説明

ガス化装置、ガス化方法およびエタノール製造設備

【課題】被ガス化原料をガス化してガスを生成するガス化炉と、生成したガスを洗浄する洗浄装置を備えたガス化装置において、洗浄装置による洗浄工程で、該装置外部から空気が漏れ込むことを防止し、酸素漏れ込みのないガスを得ることができるガス化装置を提供すること。前記ガスからエタノールを製造するエタノール製造設備を提供すること。
【解決手段】被ガス化原料5を供給するための開口部3を備え、該開口部3からガス化剤Aが入り、被ガス化原料5をガス化してガスGを生成するガス化炉2と、ガス化炉2の下流位置に設けられ、前記ガスGを洗浄する洗浄装置12と、前記開口部3から前記洗浄装置12の出口までの流路内を吸引し、前記ガスGを他の装置に送る誘引送風手段13と、ガス化炉の開口部3を大気と区画する区画室15と、区画室15内に大気圧以上でガス化剤Aを送り込むガス化剤供給手段16と、を備えたガス化装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス等の被ガス化原料を、一酸化炭素、二酸化炭素、水素および水蒸気等のガスにガス化するガス化装置およびガス化方法に関するものである。また、バイオマス等の被ガス化原料をガス化したガスからエタノールを製造するエタノール製造設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
畜産由来の廃棄物、エネルギー作物などのバイオマスや、プラスチック、ゴムなどの有機廃棄物、一般廃棄物、産業廃棄物等の被ガス化原料を、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、および水蒸気等のガスにガス化し、エネルギーとして利用することは、風力発電、太陽光発電などと並び、リサイクルエネルギー資源の一つとして今後の普及が期待されている。また、被ガス化原料をガス化して得られた前記ガスを原料として、エタノールやメタノール等のバイオ液体燃料を製造することも検討されている。
【0003】
ここで、被ガス化原料をガス化するガス化装置のガス化炉としては、固定床式、流動床式、噴流床式、ロータリーキルン式などがあるが、我々は、比較的小規模で被ガス化原料をガス化することができる固定床式ダウンドラフト炉を用いたガス化装置に着目した。
【0004】
前記固定床式ダウンドラフト炉としては、ガス化炉の上部に開口を有し、その開口部からバイオマス等の被ガス化原料を供給する、いわゆるオープントップ型ダウンドラフト炉が提案されている(特許文献1)。
【0005】
図5は、オープントップ型ダウンドラフト炉を用い、被ガス化原料をガス化するガス化装置51の例である。
被ガス化原料55が原料ホッパー57に受け入れられ、ガス化炉52の上部の開口部53からガス化炉52内に投入される。前記ガス化炉52内には被ガス化原料55が積層され、該被ガス化原料55が所定の高さまで充填される。
【0006】
そして、ガス化炉52内にガス化剤Aとしての空気が導入され、前記被ガス化原料55が不完全燃焼することによりガス化される。前記ガス化炉52内への空気の導入は、該ガス化炉52の下流側に設けられた、後述する誘引送風機63により、ガス化炉52の上部の前記開口部53から外部の空気(外気)を取り込むことによって行う。
【0007】
被ガス化原料55のガス化はガス化炉52の下方に向かって進む。ガス化炉52の下部には、反応後のバイオマス等の残渣Uを炉外へ排出するためのスクリューコンベア等の残渣排出装置56および残渣排出口58と、前記ガスを取り出すためのガス排出口59が設けられている。
【0008】
ガス化炉52の下流側には、サイクロン60、湿式洗浄装置61等を用いたガスの洗浄装置62が設けられている。更にその下流側に誘引送風機63が設けられ、生成したガスGはガス化炉52から排出され、サイクロン60、湿式洗浄装置61等を用いたガスGの洗浄装置62へと送られる。前記誘引送風機63は、前記ガス化炉52の開口部53から該ガス化炉52内、およびその下流に続く洗浄装置62までの流路内を吸引し、ガス化炉52の開口部53から空気を取り込むとともに、洗浄装置62において洗浄されたガスGを、他の装置64に送るように構成されている。
【0009】
また、前記ガス化炉52は、前記開口部53よりも下流側に、該ガス化炉52外の大気と連通するガス化剤取入口54を備えており、被ガス化原料55のガス化反応効率を高めるためのガス化剤Aとして、ガス化炉52外の空気を取り込むように構成されている。
