説明

ガス化炉、ガス化炉の運転方法、及び石炭ガス化複合発電プラント

【課題】本発明はガス化炉の炉壁耐火材の溶損及び炉壁耐火材への付着物の成長を抑制し得る信頼性の高いガス化炉を提供する。
【解決手段】ガス化炉1の上部と下部に設置されて石炭26、32と酸素28、34を供給する上段バーナ5及び下段バーナ6と、ガス化炉1の壁面を構成してその内側にガス化部4を形成する側壁耐火材7を備えたガス化炉1において、上段バーナ5と下段バーナ6との間の側壁耐火材7の内部に温度測定器16をガス化炉1の高さ方向に沿って複数個設置し、これらの温度測定器16で測定した温度測定値に基づいてガス化部4の内部の前記側壁耐火材7近傍の温度分布を演算し、この演算した温度分布に基づいて上段バーナ5及び下段バーナ6からガス化部4内に供給する石炭26、32及び酸素28、34の流量を調整する制御装置21を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭等の固体燃料を用いたガス化炉、ガス化炉の運転方法、及びガス化複合発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
石炭等の固体燃料をガス化するガス化炉の運転には、ガス化炉の炉内温度、ガス化炉の炉壁耐火材の溶損及び付着物の成長、及びガス化炉内で生成する溶融スラグの流下状況を監視して、ガス化炉の炉内の燃焼条件を調整する必要がある。
【0003】
特開2007−271205号公報の第1図には、ガス化炉の生成ガスや炉内温度、及び溶融スラグ流下状況を、炉壁の冷却水温度の出入口の温度差の変化で監視してガス化炉の運転条件を調整するガス化炉の運転方法が開示されている。
【0004】
また、特開2002−250512号公報の第1図には、燃焼溶融炉における同一平面で90度間隔に4本の気体供給ノズルを備えた溶融炉において、対向する2本の気体供給ノズルを交互に使用する運用を繰り返すことで、ノズル近傍に形成される付着物の成長を抑制する燃焼溶融炉の運転方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−271205号公報(第1図)
【特許文献2】特開2002−250512号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガス化炉においては、ガス化炉の炉壁耐火材にチャーやスラグによる付着物の形成と、高温の溶融スラグによる耐火材侵食のリスクが存在する。
【0007】
ガス化炉の炉内の付着物の成長は、ガス化炉の閉塞や、バーナ火炎の流動変化による炉壁耐火材の局所的な溶損加速に繋がる可能性がある。
【0008】
また、高温の溶融スラグによる耐火材の侵食は、耐火材溶損による耐火材厚み低下により、外筒の金属材を焼損させ、ガス化炉破損に繋がる可能性がある。
【0009】
本発明の目的はガス火炉の炉内の付着物の成長及び耐火材の溶損を抑制してガス化炉が運転停止に至る状況を回避し、長期の連続運転に耐える信頼性の高いガス化炉、ガス化炉の運転方法、及び石炭ガス化複合発電プラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のガス化炉は、窒素搬送の石炭と酸素をガス化炉の内部に供給する上段バーナ及び下段バーナと、前記ガス化炉に設置されてガス化炉の壁面を構成する側壁耐火材と、前記上段バーナ及び下段バーナから供給された石炭中の可燃分をガス化して石炭中の灰分を溶融スラグ化させるように前記側壁耐火材の内側に形成されたガス化部と、前記ガス化部内でガス化した生成ガスを外部に抜き出す開口部を有する天井部及び溶融スラグを下方に流下させる別の開口部を有するスラグタップを底部にそれぞれ備えたガス化炉において、前記上段バーナと下段バーナとの間の前記側壁耐火材の内部に温度測定器をガス化炉の高さ方向に沿って複数個設置し、
複数個設置した前記温度測定器で測定した温度測定値に基づいてガス化部の内部の前記側壁耐火材近傍の温度分布を演算し、この側壁耐火材近傍の温度分布に基づいて前記上段バーナ及び下段バーナからガス化部内に供給する石炭及び酸素の流量を調整する制御装置を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明のガス化炉の運転方法は、ガス化炉の上段と下段とに設けた上段バーナ及び下段バーナから窒素搬送の石炭と酸素をガス化炉の壁面を構成する側壁耐火材の内側に形成されたガス化部に供給して石炭中の可燃分をガス化して石炭中の灰分を溶融スラグ化させ、前記ガス化部内でガス化した生成ガスを外部に抜き出す開口部を有する天井部及び溶融スラグを下方に流下させる別の開口部を有するスラグタップを底部にそれぞれ備えたガス化炉の運転方法において、ガス化炉の側壁耐火材の内部にガス化炉の高さ方向に沿って複数個設置した温度測定器で計測した温度測定値基づいてガス化部の内部の前記側壁耐火材近傍の温度分布を演算し、この演算で求めた側壁耐火材近傍の温度分布に基づいて前記上段バーナ及び下段バーナからガス化部内に供給する石炭及び酸素の流量を調整するようにしたことを特徴とする。
【0012】
本発明の石炭ガス化複合発電プラントは、窒素搬送の石炭と酸素をガス化炉の内部に供給する上段バーナ及び下段バーナと、前記ガス化炉に設置されてガス化炉の壁面を構成する側壁耐火材と、前記上段バーナ及び下段バーナから供給された石炭中の可燃分をガス化して石炭中の灰分を溶融スラグ化させるように前記側壁耐火材の内側に形成されたガス化部と、前記ガス化部内でガス化した生成ガスを外部に抜き出す開口部を有する天井部及び溶融スラグを下方に流下させる別の開口部を有するスラグタップを底部にそれぞれ備え、前記上段バーナと下段バーナとの間の前記側壁耐火材の内部に温度測定器をガス化炉の高さ方向に沿って複数個設置し、複数個設置した前記温度測定器で測定した温度測定値に基づいてガス化部の内部の前記側壁耐火材近傍の温度分布を演算し、この側壁耐火材近傍の温度分布に基づいて前記上段バーナ及び下段バーナからガス化部内に供給する石炭及び酸素の流量を調整する制御装置を備えたガス化炉を備えており、前記ガス化炉のガス化部で生成されて該ガス化炉から導出された生成ガスを脱塵する脱塵装置と、前記脱塵装置で生成ガス中から回収したチャーをガス化炉に設置されたチャーバーナに供給するチャー供給系統と、脱塵装置で脱塵された生成ガスの脱硫を行なう脱硫装置と、前記脱硫装置で脱硫された生成ガスを燃料として燃焼する燃焼器と、前記燃焼器で発生した燃焼ガスで駆動するガスタービンと、前記ガスタービンで駆動して発電する発電機と、前記燃焼器に圧縮空気を供給する圧縮機を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ガス火炉の炉内の付着物の成長及び耐火材の溶損を抑制してガス化炉が運転停止に至る状況を回避し、長期の連続運転に耐える信頼性の高いガス化炉、ガス化炉の運転方法、及び石炭ガス化複合発電プラントが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施例であるガス化炉の概略構造を示す断面図。
