説明

ガス化装置用のフィードインジェクタ

【課題】ガス化装置用に改良されたフィードインジェクタ設計を提供する。
【解決手段】内部に反応帯160を備えたガス化装置100用のフィードインジェクタノズル150を提供する。フィードインジェクタノズル150は、反応帯160に向かって延在する複数の管190を含む。管190は、それらの間に複数の通路180を画定する。冷却水路300は、管190のうちの1つを通って延在する。冷却水路300は、通路180のうちの1つに隣接する第1側310と、反応帯160に隣接する第2側320とを含む。第1側310は第1側厚さ330を有し、第2側320は第2側厚さ340を有しており、第1側厚さ330は第2側厚さ340以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して複合サイクル発電システムに関し、より詳細には、局所歪みとそれに付随する亀裂を回避できる、ガス化装置のフィードインジェクタ用に改良された冷却水路に関する。
【背景技術】
【0002】
複合サイクル発電システムは、一般的に、ガスタービンエンジンと統合されたガス化装置を含む。公知のガス化装置は、燃料、空気/酸素、蒸気、及び/又はその他の物質の混合気を「合成ガス(シンガス)」として知られている複数の酸化性ガスの出力に変換する。公知のガス化装置は、一般的に、原子炉容器へ混合気流を供給するためにフィードインジェクタを使用する。公知のフィードインジェクタは、原子炉容器内で極高低温にさらされることがある。具体的には、フィードインジェクタの先端は、インジェクタの効果的な作動を妨げ、且つ/又はその寿命を縮めかねない反応温度にさらされることがある。更に、フィードインジェクタは、一般的に、原子炉容器内を流れている合成ガスの中の腐食性成分にさらされることがある。
【0003】
フィードインジェクタを保護するために、公知のガス化装置は、閉ループ給水システムを使用してフィードインジェクタに冷却水を提供する場合がある。しかしながら、公知のフィードインジェクタに冷却水を提供することによって、局所歪みとそれに付随する亀裂がある領域が生じる可能性がある。具体的には、先端領域付近の内部酸素通路と内部冷却水路との間の金属温度は、燃焼帯付近の外面の金属温度と比べて比較的低くなることがある。そのような温度差は、数倍(十倍ほど)になりかねない。そのため、高温側の金属の剛性は、温度が上昇するにつれて低下する。その結果、高温側が低温側よりも伸長して、それらの間に高塑性歪み領域が生じることがある。この高塑性歪み領域は、その中で亀裂又はその他の損傷を生じさせることがある。そのような損傷を修復するために必要な時間と労力は、相当なものになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6530745号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、ガス化装置用に改良されたフィードインジェクタ設計が望まれている。そのような改良されたフィードインジェクタ設計では、亀裂及びその他の種類の損傷を少なくするために内部の塑性歪み領域を減少させることができる。亀裂を少なくすることは、結果として、装置全体のダウンタイムを短縮し、修理費を削減し、構成要素の寿命を延長させることになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内部に反応帯を備えたガス化装置用のフィードインジェクタノズルを提供する。フィードインジェクタノズルは、反応帯に向かって延在する複数の管を含む。管は、それらの間に複数の通路を画定する。冷却水路は、管のうちの1つを通って延在する。冷却水路は、通路のうちの1つに隣接する第1側と、反応帯に隣接する第2側とを含む。第1側は第1側厚さを有し、第2側は第2側厚さを有しており、第1側厚さは第2側厚さ以下である。
【0007】
本発明は、複合サイクル発電システム用のガス化装置を更に提供する。ガス化装置は、容器本体と、容器本体内の反応帯と、反応帯の周囲で容器本体内に延在するフィードインジェクタとを含む。フィードインジェクタは、内部に冷却水路を備えたノズル先端を含む。冷却水路は、第1側と、反応帯に隣接する第2側とを含む。第1側は第1側厚さを有し、第2側は第2側厚さを有し、第1側厚さは第2側厚さ以下であるようになっている。
【0008】
本発明は、内部に反応帯を備えたガス化装置用のフィードインジェクタノズルを更に提供する。フィードインジェクタノズルは、反応帯に向かって延在する複数の管を含む。管は、それらの間に複数の通路を画定する。冷却水路は、管のうちの1つを通って延在する。冷却水路は、酸素通路に隣接する低温側と、反応帯に隣接する高温側とを含む。低温側は低温側厚さを有し、高温側は高温側厚さを有し、低温側厚さは高温側厚さ以下であるようになっている。
【0009】
