説明

ガス導入装置、及びこれを用いるガス導入方法

【課題】ガス分析装置に配管で接続されたシリンジを介して校正ガス等の加圧ガスを導入する際に、ガスの消費を抑えて運転コストを削減する。
【解決手段】加圧ガス接続口(開閉弁34)からシリンジ1の吸入吐出口12に至る配管3の一部に両端が開閉弁34及び32で区画されたガス封入区間を設ける。これにより、まず加圧ガスをガス封入区間に導入し、ガス封入区間の両端の開閉弁34及び32を閉じて加圧ガスを封入した後、下流側の開閉弁32を開き封入された加圧ガスを配管3全体に拡げると体積膨張による減圧が生じるから、ガス封入区間の内容積と配管3全体の内容積との比を適切に設定しておけば、減圧後のガス圧をシリンジ1の耐圧限度以下にすることができ、校正ガスの所要量はガス封入区間の内容積で定まる一定量に限られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、におい識別装置等のガス分析装置に加圧容器入りの試料ガス等を減圧し、さらに必要に応じて希釈して導入するガス導入装置、及びこの装置を用いるガス導入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス分析装置に配管で接続されたシリンジを介して試料ガス等を導入する方法が従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。図3にこの方法と同様原理に基づく従来のガス導入装置の概略構成例を流路図で示す。
【0003】
同図において、1はシリンジであって、図示しないアクチュエータで駆動されるプランジャ11の往復運動により吸入吐出口12からガスを吸入し、また吐出するものである。2はこのガス導入装置10から試料ガスの供給を受けるガス分析装置であり、開閉弁31とこれに連通する配管3を介してシリンジ1の吸入吐出口12に接続されている。配管3は、開閉弁34、35、36、及び37各々の一方の口にも連通しており、開閉弁34の他方の口は加圧ガス接続口として校正ガスボンベ4に、開閉弁35の他方の口は窒素ガス接続口として窒素ガスボンベ5に、開閉弁36の他方の口はサンプルバッグ接続口としてサンプルバッグ6にそれぞれ接続され、また開閉弁37の他方の口はガス排出口として大気に開放されている。
【0004】
このように構成されたガス導入装置10を用いてサンプルバッグ6から試料ガスをガス分析装置2に導入する手順の一例を次に記す。
(1)開閉弁35、37を開き、他の開閉弁は全て閉じた状態で、窒素ガスを窒素ガスボンベ5から開閉弁35、配管3、開閉弁37を順に通過する経路で大気に放出しながらプランジャ11を数回往復させて、配管3とシリンジ1の内部を窒素ガスで洗浄する。
(2)開閉弁36を開き、他の開閉弁は全て閉じた状態で、サンプルバッグ6からシリンジ1に所要量の試料ガスを吸入する。
(3)試料を希釈する場合は、上記(1)と同じ状態で、窒素ガスを大気に放出しながら試料ガスを吸入したシリンジ1にさらに所要量の窒素ガスを吸入する。
希釈しない場合は、そのまま次の(4)へ進む。
(4)開閉弁31を開き、他の開閉弁は全て閉じた状態で、プランジャ11を押し込み、シリンジ1内のガスをガス分析装置2に向けて吐出する。
【0005】
校正ガスを導入する場合は、上記各過程のうち(2)の過程を次に示す(2')のように変更する。
(2')開閉弁34、37を開き、他の開閉弁は全て閉じた状態で、校正ガスを校正ガスボンベ4から開閉弁34、配管3、開閉弁37を順に通過する経路で大気に放出しながらシリンジ1に所要量の校正ガスを吸入する。
【0006】
