説明

ガスホース用の引張式ガス放出防止具

【課題】引張式ガス放出防止具を誤って復帰させても、ホース継手の先端部の溝内に装着されていた弾性部材が溝から跳ね出されて外れるのを防止する。
【解決手段】ガス導入口12を先端部に有する中空筒状の防止具本体11の基端部にホース継手21を摺動可能に嵌入し、ホース継手に穿設されたガス流路25に連通させて連通孔26を穿設し、連通孔の位置を防止具本体11の小径部15と拡径部16の間で移動させるようにしてガス放出防止の弁部を形成し、連通孔よりも先端側のホース継手の先端部外周面に形成されたリング状の溝27に、断面が溝幅方向よりも溝深さ方向の寸法が大きな長円形に形成されたOリングパッキン28を装着し、溝に対するOリングパッキン28の掛かり代を大きくすることにより、引張式ガス放出防止具3を誤って復帰させても、吹き出しガスによってホース継手の先端部のOリングパッキン28が溝から跳ね出されて外れるのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスホース用の引張式ガス放出防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
引張式ガス放出防止具は、例えば、LPガスなどの液化ガスが充填されたガス容器などのガス供給源から、ガスホースを介してガスの使用場所へ高圧ガスを供給する場合に、ガス容器の転倒や家屋の倒壊などの何らかの原因でガスホースに一定以上の張力が作用したことを検知したときに、自動的に作動してガスの放出を阻止するものである、
このような引張式ガス放出防止具として、従来、特許文献1、2に記載されているものが知られている。これによれば、ガス供給源に連通されるガス導入口を先端部に有する中空筒状の防止具本体と、その防止具本体の基端部の筒孔に摺動可能に嵌入された先端部とガスホースが装着される基端部とを有するホース継手を備え、防止具本体の基端部とホース継手の先端部の協働作用により、ガスの供給及び遮断を制御するように形成されている。すなわち、防止具本体の筒孔は、基端部に形成され前記ホース継手が嵌入される小径部と、この小径部に連なって先端部側に形成された拡径部とを有して形成されている。そして、ホース継手は、基端部から先端部の先端近傍まで穿設されたガス流路と、そのガス流路に連通させて防止具本体の基端部の孔壁に向けて穿設された連通孔とを有して形成されている。また、連通孔は、ホース継手の最大押込み位置で、防止具本体の筒孔の拡径部に位置し、最大引出し位置で小径部に位置するように形成されている。さらに、ホース継手には、連通孔よりも先端側の先端部の外周面にリング状の溝が形成され、その溝に溝深さよりも大きい断面径を有するリング状の弾性部材を装着して形成されている。
【0003】
このような構成によれば、ホース継手を最大押込み位置まで押込むと、連通孔が拡径部に位置するから、ホース継手のガス流路が防止具本体の拡径部を介してガス導入口に連通し、ガス容器からガスホースにガスが供給される。また、ガスホースに一定以上の張力が作用してホース継手が防止具本体から引出されると、ホース継手の最大引出し位置に至る前に連通孔が小径部に位置されるから、ホース継手のガス流路と防止具本体の拡径部との連通が遮断され、自動的にガスの放出が阻止される。このとき、ホース継手の先端部のリング状溝に装着された弾性部材が、小径部に押圧されて弾性変形し、これによってガス放出防止の気密性が確保されるとともに、ホース継手の引出し位置が規制される。
【0004】
【特許文献1】特許第3050508号
【特許文献2】特許第3088428号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載の構造を有する引張式ガス放出防止具の場合、ガス放出防止動作を復帰させるときの操作を誤ると、ホース継手の先端部に装着された弾性部材が溝から跳び出して、引張式ガス放出防止具が正常に機能しなくなるおそれがある。
【0006】
例えば、図4に示すように、ガス容器1の容器弁2に引張式ガス放出防止具3を介してガスホース4が取り付けられている場合に、ガスホース4に図示矢印5の張力が一定以上作用すると、引張式ガス放出防止具3が作動してガスの放出が阻止される。そして、安全等を確認してガスの供給を復旧する場合は、ガスホース4を図示矢印6の方向に押込んで、引張式ガス放出防止具3の作動を復帰する。
【0007】
