説明

ガス化設備

【課題】燃料粉砕物の押込み性能を改善し、固形燃料を円滑且つ安定的に投入可能なガス化設備を提供する。
【解決手段】ガス化設備1は、燃料容器に収容される燃料粉砕物を、キャリアガスG2を用いたエジェクタ9によってガス化炉へ押し込み供給して気体燃料を生成する。エジェクタ9は、ガス化炉に連通する供給管11に接続される出口17を有するケーシング13、及び、キャリアガスG2をケーシング13内へ噴出させるノズル15を有し、ノズル15は、ケーシング13内に突出して出口17近くに吐出口を有し、キャリアガスG2を出口17近くで供給管11と同軸状に噴出することによって、燃料容器から供給される燃料粉砕物の供給管11への導入を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭等の固形燃料をガス化して気体燃料として供給するガス化設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より使用されている固形燃料として、石炭、バイオマス、タイヤチップ等があるが、近年、このような固形燃料をガス化して気体燃料として供給することが研究され、固形燃料粉末をガス化炉で部分燃焼させて熱分解することによってガス化するガス化設備の開発が進められている。
【0003】
一般に、固形物を加熱炉に投入する際、投入途中で固形物が堆積したり、加熱炉内のガスが投入側へ逆流するのを防止する必要があり、ボイラーや焼却炉においては、固形物を炉内へ押し込むための空気を供給するように設計されている。この点に関し、例えば、下記特許文献1,2に記載される固形燃料粉末のガス化設備においては、ガス化炉内を不活性雰囲気に保つために、空気を使用せずに、窒素などの不活性ガス又は水蒸気を使用して燃料粉末を押し込むエジェクタを備えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−139963号公報
【特許文献2】特開2010−254728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガス化炉に供給される固形燃料は粗く粉砕して供給されるが、ガス化炉に固形燃料を導入する供給管は、ガス化炉からの逆流を防止するために比較的細く設計されるので、エジェクタは、供給管に固形燃料粉末を押し込み供給し易いように、供給管に向かって横幅が徐々に挟まる挟搾部を有する。しかし、エジェクタのような押込み部分は、低温に保持される燃料容器と高温のガス化炉との間に位置するため、温度又は湿度の変動に起因する固形燃料粉末の凝集が比較的生じ易い。このため、燃料粉砕物に含まれる微細粉末が供給管への出口付近に凝集して部分的にであっても出口に被さると燃料粉砕物の流れが完全に止まる可能性がある。
【0006】
本発明の課題は、上述の問題を解決し、固形燃料粉砕物の押込み性能を改善し、固形燃料粉砕物を円滑且つ安定的に投入可能なガス化設備を提供することである。
【0007】
又、本発明の課題は、固形燃料粉砕物の押込み性能の改善によってガス化炉からの逆流が効果的に防止され、安全且つ安定的に固形燃料のガス化を実施可能なガス化設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、エジェクタにおけるキャリアガスの噴出を工夫することによって、押込み性能を向上させて燃料粉砕物の詰まり及びガス化炉からの逆流を防止可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の一態様によれば、ガス化設備は、燃料容器に収容される燃料粉砕物を、キャリアガスを用いたエジェクタによってガス化炉へ押し込み供給して気体燃料を生成するガス化設備であって、前記エジェクタは、前記ガス化炉に連通する供給管に接続される出口を有するケーシング;及び、前記キャリアガスを前記ケーシング内へ噴出させるノズルであって、前記ケーシング内に突出して前記出口近くに吐出口を有し、前記キャリアガスを前記出口近くで前記供給管と同軸状に噴出することによって、前記燃料容器から供給される燃料の前記供給管への導入を促進する前記ノズルを有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エジェクタにおける押込み性能が向上し、燃料粉砕物の詰まりを防止して円滑に固形燃料をガス化炉に導入でき、押込み性能を利用してガス化炉からの逆流を効率的に防止できるので、安全且つ安定的にガス化処理を継続可能なガス化設備を提供でき、設備のメンテナンス頻度の低減や耐久性の向上にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明におけるガス化設備の要部を示す概略構成図。
