
この反射部244によって,インナーチューブ23内を伝播する燃焼生成ガスは,反射部244とインナーチューブ23の側壁との間で複雑な反射を繰り返すことになる。
【0026】
また,インナーチューブ23の壁面には,図3に示すような切欠き231が設けられている。この切欠き231の開き幅は,入口端232側から出口端233側に向けて広くなっている。すなわち,切欠き231は,三角形状をなしている。
【0027】
なお,切欠き231は,インナーチューブ23の円周方向のどの位置に設けたとしても直接伝播する衝撃波の圧力を平準化する効果はあるが,図3に示したようにアウターチューブ24の出口に対して90度横側に向いた位置に設けることが好ましい。具体的に本出願人は,切欠き231が,(a)アウターチューブ24の出口側に向いた場合と,(b)アウターチューブ24の出口に対して90度横側に向いた場合と,(c)アウターチューブ24の出口に対して逆に向いた場合との3通りの実験を行い,(b)の場合が最も平準化の効果が大きいことを確認している。
【0028】
また,出口管25がアウターチューブ24と結合されている。出口管25は,燃焼生成ガスをアウターチューブ24の外に排出させるとともに,その燃焼生成ガスをタービン3へと導くためのものである。この出口管25の入口は,インナーチューブ23の切欠き231の位置よりアウターチューブ24の閉塞端242側に設けられている。すなわち,インナーチューブ23の出口端234から排出された燃焼生成ガスと,切欠き231から漏出した燃焼生成ガスとが交わる位置より下流側に設けられている。なお,出口管25の出口の手前には,圧力センサが取り付けられており,これによって出口付近の圧力履歴を知ることができる。
【0029】
次に,本形態のガスタービン発電システム100の動作について説明する。まず,発電機4の後方(図1中の左側)から送り込まれた空気が圧縮機1にて圧縮される。一般的に,発電出力が400kW程度の発電システムでは,空気の圧縮前後の圧力比が5.0程度である。この圧縮機1での圧力比が高ければ高いほど燃焼器2から排出される燃焼生成ガスは高圧である。圧縮空気は,各デトネーション燃焼器2内に送り込まれる。
【0030】
各デトネーション燃焼器2内では,圧縮空気がデトネーション燃焼器2のインナーチューブ23内に送り込まれ,燃料供給ノズル21から供給された燃料と混合される。そして,着火源22によって圧縮空気と燃料との混合気への着火が行われる。これにより,インナーチューブ23内でデトネーションが生じる。そして,デトネーションによる衝撃波がインナーチューブ23内を伝播し,インナーチューブ23の出口端233から燃焼生成ガスが排出される。
【0031】
また,インナーチューブ23内の燃焼生成ガスの一部は,図4に示すようにインナーチューブ23の側壁に設けられている切欠き231から漏出する。すなわち,燃焼生成ガスは,切欠き231の幅が狭い部位からインナーチューブ23外に放出され,切欠き231の幅が広くなるにつれて放出される燃焼生成ガスの量は多くなる。これにより,燃焼生成ガスが分散され,その圧力が低減される。
【0032】
また,インナーチューブ23内を伝播する燃焼生成ガスは,アウターチューブ24の閉塞端243に設けられた円錐状の反射部244にてインナーチューブ23の側壁に向けて撥ね返される。そして,インナーチューブ23の側壁と反射部244との間で反射を繰り返しつつ閉塞端243に達する。すなわち,図5に示すように閉塞端243に向かう衝撃波は,反射部244によって伝播方向が変えられ,その波面がインナーチューブ23の側壁に向けて分散する。そして,インナーチューブ23の側壁と反射部244との間での反射が繰り返し行われることにより,衝撃波の圧力が徐々に減衰する。その後,アウターチューブ24の壁面,アウターチューブ24の端面,および反射部244の反射面との間で複雑な反射を繰り返す。これにより,閉塞端243に達した燃焼生成ガスは段階的に反射されることになる。
【0033】
そして,その燃焼生成ガスの一部は,伝播流路26内を伝播し,その伝播経路26内でさらに反射を繰り返す。そして,伝播流路26内を伝播した燃焼生成ガスは,出口管25を介してタービン3に向けて排出される。つまり,デトネーションによって生じた衝撃波は,直接タービン3のブレードに衝突するわけではなく,切欠き231によって減衰しながらタービン3に達する。また,反射衝撃波についても,反射部244によって平準化されながらタービン3に達する。
【0034】
各デトネーション燃焼器2(図1参照)から排出された燃焼生成ガスは,タービン3のブレードに衝突する。これにより,タービン3が回転駆動される。タービン3が回転することで,タービン3と同軸上に設けられた圧縮機1および発電機4も回転する。そして,発電機4が回転駆動されることで電力が得られる。
【0035】
さらに,本形態のガスタービン発電システム100には,複数のデトネーション燃焼器2が設けられており,各デトネーション燃焼器2が異なったタイミングで燃焼する。例えば,デトネーション燃焼器が2A,2B,2Cと設けられている場合に,それぞれのデトネーション燃焼器が異なるタイミングでデトネーションを発生させる。つまり,各デトネーション燃焼器内での燃焼は一瞬にして終了してしまうため,1つ1つのデトネーション燃焼器では一瞬だけ超高圧な状態が発生する。この高圧状態の時間をデトネーション燃焼器ごとに異にする。これにより,タービン3に対して,低圧状態の時間を短くすることができる。そのため,高圧状態を長時間にわたり維持することができ,タービン3に送り込まれる燃焼生成ガスの圧力が安定する。
【0036】
