説明

ガス状アルカンを液状炭化水素に変換する方法

【課題】低分子量のガス状アルカンを、燃料の製造に有用な液状炭化水素に変換する方法を提供すること。
【解決手段】アルカンを含有するガス状原料を乾燥臭素気体と反応させて臭化アルキル及び臭化水素酸気体を形成するガス状アルカンを液状炭化水素に変換する方法。次いで、ZSM−5ゼオライト等の合成結晶性アルミノケイ酸塩触媒上で、約150℃から約450℃の温度で、より高分子量の炭化水素及び臭化水素酸気体を形成するように臭化アルキルと臭化水素酸を反応させる。生成物の一部をなすプロパン及びブタンは、プロセスを通して回収又はリサイクルして戻し、さらにC5+炭化水素を形成することができる。高分子量炭化水素から臭化水素酸気体を除去する、及びプロセスで使用するために臭化水素酸から臭素を生成させる様々な方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連特許出願の参照)
本願は、2004年4月16日に出願され、「Process for Converting Gaseous Alkanes to Liquid Hydrocarbons」と題する、係属中の米国特許出願第10/826,885号の一部継続出願である。
【0002】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、低分子量のガス状アルカンを、燃料の製造に有用な液状炭化水素に変換する方法に関し、特に、低分子量アルカンを含むガスを乾燥臭素気体と反応させて臭化アルキルおよび臭化水素酸を形成し、次いでそれを結晶性アルミノケイ酸塩触媒上で反応させて液状炭化水素を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
主にメタン及び他の軽質アルカンからなる天然ガスが世界中で大量に発見されている。天然ガスが発見されている場所の多くは、大きなガスパイプラインのインフラストラクチャー又は天然ガス市場の需要がある人口集中地域から遠く離れている。天然ガスは低密度であるため、それをガス状でパイプラインにより輸送すること、又は圧縮ガスとして管内を輸送するには費用がかかる。従って、天然ガスをガス状で輸送できる距離には実用的又は経済的な制限が存在する。天然ガスの低温液化(LNG)は、天然ガスを長距離に渡ってより経済的に輸送するのによく用いられている。しかしながら、このLNG工程は費用が嵩み、再ガス化能力を有するのは、LNGの輸入設備を備えた少数の国のみに限られている。
【0004】
天然ガスに見られるメタンの別の用途は、メタノールの製造プロセスの原料としての用途である。メタノールは工業的には、高温(約1000℃)でメタンを合成ガス(CO及びH)に変換し、次いで高圧(約100気圧)で合成することによって製造される。メタンから合成ガス(CO及びH)を製造するのに幾つかのタイプの技術が存在する。これらには、水蒸気−メタン改質(SMR)、部分酸化(POX)、自己熱改質(ATR)、ガス−加熱改質(GHR)、及びそれらの様々な組み合わせがある。SMR及びGHRは高温及び高圧、一般的には600℃以上で操作され、高価な改質触媒を充填した特別の耐熱性かつ耐腐食性の合金管を具備した高価な炉又は反応器を必要とする。POX及びATRプロセスは、高圧で更に高温、一般的には1000℃以上で操作される。これらの温度で操作できる既知の実用的な金属又は合金は存在しないため、流出合成ガスを急冷及び冷却するための複雑で費用のかかる耐熱性被覆された反応器及び高圧廃熱ボイラーが必要とされる。また、これらの高圧プロセスには酸素又は空気の圧縮に大きな資本コスト及び大量の電力が要求される。即ち、高温及び高圧を要するため合成ガス技術は費用が嵩み、高コストのメタノール製品をもたらし、その化学的原料及び溶媒等としての価値は高いのに用途が制限されている。さらに、合成ガスの合成は熱力学的及び化学的に非効率的であり、過剰な大量の廃熱及び望まれない二酸化炭素を生成し、それは全プロセスの変換効率を低下させがちである。また、合成ガスをより重い液体炭化水素に変換するためにフィッシャー−トロプシュのガス液体化(GTL)技術も用いることができるが、このプロセスのための投資コストも高いものである。どの場合も、合成ガスの製造は、これらのメタン変換プロセスのための資本コストの大きな部分を占めている。
【0005】
メタノール又は合成液体炭化水素への経路として従来の合成ガスの製造に対する多くの代替法が提案されている。しかしながら、今日まで、これらの代替法は様々な理由から商業的な段階に到達していない。Millerの特許文献1又は特許文献2といった従来技術方法に代替する以前の方法の幾つかは、メタン等の低級アルカンを金属ハロゲン化物と反応させて第一金属ハロゲン化物を形成し、次いでそれを酸化マグネシウムで還元して対応するアルカノールを形成することを教示している。しかしながら、好ましいハロゲンとして塩素を用いたメタンのハロゲン化は、モノハロゲン化メチル(CHCl)への選択性が低く、CHCl及びCHCl等の望まない副産物をもたらす。それらは変換が困難であったり、パスあたりの変換が非常に限定されたものにならざるを得ないため、非常に高いリサイクル率を得ることは厳しく限定されざるを得ない。
【0006】
他の従来技術方法は、合成ガス(CO及びH)の生成に代えてメタンの触媒的な塩素化又は臭素化を提案する。メタノール製造のための全プロセスにおけるメタンのハロゲン化工程の選択性を向上させるため、Millerの特許文献3は、過剰のアルカン存在下でアルカンを臭素化するために、金属臭化物の熱分解によって生成する臭素を使用し、それにより臭化メチル等のモノハロゲン化中間体に対する選択性が向上することを教示している。移動性固体の流動床を利用することによる難点を回避するため、この方法は金属塩化物の水和物と金属臭化物との混合液の循環を利用している。Grossoの特許文献4、特許文献5及び特許文献6に記載された方法も、臭素化を使用することによりモノハロゲン化中間体に対する高い選択性を達成できる。得られる臭化メチル等の臭化アルキル中間体は、更に、移動性固体の循環層において金属酸化物と反応させることにより対応するアルコール及びエーテルに変換される。特許文献6の他の実施形態では、4段階で循環的に作動する金属酸化物/金属臭化物の固定床を備えたゾーン型反応容器を利用することにより移動床の欠点を回避している。また、これらの方法は、アルコールとともにかなりの量のジメチルエーテル(DME)を生成する傾向がある。DMEはディーゼルエンジン燃料の代替品となる可能性が期待されているが、今までのところ、DMEについての実際の市場は現存せず、従って、DMEを現在市販可能な製品に変換するために高価な付加的な触媒的プロセス工程が必要になる。合成ガスの製造を回避する他のプロセスが提案されており、例えばOlahの特許文献7及び特許文献8等では、超強酸触媒を用いた触媒的凝縮によりメタンが触媒的にガソリン程度の炭化水素まで凝縮される。しかしながら、これらの従来の代替的方法で商業的プロセスになったものはない。
【0007】
置換されたアルカン、特にメタノールは、ゼオライトとしても知られる種々の形態の結晶性アルミノケイ酸塩の上で、オレフィン及びガソリン沸点範囲の炭化水素に変換できる。メタノールからガソリンへの(MTG)プロセスにおいては、メタノールをガソリンに変換するのに形状選択的ゼオライト触媒であるZSM−5が用いられる。従って、石炭又はメタンガスは、従来の技術を用いてメタノールに変換でき、引き続いてガソリンに変換される。しかしながら、メタノール製造の高コスト、及びガソリンについての現在の又は推定される価格のため、MTGプロセスは経済的に実現可能とは考えられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,243,098号明細書
【特許文献2】米国特許第5,334,777号明細書
【特許文献3】米国特許第5,998,679号明細書
【特許文献4】米国特許第6,462,243 B1号明細書
【特許文献5】米国特許第6,472,572 B1号明細書
【特許文献6】米国特許第6,525,230号明細書
【特許文献7】米国特許第4,655,893号明細書
【特許文献8】米国特許第4,467,130号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、天然ガスに見いだされるメタン及び他のアルカンを、密度及び価値が高いことに起因して経済的に移送でき、それによって遠隔地の埋蔵天然ガス開発の助けになる有用な液状炭化水素生成物に変換するための経済的な方法に対する必要性が存在する。さらに、比較的安価であり、安全で取り扱いが簡単な天然ガス中に存在するアルカンを変換する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
上記及び他の目的を達成するために、本発明の方法によると、ここに具体的かつ広範に記載するように、本発明の方法の一つの特徴は、ガス状アルカンを液状炭化水素に変換する方法である。この方法は、低分子量アルカンを有するガス状原料ガスを臭素気体と反応させて臭化アルキル及び臭化水素酸を形成することを含む。臭化アルキル及び臭化水素酸は、合成結晶性アルミノケイ酸塩の存在下で、より高分子量の炭化水素及び臭化水素酸気体を形成するのに十分な温度で反応する。臭化水素酸気体を金属酸化物と反応させて金属臭化物及び水蒸気を形成することにより、臭化水素酸気体がより高分子量の炭化水素から除去される。
【0011】