【図2】本発明におけるエジェクタの作用を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、添付図面を参照して以下に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係るガス化設備の要部を示す。ガス化設備は、石炭、バイオマス、タイヤチップ等の固形燃料を粗く粉砕した燃料粉砕物を熱分解してガス化燃料を得る設備であり、微小粒を含む小塊状の燃料粉砕物を収容する燃料容器と、燃料粉砕物を熱分解して気体燃料を生成するガス化炉(図示略)と、キャリアガスを用いて燃料粉砕物をガス化炉へ押し込み供給するエジェクタとを有する。この実施形態のガス化設備1は、固形燃料として石炭粉砕物を処理し、燃料容器として石炭ホッパ3を備える。石炭ホッパ3は、スライドゲート5を介して配管7によってエジェクタ9と接続され、石炭ホッパ3から配管7中を鉛直方向に落下する石炭粉砕物(図中、白抜き矢印で流れを表示)をスライドゲート5が切り出すことによって、所定量の石炭粉砕物が断続的にエジェクタ9に供給される。石炭ホッパ3から石炭粉砕物と共に空気が流入するのを防止するために、配管7内に窒素、稀ガス、二酸化炭素等の不活性ガスG1を供給可能に構成される。この実施形態では、不活性ガスG1として窒素ガスが配管7内に放出され、その流量はバルブによって適宜制御されて、石炭粉砕物の供給を阻害しない程度に調整される。スライドゲート5を通過した石炭粉砕物は、エジェクタ9に落下し、キャリアガスG2(図中、矢印で流れを表示)によってエジェクタ9から供給管11へ押し込まれて供給管11内を鉛直方向に落下し、キャリアガスG2と共にガス化炉へ導入される。
【0014】
エジェクタ9は、頂部に配管7が接続されて石炭粉砕物を受けるケーシング13と、キャリアガスG2をケーシング13内へ噴出させるノズル15とを有し、ケーシング13は、下端の出口17に向かって挟搾される挟搾部を有し、出口17は、鉛直方向の供給管11に接続されてガス化炉と連通する。この実施形態では、ケーシング13は略円錐形の漏斗形状に形成され、ケーシングの側壁全体が傾斜する挟搾部として構成されているが、側壁の上部は同一径の円柱形に成形して下部のみを傾斜させて挟搾部として構成しても良い。
【0015】
ノズル15は、外部からケーシング13の頂部を貫通して内部に突出し、供給管11と同軸状に延伸してケーシング13の出口17近くに孔径3〜7mm程度の吐出口19を有する。出口17近くの吐出口19からキャリアガスG2を噴出することによって、供給管11と同軸状にキャリアガスG2のガス流が生じて、挟搾部を落下する石炭粉砕物を流圧で押しながら供給管11に流し込む。又、ガス流によってガス化炉からエジェクタ9への逆流も抑制される。キャリアガスG2として、窒素、稀ガス、二酸化炭素等の不活性ガス又は水蒸気、あるいは、これらを組み合わせたものが使用でき、この実施形態では水蒸気が用いられる。キャリアガスG2のガス流は、吐出口19の孔径より狭くなっても広くなっても良いが、ガス流が出口17周囲のケーシングに衝突して流れを乱さないように出口17におけるガス流の流れ幅が出口17の口径以下、好ましくは孔径より小さいことが肝要であり、ガス流が全て出口17から供給管11へ流れ込むことによってガス流近辺の石炭粉末を巻き込み、出口17周囲に石炭粉末が留まるのを防止する。従って、ノズル15の吐出口19の形状及び寸法は、出口17においてガス流が全て供給管11へ流れ込む流幅になるように調整される。ノズル15の吐出口19とケーシング13の出口17との距離は、ノズル15が石炭粉砕物の流れの妨げとならず、且つ、ガス流の流圧が出口17において押込み力(流圧)を失わない程度に設定される。従って、ノズル15の吐出圧が高い(ガスの流速が高い)と、吐出口19と出口17との距離は長く設定できるが、この際、キャリアガスG2の使用量が増加するのを抑制する観点から、吐出幅を狭めることによってガス流量を制限しつつ吐出圧及び流速を高めることが望ましい。
