説明

ガスバリヤ性の優れた透明プラスチックフィルム

【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は、ガスバリヤ性の優れた透明プラスチックフィルムに関するものである。更に詳しくは、包装材料等に好適に使用されるガスバリヤ性の優れた、しかも透明なプラスチックフィルムに関するものである。
(従来の技術)
食品、医薬品、化学薬品等の包装材料に用いられる透明なプラスチックフィルムは、包装された内容物の変質を防ぐために、水蒸気や酸素などのガス透過率の小さい材質のものが用いられている。そして、更に高度のガスバリヤ性が必要な包装材料の場合は、フィルムにアルミニウム箔を貼り合せたものや、フィルムの表面にアルミニウムを蒸着させたものが用いられててきた。しかし、このような金属箔等を用いた包装材料は、水蒸気や酸素などに対するガスバリヤ性には優れているものの、不透明であり、内容物を外から見ることができないという欠点があって、包装材料としては適当でない面があった。
一方、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデンを主成分とし、これと共重合可能な他の化合物、例えば塩化ビニル、メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、アクリロニトリルなどの共重合物等の塩化ビニリデン系樹脂よりなるフィルム、及びこれらの塩化ビニリデン系樹脂をポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等よりなるフィルムにコーティングした塩化ビニリデン系樹脂コートフィルムも、ガスバリヤ性を備えた包装材料として用いられている。これらの塩化ビニリデン系樹脂フィルムは、フィルム自体が水蒸気や酸素などに対するガスバリヤ性を備えているが、これらのガスバリヤ性は、充分なものではなく、高度のガスバリヤ性を必要とする包装材料には不適当であった。
更に、ポリビニルアルコールフィルムや、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム等のポリビニルアルコール系フィルムは、酸素バリヤ性に優れているので包装材料として広く用いられている。しかしながら、ポリビニルアルコール系フィルムは水蒸気バリヤ性において劣り、更に高湿度の条件下では酸素バリヤ性も低下するという欠点を有する。そのためにポリビニルアルコール系フィルムを包装材料として用いる場合は、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルムなどの水蒸気バリヤ性を有するフィルムを、ポリビニールアルコール系フィルムに積層した積層フィルムとして通常用いられている。しかし、このような積層フィルムも、高度のガスバリヤ性を必要とする包装材料としては充分にその目的を果たすまでには至らなかった。
従って、このような積層フィルムに、高度のガスバリヤ性を付与させるためには、積層フィルムの厚さを増大させねばならず、フィルムの厚さを増大すると、積層フィルムの透明性や柔軟性が損なわれ、包装材料として好ましい性質が失われるという欠点があった。
また、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミド系フィルムなどにケイ素酸化物やマグネシウム酸化物を蒸着したフィルムも提案されている(特公昭53-12953、特開昭60-27532)が、これらのフィルムも高度のガスバリヤ性が必要とされる用途には不充分である。
特に、ポリアミド系フィルムは、その優れた強度の点から包装材料として広く使用されているが、吸湿し易く、吸湿することによってガスバリヤ性が著しく損なわれる欠点があるため、高度のガスバリヤ性が要求される用途には適用し難いという問題があった。また、ポリアミド系フィルムにケイ素酸化物やマグネシウム酸化物を蒸着したフィルムも、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリプロピレンフィルムにケイ素酸化物やマグネシウム酸化物を蒸着したフィルムよりもガスバリヤ性が劣り、高度のガスバリヤ性が必要とされる用途には適用し難いものであった。