【特許文献1】特開2005−3387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように従来の方法では、ガラス製シリンジの耐圧性を考慮して、校正ガスなどの高圧容器入りのガスを導入する場合は、ガスを多量に大気に放出することにより配管内部のガス圧力をほぼ大気圧に保ちながらシリンジに吸入するオーバーフロー法が用いられた。しかし、この方法は多量のガスを放出するので、高価な校正ガスを無駄に消費することになり運転コストが嵩むことが問題であった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ガス分析装置に配管で接続されたシリンジを介して校正ガス等の加圧ガスを導入する際に、ガスの消費を抑えて運転コストを削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、加圧ガス接続口とシリンジの吸入吐出口とを連通する連通路の任意の地点を開閉弁の閉成にて区画し任意のガス封入区間を形成する。これにより、まず校正ガスをガス封入区間に導入し、ガス封入区間の両端(上流側と下流側)の開閉弁を閉じて封入した後、下流側の開閉弁を開き封入された校正ガスを配管全体に拡げると体積膨張による減圧が生じるから、ガス封入区間の内容積と配管全体の内容積との比を適切に設定しておけば、減圧後のガス圧をシリンジの耐圧限度以下にすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上記のように構成されているので、校正ガスの所要量はガス封入区間の内容積で定まる一定量に限られるので、校正ガスを無駄に放出する必要がなく、運転コストを削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明が提供するガス導入装置の特徴は、加圧ガス接続口とシリンジの吸入吐出口とを連通する連通路の一部区間の両端を開閉弁で区画したガス封入区間を設けるように構成した点である。従って、最良の形態の基本的な構成は、上記の構成を備えるガス導入装置である。
【実施例1】
【0011】
図1に本発明の一実施例を示す。同図において図3と同符号を付したものは図3と同一物であるから、ここで再度の説明は省略する。本実施例が従来と異なる点は、校正ガス接続口を兼ねる開閉弁34からシリンジ1の吸入吐出口12に至る配管3の途中にさらに開閉弁32を設けたことである。これにより、開閉弁34と開閉弁32とで挟まれる区間にガスを封入することが可能となるので、以下、この区間をガス封入区間と称する。このように構成された本実施例装置を用いてサンプルバッグ6から試料ガスをガス分析装置2に導入する手順は、前述した従来装置の場合と同様である。
【0012】
本実施例において校正ガスを導入する場合は以下の手順により行う。
(1)開閉弁35、37を開き、他の開閉弁は全て閉じた状態で、窒素ガスを窒素ガスボンベ5から開閉弁35、配管3、開閉弁37を順に通過する経路で大気に放出しながらプランジャ11を数回往復させて、配管3とシリンジ1との内部を窒素ガスで洗浄する。
(2)開閉弁34を開き、他の開閉弁は全て閉じた状態で、校正ガスボンベ4から校正ガスをガス封入区間に導入した後、開閉弁34を閉じて校正ガスをこの区間に封入する。
(3)開閉弁32を開き、ガス封入区間内の高圧の校正ガスを配管3全体に拡散させる。これにより封入された校正ガスは体積膨張により減圧される。
(4)プランジャ11を引いて配管3内の減圧された校正ガスの所要量をシリンジ1に吸入する。
(5)開閉弁37を数秒間開いてシリンジ1内のガス圧を大気圧に等しくする。
(6)希釈する場合は、上記(1)と同じ状態で、窒素ガスを大気に放出しながら校正ガスを吸入したシリンジ1にさらに所要量の窒素ガスを吸入する。
希釈しない場合は、そのまま次の(7)へ進む。
(7)開閉弁31を開き、他の開閉弁は全て閉じた状態で、プランジャ11を押し込み、シリンジ1内のガスをガス分析装置2に向けて吐出する。
【0013】
上記手順により導入される校正ガスの供給圧力と減圧後の圧力との関係は次式で表すことができる。
P2=P1×L/M ................................................(1)
ここで、P1:校正ガスの供給圧力(絶対圧)
P2:校正ガスの減圧後の圧力(絶対圧)
L:ガス封入区間の内容積
M:配管3の内容積(ガス封入区間を含む)
である。
(1)式からわかるように、配管3の内容積Mとガス封入区間の内容積Lの比を適切に設定すれば、高圧で供給される校正ガスの圧力をシリンジ1の耐圧限度以下にまで減圧することができる。
【0014】
上記の手順によるガス導入操作1回当たりの校正ガスの消費量は大気圧に換算しておよそP1×Lである。即ち、ガス封入区間の内容積で定まる一定量に限られ、無駄に放出される量が少ないから、従来と比較して校正ガスの消費を抑えることができる。