以上詳細に説明したように本形態のデトネーション燃焼器2は,インナーチューブ23と,そのインナーチューブ23を覆うアウターチューブ24とを有し,インナーチューブ23から排出された燃焼生成ガスの折り返し流路26を構成することとしている。さらに,本形態のデトネーション燃焼器2は,アウターチューブ24の閉塞端243に円錐状の反射部244を設けることとしている。この円錐状の反射部244によって,燃焼生成ガス(衝撃波)の波面がインナーチューブ23の内側壁面に向かって反射することとなる。そして,燃焼生成ガスが反射部244とインナーチューブ23の壁面との間で繰り返し反射することにより,衝撃波の圧力が徐々に減衰するとともに平準化される。よって,急激な圧力変動がなく,タービン3は安定した運転を行うことができる。従って,デトネーション燃焼器にて発生する燃焼生成ガスの衝撃を緩和するとともに,安定した回転動力を得ることができるガスタービン装置が実現されている。
【0037】
また,インナーチューブ23の側壁には,三角形状の切欠き231が設けられている。この切欠き231から燃焼生成ガスが漏出することで,直接伝播する衝撃波の圧力を平準化することができる。
【0038】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。すなわち,実施の形態では,ガスタービン発電システムに本発明を適用しているが,これに限るものではない。例えば,デトネーション燃焼器から得られる熱と,発電機から得られる電力とを利用する,いわゆるコジェネレーションシステムであってもよい。また,例えば航空用エンジンに本発明のガスタービン装置を適用してもよい。
【0039】
また,切欠き231の形状は,図3に示す三角形状に限るものではない。例えば,台形形状であってもよい。また,デトネーション管23の出口端233から切り取られた状態に限らず,デトネーション管23の側壁を切り抜いた状態であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施の形態に係るガスタービン発電システムの構成を示す図である。
【図2】デトネーション燃焼器および燃焼生成ガスの衝撃緩和機構の構成を示す断面図である。
【図3】インナーチューブの壁面に設けられた切抜きの例を示す図である。
【図4】アウターチューブ内の燃焼生成ガスの流路を示す図である。
【図5】実施の形態の閉塞端における衝撃波の反射のイメージを示す図である。
【図6】従来の形態に係るガスタービン発電システムの構成を示す図である。
【図7】通常の燃焼器の熱効率とデトネーション燃焼器の熱効率とを示す図である。
【図8】従来の形態に係るデトネーション燃焼器および燃焼生成ガスの衝撃緩和機構の構成を示す図である。
【図9】図8に示した衝撃波緩衝機構なしの場合における圧力変動を示すグラフである。
【図10】図8に示した衝撃波緩衝機構ありの場合における圧力変動を示すグラフである。
【符号の説明】
【0041】
1 圧縮機
2 デトネーション燃焼器(燃焼器)
23 インナーチューブ(デトネーション管)
231 切欠き(切抜き)
232 入口端
233 出口端
24 アウターチューブ(収容管)
243 閉塞端
244 反射部(反射部)
25 出口管(排出管)
3 タービン
4 発電機
10 回転軸
100 ガスタービン装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デトネーションを生じさせ,そのデトネーションによる燃焼生成ガスを排出する燃焼器と,前記燃焼器から排出された燃焼生成ガスにて回転動力を得るタービンとを備えたガスタービン装置において,
前記燃焼器は,
内部でデトネーションを生じさせるデトネーション管と,
内径が前記デトネーション管の外径よりも大きく,前記デトネーション管の出口端を収容し,前記デトネーション管の出口端と対向する側の端部が閉塞端である収容管と,
前記収容管と結合し,前記デトネーション管と前記収容管との隙間に流れ込んだ燃焼生成ガスを前記タービンに向けて排出させる排出管と,
前記収容管の内側であってデトネーションによる衝撃波を反射する部位に位置し,テーパ状に突起した形状をなす反射部とを備えることを特徴とするガスタービン装置。
【請求項2】
請求項1に記載するガスタービン装置において,
前記反射部は,前記収容管のうちの前記デトネーション管の出口端と対向する側の端部に位置することを特徴とするガスタービン装置。
【請求項3】
請求項2に記載するガスタービン装置において,
前記反射部の先端は,前記デトネーション管内に位置することを特徴とするガスタービン装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載するガスタービン装置において,
前記デトネーション管の側壁には,前記収容管に収容されている位置に,前記デトネーション管の出口端に向かうほどその幅が狭い切抜きが設けられていることを特徴とするガスタービン装置。
【請求項5】
請求項4に記載するガスタービン装置において,
前記切抜きは,前記デトネーション管の側壁のうち,前記収容管の出口と対向する部位から円周方向に略90度回転させた位置から前記デトネーション管の長手方向に延びた線上に位置することを特徴とするガスタービン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−83732(P2006−83732A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−267762(P2004−267762)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)