本発明のこれら及びその他の特徴及び改良点は、幾つかの図面及び添付の特許請求の範囲に関連してなされる以下の詳細な説明を検討することで当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】複合サイクル発電システム及びその中の構成要素の概略図である。
【図2】フィードインジェクタ及び反応帯を備えたガス化装置の概略図である。
【図3】冷却水路を備えたフィードインジェクタの先端の側面断面図である。
【図4】冷却水路を備えた先端の側面断面図である。
【図5】本明細書において記載される冷却水路を備えた先端の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、幾つかの図を通して同様の参照番号が同様の要素を示す図面を参照すると、図1は複合サイクル発電システム10を示している。複合サイクル発電システム10は、主空気圧縮機15と、圧縮機15と流体連通して連結された空気分離ユニット20と、空気分離ユニット20と流体連通して連結されたガス化装置25と、ガス化装置25と流体連通して連結されたガスタービンエンジン30と、蒸気タービン35とを含む。本明細書では、その他の構成要素及びその他の構成も使用できる。
【0012】
圧縮機15は、空気分離ユニット20に運ばれる周囲空気流を圧縮する。或いは、ガスタービンエンジン30の圧縮機40からの圧縮空気流を使用することもできる。空気分離ユニット20は、圧縮空気を使用してガス化装置25が使用する酸素を発生させる。酸素流は、部分的に酸化された合成ガスを発生させる際にガス化装置25において使用される。排出物などを削減するために、空気分離ユニット20からの窒素プロセスガス流は、ガスタービンエンジン30の燃焼器45に送ることもできる。
【0013】
具体的には、ガス化装置25は、燃料、酸素、蒸気、及び/又はその他の物質の混合気を、ガスタービンエンジン30で使用する合成ガスの出力に変換する。合成ガスは、浄化装置50を介して燃焼器45へと流れることになる。浄化装置50は、その中で二酸化炭素などを分離することができる。合成ガスは、燃焼器45において燃焼させられて高温燃焼ガス流を発生することになる。高温燃焼ガスは、タービン55を駆動して機械仕事を発生させる。タービン55によって発生した機械仕事は、圧縮機40と、例えば発電機60などの外部負荷とを駆動する。タービン55からの排気ガスは、熱回収蒸気発生器65に運ぶこともできる。熱回収蒸気発生器65は、蒸気タービン35を駆動するための蒸気を発生させる。蒸気タービン35は、更なる負荷70を駆動することができる。ガス化装置25への更なる蒸気供給が熱回収蒸気発生器65によって行なわれて、合成ガスの冷却を促進することになる。本明細書では、その他の構成要素及びその他の構成も使用できる。
【0014】
図2は、本明細書において記載される固形物除去ガス化装置100の概略図である。ガス化装置100は、上述の複合サイクル発電システム10などで使用できる。ガス化装置100は、ヘッド端部分110と、テール端部分120と、それらの間に延在する円筒形容器本体130とを含む。フィードインジェクタ140は、ヘッド端部分110を貫通して燃料流をその中で運ぶことができる。具体的には、フィードインジェクタ140を通る燃料流は、そのノズル150を通して送ることができる。燃料流は、反応帯160に放出することになる。反応帯160は、ノズル150と実質的に共整列された垂直方向の略円筒空間である。合成ガス及び副産物は、反応帯160内で発生させることができる。本明細書では、その他の構成要素及びその他の構成も使用できる。
【0015】
図3は、フィードインジェクタ140のノズル150の先端170を示す。先端170は、内部に画定された燃料酸素流、燃料流などのための複数の通路180を含む。これらの通路180の寸法、形状、数、及び構成は変化させてもよい。通路180は、複数の同心状に配置された環状管190によって画定できる。管190は、略バヨネット形状195を有することになる。管190のうちの1つ以上は、その中に延在する冷却水路200を含む。冷却水路200の寸法、形状、数、及び構成は変化させてもよい。本明細書では、その他の構成要素及びその他の構成も使用できる。
【0016】
図4は、公知の冷却水路200の拡大図を示す。冷却水路200は、酸素通路220に隣接することになる低温側210を含む。冷却水路200はまた、反応帯160に隣接することになる高温側230を含む。冷却水流240は、その中を流れる。最大歪み領域250は、低温側210と高温側230との間に位置することになる。上述の通り、最大歪み領域250は、亀裂及びその他同種のものが生じやすい可能性がある。最大歪み領域250の寸法及び程度は変化させることができる。
【0017】