本発明の他の特徴において、低分子量アルカンを有するガス状原料を臭素気体と反応させて臭化アルキル及び臭化水素酸を形成する、ガス状アルカンを液状炭化水素に変換する方法が提供される。臭化アルキル及び臭化水素酸は、合成結晶性アルミノケイ酸塩触媒の存在下で、より高分子量の炭化水素と臭化水素酸気体を形成するのに十分な温度で反応させる。臭化水素酸気体及びより高分子量の炭化水素は金属酸化物粒子床を備えた第一の容器に移され、臭化水素酸気体が金属酸化物粒子床と反応して金属臭化物粒子と水蒸気を形成する。
【0012】
本発明の更に別の特徴として、低分子量アルカンを有するガス状原料が臭素気体と反応して臭化アルキルと臭化水素酸を形成する、ガス状アルカンを液体状炭化水素に変換するための方法が提供される。臭化アルキル及び臭化水素酸は、合成結晶性アルミノケイ酸塩触媒の存在下で、より高分子量の炭化水素及び臭化水素酸気体を形成するのに十分な温度で反応させる。臭化水素酸気体は、金属酸化物粒子と反応して第一の金属臭化物と水蒸気を形成させることにより前記のより高分子量の炭化水素から除去される。第一の金属臭化物は酸素含有ガスで酸化されて臭素気体を形成する。臭素気体は還元された金属臭化物と反応して第二の金属臭化物を形成する。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
ガス状アルカンを液状炭化水素に変換する方法であって、
低分子量アルカンを有するガス状原料を臭素気体と反応させて臭化アルキル及び臭化水素酸を形成させる工程、および
該臭化アルキル及び臭化水素酸を、合成結晶性アルミノケイ酸塩触媒の存在下、さらに高分子量の炭化水素及び臭化水素酸気体を形成させるのに十分な温度で反応させる工程、を含む、方法。
(項目2)
前記臭素気体が実質的に乾燥しており、それにより前記臭化アルキルに伴う有意な二酸化炭素の形成を回避する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記ガス状原料が天然ガスである、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記天然ガスが、前記臭素気体と反応させる前に、実質的に全ての二酸化炭素及び硫黄化合物を除去するために処理される、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記温度が約150℃から約400℃である、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記温度が約250℃から約350℃である、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記結晶性アルミノケイ酸塩触媒がゼオライト触媒である、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記ゼオライト触媒がZSM−5ゼオライト触媒であり、前記さらに高分子量の炭化水素が主に置換芳香族からなるC7+留分を含む、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記ZSM−5ゼオライト触媒が、水素及びIA族アルカリ金属、又はIIA族アルカリ土類金属から選択される少なくとも1つの修飾カチオンで修飾されている、項目8に記載の方法
(項目10)
前記ZSM−5ゼオライト触媒が、水素、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム又はバリウムから選択される少なくとも1つのカチオンでのイオン交換により修飾されている、項目9に記載の方法。
(項目11)
金属臭化物塩を含有する水溶液を酸化することにより得られる反応生成物を含む水溶液での中和反応により、前記臭化水素酸気体を、前記より高分子量の炭化水素から除去する工程を更に含み、該金属臭化物塩の金属がCu、Zn、Fe、Co、Ni、Mn、Ca又はMg臭化物から選択される、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記臭素気体が金属臭化物塩水溶液を酸化することにより生成され、該金属臭化物塩の金属がCu、Zn、Fe、Co、Ni、Mn、Ca又はMgから選択される、項目1に記載の方法。
(項目13)
水に溶解させて臭化水素酸を形成させることにより、前記臭化水素酸気体を前記より高分子量の炭化水素から除去する工程を更に含み、該臭化水素酸溶液が、金属臭化物水溶液を酸素で酸化することにより得られる金属水酸化物を含有する水溶液と反応させることにより中和されており、該金属臭化物塩の金属がCu、Zn、Fe、Co、Ni、Mn、Ca又はMgから選択される、項目1に記載の方法。
(項目14)
水に溶解させて臭化水素酸を形成させることにより前記臭化水素酸気体が前記より高分子量の炭化水素から除去され、該臭化水素酸溶液が気化されて金属酸化物と反応し、該金属酸化物が多孔性支持体に含まれる金属臭化物塩を酸化することにより得られ、該金属臭化物塩の金属がCu、Zn、Fe、Co、Ni、Mn、Ca又はMgからなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記臭素気体が多孔性支持体に含まれる金属臭化物塩を酸化することにより生成され、該金属臭化物塩の金属がCu、Zn、Fe、Co、Ni、Mn、Ca又はMgからなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記より高分子量の炭化水素が、過剰の低級アルカンの混じったC、C及びC5+留分を含み、前記方法が、
該より高分子量の炭化水素を約−20℃以下の露点まで脱水し、該C5+留分を液体として回収する工程を更に含む、項目1に記載の方法。
(項目17)
前記合成結晶性アルミノケイ酸塩触媒と反応させる前記工程に先立って、前記C及びC留分の少なくとも一部を前記臭化アルキル及び前記臭化水素酸と混合することを更に含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
ガス状低分子量アルカンを液状炭化水素に変換する方法であって、
低分子量アルカンを含有するガス状原料と臭素気体を反応させて臭化アルキル及び臭化水素酸を形成する工程、
該臭化アルキル及び臭化水素酸を、合成結晶性アルミノケイ酸塩触媒の存在下で反応させてさらに高分子量の炭化水素及び臭化水素酸を形成する工程、および
該臭化水素酸を臭素に変換する工程、
を含む、方法。
(項目19)
前記より高分子量の炭化水素を脱水する工程を更に含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記臭化水素酸から変換された前記臭素を、前記ガス状原料と反応させる前記工程にリサイクルすることを更に含み、該臭素が気体としてリサイクルされる、項目18に記載の方法。
(項目21)
ガス状アルカンを液状炭化水素に変換する方法であって、
低分子量アルカンを有するガス状原料を臭素気体と反応させて臭化アルキル及び臭化水素酸を形成させる工程、
該臭化アルキル及び臭化水素酸を、合成結晶性アルミノケイ酸塩触媒の存在下、さらに高分子量の炭化水素及び臭化水素酸気体を形成させるのに十分な温度で反応させる工程、
該臭化水素酸気体を金属酸化物と反応させて金属臭化物及び水蒸気を形成させることにより該臭化水素酸気体を前記さらに高分子量の炭化水素から除去する工程、
を含む、方法。
(項目22)
前記金属酸化物の前記金属が、マグネシウム、カルシウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛又はスズである、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記金属酸化物が、固体担体上に支持される、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記金属酸化物が、反応器の床に含有される、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記金属臭化物及び酸素含有ガスを反応させて金属酸化物及び前記臭素気体を得る工程を更に含む、請求項21に記載の方法。
(請求項26)
前記臭素気体が、前記低分子量アルカンを有するガス状原料を反応させる前記工程において使用される、請求項25に記載の方法。
(請求項27)
ガス状アルカンを液状炭化水素に変換する方法であって、
低分子量アルカンを有するガス状原料を臭素気体と反応させて臭化アルキル及び臭化水素酸を形成させる工程、
該臭化アルキル及び臭化水素酸を、合成結晶性アルミノケイ酸塩触媒の存在下、さらに高分子量の炭化水素及び臭化水素酸気体を形成させるのに十分な温度で反応させる工程、および
該臭化水素酸気体及び該さらに高分子量の炭化水素を金属酸化物粒子床を備える第一の容器に移送し、該臭化水素酸気体を該金属酸化物粒子床と反応させて金属臭化物粒子及び水蒸気を形成する工程、
を含む、方法。
(項目28)
酸素含有ガスを金属臭化物粒子床を備える第二の容器に通して、金属酸化物粒子及び臭素気体を形成する工程を更に含む、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記臭素気体を、前記ガス状原料を反応させる前記工程に移送する工程を更に含む、項目8に記載の方法。
(項目30)
前記第一の容器内の前記床の前記金属酸化物粒子の実質的に全部を前記金属臭化物粒子に変換した後、前記方法が、
酸素含有ガスを金属臭化物粒子床を備える該第一の容器に通して、金属酸化物粒子及び臭素気体を形成する工程を更に含む、項目28に記載の方法。
(項目31)