(発明が解決しようとする課題)
本発明は、以上に述べた事情に鑑み、優れた透明性と高度のガスバリヤ性を有し、包装材料として好ましい性能を有するプラスチックフィルムを提供することを目的とする。前述のように、ポリアミド系フィルムは一般に吸湿し易く、吸湿することによってガスバリヤ性が著しく損なわれる欠点がある。本発明者等はポリアミド系フィルムの物性とその応用について鋭意検討した結果、昇温下における寸法変化率及び揮発減量が共に小さい延伸ポリアミド系フィルムを用い、このフィルムにケイ素酸化物の透明な薄膜層を設けると、得られる積層フィルムが優れた透明性を有するとともに、極めて優れたガスバリヤ性を発揮することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
(課題を解決するための手段)
即ち、本発明の要旨とするところは、120℃、5分間の条件における縦方向及び横方向の寸法変化率の各々の絶対値の和が2%以下で、かつ上記条件における揮発減量が2重量%以下であり、少なくとも一軸方向に3倍以上延伸されたポリアミド系フィルムの片方の面に、ケイ素酸化物の透明な薄膜層が形成されてなることを特徴とするガスバリヤ性の優れた透明プラスチックフィルム並びにこの透明プラスチックフィルムに形成されているケイ素酸化物の透明な薄膜層の面に別の透明なプラスチック薄膜が積層形成されてなることを特徴とするガスバリヤ性の優れた透明プラスチックフィルムに存する。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明に係る透明プラスチックフィルムにおいて使用されるポリアミド系フィルムとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6-10、ナイロン4-6等のホモポリマー又はこれ等の混合物よりなるフィルム、更にはこれ等ホモポリマーの基本的性質を変えない範囲のコポリマー等よりなるフィルムが挙げられ、前記ホモポリマー、コポリマーは滑剤、酸化防止剤などの添加剤が添加されたものを包含する。
本発明に使用されるポリアミド系フィルムは、120℃、5分間の条件における縦方向及び横方向の寸法変化率の各々の絶対値の和が2%以下で、かつ上記条件における揮発減量が2重量%以下であり、少なくとも一軸方向に3倍以上延伸されたポリアミド系フィルムを使用することが必要である。
ポリアミド系フィルムとして、120℃、5分間の条件における上記寸法変化率が上記範囲を超えるものを用いると、このフィルムの片面にケイ素酸化物の透明な薄膜層を設けても、ガスバリヤ性があまり向上しない。その詳細な理由は定かではないが、真空蒸着法、スパッタリング法又はイオンプレーティング法等の手段により、ケイ素酸化物の透明な薄膜層を形成させる際にポリアミド系フィルムが加熱され、加熱されたポリアミド系フィルムに収縮または膨張が生起して寸法が変化し、この寸法変化率が2%を超える場合には、ケイ素酸化物の薄膜層にクラック、厚み斑、ピンホール等が発生し、均一かつ緻密な薄膜層とはならないためではないかと推測される。
また、ポリアミド系フィルムとして、上記揮発減量が上記範囲を超えるものを用いると、このフィルムの片面にケイ素酸化物の透明な薄膜層を設けても、ガスバリヤ性があまり向上しない。その詳細な理由も定かではないが、このフィルムにケイ素酸化物の透明な薄膜層を形成させる際にフィルムが加熱され、加熱されたフィルムから揮発するモノマー等の揮発成分が正常な薄膜層の形成を阻害するためではないかと推測される。
更に、ポリアミド系フィルムとして、無延伸のもの又は延伸倍率が上記範囲に満たないものを用いると、このフィルムの片面にケイ素酸化物の透明な薄膜層を設けても、ガスバリヤ性があまり向上しない。延伸倍率が3倍以上のものであれば、一軸延伸のみであっても、また二軸方向に延伸されたものであってもよい。このポリアミド系フィルムは、一段階で延伸したものに限られず、多段階で延伸したものであってもよい。
