説明

ガス検出方法及びシステム

対象ガスと反応して、物質によって吸収又は伝達される放射の波長に変化をもたらすことができる物質(12)(「変色物質」)を担持する基体(1)を備える比色分析のガス検出器システムを動作する方法が開示される。この方法は、(a)変色物質を含む基体の領域(15)上に、直接又は間接的に変色物質と反応して、その物質によって吸収又は伝達される放射の波長に変化をもたらす所定の濃度の化学薬品を塗布するステップと、(b)変色物質と化学薬品との反応生成物によって吸収又は伝達される波長で、前記領域(15)において吸収又は伝達される放射を検出するステップと、(c)第2の波長で検出された放射量にしたがって信号を生成するステップであって、前記信号が、基体の変色物質の量に応じて変化する生成ステップとを含む。その信号を使用して、対象ガスに露出したときの変色物質の読み取り値を補正し、基体上の変色物質の量のばらつきを補償することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に有毒ガスを検出するための検出器に関する。検出器は、感知されるガス又は蒸気、或いはガス又は蒸気群(本明細書中では以下「対象ガス」と称する)と反応する物質を含み、その反応は、物質の放射吸収に変化を引き起こし、それは通常、可視スペクトルの色の変化によって明白に示される。
【背景技術】
【0002】
特定の化学物質を含浸させた紙テープ状の基体を有する化学薬品カセットを使用することによって有毒ガスが検出されることが知られている。こうした紙は通常、吸収性があり、その物質の溶液の槽に浸漬することによって化学物質を含浸する。続けてそのテープを乾燥させカセットに装填する。使用中は、その紙テープは、ガスをモニターされる空気からテープを通して引き寄せる分析器に置かれる。テープの上又は中に吸収された化学物質は、対象ガスと反応し変色するように選択される。変色の程度は、所定の量の大気ガスへの露出の場合、モニターされる空気中の対象ガスの濃度の測度を提供する。分析器は、色の変化、すなわち、未反応の変色物質がその波長では全く吸収又は伝達しないか、或いはより小さい範囲で吸収又は伝達するある波長で、反応生成物によって吸収又は伝達される放射を検出し、次いで、色の変化を分析器にあらかじめプログラムされた既知のガスの反応表と比較することによってガス濃度を算定する。テープを定期的に前進させて、対象ガスがそこを通して引き寄せられる分析器内の位置に、未使用の長さのテープを導いて、未使用の長さのテープを使用してさらに測定を行う。こうしたテープシステムの主な利点の一つは、可視のテープの変色によって見られるような、ガスの陽性反応の永久的な可視記録が存続することである。
【0003】
変色反応は、モニターされる空気中の対象ガスの量の測度を与えることになる。しかし、変色反応は、テープ中に吸収され又は上に塗布された変色物質の量に応じて変化し、それは、製造中に基体に塗布された変色物質の量に応じて変化することであり、これは製造業者によって適用される制御に応じてばらつきが生じる可能性がある。第2に、テープ及び変色物質は、温度、湿度及び/又は光の条件下で徐々に劣化する恐れがある。したがって、存在している変色物質の量は、製造後に経過した時間に応じて変わることになる。最終的に、基体は、その密度又はその吸収率のいずれも必ずしも一様ではなく、異なる領域では異なる量の変色物質を吸収する可能性がある。これら全ての要因は、テープからテープへだけではなく単一のテープの長さに沿っても、所与の濃度の対象ガスに対する反応に不正確さをもたらす恐れがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一目的は、上述の問題点のいくつか又は全てを克服又は緩和することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、対象ガスと反応して、物質によって吸収又は伝達される放射の波長に変化をもたらすことができる物質(本明細書では以下「変色物質」と称する)を担持する基体を備える比色分析のガス検出器システムを動作する方法であって、
(a)変色物質を含む基体の領域上に、直接に又は間接に変色物質と反応して、その物質によって吸収又は伝達される放射の波長に変化をもたらす所定の濃度の化学薬品を塗布するステップ(ステップ(a))と、
(b)変色物質と化学薬品との反応生成物によって吸収又は伝達される波長(「第2の波長」)で、前記領域において吸収又は伝達される放射を検出するステップであって、前記第2の波長が、未反応の変色物質が全く吸収又は伝達しないか、或いは前記反応生成物より小さい範囲で吸収又は伝達する波長である検出ステップ(ステップ(b))と、