前記臭素気体を、前記ガス状原料を反応させる前記工程に移送する工程を更に含む、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記第二の容器内の前記床の前記金属臭化物粒子の実質的に全部を前記金属酸化物粒子及び前記臭素気体に変換した後、前記方法が、
前記臭化水素酸気体及び前記より高分子量の炭化水素を該第二の容器に移送することを更に含み、該臭化水素酸気体が該第二の容器内の該金属酸化物粒子と反応して金属臭化物及び水蒸気を形成する、項目30に記載の方法。
(項目33)
前記金属酸化物粒子を前記第二の容器から前記第一の容器へ、前記金属臭化物粒子を該第一の容器から該第二の容器へ同時に移送する工程を更に含む、項目28に記載の方法。
(項目34)
前記金属酸化物及び前記金属臭化物の金属が、マグネシウム、カルシウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛又はスズである、項目28に記載の方法。
(項目35)
ガス状アルカンを液状炭化水素に変換するであって、
低分子量アルカンを有するガス状原料を臭素気体と反応させて臭化アルキル及び臭化水素酸を形成させる工程、
該臭化アルキル及び臭化水素酸を、合成結晶性アルミノケイ酸塩触媒の存在下、さらに高分子量の炭化水素及び臭化水素酸気体を形成させるのに十分な温度で反応させる工程、
金属酸化物と反応させて第一の金属臭化物及び水蒸気を形成することにより、該臭化水素酸気体を該さらに高分子量の炭化水素から除去する工程、
該第一の金属臭化物を酸素含有ガスで酸化して臭素気体を形成させる工程、および
該臭素気体を還元された金属臭化物と反応させて第二の金属臭化物を形成する工程、
を含む、方法。
(項目36)
前記第二の金属臭化物を前記ガス状原料と接触させ、それにより該第二の金属臭化物を前記臭素気体及び前記還元された金属臭化物に熱分解する工程を更に含む、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記第二の金属臭化物の熱分解により生成された前記臭素気体を前記ガス状原料と反応させて臭化アルキル及び臭化水素酸を形成する、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記還元された金属臭化物が第三の容器内の床に包含され、臭素気体が該第三の容器内の該還元された金属臭化物と反応して第二の金属臭化物を形成する、項目35に記載の方法。
(項目39)
前記第三の容器内の前記床の前記還元された金属臭化物の実質的に全部が第二の金属臭化物に変換された後、前記方法が、
該第二の金属臭化物を前記ガス状原料に接触させ、それにより該第二の金属臭化物を前記臭素気体及び該還元された金属臭化物に熱分解させることを更に含む、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記第二の金属臭化物が、第四の容器内の床に包含され、該第二の金属臭化物が、該第四の容器内で前記臭素気体及び前記還元された金属臭化物に熱分解される、項目38に記載の方法。
(項目41)
前記第四の容器内の前記床の前記第二の金属臭化物の実質的に全部が前記臭素気体及び前記還元された金属臭化物に熱分解された後、前記方法が、
該臭素気体及び該還元された金属臭化物を反応させて第二の金属臭化物を形成することを更に含む、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記第二の金属臭化物を前記第三の容器から前記第四の容器へ、前記還元された金属臭化物を該第四の容器から該第三の容器へ同時に移送することを更に含む、項目28に記載の方法
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の方法の単純化したブロックフロー図であり;
【図2】図2は、本発明の方法の一実施形態の概略図である。
【図3】図3は、本発明の方法の他の一実施形態の概略図である。
【図4】図4は、温度の関数としての、本発明の方法のオリゴマー化反応についての臭化メチル変換及び生成物選択性のグラフである。
【図5】図5は、臭化メチル及びメタンのみに対して、臭化メチル、乾燥臭化水素酸及びメタンの例についての変換及び選択性を比較するグラフである。
【図6】図6は、臭化メチル及び二臭化メチレンの反応からの生成物選択性と、臭化メチルのみの反応からの生成物選択性とのグラフである。
【図7】図7は、本発明の方法の典型的な凝縮生成物サンプルのパラフィン・オレフィン・ナフテン及び芳香族(PONA)分析のグラフである。
【図8】図8は、本発明の他の典型的な凝縮生成物サンプルのPONA分析のグラフである。
【図9A】図9Aは、本発明の方法の他の一実施形態の概略図である。
【図9B】図9Bは、図9Aに例示した本発明の方法の実施形態の概略図であり、酸化段階において空気に代えて酸素を使用した場合に採用しうる代替的処理スキームを示している。
【図10A】図10Aは、図9Aに例示した本発明の方法の実施形態の概略図であり、金属酸化物床を通過する流れが逆転されている。
【図10B】図10Bは、図10Aに例示した本発明の方法の実施形態の概略図であり、酸化段階において空気に代えて酸素を使用した場合に採用しうる代替的処理スキームを示している。
【図11A】図11Aは、本発明の方法の他の一実施形態の概略図である。
【図11B】図11Bは、図11Aに例示した本発明の方法の実施形態の概略図であり、酸化段階において空気に代えて酸素を使用した場合に採用しうる代替的処理スキームを示し;
【図12】図12は、本発明の方法の他の一実施形態の概略図である。
【図13】図13は、図12に例示した本発明の方法の実施形態の概略図であり、金属酸化物床を通過する流れが逆転されている。
【図14】図14は、本発明の方法の他の一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付する図面は、明細書に取り入れられてその一部を形成するが、本発明の実施形態を例示し、記載とともに本発明の概念の説明を提供するものである。
【0015】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本明細書全体を通して用いられる「低分子量アルカン」という用語は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン又はそれらの組み合わせを意味するものとする。また、本明細書全体を通して用いられる「臭化アルキル」は一、二、及び三臭化アルキルを意味する。また、図2及び3に各々例示した本発明の方法の実施形態におけるライン11及び111における原料ガスは、好ましくは天然ガスであり、硫黄化合物及び二酸化炭素を除去するための処理を施されていてもよい。いずれにしても、重要であるのは、本発明の方法に対して原料ガスに少量、例えば約2モル%未満の二酸化炭素が許容され得ることである。
【0016】
本発明の方法を概略的に示すブロックフロー図を図1に例示し、本発明の方法の特定の実施形態を図2及び3に例示する。図2を参照すると、約1バールから約30バールの圧力で原料ガスとリサイクルされたガス流との混合物からなる低分子量アルカンを含有するガス流が、ライン、パイプ又は導管62を通して移送又は搬送され、ライン25及びポンプ24を介して移送された乾燥臭素液と混合され、熱交換器26を通り、そこで液状臭素が気化される。低分子量アルカン及び乾燥臭素気体の混合物は反応器30に供給される。好ましくは、反応器30に導入される混合物における臭素気体に対する低分子量アルカンのモル比は、2.5:1より大きい。反応器30は入口に予熱器ゾーン28を有し、それにより混合物が約250℃から約400℃の範囲の反応開始温度まで加熱される。
【0017】
第一の反応器30において、約250℃から約600℃の範囲の比較的低温である温度及び約1バールから約30バールの範囲の圧力において低分子量アルカンは乾燥臭素気体と発熱反応し、ガス状の臭化アルキル及び臭化水素酸気体を生成する。操作温度範囲の上限は反応開始温度範囲の上限より高く、臭素化反応の発熱性によって混合ガスがそこまで加熱される。メタンの場合、臭化メチルの形成は以下の一般式に従って起こる:
CH(g)+Br(g) → CHBr(g)+HBr(g)
この反応は、臭化メチルに対して非常に高い程度の選択性で起こる。例えば、約4.5:1のメタン対臭素比でのメタンの臭素化の場合、モノハロゲン化臭化メチルへの選択性は90から95%の範囲である。臭素化反応では、少量の二臭化メタン及び三臭化メタンも形成される。エタン、プロパン及びブタン等のより高級なアルカンも容易に臭素化されてモノ又は多臭素化された化学種となる。2.5:1より有意に小さいアルカン対臭素比を用いると、臭化メチルへの選択性は90%をかなり下回り、望まれない炭素すすのかなりの形成が観察される。また、臭素化反応器への原料ガスに存在しうるエタン、プロパン及びブタン等の他のアルカンが容易に臭素化されて臭化エチル、臭化プロピル及び臭化ブチルを形成することも示された。さらに、第一の反応器30に供給される乾燥臭素気体は実質的に水を含まない。出願人は、第一の反応器30における臭素化工程から水蒸気を実質的に全部排除することが、望まれない二酸化炭素の形成を排除し、それにより臭化アルキルへのアルカン臭素化の選択性を向上させ、アルカンからの二酸化炭素の形成で発生する大量の廃熱を排除することを見いだした。
【0018】
