説明

ガス化炉、ガス化発電プラント、ガス化装置及びガス化炉の運転方法

【課題】クエンチ部に助燃燃料を投入することなく、スラグタップを保温できるようにしてエネルギー効率の悪化を抑制し、しかも、少ないガス量でスラグタップ下面を保温し、スラグの安定流下を実現できるようにしたガス化炉と、ガス化発電プラント及びガス化装置を提供する。
【解決手段】クエンチ部の前記スラグタップ直下の位置にノズル又はバーナを水平方向に設置し、前記ノズル又はバーナから酸素を含み燃料を含まない気体を供給し、クエンチ部の壁面に衝突させる。あるいは、複数のノズル又はバーナを対向させ、両者から供給された酸素を含む気体の噴流をクエンチ部内で衝突させる。これらにより、クエンチ部内において、スラグタップ下面に向かう上昇流を発生させる。クエンチ部に投入された酸素を含む気体は、ガス化部からスラグタップを下降する生成ガスと、スラグタップ下面付近で混合し、燃焼して、スラグタップ下面を保温する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物をガス化し、無機物を溶融スラグ化するガス化炉と、ガス化発電プラント、ガス化装置及びガス化炉の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス化炉では、スラグタップで溶融スラグを安定流下させるために、スラグタップ下面を保温する必要がある。スラグタップ直下のクエンチ部にはバーナが設置されているものの、エネルギー効率を高めるため、起動・停止時や低負荷運転時にのみ燃料が使用されるのが通例である。
【0003】
スラグタップ下面を保温するために、クエンチ部に酸素含有ガスを供給し、スラグタップからクエンチ部に流入するガスに含まれる粒子を燃焼させて、スラグタップ付近を高温に保持することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、クエンチ部にバーナを設置し、ガス化炉でガス化した生成ガスと酸化剤を投入してスラグタップを保温することが提案されている(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−99760号公報(要約)
【特許文献2】特開平7−11261号公報(要約)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、スラグタップ監視装置に酸素含有ガスを噴射するノズルを設けて酸素含有ガスを噴射すると共に、起動用バーナ及びスラグ排出孔ノズルの一方又は両方から酸素含有ガスを噴射することが記載されている。
【0007】
特許文献2に記載の発明は、クエンチ部に設置したバーナ自体で燃焼ガスを生成して、その燃焼ガスによりスラグタップを保温するものである。
【0008】
本発明の目的は、クエンチ部に助燃燃料を投入することなく、スラグタップを保温できるようにしてエネルギー効率の悪化を抑制し、しかも、少ないガス量でスラグタップ下面を保温し、スラグの安定流下を実現できるようにしたガス化炉と、ガス化発電プラント、ガス化装置及びガス化炉の運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のガス化炉は、有機物をガス化し、無機物を溶融スラグにするガス化部と、このガス化部の底部にあり、有機物がガス化して生成された生成ガスの一部とともに溶融スラグを流下させるスラグタップと、スラグタップの下部にあるクエンチ部と、クエンチ部の下部にある水槽とを具備するガス化炉において、前記クエンチ部の前記スラグタップ直下の位置に少なくとも1本のノズル又はバーナを備え、そのノズル又はバーナから酸素を含み燃料を含まない気体の噴流を水平方向に供給するようにしたものである。
【0010】
本発明のガス化炉は、有機物をガス化し、無機物を溶融スラグにするガス化部と、前記ガス化部の底部にあり、前記ガス化部で有機物がガス化して生成された生成ガスの一部とともに前記溶融スラグを流下させる小判型開口部を持つスラグタップと、前記スラグタップの下部にあるクエンチ部と、前記クエンチ部の下部にある水槽とを具備するガス化炉において、前記クエンチ部の前記スラグタップ直下の位置に少なくとも1本のノズル又はバーナが備えられ、前記ノズル又はバーナの設置角度が水平方向を基準に上方0°から45°までの範囲で可変になっており、前記ノズル又はバーナから酸素を含み燃料を含まない気体の噴流が水平方向ないし前記スラグタップを直撃しない範囲でスラグタップ方向に向けて供給するようにしたものである。
【0011】
本発明のガス化発電プラントは、有機物をガス化し、無機物を溶融スラグ化する方式のガス化炉と、ガス化炉で発生した生成ガスの熱回収設備と、脱塵設備及び脱硫設備と、脱塵及び脱硫処理された生成ガスを燃焼させて駆動するガスタービンと、ガスタービンで駆動する発電機及び圧縮機とを具備するガス化発電プラントにおいて、前記圧縮機から抽気した空気を昇圧して前記ガス化炉のクエンチ部に設置されたノズル又はバーナに供給する系統と、前記昇圧した空気に酸素を富化して前記ノズル又はバーナに供給する系統及び、前記圧縮機で抽気した空気を空気分離設備に供給して酸素及び窒素を製造して前記ノズル又はバーナに供給する系統のいずれかを備えるようにしたものである。
【0012】
