説明

ガスタービン設備、その燃料ガス制御装置及びその燃料ガス制御方法

【課題】主燃料ガスのカロリーが急激に大きく変動した場合でも、ガスタービン燃焼器を安定燃焼させる。
【解決手段】ガスタービン10に流入する燃料ガスの単位カロリーが設定カロリーに近づくよう、主燃料ガスライン20中に送り込む調整ガスの流量を調整ガス調節弁31,41により調節させる主制御部110と、燃料ガスの単位カロリー及び調整ガスのガス流量を用いてBFG単味の単位カロリーを求める単味カロリー演算部123と、燃料ガスの単位カロリーが予め定めた制限値を過ぎたことを条件にして、主制御部による調整ガス調節弁の指示に対して、調整ガス調節弁の全閉を優先指示する弁制限制御部125と、を備える。弁制限制御部125は、前記条件を満たしても、設定カロリーを基準した主燃料ガスの単位カロリーの高低が制限値と逆である場合には、調整ガス調節弁の全閉を指示しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンと、主燃料ガスをガスタービンに送る主燃料ガスラインと、主燃料ガスライン中にカロリー調整用の調整ガスを送り込む調整ガスラインとを備えているガスタービン設備、その燃料ガス制御装置及びその燃料ガス制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン設備では、製鉄所の高炉からの高炉ガス(以下、BFG(Blast Furnace Gas)とする)を主燃料ガスとする設備がある。BFGのカロリーは、高炉の操業状態に応じて変動する。このため、BFGのガスカロリーの変動が大きい場合には、ガスタービン燃焼器の不安定燃焼や失火に至ることがある。
【0003】
そこで、この種のガスタービン設備では、例えば、燃料ガスカロリーを測定するためのカロリー計を設け、このカロリー計で測定された燃料ガスカロリーが設定カロリーよりも高い場合には、例えば、N2ガスのような減熱ガスをBFGに混合し、燃料ガスカロリーが設定カロリーよりも低い場合には、例えば、コークス炉ガス(以下、COG(Coke Oven Gas)とする)のような増熱ガスをBFGに混合している。すなわち、この種のガスタービン設備では、フィードバック制御により、燃料ガスカロリーの変動を抑えている。
【0004】
ところで、カロリー計による燃料ガスカロリーの測定では、サンプリング配管の存在による応答遅れやカロリー測定端子のガス洗浄工程等があるため、1分以上の応答遅れがある。このため、カロリー計で測定された燃料ガスカロリーを用いてフィードバック制御しても、BFGの急激なカロリー変動には対応できず、ガスタービン燃焼器の不安定燃焼等を招くことがある。
【0005】
そこで、以下の特許文献1では、ガスタービン燃焼器に流入する燃料ガスの流量とガスタービンの出力とから、燃料ガスのカロリーを推定する技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3905829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の技術では、確かに、カロリー計による燃料ガスカロリーの測定よりも応答遅れを小さくできるものの、BFGのカロリーが急激に大きく変動した場合には、以下に示す例のように、ガスタービン燃焼器の不安定燃焼等を招くおそれがある、という問題点がある。
【0008】
例えば、BFGのカロリーが急激に低下して、その後、徐々に、BFGのカロリーが元のカロリーに戻る場合には、以下のような現象が起こり得る。
【0009】
上記の場合、制御装置は、BFGのカロリーの急激な低下を補うために、ガスタービン出力等から推定した燃料ガスのカロリーに基づいて、増熱ガスの流量を急激に増加さる。しかしながら、ガスタービンに流入する燃料ガスのカロリーは、配管長等による遅れ要因により、短時間のうちに設定カロリーにはならない。このため、制御装置は、既に、燃料ガスカロリーが設定カロリーを上回るほどに増熱ガスを供給していても、燃料ガスカロリーの推定値が設定カロリーになるまで、増熱ガスの流量を増加させ続けることがある。燃料ガスカロリーの推定値が設定カロリーになるまで、増熱ガスの流量を増加させ続けると、その後の燃料ガスカロリー推定値が設定カロリーを大きく上回り、保護回路が働いて、増熱ガスの流量調節弁が緊急遮断されることがある。しかも、この際、BFG単味のカロリーが設定カロリーよりも低いと、燃料ガスカロリーが再び急激に低下し、前述したように、ガスタービン燃焼器の不安定燃焼等が起こることがある。
【0010】
そこで、本発明は、主燃料ガスのカロリーが急激に大きく変動した場合でも、ガスタービン燃焼器を安定燃焼させることができるガスタービン設備、その燃料ガス制御装置及びその燃料ガス制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するための発明に係る燃料ガス制御装置は、
ガスタービンと、該ガスタービンに主燃料ガスを送る主燃料ガスラインと、主燃料ガスライン中にカロリー調整用の調整ガスを送る調整ガスラインと、該調整ガスラインから該主燃料ガスライン中に送られる前記調整ガスの流量を調節する調整ガス調節弁と、を備えているガスタービン設備の燃料ガス制御装置において、
前記調整ガスラインとの接続位置よりも下流側の前記主燃料ライン中のガスである燃料ガスの単位重量あたりのカロリーを取得する燃料ガスカロリー取得部と、前記調整ガスの流量と前記主燃料ガスの流量と前記燃料ガスの流量とのうち、少なくとも2つガス流量を取得するガス流量取得部と、前記燃料ガスカロリー取得手段で取得された前記燃料ガスの単位重量あたりのカロリーと該燃料ガスの設定カロリーとの偏差が小さくなるよう、前記調整ガス調節弁に対して弁開度を指示する主制御部と、前記燃料ガスカロリー取得手段で取得された前記燃料ガスの単位重量あたりのカロリーと、前記調整ガスの単位重量あたりの想定カロリーと、前記ガス流量取得手段で取得された前記少なくとも2つのガス流量とを用いて、前記主燃料ガスの単位重量あたりのカロリーを求める単味カロリー演算部と、前記燃料ガスの単位重量あたりのカロリーが予め定めた制限値を過ぎたことを条件にして、前記主制御部による前記調整ガス調節弁の指示に対して、該調整ガス調節弁の全閉を優先指示する弁制限制御部と、を備え、
前記弁制限制御部は、前記条件を満たしても、前記設定カロリーを基準した前記主燃料ガスの単位重量あたりのカロリーの高低が前記制限値と逆である場合には、前記調整ガス調節弁の全閉を指示しないことを特徴とする。
【0012】