(c)第2の波長で検出された放射の量にしたがって信号を生成するステップであって、前記信号が、ある特定の点で基体の変色物質の量に応じて変化する生成ステップ(ステップ(c))とを含む方法が提供されている。
【0006】
この信号を使用して、対象ガスに露出しているときの変色物質の読取り値を補正して、基体上の変色物質の量のばらつきを補償することができる。
【0007】
化学薬品は、それ自体が変色物質と反応してもよく、1つ又は複数の他の成分と反応して変色物質と反応する生成物を形成してもよい。他の成分は、基体にあらかじめ提供されていてもよく、化学薬品と同じ手順の一部として塗布されてもよい。例えば、液体Aを塗布し、その後に続けて液体Bを塗布し、それらが一緒に反応して第3の物質「C」を生成し、物質Cが変色物質と反応する。この例は、(固体として又は弱アルカリ性溶液でのいずれかの)水酸化アンモニウムを付着させ、次いで弱酸を加えることができるアンモニア溶液の生成である。
【0008】
その装置は一般に、所定の量の大気ガスを変色物質を通して又はその上で引き寄せる、例えば、あらかじめ設定した時間ポンプを動作させてガスを引き寄せるように設定されている。好ましくは、塗布される化学薬品の量は、大気ガスが変色物質を通して又はその上で引き寄せられる時間を考慮に入れて、予期される対象ガス濃度を確かめることが期待できる変色の範囲内で変色物質を変色させるような量である。
【0009】
ステップc)からの信号を、比色分析のガス検出器システムが適切に動作し理にかなった正確な応答を発生していることを確認するためにいくつかの方式で使用することができる。こうした方法は、その信号を所定の範囲又は閾値と比較し、測定された信号がその範囲外にある又はその閾値を超える場合はシステムの動作が不良であることを示す警報信号を発生するステップを含むことができる。
【0010】
この方法は、
(d)基体の第2の領域を空気からのガスと接触させるステップであって、第2の領域が、化学薬品がステップ(a)で塗布された領域とは異なる、接触ステップ(ステップ(d))と、
(e)変色物質の対象ガスとの反応生成物によって吸収又は伝達される波長(「第1の波長」)で放射の量を検出するステップであって、前記第1の波長が、未反応の変色物質が全く吸収又は伝達しないか、或いは前記反応生成物より小さい範囲で吸収又は伝達する波長である検出ステップ(ステップ(e))と、
(f)ステップ(e)で検出された放射から空気の対象ガスの量を算定するステップであって、前記算定は、ステップ(b)で検出された放射にしたがって空気の対象ガスの算定された量を調整するステップを含む算定ステップ(ステップ(f))とをさらに含むことができる。
【0011】
その場合、ステップ(e)で検出された放射を較正及び/又はゼロ合せするように、ステップ(c)からの信号を使用することによってその算定を調整することができる。
【0012】
対象ガスを計測するために使用される第2の領域は、好ましくはステップ(a)で化学薬品が塗布された領域の隣にある。
【0013】
本発明の特に重要な副次的な態様は、液体はガスよりずっと安価で保存が簡単であり、またガスより塗布が簡単で、特に所与の制限された位置に塗布する場合に簡単であり、厳密な量の液体を測定するのがより簡単で安価であるので、化学薬品を液体とすることができることである。
【0014】
比色分析ガス検出器システムは、主として、有毒ガス、特に、電気化学的に感知することが難しい、又は電気化学的技術によって通常検出可能な濃度より低い濃度の有毒ガスを測定するために使用される。それらには、塩化水素、臭化水素及びフッ化水素、オゾン、アルシン、ホスフィン、ジボラン及びシランが含まれる。使用される化学薬品は、化学薬品との反応が基体の変色物質の量に応じた変色をもたらす限りは、意図された対象ガスが変色物質と反応する方式に対応した方式で変色物質と反応する必要はない。しかし、化学薬品は、対象ガスと同じ方式で反応することが多い。例えば、アンモニア、塩化水素、臭化水素及びフッ化水素などの酸性又は塩基性ガスの検出のために使用される変色物質は、例えばpH指示薬などのpH依存性のものとすることができ、そのためこのような状況において使用される化学薬品は、例えば水酸化ナトリウム又は水酸化アンモニウム溶液などの塩基、又は例えば塩酸などの酸とすることもできる。同様に、オゾンを検出するために使用される変色物質を、オゾンによって酸化させ変色させることができ、そのためこのような状況において使用される化学薬品は、例えば過酸化水素又は次亜塩素酸などの他の酸化剤でよい。どの水素化物の場合でも、アンモニア(又は水酸化アンモニウム)を使用することができる。