臭化アルキル及び臭化水素酸を含む流出物がライン31を通して第一の反応器から取り出され、熱交換器32内で約150℃から約350℃の範囲の温度まで部分的に冷却された後に第2の反応器34に流入される。第二の反応器34において、臭化アルキルは約150℃から約450℃の温度範囲で、約1から30バールの圧力で、結晶性アルミノケイ酸塩触媒、好ましくはゼオライト触媒、最も好ましくはZSM−5ゼオライト触媒の固定床33上で発熱反応する。ゼオライト触媒は好ましくは水素、ナトリウム又はマグネシウム形態で使用されるが、ゼオライトは、Li、Na、K又はCs等のアルカリ金属カチオン、Mg、Ca、Sr又はBa等のアルカリ土類金属カチオン、又はNi、Mn、V、W等の遷移金属カチオンとのイオン交換によって修飾されていてもハロゲン形態であってもよい。アルミナ対シリカ比を変化させることにより合成される種々の孔サイズ及び酸度を持つ他のゼオライト触媒が第二の反応器34において使用できることは当業者には明らかである。この反応器では、臭化アルキルはオリゴマー化して、より高分子量の炭化水素生成物、主にC、C及びC5+ガソリン類及びより重い炭化水素、及び更なる臭化水素酸気体の混合物を生成する。
【0019】
第二の反応器34が操作される温度は、種々のより高分子量の液状炭化水素生成物に対して、オリゴマー化反応の選択性を決定する重要なパラメータである。第二の反応器34を約150℃から450℃の範囲内の温度で操作するのが好ましい。第二の反応器において約300℃を超える温度とすると、望ましくないメタン等の軽い炭化水素の発生を増加させ、より低い温度では、より重い分子量の炭化水素の発生を増加させる。温度範囲の下限である150℃の低温のZSM−5ゼオライト上での臭化メチルの反応では、有意な臭化メチル変換が20%のオーダーとなり、C5+生成物への選択性が高いことがわかっている。また、臭化メチルは低い温度範囲では、塩化メチル又はメタノール等の他の置換されたメチル化合物に比較して反応性が高いこともわかっている。特に、好ましいZSM−5触媒上での臭化アルキル反応の場合、環化反応も起こり、そのためC7+留分は主に置換芳香族からなる。温度を上げて300℃に近づけると、臭化メチル変換は90%又はそれ以上に増加するが、C5+への選択性は低下し、より軽い生成物、特に望まれないメタンへの選択性は増大する。驚くべきことに、エタン又はC−Cオレフィン成分は殆ど形成されない。450℃に近い温度では、臭化メチルからメタンへのほぼ完全な変換が起こる。約300℃から400℃の間の最適な操作温度では、反応の副生成物として、操作している間に少量の炭素が触媒上に蓄積され、反応条件及び原料ガスの組成に依存して、何時間もの間、長ければ数百時間もの間、触媒活性の低下を生じる。約400℃を超える高い反応温度は、メタンの形成に付随して、臭化アルキルの熱分解及び炭素又はコークスの形成を起こし、従って触媒の不活性化速度を増大させると思われる。逆に、温度を範囲の下限より低い、特に約300℃より低い温度にすると、より重い生成物が触媒からの脱離する速度が低下し、これがコークス化の一因となりうる。従って、第二の反応器34における約150℃から約450℃の範囲、しかし好ましくは約300℃から約400℃の範囲内の操作温度が、触媒量を最少にするパス当たりの高い変換、リサイクル比率及び必要とされる装置のサイズと、望まれるC5+生成物の選択性の向上及び炭素形成による不活性化速度の低下との釣り合いをとることになる。
【0020】
反応器34を通常のプロセス流から隔離し、実用的な範囲で触媒上に吸着した未反応の材料を取り除くために、ライン70を通して約1から約5バールの範囲の圧力で、約400℃から約650℃の範囲の高温で、不活性ガスでパージし、引き続いて、ライン70を通して反応器34に約1から約5バールで、約400℃から約650の高温で、空気又は不活性ガスで希釈した酸素を添加することにより析出した炭素をCOに酸化することにより、触媒はその場で定期的に再生され得る。二酸化炭素及び残りの空気又は不活性ガスは、再生時間中にライン75を通して反応器34から排出される。
【0021】
より高分子量の炭化水素生成物及び臭化水素酸からなる流出物を、ライン35を通して第二の反応器34から取り出し、交換器36内で0から約100℃の範囲の温度まで冷却し、炭化水素ストリッパ47からライン12内で気体流出物と混合するが、それは、原料ガス及び炭化水素ストリッパ47内で原料ガスと接触させることによりストリッピングした残りの炭化水素生成物を含む。混合した気体混合物はスクラバー38を通過し、ライン41を通してスクラバー38に移送された金属水酸化物及び/又は金属酸化物及び/又は金属オキソ臭化物種を含む濃縮部分酸化金属臭化物塩水溶液と接触する。臭化物塩の好ましい金属はFe(III)、Cu(II)又はZn(II)、又はそれらの混合物であり、これらが安価であり約120℃から約180℃の低温で容易に酸化されるので、フッ素ポリマーラインの装置を使用できるからであるが、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、V(II)、Cr(II)又は酸化可能な臭化物塩を形成する他の遷移金属を本発明に用いてもよい。あるいは、Ca(II)又はMg(II)等の、酸化可能な臭化物塩を形成するアルカリ土類金属も使用できる。スクラバー38で凝縮される液状炭化水素生成物は、すくい取られ、ライン37に引き込まれて、ライン54の生成物回収ユニット52を出て行く液状炭化水素生成物に添加される。臭化水素酸は水溶液に溶解し、金属水酸化物及び/又は金属酸化物及び/又は金属オキソ臭化物種によって中和され、溶液内の金属臭化物塩及び水を生成し、それはライン44を通してスクラバー38から除去される。
【0022】
スクラバー38から流出物として除去されたより高分子量の炭化水素生成物を含有する残りの気相は、ライン39を通って脱水器50に進み、気流からライン53を介して実質的に全部の水が除去される。次いで、ライン53を通して脱水器50から水が除去される。より高分子量の炭化水素生成物を含有する乾燥気流は、更にライン51を介して生成物回収ユニット52に通過し、必要な場合はプロパン及びブタンが、主にC5+留分がライン54における液状生成物として回収される。任意の従来の脱水及び液体回収の方法、例えば、固定床デシカント吸着に次ぐ冷凍凝縮、低温膨張、又は循環吸収油といった、天然ガス又は精油所ガス流のプロセスに使用される方法を、当業者に明らかになるように、本発明の方法に使用することができる。生成物回収ユニット52からの流出物は、次いで、パージ流57に分割され、それはプロセスの燃料として及びコンプレッサ58を介して圧縮されたリサイクル残存気体として利用できる。コンプレッサ58から排出されたリサイクル残存ガスは2つの留分に分割される。原料ガスのモル容量の少なくとも2.5倍の第一の留分は、ライン62を通して移送され、ポンプ24により搬送された乾燥液状臭素と混合され、交換器26内で加熱されて臭素を気化し、第一の反応器30に供給される。第二の留分は、ライン63を通してライン62から引き出され、臭化アルキルを反応器30に濃縮するのに十分な速度で、調節バルブ60により調節され、反応器30が選択された操作温度、好ましくは約300℃から約400℃の範囲に維持されるように反応熱を吸収し、変換対選択性を最適化するとともに、炭素の析出による触媒の不活性化速度を最小にする。即ち、リサイクル気体流出物によって提供される希釈は、第二の反応器34における温度を抑制することに加えて、第一の反応器30における臭素化の選択性を制御することを可能にする。
【0023】
ライン44を介してスクラバー38から除去された溶液中の水含有金属臭化物塩は、炭化水素ストリッパ47に流通し、そこで残った溶解炭化水素がライン11を通して移送された流入原料ガスと接触することにより水相からストリッピングされる。ストリッピングされた水溶液は炭化水素ストリッパ47からライン65を通して移送され、熱交換器46内で約0℃から約70℃の範囲の温度まで冷却され、次いで吸収器48に流通し、そこで残りの臭素がライン67において排出流から回収される。スクラバー48からの水溶液流は、約100℃から約600℃の範囲、最も好ましくは約120℃から約180℃の範囲の温度に予め加熱された熱交換器へライン49を通して移送され、第三の反応器16に流通する。酸素又は空気がライン10を介して送風機又はコンプレッサ13により、およそ環境圧から約5バールの圧力で臭素ストリッパ14に導入され、水から残りの臭素がストリッピングされ、それはライン64でストリッパ14から取り出され、脱水器50からの水流53と混合され、ライン56の水流出物を形成し、それはプロセスから除去される。ストリッパ14を離れた酸素又は空気は、ライン15を通して反応器16に供給され、それはおよそ環境圧から約5バールの範囲の圧力で、約100℃から約600℃の範囲であるが、最も好ましくは約120℃から180℃の範囲の温度で作動し、金属臭化物水溶液を酸化して、分子状臭素及び金属水酸化物及び/又は金属酸化物及び/又は金属オキソ臭化物種を形成する。上記したように、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、V(II)、Cr(II)又は他の酸化可能な塩を形成する遷移金属が使用できるが、臭化物塩の好ましい金属はFe(III)、Cu(II)、又はZn(II)又はそれらの混合物であり、それらが安価であり約120℃から約180℃の低温で容易に酸化され、フッ素ポリマーラインの装置を使用できるからである。あるいは、Ca(II)又はMg(II)等の、酸化可能な臭化物塩を形成するアルカリ土類金属も使用できる。
【0024】