【0010】
前記ガス化剤取入口54は、前記ガス化炉52での被ガス化原料55のガス化が効率よく行われるように、該ガス化炉52の大きさや内部形状とのバランスを取った位置に設けられ、前記開口部53から取り入れられるガス化剤A(空気)の量と、該ガス化剤取入口54から取り入れられるガス化剤A(空気)の量が、前記被ガス化原料55のガス化に適した配分となるように設定されている。尚、このガス化剤Aとしての空気も、前述の誘引送風機63による吸引により取り込まれる構成である。
【0011】
したがって、ガス化装置51内の圧力は、図6に示すような圧力勾配を形成する。図6は、縦軸に圧力、横軸にガス化装置51およびその下流側に続く他の装置64の流路をとり、前記ガス化装置51およびその下流側に続く他の装置64内の圧力の変化を表した図である。すなわち、大気圧である外部と連通したガス化炉52の上部の開口部53から、該ガス化炉52内部を通り、その下部に設けられたガス排出口58を経て、サイクロン60、湿式洗浄装置61等の洗浄装置62を通って誘引送風機63に至るまで、連続的な負圧を形成し、該誘引送風機63の下流側へ続く他の装置64には正圧でガスGを送風する。
【0012】
このようなガス化装置51では、前記誘引送風機63より上流側の流路内を負圧下で運転するので、当該ガス化装置51内に外部から空気が漏れ込むことが考えられる。
ガス化炉52内へ空気が漏れ込んだ場合には、その空気はガス化反応に用いられて消費されるので、その影響はほとんどないが、ガス化炉52のガス排出口59から洗浄装置62の出口までの流路において、ガス化装置51外部から漏れ込んだ空気は、そのままガスG中に残ってしまう。このようなガス化装置51によって生成されたガス中には1%前後の酸素が存在することが確認された。
【0013】
ここで、バイオマス等の被ガス化原料から生成されたガスを利用するにあたって、その利用用途によってはガス中に含まれる酸素が問題になる場合がある。例えば、ガスを原料として、嫌気性微生物を利用し、メタノール、エタノール等の有用物質の生産を行う場合には、該ガス中に含まれる酸素が嫌気性微生物を死滅させたり、その生育を阻害したりするため、生産効率が落ちてしまうなどの問題が生じる。したがって、酸素含有量の少ないガスの供給が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、このような実状に鑑みなされたものであり、その目的は、被ガス化原料をガス化してガスを生成するガス化炉と、該ガスを洗浄する洗浄装置を備えたガス化装置において、前記洗浄装置による洗浄工程で、該装置外部から空気が漏れ込むことを防止し、酸素漏れ込みのないガスを得ることができるガス化装置及びガス化方法を提供することにある。また、被ガス化原料をガス化して生成した前記ガスからエタノールを製造するエタノール製造設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様に係るガス化装置は、被ガス化原料を供給するための開口部を備え、該開口部からガス化剤が入り、前記被ガス化原料をガス化してガスを生成するガス化炉と、前記ガス化炉の下流位置に設けられ、前記ガスを洗浄する洗浄装置と、前記開口部から前記洗浄装置の出口までの流路内を吸引し、前記ガスを他の装置に送る誘引送風手段と、前記ガス化炉の開口部を大気と区画する区画室と、前記区画室内に大気圧以上でガス化剤を送り込むガス化剤供給手段と、を備えたものである。
【0016】
本態様によれば、ガス化炉の開口部を大気と区画する区画室に大気圧以上でガス化剤を送り込むことができるので、前記誘引送風手段より上流側の流路、すなわち、被ガス化原料を供給する開口部から洗浄装置の出口までの圧力[図4−I]が、従来のようにガス化炉の開口部が大気圧であった場合[図4−III]よりも、正圧側にシフトした状態となり、負圧条件下となる流路を少なくすることができる。
【0017】
正圧条件となる流路においては、ガス化装置外からの空気の漏れ込みは無い。誘引送風手段に近づくと負圧になる流路も存在するので、前記誘引送風手段のすぐ上流側に設けられた洗浄装置の一部の流路、または全ての流路が負圧となるが、前述のとおり正圧側にシフトしたことによって、より大気圧に近い負圧となるので、ガス化装置外からの空気の漏れ込みは少なくなる。
【0018】
このことによって、洗浄装置による洗浄工程において、ガス化装置外から空気が漏れ込む虞を少なくすることができる。以って、酸素漏れ込みの少ないガスを前記誘引送風手段の下流側に続く他の装置に送り出すことができる。