本発明のガス化装置は、有機物をガス化し、無機物を溶融スラグ化する方式のガス化炉と、ガス化炉のガス化部内とスラグタップ内、及びクエンチ部内の温度及び圧力を計測する計測装置と、前記ガス化炉から回収したスラグの重量を計測する計測装置と、ガス化炉のクエンチ部に落下するスラグの撮影装置と、前記温度と圧力とスラグ重量及びスラグ画像に基づいて、ガス化炉のクエンチ部に設置されたノズル又はバーナに供給する酸素、窒素、空気の流量を独立に制御する制御装置とを備えるようにしたものである。
【0013】
本発明のガス化装置は、有機物をガス化し、無機物を溶融スラグ化する方式のガス化炉と、前記ガス化炉のガス化部内とスラグタップ内、及びクエンチ部内の温度及び圧力を計測する計測装置と、前記ガス化炉から回収したスラグの重量を計測する計測装置と、前記ガス化炉のクエンチ部に落下するスラグの撮影装置と、前記温度と圧力とスラグ重量及びスラグ画像に基づいて、前記ガス化炉のクエンチ部に設置されたノズル又はバーナから供給するガス化炉生成ガスの流量を独立に制御する制御装置とを備えるようにしたものである。
【0014】
本発明のガス化炉の運転方法は、有機物をガス化し、無機物を溶融スラグにするガス化部と、前記ガス化部の底部にあり、前記ガス化部で有機物がガス化して生成された生成ガスの一部とともに前記溶融スラグを流下させるスラグタップと、前記スラグタップの下部にあるクエンチ部と、前記クエンチ部の下部にある水槽とを具備するガス化炉の運転方法において、前記クエンチ部の内部で、前記スラグタップ直下のノズルから噴出した酸素を含み燃料を含まない気体の噴流を、前記ノズルに対向する前記クエンチ部の壁面に衝突させるようにしたものである。
【0015】
本発明のガス化炉の運転方法は、有機物をガス化し、無機物を溶融スラグにするガス化部と、前記ガス化部の底部にあり、前記ガス化部で有機物がガス化して生成された生成ガスの一部とともに前記溶融スラグを流下させるスラグタップと、前記スラグタップの下部にあるクエンチ部と、前記クエンチ部の下部にある水槽とを具備するガス化炉の運転方法において、前記クエンチ部の内部で、前記スラグタップ直下の複数のノズルから酸素を含み燃料を含まない気体の噴流を衝突させるように噴出させ、前記酸素を含む気体の噴流の運動量を異ならしめるようにしたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のガス化炉では、クエンチ部内において、スラグタップ下面に向かう酸素含有ガスの上昇流が形成され、ガス化部からスラグタップを下降する生成ガスと、スラグタップ下面付近で混合するようになる。これにより、助燃燃料を用いずに、少ないガス量で、スラグタップ下面付近を局所的に加熱できるようになり、エネルギー効率に優れるガス化炉となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第一実施例のガス化炉の断面図である。
【図2】第一実施例におけるガス化炉のスラグタップ付近の流動状態を示す説明図である。
【図3】第二実施例のガス化炉の断面図である。
【図4】第三実施例の石炭ガス化発電プロセスフロー図である。
【図5】第四実施例の石炭ガス化発電プロセスフロー図である。
【図6】第五実施例のガス化炉の断面図である。
【図7】第六実施例のガス化炉の断面図である。
【図8】第七実施例のガス化炉の断面図である。
【図9】第八実施例の石炭ガス化発電プロセスフローと加熱バーナの制御系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のガス化炉において、酸素を含む気体を供給するバーナ又はノズルは、1本ないしは複数本を備えることができる。複数本備える場合には、クエンチ部の同一円周上に等間隔又は略等間隔で配置することが望ましい。等間隔又は概略等間隔で配置することが望ましいのは、対向するノズル又はバーナからの噴流同士が衝突し、これにより、スラグタップ直下で、スラグタップを流下した生成ガスと酸素とが緩慢混合するようになり、少ないガス量で、スラグタップ下面を保温できるからである。
【0019】
クエンチ部に設置されるノズル又はバーナからは、酸素を含む気体とともに、ガス化炉生成ガスの一部を供給できるようにしてもよい。この場合には、可燃性の生成ガスが酸素を含む気体に同伴されて、スラグタップ直下に上昇し、スラグタップの下面付近で燃焼するようになる。これにより、燃料を用いずに、スラグタップ下面の保温効果を高めることができる。
【0020】
クエンチ部の同一円周上に等間隔又は略等間隔で設置された複数本のノズル又はバーナを、酸素を含む気体の運動量が独立に制御できる構成とすることも極めて望ましい。これにより、対向するノズル又はバーナからの噴流同士が衝突する位置を調整することができる。検討の結果、対向するノズル又はバーナのうち一方の前記運動量を大にし、他方の前記運動量を小にして、図7のようにスラグタップ直下から離れた位置で、それらの噴流同士を衝突させた場合には、図3のようにスラグタップ直下で噴流を衝突させた場合よりも、少ないガス量でスラグタップを保温できることがわかった。
【0021】
本発明では、他の実施形態として、酸素含有気体を噴出するノズル又はバーナを、その設置角度が、水平方向を基準に上方0°から45°までの範囲で可変となるように設置することを提案する。この場合には、ノズル又はバーナからの酸素を含む気体の噴流が、水平方向ないしはスラグタップを直撃しない範囲でスラグタップ方向に向けて供給されるようにする。酸素含有気体の噴流がスラグタップを直撃しないようにするのは、スラグタップ下面の溶損、および溶融スラグの飛散の恐れがあるためである。