低温側210は、高温側厚さ270以上である断面厚さ260を有する。高温側230は低温側210より数倍も高い温度に直面するので、低温側210の剛性は高温側230の剛性よりも大きいことになる。従って、高温側230が低温側210よりも大きく伸長して、最大歪み領域250を生じさせることになる。
【0018】
図5は、本明細書において記載される冷却水路300を示す。冷却水路300はまた、低温側315でありうる第1側310と、高温側325でありうる第2側320とを含む。この例では、低温側315は第1側厚さ330を有し、この厚さは高温側325の第2側厚さ340よりも小さい。第1側厚さ330を減らすことによって、低温側315の剛性も低下することになる。従って、低温側315の剛性は、高温側325の剛性に近づくことになる。その結果、剛性が同程度の領域は、最大歪み領域250を削除又は削減する働きをすることができる。最大歪み領域を削減することによって、内部の低サイクル疲労が生じてフィードインジェクタ140全体の耐用年数が延びるはずである。本明細書では、その他の構成要素及びその他の構成も使用できる。
【0019】
上述の内容は、本発明の特定の実施形態のみに関連していることを理解されたい。当業者は、以下の特許請求の範囲及びその等価物によって規定される本発明の一般的な技術的思想及び技術的範囲から逸脱することなく、本明細書において多くの変更及び修正を行なうことができる。
【符号の説明】
【0020】
10 複合サイクル発電システム
15 主空気圧縮機
20 空気分離ユニット
25 ガス化装置
30 ガスタービンエンジン
35 蒸気タービン
40 圧縮機
45 燃焼器
50 浄化装置
55 タービン
60 発電機
65 熱回収蒸気発生器
70 負荷
100 ガス化装置
110 ヘッド端部分
120 テール端部分
130 容器本体
140 フィードインジェクタ
150 ノズル
160 反応帯
170 先端
180 通路
190 管
195 バヨネット形状
200 冷却水路
210 低温側
220 酸素通路
230 高温側
240 冷却水流
250 最大歪み領域
260 低温側厚さ
270 高温側厚さ
300 冷却水路
310 第1側
315 低温側
320 第2側
325 高温側
330 第1側厚さ
340 第2側厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に反応帯(160)を備えたガス化装置(100)用のフィードインジェクタノズル(150)であって、
前記反応帯(160)に向かって延在する複数の管(190)であって、それらの間に複数の通路(180)を画定する前記複数の管(190)と、
前記複数の管(190)のうちの1つを通って延在する冷却水路(300)であって、前記複数の通路(180)のうちの1つに隣接する第1側(310)と、前記反応帯(160)に隣接する第2側(320)とを含む前記冷却水路(300)とを備え、
前記第1側(310)は第1側厚さ(330)を有し、前記第2側(320)は第2側厚さ(340)を有しており、前記第1側厚さ(330)は前記第2側厚さ(340)以下である、
フィードインジェクタノズル(150)。
【請求項2】
前記第1側(310)は低温側(315)である、請求項1に記載のフィードインジェクタノズル(150)。
【請求項3】
前記第2側(320)は高温側(325)である、請求項1に記載のフィードインジェクタノズル(150)。
【請求項4】
前記複数の管(190)は、前記フィードインジェクタノズル(150)の先端(170)の周囲で前記反応帯(160)に向かって延在する、請求項1に記載のフィードインジェクタノズル(150)。
【請求項5】
前記複数の通路(180)のうちの前記1つは酸素通路(220)である、請求項1に記載のフィードインジェクタノズル(150)。
【請求項6】
前記冷却水路(300)は、内部に冷却水流(240)を含む、請求項1に記載のフィードインジェクタノズル(150)。
【請求項7】
前記複数の管(190)はバヨネット形状(195)である、請求項1に記載のフィードインジェクタノズル(150)。
【請求項8】
前記第1側厚さ(330)は、前記第1側(310)と前記第2側(320)との間の歪み領域(250)を最小化する、請求項1に記載のフィードインジェクタノズル(150)。
【請求項9】
前記第1側(310)は第1側温度を有し、前記第2側(320)は第2側温度を有しており、前記第1側温度は前記第2側温度よりも数倍低い、請求項1に記載のフィードインジェクタノズル(150)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−1907(P2013−1907A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−133378(P2012−133378)
【出願日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)