当該燃料ガス制御装置では、主燃料ガスの単位重量あたりのカロリー(以下、単位カロリーとする)の急激な変動に対応して、調整ガスの流量が急激に変化した結果、燃料ガスの単位カロリーが調整ガス調節弁の全閉の閾値である制限値を過ぎても、設定カロリーを基準した主燃料ガスの単位カロリーの高低が制限値と逆である場合には、調整ガス調節弁の全閉が優先指示されない。仮に、設定カロリーを基準した主燃料ガスの単位カロリーの高低が制限値と逆のときに、燃料ガスの単位カロリーが調整ガス調節弁の全閉の閾値である制限値を過ぎ、この時点で、直ちに、調整ガス調節弁の全閉が優先指示されると、燃料ガスの単位カロリーが制限値から、設定カロリーを跨いで主燃料ガスの単位カロリーの値近くまで急激に変化することがある。しかしながら、当該燃料ガス制御装置では、前述したように、設定カロリーを基準した主燃料ガスの単位カロリーの高低が制限値と逆である場合には、調整ガス調節弁の全閉が優先指示されないため、燃料ガスの単位カロリーが、制限値から設定カロリーを跨いで主燃料ガスの単位カロリーの値近くまで急激に変化することを回避することができる。
【0013】
このため、当該燃料ガス制御装置によれば、主燃料ガスの単位カロリーが急激に大きく変動した場合でも、ガスタービン燃焼器を安定燃焼させることができる。
【0014】
ここで、前記燃料ガス制御装置において、前記弁制限制御部は、前記条件を満たし、且つ、前記設定カロリーを基準した前記主燃料ガスの単位重量あたりのカロリーの高低が前記制限値と同じである場合には、前記調整ガス調節弁の全閉を優先指示することが好ましい。
【0015】
当該燃料ガス制御装置では、燃料ガスの単位カロリーが、制限値から設定カロリーを跨いで主燃料ガスの単位カロリーの値近くまで急激に変化することを回避しつつも、燃料ガスの単位カロリーが設定カロリーに対して大きくかけ離れた場合にも対処することができる。
【0016】
また、前記燃料ガス制御装置において、前記ガスタービン設備は、前記調整ガスラインとして、前記燃料ガスのカロリーを増加させる前記調整ガスの一つである増熱ガスを前記主燃料ガスライン中に送り込む増熱ガスラインを有すると共に、前記調整ガス調節弁として、前記増熱ガスの流量を調節する増熱ガス調節弁を有しており、前記弁制限制御部は、前記燃料ガスの単位重量あたりのカロリーが前記設定カロリーよりも高いカロリー値の前記制限値を上回り、且つ、前記単味カロリー演算部で求められた前記主燃料ガスの単位重量あたりのカロリーが前記設定カロリーを上回ると、前記増熱ガス調節弁の全閉を優先指示してもよい。
【0017】
また、燃料ガス制御装置において、前記ガスタービン設備は、前記調整ガスラインとして、前記燃料ガスのカロリーを減少させる前記調整ガスの一つである減熱ガスを前記主燃料ガスライン中に送り込む減熱ガスラインを有すると共に、前記調整ガス調節弁として、前記減熱ガスの流量を調節する減熱ガス調節弁を有しており、前記弁制限制御部は、前記燃料ガスの単位重量あたりのカロリーが前記設定カロリーよりも低いカロリー値の前記制限値を下回り、且つ、前記単味カロリー演算部で求められた前記主燃料ガスの単位重量あたりのカロリーが前記設定カロリーを下回ると、前記減熱ガス調節弁の全閉を優先指示してもよい。
【0018】
また、前記燃料ガス制御装置において、前記弁制限制御部は、前記設定カロリーを基準した前記主燃料ガスの単位重量あたりのカロリーの高低を判断する際、該主燃料ガスの単位重量あたりのカロリーが高くなっている過程では前記設定カロリーとして第一設定カロリーを用いて判断し、前記主燃料ガスの単位重量あたりのカロリーが低くなっている過程では前記設定カロリーとして該第一設定カロリーよりも低い値の第二設定カロリーを用いて判断することが好ましい。
【0019】
当該燃料ガス制御装置では、前記設定カロリーを基準した前記主燃料ガスの単位重量あたりのカロリーの高低の頻繁な変化を抑えることができ、調整ガス調節弁の全閉制御を安定化させることができる。
【0020】
また、前記燃料ガス制御装置において、前記ガス流量取得部は、前記燃料ガスの流量を取得し、前記燃料ガスカロリー取得部は、前記ガスタービンの出力を取得し、該ガスタービン出力と前記ガス流量取得部が取得した前記燃料ガスの流量とを用いて、前記燃料ガスの単位重量あたりのカロリーを求めてもよい。
【0021】
ガスタービンに燃料ガスが流入すると、ガスタービンの出力には、極めて短時間のうちに、この燃料ガスの単位カロリーに応じた出力が反映される。このため、当該燃料ガス制御装置のように、ガスタービンの出力等から求められた燃料ガスの単位カロリーを用いて、調整ガス調節弁の制御を行うと、カロリー計で実測された燃料ガスの単位カロリーを用いて、調整ガス調節弁の制御を行うよりも、実際の燃料ガスの単位カロリーの変化に対する制御応答性を高めることができる。
【0022】
また、上記問題点を解決するための発明に係るガスタービン設備は、
前記燃料ガス制御装置と前記ガスタービンと前記主燃料ガスラインと前記調整ガスラインと前記調整ガス調節弁とを備えていることを特徴とする。
【0023】
当該ガスタービン設備でも、前記燃料ガス制御装置を備えているので、主燃料ガスの単位カロリーが急激に大きく変動した場合でも、ガスタービン燃焼器を安定燃焼させることができる。
【0024】
また、上記問題点を解決するための発明に係る燃料ガス制御方法は、
ガスタービンと、該ガスタービンに主燃料ガスを送る主燃料ガスラインと、主燃料ガスライン中にカロリー調整用の調整ガスを送る調整ガスラインと、該調整ガスラインから該主燃料ガスライン中に送られる前記調整ガスの流量を調節する調整ガス調節弁と、を備えているガスタービン設備の燃料ガス制御方法において、
前記調整ガスラインとの接続位置よりも下流側の前記主燃料ライン中のガスである燃料ガスの単位重量あたりのカロリーを取得する燃料ガスカロリー取得工程と、前記調整ガスの流量と前記主燃料ガスの流量と前記燃料ガスの流量とのうち、少なくとも2つガス流量を取得するガス流量取得工程と、前記燃料ガスカロリー取得工程で取得された前記燃料ガスの単位重量あたりのカロリーと該燃料ガスの設定カロリーとの偏差が小さくなるよう、前記調整ガス調節弁に対して弁開度を指示する主制御工程と、前記燃料ガスカロリー取得工程で取得された前記燃料ガスの単位重量あたりのカロリーと、前記調整ガスの単位重量あたりの想定カロリーと、前記ガス流量取得工程で取得された前記少なくとも2つのガス流量とを用いて、前記主燃料ガスの単位重量あたりのカロリーを求める単味カロリー演算工程と、前記燃料ガスの単位重量あたりのカロリーが予め定めた制限値を過ぎたことを条件にして、前記主制御工程での前記調整ガス調節弁の指示に対して、該調整ガス調節弁の全閉を優先指示する弁制限制御工程と、を有し、
前記弁制限制御工程では、前記条件を満たしても、前記設定カロリーを基準した前記主燃料ガスの単位重量あたりのカロリーの高低が前記制限値と逆である場合には、前記調整ガス調節弁の全閉を指示しないことを特徴とする。