【0016】
配管11から投入される石炭粉砕物が円滑に出口17へ導入されるには、石炭粉砕物の安息角(45度程度)を考慮すると、挟搾部の壁面傾斜角度が70度程度以上であることが好ましいが、本発明においては、キャリアガスG2は、石炭粉末の供給方向と同一方向のガス流によって石炭粉砕物を効率的に押込むだけでなく、高流速で吐出するガス流周囲に発生する負圧により石炭粉砕物を引込む効果によって、出口17周囲に石炭粉末が留まる可能性をなくする作用があり、石炭ホッパ3から供給される石炭粉砕物の供給管11への導入が促進される。従って、ケーシング13の圧搾部の傾斜角度が出口17付近において減少しても、石炭粉砕物は出口17周囲の緩い傾斜に留まらずにガス流によって出口17に吸込まれるので、挟搾部の傾斜面を例えば半楕円球面状に湾曲するように形成してもよい。又、負圧による導入促進によって、供給管11を細くすることが可能になり、上述の実施形態における出口17及び供給管11の孔径は、40mm程度に設定されており、従来の100mm程度の供給管に比べてかなり細い。高流速のガス流による負圧は、スライドゲート5を通って落下する石炭粉砕物をケーシング13の軸中心方向へ引きつけるように作用するので、石炭粉砕物がケーシング13上に落下する衝撃を若干緩和することができる。尚、ガス流によってエジェクタ9内に発生する負圧は、スライドゲート5側からエジェクタ9への吸引作用も生じ得るので、配管7に供給される不活性ガスG1は、石炭ホッパ3からエジェクタ9へ空気が混入するのを防止する上で極めて有用である。
【0017】
このように、本発明のガス化設備は、石炭等の固形燃料の粉砕物をガス化炉へ円滑に導入でき、安全且つ安定的に固形燃料のガス化を継続できる。同様にして、バイオマスやタイヤチップ等の固形燃料からガス化燃料を得ることができる。本発明のガス化設備の主要部、つまり、エジェクタを含む燃料導入部分の構造は、他のガス化設備に応用することができ、例えば、前述の特許文献1,2のガス化設備等の粉体導入部分に置き換えて押込み性能を改善することができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
固形燃料のガス化炉への供給が円滑に行われることによって作業の確実性及び安全性が高まり、需要の高いガス化燃料を固形燃料から安定して供給可能なガス化設備が提供されるので、エネルギー資源の効率的利用に有用であり、又、メンテナンス頻度の低減や耐用年数の増加、操作性の向上に寄与する。
【符号の説明】
【0019】
1:ガス化設備、 3:石炭ホッパ、 5:スライドゲート、 7:配管、
9:エジェクタ、 11:供給管、 13:ケーシング、 15:ノズル、
17:出口、 19:吐出口、 G1:不活性ガス、 G2:キャリアガス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料容器に収容される燃料粉砕物を、キャリアガスを用いたエジェクタによってガス化炉へ押し込み供給して気体燃料を生成するガス化設備であって、前記エジェクタは、
前記ガス化炉に連通する供給管に接続される出口を有するケーシング、及び、
前記キャリアガスを前記ケーシング内へ噴出させるノズルであって、前記ケーシング内に突出して前記出口近くに吐出口を有し、前記キャリアガスを前記出口近くで前記供給管と同軸状に噴出することによって、前記燃料容器から供給される燃料粉砕物の前記供給管への導入を促進する前記ノズル
を有することを特徴とするガス化設備。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−246385(P2012−246385A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118913(P2011−118913)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(000180438)四電エンジニアリング株式会社 (14)