【0022】
クエンチ部には、非常時用のノズルを設けることもできる。非常時とは、例えば、ガス化部での旋回流の流速低下により、スラグタップを流下する生成ガスの流量が低下した場合である。非常時用のノズルは、使用時のみクエンチ部に挿入できるように、クエンチ部に出し入れ可能な構成にすることが望ましい。また、非常時用のノズルからは、酸素を含む気体もしくはガス化炉生成ガスの一部を供給することが望ましい。
【0023】
以下、本発明を石炭ガス化炉に適用した場合について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0024】
本実施例は、既存の助燃バーナを用い、燃料を使用せずに、かつ、少ないガス量で、スラグタップ下面付近を局所的に加熱するようにしたものであり、エネルギー効率に優れている。
【0025】
図1は、スラグタップ保温のためにクエンチ部に加熱バーナを設置したガス化炉の断面図を示す。ガス化部2には上段バーナ6と下段バーナ7が取り付けられており、各バーナより円筒型のガス化炉の接線方向に石炭、窒素、酸素が投入され、旋回流が形成される。投入された石炭は、ガス化部2においてガス化し、CO及Hを主成分とする生成ガス8となり、ガス化部2内を旋回しながら下降する。ガス化部2での旋回流の影響により、ガス化部2およびスラグタップ3内の圧力分布は、外側で高く、中心側で低くなる。
【0026】
下降する生成ガス8の流れは、ガス化部2の底面に設置されたスラグタップ3にて反転し、ガス化部2の中心部を上昇する。一方、生成ガス8の一部は、スラグタップ3を下降し、直下のクエンチ部4に流入する。スラグタップを下降する生成ガスを、下降生成ガス9と呼ぶこととする。
【0027】
クエンチ部4には、加熱バーナ10が設置されている。加熱バーナ10は、起動・停止時やガス化炉1を低負荷で運転する際に、助燃バーナとして軽油、酸素、窒素を投入し、スラグタップ3及びガス化部2の下部を加熱する役割を持つ。ガス化炉1を所定の負荷以上で運転する際には、加熱バーナ10より軽油等の助燃燃料は投入せず、酸素を含む気体11のみを投入する。ここで、酸素を含む気体11とは、例えば酸素と窒素の混合気体や、酸素富化した空気である。
【0028】
加熱バーナ10より投入された酸素を含む気体11の噴流は、直進してクエンチ部4の反対側の壁に衝突し、スラグタップ3に向かう上昇流を形成する。これにより、スラグタップを下降する下降生成ガス9は、スラグタップ3の下面付近において、酸素を含む気体11と混合し燃焼する。これは、下降生成ガス9が高温で、かつCOやHといった可燃分を含むことによる。
【0029】
スラグタップの加熱方法及びスラグタップ3の役割について、スラグタップ付近のガスの流動状態を示した図2を用いて、詳細に説明する。
【0030】
スラグタップ3の主な役割は、ガス化部2にて、溶融スラグを高温の生成ガス8と分離して排出し、溶融スラグを水槽5の冷却水に供給することである。1500℃以上に達するガス化部2と、水槽5の冷却水には非常に大きな温度差があるため、ガス化部2及びスラグタップ3を高温に保持するためのバッファ空間として、クエンチ部4を設ける。
【0031】
スラグタップ3から溶融スラグを連続して安定に流下させるためには、スラグタップ3の下面、特にスラグタップ開口部51の下面付近を加熱することと、クエンチ部4内への溶融スラグの飛散防止が必要になる。このため、スラグタップ開口部51の形状を小判型にすることが非常に好ましい。小判型とは、正方形や真円でない矩形の総称であり、楕円、長方形、角丸四角形、瓢箪型などを意味する。
【0032】
ガス化部2内の旋回流の影響で、スラグタップを下降する下降生成ガス9は、小判型のスラグタップ開口部51の外側、すなわち長辺側から下降する。また、スラグタップ3の上面に溜まった溶融スラグも、スラグタップを下降する下降生成ガス9の流れに同伴され、小判型のスラグタップ開口部51の長辺側から流下する。スラグタップを下降する下降生成ガス9は高温であるため、スラグタップ3を流下する溶融スラグを保温できる。
【0033】
次にクエンチ部4において、スラグタップ開口部51の下面で、溶融スラグを重力で落下させる。ここで、溶融スラグを加熱し、かつ溶融スラグの飛散による、クエンチ部4内の側壁への付着・固化を防止しなければならない。小判型のスラグタップ開口部51とすることで、スラグタップを下降する下降生成ガス9の旋回方向の運動エネルギーを減衰させる。これは、旋回方向の速度ベクトルが、スラグタップ開口部51の内壁に衝突することによる。これにより、スラグタップ開口部51の下面にて、溶融スラグがクエンチ部に流入した生成ガス49で振られることにより、クエンチ部4内を飛散することを抑制できる。
【0034】
一方で、クエンチ部に流入した生成ガス49は、旋回方向の運動エネルギーが減衰したため、クエンチ部4内に拡散せず、スラグタップ開口部51の下面付近に滞留しやすくなる。生成ガス49にはCOやHといった可燃分が含まれているため、スラグタップ開口部51の下面付近に、酸素を含む気体11を供給することで、スラグタップ開口部51の下面付近を局所的に加熱することができる。生成ガス49と、酸素を含む気体11とから発生した燃焼ガスは、スラグタップを上昇する燃焼ガス50となって、スラグタップ開口部51の中央部を上昇し、ガス化部の生成ガス8とともに、炉上方から下流の系統に排出される。