【0019】
本発明の第2の態様に係るガス化装置は、第1の態様において、前記誘引送風手段は、該誘引送風手段の上流側の直近において微正圧となるように設定されることを特徴とするものである。
【0020】
ここで微正圧とは、ほぼ大気圧に近い正圧を意味するものである。
本態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、前記誘引送風手段より上流側の流路はすべて正圧条件下におかれることとなるので(図4−II)、ガス化炉のガス排出口から洗浄装置の出口までの流路においても、ガス化装置外から空気が漏れ込む虞がほとんどない。このことによって、酸素漏れ込みのほとんどないガスを前記誘引送風手段の下流側に続く他の装置に送り出すことができる。
【0021】
また、前記誘引送風手段の上流側の直近において微正圧となるように設定されているので、必要最低限の正圧条件によってガス化装置外からの空気の漏れ込みを防止することができる。
【0022】
本発明の第3の態様に係るガス化装置は、第1の態様又は第2の態様において、前記ガス化炉は、前記開口部よりも下流側の位置に、該ガス化炉内と、前記区画室内を連通する連通路を備えていることを特徴とするものである。
【0023】
本態様によれば、第1の態様または第2の態様と同様の作用効果に加え、ガス化炉の開口部よりも下流側の位置に、該ガス化炉内と、前記区画室内を連通する連通路を備えているので、該連通路を通して前記区画室から前記ガス化炉内にガス化剤を取り入れ、被ガス化原料のガス化反応効率を高めることができる。前記連通路は、前記区画室内と連通するので、該区画室内に送り込まれたガス化剤を連通路からガス化炉内に、前記誘引送風手段による誘引により取り込むことができ、ガス化炉の途中でガス化剤を導入する構成を簡単にすることができる。
【0024】
本発明の第4の態様に係るガス化装置は、第1の態様から第3の態様のいずれか一つの態様において、前記区画室外から被ガス化原料を該区画室内に導入し、前記開口部へ供給する被ガス化原料供給手段を備え、前記被ガス化原料供給手段は、該被ガス化原料供給手段内の被ガス化原料のマテリアルシール機能によって、前記区画室外の大気と該区画室内とをシールするように構成されていることを特徴とするものである。
【0025】
本態様によれば、区画室外に貯留された被ガス化原料を、連続的にガス化炉に供給し、前記被ガス化原料のガス化を行うことが可能である。
【0026】
本発明の第5の態様に係るガス化方法は、ガス化炉に設けられた開口部から、被ガス化原料を供給する原料供給工程と、前記開口部からガス化剤を取り入れ、前記ガス化炉において被ガス化原料をガス化し、ガスを生成するガス化工程と、前記ガスを洗浄装置によって洗浄する洗浄工程と、を含み、前記開口部から前記洗浄装置の出口までの一連の流路内は、前記開口部の圧力Pが最も高く、前記洗浄装置の出口の圧力Pが最も低くなる圧力勾配をとり、且つ、前記Pは微正圧に設定して行われることを特徴とするものである。
【0027】
本態様によれば、前記原料供給工程と、前記ガス化工程と、前記洗浄工程と、を含む一連の工程を微正圧以上の正圧下で行うので、前記洗浄工程における、ガス化装置外部のからの空気の漏れ込みの虞がほとんど無い。このことによって、酸素漏れ込みのないガスを得ることができる。
【0028】
本発明の第6の態様に係るエタノール製造設備は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つの態様のガス化装置と、前記ガス化装置で生成されたガスを原料としてエタノールを製造するエタノール製造装置と、を備え、前記エタノール製造装置は、嫌気性微生物を用いて前記ガスからエタノールを製造するものであることを特徴とするものである。
【0029】
嫌気性微生物は、酸素を多く含む条件では死滅したり、生育が阻害されたり、目的とする生産物を生産しない場合がある。そのため、酸素含有量の多いガスを嫌気性微生物に供給する場合には、当該ガス中の酸素を除去する酸素除去工程が必要である。
【0030】