【0015】
したがって、変色物質が空気中の対象ガスと反応した後に検出された波長(第1の波長)は、変色物質の化学薬品との反応の後に検出された波長(第2の波長)と同じでよく、検出を単純にするので好ましくはそれらは同じ波長である。しかし、第1の波長と第2の波長が異なることもあると予想される。
【0016】
基体に塗布される化学薬品は、任意選択で希釈液、溶液、ゲル、エマルション又はサスペンションと混合された液体試薬でよい。
【0017】
本発明は、モニターされる空気中の対象ガスの存在を検出し且つ/又は測定するための比色分析のガス検出器システムであって、
(a)空気からのガスのサンプルを、変色物質を担持する基体と接触させるように構成されたガス感知ステーションと、
(b)基体を支持し、連続する基体又は同じ基体の連続する部分をガス感知ステーションに前進させるように構成されたホルダと、
(c)化学薬品リザーバと、
(d)所定の分量の化学薬品をリザーバから変色物質を含む基体の領域上に塗布するための塗布器と、
(e)(i)化学薬品が塗布された変色物質によって吸収又は伝達される放射と、(ii)空気からのガスによって接触された変色物質によって吸収又は伝達される放射とを検出し、次いで検出された放射にしたがって信号を発生するように構成された放射検出器と、
(f)放射検出器からの信号を処理し、(e)(ii)で検出された放射から導き出された信号から空気中の対象ガスの量を算出するように構成されたプロセッサとを備えるシステムも提供する。
【0018】
プロセッサは、好ましくは、(e)(i)で検出された放射から導き出された信号を使用することによって、空気中の対象ガスの量の算定を調整し、例えば、(e)(i)で検出された放射から導き出された信号を使用することによって対象ガスの量の算定を較正するように構成される。
【0019】
(e)(i)及び(e)(ii)で検出された放射は、好ましくはそれぞれ第1及び第2の波長に制限される。
【0020】
放射検出器は、放射(e)(i)及び放射(e)(ii)を検出するように構成された単一の検出器でもよく、放射(e)(i)と放射(e)(ii)のための別々の検出器でもよい。
【0021】
システムは、コントローラの一部とすることができる警報発生器を含むことができ、この警報発生器は、対象ガスの量を示す信号を所定の範囲の許容値又は閾値と比較し、信号が所定の範囲外にある又は閾値を超える場合は警報ルーチンを開始するように構成される。この警報は、可視式及び/又は可聴式警報でよく、ガス検出器システムの一部又はシステムから離れたもの(或いはむしろ両方)でよい。
【0022】
ガス感知ステーションは一般に、
(a)リザーバからの所定の量の化学薬品が基体上に塗布される位置と、
(b)空気からのガスが基体を通って又は上で引き寄せられる位置と、
(c)化学薬品が塗布された変色物質によって吸収又は伝達された放射が検出される位置と、
(d)空気からのガスに露出された後に変色物質によって吸収又は伝達された放射が検出される位置とを含む。
【0023】
それらの位置は、全て同じとすることも異なるものとすることもできる。位置(a)と(b)は一般的に、互いに異なり且つ位置(c)及び(d)とは異なるものであろう。位置(c)と(d)も、異なるものとすることもできるが、好ましくは同じである。それらの位置が異なるときは、それらは好ましくは互いに隣接して配置される。ガス感知ステーションで実行される機能は、異なる基体又は単一の基体の領域に同時に行うこともでき、別のときに行うこともできる。
【0024】
本発明の重大な一利点は、単純に、安く、較正ガスをシステムに供給するための複雑な構成を提供する必要なしにシステムを較正することができることである。
【0025】
液体の化学薬品を塗布するための塗布器は、インクジェットプリントヘッドでよく、必要な量の液体を基体上に正確に測ることができ、安価で電力消費量が比較的少ない。しかし、その代わりに他の塗布器、例えばタンパープリント(tamper printing)又は注射器式ディスペンサ(syringe dispenser)の使用を提供することができる。
【0026】
変色物質を担持する基体を有する既知のガス検出システムは、周期的に対象ガスの読取りを行うように設定されていることが多い。各読取りの前に、(基体を複数の読取りのために使用することができる場合は)基体はガス感知ステーションに進められるか、又は(基体を単一の読取りのためににしか使用することができない場合は)新しい基体がガス感知ステーションで提供される。
