説明

ガス化リアクタにおける配水システム

スラグ形成噴流プロセスを行うためのガス化リアクタにおける配水システムにおいて、断面が凹状に湾曲した軸対称の偏向面と組み合わされた同心状の環状分配器が、配水システムとして設けられて水カーテンを形成し、環状分配器は、少なくとも1つの水フィードを有し、環状分配器は、ジェット状の水の出口に適した開口を有し、開口からのジェットの方向は、凹状に湾曲した偏向面の内側に向いており、開口からのジェットの方向における凹状に湾曲した面の平面配向は、ジェットの方向および表面の正接平面が、ジェットが衝突する点において0〜45度の範囲の鋭角で互いに位置合わせされることを特徴としており、偏向面は、その断面において、60度を超える偏向角度を有するように遠く湾曲している。適用される手順は、加圧された状態の水が環状分配器に送られ、水は、開口を通って環状分配器を出るまで環状分配器を速やかに通過し、開口を出る際に1つの水ジェットが各々形成され、前記水ジェットは、偏向面に当たり、水ジェットの各々は、前記偏向面に沿って滑りながら広がり、隣接する開口からの水ジェットと組み合わされて閉じた水膜を形成し、前記閉じた水膜は偏向面から下方向に出た後にリアクタの内側に送られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化反応中に生成される合成ガスが下方に流れるスラグ形成噴流プロセスを行うガス化リアクタのための配水システムおよび配水方法に関する。この種の方法では、例えばナトリウム、カリウム、鉛、および亜鉛などの物質を凝縮させるかまたはそれらの昇華を妨げるとともに、溶融した粘着性の灰粒子を含有する、1200〜2000℃の温度を有する高温ガスが生成される。これらの粒子は、冷却された壁において堆積物を形成し、動作上の干渉を引き起こし得る。
【背景技術】
【0002】
これらの事象を防止するため、高温ガスは、しばしば水と混合することにより冷却、すなわち急冷され、それにより灰粒子が速やかに固化する。しかし、細かい煙道灰粒子は、セメントに似た特長を有し、水と混合されるとコンクリートのような堆積物を形成し得る。このようなことを防止するため、急冷チャンバのすべての壁は、高温かつ乾燥した状態または水膜で覆われた状態のいずれかに保ち続けるべきである。
【0003】
このため、従来技術、例えば国際公開第2009/036985A1号パンフレットに記載の従来技術によれば、この種のガス化リアクタは、リアクタにおける上部に編成された第1のリアクタチャンバであって、かかるチャンバの上部エリアには、供給材料用のフィーダ装置が編成され、かかるチャンバの側壁には、膜壁として内部冷却機能を有するチューブまたはスラグの表面を固化させることなく液体スラグが自由に流れることが可能なチューブコイルが設けられ、かかるチャンバの下側には、液滴が垂れる縁を有する開口が設けられている、第1のリアクタチャンバを含む。さらにその上、前記ガス化リアクタは、開口に連続して底部に編成された第2のチャンバであって、合成ガスが放射冷却により乾燥し冷却された状態に保たれるとともに漏斗状の水カーテンを発生させるための配水システムが設けられている、第2のチャンバと、第2のチャンバに連続して底部に編成された第3のチャンバであって、リアクタからの合成ガス用の排出装置が第3のチャンバの底部または側部に設けられている、第3のチャンバを備える。
【0004】
生成された合成ガスの逆流を防止するため、水カーテンは、周縁エリアにおいていずれの間隙または空隙も有するべきではない。しかし、水カーテンは、スラグの出口を詰まらせるほどに冷却すべきではない。その上、水カーテンは、円周に亘り均一に広がり、可能な限り細かく薄いべきである。さらにその上、急冷対象の生成されたガスジェットは、水カーテンの解体後に高温ガスを断面の中心エリアにおいて可能な限り効率的に急冷することが可能であるように、中心に配置すべきである。
【0005】
また、ガス化時に灰を冷却するために利用されるスラグ水は鋭利な粒子を部分的に含有することを考慮すると、水カーテンを発生させるために再循環された水を利用することが可能であれば非常に有益であろう。深刻な侵食を回避するため、パイプライン、分配器、およびジェットノズルにおいて例えば2m/秒の低い流速を維持することが必要である一方、低すぎる速度、典型的には0.5m/秒未満の速度では堆積物が形成されてしまう。
【0006】