【0025】
当該燃料ガス制御方法では、主燃料ガスの単位カロリーの急激な変動に対応して、調整ガスの流量が急激に変化した結果、燃料ガスの単位カロリーが調整ガス調節弁の全閉の閾値である制限値を過ぎても、設定カロリーを基準した主燃料ガスの単位カロリーの高低が制限値と逆である場合には、調整ガス調節弁の全閉が優先指示されない。仮に、設定カロリーを基準した主燃料ガスの単位カロリーの高低が制限値と逆のときに、燃料ガスの単位カロリーが調整ガス調節弁の全閉の閾値である制限値を過ぎ、この時点で、直ちに、調整ガス調節弁の全閉が優先指示されると、燃料ガスの単位カロリーが制限値から、設定カロリーを跨いで主燃料ガスの単位カロリーの値近くまで急激に変化することがある。しかしながら、当該燃料ガス制御装置では、前述したように、設定カロリーを基準した主燃料ガスの単位カロリーの高低が制限値と逆である場合には、調整ガス調節弁の全閉が優先指示されないため、燃料ガスの単位カロリーが、制限値から設定カロリーを跨いで主燃料ガスの単位カロリーの値近くまで急激に変化することを回避することができる。
【0026】
このため、当該燃料ガス制御方法によれば、主燃料ガスの単位カロリーが急激に大きく変動した場合でも、ガスタービン燃焼器を安定燃焼させることができる。
【0027】
ここで、前記燃料ガス制御方法において、前記弁制限制御工程では、前記条件を満たし、且つ、前記設定カロリーを基準した前記主燃料ガスの単位重量あたりのカロリーの高低が前記制限値と同じである場合には、前記調整ガス調節弁の全閉を優先指示することが好ましい。
【0028】
当該燃料ガス制御方法では、燃料ガスの単位カロリーが、制限値から設定カロリーを跨いで主燃料ガスの単位カロリーの値近くまで急激に変化することを回避しつつも、燃料ガスの単位カロリーが設定カロリーに対して大きくかけ離れた場合にも対処することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明では、主燃料ガスの単位カロリーの急激な変動に対応して、調整ガスの流量が急激に変化した結果、燃料ガスの単位カロリーが調整ガス調節弁の全閉の閾値である制限値を過ぎても、設定カロリーを基準した主燃料ガスの単位カロリーの高低が制限値と逆である場合には、調整ガス調節弁の全閉が優先指示されない。このため、燃料ガスの単位カロリーが、制限値から設定カロリーを跨いで主燃料ガスの単位カロリーの値近くまで急激に変化することを回避することができる。
【0030】
よって、本発明によれば、主燃料ガスの単位カロリーが急激に大きく変動した場合でも、ガスタービン燃焼器を安定燃焼させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る第一実施形態におけるガスタービン設備の構成を示す説明図である。
【図2】本発明に係る第一実施形態における弁制限制御部の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る第一実施形態における弁制限制御部の動作に基づく燃料ガスの単位カロリーの変動を示すグラフである。
【図4】本発明に係る第二実施形態におけるガスタービン設備の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係るガスタービン設備の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0033】
まず、本発明に係るガスタービン設備の第一実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。
【0034】
本実施形態のガスタービン設備は、図1に示すように、ガスタービン10と、ガスタービン10へ燃焼用空気を送る空気圧縮機13と、ガスタービン10の駆動で発電する発電機14と、製鉄所の高炉からのBFG(Blast Furnace Gas(高炉ガス))をガスタービン10に送る主燃料ガスライン20と、主燃料ガスライン20中に増熱ガスであるCOG(Coke Oven Gas(コークス炉ガス))を送り込む増熱ガスライン30と、主燃料ガスライン20中に減熱ガスであるN2ガスを送り込む減熱ガスライン40と、COGやN2ガスの流量を制御する燃料ガス制御装置100と、ガスタービン10の出力を制御するガスタービン出力制御装置15と、を備えている。なお、増熱ガスであるCOG及び減熱ガスであるN2ガスは、いずれも、主燃料ガスであるBFGのカロリーを調整するためのカロリー調整ガスである。
【0035】
ガスタービン10は、タービンを有するタービン本体11と、このタービン本体11に燃焼ガスを送り込む燃焼器12と、を備えている。主燃料ガスライン20は、このガスタービン10の燃焼器12と製鉄所との間に敷設されている。
【0036】
主燃料ガスライン20には、この主燃料ガスライン20を通るガス中のダスト等を集塵する電気集塵器(EP(electrostatic Precipitator))21と、電気集塵器21を経たガスを加圧する燃料ガス圧縮機22と、燃料ガス圧縮機22で加圧されてガスタービン10の燃焼器12に送られるガスの流量を調節する燃料ガス調節弁23と、ガスタービン10の燃焼器12に送られるガスの流量を測定する燃料ガス流量計28と、が設けられている。ガスタービン出力制御装置15は、発電機14の出力計16で測定された出力等に応じて、燃料ガス調節弁23の弁開度を調整する。燃料ガス圧縮機22の入口、言い換えると、電気集塵器21と燃料ガス圧縮機22との間の主燃料ガスライン20には、ここを通るガスの単位重量あたりのカロリーを測定するカロリー計24が設けられている。なお、以下では、ガスの単位重量あたりのカロリーを、単に単位カロリーとする。
【0037】
主燃料ガスライン20には、さらに、燃料ガス圧縮機22の出口のガスを電気集塵器21の入口に戻すバイパスライン25が設けられている。このバイパスライン25には、燃料ガス圧縮機22から吐出されたガスのうちで電気集塵器21の入り口に戻す余剰ガスの流量を調節する余剰ガス調節弁26と、燃料ガス圧縮機22から抽気したガスと余剰ガスとの間で熱交換を行う余剰ガス熱交換器27とが設けられている。
【0038】
増熱ガスライン30及び減熱ガスライン40は、いずれも、主燃料ガスライン20中の電気集塵器21よりも上流側の位置に接続されている。増熱ガスライン30には、この増熱ガスライン30から主燃料ガスライン20に流れ込むCOGの流量を調節する増熱ガス調節弁31と、このCOGの流量を測定する増熱ガス流量計32と、が設けられている。また、減熱ガスライン40には、この減熱ガスライン40から主燃料ガスライン20に流れ込むN2ガスの流量を調節する減熱ガス調節弁41と、N2ガスの流量を測定する減熱ガス流量計42と、が設けられている。これら増熱ガス調節弁31及び減熱ガス調節弁41は、調整ガス調節弁として燃料ガス制御装置100により制御される。