【0027】
こうした構成を本発明で使用することができる。モニターされる空気の対象ガスの含有率の各読取りの前、又はn回目ごとの読取りの前に化学薬品を基体に塗布することができる。ここでnは、1より大きい整数である。化学薬品が塗布される領域は、好ましくは放射検出器で感知される基体の一部でしかないので、化学薬品の塗布により起こるその領域の変化した放射が、モニターされる空気中の対象ガスの存在のために起こる変色を検出するのと同じ装置で検出することができる。こうした構成は、基体上の変色物質の濃度のばらつきのために起こるエラーを最小限に抑える実際の対象ガスの読取りが行われる位置の近くで較正の読取りを行うことができることを意味する。
【0028】
変色物質が基体の別々の領域に提供される場合は、化学薬品を別々の領域の一部にだけ塗布することができる。
【0029】
好ましくは、システムは、以下の機能のうち1つ又は複数を含むマイクロプロセッサによって制御される。以下の機能とは、基体の前進、基体の上又はそれを通るガスの引き寄せ、化学薬品が塗布された領域及びモニターされる空気からのガスに露出される領域の両方における変色物質の変化した波長の読取り、化学薬品の塗布、警報又は較正の機能、並びに検出された対象ガスの量の印刷、表示及び保存である。
【0030】
好ましい実施形態においては、化学薬品が塗布され、続いて放射の変化が感知された後で、モニターされる空気からのガスが基体の上又はそれを通って引き寄せられる。というのは、そうでなければ、モニターされる空気中の有毒ガスが、化学薬品が塗布された領域の変化した放射の読取りに影響を及ぼす可能性があるからである。或いは、較正ステップは、正確なガスの較正をチェックするために、陽性のガスの読取りの後(警報が発せられた後)にだけ起こってもよい。この手順は、テープ(又は他の基体)を陽性の読取り値を引き起こした部分の前のテープの一部分に巻き戻すことができ、較正を行い、次いで、その手順を陽性のガスの読取り値を引き起こした部分の後の基体の一部分に繰り返し、それにより、陽性のガスの読取り値を引き起こした部分のテープの両側の変色物質の量の情報を提供し、それにより、読取りをさらに正確にする。この態様は、施設内の作業者がさらされてきたであろうガスの量の永久の記録を提供するのに非常に重要であるかもしれない。
【0031】
現行の比色分析のガスセンサを、本発明に適合するように設計変更することができる。
【0032】
こうした構成は、特に先の同時係属の2004年10月8日出願の欧州特許出願第04256223.1号に関連して記載されたシステムに有利である。
【0033】
2つ以上の別々の変色物質の領域が常にガス検出ステーションの基体上に存在してよく、この場合、別々の領域はそれぞれ独立に較正することができる。2つ以上の別々の変色物質の領域は、当該の空気中の2種類以上のガスの存在をモニターするために、又は、クロスインディケーションガス(cross−indication gas)、すなわち、(対象ガスを除く)変色物質に変化をもたらすガスの量を測定するためにガス感知ステーションに存在することができる。
【0034】
基体は、ストリップ又はテープの連続した領域が上述のように現在使用されているのと同じ構成でモニターされる空気にさらされるように、カセットの中に挿入することのできるストリップ又はテープでよい。この場合、基体は、モニターされる領域からのガスのサンプルがそれを通って引き寄せられるようにガス多孔質でよく、ガスが基体上を通らなければならない場合には無孔でもよい。さらに、基体は、塗布される液体の化学薬品が簡単に基体に保持されるように、好ましくは液体吸収性である。しかし、液体が、それが付着された場所から大幅に移動するほど吸収性があるべきではない。
【0035】
本発明を、添付の図面の図1から3を参照して例示のみによってさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
最初に図1及び2を参照すると、図ではモータ(図示せず)によって2つのスプール11の間を矢印「B」の方向に前進させることのできるテープが示されている。テープ10は、変色物質領域、この場合はドット12をその上に付着させる、例えば、吸収性の紙などの基体10から構成される。図1では、ドットは、単一の列に配置されているが、2つ以上の列のドット12が提供されてよく、各列に異なる変色物質を使用することができる。例えば、1列のドットをあるタイプの変色物質で構成してよく、異なる対象ガスを検出するために第2の列のドットを異なるタイプの変色物質から形成してよい。