【図2】図1に示す第1実施例のガス化炉の上段バーナ高さにおける断面図。
【図3】図1に示す第1実施例のガス化炉の下段バーナ高さにおける断面図。
【図4】図1に示す第1実施例のガス化炉の側壁近傍ガス温度分布の一例を表したガス温度分布図。
【図5】本発明の第2実施例であるガス化炉の概略構造を示す断面図。
【図6】本発明の第3実施例であるガス化炉の概略構造を示す断面図。
【図7】本発明の第4実施例であるガス化炉の概略構造を示す断面図。
【図8】本発明の第5実施例であるガス化炉の概略構造を示す断面図。
【図9】図8に示す第5実施例のガス化炉の下段バーナ高さにおける断面図。
【図10】本発明の第6実施例であるガス化炉を備えた石炭ガス化複合発電プラントの概略構造を示すプラント系統図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例であるガス化炉、ガス化炉の運転方法、及び石炭ガス化複合発電プラントについて図面を用いて以下に説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の実施例であるガス化炉及びガス化炉の運転方法について図1を用いて説明する。
【0017】
図1は本発明の第1実施例であるガス化炉1の概略構成を示す断面図であり、図1に示したように、ガス化炉1は外形が円筒状に形成されており、このガス化炉1の頂部には精製ガスを外部に抜き出す天井部開口部2が、ガス化炉1の底部に設けたスラグタップ10の中心部には溶融スラグを流下させるスラブタップ開口部9がそれぞれ形成されている。
【0018】
そしてガス化炉1の内部には燃料の石炭中の可燃分を酸素と燃焼反応させてガス化してCO及びHを主成分とする生成ガスを発生させるガス化部4が形成されている。
【0019】
前記ガス化炉1は、前記ガス化部4で石炭中の灰分が溶融した溶融スラグをその中心部に開口させたスラグタップ開口部9から下方に流下させるスラグタップ10と、スラグタップ10の直下に位置して溶融したスラグを下方に導くバッファ空間となるクエンチ部11と、クエンチ部11の下方に位置して溶融したスラグを冷却するスラグ冷却水槽6とを備えている。
【0020】
ガス化炉1の外筒としてガス化炉1の頂部に金属製の天井部外筒3が設置され、ガス化炉1の外周には金属製の側壁外筒8が設置されている。
【0021】
ガス化炉1の内部は高温ガスに晒されるため、側壁外筒8の内部には円筒状に側壁耐火材7を張り側壁外筒8を保護している。
【0022】
これらの天井部外筒3及び側壁外筒8は温度上昇を抑制するため、水冷して保護することが多い。
【0023】
ガス化部4を内部に形成するガス化炉1の壁面を構成する側壁耐火材7には、上段バーナ5と下段バーナ6が上下方向に相互に離間して、それぞれ接線方向に取り付けられており、前記上段バーナ5と下段バーナ6から微粉にした固体燃料の石炭と酸素含有ガスである窒素及び酸素とを前記側壁耐火材7の内部に形成したガス化部4内に投入して、このガス化部4内で旋回流を形成させる。
【0024】
即ち、制御装置21からの指令信号によって上段バーナ石炭流量調整器23、上段バーナ窒素流量調整器24、及び上段バーナ酸素流量調整器25がそれぞれ制御され、上段バーナ石炭流量調整器23で調節された流量の石炭26、上段バーナ窒素流量調整器24で調節された流量の窒素27、及び上段バーナ酸素流量調整器25で調節された流量の酸素28が前記上段バーナ5からガス化部4内に投入されるように構成されている。
【0025】
同様に制御装置21からの指令信号によって下段バーナ石炭流量調整器29、下段バーナ窒素流量調整器30、及び下段バーナ酸素流量調整器31がそれぞれ制御され、下段バーナ石炭流量調整器29で調節された流量の石炭32、下段バーナ窒素流量調整器30で調節された流量の窒素33、及び下段バーナ酸素流量調整器31で調節された流量の酸素34が前記下段バーナ6からガス化部4内に投入されるように構成されている。
【0026】
上段バーナ5及び下段バーナ6からガス化部4内に投入された石炭中の可燃分はガス化部4内で酸素と反応してガス化し、CO及びHを主成分とする生成ガス20となる。これは、ガス化部4に投入される酸素量が、石炭の完全燃焼に必要な酸素量より少ない条件で運転されることによる。
【0027】
一方、石炭中の灰分(不燃物)を含むチャーは、ガス化部4内の旋回流によって遠心力を受け、側壁耐火材7の炉壁側に移動する。
【0028】
灰分はガス化部4内の高温火炎により溶融スラグ化して側壁耐火材7の壁面に付着する。溶融スラグは、炉壁耐火材7の壁面からスラグタップ10の上面を通り、スラグタップ開口部9から下方に流下する。
【0029】
スラグタップ開口部9を流下した溶融スラグは、クエンチ部11を経由してスラグ冷却水槽12に流入し、このスラグ冷却水槽12にて冷却されてガラス状の固形スラグとして回収される。
【0030】
スラグ冷却水槽12の底部から排出されて回収される固形スラグの回収量は、スラグ重量計測器50で計測し、スラグ重量計測器50で計測されたスラグ重量の計測データは制御装置21に取り込まれる。
【0031】
ガス化部4内の温度分布については、側壁耐火材7に設置する高さが異なるように埋め込まれた複数個の温度測定器16によって計測する。
【0032】
前記複数の温度測定器16を側壁耐火材7に埋め込んで測定した温度検出値に基づいて計測された炉内温度分布データ22は制御装置21に取り込まれる。
【0033】
このように温度測定器16によってガス化部4内の温度分布を計測することで、ガス化部4内の高温火炎インピンジによる温度測定器16の焼損、溶融スラグによる側壁耐火材7の溶損、飛散粒子の衝突による側壁耐火材7の損耗のリスクを低減できる。
【0034】
さらに、ガス化部4内の側壁近傍のガス温度については、温度測定器16で計測した温度検出値、温度測定器16が設置されたガス化部4における設置深さ(側壁耐火材7の表面からの厚み方向の距離)、側壁耐火材7の耐火材の物性、側壁外筒8の温度に基づいて制御装置21にて推定演算される。
【0035】
次に、本実施例であるガス化炉1のガス化部4内に形成される火炎の流れについて説明する。
【0036】
図1において、上段バーナ5から投入される石炭26、窒素27、及び酸素28は、ガス化部4内で着火し、上段バーナ5によって形成された火炎14となって、ガス化部4内部を旋回流で下降する。
【0037】
下段バーナ6から投入される石炭32、窒素33、及び酸素34についても、ガス化部4内で着火し、下段バーナ6によって形成された火炎15となる。下段バーナ6によって形成された火炎15は、ガス化部4内部を旋回流で下降し、スラグタップ10によって反転して上昇流となる。
【0038】
この上昇流となった下段バーナによって形成された火炎15は、ガス化部4内部を旋回流で側壁耐火材7の壁面近傍を上昇し、上段バーナ5と下段バーナ6の間となるガス化部4内の場所で上段バーナ5によって形成された火炎14と衝突することになる。
【0039】
上段バーナ5の火炎14と下段バーナ6の火炎15とが衝突するガス化部4内の場所では、火炎に同伴されるチャー粒子が滞流しやすく、温度条件によっては側壁耐火材7の壁面に庇状に付着物19を形成・成長させやすい。