ところが、図5に示すように、引張式ガス放出防止具3が作動してガスの放出が阻止された作動状態のまま、ガス容器1の容器弁2から引張式ガス放出防止具3を取り外す場合がある。この状態で、うっかり、ガスホース4を図示矢印6の方向に押込んで復帰操作をすると、ガスホース4及び使用場所までのガス配管内に蓄積されていたガスが、ホース継手の連通孔と放出防止具に拡径部を介してガス導入口から大気中に吹き出すことになる。この吹き出しガスによって、ホース継手の先端部に装着されていた弾性部材が溝から跳ね出されて外れてしまうおそれがある。この弾性部材が溝から外れてしまうと、次回の作動時にガス放出防止の気密性が損なわれるなど、引張式ガス放出防止具3が正常に機能しなくなるおそれがある。
【0008】
本発明、引張式ガス放出防止具を誤って復帰させても、ホース継手の先端部の溝内に装着されていた弾性部材が溝から跳ね出されて外れるのを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、ガス供給源に連通されるガス導入口を先端部に有する中空筒状の防止具本体と、該防止具本体の基端部の筒孔に摺動可能に嵌入された先端部とガスホースが装着される基端部とを有するホース継手と、前記防止具本体に対する前記ホース継手の最大押込み位置と最大引出し位置を規制する規制手段とを備え、前記防止具本体の筒孔は、基端部に形成され前記ホース継手が嵌入される小径部と、該小径部に連なって先端部側に形成された拡径部とを有し、前記ホース継手は、基端部から先端部の先端近傍まで穿設されたガス流路と、該ガス流路に連通させて前記防止具本体の基端部の孔壁に向けて穿設され、前記最大押込み位置で前記拡径部に位置し、前記最大引出し位置で前記小径部に位置する形成された連通孔と、該連通孔よりも先端側の前記先端部の外周面に形成されたリング状の溝とを備え、前記溝の深さよりも大きい断面径を有するリング状の弾性部材を前記溝に装着してなるガスホース用の引張式ガス放出防止具を対象とする。
【0010】
特に、本発明の前記弾性部材の断面は、前記溝の幅方向よりも深さ方向の寸法が大きな長円形に形成されてなることを特徴とする。これにより、溝に対する弾性部材の掛かり代を大きくできる。そのため、ガス供給源から引張式ガス放出防止具を取り外した状態で、うっかり、ガスホースを防止具本体側に押込んで復帰操作をして、ガスホース等のガス配管内に蓄積されていたガスがホース継手の連通孔を通って防止具本体から大気中に吹き出しても、その吹き出しガスによって弾性部材が溝から跳ね出されて外れるのを防止できる。
【0011】
この場合において、弾性部材の断面は、対向する2つの円弧を直線で結んだ形状にすることができる。これによれば、弾性部材が溝の内壁に密着して気密性を向上させることができ、かつ、溝から突出する弾性部材の頂部が円弧であるから、装着作業及び弁部の作動を円滑にできる。さらに、2つの円弧を結んだ直線の一方の直線部の中央部に凹部が形成され、かつ、弾性部材は、凹部を有する直線部をホース継手の先端側に配置して溝に装着することが好ましい。これによれば、作動時に弾性部材が加圧圧縮されたときの体積逃げ部が、凹部により確保されるから、溝幅をさらに小さくできるため、ガス圧による跳ね出し防止効果が増大する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、引張式ガス放出防止具を誤って復帰させても、ホース継手の先端部の溝内に装着されていた弾性部材が溝から跳ね出されて外れるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態の引張式ガス放出防止具を、図1、図2を参照して説明する。図1は、本実施形態の引張式ガス放出防止具3の横断面図を示している。図示のように、防止具本体11は中空筒状に形成され、先端部13にガス供給源に連通されるガス導入口12が形成されている。防止具本体11の筒孔は、基端部14に形成された小径部15と、小径部15に連なって先端部側に形成された拡径部16とを有して形成されている。ガス導入口12は拡径部16に連通されている。防止具本体11には回転自由に締結具17が被冠され、締結具17のねじ18を図示していないガス供給源の例えば弁にねじ込んで連結可能になっている。また、ガス導入口12の周囲の先端面にリング状の溝が設けられ、その溝内に弾性部材からなるOリングパッキン19が装着され、これによって連結される弁等との気密を確保するようになっている。
【0014】
ホース継手21は、防止具本体11の筒孔内に嵌入される先端部22と、高圧のガスホース4が装着される基端部であるホース継手部24を有して形成されている。先端部22は、防止具本体11の小径部15に摺動可能に嵌入される径に形成されている。また、ホース継手21には、ホース継手部24から先端部22の先端近傍まで穿設されたガス流路25と、このガス流路25に連通させて防止具本体11の基端部14の孔壁に向けて穿設された連通孔26が設けられている。ホース継手21の連通孔26よりも先端側の先端部22の外周面にリング状の溝27が形成され、その溝27に本発明の特徴に係る弾性部材からなるOリングパッキン28が装着されている。このように形成される小径部15から拡径部16への遷移部、小径部15に嵌入されたホース継手21の先端部に形成された連通孔26、及びOリングパッキン28によってガス放出防止の弁部が形成されている。また、ガスホース4は、外れないように締結金具29によってしっかりホース継手部24に固定されている。