【0037】
ドット12は、基体10上に製造業者によって形成してもよく、ユーザによってその場で付着させてもよい。どちらの場合でも、それらはインクジェット印刷技術によって適切に配置される。
【0038】
以下の変色物質1から3を使用してドット12を形成することができる。
【0039】
物質1
水溶液又はメタノールなどの有機溶剤は、
フルオシン(fluoscine)系染料であるエオシンイエロー(eosine yellowish)(カラーインデックス、アシッドレッド87)0.1重量%、
パラトルエンスルホン酸0.3重量%、及び
グリセリンなどの多価アルコール15重量%を含む。
この物質は、酸のためにその物質のpHが非常に低く維持されるので乾燥時には実質上透明又は非常に薄いピンク色である(その染料は、中性又は塩基性のときにだけその色を示す)。こうした物質を使用して、その物質をより塩基にするガスによって(アンモニアなどの)塩基性ガス状成分の濃度を検出することができ、したがってその染料の自然の色が現れることが可能である。色の変化は、透明から黄色である。
【0040】
物質2
エオシンイエローの代わりに、ローズベンザル(rose benzal)、フロキシン、エオシンブルー(eosine bluish)、又はエリスロシンを使用することを除き、物質1と同様である。パラトルエンスルホン酸の代わりに、ナフタレンスルホン酸又はベンゼンスルホン酸を使用することができる。物質2も塩基性ガスの検出のために使用することができる。
【0041】
物質3
溶液:濃縮硝酸1.5ml、グリセリン25ml、及びメタノール224ml。
活性成分:硝酸銀2.5グラム。
基体:ケイ酸(又はシリカゲル)で被覆した紙テープ。
【0042】
こうした物質は、アルシン、ホスフィン、ジボランなどの金属水酸化物類を検出するために使用することができる。それらの物質に露出すると、付着した物質は、透明から灰色/黒色に変色する。濃縮硝酸の代わりに、他の有機酸又は無機酸、例えば、物質1及び2において前述したような物質1及び2で言及された酸の1つを使用することができる。加工のときに水性溶液に比べてテープを簡単に乾燥させることができるのでアルコール(メタノール)を溶液として選んだが、他のアルコール及び溶液、例えばエチルアルコール及びイソプロピルアルコールを使用することができる。但し、揮発性の溶液が好ましい。グリセリンは、入ってくる水素化ガスとテープ試薬との意図した反応が起こり得るのに十分テープを湿った状態に維持することによって、テープの吸着性の能力を強化する。他のグリコール類、例えば、エチレングリコール、プロプレングリコール及びトリメチレングリコールを使用することができる。しかし、コストの面からはメタノール及びグリセリンの使用が好ましい。
【0043】
上記の物質3をその上に付着させたテープは、通常の保管条件下で室温で光から保護して少なくとも6か月間は地を白色に維持する。6か月後でも、テープは、水素化ガス類に対して依然として感度(±10%)を示すことができる。
【0044】
硝酸銀活性成分用のより一般化された溶液は、
酸0.1〜5%、
グリコール5〜20%、及び
アルコール94.9〜75%である。
【0045】
装置は、ガス検出ステーション14を含む。インクジェットプリンタ24が、ガス検出ステーションの位置17に提供され、マイクロプロセッサ26の制御下で、各ドット12の中心領域15に、プリンタ内のリザーバ(図示せず)に保持されている所定の量の液体を塗布する。プリンタは、様々な液体を塗布するための複数のインクジェットプリントヘッドを組み込むことができる。液体は、ドット12の変色物質と反応してこうした物質に色の変化をもたらす。物質1及び2用の液体は、例えば水酸化ナトリウムなどの緩衝塩基でよく、物質3用の液体は、水酸化アンモニウムでよい。
【0046】
ガス検出ステーション14において、プリンタ24の下流の位置16に検出器22が提供され、その検出器は、変色物質の液体との反応生成物によって吸収又は伝達される波長でドット12内の領域15によって伝達される放射を測定し、未反応の変色物質がその波長で放射を吸収又は伝達しない、或いは未反応の変色物質より小さい範囲で吸収又は伝達する。検出器は、マイクロプロセッサ26に信号を生成し、マイクロプロセッサは、その信号をあらかじめプログラムされたルックアップテーブルと比較する。領域15に付着させた液体の濃度は既知のものなので、測定された変色の程度は、ドット12の変色物質の濃度に応じて決まるようになり、以下に説明するようにこの情報を使用して装置をゼロ合せし且つ/又は較正することができる。やはり以下に説明するように、検出器は、領域15の外側のドット12によって伝達される又は吸収される放射も測定することができる。