【0040】
一方、ガス化効率の面からも、ガス化炉1のガス化部4内で生成された生成ガス20に同伴して飛散するチャー量を減らした方が有利である。
【0041】
従って、上段バーナ5の火炎14と下段バーナ6の火炎15とが衝突するガス化部4内の場所より下部となるガス化部4内のガス温度を、灰分の溶流点以上となるように高めて灰溶融領域とし、側壁耐火材7の壁面に付着した溶融スラグでチャーを多く捕捉できる運転条件とすることが望ましい。
【0042】
一方、上段バーナ5の火炎14と下段バーナ6の火炎15との衝突によって減衰した上段バーナ5の火炎14と下段バーナの火炎15中の気体成分は、ガス化部4内の軸心側となる中心部より上昇流となって、生成ガス20として天井部開口部2からガス化炉1の外部に放出される。これは、ガス化部4内の中心部が、火炎14及び火炎15の旋回流の影響によって側壁耐火材7の壁面近傍よりも低圧となることによる。
【0043】
ガス化炉1の側壁耐火材7に設置した複数個の温度測定器16によって計測された炉内温度分布データ22であるガス化部4の側壁近傍ガス温度分布の一例を、図4に示す。本図は、ガス化部4を対象とした熱流動解析に基づく演算によって求めたものである。
【0044】
図4に示されたガス化炉1のガス化部4の側壁近傍ガス温度分布から明らかなように、ガス化部4の下部では、ガス温度が灰溶流点よりもかなり高くなっており、溶融スラグによる側壁耐火材7の溶損領域である。
【0045】
ガス化部4の上部は、ガス温度が灰溶流点より低く、側壁耐火材7にチャーが付着する領域である。この領域では、石炭ガス化反応(吸熱反応)を利用し、ガス温度の上昇を防ぐ。
【0046】
これに対し、上段バーナ高さ付近、及び上下段バーナの中間付近のガス温度は、灰溶流点並みである。
【0047】
これら領域では、スラグとチャーが側壁耐火材7の壁面に付着する。粘度の高い溶融スラグにチャーが付着すると、側壁耐火材7の壁面に付着した付着物が成長しやすい。
【0048】
以上より、付着物の成長有無や耐火材溶損の監視方法、及び付着物を成長抑制させる運転方法の確立が必須である。
【0049】
図2に記載した上段バーナ5のガス化炉1への設置位置については図1にII−IIとして示し、図3に記載した下段バーナ6のガス化炉1への設置位置については図1にIII−IIIとして示した。
【0050】
そして、上段バーナ5及び下段バーナ6による各旋回径17、18については図2及び図3に記載したガス化炉1の内部のガス化部4にそれぞれ示した。
【0051】
そこで本実施例のガス火炉1においては、まず、上下段バーナ5、6の火炎14、15の旋回流の大小関係を監視するガス化炉の運転条件の一つである角運動量比について説明する。定義式は、(1)〜(3)式にそれぞれ示されている。
【0052】
角運動量比=上段バーナの角運動量/(上段バーナの角運動量+下段バーナの角運動量)・・・(1)
上段バーナの角運動量=上段バーナによる旋回径×(上段バーナの石炭質量流量×上段バーナの石炭の投入流速+上段バーナの窒素質量流量×上段バーナの窒素の投入流速+上段バーナの酸素質量流量×上段バーナの酸素の投入流速)・・・(2)
下段バーナの角運動量=下段バーナによる旋回径×(下段バーナの石炭質量流量×下段バーナの石炭の投入流速+下段バーナの窒素質量流量×下段バーナの窒素の投入流速+下段バーナの酸素質量流量×下段バーナの酸素の投入流速)・・・(3)
例えば、上段バーナ5の角運動量を高くすると、角運動量比も高くなり、図1の上段バーナ5によって形成された火炎14の旋回力が増す。
【0053】
これにより、上段バーナ5の火炎14と下段バーナ6の火炎15の衝突位置が低くなり、粒子の滞流しやすい領域も下方に移動する。
【0054】
図4に示すガス化部4内の側壁近傍のガス温度分布についても、ガス化部4内の下部の側壁耐火材7に溶損が生じる可能性がある溶損領域の高さが低くなり、ガス化部4内の中段のスラグ・チャー付着領域も下方に移動する。以上より、側壁耐火材7の壁面に付着する付着物19が成長する位置も、下方に移動する。
【0055】
次に、ガス化炉1を定常条件で運用中のガス化部4の監視方法について説明する。上段バーナ5と下段バーナ6からガス化部4内にそれぞれ投入される石炭、窒素、酸素の流量を一定条件で運用し、単位時間あたりの回収スラグ重量も安定すれば、複数の温度測定器16によって計測されるガス化部4内のガス温度の分布を示す炉内温度分布データ22も定常状態で安定するはずである。
【0056】
炉内温度分布データ22の有意な変動の有無、及びその場所を検知することで、側壁耐火材7に異常が発生した場所と原因を特定することができる。
【0057】
例えば、側壁外筒8の温度が一定で、側壁耐火材7に埋め込まれた温度測定器16の温度が単調上昇の傾向を示した場合は、その場所の側壁耐火材7の厚みが減少したことを意味する。
【0058】
この原因は、側壁耐火材7に生じた溶融スラグによる溶損か、粒子による磨耗である。両者のいずれかは、温度測定器16で測定した温度側壁耐火材7の側壁近傍のガス温度で判定する。すなわち、温度測定器16で測定した側壁近傍の前記ガス温度が、供試した石炭中の灰分の溶流点以上(図4に破線で示すガス温度)の温度領域であれば、溶融スラグの溶損による可能性が高いことになる。
【0059】
逆に、温度測定器16で測定した側壁近傍の前記ガス温度が、灰分の溶流点未満の温度領域であれば、粒子の磨耗による可能性が高いことになる。
【0060】
本実施例のガス化炉においては、原因推定の基準値として灰分の溶流点を用いて説明したが、実際のガス化炉1の運用で経験的に得た温度基準値に変更しても構わない。
【0061】
溶融スラグによる溶損、又は石炭粒子の磨耗によって側壁耐火材7の厚さ減少が続くと、側壁耐火材7に埋め込まれた温度測定器16の破損や、側壁外筒8の温度の上昇に繋がる。
【0062】
特に側壁外筒8が焼損した場合は、ガス化炉1の運転停止のみならず、ガス化部4内からCOやH2などの有毒ガスな可燃ガスが系外に放出されることになるので、このような事態は回避しなければならない。
【0063】
一方、側壁外筒8の温度が一定で、側壁耐火材7に埋め込まれた温度測定器16の温度が単調減少の傾向を示した場合は、その場所の側壁耐火材7の壁面に付着した付着物の厚みが増加したことを意味する。
【0064】
前記付着物はチャー又は粘度の高い溶融スラグからなる。側壁耐火材7の壁面に付着した付着物の成長は、バーナ付近などの、粒子濃度が高く低温箇所のある領域や、ガス温度が灰分の軟化点〜溶流点の間で粒子の滞流しやすい領域で見られる。
【0065】
前記付着物の成長を放置すると、ガス化部4を閉塞させるだけでなく、上下段バーナ火炎14、15の流動変化によるバーナ火炎のインピンジにより、側壁耐火材7の溶損に繋がる可能性が高くなる。
【0066】
ここで、上段バーナ5の設置高さII−IIにおけるガス化炉1の断面図を図2に、下段バーナ6の設置高さIII―IIIにおけるガス化炉1の断面図を図3にそれぞれ示す。
【0067】