なお、P1またはLの値が小さく、1回で必要量のガスをシリンジ1に採取できない場合は、前記操作手順の(2)〜(5)を繰り返し行うようにしてもよい。
【0015】
具体的な数値例を示すと、
L=3ml、M=20ml、P1=10kg/cm
で、ガス導入量15mlとすると、1回当たりの校正ガス消費量は約30ml、減圧後のガス圧0.65kg/cmGとなる。これに対し、大量のガスを放出する従来法では、同条件で100〜200mlの校正ガスを必要とするので、本発明方法によれば校正ガス消費量を従来比15〜30%に抑えることができる。
【実施例2】
【0016】
図2に本発明の変形実施例を示す。同図において図1と同符号を付したものは図1と同一物であるから、ここで再度の説明は省略する。本実施例が実施例1と異なる点は、開閉弁32と開閉弁34との間にさらに開閉弁33を設けたことである。
開閉弁33を設けたことにより、ガス封入区間を、開閉弁32と33で挟まれる区間、開閉弁33と34で挟まれる区間、または開閉弁32と34で挟まれる区間の中から任意に選択することが可能となる。例えば、開閉弁33と34で挟まれる区間をガス封入区間とする場合は、開閉弁32を常時開いた状態で、前記操作手順における開閉弁32を開閉弁33と読み替えて操作すればよい。これにより、上記(1)式におけるLの値を3段階に選ぶことが可能となるので、圧力の異なる校正ガスにも対応可能となる。
さらに、開閉弁32〜34に直列に同様の弁を複数個設けることでLの値をより多段階に選択可能にすることもできる。
【0017】
なお、以上は主として校正ガスを導入する場合を例示して説明したが、本発明は校正ガス以外の加圧ガス、例えば圧力容器に収納された試料ガス等にも適用できる。
また、組成の異なる複数の校正ガスを用いる場合は、図1または図2における開閉弁34と並列に接続した同様の弁を複数個設け、これらの弁にそれぞれ校正ガスを接続するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は各種ガス分析に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例を示す図である。
【図2】本発明の他の実施例を示す図である。
【図3】従来の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
1 シリンジ
2 ガス分析装置
3 配管
4 校正ガスボンベ
5 窒素ガスボンベ
6 サンプルバッグ
10 ガス導入装置
11 プランジャ
12 吸入吐出口
31 開閉弁
32 開閉弁
33 開閉弁
34 開閉弁
35 開閉弁
36 開閉弁
37 開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランジャの往復運動により吸入吐出口からガスを吸入吐出するシリンジと、それぞれ開閉弁を介して前記吸入吐出口に連通する加圧ガス接続口とガス分析装置との接続口とガス排出口とを備えて前記ガス分析装置にガスを導入するガス導入装置において、前記加圧ガス接続口と前記吸入吐出口とを連通する連通路の任意の地点を開閉弁の閉成にて区画し任意のガス封入区間を形成したことを特徴とするガス導入装置。
【請求項2】
ガス封入区間の両端が直列に接続された3個以上の開閉弁のうちの任意に選択可能な2個の開閉弁で区画されたことを特徴とする請求項1に記載のガス導入装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガス導入装置を用いるガス導入方法であって、前記ガス封入区間に加圧ガスを導入した後、前記ガス封入区間の両端の開閉弁を閉じてこれを封入する過程と、前記ガス封入区間の下流側の開閉弁を開き封入されたガスを降圧する過程と、降圧されたガスを前記シリンジに吸入する過程と、前記ガス分析装置との接続口に連なる開閉弁を開くと共にシリンジ内のガスを吐出する過程とを含むガス導入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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