説明

ガス検知装置

【課題】 ガスセンサの電解液の漏れを検出することにより誤動作や機器の損傷が生ずることを防止することができ、所期の動作状態を維持することのできるガス検知装置を提供すること。
【解決手段】 センサ基板と、このセンサ基板の一面上に配置された、電解液を有するセンサとを備えたガス検知装置において、センサ基板の一面上におけるセンサの直下の位置に形成された、第1のパターン回路および当該第1のパターン回路と間隔を空けてこれと並行に形成された第2のパターン回路を有する液漏れ検出回路により構成され、電解液がセンサ基板上に滴下して2つのパターン回路間が短絡されることに起因する第1のパターン回路および第2のパターン回路間における抵抗値が低下することを検出することにより電解液の漏れを検知する検知手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば定電位電解式ガスセンサなどの電解液を有するセンサを備えたガス検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、例えば半導体製造工場などにおいて毒性ガスの検出を行うに際しては、目的とする被検知ガスの選択性に優れ、高感度で、かつ、高い精度でガス濃度を検出することができるなどの理由から、電解反応を利用した定電位電解式ガスセンサが広く利用されている。
【0003】
定電位電解式ガスセンサの或る種のものとしては、例えば電解液を収容するための電解液収容用空間を形成し、ガス透過性を有する多孔質シートによって塞がれる2つの開口を有するセルと、一方の多孔質シートの表面に設けられ、被検知ガスを電気分解させるための作用電極と、他方の多孔質シートに設けられ、作用電極に対する対極、当該他方多孔質シートに対極と分離して設けられ、作用電極の電位を制御するための参照極とを備えてなるものが広く用いられている。
このような構成の定電位電解式ガスセンサは、作用電極、対極および参照極が電解液に浸された状態において、当該作用電極において被検知ガスが電気分解されることにより、この作用電極および対極に生じる電気化学反応に起因して発生する電解電流値の大きさと、被検知ガス濃度とが比例関係にあることを利用し、電解電流値を測定することによって被検知ガス濃度を検知するものである。
【0004】
しかしながら、上記の定電位電解式ガスセンサにおいて電解液として一般に用いられている硫酸水溶液は、その吸水性により被検知ガスなどの外気の湿気を吸収して電解液容積が増加し、内部のガス抜けが妨げられてセル内の圧力が増大することに起因して、電解液がセルの外部に漏れることがあり、その結果、作用電極、対極および参照極の電極間がショートして誤動作するという、問題がある。
このような問題に対して、例えば、セル内部に電解液増量分を吸収し得る空間部を形成するなどの、電解液の漏れを防止するための措置を講ずることが行われている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−099811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、ガスセンサの電解液の漏れを検出することにより誤動作や機器の損傷が生ずることを未然に防止することができ、所期の動作状態を維持することのできるガス検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガス検知装置は、センサ基板と、このセンサ基板の一面上に配置された、電解液を有するセンサとを備えたガス検知装置において、
センサの電解液の漏れを検知する検知手段を有し、
当該検知手段は、センサ基板の一面上におけるセンサの直下の位置において形成された、第1のパターン回路および当該第1のパターン回路と間隔を空けて当該第1のパターン回路と並行に形成された第2のパターン回路を有する液漏れ検出回路により構成されており、電解液がセンサ基板上に滴下して2つのパターン回路間が短絡されることに起因する第1のパターン回路および第2のパターン回路間における抵抗値が低下することが検出されることにより電解液の漏れが検知されることを特徴する。
【0008】
本発明のガス検知装置においては、第1のパターン回路および第2のパターン回路は、センサのガス検知電極に係る接続端子部を含む、センサの外周縁形状に沿った領域を囲むよう形成された構成とすることができる。