図2及び図3には、ガス化炉1の各断面と共に、このガス化炉1に設ける上段バーナ5及び下段バーナ6を等間隔に4本ずつ設置し、偏りのない火炎14及び火炎15の各旋回流の形成を目指したバーナ配置の一例が示されている。
【0068】
温度測定器16も同様に側壁耐火材7の壁面の周囲に等間隔に4本ずつ設置することで、バーナ5及びバーナ6のそれぞれの間の流量偏差、及び側壁耐火材7の溶損状況や付着物の成長状況の差の有無についても監視することができる。
【0069】
上下段バーナ5、6の配置について、下段バーナ6による旋回径18は、上段バーナ5による旋回径17より小さい方が良い。これは、図4を用いて前述したように、下段バーナ6付近の温度が上段バーナ5付近の温度よりも高いためである。
【0070】
下段バーナ6による旋回径18を拡大すると、高温火炎のインピンジが起こり易くなり、側壁耐火材7の溶損リスクが高まる。
【0071】
これに対し、上段バーナ5では、上段バーナ5からガス化部4内に投入する酸素量を抑えることで火炎温度の上昇を抑えつつ、下降流を形成させることができる。
【0072】
上段バーナ5による旋回径17は、粒子の磨耗による耐火材保護、付着物の成長抑制の観点でその大きさを設定する。
【0073】
次に、計測された炉内温度分布データ22に基づいて下記した(1)〜(3)の3種類の側壁耐火材7の異常状態、及び(4)に示すスラグタップ9からのスラグ流下の異常状態に対処するガス化炉の運転方法について、図1と図4を用いて説明する。
【0074】
(1)粒子の磨耗による側壁耐火材の損耗:
上段バーナ5での実施を例にとって説明する。上段バーナ5からガス化部4内に投入する流速の低減対策が最も効果的である。ガス化炉1の運転を停止して上段バーナ5の口径を拡大する方法が良い。
【0075】
ガス化炉1の運転を停止させずに対処する場合は、制御装置21から上段バーナ石炭流量調整器23、上段バーナ窒素流量調整器24、及び上段バーナ酸素流量調整器25に指令信号をそれぞれ出力して、上段バーナ5からガス化部4内に投入する石炭26、窒素27、及び酸素28の各流量を低減させれば良い。また、投入する石炭26の粒径を細かくしても効果的である。
【0076】
(2)溶融スラグの侵食による側壁耐火材の溶損:
下段バーナ6での実施を例にとって説明する。側壁耐火材7近傍のガス及びスラグの温度の低減対策が最も効果的である。
【0077】
制御装置21から下段バーナ酸素流量調整器31に酸素流量低減の指令を出力して該下段バーナ酸素流量調整器31の調節によって下段バーナ6からガス化部4内に投入する酸素34の流量を減少させる。
【0078】
下段バーナ6から投入する酸素34の低減量は、運転条件や石炭性状(発熱量や水分量など)などにもよるが、下段バーナ6から投入する石炭量に対する重量比で5〜10%程度を目安にすると良い。この場合、ガス化部4の底部のガス温度は、約100〜200℃程度低減すると見込まれる。
【0079】
或いは、生成ガス20流量に対する制約がなければ、制御装置21から下段バーナ石炭流量調整器29及び酸素流量調整器31に指令信号を出力して下段バーナ6からガス化部4内に投入する石炭32及び酸素34の流量を低減し、下段バーナ窒素流量調整器30に指令信号を出力して下段バーナ6からガス化部4内に投入する窒素33の流量を増加させるようにしても構わない。石炭重量に対する酸素重量を一定で制御すれば、下段バーナ6からの入熱量は、石炭32流量に比例して低下する。
【0080】
これらの操作によってガス化部4内の火炎温度を低下させて溶融スラグの粘度を高め、耐火材の溶損箇所をスラグコーティングする。また、投入する石炭32に一時的にSiO、Al等の粉末を添加して溶融スラグの粘度を高める方法も効果的である。
【0081】
(3)付着物の成長:
まず、ガス化部4の中段の側壁耐火材7の壁面に付着物19が成長した場合を例にとって説明する。下段バーナ6の火炎15の旋回力を高めて角運動量比を低減し、図4に示すガス化部4の下部の高温領域の高さを拡大させる。
これにより、付着物19が側壁耐火材7の壁面に付着する場所を灰溶融領域とすることで、付着物19の焼切り運転を行なう。そしてこの焼切り運転が終了すれば、元の運転条件に戻す。
【0082】
具体的な操作としては、制御装置21から上段バーナ酸素流量調整器25に酸素量低減の指令信号と、下段バーナ酸素量調整器31に酸素量増加の指令信号をそれぞれ出力する。
【0083】
そして上段バーナ酸素流量調整器25の調節によって上段バーナ5からガス化部4内に投入する酸素28の流量を低減させ、下段バーナ酸素量調整器31の調節によって下段バーナ6からガス化部4内に投入する酸素34の流量を増加させるようにするものである。
下段バーナ6から投入する酸素34の増加量は、運転条件や石炭性状(発熱量や水分量など)などにもよるが、下段バーナ6から投入する石炭量に対する重量比で5〜10%程度を目安にすると良い。この場合、ガス化部4の底部から中段におけるガス温度の上昇は、約100〜200℃程度と見込まれる。
【0084】
付着物19の焼切り状況は、側壁耐火材7に埋め込んだ温度測定器16で検知する。側壁耐火材7の壁面上に付着した付着物19の焼切り運転が終了すると、この温度測定器16で検知する温度が上昇して高くなる。
【0085】
この付着物19の焼切り運転の終了後は、元の運転条件(付着物19が側壁耐火材7の壁面に付着する前の運転条件)に戻すべく、制御装置21から各流量調整器に指令を出力する。
【0086】
次に、上段バーナ5より上部における側壁耐火材7への付着物19の成長した場合を例にとって説明する。この場合は、焼切り運転を実施せず、付着物19の自重で剥離・落下するのを待つか、パージなどで強制的に落下させる運用が良い。付着物19の成長しにくい上段バーナ5の配置、付着物19の除去に有効なパージ方法については、ガス化部4の運転実績に基づき、決定すると良い。
【0087】
この部位の付着物19に対して、焼切り運転を推奨しない理由は、次の2点である。
・上段バーナ5の火炎インピンジや天井開口部2の縮小・閉塞に繋がらなければ、ガス化部4の運用に支障ない。
・焼切り運転を実施する場合、上段バーナ5の熱負荷を高めるか、天井部直下に焼切り運転用のバーナ設置が必要となる。溶融スラグの液滴が、天井部開口部2に飛散・付着すると、天井部開口部2の閉塞が懸念される。
【0088】
万が一、上段バーナ5より上部の側壁耐火材7の付着物19についての焼切り運転を実施する場合には、上段バーナ5高さから天井部にかけての側壁耐火材7内の温度測定器16の温度データだけでなく、天井部外筒3の金属温度の監視も必要となる。これは、天井部には耐火材を施工しておらず、金属製の天井部外筒3の焼損を防ぐためである。
【0089】
(4)ガス化部底部へのスラグ堆積:
スラグタップ開口部9に溶融スラグが付着し、スラグタップ開口部9が縮小すると、ガス化部4底部における溶融スラグの排出も阻害されて、ガス化部4底部に溶融スラグが堆積する。
【0090】
これは、スラグタップ開口部9からガス化部4底部のガス温度が、灰溶流点付近まで低下したためである。この場合、溶融スラグ温度が低下するだけでなく、ガス化部4底部に堆積する溶融スラグ厚みも増す。従って、ガス化部4底部の側壁耐火材7内部に設置された温度測定器16の温度も低下することで、検知できる。