昇温下における寸法変化率、揮発減量が上記範囲内であり、かつ延伸倍率が上記範囲内であるポリアミド系フィルムを得るには、未延伸のポリアミド系フィルムを所定の倍率に延伸した後、この延伸フィルムをそのガラス転移点以上かつ融点未満の温度条件下において加熱し、いわゆる熱固定操作を施しかつ揮発成分を所定の範囲内に減少させればよい。揮発成分を所定の範囲内に減少させるには、通常、熱固定操作の施されたフィルムを熱固定操作温度以下の温度で、常圧下加熱処理する。熱固定操作と揮発成分の調節は、同時に行なっても、また別々に異なる条件下で行なってもよい。熱固定操作とは別に揮発成分の調節を行なう場合には、揮発成分の調節のための加熱処理を減圧下で行なうこともできる。ポリアミド系フィルムの厚さは5〜400μmの範囲から選ばれ、特に10〜200μmの範囲から選ぶのが好ましい。
本発明に係る透明プラスチックフィルムは、上記ポリアミド系フィルムの片面にケイ素酸化物の透明な薄膜層が形成されている。ポリアミド系フィルムの片面にケイ素酸化物の透明な薄膜層を形成するには、真空蒸着法、スパッタリング法またはイオンプレーティング法の何れかの方法によればよい。例えば、真空蒸着法の場合、蒸着物質として一酸化ケイ素又は二酸化ケイ素を用い、10-3〜10-5Torrの真空下で、電子ビーム、高周波誘導加熱抵抗加熱方式で加熱蒸発させる。また、酸素ガスを供給しながら行なう反応蒸着法も採用でき、この場合は蒸着物質としては金属ケイ素であってもよい。
ケイ素酸化物の透明薄膜層はスパッタリング法またはイオンプレーティング法でも形成させることができ、これらの方法では真空蒸着法に比較して密着性の高い透明薄膜層が形成できる。なお、ケイ素酸化物には、10重量%以下であれば、その中に不純物としてカルシウム、マグネシウムまたはそれらの酸化物等が混入していても、透明プラチックフィルムのガスバリヤ性の極端な低下は認められない。ケイ素酸化物の透明薄膜層の厚さは5〜500nmの範囲で選ぶのが好ましい。透明薄膜層の厚さが5nm未満であると、ガスバリヤ性が不十分であり、また500nmを超えるとフィルムにカールが発生して問題となったり、透明薄膜層自体に亀裂や剥離が生じ易いからである。
本発明の目的は、上記ポリアミド系フィルムの片面に、ケイ素酸化物の透明な薄膜層を設けたフィルムの透明な薄膜層の面に、別の透明なプラスチック薄膜を新たに設けることによって、一層効果的に達成される。別の透明プラスチック薄膜を設けるには、透明プラスチックィルムを積層するか、又は透明プラスチック材料の塗布膜を形成させる方法が採用される。
新たに設ける別の透明なプラスチック薄膜(フィルム又は塗布膜)は、特に限定されないが、ASTM F372に準拠して、温度40℃、相対湿度90%の条件において測定した透湿度が、50g/m2・24hrs.以下の特性をもったものが好ましく、その厚さは5〜400μmの範囲で選ぶことができる。
フィルムを積層して透明なプラスチック薄膜を設ける場合、好適に使用されるプラスチックフィルムとしては、ポリエチレン及びエチレン系共重合体、ポリプロピレン及びプロピレン系共重合体等のオレフィン系樹脂よりなるフィルム、ポリ塩化ビニル及びその共重合体等の塩化ビニル系樹脂よりなるフィルム、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体などの塩化ビニリデン系樹脂よりなるフィルム、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂よりなるフィルム、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂よりなるフィルム、これ等のフィルムにさらに、塩化ビニリデン系樹脂等の他の樹脂をコーティングしたコートフィルムなどが挙げられる。これ等のフィルムは未延伸のもの、あるいは一軸または二軸に延伸したものの何れであってもよい。このような別の透明なプラスチックフィルムをケイ素酸化物の透明な薄膜層に積層する場合には、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤などを用いるドライラミネート法及び押出しラミネート法等の公知の方法が採用される。