【0039】
主燃料ガスライン20に対する増熱ガスライン30及び減熱ガスライン40の接続位置よりも下流側の主燃料ガスライン20には、BFGとCOGとN2ガスとの混合ガス、BFGとCOGとの混合ガス、BFGとN2ガスとの混合ガス、BFGのみのいずれかが流れる。以下では、増熱ガスライン30及び減熱ガスライン40の接続位置よりも下流側の主燃料ガスライン20に流れるガスを燃料ガスとする。主燃料ガスライン20に設けられているカロリー計24は、この燃料ガスの単位カロリーを測定する。
【0040】
燃料ガス制御装置100は、燃料ガスの単位カロリーが設定カロリーSVに近づくよう、増熱ガス調節弁31及び減熱ガス調節弁41の弁開度を指示する主制御部110と、カロリー計24から燃料ガスの単位カロリーqGTを取得する燃料ガスカロリー取得部121と、各ガス流量計28,31,42から各ガスの流量を取得するガス流量取得部122と、BFG単味の単位カロリーqBFGを求める単味カロリー演算部と、調整ガス調節弁である増熱ガス調節弁31及び減熱ガス調節弁41に全閉を指示する弁制限制御部125と、各種データが記憶されている記憶部130と、を有している。
【0041】
主制御部110は、燃料ガスの単位カロリーが設定カロリーSVになる増熱ガス調節弁31及び減熱ガス調節弁41の弁開度を求めて各調節弁31,41に弁開度を指示するフィードフォワード制御器111と、燃料ガスの単位カロリーqGTと設定カロリーSVとの偏差Δを求める減算器112と、減算器112が求めた偏差Δが小さくなる増熱ガス調節弁31及び減熱ガス調節弁41の弁開度を求めて各調節弁31,41に弁開度を指示するフィードバック制御器113と、を有している。
【0042】
ガス流量取得部122は、前述したように、燃料ガス流量計28から燃料ガスの流量、増熱ガス流量計32からCOGの流量、減熱ガス流量計42からN2ガスの流量を取得し、これらを単味カロリー演算部123に送る。このガス流量取得部122は、各流量計28,32,42からの送られてくる流量が体積流量である場合に、これを重量流量に変換する機能を有している。体積流量を重量流量に変換する方法としては、対象ガスの密度が予め定めた密度であると仮定して、体積流量にこの密度を掛ける方法や、ガス成分分析計を設け、対象ガス中にどのようなガスがどの程度含まれているかガス成分分析計から取得し、各成分ガスの量から重量流量を求める方法等、各種方法がある。また、このガス流量取得部122は、カロリー計24からの燃料ガスの単位カロリーqGTを単味カロリー演算部123に渡す際に、カロリー測定された燃料ガスをカロリー計24がサンプリングしたときの、カロリー計24の主燃料ガスライン20との接続位置における各ガス流量を単味カロリー演算部123に渡すために、各ガス流量の出力を遅延させる機能も有している。
【0043】
弁制限制御部125は、ガスカロリー取得部121からの燃料ガスの単位カロリーqGTとこの燃料ガスの単位カロリーに対する制限値Sa,Sbとの大小関係を比較する第一比較器126と、単味カロリー演算部123で求められたBFG単味の単位カロリーqBFGと燃料ガスに対する設定カロリーSVとの大小関係を比較する第二比較器127と、第一比較器126及び第二比較器127による比較結果に応じて各調節弁31,41に全閉を指示する指示出力器128と、を有している。
【0044】
記憶部130には、燃料ガスに対する設定カロリーSV131と、燃料ガスの単位カロリーに対する制限値である上限値Sa131及び下限値Sb132と、COGの単位カロリーqCOG134と、N2ガスの単位カロリーqN2135とが予め記憶されている。
【0045】
なお、以上で説明した燃料ガス制御装置100は、コンピュータで構成されており、燃料ガス制御装置100の各機能部110,121,122,123,125は、いずれも、ハードディスクドライブ装置等の外部記憶装置やメモリ等の記憶装置と、この記憶装置に記憶されているプログラムを実行するCPUとを有して構成されている。また、記憶部130は、ハードディスクドライブ装置等の外部記憶装置やメモリ等の記憶装置で構成されている。記憶部130に記憶されている各種データは、キーボード等の入力装置を操作することで適宜変更することができる。
【0046】
次に、燃料ガス制御装置100の動作について説明する。
【0047】
カロリー計24で測定された燃料ガスの単位カロリーqGTは、燃料ガスカロリー取得部121により取得され、主制御部110、単味カロリー演算部123及び弁制限制御部125に渡される。
【0048】
主制御部110の減算器112は、記憶部130に記憶されている設定カロリーSV131と燃料ガスカロリー取得部121からの燃料ガスの単位カロリーqGTとの偏差Δを求め、この偏差Δをフィードバック制御器113に渡す。フィードバック制御器113は、この偏差Δが小さくなるよう、増熱ガス調節弁31の弁開度及び減熱ガス調節弁41の弁開度を求め、増熱ガス調節弁31及び減熱ガス調節弁41に対して弁開度を指示する。
【0049】
単味カロリー演算部123は、燃料ガスカロリー取得部121からの燃料ガスの単位カロリーqGTと、記憶部130に記憶されているCOGの単位カロリーqCOG134及びN2ガスの単位カロリーqN2135と、ガス流量取得部122からの各ガス流量WGT,WCOG,WN2とを用いて、以下の式により、BFG単味の単位カロリーqBFGを求める。
【0050】
BFG=(qGT・WGT−qCOG・WCOG−qN2・WN2)/WBFG
【0051】
なお、上記式中、WGTは燃料ガスの重量流量であり、WCOGはCOGの重量流量であり、WN2はN2ガスの重量流量であり、WBFGはBFGの重量流量である。BFGの重量流量WBFGは、燃料ガスの重量流量WGTから、COGの重量流量WCOG及びN2ガスの重量流量WN2を減算することで得られる。各ガスの重量流量は、全て測定により得てもよいが、以上のように、一のガスの重量流量に関しては、他のガスの重量流量から求めてもよい。また、ここでは、燃料ガスの流量、COGガスの流量、N2ガスの流量をいずれも流量計で測定しているが、各ガスの調節弁23,32,42の弁開度から各ガスの流量を求めるようにしてもよい。
【0052】
また、上記式中の各ガス流量は、いずれも、前述したように、カロリー測定された燃料ガスをカロリー計24がサンプリングしたときの、カロリー計24の主燃料ガスライン20との接続位置における各ガス流量である。このため、上記式で求められるBFG単味の単位カロリーqBFGは、カロリー測定された燃料ガスをカロリー計24がサンプリングしたときの、カロリー計24の主燃料ガスライン20との接続位置におけるBFG単味の単位カロリーである。