かかる水カーテンを発生させる設備の運転安全性に関して要求される要件により、大きな問題が提示される。これは、特に環状分配器に関わるが、国際公開第2009/036985A1号パンフレットに記載のランプにも関わるものである。再循環された水が利用されている限り、水がそこからラムに均一に分配される水出口ポートを清浄な状態に永続的に保つという問題が、これらのポートがスロット、穴、またはジェットノズルのいずれであろうと依然存在し、ならびにランプをクリアで堆積物のない状態に永続的に保つという問題が存在する。ここで、これらのプラントユニットは、アクセスしにくいことを考慮すべきである。
【0007】
液体をいくつかのジェットノズルに供給するため、ほとんどの場合、一定の断面を有する通常のパイプラインまたは環状分配器が適用される。米国特許第4,474,584号明細書には、多くのジェットノズルを備えるいくつかの水分配器を備える水急冷システムが記載されている。例示的説明では、一定の断面積を有する平方断面または丸い断面のいずれかを有する周囲に延在するチャネルが示されている。
【0008】
この種の分配器では、各ジェットノズル後に速度が低下することにより静圧が増加し、ジェットノズルを通る液体のスループットが変化する。しかし、従来の分配器では、これにより配水が相当に不均一になる。円周に亘りほぼ良好にバランスの取れた配水は、ジェットノズルにおける圧力損失が分配器における水の動圧よりも際立って高くなるように、ジェットノズルにおける速度を増加させることにより達成することが可能である。しかし、速度の増加に伴い、噴流ガス化リアクタに適用されたときの壁材料の侵食が許容範囲を越えて増加する。
【0009】
このため、本発明の目的は、上で概説した不利益を有さず可能な限り経済的に設置し動作させることが可能な、スラグ形成噴流プロセスを行うガス化リアクタのための改良された配水システムおよび改良された配水方法を提供することである。
【0010】
本発明は、この課題を、ガス化反応中に生成される合成ガスが下方に流れるスラグ形成噴流プロセスを行うガス化リアクタにおける配水システムにおいて、前記ガス化リアクタは:
リアクタにおける上部に編成された第1のリアクタチャンバであって、かかるチャンバの上部エリアには、供給材料用のフィーダ装置が編成され、かかるチャンバの側壁には、膜壁として内部冷却機能を有するチューブまたはスラグの表面を固化させることなく液体スラグが自由に流れることが可能なチューブコイルが設けられ、かかるチャンバの下側には、液滴が垂れる縁を有する開口が設けられている、第1のリアクタチャンバと;
前記開口に連続して底部に配置された第2のチャンバであって、合成ガスが放射冷却により乾燥し冷却された状態に保たれるとともに漏斗状の水カーテンを発生させる配水システムが設けられている、第2のチャンバと;
第2のチャンバに連続して配置された第3のチャンバであって、リアクタからの合成ガス用の排出装置が第3のチャンバの底部または側部に設置されている、第3のチャンバと;を備え、
断面が凹状に屈曲した軸対称の偏向面と組み合わされた同心状の環状分配器が設けられ、配水システムとして働いて水カーテンを形成し;
前記環状分配器は、少なくとも1つの水流入口を有し;
前記環状分配器は、ジェット状の水の流出口に適した設計および構成のアパーチャを有し;
開口からのジェットの方向は、凹状に屈曲した偏向面の内側に向いており;
アパーチャからのジェットの方向における凹状面の平面配向は、ジェットの方向および断面エリアの正接平面が、前記ジェットが衝突する点において0〜45度の範囲の鋭角で互いに位置合わせされており;
偏向面は、その断面において、60度を超える偏向角度を有するような曲率を有する;配水システムにより解決するものである。
【0011】
配水システムのさらなる構成において、開口は、上方に向いたジェットノズルとして設計および構成されている。また、開口は、リアクタの周囲の方向において正接方向の傾斜を有するか、またはリアクタの中心軸心に向かう傾斜を有してもよい。ジェットノズルの実装によっては、環状分配器における流れの脈動を利用して、開口から偏向面への垂直方向だけでなく側方向成分を有する開口からの水ジェットを案内することも可能である。
【0012】
配水システムのさらなる構成において、環状分配器は、環状分配器のフィードからこれらの開口の各々に向けてテーパ化する異なる流れ断面を有するように設計および構築されている。可能であれば、概ね2m/秒の流速が維持されることが保証されるように注意すべきである。スラグ水または粒子を含む他のフィードバック水が水カーテンに利用される限り、いずれの場合における流速も、何らの粒子も堆積し沈殿しないように、0.5m/秒を超えなければならない。侵食のリスクを考慮するため、3m/秒の流速を超えるべきではない。発生する水カーテンの厚さは、1〜10mmの範囲であるべきである。環状分配器の流れ断面は、専門家により適正に設計される。