【0009】
また、本発明のガス検知装置においては、液漏れ検出回路は、センサ基板の一面上における、センサが配置されるセンサ配置領域と並んだ位置に形成された信号処理回路形成領域と、前記第2のパターン回路との間の位置において、当該第2のパターン回路と間隔を空けて並行に形成された第3のパターン回路をさらに有する構成とされていることが好ましい。
【0010】
さらにまた、本発明のガス検知装置においては、互いに隣接するパターン回路間の離間距離の大きさが0.1〜2.0mmとされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のガス検知装置によれば、センサにおける電解液を収容したセルから外部に漏れ出た電解液がセンサ基板上に滴下した場合に、当該電解液の液滴がガス検知電極に係る接続端子部に接触する前に、第1のパターン回路および第2のパターン回路間が当該液滴を介して短絡されることになるので、第1のパターン回路および第2のパターン回路間の抵抗値が低下することを検出することにより電解液の液漏れを確実に検出することができ、これにより、電解液の漏れに起因する誤動作や機器の損傷が生ずることを未然に防止することができて所期の動作状態を確実に維持することができる。
【0012】
また、本発明のガス検知装置によれば、センサ基板の一面上における、センサが配置されるセンサ配置領域と並んだ位置に形成された信号処理回路形成領域と、前記第2の回路パターンとの間の位置において、当該第2の回路パターンと間隔を空けてこれと並行に形成された第3のパターン回路をさらに有する構成とされていることにより、センサ基板上に滴下した電解液が電子部品および信号処理回路に接触することを未然に防止することができて所期の動作状態を確実に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について図面を参照して説明する。
本発明のガス検知装置は、平板状のセンサ基板と、このセンサ基板の一面上に配置された、電解液を有するガスセンサとを備えている。このようなガスセンサとしては、例えば定電位電解式ガスセンサやガルバニ電池式ガスセンサ等を例示することができる。
以下においては、電解液を収容するための電解液収容用空間が形成された、ガス透過性を有する多孔質シートによって塞がれる2つの開口を有するセルと、一方の多孔質シートの表面に設けられ、被検知ガスを電気分解させるための作用電極と、他方の多孔質シートに設けられ、作用電極に対する対極、当該他方多孔質シートに対極と分離して設けられ、作用電極の電位を制御するための参照電極とを有する定電位電解式ガスセンサが用いられてなるものを例に挙げて説明する。
【0014】
図1は、本発明のガス検知装置におけるセンサ基板の一構成例を概略的に示す平面図、図2は、図1におけるA−A線断面図である。
このセンサ基板10は、定電位電解式ガスセンサ15の作用電極に係る接続端子部12A、対極に係る接続端子部12Bおよび参照電極に係る接続端子部12Cが設けられたセンサ配置領域11Aと、定電位電解式ガスセンサ15における作用電極と参照電極との間を一定の電位に保持するためのポテンショスタット回路および定電位電解式ガスセンサ15より得られる出力信号に基づいて被検知ガスの濃度を検出するガス濃度検出回路を含む電気回路部20が形成された信号処理回路形成領域11Bとを有する。
【0015】
定電位電解式ガスセンサ15は、セル16の底面16Aがセンサ基板10の一面10Aとの間に隙間が存在する状態で、設けられている。これにより、後述するように、例えばセル16の側面から漏れ出した電解液がセル16の側面を伝ってセンサ基板10の一面10A上に滴下した場合に、当該隙間の作用(毛細管現象)により、電解液の液滴eをセンサ基板10上に保持することができて電解液の漏れが生じたことを液漏れ検出回路30によって確実に検出することができる。
また、定電位電解式ガスセンサ15は、センサ基板10の端縁部分がセル16の外周縁位置よりも外方に突出する状態で、設けられており、これにより、センサ基板10の突出部分における一面がセル16の側面を伝って流れる電解液の液受けとして機能するため、電解液の液滴eをセンサ基板10上に保持することができて電解液の漏れが生じたことを液漏れ検出回路30によって確実に検出することができる。
【0016】