臭化水素酸は、金属水酸化物及び/又は金属酸化物及び/又は金属オキソ臭化物種と反応して、金属臭化物塩及び水を再度生成する。反応器16の熱交換器18は熱を供給して水及び臭素を気化させる。よって、全反応により、第一の反応器30及び第二の反応器34で生成された臭化水素酸の、触媒サイクルで作動する金属臭化物/金属酸化物又は金属水酸化物によって触媒された液相中の分子状臭素及び水蒸気への最終的な酸化をもたらす。金属臭化物がFe(III)Brである場合、反応は以下のように考えられる:
1)Fe(+3a)+6Br(−a)+3H(+a)+3/2O(g)=3Br(g)+Fe(OH)
2)3HBr(g)+HO=3H(+a)+3Br(−a)+H
3)3H(+a)+3Br(−a)+Fe(OH)=Fe(+3a)+3Br(−a)+3H
第三の反応器16の出口からライン19を通って気体として放出される分子状臭素及び水及び任意の残存酸素又は窒素(酸化剤として空気が用いられた場合)は、冷却器20において約0℃から約70℃の範囲の温度及びおよそ環境圧から5バールの範囲の圧力で冷却され、臭素及び水が凝縮されて三相分離器22に流通する。三相分離器22において、液状の水は臭素に対して約3重量%のオーダーの限られた溶解性しか持たないので、凝縮された全ての臭素は、分離した、より密な液状臭素相を形成する。しかし、液状臭素相は、水に対して0.1%未満のオーダーの顕著に低い溶解性しか持たない。よって、液状臭素及び水を凝縮し、単純な物理的分離により水をデカントし、次いで液状臭素を再度気化させることにより、実質的に乾燥した臭素気体を容易に得ることができる。
【0025】
液状臭素は三相分離器22からポンプ24を介してパイプ25においてポンピングされ、気流62と混合するのに十分な圧力とされる。よって、臭素はプロセス内で回収されてリサイクルされる。凝縮されなかった残りの酸素又は窒素及び任意の残存臭素気体は、三相分離器22から出てライン23を通って臭素スクラバー48に達し、そこで残存臭素は溶解により及び金属臭化物水溶液流65中の還元された金属臭化物との反応により回収される。水は、ライン27を介して分離器22から除去され、ストリッパ14に導入される。
【0026】
本発明の別の実施形態において、図3を参照すると、約1バールから約30バールの範囲の圧力で原料ガスに加えてリサイクルされたガス流からなる、低分子量アルカンを含むガス流は、ライン、パイプ、又は導管162を通して移送又は搬送され、ポンプ124を介して移送された乾燥臭素液と混合され、熱交換器126に通過して、そこで液状臭素が気化される。低分子量アルカンと乾燥臭素気体の混合物は反応器130に供給される。好ましくは、反応器130に導入される混合物における乾燥臭素気体に対する低分子量アルカンのモル比は、2.5:1より大きくする。反応器130は入口に予熱器ゾーン128を有し、それにより混合物が約250℃から約400℃の範囲の反応開始温度まで加熱される。第一の反応器130において、約250℃から約600℃の範囲の比較的低温及び約1バールから約30バールの範囲の圧力において低分子量アルカンは乾燥臭素気体と発熱反応し、ガス状の臭化アルキル及び臭化水素酸気体を生成する。操作温度範囲の上限は反応開始温度範囲の上限より高く、臭素化反応の発熱性によって混合ガスがそこまで加熱される。メタンの場合、臭化メチルの形成は以下の一般式に従って起こる:
CH(g)+Br(g) → CHBr(g)+HBr(g)
この反応は、有意に高い程度の臭化メチルに対する選択性で起こる。例えば、4.5:1の臭素に対するメタン比率での過剰モルのメタンと反応する臭素の場合、モノハロゲン化臭化メチルへの選択性は90から95%の範囲である。臭素化反応では、少量の二臭化メタン及び三臭化メタンも形成される。エタン、プロパン及びブタン等のより高級なアルカンも容易に臭素化されてモノ又は多臭素化された化学種となる。2.5:1より有意に小さい臭素対アルカン比率を用いると、90%より有意に低い臭化メチルへの選択性を生じ、望まれない炭素すすの有意な形成が観察される。また、臭素化の原料ガスに存在しうるエタン、プロパン及びブタン等の他のアルカンが容易に臭素化されて臭化エチル、臭化プロピル及び臭化ブチルを形成することも示された。さらに、第一の反応器130に供給される乾燥臭素気体は実質的に水を含まない。出願人は、第一の反応器130における臭素化工程から水蒸気を実質的に全部排除することが、望まない二酸化炭素の形成を排除し、それにより臭化アルキルへのアルカン臭素化の選択性を向上させ、アルカンからの二酸化炭素の形成で発生する大量の廃熱を排除することを見いだした。
【0027】
臭化アルキル及び臭化水素酸を含む流出液がライン131を通して第一の反応器から引き出され、熱交換器132内で約150℃から約350℃の範囲の温度まで部分的に冷却された後に第2の反応器134に流入される。第二の反応器134において、臭化アルキルは約150℃から約450℃の温度範囲で、約1から30バールの圧力で、結晶性アルミノケイ酸塩触媒、好ましくはゼオライト触媒、最も好ましくはZSM−5ゼオライト触媒の固定床上で発熱反応する。ゼオライト触媒は好ましくは水素、ナトリウム又はマグネシウム形態で使用されるが、ゼオライトは、Li、Na、K又はCs等のアルカリ金属カチオン、Mg、Ca、Sr又はBa等のアルカリ土類金属カチオン、又はNi、Mn、V、W等の遷移金属カチオンとのイオン交換によって修飾されていても、又はハロゲン形態であってもよい。アルミナ対シリカ比を変化させることにより合成される種々の孔サイズ及び酸度を持つ他のゼオライト触媒が第二の反応器134において使用できることは熟練した当業者に明らかである。この反応器では、臭化アルキルはオリゴマー化して、より高分子量の炭化水素生成物及び更なる臭化水素酸気体の混合物を生成する。
【0028】
第二の反応器134が操作される温度は、種々のより高分子量の液状炭化水素生成物に対するオリゴマー化反応の選択性を決定する重要なパラメータである。第二の反応器134を約150℃から450℃の範囲内の温度で操作するのが好ましいが、より好ましくは約300℃から400℃の範囲内である。第二の反応器において約300℃を越える温度とすると、望ましくないメタン等の軽い炭化水素の発生を増加させ、より低い温度では、より重い分子量の炭化水素生成物の発生を増加させる。温度範囲の下限である150℃の低温のZSM−5ゼオライト上での臭化メチルの反応では、有意な臭化メチル変換が20%のオーダーとなり、C5+生成物への選択性が高いことがわかっている。特に、好ましいZSM−5触媒上での臭化アルキル反応の場合、環化反応も起こり、そのためC7+留分は主に置換芳香族からなる。温度を上げて300℃に近づけると、臭化メチル変換は90%又はそれ以上に増加するが、C5+への選択性は低下し、より軽い生成物、特に望まれないメタンへの選択性は増大する。驚くべきことに、エタン又はC−Cオレフィン成分は殆ど生成されない。450℃に近い温度では、臭化メチルからメタンへのほぼ完全な変換が起こる。約300℃から400℃の間の最適な操作温度では、反応の副生成物として、操作している間に少量の炭素が触媒上に蓄積され、反応条件及び原料ガスの組成に依存して、数百時間の範囲に亘って、触媒活性の低下を生じる。約400℃を越える高い反応温度は、炭素の形成とともに臭化アルキルの熱分解を起こし、従って触媒の不活性化速度を増大させると思われる。逆に、温度範囲の下限より低い、特に約300℃より低い温度にしても、コークス化、炭化水素の脱離速度の低下を促進しうる。従って、第二の反応器134における約150℃から約450℃の範囲、しかしより好ましくは約300℃から約400℃の範囲内の操作温度が、触媒量を最少にするパス当たりの高い変換、リサイクル率及び必要とされる装置のサイズと、望まれる生成物への選択性の向上及び炭素形成による不活性化速度の低下との釣り合いをとることになる。
【0029】
反応器134を通常のプロセス流から隔離し、実用的な範囲で触媒上に吸着した未反応の材料を取り除くために、ライン170を通して約1から約5バールの範囲の圧力で、約400℃から約650℃の範囲の高温で、不活性ガスでパージし、引き続いて、ライン170を通して反応器134に約1から約5バールで、約400℃から約650の高温で、空気又は不活性ガスで希釈した酸素を添加することにより析出した炭素をCOに酸化することによって、触媒はその場で定期的に再生され得る。二酸化炭素及び残りの空気又は不活性ガスは、再生時間中にライン175を通して反応器134から排出される。
【0030】
より高分子量の炭化水素生成物及び臭化水素酸からなる流出物を、ライン135を通して第二の反応器134から引き出し、交換器136内で約0℃から約100℃の範囲の温度まで冷却し、炭化水素ストリッパ147からのライン112内で気体流出物と混合する。混合物は次いでスクラバー138に流通し、任意の適当な手段によりライン164を介してスクラバー138に移送されたストリッピングされ再循環された水と接触し、熱交換器155内で約0℃から約50℃の範囲の温度まで冷却される。スクラバー138で凝縮される全ての液状炭化水素生成物は、すくい取られ、流れ137として引き込まれて、液状炭化水素生成物154に添加される。臭化水素酸はスクラバー138において、スクラバー138からライン144を通して除去された水溶液に溶解し、炭化水素ストリッパ147に流通し、そこで水溶液中に溶解した残りの炭化水素が原料ガス111との接触によりストリッピングされる。炭化水素ストリッパ147からのストリッピングされた水相流出物は、熱交換器146内で約0℃から約50℃の範囲の温度まで冷却され、次いでライン165を介して吸収器148に流通し、そこで残りの臭素が排流167から回収される。