【0053】
次に、燃料ガス制御装置100の弁制限制御部125の動作について、図2に示すフローチャートに従って説明する。
【0054】
弁制限制御部125は、まず、燃料ガスカロリー取得部121から燃料ガスの単位カロリーqGTを取得すると共に、単味カロリー演算部123からBFG単味の単位カロリーqBFGを取得する(S10)。
【0055】
弁制限制御部125の第一比較器126は、燃料ガスカロリー取得部121から取得した燃料ガスの単位カロリーqGTが記憶部130に記憶されている上限値Sa132より大きいか否かを判断する(S11)。燃料ガスの単位カロリーqGTが上限値Saより大きいと判断された場合、第二比較器127は、単味カロリー演算部123から取得したBFG単味の単位カロリーqBFGが記憶部130に記憶されている設定カロリーSV131より大きいか否かを判断する(S12)。BFG単味の単位カロリーqBFGが設定カロリーSVより大きいと判断された場合、指示出力器128は、増熱ガス調節弁31に対して全閉を指示すると共に、全閉を指示した旨を記憶する(S13)。この全閉指示は、主制御部110から増熱ガス調節弁31への弁開度指示に優先する。このため、増熱ガス調節弁31は、弁制限制御部125から全閉指示を受けると、主制御部110から如何なる指示を受けても全閉となる。
【0056】
ステップ11で燃料ガスの単位カロリーqGTが上限値Saより大きくないと判断された場合、及びステップ12でBFG単味の単位カロリーqBFGが設定カロリーSVより大きくないと判断された場合、指示出力器128は、増熱ガス調節弁31に対する全閉指示済みか否かを判断する(S14)。この判断は、全閉を指示した旨の記憶があるか否かにより判断する。指示出力器128は、全閉指示済みでないと判断すると、一連の処理を終了する。一方、指示出力器128は、全閉指示済みと判断すると、増熱ガス調節弁31に全閉解除を指示して(S15)、一連の処理を終了する。
【0057】
すなわち、以上のステップ11〜15の処理により、燃料ガスの単位カロリーqGTが上限値Saより大きく且つBFG単味の単位カロリーqBFGが設定カロリーSVより大きい場合には、増熱ガス調節弁31へ全閉が指示される(S13)。一方、燃料ガスの単位カロリーqGTが上限値Saより大きく且つBFG単味の単位カロリーqBFGが設定カロリーSV以下の場合や、燃料ガスの単位カロリーが上限値Sa以下で且つBFG単味の単位カロリーqBFGが設定カロリーSVより大きい場合には、増熱ガス調節弁31へ全閉は指示されない。また、一旦、増熱ガス調節弁31へ全閉が指示された後、燃料ガスの単位カロリーqGTが上限値Sa以下になった場合、又はBFG単味の単位カロリーqBFGが設定カロリーSV以下になった場合には、この増熱ガス調節弁31へ全閉解除が指示される(S15)。
【0058】
ステップ11で燃料ガスの単位カロリーqGTが上限値Saより大きくないと判断された場合、第一比較器126は、燃料ガスカロリー取得部121から取得した燃料ガスの単位カロリーqGTが記憶部130に記憶されている下限値Sb133より小さいか否かを判断する(S21)。燃料ガスの単位カロリーqGTが下限値Sbより小さいと判断された場合、第二比較器127は、単味カロリー演算部123から取得したBFG単味の単位カロリーqBFGが記憶部130に記憶されている設定カロリーSV131より小さいか否かを判断する(S22)。BFG単味の単位カロリーqBFGが設定カロリーSVより小さいと判断された場合、指示出力器128は、減熱ガス調節弁41に対して全閉を指示すると共に、全閉を指示した旨を記憶する(S23)。この全閉指示も、主制御部110から減熱ガス調節弁41への弁開度指示に優先する。このため、減熱ガス調節弁41は、弁制限制御部125から全閉指示を受けると、主制御部110から如何なる指示を受けても全閉となる。
【0059】
ステップ21で燃料ガスの単位カロリーqGTが下限値Sbより小さくないと判断された場合、及びステップ22でBFG単味の単位カロリーqBFGが設定カロリーSVより小さくないと判断された場合、指示出力器128は、減熱ガス調節弁41に対する全閉指示済みか否かを判断する(S24)。この判断も、全閉を指示した旨の記憶があるか否かにより判断する。指示出力器128は、全閉指示済みでないと判断すると、一連の処理を終了する。一方、指示出力器128は、全閉指示済みと判断すると、減熱ガス調節弁41に全閉解除を指示して(S25)、一連の処理を終了する。
【0060】
すなわち、以上のステップ21〜25の処理により、燃料ガスの単位カロリーqGTが下限値Sbより小さく且つBFG単味の単位カロリーqBFGが設定カロリーSVより小さい場合には、減熱ガス調節弁41へ全閉が指示される(S23)。一方、燃料ガスの単位カロリーqGTが下限値Sbより小さく且つBFG単味の単位カロリーqBFGが設定カロリーSV以上の場合や、燃料ガスの単位カロリーqGTが上限値Sa以上で且つBFG単味の単位カロリーqBFGが設定カロリーSVより小さい場合には、減熱ガス調節弁41へ全閉は指示されない。また、一旦、減熱ガス調節弁41へ全閉が指示された後、燃料ガスの単位カロリーqGTが下限値Sb以上になった場合、又はBFG単味の単位カロリーqBFGが設定カロリーSV以上になった場合には、この減熱ガス調節弁41へ全閉解除が指示される(S25)。
【0061】
次に、BFG単味の単位カロリーが変化したときの燃料ガス制御装置100の動作、及びそのときのカロリー計24の測定値の変化について、図3を用いて説明する。なお、図3中、縦軸はカロリー及びCOGの流量を示し、横軸は時間を示す。また、太い実線は、本実施形態の燃料ガス制御装置100により制御された場合のカロリー計24の測定値を示し、太い二点鎖線は本実施形態の燃料ガス制御装置100により制御されない場合(増熱ガス調節弁31の全閉実施)のカロリー計24の測定値を示す。また、細い破線は、本実施形態の燃料ガス制御装置100により制御された場合のカロリー計設置位置での燃料ガスの単位カロリー値(カロリー計24による測定による遅れ無し)を示し、細い二点鎖線は本実施形態の燃料ガス制御装置100により制御されない場合(増熱ガス調節弁31の全閉実施)のカロリー計設置位置での燃料ガスの単位カロリー値を示す。太い破線は、カロリー計設置位置でのBFG単味の単位カロリーを示す。また、細い実線は、本実施形態の燃料ガス制御装置100により制御された場合のカロリー計設置位置でのCOGの流量を示し、細い一点鎖線は本実施形態の燃料ガス制御装置100により制御されない場合(増熱ガス調節弁31の全閉実施)のカロリー計設置位置でのCOGの流量を示す。