【0013】
配水システムのさらなる構成において、偏向面の曲率半径は、0.3メートル未満である。この種の偏向面は、例えば、長手方向側において開いた屈曲チューブから経済的に得ることが可能である。メンテナンスを容易にするため、本発明の凹状偏向面は、セクション方向に縫合されたセクションから、または互いにスライドされるセクションから、問題なく構成されることが可能である。
【0014】
配水システムのさらなる構成において、偏向面の湾曲部に連続して真直なセクションが編成されている。これは、構成上、水カーテンの出口のためのセグメントが取り出されずに上方に屈曲され、長手方向側において切断された後に真直化されることにより、凹状偏向面について野球帽状の断面が得られる場合に達成することが可能である。
【0015】
急冷チャンバの冷却された壁と同様に、本発明の環状分配器は、その外側において、粒子を含むガスからの固化物質の堆積物が成長する傾向がある。このため、かかる冷却された壁には、通常、水膜が設けられる。また、配水システムは、急冷チャンバの壁および環状分配器自体の外壁のために要求される水膜の発生が等しく実現されるように、環状分配器をさらに発展させることにより修正することも可能である。そのため、さらなる側方開口と側方開口に対向する偏向面とが設けられ、環状分配器の外壁、さらには急冷チャンバの壁に付着するとともに流れ落ちる水膜を発生させる。
【0016】
また、本発明は、この課題を、ガス化反応中に生成される合成ガスが下方に流れるとともに周縁において閉じた漏斗状の水カーテンを発生させるスラグ形成噴流プロセスを行う際に、ガス化リアクタにおいて配水するための方法において:
加圧された状態の水が環状分配器に送られ、水は、アパーチャを通って前記環状分配器を出るまで前記環状分配器を速やかに流れ;
水がアパーチャを出る際に偏向面に当たる水ジェットが形成され;
水ジェットの各々は、偏向面に沿って滑りながら広がり、隣接する開口の水ジェットと組み合わされて閉じた水膜を形成し;
この閉じた水膜は、偏向面を出た後に下方にリアクタの内側に送られる;方法により解決するものである。
【0017】
水カーテンのジオメトリを構成する際、担当の専門家は、関連する目的のためにどのような幾何学的形状を選択するかを評価すべきである。水カーテンが主に中心エリアにおいて解体されるように中心チャネルの中心において収束することが意図される場合、水は、偏向面に対して渦巻くことなく垂直に方向付けられる。しかし、落下する水カーテンが当初は中心に集まるが、次いでそのさらなる落下中に再び広がることが意図される場合、また、水カーテンの下部セクションにおいてリアクタの周縁エリアを湿らせるために液滴のより均一な放射状分配も所望される場合は、水カーテンにリアクタの軸心を中心とする適切な回転を与える。このため、本発明の方法の実施形態において、水ジェットは、閉じた水膜がリアクタの軸心を中心に回転するように、リアクタの円周方向において偏向面に対して傾斜した形態で方向付けられる。
【0018】
本発明の方法のさらなる実施形態において、側方開口とこれらの開口に対向する偏向面とを介して少なくとも別の水膜が発生し、前記水膜は、環状分配器の冷却された壁または生成されたガスに露出した急冷チャンバに付着する。
【0019】
本発明の方法の別の実施形態において、用いられる水は、ガス化リアクタのスラグ槽からの固体を含む水、またはガス化リアクタのスラグ槽の下流に編成された水循環部からの水である。水の使用前には、例えば液体サイクロンにおける、大きなスラグ粒子の粗い分離のみが要求される。
【0020】
6つの図面に基づいて本発明の例示的形態を以下で概説する。図面は、以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、平鋼を均質化させる間隙および湾曲エリアを有する水カーテンを発生させる配水システムの断面図である。
【図2】図2は、ガス化リアクタにおける配水システムの状況の上面図である。
【図3】図3は、偏向面を有する環状分配器からの斜視図である。
【図4】図4は、偏向面11の有益なジオメトリを示す。