【0047】
検出器22は、適切なフィルタの後ろに配置された感光性のセルでよく、それは、そのセルに到達する放射を対象ガスと反応した後で変色物質によって伝達される放射に制限する。こうした感光性のセルは、スチール又はビデオカメラでよく、それは、フィルタを通過した、領域15を含む変色物質のドット12の領域の画像をカラー又はグレースケールのいずれかで形成する。その領域の画像を形成する画素の輝度を使用して、変色を評価することができ、その色の変化はカメラによって記録することができる。
【0048】
位置16にはさらにプレナムチャンバが提供される。現行の比色分析のガス検出と同様に、モニターされる空気からのガスを、ガス検出ステーション14内の位置16にあるドット12又は各ドット12を通って又は上を越えて引き寄せることができる。プレナムチャンバ18を、例えば、ポンプ(図示せず)などの減圧源に、ライン20を介して連結され、このような配置は、モニターされる空気からのガスを矢印「A」の方向にテープ基体を通して引き寄せる。ポンプは、好ましくはマイクロプロセッサ26によって制御される。
【0049】
一度、モニターされる空気からのサンプルガスを位置16のドット12を通して又は上を越えて引き寄せると、ドット12によって伝達される放射は、検出器22によって測定される。また、マイクロプロセッサ26に供給される信号が生成され、そのマイクロプロセッサは、その信号をあらかじめプログラムされたルックアップテーブルと比較する。対象ガスへの露出に続き、変色物質の波長で測定が行われる。この波長での変色の程度は、空気内の対象ガスの濃度に応じて変化するので、伝達される色は、対象ガスの濃度の示度となる。変色物質によって伝達される放射を測定するためには、テープを適切な放射源に露出することになり、その放射とは単純に周囲放射でよい。
【0050】
装置の機能を以下に説明する。
【0051】
ドット12は、例えば、円形又は正方形などの形状のものでよく、どのような寸法でもよい。ドットの代わりに、ストリップ状の変色物質を使用してもよく、テープに一様に単一の変色物質を含浸させてもよい。変色物質をインクジェットプリンタによって付着させてもよく、変色物質があらかじめ塗布された基体を製造業者によって供給してもよい。
【0052】
インクジェットプリンタ24を使用して変色物質のドット12をブランクの基体テープ10上に付着させる場合は、付着させる物質は、各ドットの中心領域15に塗布された液体を有する前に乾燥することができるようにすべきである。中心領域15に液体を塗布する前にテープが乾燥しない可能性があるが、このことは以下に説明する計測に不正確さをもたらす恐れがあり、そのため好ましくない。
【0053】
図3は、図1に示すテープ及び図2に示す装置を使用することにより対象ガスを検出するために使用されるステップのフローチャートである。
【0054】
ステップ1では、インクジェットプリンタ24が、既知の組成及び濃度の較正用液体を、ガス検出ステーション14の位置17でプリンタ24に対向して配置されたドット12の中心領域15に塗布する。こうした液体は、領域15の変色物質を変色させ、変色の程度は、ドット12の変色物質の量に応じて変化するであろう。
【0055】
ステップ2では、ドット12を、ステーション17からステーション16で光検出器22に対向する位置に前進させる。ドット12の中心領域15からの放射を光検出器22によって計測する。その光検出器は、好ましくはスチール又はビデオカメラである。このことは、ガス感知ステーションの位置16にあるドット12の領域15の画像の画素を分析することによって実現される。したがって、例えば、フィルタは、基体10とカメラ22の間に配置することができ、変色物質が液体のために変色した後でその波長で放射を伝達する。次いで、伝達された放射の強度をカメラ16によってグレースケール又はカラーのいずれかで測定することができる。
【0056】
信号がカメラ22によってマイクロプロセッサ26に送られ、マイクロプロセッサは、領域15によって伝達された放射の測度を提供する。その信号は、位置17で塗布された液体によって引き起こされたドット15の変色の程度の測度を、したがってドット15に提供された変色物質の量の測度を提供する。
【0057】