【0062】
ここで、以下では、BFG単味の単位カロリー(太い破線)が当初設定カロリーSVより高く、その後、BFG単味の単位カロリーが急激に設定カロリーSVよりも大幅に低くなってから、高くなったものの、再び、設定カロリーSVよりも低い状態が続いた場合について説明する。
【0063】
BFG単味の単位カロリー(太い破線)が急激に設定カロリーSVよりも大幅に低くなると、燃料ガスの単位カロリー(細い破線)も急激に低くなる(t1)。カロリー計24は、サンプリング配管の存在による応答遅れやカロリー測定端子のガス洗浄工程等があるため、1分以上の応答遅れ時間Td1がある。このため、カロリー計24は、燃料ガスの単位カロリーが急激に低くなり始めた時点から(t1)、遅れ時間Td1経過した後、燃料ガスの単位カロリー(太い実線)の急激低下を測定する(t2)。カロリー計24によって測定された燃料ガスの単位カロリーが低下し、設定カロリーSVよりもさらに低くなると(t3)、主制御部110は増熱ガス調節弁31へ弁開度の増大を指示し、増熱ガス調節弁31の弁開度は増大して、COGの流量も増加する。増熱ガス調節弁31へ弁開度の増大の指示により、カロリー計設置位置でのCOGの流量(細い実線)が増加し始める時点(t4)は、主制御部110が増熱ガス調節弁31へ弁開度の増大を指示してから(t3)、増熱ガス調節弁31が設けられている位置からカロリー計設置位置までの配管の存在等による遅れ時間Td2を経過した時点になる。
【0064】
カロリー計設置位置でのCOGの流量が増加し始めた時点(t4)でも、カロリー計24により測定された燃料ガスの単位カロリー(太い実線)は、依然として低下し、カロリー計設置位置でのCOGの流量が増加し始めた時点(t4)から遅れ時間Td1経過した後(t5)に、高くなり始める。
【0065】
カロリー計24により測定される燃料ガスの単位カロリー(太い実線)は、その後、高まり、カロリー計設置位置での燃料ガスの単位カロリー(細い破線)が設定カロリーSVを上回ってもさらに高まる。
【0066】
一方、カロリー計24によって測定された燃料ガスの単位カロリー(太い実線)が高まるに連れて、主制御部110から増熱ガス調節弁31へ指示する弁開度は、徐々に減少し、これに伴いCOGの流量(細い実線)も徐々に減少する。
【0067】
このような状態で、前述したように、BFG単味の単位カロリー(太い実線)が高くなると(但し、設定カロリーSVよりも高くならない)、カロリー計設置位置での燃料ガスの単位カロリー(細い破線)は、燃料ガスの上限値Saを超えることがある。カロリー計設置位置での燃料ガスの単位カロリーが上限値Saを超えると(t6)、カロリー計24は、遅れ時間Td1経過後に、この燃料ガスの単位カロリーを測定する(t7)。
【0068】
仮に、カロリー計24で測定された燃料ガスの単位カロリー(太い実線)が上限値Saを超えた場合、上限値Saを超えたことのみを条件に保護回路等が働いて増熱ガス調節弁31が緊急遮断、つまり急激に全閉になると、その後、遅れ時間Td2経過後(t8)に、カロリー計設置位置でのCOGの流量(細い一点鎖線)が急激に低下すると共に、カロリー計設置位置での燃料ガスの単位カロリー(細い二点鎖線)も急激に低下する。しかも、カロリー計24で測定された燃料ガスの単位カロリーが上限値Saを超えた時点(t6)で、カロリー計設置位置でのBFG単味の単位カロリー(太い破線)は設定カロリーSVよりも低いため、カロリー計設置位置での燃料ガスの単位カロリーは設定カロリーSVよりも低くなる。
【0069】
すなわち、カロリー計24で測定された燃料ガスの単位カロリーが上限値Saを超えた場合、上限値Saを超えたことのみを条件に保護回路等が働いて増熱ガス調節弁31を急激に全閉にすると、カロリー計設置位置での燃料ガスの単位カロリー(細い二点鎖線)は、急激に設定カロリーSVよりも低くなる可能性がある。
【0070】
一方、本実施形態では、前述したように、カロリー計24で測定された燃料ガスの単位カロリー(太い実線)が上限値Saを超えた場合(t7)でも、さらに、カロリー計設置位置でのBFG単味の単位カロリー(太い破線)が設定カロリーSVを超えていなければ、増熱ガス調節弁31に対して全閉を指示しない。このため、カロリー計24で測定された燃料ガスの単位カロリーが上限値Saを超えているものの、カロリー計設置位置でのBFG単味の単位カロリーが設定カロリーSVを超えていない上記状態では、増熱ガス調節弁31は直ちに全閉にならず、主制御部110によるフィードバック制御により、増熱ガス調節弁31はその弁解度が徐々に減少する。この結果、カロリー計設置位置でのCOGの流量は徐々に減少し、このカロリー計設置位置での燃料ガスの単位カロリー(細い破線)も徐々に減少する。
【0071】
また、以上は、BFG単味の単位カロリーが急激に低下して、増熱ガス調節弁31の弁開度を増加させた場合の例であるが、逆に、BFG単味の単位カロリーが急激に上がり、減熱ガス調節弁41の弁開度を増加させた場合も、以上と基本的に同様である。すなわち、減熱ガス調節弁41の弁開度を増加させた結果、カロリー計24で測定された燃料ガスの単位カロリーが下限値Sbを下回っても、カロリー計設置位置でのBFG単味の単位カロリーが設定カロリーよりも下回っていない状態では、減熱ガス調節弁41は直ちに全閉にならず、主制御部110によるフィードバック制御により、減熱ガス調節弁41はその弁解度が徐々に減少する。
【0072】
以上のように、本実施形態では、BFG単味の単位カロリーが急激に大きく変動し、燃料ガスの単位カロリーが制限値Sa,Sbを過ぎた場合でも、設定カロリーSVを基準したBFG単味の単位カロリーの高低が制限値と逆である場合には、調整ガス調節弁31,41の全閉が優先指示されないため、燃料ガスの単位カロリーが、制限値Sa,Sbから設定カロリーSVを跨いでBFG単味の単位カロリーの値近くまで急激に変化することを回避することができる。よって、本実施形態よれば、ガスタービン燃焼器12を安定燃焼させることができる。
【0073】
次に、本発明に係るガスタービン設備の第二実施形態について、図4を参照して説明する。
【0074】
本実施形態のガスタービン設備は、基本的に第一実施形態の同じであるが、主燃料ガスライン20にカロリー計24(図1)が設けられていない点が第一実施形態と異なっている。さらに、本実施形態の燃料ガス制御装置100aは、第一実施形態の燃料ガス制御装置100と同様、主制御部110と燃料ガスカロリー取得部121aとガス流量取得部122aと単味カロリー演算部123と弁制限制御部125aと記憶部130とを有しているものの、燃料ガスカロリー取得部121aとガス流量取得部122aと弁制限制御部125aの機能が第一実施形態と異なっている。