【図5】図5は、開口10としてのジェットノズルと別の水膜を発生させる装置とを有する環状分配器3の実施形態を示す。
【図6】図6は、本発明の配水システムの別の実施形態を示す。
【図7】図7は、本発明の配水システムの別の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、平鋼を均質化させる湾曲エリアにより拡張された、従来技術による周縁において閉じられるとともに間隙を有する自由落下する漏斗状の水カーテンを発生させるための装置の断面を示す。装置は、例えばエバポレータチューブを備える冷却された壁2の後方に配置されている。ガス化装置から流れ出る高温ガス1は、1000〜2000℃の範囲の温度を有し、飛散灰と溶融スラグ粒子とを含む。通常は円筒状のチャネル1の中心エリアにおいて粗スラグも得られ、かかるチャネル1の直径は、0.6〜3mの範囲である。
【0023】
急冷水が1つまたはいくつかの箇所において分配器3の周囲チャネル4に供給され、かかる分配器3は、矩形状の上部と面取りされた底部とを備える。チャネルは、円周に亘り一定の幅を有するが、チャネルの高さは、内部における一定の流速が全円周に行き渡るように変化している。高さH1として示す断面の一部のみが変化する一方、断面の残りの部分は、入口エリアにおける外乱から生じる影響と数学的に理想的な形態からの構造の逸脱から生じる影響とをオフセットするためにフライホイールの機能と同様の機能を有する。
【0024】
水は、出口間隙5を通って分配器から出て、続いて凹状エリアとして設計および構成された偏向部6上で偏向される。出口間隙5の断面の狭いセクションが詰まると、流れ出る水ジェットは空隙を有する。しかし、湾曲エリアにおいて、水は凹状エリアに対してとても力強く押圧されるため、これらの空隙は閉じられる。ランプとして設計および構築された偏向部6の水膜からは、当初、閉じた水カーテン7が発生し、かかる水カーテン7は、自由落下し、高温ガス1と混合した場合のみ分解される。閉じた水カーテンにより、水滴を含有する冷却されたガスのガス化装置の出口エリアへの上方への流れが防止され、それにより、スラグ排出における干渉が防止される。
【0025】
このように水カーテンを発生させることの不利点は、急冷水が1〜10mm幅の間隙を徐々に詰まらせ得る固形物質を含有し、それにより、少なくとも水カーテンがほとんどの場合意図されるようにほんの数ミリメートルの厚さを有するのであれば、発生した水カーテンが曲率に関わらず空隙を有することである。運転安全性のため、これは、実際上、水カーテンがプロセス工学上要求されるよりも大きい厚さで構成される必要があり、または、用いられる水が、真水の使用までは要求されなくても、その使用前に相当な費用をかけて粒子から取り除かれる必要があることを意味する。しかし、この不利点は、1つの狭い周囲間隙の代わりに円周上に分散させたいくつかのより幅広い開口を提供し、流れ出るジェットが遠心力により凹状偏向部6に平坦に押圧されて閉じた膜を形成することにより回避することが可能である。
【0026】
図2は、圧力容器8と、水を環状分配器3に供給するためのフィーダ主管9と、高温ガスを有する中心円筒チャネル1とを有する、ガス化リアクタにおける配水システムの状況の上面図である。1つのフィーダ主管のみを介した水フィードも実施可能である。その場合、環状分配器は、適切なより大きい直径を有する必要がある。1つのより大きいフィーダ主管は、いくつかのより小さいフィーダ主管よりも安価であるが、より硬く、分配器3と圧力容器8との間に熱膨脹差を生じさせ得る。フィーダ主管の数については、担当の専門家が関連する最適解を見出すべきである。
【0027】
図3は、偏向面11を有する環状分配器3からの斜視図である。本発明による水カーテン7の発生は、詰まらせることが不可能な明らかにより大きい開口10と、流れ出る水ジェットが遠心力により平坦に押圧されることで水がシステムを出るときに平坦な水カーテン7を形成する偏向面11とにより実現される。
【0028】
すべての開口における入射流の横方向速度が等しいことを保証するため、環状分配器3における水流の円周方向速度が概ね一定であることが要求され、かかる速度は、断面を変化させることにより達成することが可能である。本例では、高さを変化させることにより実現されるが、他の変形可能性を利用することも可能である。水の流入口は、H1との指示に隣接する横方向エリアにおいて行われる。H1は、高さの可変部分を表し、H2は、H1とH2とからなる全高の一定部分を表す。図3に示すように、開口は、丸穴として実装することが可能であるが、矩形スロットまたは真直なおよび/または屈曲したジェットノズルとして実装することも可能である。