他方、別の透明なプラスチック薄膜を塗布によって形成させる場合には塗布剤が使用される。好適な塗布剤としては、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体などの塩化ビニリデン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂等の溶液又は乳濁液が挙げられ、中でも塩化ビニリデン系樹脂のラテックス及び塩化ビニリデン系樹脂をテトラヒドロフランなどの溶剤に溶解した溶液が好ましい。塩化ビニリデン系樹脂をケイ素酸化物の透明な薄膜層に塗布する場合、塩化ビニリデン系樹脂の接着強度を上げるためアンカーコート剤が使用される。好適なアンカーコート剤としては、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、有機チタン系などの接着促進剤及びポリウレタン系、ポリエステル系接着剤などが挙げられる。
本発明に係るガスバリヤ性の優れた透明プラスチックフィルムの厚さは、強度、柔軟性、経済性などの点から10〜500μmの範囲で用途に応じて選ぶことができるが、より好ましくは10〜200μmの厚さである。また、本発明の透明プラスチックフィルムには、そのポリアミド系フィルムの表面または他の表面、更には両面に、その使用形態に応じてフィルムのヒートシール性を向上させる物質を塗布したり積層してもよい。ヒートシール性を向上させる物質としては、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、アイオノマー等が挙げられる。
(発明の効果)
本発明に係る透明プラスチックフィルムは、透明性に優れ、かつ、極めて優れたガスバリヤ性を発揮するものであり、柔軟性があって、強度及び経済性の面でも優れている。また、高湿度の条件下で長期間使用してもガスバリヤ性が損なわれることがない。従って食品、医薬品、化学薬品等の包装材料をはじめとして、高度のガスバリヤ性が要求される広範囲の用途の包装材料に用いることができ、その工業的利用価値は大きい。
(実施例)
以下本発明を実施例に基づいて、また比較例と対照させながら詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の例において、ポリアミド系フィルムの加熱時の寸法変化率及び揮発減量、得られた透明プラスチックフィルムの透湿度、酸素透過度及び透明性は、次の方法によって測定又は判定した。また、ケイ素酸化物の透明な薄膜層の厚さは、水晶式膜厚計によって測定した。
ポリアミド系フィルムの加熱時の寸法変化率及び揮発減量:(1)加熱処理フィルム:300×300mmに切出した2枚のフィルムを夫々温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下でコンディショニングし、80℃で60分、あるいは100℃で60分の加熱処理を行なう。加熱処理したフィルムを温度25℃、相対湿度0%の雰囲気下で48時間放置した後、一方のフィルムは重量を測定し、他方のフィルムには、その表面に一辺の長さが200mmの正方形の標線を、正方形の各辺がフィルムの縦方向及び横方向に平行になるように描いた。次いでこの2枚のフィルムを120℃のオーブン中で5分間加熱したのち取出し、再び温度25℃、相対湿度0%の雰囲気下で48時間放置した。120℃のオーブン中で加熱する前と加熱した後の重量の変化と正方形の寸法の変化を測定し、寸法変化率及び揮発減量を次の計算式により求めた。
(2)加熱処理を行なわないフィルム上記加熱処理フィルムの寸法変化率及び揮発減量の測定方法において、温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下でコンディショニングした後に、80℃で60分、あるいは100℃で60分の加熱処理を行なわない以外は、加熱処理フィルムの場合と全く同様の処理を行なって寸法変化率及び揮発減量を求めた。