【0091】
対策となる運用方法としては、下段バーナ6の酸素34の流量の増加が有効である。酸素34の増加量は、運転条件や石炭性状(発熱量や水分量など)などにもよるが、上述の(3)と同様に、まずは、下段バーナ6から投入する石炭量に対する重量比で5〜10%程度を目安にすると良い。
【0092】
以上説明したように、本実施例では付着物の成長有無や耐火材溶損の監視方法、付着物を成長抑制させる運転方法を実施することで、ガス化炉の運転停止を回避して長期の連続運転に耐える信頼性の高いガス化炉、及びガス化炉の運転方法が可能となる。
【0093】
本実施例によれば、ガス火炉の炉内の付着物の成長及び耐火材の溶損を抑制してガス化炉が運転停止に至る状況を回避し、長期の連続運転に耐える信頼性の高いガス化炉、並びにガス化炉の運転方法が実現できる。
【実施例2】
【0094】
図5は本発明の第2実施例であるガス化炉1の概略構成を示す断面図である。
【0095】
図5に示した本実施例のガス化炉1は図1に示した第1実施例のガス化炉1と基本的な構成及び運転方法は共通しているので、両実施例に共通した構成の説明は省略して相違する部分のみ以下に説明する。
【0096】
図5に示した本実施例のガス化炉1においては、ガス化部4の側壁耐火材7の内部に設置する温度測定器16を、側壁耐火材7の厚み方向にも複数個設置した構成を採用したものであり、第1実施例のガス化炉1とは、側壁耐火材7の内部に設置した温度測定器16の数が、側壁耐火材7の厚み方向に1箇所から3箇所に増加させた点が異なっている。
【0097】
側壁耐火材7の内面の溶損や、側壁耐火材7の壁面上の付着物19の成長を検知する応答性を高めるには、ガス化部4の内面近傍に温度測定器16を設置することが有効である。その反面、側壁耐火材7の溶損が進行すると、ガス化部4の内面近傍の温度測定器16が損傷するリスクが高まる。
【0098】
そこで、本実施例のように、温度測定器16を側壁耐火材7の厚み方向に沿って、内面近傍、側壁の厚み中央、側壁外筒8の近傍と3箇所程度、温度測定器16を設置することによって、運用上の信頼性を高めることが可能となる。
【0099】
尚、側壁近傍のガス温度の推定方法は、第1実施例における制御装置21による演算と同様にして推定する。側壁近傍のガス温度の推定精度は、側壁耐火材7の厚み方向に沿って3箇所設置した温度測定器16のうち、ガス化部4の内面近傍に設置した温度測定器16の測定データを用いた場合の方が精度を高めることができる。
【0100】
従って、側壁耐火材7の側壁の厚み中央の温度測定器16の測定データは内面近傍のバックアップに、側壁外筒8の近傍の温度測定器16の測定データは側壁外筒8の保護に用いる監視方法が適している。
【0101】
本実施例によれば、ガス火炉の炉内の付着物の成長及び耐火材の溶損を抑制してガス化炉が運転停止に至る状況を回避し、長期の連続運転に耐える信頼性の高いガス化炉、並びにガス化炉の運転方法が実現できる。
【実施例3】
【0102】
図6は本発明の第3実施例であるガス化炉1の概略構成を示す断面図である。
【0103】
図6に示した本実施例のガス化炉1は図1に示した第1実施例のガス化炉1と基本的な構成及び運転方法は共通しているので、両実施例に共通した構成の説明は省略して相違する部分のみ以下に説明する。
【0104】
図6に示した本実施例のガス化炉1においては、ガス化炉1のクエンチ部11に酸素と窒素を供給する酸素・窒素ノズル13を設けた構成を採用したものであり、第1実施例のガス化炉1とは、ガス化炉1に酸素と窒素を供給する酸素・窒素ノズル13を設け、この酸素・窒素ノズル13からクエンチ部11内に供給する窒素の流量を調節する窒素流量調整器35及び酸素の流量を調節する酸素流量調整器36をそれぞれ設けた点が異なっている。
【0105】
前記酸素・窒素ノズル13からクエンチ部11内に供給する酸素38の投入は、ガス化部4の底部、特にスラグタップ10に開口させたスラグタップ開口部9付近の局所的な加熱に有効である。
【0106】
スラグタップ開口部9は、ガス化部4内からクエンチ部11に流下する溶融スラグの唯一の排出口であり、スラグの安定流下がガス化炉1を安定運転することに不可欠である。
【0107】
酸素・窒素ノズル13からクエンチ部11内に投入される酸素38により、下段バーナ6によってガス化部4の内部に形成する火炎15の温度も上昇する。
【0108】
これは、実施例1のガス化炉1でも説明したように、ガス化部4に投入される酸素量は、石炭の完全燃焼に必要な酸素量より少ないためである。
【0109】
下段バーナ6の角運動量を一定として、下段バーナ6によってガス化部4内に形成する火炎15の温度を調整できるので、ガス化部4の底部に形成される灰溶融領域での溶融スラグの粘度も調整できる。
【0110】
本実施例におけるガス化炉の運転方法は、特に融点の高い溶融スラグを扱う場合に有効である。これは、融点の高い溶融スラグほど、スラグタップ開口部9に溶融スラグが付着するリスクが高まるためである。
【0111】
溶融スラグの付着により、スラグタップ開口部9が縮小すると、ガス化部4底部における溶融スラグの排出も阻害され、溶融スラグがガス化部4底部に堆積する。堆積した溶融スラグの温度は、側壁耐火材7への放熱の影響により、ガス化部4底部のガス温度よりも低くなるので、側壁耐火材7内の温度測定器16で計測したガス化部4底部温度は低下する。
【0112】
これにより、ガス化部4底部への溶融スラグ堆積有無を検知でき、温度低下のあった温度測定器16の高さで、堆積した溶融スラグ深さの推定も可能である。
【0113】
対策となる運用方法については、まず下段バーナ6の酸素34の増量である。これと併用して、制御装置21によって窒素流量調整器35を制御して酸素・窒素ノズル13からクエンチ部11内に投入する窒素37の供給量を調節すると、ガス化部4の底部保護に有効である。すなわち、下段バーナ6によるガス化部4内の火炎15の急激な温度上昇を防ぎ、スラグタップ10の開口部9付近やスラグタップ10の上面の耐火材、ガス化部4の側壁耐火材7の溶損加速を防止する。
【0114】
また、制御装置21によって酸素流量調整器36を制御して酸素・窒素ノズル13からクエンチ部11内に投入する酸素38の供給量及び酸素濃度を調整することで、下段バーナ6の操作条件を一定のままで、スラグタップ開口部9からガス化部4底部を加熱できるだけでなく、酸素・窒素ノズル13自身も保護する。
【0115】
特に、融点の低い溶融スラグを扱う場合には、酸素・窒素ノズル13からクエンチ部11内に窒素37を多く投入すると良い。
【0116】
これにより、下段バーナ6によりガス化部4内に形成される火炎15の温度が低下するため、ガス化部4の底部に形成される灰溶融領域での溶融スラグの粘度が増加し、側壁耐火材7の溶損を抑制できる。
【0117】
以上の説明から明らかなように、酸素・窒素ノズル13は、下段バーナ6の運転条件、すなわち角運動量比を一定のままで、下段バーナ6による火炎15の温度を調整することが可能となる。
【0118】