【0029】
水カーテンを円周方向にひねることが意図される場合、環状分配器3における円周方向流の脈動をこの目的のために利用することが可能である。水が開口10を通って出るときに脈動の円周方向成分が消失しないように開口10を構成すればよい。環状分配器3の上部壁が円周方向における開口の長さよりも明らかに薄い場合、開口を壁に対して垂直に製作することが可能である。壁がより厚ければ、開口は、斜めの形態で製作されるべきであり、最も好ましい角度は、ベクトル加算により垂直方向および正接方向の速度成分から求められる。
【0030】
図4は、偏向面11の有益なジオメトリを示す。偏向面は、円形または楕円形の形態を主に有し、偏向角度BETAを包囲するべきである。試験により、半径R1およびR2は、幅広い範囲で変化させることが可能であることが証明されている。切り離し縁における遠心力が水に影響を及ぼさず、ジェットの方向が変化しないように、偏向面の湾曲部の端部において、長手方向断面が真直なセクションB、すなわち3次元透視図において円錐状のセクションが設けられている。短い「真直な」セクションがあればよい。偏向面に沿って滑る厚さ2mmの水膜については10〜20mmとなる、水膜の厚さの5〜10倍の長さで、安定した均一の水カーテンが発生する。
【0031】
図5は、開口10としてのジェットノズルを有する環状分配器3の実施形態を示す。環状分配器3からの水は、正接方向に傾斜したジェットノズルを通って流れ出る。偏向面11は、まず、より大きい周囲角度を達成するとともに水ジェットが遠心力により平坦に押圧される範囲を延長するために、外方に傾斜させることが可能である。
【0032】
さらにその上、図5は、環状分配器3においてリアクタチャンバに面する側を流れることで、環状分配器3を固化物質の堆積物から保護する水膜15の発生を示している。このため、環状分配器3の円筒状内壁において、開口12が設けられ、かかる開口12を通って、分配器において循環する水の一部が間隙14に流れ込み、かかる間隙14は、例えば、環状分配器の内壁と円筒プレート13とにより形成され、かかる円筒プレート13は、開口12により成形された水ジェットが平坦に押圧されるとともに表面13上においてまず薄膜を形成するように、上端において湾曲している。開口12は、開口10の形状、すなわち穴、スロット、またはジェットノズルと同様の形状を有してもよい。
【0033】
通過流の円周方向速度は、表面13上に形成された膜が遠心力により間隙14内で壁16に対して飛ばされるように、維持されるべきである。膜の厚さが小さい場合、間隙14の幅は、水膜の幅よりも大きくてもよい。プレート13の上端における偏向面は、非常に小さい半径、例えば30mmの半径を有するべきである。開口12の直径および間隙14の幅は、より粗い、例えば大きさ10mmの、スラグ粒子が水とともに制限されることなくこの装置を通過することが可能であるように、発生する壁膜の厚さよりも相当に大きくてもよい。
【0034】
図5による実施形態の設計例により、機能モードをさらに説明する:以下の初期パラメータを有する漏斗状の自由落下する水カーテンが発生する:
直径1m
速度1.5〜2m/秒
厚さ2mm
急冷水は、大きさ最大5mmであってもよい固形粒子を含有する。
【0035】
ジェットノズルの内径は、いずれの詰まりも排除するため、10mmとなるように選択されるべきである。ジェットノズル間の距離は、要求される速度1.5〜2m/秒がジェットノズルにおいて行き渡るように選択される。このため、ジェットノズルは、互いに40mmの距離だけ離間されるべきである。実験的試験により、ジェットノズルが密に並べて配置されていると、10m/秒を上回る遠心力で既に平坦な水カーテンが発生することが証明されている。半径が小さいほど、遠心力が大きく、ジェットノズルの許容される距離および内径が大きくなる。偏向プレートの半径が30mmであると、1.5m/秒で75m/秒、2m/秒で133m/秒の遠心加速度−重力加速度の7倍〜13倍である−が水に作用する。試験および実験により、これらの条件下で均一および平坦な水カーテンが発生することが示されている。
【0036】