【0075】
そこで、以下では、第一実施形態と異なっている点について詳細に説明する。
【0076】
本実施形態の燃料ガス制御装置100aのガス流量取得部122aは、第一実施形態と同様、燃料ガス流量計28から燃料ガスの流量、増熱ガス流量計32からCOGの流量、減熱ガス流量計42からN2ガスの流量を取得し、これらを単味カロリー演算部123に送る。さらに、本実施形態のガス流量取得部122aは、燃料ガス流量計28から燃料ガスの流量を燃料ガス取得部121aにも送る。
【0077】
また、本実施形態の燃料ガスカロリー取得部121aは、ガス流量取得部122aからの燃料ガスの流量と、発電機14の出力計16で測定された出力とを用いて、燃料ガスの単位カロリーを求める機能を有している。
【0078】
ガスタービンの出力GTmw、言い換えると、発電機の出力は、燃料ガスの保有熱量(qGT・WGT)にほぼ比例するため、ガスタービンの出力GTmwと燃料ガスの保有熱量(qGT・WGT)とは、以下の式に示す関係がある。
【0079】
GTmw=k・qGT・WGT
【0080】
ここで、上記式中、WGTは燃料ガスの重量流量であり、qGTは燃料ガスの単位カロリーであり、kは定数である。
【0081】
燃料ガスカロリー取得部121aは、例えば、上記定数kを予め記憶しておき、ガス流量取得部122aからの燃料ガスの流量WGTと、発電機14の出力計16で測定された出力GTmwを上記式に代入して、燃料ガスの単位カロリーqGTを求める。
【0082】
ガスタービン10の燃焼器12に燃料ガスが流入すると、発電機14の出力計16の出力には、極めて短時間のうちに、この燃料ガスの単位カロリーに応じた出力が反映される。このため、以上のように求められた燃料ガスの単位カロリーqGTを用いて、各調整ガス調節弁31,41の制御を行うと、第一実施形態のように、カロリー計24で測定された燃料ガスの単位カロリーqGTを用いて、各調整ガス調節弁31,41の制御を行うよりも、実際の燃料ガスの単位カロリーの変化に対する制御応答性を高めることができる。
【0083】
なお、上記定数kを予め記憶しておく場合には、上記式で得られた燃料ガスの単位カロリーqGTが、BFG単味の単位カロリーが安定している定常運転中の燃料ガスの測定単位カロリーqGTに近づくよう、上記定数kを更新することが好ましい。
【0084】
また、燃料ガスの単位カロリーqGTを求める際の各種状態量に応じて、上記定数kをその都度求めてもよい。具体的に、ガスタービンの出力GTmwと燃料ガスの保有熱量(qGT・WGT)との関係は、燃料ガスの供給圧力、燃料ガス温度、空気圧縮機13の吸気流量、この吸気温度、系統周波数等の変動によって変動する。そこで、これらの状態量の変動とガスタービンの出力GTmwと燃料ガスの保有熱量(qGT・WGT)との関係の変動と、これらの状態量の変動との関係を予め調べておき、この関係に基づいて、これらの状態量の測定値から定数kを定めるようにしてもよい。
【0085】
また、本実施形態では、前述したように、燃料ガス制御装置100aの弁制限制御部125aの機能が第一実施形態と異なっている。本実施形態の弁制限制御部125aの第二比較器127aは、設定カロリーSVとBFGの単位重量あたりのカロリーとの大小関係(高低関係)を判断する際、BFGの単位重量あたりのカロリーが高くなっている過程では設定カロリーSVとして第一設定カロリーを用いて判断し、BFGの単位重量あたりのカロリーが低くなっている過程では設定カロリーSVとして第一設定カロリーよりも低い値の第二設定カロリーを用いて判断する。すなわち、弁制限制御部125aの第二比較器127aは、BFGの単位重量あたりのカロリーが変化過程に応じて、設定カロリーSVをシフトさせている、言い換えると、設定カロリーSVにヒステリシス性を持たせている。なお、BFGの単位重量あたりのカロリーが高くなっている過程であるか低くなっている過程かは、単味カロリー演算部123から送られてくるBFGの単位重量あたりのカロリーを一時的に記憶しておき、前回記憶したカロリーと新たに送られてきたカロリーとを比較することで判断することができる。
【0086】
このように、設定カロリーSVにヒステリシス性を持たせることにより、設定カロリーSVとBFGの単位重量あたりのカロリーとの大小関係(高低関係)の頻繁な変化を抑えることができ、調整ガス調節弁31,41の全閉制御を安定化させることができる。なお、ここでは、弁制限制御部125aの第二比較器127における閾値としての設定カロリーSVにヒステリシス性を持たせているが、弁制限制御部125aの第一比較器126における閾値としての上限値Sa及び下限値Sbもヒステリシス性を持たせてもよい。
【0087】
また、以上の実施形態では、製鉄所の高炉からのBFGを主燃料ガスとするガスタービン設備を例示しているが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、石炭ガス化複合発電(IGCC(Integrated coal Gasification Combined Cycle)設備で石炭ガスを主燃料ガスとするガスタービン設備に本発明を適用してもよいし、メタンガス等を主燃料ガスとするガスタービン設備に本発明を適用してもよい。また、調整ガスに関しても、COGやN2ガスに限定されるものではなく、その他のガスを用いてもよい。
【符号の説明】
【0088】
10…ガスタービン、20…主燃料ガスライン、24…カロリー計、30…増熱ガスライン(調整ガスライン)、31…増熱ガス調節弁(調整ガス調節弁)、40…減熱ガスライン(調整ガスライン)、41…減熱ガス調節弁(調整ガス調節弁)、100,100a…燃料ガス制御装置、110…主制御部、113…フィードバック制御器、121,121a…燃料ガスカロリー取得部、122,122a…ガス流量取得部、123…単味カロリー演算部、125,125a…弁制限制御部、130…記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンと、該ガスタービンに主燃料ガスを送る主燃料ガスラインと、主燃料ガスライン中にカロリー調整用の調整ガスを送る調整ガスラインと、該調整ガスラインから該主燃料ガスライン中に送られる前記調整ガスの流量を調節する調整ガス調節弁と、を備えているガスタービン設備の燃料ガス制御装置において、
前記調整ガスラインとの接続位置よりも下流側の前記主燃料ライン中のガスである燃料ガスの単位重量あたりのカロリーを取得する燃料ガスカロリー取得部と、
前記調整ガスの流量と前記主燃料ガスの流量と前記燃料ガスの流量とのうち、少なくとも2つガス流量を取得するガス流量取得部と、