【0031】
より高分子量の炭化水素生成物を含有する残りの気相は、スクラバー138から流出物として取り出され、脱水器150に進み、気流から実質的に全部の水が除去される。次いで、ライン153を通して脱水器150から水が除去される。より高分子量の炭化水素生成物を含有する乾燥気流は、更にライン151を介して生成物回収ユニット152に通過し、必要な場合はC及びCが、主にC5+留分がライン154における液状生成物として回収される。任意の従来の脱水及び液体回収の方法、例えば、固定床デシカント吸着に続く、例えば冷凍凝縮、低温膨張、又は循環吸収油といった、天然ガス又は精油所ガス流のプロセスに使用される方法を、当業者に知られているように、本発明の装置に使用することができる。生成物回収ユニット152からの残存液体流出物は、次いで、パージ流157に分割され、それはプロセスの燃料として及びコンプレッサ158を介して圧縮されたリサイクル残存気体として利用できる。コンプレッサ158から排出されたリサイクル残存ガスは2つの留分に分割される。原料ガスのモル容量の少なくとも2.5倍の第一の留分は、ライン162を通して移送され、ライン125内を移送された液状臭素と混合され、熱交換器126に流通し、そこで液状臭素は気化されて第一の反応器130に供給される。第二の留分は、ライン163を介してライン162から引き出され、臭化アルキルを反応器134に希釈するのに十分な速度で、調節バルブ160により調節され、反応器134が選択された操作温度、好ましくは約300℃から約400℃の範囲に維持されるように反応熱を吸収し、変換対選択性を最適化するとともに、炭素の析出による触媒の不活性化速度を最小にする。即ち、リサイクル気体流出物によって提供される希釈は、第二の反応器134における温度を抑制することに加えて、第一の反応器130における臭素化の選択性を制御することを可能にする。
【0032】
酸素、酸素富化空気又は空気110が、送風機又はコンプレッサ113を介して、およそ環境圧から約5バールの範囲の圧力で臭素ストリッパ114に導入され、水から残りの臭素がストリッピングされ、それはライン164を介してストリッパ114から取り出され、2つの留分に分割される。ストリッピングされた水の第一の留分は、ライン164を介してリサイクルされ、熱交換器155内で約20℃から約50℃の範囲の温度に冷却され、ポンプ143等の任意の適当な手段によりスクラバー138に入るのに十分な圧力に維持される。リサイクルされる水の一部は、ライン144を介してスクラバー138から取り出される臭化水素酸溶液流出物が、約10重量%から約50重量%の範囲の臭化水素酸濃度、但し、より好ましくは約30重量%から約48重量%の濃度を有するように選択され、交換器141及び余熱器119において気化されるべき水の量を最小化し、得られる酸のHBrの蒸気圧を最小化する。ストリッパ114からの水の第二の留分は、ライン156を介してライン164及びプロセスから除去される。
【0033】
スクラバー148からの流出水溶液に含まれる溶解した臭化水素酸は、ライン149を介して移送され、ライン115においてストリッパ114を離れた酸素、酸素富化空気又は空気と混合される。混合された流出水溶液及び酸素、酸素富化空気又は空気は、熱交換器141の一方の側へ流通し、予熱器119を通り、そこで混合物が約100℃から約600℃の範囲、最も好ましくは約120℃から約180℃の範囲の温度まで予熱され、金属臭化物塩を含む第三の反応器117に達する。臭化物塩の好ましい金属はFe(III)、Cu(II)又はZn(II)であるが、Co(II)、Ni(II)、Mn(II)、V(II)、Cr(II)又は他の酸化可能な臭化物塩を形成する遷移金属も使用できる。あるいは、Ca(II)又はMg(II)等の、酸化可能な臭化物塩を形成するアルカリ土類金属も使用できる。酸化反応器117内の金属臭化物塩は、濃縮水溶液として利用できる、また好ましくは、濃縮塩水溶液は、シリカゲル等の多孔性、高表面積、耐酸性の不活性な支持体に吸収させてもよい。酸化反応器117は、およそ環境圧から約5バールの範囲の圧力で、約100℃から600℃の範囲、最も好ましくは約120℃から180℃の範囲の温度で操作され;そこで、金属臭化物が酸素により酸化されて、分子状臭素及び金属水酸化物、金属酸化物又は金属オキソ臭化物種を生じ、または、支持された金属臭化物塩を水が主に蒸気として存在する高温及び低圧で操作させた場合には金属酸化物を生ずる。いずれの場合も、臭化水素酸は金属水酸化物、金属オキソ臭化物又は金属酸化物種と反応し、中和されて、金属臭化物塩及び水を再度生成する。よって、全反応により、第一の反応器130及び第二の反応器134で生成された臭化水素酸の、触媒サイクルで作動する金属臭化物/金属水酸化物又は金属酸化物によって触媒された液相中の分子状臭素及び水蒸気への最終的な酸化をもたらす。金属臭化物が水溶液中のFe(III)Brであり、水が液体として存在し得る圧力及び温度で作動させた場合、反応は以下のように考えられる:
1)Fe(+3a)+6Br(−a)+3H(+a)+3/2O(g)=3Br(g)+Fe(OH)
2)3HBr(g)+HO=3H(+a)+3Br(−a)+H
3)3H(+a)+3Br(−a)+Fe(OH)3=Fe(+3a)+3Br(−a)+3H
金属臭化物が不活性支持体に支持されたCu(II)Brであり、水が主に気体として存在する高温かつ低圧条件で作動させた場合、反応は以下のように考えられる:
1)2Cu(II)Br=2Cu(I)Br+Br(g)
2)2Cu(I)Br+O(g)=Br(g)+2Cu(II)O
3)2HBr(g)+Cu(II)O=Cu(II)Br+H
第三の反応器117の出口から気体として放出される分子状臭素及び水及び任意の残存酸素又は窒素(酸化剤として空気が用いられた場合)は、交換器141の第二の側及び冷却器120において約0℃から約70℃の範囲の温度まで冷却され、臭素及び水が凝縮されて三相分離器122に流通する。三相分離器122において、液状の水は臭素に対して約3重量%のオーダーの限られた溶解性しか持たないので、凝縮された全ての臭素は、分離した、より密な液状臭素相を形成する。しかし、液状臭素相は、水に対して0.1%未満のオーダーの顕著に低い溶解性しか持たない。よって、液状臭素及び水を凝縮し、単純な物理的分離により水をデカントし、次いで液状臭素を再度気化させることにより、実質的に乾燥した臭素気体を容易に得ることができる。HBrは水相中での臭素の混和性を向上させ、十分に高い濃度では単一の三元液相を形成させるので、凝縮された液状臭素及び水中にHBrが有意に残ることを回避するように、HBrのほぼ完全な反応が得られるような条件で操作することが重要である
液状臭素は三相分離器122からポンプ124を介してポンピングされ、気流162と混合するのに十分な圧力とされる。よって、臭素はプロセス内で回収されてリサイクルされる。凝縮されなかった残存空気、酸素富化空気又は酸素及び任意の臭素気体は、三相分離器122から出てライン123を通って臭素スクラバー148に達し、そこで残存臭素はライン165を介してスクラバー148に移送される臭化水素酸水溶液流中への溶解により回収される。水は、ライン129を介して三相分離器122から除去され、ストリッパ114に導入される。
【0034】
以下の実施例は、本発明の実施及び利用を例示するものであるが、本発明の範囲を限定するものとして解釈されない。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
乾燥臭素及びメタンの種々の混合物を459℃から491℃の範囲の温度で、約7200hr−1のガス空間速度(1リットルにおける、触媒床多孔性を含む全反応器触媒床容量で除した1時間当たりの標準リットル中におけるガス流動速度として定義されるGHSV)で均一に反応させる。この実施例の結果は、4.5:1より大きな臭素に対するメタンのモル比については、臭化メチルへの選択性が90から95%の範囲であり、臭素の完全変換に近いことを示している。
【0036】
(実施例2)
図7及び図8は、ZSM−5ゼオライト触媒上で反応する臭化メチル及びメタンで実施した2つの試験中に回収された2つのC6+液状生成物サンプルの2つの例示的PONA分析を示す。これらの分析は、生成されたC6+留分の有意な芳香族含有量を示している。
【0037】
(実施例3)
約100℃から約460℃の範囲の温度で約2バールの圧力において、ZSM−5ゼオライト触媒上で、約94hr−1のガス空間速度(GHSV)で臭化メチルを反応させた。オリゴマー化反応についての臭化メチル変換及び生成物選択性を温度の関数として示すグラフである図4に示すように、臭化メチル変換は約200℃から約350℃の範囲で急速に増大している。約100℃から約250℃の範囲の、より低い温度では、より高分子量の生成物への選択性が上がるが変換は低くなる。約250℃から約350℃の範囲の、より高い温度では、50%から100%近くの高い変換を示すが、より低い分子量の生成物、特に望まれないメタンへの選択性の向上が観察された。350℃より高い高温では、メタンへの選択性が急速に増大した。約450℃において、ほぼ完全なメタンへの変換が起こった。
【0038】
(実施例4)