【0035】
以上のように、小判型の開口部を持つスラグタップ3を用いることで、クエンチ部4へのスラグ飛散を抑制し、スラグタップ開口部51の下面付近を局所的に加熱することができる。
【0036】
ただし、上記の方法を実現するためには、クエンチ部4に投入する酸素を含む気体11を、本実施例のようにスラグタップ開口部51の直下に緩慢に供給することが不可欠になる。その理由は、次の2点である。
【0037】
一点目は、スラグタップ開口部51の直下の生成ガス及び溶融スラグの流動状態を乱さないことであり、二点目は、酸素を含む気体11の流量を極力減らすことで、所内動力を低減することである。
【0038】
すなわち、酸素を含む気体11の噴流を、スラグタップ開口部51に直撃させず、対向する壁面に衝突させて、スラグタップ3の下面に向かう上昇流を形成する。これにより、酸素を含む気体11の噴流を減衰し、スラグタップ開口部51の直下付近にて、クエンチ部に流入した生成ガス49と緩慢混合するようになり、溶融スラグの飛散も抑制される。
【0039】
また、酸素を含む気体11の噴流の向きを、スラグタップ3と平行にすることで、自身の運動エネルギーと周囲のガスとの間に働くせん断力で、周囲のガスを同伴するため、スラグタップ3の直下の圧力が低下する。これにより、スラグタップ3を下降する下降生成ガス9の流れが促進される。
【0040】
酸素を含む気体11の噴流を、スラグタップ開口部51に直撃させた場合には、酸素を含む気体11の噴流で、溶融スラグがクエンチ部4内に飛散するだけでなく、クエンチ部に流入した生成ガス49も乱れ、クエンチ部4内に拡散する。これにより、酸素を含む気体11の投入で着火する領域が大きくなるため、スラグタップ開口部51の下面付近の加熱に必要な、酸素を含む気体11の流量が増加する。
【0041】
本実施例では、ガス化部2内に発生させた旋回流を用いて、下降生成ガス9をスラグタップ3からクエンチ部4に下降させる場合について説明した。ここで、下降生成ガス9をスラグタップ3からクエンチ部4に下降させるためには、ガス化部2の外周側の圧力を高くして、クエンチ部4と圧力差を生じさせることがポイントである。従って、ガス化部2とクエンチ部4に圧力差を生じさせる手段を有すれば、本発明は成立する。旋回流以外の方法で圧力差を生じさせる手段としては、例えば、以下の方法がある。
【0042】
(1)ガス化部2の底部の下段バーナ7を下向きとし、バーナから投入する石炭及びガスの運動エネルギーで、スラグタップ3からクエンチ部4まで貫通する流れを形成する。
【0043】
(2)クエンチ部4に設置したノズルから、内部のガスを吸引する。これにより、クエンチ部4内の圧力をガス化部2より低くして、ガス化部2内からの下降生成ガス9の下降を促進する。
【実施例2】
【0044】
本実施例では、スラグタップ保温のために、クエンチ部に複数の加熱バーナを対向させて設置した場合について説明する。図3は、本実施例のガス化炉を示している。
【0045】
ガス化部2には、上段バーナ6、下段バーナ7が取り付けられており、各バーナより接線方向に石炭、窒素、酸素が投入される。投入された石炭は、ガス化部2においてガス化し、CO及びHを主成分とする生成ガス8となり、ガス化部2内を旋回しながら下降する。
【0046】
下降する生成ガス8の流れは、ガス化部2の底面に設置されたスラグタップ3にて反転し、ガス化部2の中心部を上昇する。一方、生成ガス8の一部は、スラグタップ3を下降し、スラグタップ3直下のクエンチ部4に流入する。ガス化部2での旋回流の影響により、ガス化部2およびスラグタップ3内の圧力分布は、外側で高く、中心側で低い。
【0047】
従って、スラグタップを下降する下降生成ガス9は、スラグタップ3内の外側を下降する。スラグタップを下降する下降生成ガス9は高温であるため、スラグタップ3を流下する溶融スラグを保温する。
【0048】
クエンチ部4には、加熱バーナ10と加熱バーナ12が水平に、対向して設置されている。2本の加熱バーナは、ともに、起動・停止時やガス化炉1を低負荷で運転する際に、助燃バーナとして軽油、酸素、窒素を投入し、スラグタップ3及びガス化部2の下部を加熱する役割を持つ。一方、ガス化炉1を所定の負荷以上で運転する際には、2本の加熱バーナより、それぞれ酸素を含む気体を投入する。ここで、酸素を含む気体とは、例えば酸素と窒素の混合気体である。
【0049】
加熱バーナ10より投入された酸素を含む気体11、及び加熱バーナ12より投入された酸素を含む気体13の噴流は、クエンチ部4内で衝突し、緩慢な上昇流となってスラグタップ3に向かう。
【0050】
スラグタップ方向に上昇する酸素を含む気体14は、スラグタップ3の下面付近において、スラグタップ3を下降する下降生成ガス9と混合し燃焼する。これは、下降生成ガス9が高温であり、COやHといった可燃分を含むことによる。
【0051】
酸素を含む気体14及び下降生成ガス9による燃焼ガスは、スラグタップ3の中心側を上昇し、ガス化部2内の生成ガス8と混合して、ガス化部2内の中心部を上昇する。
【0052】
本実施例によれば、既存の助燃バーナを用い、燃料を使用せずに、少ないガス量で、スラグタップ下面付近を局所的に加熱することができる。これにより、エネルギー効率に優れ、スラグタップ3における溶融スラグの安定流下が実現される。