本実施例によれば、ガス火炉の炉内の付着物の成長及び耐火材の溶損を抑制してガス化炉が運転停止に至る状況を回避し、長期の連続運転に耐える信頼性の高いガス化炉、並びにガス化炉の運転方法が実現できる。
【実施例4】
【0119】
図7は本発明の第4実施例であるガス化炉1の概略構成を示す断面図である。
【0120】
図7に示した本実施例のガス化炉1は図1に示した第1実施例のガス化炉1と基本的な構成及び運転方法は共通しているので、両実施例に共通した構成の説明は省略して相違する部分のみ以下に説明する。
【0121】
図7に示した本実施例のガス化炉1においては、ガス化炉1の上段バーナ5に酸素28を供給する酸素供給系に窒素又は水蒸気40を添加する窒素または水蒸気の流量調整器39が設置され、ガス化炉1の下段バーナ6に酸素34を供給する酸素供給系に窒素または水蒸気42を添加する窒素または水蒸気の流量調整器41が設置された構成となっている。
【0122】
本実施例のガス化炉1では、上段バーナ5に供給する酸素28に窒素又は水蒸気40を添加することで、上段バーナ5自身の焼損を防ぎ、上段バーナ5によって形成した該上段バーナ5近傍のガス化部4内の火炎14の温度を低減する。
【0123】
これにより、ガス化部4内の上段バーナ5付近の側壁近傍ガス温度を低減し、この領域での側壁耐火材7の溶損や側壁耐火材7の壁面へのスラグ付着を抑制する。
【0124】
上段バーナ5から供給する酸素28に添加する窒素又は水蒸気40の流量は制御装置21からの指令に基づいて前記窒素または水蒸気の流量調整器39を制御することで調整される。
【0125】
本実施例では、上段バーナ5の高さ付近の側壁耐火材7に設置した温度測定器16で検出した温度が上昇し、側壁耐火材7の溶損が懸念される場合に有効である。
【0126】
また、本実施例のガス化炉1では、下段バーナ6から供給する酸素34に窒素又は水蒸気42を添加することで、下段バーナ6自身の焼損を防ぎ、下段バーナ6によって形成した該下段バーナ6近傍のガス化部4内の火炎15の温度を低減する。
【0127】
これにより、ガス化部4下部の側壁耐火材7の溶損領域である側壁近傍ガス温度を低減し、この領域での側壁耐火材7の溶損を抑制する。
【0128】
下段バーナ6から供給する酸素34に添加する窒素又は水蒸気42流量は制御装置21からの指令に基づいて前記窒素または水蒸気の流量調整器41を制御することで調整される。
【0129】
本実施例により、上段バーナ5及び下段バーナ6から投入する石炭及び酸素の流量を一定にして、上段バーナ5及び下段バーナ6によりガス化部4内に形成する火炎14、15の火炎温度をそれぞれ調整できるので、ガス化部4を構成する側壁耐火材7の溶損抑制する運用が可能となる。
【0130】
特に本実施例は、実施例1の(1)式に示した角運動量比を変えることなく、上段バーナ5及び下段バーナ6の火炎温度のみを調整できるため、ガス化炉1を一定負荷で連続運転する場合の調整手段として有効である。
【0131】
また、上段バーナ5に供給する窒素又は水蒸気40、下段バーナ6に供給する窒素又は水蒸気42について、水蒸気を供給すると、還元雰囲気で運転されるガス化部4内では、(4)式に示すシフト反応が促進する。
【0132】
CO+HO→CO+H・・・(4)
これにより、ガス化部4で発生する生成ガスのCO、H濃度が高まる。よって、生成ガス中のCOを回収し、Hを発電用燃料又はアンモニア製造等の工業用材料として利用するガス化システムに適した運用となる。
本実施例によれば、ガス火炉の炉内の付着物の成長及び耐火材の溶損を抑制してガス化炉が運転停止に至る状況を回避し、長期の連続運転に耐える信頼性の高いガス化炉、並びにガス化炉の運転方法が実現できる。
【実施例5】
【0133】
図8及び図9は本発明の第5実施例であるガス化炉1の概略構成を示す断面図である。
【0134】
図8は本発明の第5実施例であるガス化炉1の概略構成を示す断面図であり、図9は下段バーナ6の設置高さにおけるガス化炉1の断面を示す断面図である。
【0135】
図8に示した本実施例のガス化炉1は図1に示した第1実施例のガス化炉1と基本的な構成及び運転方法は共通しているので、両実施例に共通した構成の説明は省略して相違する部分のみ以下に説明する。
【0136】
図8及び図9に示した本実施例のガス化炉1では、ガス化炉1のガス化部4内にチャー47、窒素48、酸素49を投入するチャーバーナ43を4本設置し、このチャーバーナ43の設置高さを、下段バーナ6と同一とした構成である。
【0137】
図9に下段バーナ6の設置高さのガス化炉1の断面図で示したように、ガス化炉1には下段バーナ6とチャーバーナ43とを交互に45度間隔でそれぞれ4本ずつ設置し、チャーバーナ43による旋回径は、下段バーナ6による旋回径18と同一とした。
【0138】
これにより、本実施例のガス化炉1では側壁耐火材7の周方向の熱負荷分布の均等化を図ることが可能となる。
【0139】
また、第1実施例のガス化炉1で説明した角運動量比については、チャーバーナ43から投入するチャー47、窒素48、酸素49の角運動量を、下段バーナ6の角運動量比に加えて管理すると良い。
【0140】
チャーバーナ43から投入するチャー、酸素、窒素の流量制御は、制御装置21からの指令信号に基づいてチャー47の流量を調節するチャー流量調整器44、窒素48の流量を調節するチャーバーナ窒素流量調整器45、酸素49の流量を調節するチャーバーナ酸素流量調整器46を制御することによって行なう。
【0141】
ガス化炉1で発生する生成ガス20にはチャーも含まれる。生成ガス20に同伴したチャーを回収し、その全量をこのチャーバーナ43からガス化炉1のガス化部4内に再投入することで、石炭中の全量の可燃分のガス化と灰分の溶融スラグ化が可能となる。
【0142】
また、制御装置21によってチャーバーナ酸素流量調整器46を制御し、チャーバーナ43から投入される酸素49の流量をチャー47の完全燃焼に必要な酸素量よりも少なくすると良い。投入したチャー47が、ガス化部4内でガス化反応(吸熱反応)を起こすこととなり、下段バーナ6高さ付近の火炎15の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0143】
付着物19の成長有無、及びガス化部4内の温度分布の監視は、温度測定器16で計測する炉内温度分布データ22を用いる。また各バーナの運用条件の監視は、(5)〜(7)式に示した、チャーバーナ43も含めた角運動量比で監視する。
・角運動量比=上段バーナの角運動量/(上段バーナの角運動量+下段の角運動量)・・・(5)
・上段バーナの角運動量=上段バーナによる旋回径×(上段バーナの石炭質量流量×上段バーナの石炭の投入流速+上段バーナの窒素質量流量×上段バーナの窒素の投入流速+上段バーナの酸素質量流量×上段バーナの酸素の投入流速)・・・(6)
・下段の角運動量=下段バーナによる旋回径×(下段バーナの石炭質量流量×下段バーナの石炭の投入流速+下段バーナの窒素質量流量×下段バーナの窒素の投入流速+下段バーナの酸素質量流量×下段バーナの酸素の投入流速)+チャーバーナによる旋回径×(チャーバーナのチャー質量流量×チャーバーナのチャーの投入流速+チャーバーナの窒素質量流量×チャーバーナの窒素の投入流速+チャーバーナの酸素質量流量×チャーバーナの酸素の投入流速)・・・(7)