臭化メチル、臭化水素及びメタンを、ZSM−5ゼオライト触媒上で、約2バールの圧力で約250℃及びまた約260℃で、約76hr−1のGHSVで反応させた。臭化水素を含まず臭化メチル及びメタンのみの混合物を用いて、ZSM−5ゼオライト触媒上で、ほぼ同様の圧力で約250℃及びまた約260℃で、約73hr−1のGHSVでの比較試験も実施した。実施した幾つかの試験例における変換及び選択性の比較を例示するグラフである図5は、生成物選択性に対するHBrの存在による影響が極めて少ないことを示した。臭化水素酸は変換及び選択性に少しの影響しか与えないので、いずれにしても更なる臭化水素酸が形成される臭化アルキルの変換反応の前に、臭素化反応で生じた臭化水素酸を除去する必要はない。よって、プロセスは有意に単純化することができる。
【0039】
(実施例5)
臭化メチルを、ZSM−5ゼオライト触媒上で230℃において反応させた。二臭化メタンを反応器に加えた。生成物選択性のグラフである図6は、臭化メチル及びに臭化メタンの反応により、臭化メチル単独の場合に対して、C5+生成物への選択性が変動することを示している。よって、これらの結果は、二臭化メタンも反応性であり、従って本発明の方法においては臭素化工程における臭化メタンへの極めて高い選択性が必要とされないことを示している。しかしながら、二臭化メタンが存在することにより触媒の不活性化を促進することが観察されており、純粋な臭化メチルに比較して、選択性と不活性化との間の妥協点を最適にするためにより高い操作温度が要求される。
【0040】
(実施例6)
メタン中の、12.1モル%の臭化メチルと2.8モル%の臭化プロピルの混合物を、ZSM−5ゼオライト触媒上で295℃及び約260hr−1のGHSVで反応させた。約86%の臭化メチル変換及び約98%の臭化プロピル変換が観察された。
【0041】
従って、上記した本発明の全ての実施形態によると、金属臭化物/金属水酸化物、金属オキソ臭化物又は金属酸化物は触媒サイクルにおいて作動し、臭素をプロセス内で容易にリサイクル可能にする。金属臭化物は、酸素、酸素富化空気又は空気によって、水相又は気相で、約100℃から約600℃の範囲、最も好ましくは約120℃から約180℃の範囲の温度で容易に酸化され、分子状臭素気体及び金属水酸化物、金属オキソ臭化物又は金属酸化物を生成する。約180℃より低温での操作が有利であり、それにより低コストの耐腐食性のフッ素ポリマーラインの装置を使用することができる。臭化水素酸は、金属水酸化物又は金属酸化物との反応により中和され、水蒸気及び金属臭化物を生成する。
【0042】
分子状臭素気体及び水蒸気は凝縮され、単純な物理的分離によって容易に分離され、実質的に乾燥した臭素を生成する。有意な水が無いことにより、COを生成することなく、アルカンの選択的な臭素化、及びそれに続く効率的かつ選択的なオリゴマー化及び環化反応が可能となり、主にプロパン及びより重い生成物となるが、そのC5+留分はかなりの分岐状アルカン及び置換芳香族を含有する。臭素化及びオリゴマー化反応からの副産物である臭化水素酸気体は、容易に水相に溶解し、金属臭化物の酸化により生ずる金属水酸化物又は金属酸化物種によって中和される。
【0043】
図9Aに示した本発明の方法の別の実施形態では、アルキル臭素化及びアルキル臭化物変換段階が、上記の図2及び3について記載した対応する段階と実質的に類似する手法で操作される。より詳細には、約1バールから約30バールの圧力で原料ガスとリサイクルされたガス流の混合物からなる低分子量アルカンを含有するガス流が、ライン、パイプ又は導管、各々262及び211、を介して移送又は搬送され、ライン225において乾燥臭素液と混合される。得られた混合物は、ポンプ224を介して移送され、熱交換器226を通り、そこで液状臭素が気化される。低分子量アルカン及び乾燥臭素気体の混合物は反応器230に供給される。好ましくは、反応器230に導入される混合物における臭素気体に対する低分子量アルカンのモル比は、2.5:1より大きい。反応器230は入口に予熱器ゾーン228を有し、それにより混合物が約250℃から約400℃の範囲の反応開始温度まで加熱される。第一の反応器230において、約250℃から約600℃の範囲の比較的低温及び約1バールから約30バールの範囲の圧力において低分子量アルカンは乾燥臭素気体と発熱反応し、ガス状の臭化アルキル及び臭化水素酸気体を生成する。操作温度範囲の上限は反応開始温度範囲の上限より高く、臭素化反応の発熱性によって混合ガスがそこまで加熱される。メタンの場合、臭化メチルの形成は以下の一般式に従って起こる:
CH(g)+Br(g) → CHBr(g)+HBr(g)
この反応は、有意に高い程度の臭化メチルに対する選択性で起こる。例えば、4.5:1の臭素に対するメタン比率での過剰モルのメタンと反応する臭素の場合、モノ−ハロゲン化臭化メチルへの選択性は90から95%の範囲である。臭素化反応では、少量の二臭化メタン及び三臭化メタンも形成される。エタン、プロパン及びブタン等のより高級なアルカンも容易に臭素化されてモノ又は多臭素化された化学種となる。2.5:1より有意に小さい臭素対アルカン比率を用いると、90%より有意に低い臭化メチルへの選択性を生じ、望まれない炭素すすの有意な形成が観察される。また、臭素化の原料ガスに存在しうるエタン及びプロパン等の他のアルカンが容易に臭素化されて臭化エチル及び臭化プロピルを形成することも示された。さらに、第一の反応器230に供給される乾燥臭素気体は実質的に水を含まない。出願人は、第一の反応器230における臭素化工程から水蒸気を実質的に全部排除することが、望まない二酸化炭素の形成を排除し、それにより臭化アルキルへのアルカン臭素化の選択性を向上させ、アルカンからの二酸化炭素の形成で発生する大量の廃熱を排除することを見いだした。
【0044】
臭化アルキル及び臭化水素酸を含む流出液がライン231を通して第一の反応器230から引き出され、熱交換器232内で約150℃から約350℃の範囲の温度まで部分的に冷却された後に第2の反応器234に流入される。第二の反応器234において、臭化アルキルは約150℃から約450℃の温度範囲で、約1から30バールの圧力で、結晶性アルミノケイ酸塩触媒、好ましくはゼオライト触媒、最も好ましくはZSM−5ゼオライト触媒の固定床上で発熱反応する。ゼオライト触媒は好ましくは水素、ナトリウム又はマグネシウム形態で使用されるが、ゼオライトは、Li、Na、K又はCs等のアルカリ金属カチオン、Mg、Ca、Sr又はBa等のアルカリ土類金属カチオン、Ni、Mn、V、W等の遷移金属カチオンとのイオン交換によって修飾されていても、又はハロゲン形態であってもよい。アルミナ対シリカ比を変化させることにより合成される種々の孔サイズ及び酸度を持つ他のゼオライト触媒が第二の反応器234において使用できることは当業者に明らかであろう。この反応器では、臭化アルキルはオリゴマー化して、より高分子量の炭化水素生成物及び更なる臭化水素酸気体の混合物を生成する。
【0045】
第二の反応器234が操作される温度は、種々のより高分子量の液状炭化水素生成物に対するオリゴマー化反応の選択性を決定する重要なパラメータである。第二の反応器234を約150℃から450℃の範囲内の温度で操作するのが好ましいが、より好ましくは約300℃から400℃の範囲内である。第二の反応器において約300℃を越える温度とすると、望ましくないメタン等の軽い炭化水素の発生を増加させ、より低い温度では、より重い分子量の炭化水素生成物の発生を増加させる。温度範囲の下限である150℃の低温のZSM−5ゼオライト上での臭化メチルの反応では、有意な臭化メチル変換が20%のオーダーとなり、C5+生成物への選択性が高いことがわかっている。特に、好ましいZSM−5触媒上での臭化アルキル反応の場合、環化反応も起こり、そのためC7+留分は主に置換芳香族からなる。温度を上げて300℃に近づけると、臭化メチル変換は90%又はそれ以上に増加するが、C5+への選択性は低下し、より軽い生成物、特に望まれないメタンへの選択性は増大する。驚くべきことに、エタン又はC−Cオレフィン化合物は殆ど生成されない。450℃に近い温度では、臭化メチルからメタンへのほぼ完全な変換が起こる。約300℃から400℃の間の最適な操作温度では、反応の副生成物として、操作している間に少量の炭素が触媒上に蓄積され、反応条件及び原料ガスの組成に依存して、数百時間の範囲に亘って、触媒活性の低下を生じる。約400℃を越える高い反応温度は、炭素の形成とともに臭化アルキルの熱分解を起こし、従って触媒の不活性化速度を増大させると思われる。逆に、温度範囲の下限より低い、特に約300℃より低い温度としても、コークス化、炭化水素の脱離速度の低下を促進しうる。従って、第二の反応器234における約150℃から約400℃の範囲、しかしより好ましくは約300℃から約400℃の範囲内の操作温度が、触媒量を最小にするパス当たりの高い変換、リサイクル率及び必要とされる装置のサイズと、望まれる生成物への選択性の向上及び炭素形成による不活性化速度の低下との釣り合いをとることになる。
【0046】
反応器234を通常のプロセス流から隔離し、実用的な範囲で触媒上に吸着した未反応の材料を取り除くために、ライン270を通して約1から約5バールの範囲の圧力で、約400℃から約650℃の範囲の高温で、不活性ガスでパージし、引き続いて、ライン270を通して反応器234に約1から約5バールで、約400℃から約650の高温で、空気又は不活性ガスで希釈した酸素を添加することにより析出した炭素をCOに酸化することによって、触媒はその場で定期的に再生され得る。二酸化炭素及び残りの空気又は不活性ガスは、再生時間中にライン275を通して反応器234から排出される。
【0047】