図6は、本発明の配水システムの別の実施形態を示す。自由落下する水カーテン7は、図3および図5において説明したのと同様の方法で発生する。しかし、壁膜は、開口12を通って表面16上を流れる水を正接方向に注入することにより発生する。開口12における水の速度は、水ジェットが壁16に対して押圧されて平坦な膜を形成するように、分配器4における水の円周方向速度より高くてもよい。均質な膜の形成を促進するため、小さい、例えば幅10mmの、直径リープを表面16と17との間に追加的に設けることで、まず、回転する厚さ10mmの水層を形成し、かかる水層から、当初は低い垂直方向速度を有するより薄い壁膜を壁17において達成することが可能である。
【0037】
本設計は、以下の例を通じてより正確に説明される。2mの直径を有する円筒状壁は、薄い水膜により堆積物から保護され、最も狭い断面は、詰まりを排除するため少なくとも幅10mmであり、自由落下する水カーテン7の要求される通常の当初の速度、従って開口10および12における通常の水の出口における速度は、概ね5m/秒である。
【0038】
表面16における正接方向速度が5m/秒の場合、25m/秒の遠心加速度がスロット12を通って流れ出る水に作用し、この速度は、重力加速度よりも際立って高く、それにより、壁に密着する閉じた薄い水膜が発生する。3m/秒を超える速度のエリアは、侵食に耐える材料、例えば鋳鉄またはセラミックスから製作されるべきであり、またはこれらのエリアは、適切な材料を用いる肉盛溶接により金属部品で被覆することが可能である。
【0039】
図7は、本発明の配水システムの別の実施形態を示す。自由落下する水カーテン7は、図3〜図6において説明したのと同様の方法で発生し、壁膜は、図5と同様に発生する。しかし、仕切壁は、2つの同心面16および17を備え、膜16および水カーテン膜7を発生させるための水供給は、中間の空間を通じて実現される。この解決策は、好適な圧送手段、例えばインジェクタを適用することにより水が圧力容器内のスラグ槽から開口10および12に送達される場合、特に好ましい。
【符号の説明】
【0040】
1 1200〜1800℃、最大80バールの高温ガスを有する中心円筒チャネル
2 冷却された壁
3 環状分配器
4 循環する急冷水を有する環状分配器の空中断面
5 出口間隙
6 偏向部
7 水カーテン
8 圧力容器
9 水を分配器内に導くフィーダライン
10 開口(丸い、角度付き、真直な/斜めのスロット)またはジェットノズル
11 偏向プレートまたは形状
12 10に類似の開口
13 環状プレート
14 間隙
15 壁膜
16 円筒状仕切壁
17 円筒状仕切壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス化反応中に発生する合成ガスが下方に流れるスラグ形成噴流プロセスを行うためのガス化リアクタにおける配水システムにおいて、前記ガス化リアクタは:
前記リアクタにおける上部に編成された第1のリアクタチャンバであって、かかるチャンバの上部エリアには、供給材料用のフィーダ装置が編成され、かかるチャンバの側壁には、膜壁として内部冷却機能を有するチューブまたはスラグの表面を固化させることなく液体スラグが自由に下方に流れることが可能なチューブコイルが設けられ、かかるチャンバの下側には、液滴が垂れる縁を有する開口が設けられている、第1のリアクタチャンバと;
前記開口に連続して底部に配置された第2のチャンバであって、前記合成ガスが放射冷却により乾燥し冷却された状態に保たれるとともに漏斗状の水カーテンを発生させるための配水システムが設けられている、第2のチャンバと;
前記第2のチャンバに連続して底部に配置された第3のチャンバであって、前記リアクタからの合成ガス用の排出装置が前記第3のチャンバの底部または側部に設置されている、第3のチャンバと;を備え、
水カーテンを形成するため、断面が凹状に湾曲した軸対称の偏向面と組み合わされた同心状の環状分配器が配水システムとして設けられ、前記配水システムにおいて:
前記環状分配器は、少なくとも1つの水フィードを有し;
前記環状分配器は、ジェット状の水の出口を可能にするように好適に設計および構成された開口を有し;
前記開口からのジェットの方向は、前記凹状に湾曲した偏向面の内側に向いており;
前記開口からのジェットの方向において、前記凹状に湾曲した面の平面配向は、ジェットの方向および断面エリアの正接平面が、ジェットが0〜45度の範囲の鋭角で衝突する点において互いに位置合わせされることを特徴としており;
前記偏向面は、その断面において、60度を超える偏向角度を有するように遠く湾曲している;ことを特徴とする配水システム。
【請求項2】