本態様によれば、第1の態様から第4の態様のいずれか一つの態様と同様の作用効果を奏し、酸素漏れ込みの少ない、或いは酸素漏れ込みのほとんどないガスを嫌気性微生物に供給することができるので、酸素除去工程を小規模なものにする、または酸素除去工程を省略することができ、設備コストを低減するとともに効率よくエタノールの製造を行うことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ガス化炉のガス排出口から洗浄装置の出口までの流路において、ガス化装置外から空気が漏れ込む虞をほとんど無くすることができる。このことによって、ガスの洗浄工程における、ガス化装置外からの空気の漏れ込みが防止され、酸素漏れ込みのほとんどないガスを得ることができ、前記誘引送風手段の下流側に続く他の装置に送り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係るガス化装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係るガス化装置を示す概略構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るエタノール製造設備を示す概略構成図である。
【図4】本発明に係るガス化装置およびその下流側に続く他の装置内の圧力の変化を示す図である。
【図5】従来のガス化装置の一例を示す概略構成図である。
【図6】従来のガス化装置およびその下流側に続く他の装置内の圧力の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
本発明に係るガス化装置の一実施形態を図1および図4に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るガス化装置1を示す概略構成図である。図4は、本発明に係るガス化装置およびその下流側に続く他の装置内の圧力の変化を示す図である。
【0034】
[実施例1]
ガス化装置1は、被ガス化原料5をガス化してガスGを生成するガス化炉2と、該ガス化炉2において生成したガスGを洗浄する洗浄装置12とを備え、該ガス化炉2と洗浄装置12の下流側に、誘引送風ファン等の誘引送風手段13が設けられている。
【0035】
前記ガス化炉2は、被ガス化原料5を供給するための開口部3を備えている。該開口部3は、後述する被ガス化原料5のガス化行うガス化剤Aの供給口としても用いられる。また、前記ガス化炉2の開口部3を大気と区画する区画室15が設けられ、該区画室15内には、被ガス化原料5をガス化炉2の開口部3に投入する、原料供給手段7が備えられている。
【0036】
前記ガス化剤Aは、被ガス化原料5のガス化を促すものであり、空気、酸素、酸素富化空気等が用いられる。前記区画室15内に大気圧以上で該ガス化剤Aを送り込むため、押し込みファン等のガス化剤供給手段16が備えられている。前記区画室15内の圧力を圧力計17で測定し、区画室15に送り込むガス化剤Aの圧力を調整するように構成されていることが望ましい。
【0037】
ここで、前記ガス化剤供給手段16は、前記区画室15内に大気圧以上で前記ガス化剤Aを送り込むもの、すなわち、ガス化装置1の最も上流側からガス化剤Aを押し込むものである。また、前記誘引送風手段13は前記洗浄装置12の下流側に設けられ、ガス化装置1の最も下流側からガス化装置1内のガス(生成したガスやガス化剤)を誘引するものである。
【0038】
したがって、ガス化装置1において、ガス化炉2の開口部3の圧力Pが最も高く、該ガス化装置1の下流側にいくに従って圧力は低くなり、前記洗浄装置12の出口(前記誘引送風手段13の直前)の圧力Pが最も低くなる圧力勾配をとる[図4−IまたはII]。
尚、図4は、説明を分かりやすくするために略一定の割合で圧力が減少している図となっているが、実際は、ガス化炉2の形状や被ガス化原料5の形状に由来する圧力損失や、ガス化反応によるガス生成量の増加等の要因によって圧力勾配は一定ではないが、全体としてはガス化装置1の下流側に進むに従って圧力が低くなっていく。
【0039】
前記ガス化炉2の開口部3は、前述の通り、ガス化剤Aの供給口としても用いられる。前記区画室15に送り込まれたガス化剤Aが、前記開口部3からガス化炉2内に供給され、前記被ガス化原料5が不完全燃焼されてガス化が行われる。前記ガス化剤Aは、前記ガス化装置1内の圧力勾配によって、前記開口部から吸い込まれて供給され、ガス化装置1の下流側へ導かれる。
【0040】
前記ガス化炉2の下部には、反応後の残渣(灰、チャー、不燃物、未反応物、炭等)をガス化炉2外へ排出するためのスクリューコンベアなどの残渣排出装置6と残渣排出口8と、ガス化炉2において生成したガスGを取り出すためのガス排出口9が設けられている。