付着物19の成長時の焼切り運転、炉内温度分布に対応した角運動量比の調整方法は、実施例1の場合と同様である。しかし、本実施例では、下段の角運動量=下段バーナの角運動量+チャーバーナの角運動量であることから、チャーバーナの運用条件のみを調整することで、下段の角運動量、及び角運動量比を調整することも可能である。
【0144】
本実施例によれば、ガス火炉の炉内の付着物の成長及び耐火材の溶損を抑制してガス化炉が運転停止に至る状況を回避し、長期の連続運転に耐える信頼性の高いガス化炉、並びにガス化炉の運転方法が実現できる。
【実施例6】
【0145】
図10は、本発明の第6実施例であるガス化炉1を備えた石炭ガス化複合発電プラントの概略構成を示す断面図である。
【0146】
本実施例の石炭ガス化複合発電プラントに備えられたガス化炉1の一例として、図8及び図9に示した第5実施例のガス化炉1を採用している。
【0147】
本実施例の石炭ガス化複合発電プラントの概略構成を説明すると、図10に示したように、ガス化炉1の上段バーナ5及び下段バーナ6からガス化部4内に投入された石炭26、32はガス化部4内でガス化して、CO及びHを主成分とする生成ガスとなる。
【0148】
ガス化部4で発生した生成ガス20はガス化炉1の頂部からガス化炉1の外部に導出されるが、この生成ガス20は熱回収部51に流入して冷却され、次に脱塵装置52に供給される。
【0149】
生成ガス20に同伴したチャーはこの脱塵装置52によって脱塵され、前記脱塵装置52で回収された回収チャー67は、ガス化炉1に設けたチャー流量調整器44、チャーバーナ43を通じてガス化路1のガス化部4に再投入される。
【0150】
脱塵装置52で脱塵後の生成ガス20は、塩素除去装置53に流入して脱塩し、次に脱硫装置54に流入して脱硫されて精製され、発電用の生成ガス55となる。
【0151】
この発電用の生成ガス55は、ガスタービン装置の燃焼器56に燃料として供給され、燃焼して高温の燃焼ガスを発生する。
【0152】
燃焼器56に供給される燃焼用空気は、燃焼ガスによって駆動されるガスタービン59と同軸で駆動する圧縮機57から取り込まれた空気66が用いられる。
【0153】
燃焼器56で生成ガス55を燃焼して発生した燃焼ガスはガスタービン59を駆動し、このタービン59によって発電機(図示せず)を駆動して発電する。
【0154】
また、ガスタービン59から排出された燃焼ガスは燃焼排ガスとなってボイラ61に供給され、このボイラ61での熱交換によって燃焼排ガスから熱回収して発生した蒸気63を蒸気タービン装置の蒸気タービン60に供給し、この蒸気タービン60によって発電機(図示せず)を駆動して発電する。
【0155】
また、蒸気タービン60を駆動した後の蒸気63は復水器(図示せず)で冷却されて復水68となって、再度、ボイラ61に供給される。
【0156】
また、ボイラ61で熱を回収されて冷却した燃焼排ガスは煙突62から系外に放出される。
【0157】
本実施例の石炭ガス化複合発電プラントでは、ガスタービン装置と蒸気タービン装置とを組み合わせた複合発電とすることで、発電効率の高いガス化炉を備えた石炭ガス化複合発電プラントを提供できる。
【0158】
本実施例によれば、ガス火炉の炉内の付着物の成長及び耐火材の溶損を抑制してガス化炉が運転停止に至る状況を回避し、長期の連続運転に耐える信頼性の高いガス化炉を備えた石炭ガス化複合発電プラントが実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明は、石炭等の固体燃料を用いたガス化炉、ガス化炉の運転方法、及びガス化複合発電プラントに適用可能である。
【符号の説明】
【0160】
1:ガス化炉、2:天井部開口部、3:天井部外筒、4:ガス化部、5:上段バーナ、6:下段バーナ、7:側壁耐火材、8:側壁外筒、9:スラグタップ開口部、10:スラグタップ、11:クエンチ部、12:スラグ冷却水槽、13:酸素・窒素ノズル、14:上段バーナの火炎、15:下段バーナの火炎、16:温度測定器、17:上段バーナによる旋回径、18:下段バーナによる旋回径、19:付着物、20:生成ガス、21:制御装置、22:炉内温度分布データ、23:上段バーナ石炭流量調整器、24:上段バーナ窒素流量調整器、25:上段バーナ酸素流量調整器、26:石炭、27:窒素、28:酸素、29:下段バーナ石炭流量調整器、30:下段バーナ窒素流量調整器、31:下段バーナ酸素流量調整器、32:石炭、33:窒素、34:酸素、35:窒素流量調整器、36:酸素流量調整器、37:窒素、38:酸素、39:窒素又は水蒸気の流量調整器、40:窒素又は水蒸気、41:窒素又は水蒸気の流量調整器、42:窒素又は水蒸気、43:チャーバーナ、44:チャー流量調整器、45:チャーバーナ窒素流量調整器、46:チャーバーナ酸素流量調整器、47:チャー、48:窒素、49:酸素、50:スラグ重量計測器、51:熱回収部、52:脱塵装置、53:塩素除去装置、54:脱硫装置、55:発電用の生成ガス、56:燃焼器、57:圧縮機、58:空気分離器、59:ガスタービン、60:蒸気タービン、61:ボイラ、62:煙突、63:蒸気、64:窒素、65:酸素、66:空気、67:回収チャー、68:復水。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素搬送の石炭と酸素をガス化炉の内部に供給する上段バーナ及び下段バーナと、前記ガス化炉に設置されてガス化炉の壁面を構成する側壁耐火材と、前記上段バーナ及び下段バーナから供給された石炭中の可燃分をガス化して石炭中の灰分を溶融スラグ化させるように前記側壁耐火材の内側に形成されたガス化部と、前記ガス化部内でガス化した生成ガスを外部に抜き出す開口部を有する天井部及び溶融スラグを下方に流下させる別の開口部を有するスラグタップを底部にそれぞれ備えたガス化炉において、
前記上段バーナと下段バーナとの間の前記側壁耐火材の内部に温度測定器をガス化炉の高さ方向に沿って複数個設置し、
複数個設置した前記温度測定器で測定した温度測定値に基づいてガス化部の内部の前記側壁耐火材近傍の温度分布を演算し、この側壁耐火材近傍の温度分布に基づいて前記上段バーナ及び下段バーナからガス化部内に供給する石炭及び酸素の流量を調整する制御装置を備えたことを特徴とするガス化炉。
【請求項2】
請求項1に記載のガス化炉において、
前記温度測定器は前記天井部から前記スラグタップまでの側壁耐火材の内部にガス化炉の高さ方向に沿って複数個設置させたことを特徴とするガス化炉。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のガス化炉において、
前記側壁耐火材の内部に設置する温度測定器は、側壁耐火材の厚み方向にも複数個設置させたことを特徴とするガス化炉。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のガス化炉において、