【実施例3】
【0053】
本実施例では、石炭ガス化複合発電プロセスについて説明する。このプロセスでは、実施例2の構造のガス化炉を用い、かつ、加熱バーナから、酸素を含む気体と共に、ガス化炉で発生した生成ガスの一部を供給できるようにした。図4に本実施例の石炭ガス化複合発電プロセスフローを示す。
【0054】
まず、石炭ガス化複合発電のプロセスフローについて説明する。ガス化部2内に投入された有機物はガス化し、CO及びHを主成分とする生成ガス8となる。生成ガス8は、ガス化炉1の頂部から熱回収部15を経て冷却され、脱塵装置16にて脱塵され、塩素除去装置17にて塩素が除去される。さらに、脱硫装置18にて脱硫されて、生成ガス8中の不純物が除去される。
【0055】
脱硫装置18を出た生成ガスは、発電用の生成ガス20として、燃焼器21に供給される。燃焼器21では、圧縮機22からの空気が供給され、発電用の生成ガス20と混合・燃焼する。燃焼器21の排ガスは、ガスタービン23を駆動し、ボイラ25で冷却され、煙突27から系外に出される。ここで、ボイラ25では、排ガスの熱で蒸気26が加熱され、蒸気タービン24を駆動する。
【0056】
一方、脱硫装置18では、硫黄分を石膏として回収するものの、微量の硫黄分(HS等)を含む排ガス19も排出する。この排ガス19は、燃焼器52で完全燃焼させた後、煙突27に供給される。
【0057】
石炭ガス化複合発電プロセスでは、ガス化炉1を加圧状態で運転する。この場合、空気46をガスタービン23で駆動する圧縮機22で昇圧し、空気分離設備29にて酸素30及び窒素31を取り出し、独立した系統でガス化炉1に供給する。この系統から、クエンチ部4に設置した加熱バーナ10及び加熱バーナ12に酸素30及び窒素31が供給される。
【0058】
ここで、非常用として、加熱バーナ10及び加熱バーナ12には、上述の脱硫装置18を出た生成ガスの一部を、加熱バーナ供給用の生成ガス28として供給する系統を備えておくと良い。本系統の使用方法について、以下に説明する。
【0059】
スラグタップ3において、溶融スラグの冷却・固化により、スラグタップ孔の面積が縮小すると、一般に、ガス化部2よりスラグタップを下降する下降生成ガス9の流量は減少する。これは、実施例2でも述べたように、旋回流の影響でガス化部2の外側の圧力が高いため、スラグタップを下降する下降生成ガス9は、スラグタップ3の外側から流入することによる。
【0060】
この場合、クエンチ部の加熱バーナ10及び加熱バーナ12から投入する酸素30の流量を増加させても、スラグタップ3の下面を保温できない。これは、スラグタップを下降する下降生成ガス9の流量が減少するため、クエンチ部4内のスラグタップ3の下面付近における可燃分が少ないためである。
【0061】
スラグタップ3の下面を保温するためには、可燃分を追加で投入する必要がある。そこで、加熱バーナ供給用の生成ガス28を用いる。加熱バーナ供給用の生成ガス28は、300℃以下で供給されており、加熱バーナから供給された酸素を含む気体11、及び加熱バーナ12から供給された酸素を含む気体13に同伴され、クエンチ部4内で衝突・混合する。スラグタップ方向に上昇する酸素を含む気体14は、可燃分である加熱バーナ供給用の生成ガス28を同伴して、スラグタップ3直下に上昇する。上部のガス化部2からの伝熱により、クエンチ部4内の温度は、スラグタップ3に近づくほど高くなる。これにより、加熱バーナ供給用の生成ガス28は、スラグタップ3下面付近で燃焼するため、燃料を用いずにスラグタップを保温できる。
【0062】
加熱バーナ供給用の生成ガス28を用いると、プラント効率は低下する。従って、定常運転中は、加熱バーナから酸素30及び窒素31のみを投入して、スラグタップ3下面を保温する運転方法が良い。溶融スラグの冷却・固化によりスラグタップ3の孔が閉塞傾向にある場合、及びスラグタップ3下部の付着スラグを焼ききる場合といった非常時に、加熱バーナ供給用の生成ガス28を用いると良い。
【実施例4】
【0063】
石炭ガス化複合発電プロセスの別の実施形態について、図5を用いて説明する。図5では、加熱バーナ10と加熱バーナ12から、酸素富化した空気、及びガス化炉で発生した生成ガスの一部を供給できるようにした。
【0064】
図5に示す石炭ガス化複合発電プロセスにおいて、空気46は圧縮機22で昇圧され、加熱バーナに供給する空気47の系統、及び空気分離設備29にそれぞれ供給される。圧縮機22では、空気46を最大2MPa程度までしか昇圧できないため、空気46を2MPa以上に昇圧する場合には、昇圧機48を追設する。
【0065】
空気分離設備29では、酸素30を取り出し、加熱バーナに供給する空気47の系統に混合する。これにより、加熱バーナに供給する空気47を、酸素富化することができる。
【0066】
尚、本実施例では、加熱バーナに供給する空気47をガスタービン23の動力で駆動する圧縮機22で抽気したガス化設備について説明した。しかし、加熱バーナに供給する空気47は、前記の圧縮機22ではなく、ガスタービン23とは別個に運転する新たなコンプレッサから抽気しても良い。
【0067】
また、本実施例では、酸素製造装置として、空気分離設備29を用いたガス化設備について説明したが、ボンベ等から供給した酸素を用いても構わない。
【実施例5】
【0068】