前記燃料ガスカロリー取得手段で取得された前記燃料ガスの単位重量あたりのカロリーと該燃料ガスの設定カロリーとの偏差が小さくなるよう、前記調整ガス調節弁に対して弁開度を指示する主制御部と、
前記燃料ガスカロリー取得手段で取得された前記燃料ガスの単位重量あたりのカロリーと、前記調整ガスの単位重量あたりの想定カロリーと、前記ガス流量取得手段で取得された前記少なくとも2つのガス流量とを用いて、前記主燃料ガスの単位重量あたりのカロリーを求める単味カロリー演算部と、
前記燃料ガスの単位重量あたりのカロリーが予め定めた制限値を過ぎたことを条件にして、前記主制御部による前記調整ガス調節弁の指示に対して、該調整ガス調節弁の全閉を優先指示する弁制限制御部と、
を備え、
前記弁制限制御部は、前記条件を満たしても、前記設定カロリーを基準した前記主燃料ガスの単位重量あたりのカロリーの高低が前記制限値と逆である場合には、前記調整ガス調節弁の全閉を指示しない、
ことを特徴とする燃料ガス制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料ガス制御装置において、
前記弁制限制御部は、前記条件を満たし、且つ、前記設定カロリーを基準した前記主燃料ガスの単位重量あたりのカロリーの高低が前記制限値と同じである場合には、前記調整ガス調節弁の全閉を優先指示する、
ことを特徴とする燃料ガス制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料ガス制御装置において、
前記ガスタービン設備は、前記調整ガスラインとして、前記燃料ガスのカロリーを増加させる前記調整ガスの一つである増熱ガスを前記主燃料ガスライン中に送り込む増熱ガスラインを有すると共に、前記調整ガス調節弁として、前記増熱ガスの流量を調節する増熱ガス調節弁を有しており、
前記弁制限制御部は、前記燃料ガスの単位重量あたりのカロリーが前記設定カロリーよりも高いカロリー値の前記制限値を上回り、且つ、前記単味カロリー演算部で求められた前記主燃料ガスの単位重量あたりのカロリーが前記設定カロリーを上回ると、前記増熱ガス調節弁の全閉を優先指示する、
ことを特徴とする燃料ガス制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料ガス制御装置において、
前記ガスタービン設備は、前記調整ガスラインとして、前記燃料ガスのカロリーを減少させる前記調整ガスの一つである減熱ガスを前記主燃料ガスライン中に送り込む減熱ガスラインを有すると共に、前記調整ガス調節弁として、前記減熱ガスの流量を調節する減熱ガス調節弁を有しており、
前記弁制限制御部は、前記燃料ガスの単位重量あたりのカロリーが前記設定カロリーよりも低いカロリー値の前記制限値を下回り、且つ、前記単味カロリー演算部で求められた前記主燃料ガスの単位重量あたりのカロリーが前記設定カロリーを下回ると、前記減熱ガス調節弁の全閉を優先指示する、
ことを特徴とする燃料ガス制御装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料ガス制御装置において、
前記弁制限制御部は、前記設定カロリーを基準した前記主燃料ガスの単位重量あたりのカロリーの高低を判断する際、該主燃料ガスの単位重量あたりのカロリーが高くなっている過程では前記設定カロリーとして第一設定カロリーを用いて判断し、前記主燃料ガスの単位重量あたりのカロリーが低くなっている過程では前記設定カロリーとして該第一設定カロリーよりも低い値の第二設定カロリーを用いて判断する、
ことを特徴とする燃料ガス制御装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の燃料ガス制御装置において、
前記ガス流量取得部は、前記燃料ガスの流量を取得し、
前記燃料ガスカロリー取得部は、前記ガスタービンの出力を取得し、該ガスタービン出力と前記ガス流量取得部が取得した前記燃料ガスの流量とを用いて、前記燃料ガスの単位重量あたりのカロリーを求める、
ことを特徴とする燃料ガス制御装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の燃料ガス制御装置と、
前記ガスタービンと、
前記主燃料ガスラインと、
前記調整ガスラインと、
前記調整ガス調節弁と、
を備えていることを特徴とするガスタービン設備。
【請求項8】
ガスタービンと、該ガスタービンに主燃料ガスを送る主燃料ガスラインと、主燃料ガスライン中にカロリー調整用の調整ガスを送る調整ガスラインと、該調整ガスラインから該主燃料ガスライン中に送られる前記調整ガスの流量を調節する調整ガス調節弁と、を備えているガスタービン設備の燃料ガス制御方法において、
前記調整ガスラインとの接続位置よりも下流側の前記主燃料ライン中のガスである燃料ガスの単位重量あたりのカロリーを取得する燃料ガスカロリー取得工程と、
前記調整ガスの流量と前記主燃料ガスの流量と前記燃料ガスの流量とのうち、少なくとも2つガス流量を取得するガス流量取得工程と、
前記燃料ガスカロリー取得工程で取得された前記燃料ガスの単位重量あたりのカロリーと該燃料ガスの設定カロリーとの偏差が小さくなるよう、前記調整ガス調節弁に対して弁開度を指示する主制御工程と、
前記燃料ガスカロリー取得工程で取得された前記燃料ガスの単位重量あたりのカロリーと、前記調整ガスの単位重量あたりの想定カロリーと、前記ガス流量取得工程で取得された前記少なくとも2つのガス流量とを用いて、前記主燃料ガスの単位重量あたりのカロリーを求める単味カロリー演算工程と、
前記燃料ガスの単位重量あたりのカロリーが予め定めた制限値を過ぎたことを条件にして、前記主制御工程での前記調整ガス調節弁の指示に対して、該調整ガス調節弁の全閉を優先指示する弁制限制御工程と、
を有し、
前記弁制限制御工程では、前記条件を満たしても、前記設定カロリーを基準した前記主燃料ガスの単位重量あたりのカロリーの高低が前記制限値と逆である場合には、前記調整ガス調節弁の全閉を指示しない、
ことを特徴とする燃料ガス制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の燃料ガス制御方法において、
前記弁制限制御工程では、前記条件を満たし、且つ、前記設定カロリーを基準した前記主燃料ガスの単位重量あたりのカロリーの高低が前記制限値と同じである場合には、前記調整ガス調節弁の全閉を優先指示する、
ことを特徴とする燃料ガス制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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