ステップ4では、ステップ3で得られた測定値をマイクロプロセッサによって2つの方式で使用することができる。まず第1に、ステップ3からの測定値を所定の範囲の値と比較し、測定値が範囲外にある場合に警報器28が与えられる警報信号を生成することが可能である。ドット12の変色物質の濃度を比較的狭い濃度の範囲内に制御すべきである。したがって、液体がインクジェットプリンタ24によって塗布されるときに、領域15の変色物質の濃さも狭い範囲内に入るべきである。計測された濃さがその範囲外である場合は、使用されているテープ10が仕様の範囲内ではないこと示すエラー信号又は警報信号が生成される。これにより、ユーザが不良テープを新しいテープに換えることが可能になる。
【0058】
或いは又はさらに、ステップ3からの信号の大きさは、ドット12の変色物質の量に応じて変化し、以下に説明するようにモニターされる空気中の対象ガスの量のより正確な測度を提供するために、実際に基体上に存在する変色物質の濃度を考慮に入れて、以下のステップ7で行われる測定値を調整するために使用することができる。
【0059】
ステップ5では、ポンプを作動させてライン20を通して矢印「A」の方向に空気を引き寄せ、プレナムチャンバ18内に減圧を引き起こす。プレナムチャンバ18の減圧により、モニターされる空気からテープ10を通して空気を引き寄せる。空気中に対象ガスがあればそれは、ドット12の変色物質に変色を引き起こすであろう。ポンプは所定の時間動作する。(中心領域15から離れた)ドット12の変色は、カメラ22によって測定され(ステップ6)、信号がマイクロプロセッサ26に供給され、ドット12に実際に付着させた変色物質の量にある程度左右される。ステップ3による信号は、ドットの変色物質の量の測度を与え、したがって、ステップ7では、ステップ3による測定値を利用してステップ6による測定値を調整し、位置16においてドット12に存在する変色物質の量の最終の測定値を提供する。これにより、モニターされる空気中の対象ガスの量のより正確な測度を提供する。マイクロプロセッサは、いくつかの異なる方式で、例えば、ステップ3で測定された対象ガスの量の値に補正率を適用することにより、又はルックアップテーブルをまとめてステップ3による信号と関連づけられたステップ6による様々な異なる信号のそれぞれと対象ガス濃度を記憶することにより、このことを達成することができる。こうした構成の両方が、基体上の変色物質の量にしたがってマイクロプロセッサの出力を較正する。
【0060】
ステップ8では、ステップ7で算定された対象ガスの量が、プリンタ、レコーダ又はディスプレイ(図示せず)上に、印刷され、記録され又は表示される。さらに又はその代わりに、閾値を超えている場合は、ステップ7で算定された対象ガスの量を利用して、警報28を作動させることができる。
【0061】
上記の説明はテープに関して詳細に説明してきたが、変色物質の別々の領域を含む基体がテープである必要はなく、他の様式、例えばA4の紙を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明にしたがって使用されるテープの一部分を示す図である。
【図2】本発明による比色分析のガス感知装置の概略図である。
【図3】図2のシステムの動作を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象ガスと反応して、物質によって吸収又は伝達される放射の波長に変化をもたらすことができる前記物質(以下「変色物質」と呼ぶ)を担持する基体を備えた比色分析のガス検出器システムを動作させる方法であって、
(a)変色物質を含む前記基体の領域上に、直接又は間接的に前記変色物質と反応して、前記物質によって吸収又は伝達される前記放射の前記波長に変化をもたらす所定の濃度の化学薬品を塗布するステップ(ステップ(a))と、
(b)前記変色物質と前記化学薬品との反応生成物によって吸収又は伝達される波長(「第2の波長」)で、前記領域において吸収又は伝達される前記放射を検出するステップであって、前記第2の波長が、未反応の変色物質が全く吸収又は伝達しないか、或いは前記反応生成物より小さい範囲で吸収又は伝達する波長である検出ステップ(ステップ(b))と、
(c)前記第2の波長で検出された放射量にしたがって信号を生成するステップであって、前記信号が、前記基体の変色物質の量に応じて変化する生成ステップ(ステップ(c))とを含む、上記方法。
【請求項2】
ステップ(c)による前記信号を所定の範囲又は閾値と比較し、測定された前記信号が前記所定の範囲外又は前記閾値を超える場合は前記システムの動作が不良であることを示す警報信号を生成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(d)前記基体に前記空気からのガスを接触させるステップ(ステップ(d))と、