本実施例では、ガス化炉のクエンチ部に設置する加熱バーナを、水平よりも上向きに角度をつけて設置した場合について説明する。図6は、本実施例のガス化炉の断面図を示す。
【0069】
図6では、クエンチ部4に、加熱バーナ10と加熱バーナ12が、水平に対して上向きに、対向して設置されている。バーナの水平に対する設置角度は、0〜45度程度が望ましい。これは、両バーナからの噴流をスラグタップ3の直下で衝突させるためである。
【0070】
ガス化炉1を所定の負荷以上で運転する際には、2本の加熱バーナより、それぞれ酸素を含む気体を投入する。ここで、酸素を含む気体とは、例えば酸素と窒素の混合気体である。
【0071】
加熱バーナ10より投入された酸素を含む気体11、及び加熱バーナ12より投入された酸素を含む気体13の噴流は、スラグタップ3の直下で衝突して減衰し、緩慢な上昇流となってスラグタップ3に向かう。
【0072】
本実施例のように、加熱バーナの噴流をスラグタップ3の直下で衝突させると、スラグタップ3直下の流れが乱れる。これにより、スラグタップ方向に上昇する酸素を含む気体14は、スラグタップ3の下面付近において、スラグタップを下降する下降生成ガス9と混合しやすくなる。従って、スラグタップ3直下における下降生成ガス9の燃焼が促進され、加熱バーナから供給する酸素量を低減できる。
【実施例6】
【0073】
本実施例では、クエンチ部の左右に設置された加熱バーナに投入するガスの運動量を独立に変化させて不均一とした場合について説明する。図7に本実施例のガス化炉を示す。
【0074】
加熱バーナ10及び加熱バーナ12に投入するガスの運動量を独立に変化させるには、たとえば、バーナ口径を左右で変える、或いは左右のバーナから投入するガスの流量を独立に変えることが望ましい。上記のうち一つを用いてもよいし、両方を組み合わせても構わない。
【0075】
ガス化炉1を所定の負荷以上で運転する際には、加熱バーナ10と加熱バーナ12より酸素を含む気体を投入する。ここで、酸素を含む気体とは、例えば酸素と窒素の混合気体、酸素富化した空気である。
【0076】
本実施例では、加熱バーナ10より投入された酸素を含む気体11の噴流の持つ運動量が、加熱バーナ12より投入された酸素を含む気体13の噴流の持つ運動量よりも強い場合について説明する。
【0077】
加熱バーナ10より投入された酸素を含む気体11の噴流は、加熱バーナ12より投入された酸素を含む気体13の噴流と衝突するものの、自身の運動量の強さから、クエンチ部4の壁面近傍に到達し、スラグタップ3下面に向かう渦を形成する。ここで、本方式は、加熱バーナ10からの噴流が、クエンチ部4の壁面への衝突を抑えるため、壁面衝突時の噴流の上下への分散抑制や、壁面の保護にも有効である。
【0078】
渦状でスラグタップ方向に上昇する酸素を含む気体14は、スラグタップ3の下面付近において、スラグタップを下降する下降生成ガス9と混合し燃焼する。これは、下降生成ガス9が高温であり、COやHといった可燃分を含むことによる。
【0079】
また、酸素を含む気体11の噴流は、直進する際に、自身のせん断力で周囲のガスを同伴するため、スラグタップ3の直下の圧力が低下する。これにより、スラグタップを下降する下降生成ガス9の流れが促進される。
【0080】
本方式は、せん断力によるクエンチ部4への生成ガス流入促進、渦流を用いたスラグタップ直下での加熱バーナから投入された酸素と生成ガスの混合促進、2つの対向噴流の衝突による壁面保護といった観点から、燃料を用いずにスラグタップ3下面を保温する最良の方法である。
【実施例7】
【0081】
本実施例では、クエンチ部の加熱バーナ10,12とスラグタップの間に、対向する2本の加熱ノズルを追設した場合について説明する。図8は、本実施例のガス化炉を示す。
【0082】
クエンチ部4において、対向する加熱バーナ10,12と、スラグタップ3の間に、2本の加熱ノズル32,33を対向させて設置する。
【0083】
加熱バーナ10,12と加熱ノズル32,33に供給するガスは、酸素、窒素、ガス化炉1で発生した生成ガス8である。ガス化炉1の定常運転時は、加熱バーナ10及び加熱バーナ12のみを用い、非常時に加熱ノズル32及び加熱ノズル33を用いると良い。以下、加熱ノズルを用いたスラグタップ3下面の保温方法について説明する。
【0084】
ここで、非常時とは、ガス化部2内での旋回流の流速低下、溶融スラグの冷却・固化によるスラグタップ3の孔面積の縮小などにより、ガス化部2よりスラグタップを下降する下降生成ガス9の流量が減少して、溶融スラグを安定排出できない場合である。
【0085】
この場合に、加熱ノズル32,33を用いて、スラグタップ下面付近を局所的に加熱する。加熱ノズル32及び加熱ノズル33をクエンチ部4内に挿入し、ノズル先端をスラグタップ3の直下付近に設置する。加熱ノズル32及び加熱ノズル33から、酸素及びガス化部で発生した生成ガスを投入することで、スラグタップ3の下面付近のみを加熱する。
【0086】
尚、加熱ノズル32,33の保護の観点から、これらのノズルをクエンチ部4内に挿入するのは非常時のみとし、定常運転時は、クエンチ部の外に抜き出し、休止させておくのが良い。
【実施例8】
【0087】
本実施例では、石炭ガス化発電プラントにおいて、クエンチ部における加熱バーナの制御装置を含む石炭ガス化発電プラントについて、図9を参照して説明する。
【0088】