【0041】
更に、前記ガス化炉2は、前記開口部3よりも下流側に、被ガス化原料5のガス化反応効率を高めるためのガス化剤Aを入れるガス化剤取入口を備えている。
該ガス化剤取入口は、前記ガス化炉2内と前記区画室15内とを連通する連通路4として設けることが望ましい。このことによって、該区画室15内のガス化剤Aを、前記ガス化装置1内の圧力勾配によって、前記連通路4から取り入れることができ、ガス化炉2の途中でガス化剤Aを導入する構成を簡単にすることができる。
【0042】
また、図5のような従来のガス化装置51において、ガス化剤取入口54は、ガス化炉52の形状等とのバランスを取った位置に、該ガス化炉52の開口部53から取り入れられるガス化剤Aの量との配分を考慮した量の、ガス化剤Aを供給できるように設定されている。本実施例のように、前記ガス化剤取入口を、ガス化炉2内と区画室15内とを連通する連通路4として設ける構成とすることによって、従来のガス化剤取入口54の前記設定を変更する必要がない。
尚、前記ガス化剤取入口から前記ガス化剤Aを供給するためのガス化剤供給手段を別途設置すれば、該ガス化剤取入口を前記区画室15外に設けることも可能である。
【0043】
前記ガス化炉2の下流側には、前記ガスGを洗浄する洗浄装置12が設けられている。ガスGの洗浄装置12としては、除塵を目的とするサイクロン10や、タール等を除く湿式洗浄装置11等が挙げられる。
【0044】
ガス化炉2において生成したガスGは、前述のガス化剤Aの場合と同様、前記ガス化炉2内の圧力勾配によって下流側に送られ、ガス化炉2のガス排出口9から排出されて洗浄装置12へと送られる。
【0045】
前記誘引送風手段13は、前記ガス化炉2の開口部3から該ガス化炉2内、およびその下流に続く洗浄装置12の出口までの流路内を吸引し、ガス化炉2の開口部3からガス化剤Aを取り込むとともに、洗浄装置12において洗浄されたガスGを他の装置14に送るように構成されている。
更に、前記誘引送風手段13の上流側の直近における圧力を圧力計18で測定し、該誘引送風手段13の誘引力および送風力を調整するように構成されていることが望ましい。
【0046】
次に、本実施形態に係るガス化装置1を用いたガス化方法について説明する。
まず、前記ガス化炉2に設けられた開口部3から、被ガス化原料5を供給する原料供給工程を行う。前記区画室15内に設けられた原料ホッパーに貯留された被ガス化原料5は、前記開口部3からガス化炉2内に投入され、ガス化炉2内に被ガス化原料5を積層して、所定の高さまで充填される。尚、本実施例では、ベルトコンベア等の搬送手段を備えた原料ホッパー等の原料投入手段7によって、被ガス化原料5を開口部3へ供給するように構成されているが、ガス化炉2に所定量の被ガス化原料5を投入した後、区画室15によって前記開口部3を大気と区画し、バッチ単位でガス化を行うことも可能である。
【0047】
次に、前記ガス化炉2において被ガス化原料5を不完全燃焼状態でガス化し、ガスGを生成するガス化工程を行う。
被ガス化原料5としては、バイオマスや、プラスチック、ゴムなどの有機廃棄物、一般廃棄物、産業廃棄物、畜産由来廃棄物等が挙げられる。前記バイオマスの種類としては、製材所の残材、間伐材(杉、檜、松、ブナ、ゴム等)、街路樹剪定材、建築廃材、廃電柱、バーク、ダム流木、籾殻、稲わら、麦わら、竹、笹、パーム椰子空果房、パーム椰子の幹、バガス等サトウキビ由来の廃材等の草本系バイオマス、杉木材、松木材、ラワン木材、イチジク木材等の木質系バイオマス、牛糞、鶏糞等の畜産由来のバイオマス、食品残渣、黒液、海草等が挙げられる。
【0048】
前記被ガス化原料5をガス化炉2に充填後、前記ガス化剤供給手段16によって、前記区画室15内に大気圧以上でガス化剤Aが送り込まれる。また、同時に、該ガス化炉2および洗浄装置12の下流側に設けられた前記誘引送風手段13によって、ガス化装置1内のガス(生成したガスやガス化剤)が誘引される。
【0049】
したがって、前記区画室15内が、前記ガス化剤Aによる正圧状態となり、ガス化装置1内は、ガス化炉2の開口部3の圧力Pが最も高く、該ガス化装置1の下流側にいくに従って圧力は低くなり、前記洗浄装置12の出口(前記誘引送風手段13の直前)の圧力Pが最も低くなる圧力勾配をとる[図4−IまたはII]。特に、図4−IIのように前記Pが微正圧に設定されることが望ましく、このことによって、ガス化炉2の開口部3から前記洗浄装置12の出口までの流路をすべて正圧下におくことができる。