縦方向の寸法変化率(%)=I−I′/I×100I:120℃、5分間加熱処理前の縦方向の寸法I′:120℃、5分間加熱処理後の縦方向の寸法横方向の寸法変化率(%)=II−II′/II×100II:120℃、5分間加熱処理前の横方向の寸法II′:120℃、5分間加熱処理後の横方向の寸法揮発減量(%)=W−W′/W×100W:120℃、5分間加熱処理前のフィルム重量W′:120℃、5分間加熱処理後のフィルム重量透湿度:ASTM F372に準拠し、温度40℃、相対湿度90%の条件において、(イ)ポリアミド系フィルムの片面にケイ素酸化物の薄膜層のみを形成させた透明プラスチックフィルムの場合には、ケイ素酸化物の薄膜層を高湿(90RH)側、ポリアミド系フィルムを絶乾状態側に位置させて測定した。また、(ロ)ケイ素酸化物の薄膜層の表面に、ポリアミド系フィルム以外の別のプラスチック薄膜を更に形成させた透明プラスチックフィルムの場合には、このプラスチック薄膜の面を高湿(90%RH)側、他方の面を絶乾状態側に位置させて測定した。
酸素透過度:モダンコントロール社製のOX−TRAN100型酸素透過度測定装置を使用し、温度30℃、相対湿度80%の条件において測定した。
透明性:肉眼により評価し、良好な透明性を示したものを◎で表示した。
実施例1ナイロン6(三菱化成社製 ノバミッド1020CA)を280℃で押出機よりシート状に押出し、冷却ドラムで急冷、固定して無定形フィルムを得た。このフィルムを縦方向に50℃で3倍、横方向に80℃で3倍(延伸倍率3×3倍)延伸し、130℃で2秒間熱固定を行ない、厚さ15μmの二軸延伸されたフィルムを得た。
得られた二軸延伸ナイロン6フィルムについて、100℃のオーブン中で60分間放置して加熱処理した後、前記の寸法変化率及び揮発減量の測定方法に従って、120℃で5分間加熱処理し、縦方向及び横方向の寸法変化率及び揮発減量を測定した結果を表1に示す。
このナイロン6フィルムを真空蒸発装置に供給し、5×10-5Torrの真空下、10kwの電子ビーム加熱方式により、純度99.9%の一酸化ケイ素を加熱蒸発させて、ナイロン6フィルムの片面に、厚さ50nmのケイ素酸化物の透明な薄膜層が形成された透明プラスチックフィルムを得た。得られた透明プラスチックフィルムについて、前記の方法により透湿度及び酸素透過度を測定し、透明性を評価した。その結果を第1に示す。
実施例2実施例1における、二軸延伸ナイロン6フィルムの100℃、60分間の加熱処理の条件を80℃、60分間とした以外は、実施例1と同様の方法で縦方向及び横方向の寸法変化率及び揮発減量を測定し、更に、実施例1と全く同様の方法により一酸化ケイ素の真空蒸着を行なって得られた透明プラスチックフィルムの透湿度及び酸素透過度を測定し、透明性を評価した。その結果を表1に示す。
実施例3実施例1において、ナイロン6フィルムの片面に真空蒸着された透明なケイ素酸化物の薄膜層の厚さを20nmとした以外は、実施例1と同様の処理及び評価を行なった。その結果を表1に示す。
実施例4実施例1において、ナイロン6フィルムの片面に真空蒸着された透明なケイ素酸化物の薄膜層の厚さを100nmとした以外は、実施例1と同様の処理及び評価を行なった。その結果を表1に示す。
実施例5実施例1において使用した、延伸倍率3×3倍で延伸処理した二軸延伸ナイロン6フィルムの代りに、延伸倍率3×5倍で延伸処理した二軸延伸ナイロン6フィルムを使用し、その他は実施例1と同様の処理及び評価を行なった。その結果を表1に示す。
実施例6実施例1において、蒸着物質として使用した一酸化ケイ素(SiO)の代りに、二酸化ケイ素(SiO2)を使用した以外は、実施例1と同様の処理及び評価を行なった。その結果を表1に示す。
比較例1実施例1における、二軸延伸ナイロン6フィルムの100℃、60分間の加熱処理を全く行なわない外は、実施例1と同様の処理及び評価を行なった。その結果を表1に示す。
比較例2実施例1において使用した、延伸倍率3×3倍で延伸処理した二軸延伸ナイロン6フィルムの代りに、延伸倍率2×2倍で延伸した二軸延伸ナイロン6フィルムを使用し、その他は実施例1と同様の処理及び評価を行なった。その結果を表1に示す。