上記のガス検知装置においては、少なくとも、互いに所定の間隔を空けて併設された2つのパターン回路を含む液漏れ検出回路30により構成された、定電位電解式センサ15の電解液の漏れを検知する検知手段を有する。
この実施例における液漏れ検出回路30について具体的に説明すると、図3に示すように、オペアンプ32が用いられて構成されたメイン回路31を備えており、このメイン回路31に、センサ基板10の一面10A上における定電位電解式ガスセンサ15の直下の位置に形成された、第1のパターン回路33Aおよび当該第1のパターン回路33Aと間隔を空けて第1のパターン回路33Aと並行に形成された第2のパターン回路33Bが接続されると共に、センサ基板10の一面10A上における信号処理回路形成領域11Bと第2の回路パターン33Bとの間の位置に形成された第3のパターン回路33Cが接続されて、構成されている。
【0017】
液漏れ検出回路30を構成する第1のパターン回路33Aは、例えば、定電位電解式ガスセンサ15の外周縁位置に対応する位置より内方側の位置において、作用電極に係る接続端子部12A、対極に係る接続端子部12Bおよび参照電極に係る接続端子部12Cを含む、定電位電解式ガスセンサの外周縁形状に沿った領域を囲むよう矩形枠状に形成されており、第2のパターン回路33Bは、例えば、定電位電解式ガスセンサ15の外周縁位置に対応する位置において、第1のパターン回路33Aと所定の大きさの間隔を空けて第1のパターン回路33Aと並行に伸びるよう矩形枠状に形成されている。
また、第3のパターン回路33Cは、第2のパターン回路33Bにおける直線状部分と所定の大きさの間隔を空けてこれと並行に伸びるよう直線状に形成されている。
【0018】
液漏れ検出回路30を構成する互いに隣接するパターン回路間の離間距離の大きさは、例えば0.1〜2.0mmとされていることが好ましい。これにより、2つのパターン回路間を電解液の液滴eを介して確実に短絡させることができて電解液の漏れが生じたことを確実に検出することができる。
【0019】
液漏れ検出回路30の一構成例を示すと、抵抗素子R1の抵抗値が22MΩ、コンデンサC1の容量が100pC、抵抗値R3の抵抗値が1000MΩ、電源V0による入力電圧が5V、可変抵抗素子R2の抵抗値が100kΩ、オペアンプの正電源端子(+V)に接続される電源V2の電圧が5Vである。
【0020】
上記構成のガス検知装置におけるガス検知動作について説明すると、ポテンショスタット回路によって所定の大きさに制御された電圧が定電位電解式ガスセンサ15における作用電極および対極の各々に印加されることにより、参照電極の電位状態を基準として作用電極と対極との間に所定の大きさの電位差が生じた状態とされ、この状態において、被検知ガスが多孔質シートを介してセル内に導入されることにより作用電極と対極との間に生ずる電解電流値の各々がポテンショスタット回路によって検出され、検出された電解電流値に応じた被検知ガスの濃度が算出される。
【0021】
而して、上記構成のガス検知装置においては、第1のパターン回路33Aと第2のパターン回路33Bとの間の抵抗値、および、第2のパターン回路33Bと第3のパターン回路33Cとの間の抵抗値が液漏れ検出回路30によって監視されており、これにより、定電位電解式ガスセンサ15の電解液の漏れの発生有無を検出する液漏れ検出動作が行われる。
すなわち、例えばセル16の側面から漏れ出した電解液がセル16の側面を伝ってセンサ基板10の一面10A上、具体的には、第1のパターン回路33Aと第2のパターン回路33Bとの間の位置に滴下し、第1のパターン回路33Aと第2のパターン回路33Bとが電解液の液滴eを介して短絡される(導通状態とされる)ことによって、第1のパターン回路33Aと第2のパターン回路33Bとの間の抵抗値が低下することが検出されることにより、電解液の漏れが生じたことが検出される。また、第2のパターン回路33Bと第3のパターン回路33Cとが電解液の液滴eを介して短絡された場合についても同様である。
【0022】