【0050】
前記圧力勾配によって、前記開口部3から該ガス化剤Aが該ガス化炉2内に吸い込まれて供給され、被ガス化原料5のガス化が行われる。また、生成したガスGの流れも、前述の圧力勾配によってガス化装置1の下流側へ導かれる。
【0051】
前記区画室15内に送り込むガス化剤Aの圧力は、圧力計17によって測定し、用いる被ガス化原料のガス化に適した圧力勾配となるように、前記誘引送風手段13の誘引力とのバランスを考慮して調整することが望ましい。
尚、ガス化炉内のガス化温度は、被ガス化原料5の種類やガス化炉2の大きさ、および前記圧力勾配の条件等によって変わってくるが、通常、900℃〜1100℃の範囲である。
【0052】
また、前記ガス化炉2の開口部3よりも下流側に、前記ガス化炉2内と前記区画室15内を連通する連通路4は、被ガス化原料5のガス化反応効率を高めるガス化剤取入口として機能する。前記連通路4の区画室側の開口部における圧力は、前記ガス化炉2の開口部3の圧力Pと同じである。したがって、前記連通路4の区画室側の開口部と、該連通路4の前記ガス化炉2側の開口部との間にも圧力差が生じ、この圧力差によってガス化炉2内にガス化剤Aが入るようになっている。
【0053】
被ガス化原料5のガス化はガス化炉2の下方に向かって進む。生成したガスGは、ガス排出口9から排出され、次に説明する洗浄工程を行う洗浄装置12に送られる。ガス化反応後の残渣U(灰、チャー、不燃物、未反応物、炭等)は、スクリューコンベア等の残渣排出装置6によって残渣排出口8からガス化炉外へ排出される。
【0054】
本実施の形態に係るガス化装置1では、洗浄工程として、チャーや灰等のガスG中に含まれる固体物を取り除くサイクロン10と、タール等を除く湿式洗浄装置11を用いた洗浄装置12による洗浄が行われる。前記洗浄装置12によって洗浄されたガスGは、該洗浄装置12の下流側に備えられた誘引送風手段13によって誘引され、同時に他の装置14に正圧で送風される。
【0055】
このように本実施形態に係るガス化装置1を用いて被ガス化原料のガス化を行うことによって、次に示す作用効果が得られる。
すなわち、ガス化炉2の開口部3を大気と区画する区画室15に大気圧以上でガス化剤Aを送り込むことができるので、前記誘引送風手段13より上流側の流路(被ガス化原料5を供給する開口部3から洗浄装置12の出口まで)の圧力[図4−I]が、従来のようにガス化炉2の開口部3が大気圧であった場合[図4−III]よりも、正圧側にシフトした状態となり、負圧条件下となる流路を少なくすることができる。
【0056】
正圧条件となる流路においては、ガス化装置1外からの空気の漏れ込みは無い。誘引送風手段13に近づくと負圧になる流路も存在するので、前記誘引送風手段13のすぐ上流側に設けられた洗浄装置12の一部の流路、または洗浄装置12の全ての流路が負圧となる場合があるが、前述のとおり正圧側にシフトしたことによって、より大気圧に近い負圧となるので、ガス化装置1外からの空気の漏れ込みは少なくなる。
【0057】
このことによって、洗浄装置12による洗浄工程において、ガス化装置1外から空気が漏れ込む虞を少なくすることができる。以って、酸素漏れ込みの少ないガスGを前記誘引送風手段13の下流側に続く他の装置14に送り出すことができる。
【0058】
特に、図4−IIのように洗浄装置12の出口の圧力Pが微正圧に設定すると、図4−IIに示すように、ガス化炉2の開口部3から前記洗浄装置12の出口までの流路をすべて正圧条件下におくことができ、原料供給工程、ガス化工程、洗浄工程の一連の工程すべてを正圧条件で行うことができる。このことによって、前記洗浄工程において、ガス化装置外から空気が漏れ込む虞がほとんどない。したがって、酸素漏れ込みのほとんどないガスGを前記誘引送風手段の下流側に続く他の装置に送り出すことができる。
また、前記洗浄装置12の出口、すなわち誘引送風手段の上流側の直近における圧力Pが、圧力計18によって微正圧となるように設定されているので、必要最低限の正圧条件によってガス化装置1外からの空気の漏れ込みを防止することができる。
【0059】
前記誘引送風手段13の下流側に続く他の装置14が、嫌気的(還元的)条件下で運転される装置である場合、前記ガスG中に酸素が多く含まれていると、該他の装置14の上流側に当該ガスG中の酸素を除去する装置を設ける必要があるが、本ガス化装置1を用いれば、その酸素除去装置を小規模なものにしたり、省略したりすることができる。