請求項1に記載の配水システムにおいて、前記開口は、上方に方向付けられたジェットノズルとして設計および構成されていることを特徴とする配水システム。
【請求項3】
請求項2に記載の配水システムにおいて、前記上方に方向付けられたジェットノズルは、前記リアクタの円周の方向において正接方向の傾斜を有することを特徴とする配水システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の配水システムにおいて、前記上方に方向付けられたジェットノズルは、前記リアクタの中心軸心に向かう傾斜を有することを特徴とする配水システム。
【請求項5】
請求項1に記載の配水システムにおいて、前記環状分配器は、前記環状分配器の流入口から前記開口の各々に向けてテーパ化する異なる流れ断面を有するように設計および構成されていることを特徴とする配水システム。
【請求項6】
請求項1に記載の配水システムにおいて、前記偏向面の曲率半径は、0.3メートル未満であることを特徴とする配水システム。
【請求項7】
請求項1に記載の配水システムにおいて、前記凹状面は、互いに縫合されたセクションで構成されていることを特徴とする配水システム。
【請求項8】
請求項1、6、および7のいずれか一項に記載の配水システムにおいて、前記偏向面の湾曲部に連続して真直なセクションが続くことを特徴とする配水システム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の配水システムにおいて、さらなる側方開口と前記側方開口に対向する偏向面とが前記環状分配器に設けられていることを特徴とする配水システム。
【請求項10】
ガス化反応中に発生する合成ガスが下方に流れるとともに周縁において閉じた漏斗状の水カーテンを発生させるスラグ形成噴流プロセスを行う際に、ガス化リアクタにおいて配水するための方法において:
加圧された状態の水が環状分配器に送られ、前記水は、開口を通って前記環状分配器を出るまで前記環状分配器を速やかに通過し;
前記開口を出る際に1つの水ジェットが各々形成され、前記水ジェットは、偏向面に当たり;
前記水ジェットの各々は、前記偏向面に沿って滑りながら広がり、隣接する開口の水ジェットと組み合わされて閉じた水膜を形成し;
この閉じた水膜は、前記偏向面から下方向に出た後に前記リアクタの内側に通じている;ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記水ジェットは、前記閉じた水膜が前記リアクタの軸心を中心に回転するように、前記偏向面上で傾斜するように方向付けられていることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法において、側方開口とこれらの開口に対向する偏向面とを介して少なくとも別の水膜が発生し、前記水膜は、前記環状分配器の冷却された壁または生成されたガスに露出した急冷チャンバに付着することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法において、固形物質を含み前記ガス化リアクタのスラグ槽から来る前記水は、水として利用されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法において、前記ガス化リアクタのスラグ槽の下流に接続された水循環部から来る前記水は、水として利用されることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−521353(P2013−521353A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555323(P2012−555323)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000863
【国際公開番号】WO2011/107228
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(502099418)ティッセンクルップ ウーデ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (75)
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Uhde GmbH
【住所又は居所原語表記】Friedrich−Uhde−Strasse 15, D−44141 Dortmund, Germany