実施例7実施例1で得られた、ナイロン6フィルムの片面にケイ素酸化物の透明な薄膜層が形成されている透明プラスチックフィルムにおいて、そのケイ素酸化物を蒸着した面に、塩化ビニリデン系樹脂のコート層(厚さ3μm)を積層した全体の厚さ23μmのポリプロピレンフィルム(延伸倍率5×5倍、透湿度2.0g/m2・24hrs.)(以下このフィルムを「K-OPP」という)を、塩化ビニリデン系樹脂コート層とケイ素酸化物の蒸着面とが接するように、ウレタン系接着剤(武田薬品社製、タケラックA-606とタケネートA-10との9:1の割合の二成分系接着剤)(厚さ2μm)を介して積層して透明なプラスチックフィルムを得た。この透明なプラスチックフィルムについて、前記方法により透湿度及び酸素透過度を測定し、透明性を肉眼で評価した。測定結果を表2に示す。
実施例8実施例7で得られた透明プラスチックフィルムを用い、そのナイロン6フィルム面に、厚さ40μmの低密度ポリエチレンフィルム(LDPE)を実施例7で使用したウレタン系接着剤を介して積層して透明なプラスチックフィルムを得た。この透明なプラスチックフィルムについて、透湿度、酸素透過度及び透明性を実施例7と同様に評価した。その結果を表2に示す。
実施例9実施例7に記載した透明なプラスチックフィルムにおいて、ケイ素酸化物を蒸着した面に積層したK-OPPに代りに、厚さ25μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)(延伸倍率3×3倍、透湿度20g/m2・24hrs.)を用いた外は実施例7と同様にして、透明なプラスチックフィルムを得た。この透明なプラスチックフィルムについて、透湿度、酸素透過度及び透明性を実施例7と同様に評価した。その結果を表2に示す。
比較例3比較例1で得られた透明なプラスチックフィルムのケイ素酸化物を蒸着した面に、実施例7で使用したK-OPPを積層し、更にその反対側のナイロン6フィルム面に、実施例8で使用したと同種の低密度ポリエチレンフィルム(LDPE)を積層して透明なプラスチックフィルムを得た。この透明なプラスチックフィルムについて、透湿度、酸素透過度及び透明性を実施例7と同様に評価した。その結果を表2に示す。


表1及び表2から、次のことが明かとなる。
(1)ポリアミド系フィルムの片方の面に、ケイ素酸化物の透明な薄膜層が形成された透明プラスチックフィルム(以下「フィルムA」という)において、ポリアミド系フィルムとして、120℃、5分間の条件における縦方向及び横方向の寸法変化率の各々の絶対値の和、上記条件における揮発減量及び延伸倍率が本発明で規定する範囲内のフィルムを用いた場合には、「フィルムA」の透湿度及び酸素透過度は共に小さく、このフィルムは優れたガスバリヤ性を発揮する(実施例1〜6)。
(2)「フィルムA」において、ポリアミド系フィルムとして、本発明で規定するポリアミド系フィルム以外のもの、即ち、120℃、5分における縦方向及び横方向の寸法変化率の各々の絶対値の和、及び上記条件における揮発減量が本発明で規定する範囲より大きいポリアミド系フィルム(比較例1)を用いた場合、あるいは延伸倍率が本発明で規定する延伸倍率より小さいポリアミド系フィルム(比較例2)を用いた場合には、得られるフィルムのガスバリヤ性は実施例1〜6のそれより劣っている。
(3)「フィルムA」のケイ素酸化物の透明な薄膜層の面に別の透明なプラスチック薄膜を形成させたフィルム(以下「フィルムB」という)は、「フィルムA」より更に透湿度及び酸素透過度が低下し、一層優れたガスバリヤ性を発揮する(実施例7〜9)。
(4)「フィルムB」にヒートシール性を向上させる物質を積層しても「フィルムB」の優れたガスバリヤ性は変らない。
(5)本発明に係るフィルムは、優れたガスバリヤ性を発揮するのみならず、透明性も良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】120℃、5分間の条件における縦方向及び横方向の寸法変化率の各々の絶対値の和が2%以下で、かつ上記条件における揮発減量が2重量%以下であり、少なくとも一軸方向に3倍以上延伸されたポリアミド系フィルムの片方の面に、ケイ素酸化物の透明な薄膜層が形成されてなることを特徴とするガスバリヤ性の優れた透明プラスチックフィルム。
【請求項2】ポリアミド系フィルムの片方の面に形成されたケイ素酸化物の透明な薄膜層の面に、別の透明なプラスチック薄膜が積層形成されてなることを特徴とする請求項(1)記載のガスバリヤ性の優れた透明プラスチックフィルム。