【0060】
[実施例2]
次に、本発明に係るガス化装置の他の実施形態を図2に基づいて説明する。図2は、本発明の他の実施形態に係るガス化装置21を示す概略構成図である。
実施例2のガス化装置21は、実施例1のガス化装置1における区画室15の構成が異なるだけでその他の構成は共通であるので、同一部材には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0061】
本実施例に係るガス化装置21は、ガス化炉2の開口部3を大気と区画する区画室25を備えている。更に、前記ガス化装置21は、前記区画室25外から被ガス化原料5を該区画室25内に導入し、前記開口部3へ供給する第一被ガス化原料供給手段24を備え、前記第一被ガス化原料供給手段24は、該第一被ガス化原料供給手段24内の被ガス化原料5のマテリアルシール機能によって、前記区画室25外の大気と該区画室25内とをシールするように構成されている。
【0062】
前記第一被ガス化原料供給手段24は、例えば、被ガス化原料5を貯留する原料ホッパー22と、該原料ホッパー22の下部から被ガス化原料5を送り出すスクリューコンベア23とから構成されている。原料ホッパー22に被ガス化原料5が投入され、スクリューコンベア23を稼働させると、該スクリューコンベア23の内部は、圧密された被ガス化原料5によってシールされた状態、すなわちマテリアルシールが形成された状態となる。
【0063】
このことによって、前記区画室25外に貯留された被ガス化原料5を、連続的にガス化炉2に供給し、被ガス化原料5のガス化を行うことが可能となる。
【0064】
本実施例では、区画室25内に第二被ガス化原料供給手段としての原料ホッパー7を設け、該原料ホッパー7が第一被ガス化原料供給手段24のスクリューコンベア23から被ガス化原料5を受け入れ、ガス化炉2の開口部3に供給する構成であるが、前記第一被ガス化原料供給手段24のスクリューコンベア23から、直接ガス化炉2の開口部3に被ガス化原料5を供給する構成とすることも可能である。
【0065】
また、区画室25外から被ガス化原料を導入する被ガス化原料供給手段を備えたガス化炉21において、前記区画室25外の大気と該区画室内とをシールする構成は、被ガス化原料供給手段24内の被ガス化原料5のマテリアルシール機能を利用したものに限られない。例えば、スクリューコンベア23の出口と区画室25の間に中間室を設け、該中間室内の圧力を切り換えることによって行う例が挙げられる。
【0066】
[実施例3]
次に、本発明に係るエタノール製造設備の一実施形態を図3に基づいて説明する。図3は、本発明の一実施形態に係るエタノール製造設備31を示す概略構成図である。
実施例3のエタノール製造設備31は、被ガス化原料からガスGを生成するガス化装置として実施例2のガス化装置21を備えている。ガス化装置21の構成は実施例2と同じであるので同一部材には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0067】
前記ガス化装置21の誘引送風手段13の下流側には、嫌気性微生物を用いて前記ガスGからエタノールを製造するエタノール製造装置33を備えている。前記ガス化装置21において生成したガスGは、誘引送風手段13の送風力によって、前記ガス化装置21内から当該エタノール製造装置33へ送られる。
【0068】
尚、前記ガス化装置21の誘引送風手段13と前記エタノール製造装置33との間に、他の装置を介する構成とすることもできる。本実施例では、前記ガス化装置21の洗浄装置12で洗浄されたガスGを精製する、精製装置32が備えられている。前記精製装置32は、例えば、微粒子、タール等の除去を目的としたフィルターなどであり、本実施例では2つのフィルターを切り替えて用いるように構成されている。
【0069】
ここで、前記嫌気性微生物は、酸素を多く含む条件下では死滅したり、生育が阻害されたり、目的とする生産物を生産しない場合がある。そのため、酸素含有量の多いガスGを嫌気性微生物に供給する場合には、当該ガスG中の酸素を除去する工程が必要である。
【0070】
本実施例によれば、ガス化装置21によって酸素漏れ込みのほとんどないガスGが得られるので、酸素を除去する工程を省略することができる。または、酸素を除去する工程を小規模なものにすることができる。したがって、設備コストを低減することができるとともに、嫌気性微生物を用いた前記ガスGからのエタノール製造を効率よく行うことができる。