【0015】
防止具本体11とホース継手21は、ホース継手21の最大押込み位置と最大引出し位置を規制する規制手段を構成する円筒のカラー部材31によって、一体の範囲で摺動自由に連結されている。すなわち、カラー部材31は、防止具本体11の基端部14の外周面にねじ32によって連結可能に形成され、また、カラー部材31の内周面に形成された段部33に、ホース継手21の外周面に形成された突部34が当接可能に形成されている。したがって、ホース継手21は、突部34が防止具本体11の基端部14の端に当接する位置で最大押込み位置が規制され、逆に、突部34がカラー部材31の段部33に当接する位置で最大引出し位置が規制される。なお、ここで、最大引出し位置は、単に、ホース継手21の抜け止めとして機能するのみである。
【0016】
また、ホース継手21の連通孔26の基端部側の外周面にリング状の溝35が設けられ、溝35に図示していないOリングパッキンが装着され、これによって防止具本体11の小径部15とホース継手21の摺動面との気密が図られている。同様に、カラー部材31の内周面にリング状の溝36が設けられ、溝36に図示していないOリングパッキンが装着され、これによりカラー部材31の内周面とホース継手21の摺動面との気密が図られている。
【0017】
次に、本発明の特徴に係るOリングパッキン28の構成について、図2を参照して説明する。図2(a)はホース継手21の弁部の拡大図であり、図2(b)はOリングパッキン28の断面図である。それらの図に示すように、本実施形態のOリングパッキン28の断面は、2つの円弧部40を直線で結んだ長円形に形成されている。また、溝27は、幅方向の寸法Bよりも、深さ方向の寸法Aが大きく形成され、溝27に装着されたOリングパッキン28の頂部が溝27から少し突出するように、Oリングパッキン28の断面が長円形に形成されている。
【0018】
特に、本実施形態の場合は、図示のように、2つの円弧部40を結ぶ直線部41、42の一方の直線部41の中央部に凹部43が形成されている。また、凹部43が形成された直線部41側の面はホース継手21の先端側の溝面に接して、直線部42側の面はホース継手21の基端側の溝面に接して装着されている。
【0019】
このように構成される本実施形態の引張式ガス放出防止具の動作について、次に説明する。図1の状態は、ガス放出防止機能が作動した状態を示している。つまり、ガスホース4に一定以上の引張力が作用して、ガスホース4が防止具本体11から引出された状態である。この状態では、ホース継手21の先端部の連通孔26が防止具本体11の小径部15に位置されるから、ホース継手21のガス流路25と防止具本体11のガス導入口12との連通が遮断される。また、Oリングパッキン28の頂部(円弧部40)が、拡径部16から小径部15への遷移部の内周面に形成された傾斜面に当接して、通常作動時の引出し位置が規制される。これにより、ガス導入口12に連通されたガス供給源からのガス供給が停止される。
【0020】
一方、ガスホース4を防止具本体11側に押込むと、ホース継手21の先端部の連通孔26が防止具本体11の拡径部16に移動し、ホース継手21のガス流路25とガス導入口12とが連通されて、ガス供給源からの高圧ガスがガスホース4を介して使用場所に供給される。
【0021】
ここで、本発明の特徴に係るOリングパッキン28の働きについて説明する。引張式ガス放出防止具3が作動したとき、連通孔26が小径部15に位置し、Oリングパッキン28が拡径部16と小径部15の遷移部に押圧されて、ガスの放出が阻止される。このとき、使用場所側でガスが使用されていないと、ガスホース4内に高圧ガスが封じ込められた状態になる。
【0022】
ところで、図5を参照して説明したように、引張式ガス放出防止具3が作動した状態のまま、容器弁2から引張式ガス放出防止具3を取り外すことがある。しかし、ガスホース4を図示矢印6の方向に押込んで引張式ガス放出防止具3が作動した状態のまま復帰操作をすると、ガスホース4内に蓄積されていた高圧のガスが、連通孔26から拡径部16を介してガス導入口12から大気中に吹き出すことになる。このとき連通孔26から吹き出すガスによって、Oリングパッキン28に溝27から跳ね出させる力が作用する。
【0023】