(e)前記変色物質の前記対象ガスとの反応生成物によって吸収又は伝達される波長(「第1の波長」)で放射量を検出するステップであって、前記第1の波長が、未反応の変色物質が全く吸収又は伝達しないか、或いは前記反応生成物より小さい範囲で吸収又は伝達する波長である検出ステップ(ステップ(e))と、
(f)ステップ(e)で検出された前記放射から前記空気中の対象ガスの量を算定するステップであって、前記算定が、ステップ(b)で検出された前記放射にしたがって前記空気中の対象ガスの前記算定された量を調整するステップを含む算定ステップ(ステップ(f))とをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(e)で検出された前記放射を較正及び/又はゼロ合せするように、ステップ(c)による前記信号を使用することによって前記算定を調整する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記化学薬品が塗布された前記領域が、前記化学薬品が塗布されなかった変色物質によって囲まれる又はその隣にある、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記化学薬品が液体である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
モニターされる空気中の対象ガスの存在を検出し且つ/又は測定するための比色分析のガス検出器システムであって、
(a)前記空気からのガスのサンプルを、変色物質を担持する基体と接触させるように構成されたガス感知ステーションと、
(b)前記基体を支持し、連続する基体又は同じ基体の連続する部分を前記ガス感知ステーションに前進させるように構成されたホルダと、
(c)化学薬品リザーバと、
(d)所定の分量の化学薬品を前記リザーバから変色物質を含む前記基体の領域上に塗布するための塗布器と、
(e)(i)前記化学薬品が塗布された前記変色物質によって吸収又は伝達される放射と、(ii)前記空気からのガスによって接触された前記変色物質によって吸収又は伝達される放射とを検出し、次いで検出された前記放射にしたがって信号を発生するように構成された放射検出器と、
(f)前記放射検出器からの前記信号を処理し、(e)(ii)で検出された前記放射から導き出された前記信号から前記空気中の対象ガスの量を算出するように構成されたプロセッサとを備える、上記比色分析のガス検出器システム。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記(e)(i)で検出された前記放射から導き出された前記信号を使用することによって、前記空気中の対象ガスの量の算定を調整するように構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサが、前記(e)(i)で検出された前記放射から導き出した前記信号を使用することによって、対象ガスの量の算定を較正するように構成される、請求項7又は8に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサによって発生された前記信号を所定の範囲の許容値又は閾値と比較し、前記信号が前記所定の範囲外にある又は前記閾値を超える場合は警報ルーチンを開始するように構成された警報発生器を含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記プロセッサが、化学薬品を塗布する前記塗布器を制御し、放射を検出する前記検出器を制御するように構成される、請求項7から10までのいずれか一項に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−523359(P2008−523359A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543932(P2007−543932)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004693
【国際公開番号】WO2006/061607
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(507113155)ハネウェル アナリティクス アーゲー (4)
【Fターム(参考)】