尚、本実施例に用いるガス化装置は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明に係るいずれかの態様のガス化装置を用いることができるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、被ガス化原料を一酸化炭素、二酸化炭素、水素および水蒸気等のガスにガス化するガス化装置、ガス化方法、および前記ガスからエタノールを製造するエタノール製造設備に利用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 ガス化装置、 2 ガス化炉、 3 開口部、
4 連通路(ガス化剤取入口)、 5 被ガス化原料、
9 ガス排出口、 12 洗浄装置、 13 誘引送風手段、
15 区画室、 16 ガス化剤供給手段、
21 ガス化装置、 22 原料ホッパー、23 スクリューコンベア、
24 第一被ガス化原料供給手段、 25 区画室、
31 エタノール製造設備、 33 エタノール製造装置、
51 ガス化装置、 52 ガス化炉、 53 開口部、
54 ガス化剤取入口、 55 被ガス化原料、 59 ガス排出口、
62 洗浄装置、 63 誘引送風機、
A ガス化剤、 G ガス
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】
【特許文献1】特開2003−253271号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被ガス化原料を供給するための開口部を備え、該開口部からガス化剤が入り、前記被ガス化原料をガス化してガスを生成するガス化炉と、
前記ガス化炉の下流位置に設けられ、前記ガスを洗浄する洗浄装置と、
前記開口部から前記洗浄装置の出口までの流路内を吸引し、前記ガスを他の装置に送る誘引送風手段と、
前記ガス化炉の開口部を大気と区画する区画室と、
前記区画室内に大気圧以上でガス化剤を送り込むガス化剤供給手段と、を備えたガス化装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたガス化装置において、前記誘引送風手段は、該誘引送風手段の上流側の直近において微正圧となるように設定されることを特徴とするガス化装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたガス化装置において、前記ガス化炉は、前記開口部よりも下流側の位置に、該ガス化炉内と、前記区画室内を連通する連通路を備えていることを特徴とするガス化装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載されたガス化装置において、前記区画室外から被ガス化原料を該区画室内に導入し、前記開口部へ供給する被ガス化原料供給手段を備え、
前記被ガス化原料供給手段は、該被ガス化原料供給手段内の被ガス化原料のマテリアルシール機能によって、前記区画室外の大気と該区画室内とをシールするように構成されていることを特徴とするガス化装置。
【請求項5】
ガス化炉に設けられた開口部から、被ガス化原料を供給する原料供給工程と、
前記開口部からガス化剤を取り入れ、前記ガス化炉において被ガス化原料をガス化し、ガスを生成するガス化工程と、
前記ガスを洗浄装置によって洗浄する洗浄工程と、を含み、
前記開口部から前記洗浄装置の出口までの一連の流路内は、前記開口部の圧力Pが最も高く、前記洗浄装置の出口の圧力Pが最も低くなる圧力勾配をとり、且つ、前記Pは微正圧に設定して行われることを特徴とするガス化方法。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載されたガス化装置と、
前記ガス化装置で生成されたガスを原料としてエタノールを製造するエタノール製造装置と、を備え、
前記エタノール製造装置は、嫌気性微生物を用いて前記ガスからエタノールを製造するものであることを特徴とするエタノール製造設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−235898(P2010−235898A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88237(P2009−88237)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】