而して、上記ガス検知装置によれば、定電位電解式ガスセンサ15のセル16から外部に漏れ出た電解液がセンサ基板10上に滴下した場合に、当該電解液の液滴eが作用電極に係る接続端子部12A、対極に係る接続端子部12Bおよび参照電極に係る接続端子部12C、あるいは、電子部品および信号処理回路に接触する前に、第1のパターン回路33Aおよび第2のパターン回路33B間、あるいは、第2のパターン回路33Bおよび第3のパターン回路33C間が当該液滴eを介して短絡される(導通状態とされる)ことになるので、隣接する2つのパターン回路間、例えば第1のパターン回路33Aおよび第2のパターン回路33B間の抵抗値が低下することを検出することにより電解液の漏れが生じたことを確実に検出することができ、これにより、電解液の漏れに起因する誤動作や機器の損傷が生ずることを未然に防止することができて所期の動作状態を確実に維持することができる。
【0023】
また、第1のパターン回路33Aおよび第2のパターン回路33Bがセンサ基板10の一面10A上における定電位電解式センサ15の直下の位置に形成されていることにより、これらのパターン回路33A,33Bが外部に露出されない状態とされて外部から保護されているので、異物等による誤検知が生ずることを確実に防止することができる。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば液漏れ検出回路は、いわば各電極の接続端子部に対する関所的なものとして機能する第1のパターン回路および第2のパターン回路の少なくとも2つのパターン回路を有していればよく、第3のパターン回路Cを有している必要はない。
上述したように、本発明は、定電位電解式ガスセンサに限定されるものではなく、ガルバニ電池式ガスセンサが用いられたものにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のガス検知装置におけるセンサ基板の一構成例を概略的に示す平面図である。
【図2】図1におけるA−A線断面図である。
【図3】液漏れ検出回路の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0026】
10 センサ基板
10A 一面
11A センサ配置領域
11B 信号処理回路形成領域
12A 作用電極に係る接続端子部
12B 対極に係る接続端子部
12C 参照電極に係る接続端子部
15 定電位電解式ガスセンサ
16 セル
16A 底面
20 電気回路部
30 液漏れ検出回路
31 メイン回路
32 オペアンプ
33A 第1のパターン回路
33B 第2のパターン回路
33C 第3のパターン回路
e 電解液の液滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ基板と、このセンサ基板の一面上に配置された、電解液を有するセンサとを備えたガス検知装置において、
センサの電解液の漏れを検知する検知手段を有し、
当該検知手段は、センサ基板の一面上におけるセンサの直下の位置において形成された、第1のパターン回路および当該第1のパターン回路と間隔を空けて当該第1のパターン回路と並行に形成された第2のパターン回路を有する液漏れ検出回路により構成されており、電解液がセンサ基板上に滴下して2つのパターン回路間が短絡されることに起因する第1のパターン回路および第2のパターン回路間における抵抗値が低下することが検出されることにより電解液の漏れが検知されることを特徴するガス検知装置。
【請求項2】
第1のパターン回路および第2のパターン回路は、センサのガス検知電極に係る接続端子部を含む、センサの外周縁形状に沿った領域を囲むよう形成されていることを特徴とする請求項1に記載のガス検知装置。
【請求項3】
液漏れ検出回路は、センサ基板の一面上における、センサが配置されるセンサ配置領域と並んだ位置に形成された信号処理回路形成領域と、前記第2のパターン回路との間の位置において、当該第2のパターン回路と間隔を空けて並行に形成された第3のパターン回路をさらに有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス検知装置。
【請求項4】
互いに隣接するパターン回路間の離間距離の大きさが0.1〜2.0mmであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のガス検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−216570(P2009−216570A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61109(P2008−61109)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)