本実施例において、スラグタップ3の保温状態及び溶融スラグの流下状態は、以下に示す5種類のデータを制御装置40に取り込み、監視する。
【0089】
5種類のデータは、スラグタップ内ガス温度、クエンチ部内ガス温度、スラグタップ差圧、溶融スラグ流下の画像、およびスラグ重量である。
【0090】
スラグタップ内ガス温度は、スラグタップ温度計42で計測する。温度計測位置が溶融スラグに埋まった場合でも、ガス化部2に投入した無機物の軟化点以上の温度が保持されるようにする。
【0091】
クエンチ部内ガス温度は、クエンチ部温度計43で計測する。温度計の設置位置は、スラグタップ3の孔部下面に近づける方が良い。クエンチ部温度計43の温度が、スラグタップ3下面に溶融スラグが付着・固化しない温度になるように、ガス化部2に投入した無機物の軟化点以上を保持する。
【0092】
クエンチ部温度計43を複数設けて、スラグタップ下面の温度だけでなく、壁面近傍のガス温度も計測することは望ましい。壁面近傍のクエンチ部温度計43の温度が、ガス化部2に投入した無機物の軟化点以下又は側壁材料の許容温度以下となるようにすることにより、壁面近傍に飛散した溶融スラグの壁面への付着を防止して、炉壁の溶損を防止できる。
【0093】
スラグタップ差圧は、ガス化部2とクエンチ部4の差圧を、差圧計44で計測することにより計測される。スラグタップが溶融スラグ等で閉塞すると、差圧計44の差圧が上昇する。従って、この差圧を所定値以下に保持されるようにする。
【0094】
溶融スラグ流下の画像は、クエンチ部4内に監視カメラ45を設置して撮影する。スラグタップ3又はクエンチ部4内を流下する溶融スラグの画像を監視して、定常運転時のスラグの流下状態から変化がないか否かを監視する。
【0095】
スラグ重量は、スラグ重量計測器41により、単位時間あたりのスラグ回収量を計測する。ガス化部2に投入した無機物の重量に対し、所定の割合分をスラグとして回収できているか否かを監視する。
【0096】
定常運転時で、上記の5項目のいずれかで異常を検知した場合には、加熱バーナの運用条件を以下の手順で変更し、加熱バーナ10,12に投入する酸素、窒素、ガス化炉生成ガスの流量を制御して、ラグタップ3下面の加熱及び溶融スラグの流下を促進する。尚、2本の加熱バーナのうち、1本のみ運用条件を変更しても良いし、2本とも運用条件を変更しても構わない。制御は、生成ガス流量制御バルブ34,35と、酸素流量制御バルブ36,37と、窒素流量制御バルブ38,39の開度を調節することによって行われる。
【0097】
手順1:酸素30及び窒素31の流量を増加させる。
【0098】
手順2:酸素30の流量のみ増加させ、加熱バーナから投入する気体の酸素濃度を高くする。本手順では、加熱バーナ保護のため、加熱バーナから投入する気体の酸素濃度に上限値を設けることが望ましい。
【0099】
手順3:加熱バーナに、加熱バーナ供給用の生成ガス28を供給する。本手順では、クエンチ部温度計43を複数設置することで、火炎の位置の把握、クエンチ部4の側壁及び加熱バーナ端面の保護にも注意する必要がある。また、発電効率を高める観点から、本手順は非定常時のみの運用とすることが望ましい。
【符号の説明】
【0100】
1…ガス化炉、2…ガス化部、3…スラグタップ、4…クエンチ部、5…水槽、6…上段バーナ、7…下段バーナ、8…生成ガス、9…下降生成ガス、10…加熱バーナ、11…酸素を含む気体、12…加熱バーナ、13…酸素を含む気体、14…酸素を含む気体、15…熱回収部、16…脱塵装置、17…塩素除去装置、18…脱硫装置、19…排ガス、20…発電用の生成ガス、21…燃焼器、22…圧縮機、23…ガスタービン、24…蒸気タービン、25…ボイラ、26…蒸気、27…煙突、28…加熱バーナ供給用の生成ガス、29…空気分離設備、30…酸素、31…窒素、32…加熱ノズル、33…加熱ノズル、34…生成ガス流量制御バルブ、35…生成ガス流量制御バルブ、36…酸素流量制御バルブ、37…酸素流量制御バルブ、38…窒素流量制御バルブ、39…窒素流量制御バルブ、40…制御装置、41…スラグ重量計測器、42…スラグタップ温度計、43…クエンチ部温度計、44…差圧計、45…監視カメラ、46…空気、47…加熱バーナに供給する空気、48…昇圧機、49…クエンチ部に流入した生成ガス、50…スラグタップを上昇する燃焼ガス、51…スラグタップ開口部、52…燃焼器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物をガス化し、無機物を溶融スラグにするガス化部と、前記ガス化部の底部にあり、前記ガス化部で有機物がガス化して生成された生成ガスの一部とともに前記溶融スラグを流下させるスラグタップと、前記スラグタップの下部にあるクエンチ部と、前記クエンチ部の下部にある水槽とを具備するガス化炉において、
前記クエンチ部の前記スラグタップ直下の位置に少なくとも1本のノズル又はバーナを備え、前記ノズル又はバーナから酸素を含み燃料を含まない気体の噴流が水平方向に供給されるようにしたことを特徴とするガス化炉。
【請求項2】
請求項1に記載のガス化炉において、前記スラグタップが小判型の開口部を有することを特徴とするガス化炉。
【請求項3】
請求項2に記載のガス化炉において、前記クエンチ部の同一円周上に複数本の前記ノズル又はバーナが等間隔又は略等間隔で配置され、対向するノズル又はバーナからの噴流が衝突するように構成されていることを特徴とするガス化炉。