前記ガス化部のスラグタップ直下にクエンチ部を備え、前記クエンチ部の内部に酸素及び窒素を供給する酸素・窒素ノズルを設置し、前記酸素・窒素ノズルに供給する酸素の流量を調整する第2の酸素流量調整器と窒素の流量を調整する窒素流量調整器とをそれぞれ設置し、前記制御装置によって前記第2の酸素流量調整器及び窒素流量調整器を制御して前記酸素・窒素ノズルからクエンチ部内に供給する酸素の流量及び窒素の流量を調整することを特徴とするガス化炉。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のガス化炉において、
前記上段バーナ及び下段バーナからガス化炉内に酸素を供給する酸素供給系統に、窒素又は水蒸気を添加する窒素又は水蒸気の流量調整器をそれぞれ設置し、前記制御装置によって前記窒素又は水蒸気の流量調整器を制御して前記窒素又は水蒸気の流量調整器から酸素供給系統に添加する窒素の流量又は水蒸気の流量を調整することを特徴とするガス化炉。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のガス化炉において、
チャーと酸素をガス化部内に供給するチャーバーナを前記下段バーナが設置されたガス化炉の高さ位置と同じ高さに設置し、前記チャーバーナからガス化炉内にチャーを供給するチャー流量調整器及び酸素を供給する第3の酸素流量調整器をそれぞれ設置し、前記制御装置によって前記チャー流量調整器及び第3の酸素流量調整器を制御して前記チャーバーナからガス化炉内に供給するチャー及び酸素の流量を調整することを特徴とするガス化炉。
【請求項7】
ガス化炉の上段と下段とに設けた上段バーナ及び下段バーナから窒素搬送の石炭と酸素をガス化炉の壁面を構成する側壁耐火材の内側に形成されたガス化部に供給して石炭中の可燃分をガス化して石炭中の灰分を溶融スラグ化させ、前記ガス化部内でガス化した生成ガスを外部に抜き出す開口部を有する天井部及び溶融スラグを下方に流下させる別の開口部を有するスラグタップを底部にそれぞれ備えたガス化炉の運転方法において、
ガス化炉の側壁耐火材の内部にガス化炉の高さ方向に沿って複数個設置した温度測定器で計測した温度測定値基づいてガス化部の内部の前記側壁耐火材近傍の温度分布を演算し、
この演算で求めた側壁耐火材近傍の温度分布に基づいて前記上段バーナ及び下段バーナからガス化部内に供給する石炭及び酸素の流量を調整するようにしたことを特徴とするガス化炉の運転方法。
【請求項8】
請求項7に記載のガス化炉の運転方法において、
演算で求めた前記側壁耐火材近傍の温度分布に基づいて側壁耐火材の厚さ減少の有無及び場所、又は側壁耐火材への付着物成長の有無及び場所を検知して前記上段バーナ及び下段バーナからガス化部内に供給する石炭及び酸素の流量をそれぞれ調整し、ガス化部内に形成する火炎の温度を調節するようにしたことを特徴とするガス化炉の運転方法。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載のガス化炉の運転方法において、
演算で求めた前記側壁耐火材近傍の温度分布に基づいて側壁耐火材の厚さ減少の有無及び場所、又は側壁耐火材への付着物成長の有無及び場所を検知して前記上段バーナ及び下段バーナからガス化部内に供給する搬送窒素、石炭及び酸素による上段バーナ及び下段バーナの角運動量をそれぞれ調節し、ガス化部の下部に形成される灰溶融領域の高さを調整するようにしたことを特徴とするガス化炉の運転方法。
【請求項10】
請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載のガス化炉の運転方法において、
前記ガス化部のスラグタップ直下に備えたクエンチ部の内部に酸素・窒素ノズルから酸素及び窒素を供給するように構成し、演算で求めた前記側壁耐火材近傍の温度分布に基づいて前記酸素・窒素ノズルからクエンチ部内に投入する酸素及び窒素の混合ガスの流量と酸素濃度を調整してガス化部の底部の加熱を調節することを特徴とするガス化炉の運転方法。
【請求項11】
請求項7乃至請求項10のいずれか1項に記載のガス化炉の運転方法において、
前記上段バーナ及び下段バーナからガス化部内に供給する酸素の供給系統に設置された窒素又は水蒸気の流量調整器から窒素又は水蒸気を添加するように構成し、演算で求めた前記側壁耐火材近傍の温度分布に基づいて前記窒素又は水蒸気の流量調整器から前記酸素の供給系統に添加する窒素又は水蒸気の供給量を調節することを特徴とするガス化炉の運転方法。
【請求項12】
請求項7乃至請求項11のいずれか1項に記載のガス化炉の運転方法において、
前記下段バーナが設置されたガス化炉の高さ位置と同じ高さに設置したチャーバーナからチャーと酸素をガス化部内に供給するように構成し、
演算で求めた前記側壁耐火材近傍の温度分布に基づいて前記チャーバーナからガス化部内に供給するチャーと酸素の供給量を調節することを特徴とするガス化炉の運転方法。
【請求項13】
窒素搬送の石炭と酸素をガス化炉の内部に供給する上段バーナ及び下段バーナと、前記ガス化炉に設置されてガス化炉の壁面を構成する側壁耐火材と、前記上段バーナ及び下段バーナから供給された石炭中の可燃分をガス化して石炭中の灰分を溶融スラグ化させるように前記側壁耐火材の内側に形成されたガス化部と、前記ガス化部内でガス化した生成ガスを外部に抜き出す開口部を有する天井部及び溶融スラグを下方に流下させる別の開口部を有するスラグタップを底部にそれぞれ備え、前記上段バーナと下段バーナとの間の前記側壁耐火材の内部に温度測定器をガス化炉の高さ方向に沿って複数個設置し、複数個設置した前記温度測定器で測定した温度測定値に基づいてガス化部の内部の前記側壁耐火材近傍の温度分布を演算し、この側壁耐火材近傍の温度分布に基づいて前記上段バーナ及び下段バーナからガス化部内に供給する石炭及び酸素の流量を調整する制御装置を備えたガス化炉を備えており、
前記ガス化炉のガス化部で生成されて該ガス化炉から導出された生成ガスを脱塵する脱塵装置と、前記脱塵装置で生成ガス中から回収したチャーをガス化炉に設置されたチャーバーナに供給するチャー供給系統と、脱塵装置で脱塵された生成ガスの脱硫を行なう脱硫装置と、前記脱硫装置で脱硫された生成ガスを燃料として燃焼する燃焼器と、前記燃焼器で発生した燃焼ガスで駆動するガスタービンと、前記ガスタービンで駆動して発電する発電機と、前記燃焼器に圧縮空気を供給する圧縮機を備えたことを特徴とする石炭ガス化複合発電プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−62376(P2012−62376A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206218(P2010−206218)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度〜21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 多目的石炭ガス製造技術開発(EAGLE)パイロット試験設備およびゼロエミッション化技術に関する研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)