この跳ね出し力によって、図3に示す従来例のガス放出防止弁部によれば、溝45に装着されるOリングパッキン46の断面が、円形に形成されているから、溝45に対する掛かり代が小さいので、吹き出すガスによる跳ね出し力によってOリングパッキン46が溝45から跳ね出されて外れてしまうおそれがある。
【0024】
これに対し、本実施形態によれば、Oリングパッキン28の断面が、溝27の幅方向よりも深さ方向の寸法が大きな長円形に形成され、溝27に対する掛かり代が大きいため、吹き出すガスによる跳ね出し力が作用しても、溝27から外れることを防止できる。その結果、引張式ガス放出防止具3の機能を正常に維持させることができる。
【0025】
また、本実施形態によれば、Oリングパッキン28の断面が、対向する2つの円弧を直線で結んだ形状になっているから、Oリングパッキン28と溝27との接触面が大きくでき、これによって跳ね出し力に対する抗力を大きくでき、かつ気密性を向上させることができる。また、溝27から突出するOリングパッキン28の頂部が円弧であるから、装着作業及び弁部の作動を円滑にできる。
【0026】
さらに、本実施形態によれば、Oリングパッキン28の2つの円弧部40を結ぶ直線部41、42の一方の直線部41の中央部に凹部43を形成し、その直線部41側の面をホース継手21の先端側の溝面に接して、直線部42側の面はホース継手21の基端側の溝面に接して装着しているから、作動時にOリングパッキン28が加圧圧縮されたときの体積逃げ部が、凹部43により確保される。その結果、溝幅をさらに小さくできるため、ガス圧による跳ね出し防止効果を増大させることができる。
【0027】
なお、上記実施形態では、Oリングパッキン28の断面を、対向する2つの円弧を直線で結んだ形状にする例について説明したが、本発明はこれに限らず、楕円形の断面とすることができ、同様の効果を実現できる。また、凹部43は、直線部41、42の両方に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態の引張式ガス放出防止具の横断面図を示す。
【図2】(a)は図1実施形態の弁部の拡大断面図、(b)はOリングパッキンの断面図である。
【図3】本発明と対比のために示す従来の弁部の拡大断面図である。
【図4】ガスホースがガス容器の容器弁に取り付けられている状態で、引張式ガス放出防止具の作動を復帰させる例を説明する図である。
【図5】ガス容器の容器弁から引張式ガス放出防止具を作動状態のまま取り外した後、引張式ガス放出防止具の作動を復帰させる場合の問題を説明する図である。
【符号の説明】
【0029】
11 防止具本体
12 ガス導入口
13 先端部
14 基端部
15 小径部
16 拡径部
21 ホース継手
22 先端部
24 ホース継手部
25 ガス流路
26 連通孔
27 溝
28 Oリングパッキン
31 カラー部材
33 段部
34 突部
40 円弧部
41、42 直線部
43 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給源に連通されるガス導入口を先端部に有する中空筒状の防止具本体と、該防止具本体の基端部の筒孔に摺動可能に嵌入された先端部とガスホースが装着される基端部とを有するホース継手と、前記防止具本体に対する前記ホース継手の最大押込み位置と最大引出し位置を規制する規制手段とを備え、
前記防止具本体の筒孔は、基端部に形成され前記ホース継手が嵌入される小径部と、該小径部に連なって先端部側に形成された拡径部とを有し、
前記ホース継手は、基端部から先端部の先端近傍まで穿設されたガス流路と、該ガス流路に連通させて前記防止具本体の基端部の孔壁に向けて穿設され、前記最大押込み位置で前記拡径部に位置し、前記最大引出し位置で前記小径部に位置する形成された連通孔と、該連通孔よりも先端側の前記先端部の外周面に形成されたリング状の溝とを備え、
前記溝の深さよりも大きい断面径を有するリング状の弾性部材を前記溝に装着してなるガスホース用の引張式ガス放出防止具において、
前記弾性部材の断面は、前記溝の幅方向よりも深さ方向の寸法が大きな長円形に形成されてなることを特徴とするガスホース用の引張式ガス放出防止具。
【請求項2】
請求項1において、
前記弾性部材の断面は、対向する2つの円弧を直線で結んだ形状であることを特徴とするガスホース用の引張式ガス放出防止具。
【請求項3】
請求項2において、
前記弾性部材の断面は、前記2つの円弧を結んだ前記直線の一方の直線部の中央部に凹部が形成され、
前記弾性部材は、前記凹部を有する直線部を前記ホース継手の先端側に配置して前記溝に装着されてなることを特徴とするガスホース用の引張式ガス放出防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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