【請求項4】
請求項2に記載のガス化炉において、前記ノズル又はバーナが、前記ガス化部で有機物をガス化して生成された生成ガスの一部を供給できるように構成されていることを特徴とするガス化炉。
【請求項5】
請求項3に記載のガス化炉において、前記ノズル又はバーナから供給される酸素を含む気体の運動量が独立に変えられることを特徴とするガス化炉。
【請求項6】
請求項2に記載のガス化炉において、前記クエンチ部に、非常時用の加熱ノズルが出し入れ可能に備えられ、前記加熱用ノズルから酸素を含む気体又は/及びガス化炉生成ガスの一部が供給されるようにしたことを特徴とするガス化炉。
【請求項7】
有機物をガス化し、無機物を溶融スラグにするガス化部と、前記ガス化部の底部にあり、前記ガス化部で有機物がガス化して生成された生成ガスの一部とともに前記溶融スラグを流下させる小判型開口部を持つスラグタップと、前記スラグタップの下部にあるクエンチ部と、前記クエンチ部の下部にある水槽とを具備するガス化炉において、
前記クエンチ部の前記スラグタップ直下の位置に少なくとも1本のノズル又はバーナが備えられ、前記ノズル又はバーナの設置角度が水平方向を基準に上方0°から45°までの範囲で可変になっており、前記ノズル又はバーナから酸素を含み燃料を含まない気体の噴流が水平方向ないし前記スラグタップを直撃しない範囲でスラグタップ方向に向けて供給されることを特徴とするガス化炉。
【請求項8】
有機物をガス化し、無機物を溶融スラグ化する方式のガス化炉と、前記ガス化炉で発生した生成ガスの熱回収設備と、前記生成ガスの脱塵設備及び脱硫設備と、脱塵及び脱硫処理された前記生成ガスを燃焼させて駆動するガスタービンと、前記ガスタービンで駆動する発電機及び圧縮機とを具備するガス化発電プラントにおいて、前記ガス化炉が請求項1乃至5、7のいずれかに記載のガス化炉からなり、前記圧縮機から抽気した空気を昇圧して前記ガス化炉のクエンチ部に設置されたノズル又はバーナに供給する系統と、前記昇圧した空気に酸素を富化して前記ノズル又はバーナに供給する系統及び、前記圧縮機で抽気した空気を空気分離設備に供給して酸素及び窒素を製造して前記ノズル又はバーナに供給する系統のいずれかを備えていることを特徴とするガス化発電プラント。
【請求項9】
請求項1乃至5,7のいずれかに記載のガス化炉と、前記ガス化炉のガス化部内とスラグタップ内、及びクエンチ部内の温度及び圧力を計測する計測装置と、前記ガス化炉から回収したスラグの重量を計測する計測装置と、前記ガス化炉のクエンチ部に落下するスラグの撮影装置と、前記温度と圧力とスラグ重量及びスラグ画像に基づいて、前記ガス化炉のクエンチ部に設置されたノズル又はバーナに供給する酸素、窒素、空気の流量を独立に制御する制御装置とを備えたことを特徴とするガス化装置。
【請求項10】
請求項4に記載のガス化炉と、前記ガス化炉のガス化部内とスラグタップ内、及びクエンチ部内の温度及び圧力を計測する計測装置と、前記ガス化炉から回収したスラグの重量を計測する計測装置と、前記ガス化炉のクエンチ部に落下するスラグの撮影装置と、前記温度と圧力とスラグ重量及びスラグ画像に基づいて、前記ガス化炉のクエンチ部に設置されたノズル又はバーナから供給するガス化炉生成ガスの流量を独立に制御する制御装置とを備えたことを特徴とするガス化装置。
【請求項11】
有機物をガス化し、無機物を溶融スラグにするガス化部と、前記ガス化部の底部にあり、前記ガス化部で有機物がガス化して生成された生成ガスの一部とともに前記溶融スラグを流下させるスラグタップと、前記スラグタップの下部にあるクエンチ部と、前記クエンチ部の下部にある水槽とを具備するガス化炉の運転方法において、
前記クエンチ部の内部で、前記スラグタップ直下のノズルから噴出した酸素を含み燃料を含まない気体の噴流を、前記ノズルに対向する前記クエンチ部の壁面に衝突させることを特徴とするガス化炉の運転方法。
【請求項12】
有機物をガス化し、無機物を溶融スラグにするガス化部と、前記ガス化部の底部にあり、前記ガス化部で有機物がガス化して生成された生成ガスの一部とともに前記溶融スラグを流下させるスラグタップと、前記スラグタップの下部にあるクエンチ部と、前記クエンチ部の下部にある水槽とを具備するガス化炉の運転方法において、
前記クエンチ部の内部で、前記スラグタップ直下の複数のノズルから酸素を含み燃料を含まない気体の噴流を衝突させるように噴出させ、前記酸素を含む気体の噴流の運動量を異ならしめることを特徴とするガス化炉の運転方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−7059(P2013−7059A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−223903(P2012−223903)
【出願日】平成24年10月9日(2012.10.9)
【分割の表示】特願2007−114257(P2007−114257)の分割
【原出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度〜18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 多目的石炭ガス製造技術開発(EAGLE)/パイロット試験設備による研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)