より高分子量の炭化水素生成物及び臭化水素酸からなる流出物を、ライン235を通して第二の反応器234から引き出し、交換器236内で約100℃から約600℃の範囲の温度まで冷却する。図9Aに記載するように、冷却した流出物は、バルブ238を開口しバルブ239及び243を閉鎖して、ライン235及び241を介して、固相金属酸化物の床298を備えた容器又は反応器240に導入される。金属酸化物の金属は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、又はスズ(Sn)から選択される。金属は、望まれる操作温度に対するその物理的及び熱力学的特性の影響を加味して、また、潜在的な環境的及び健康的影響及びコストを加味して選択される。好ましくはマグネシウム、銅及び鉄が金属として採用され、マグネシウムが最も好ましい。これらの金属は、酸化物を形成するのみならず、その上臭化物塩を形成する特性を有し、その反応は約500℃未満の温度範囲で可逆的である。固体金属酸化物は、好ましくは耐腐食性の支持体、例えば、メリーランド州コロンビアのDavison Catalystsによって製造されたDavicat Grade 57といった合成非晶質シリカ等の上に固定化される。反応器240において、臭化水素酸は下記一般式に従って、600℃以下、好ましくは300℃から450℃の間の温度で金属酸化物と反応するが、下記式におけるMは金属を表す:
2HBr + MO → MBr + H
この反応で生ずる水蒸気は、高分子量の炭化水素生成物とともに、解放したバルブ219を介してライン244、218及び216で熱交換器220に移送され、そこで混合物は約0℃から約70℃の範囲の温度まで冷却される。この冷却された混合物は脱水器250まで進み、ガス流から実質的に全ての水が除去される。次いで、水はライン253を介して脱水器250から除去される。より高分子量の炭化水素生成物を含有する乾燥したガス流は、ライン251を介して更に生成物回収ユニット252を通り、必要ならばC及びCが、主にC5+留分がライン254における液状生成物として回収される。任意の従来の脱水及び液体回収の方法、例えば、固定床デシカント吸着に続く、例えば冷凍凝縮、低温膨張、又は循環吸収油といった、天然ガス又は精油所ガス流のプロセスに使用される方法を、当業者に知られているように、本発明の装置に使用することができる。生成物回収ユニット252からの残存液体流出物は、次いで、パージ流257に分割され、それはプロセスの燃料として及びコンプレッサ258を介して圧縮されたリサイクル残存気体として利用できる。コンプレッサ258から排出されたリサイクル残存ガスは2つの留分に分割される。原料ガス容量の少なくとも1.5倍の第一の留分は、ライン262を通して移送され、ライン225内を移送された液状臭素及び原料ガスと混合され、熱交換器226に流通し、そこで上記下手法により液状臭素は気化されて第一の反応器230に供給される。ライン263を介してライン262から引き出された第二の留分は、臭化アルキル濃度を反応器234に希釈するのに十分な速度で、調節バルブ260により調節され、反応器234が選択された操作温度、好ましくは約300℃から約400℃の範囲に維持されるように反応熱を吸収し、変換対選択性を最適化するとともに、炭素の析出による触媒の不活性化速度を最小にする。即ち、リサイクル気体流出物によって提供される希釈は、第二の反応器234における温度を抑制することに加えて、第一の反応器230における臭素化の選択性を制御することを可能にする。
【0048】
酸素、酸素富化空気又は空気210が、送風機又はコンプレッサ213を介して、およそ環境圧から約10バールの範囲の圧力で、ライン214、ライン215及びバルブ249を介して、熱交換器215を通して臭素に導入され、そこで酸素、酸素富化空気又は空気が約100℃から約500℃の範囲の温度まで予備加熱され、固相金属臭化物の床299を具備する第二の容器又は反応器246に達する。酸素は下記の一般反応式に従って金属臭化物と反応するが、下記式におけるMは金属を表す:
MBr + 1/2O → MO + Br
この手法では、乾燥した、実質的にHBrを含まない臭素気体が生成され、それにより、次いで液状臭素から水又は臭化水素酸を分離する必要がなくなる。反応器246は600℃以下、より好ましくは約300℃から約500℃の間の温度で操作される。得られた臭素気体は、反応器246からライン247、バルブ248及びライン242を介して熱交換器又は冷却器221に移送され、そこで臭素が液体に凝縮される。液状臭素はライン242を介して分離器222に移送され、そこでライン225を介して液状臭素が取り出され、ポンプ224等の任意の適当な手段によりライン225を介して熱交換器226及び第一の反応器230に移送される。残りの空気又は未反応の酸素は、分離器222からライン227を介して、当業者によって選択されるような、適切な溶媒又は適切な固体吸収剤媒体を備えたベンチュリスクラバーシステム等の臭素スクラバーユニット223に移送され、そこで残りの臭素が捕捉される。捕捉された臭素は、加熱又は他の適当な手段によってスクラバー溶媒又は吸収剤から脱離され、回収された臭素はライン212を介してライン225に移送される。スクラビングされた空気又は酸素はライン229を介して排出される。この手法では、窒素及び任意の他の実質的に不反応性の成分が本発明の系から除去され、それにより、プロセスの炭化水素含有部分への侵入が禁止され、また臭素の周辺環境への損失も回避される。
【0049】
この実施形態に従って、単純な物理的溶解性ではなく化学反応によりHBrを除去することの一つの利点は、高いプロセス温度においてHBrを低レベルまで実質的に完全に捕捉できることである。他の顕著な利点は、取り出された臭素から水が排除されることであり、それにより、臭素と水相の分離及び水相からの残存臭素のストリッピングをする必要が無くなる。
【0050】
反応器240及び246は循環形式で操作することもできる。図9Aに例示するように、バルブ238及び219は解放状態で操作でき、第二の反応器234から引き出された流出物から臭化水素酸を除去することが可能であり、一方、バルブ248及び249を解放状態で操作すると、空気、酸素富化空気又は酸素が反応器246に流れ込み、そこに備えられた固体金属臭化物を酸化することが可能である。反応器240及び246各々内の金属酸化物及び金属臭化物の有意な変換が起こったら、これらのバルブは閉鎖される。この点において、反応器246の床299は、実質的に固体の金属臭化物の床であるが、反応器240の床298は実質的に固体の金属酸化物である。図10Aに例示するように、次いでバルブ245及び243を解放すると、酸素、酸素富化空気又は空気が反応器240に流れ込み、そこに備えられた固体金属臭化物を酸化するが、バルブ239及び217を解放すると、第二の反応器234から引き出されたより高分子量の炭化水素生成物及び臭化水素酸を含有する流出物が反応器246に導入される。反応器246及び240各々内の金属酸化物及び金属臭化物の有意な変換が起こるまで、反応器をこの方法で操作し、次いでバルブを上記したように解放及び閉鎖することにより、図9Aに模式的に例示したように反応器を流れに循環させて戻す。
【0051】
ライン210を介して反応器に移送され、そこに備えられた固体金属臭化物の酸化に使用される酸化剤として酸素が用いられる場合、図9A及び10Aに例示した本発明の方法の実施形態を、反応器246(図9B)又は240(図10B)から生成される臭素ガスがライン242及び225を介して第一の反応器230に直接移送されるように改変することができる。酸素は反応性であり、系に蓄積されないので、窒素等の非反応性の成分を除去するために臭素気体を凝縮する必要が無くなる。市販の空気分離器ユニットなどの実質的に全ての酸素の商業的供給源がライン210に必要な圧力で酸素を供給できるので、コンプレッサ213は図9B及び10Bには記載していない。仮にそうでないならば、当業者には明らかなように、そのような圧力を達成するためにコンプレッサ213を利用することができる。
【0052】
図11Aに例示した本発明の実施形態においては、各反応器へ又は各反応器からの流動方向を変えるために、バルブ等の装置を供する必要なく床を連続的に作動させるために、反応器240及び246に各々備えられた固体金属酸化物粒子及び固体金属臭化物粒子の床が流動し、以下の手法で連結される。この実施形態では、より高分子量の炭化水素生成物及び臭化水素酸がライン235を介して第二の反応器234から引き出され、交換器236において約100℃から約500℃の範囲の温度まで冷却され、固体金属酸化物粒子の床298を備えた反応器240の底部に導入される。臭化水素酸が図9Aについて上記したような仕方で金属酸化物と反応するので、この導入された流体の流れが反応器240内の床298の粒子の上方への運動を誘発する。床298の頂部又はその近くで、反応器240内における固体金属酸化物と臭化水素酸との実質的に完全な反応により耐腐食性支持体の上に実質的に固体の金属臭化物を具備する粒子は、堰又はサイクロン又は他の従来の固/気分離手段を介して回収され、重力によりライン259を流れ落ち、反応器246の固体金属臭化物粒子の床299の底部又はその近くに導入される。図11Aに例示した実施形態では、酸素、酸素富化空気又は空気210が送風機又はコンプレッサ213を介して、およそ環境圧力から約10バールの範囲の圧力で導入され、ライン214を介して移送されて熱交換器215を通り、そこで酸素、酸素富化空気又は空気が約100℃から約500℃の範囲の温度で予備加熱され、第二の容器又は反応器246へ固相金属臭化物の床299下に導入される。酸素は、図9Aについて上記した仕方で金属臭化物と反応し、乾燥した実質的にHBrを含まない臭素気体を生成する。酸素が金属臭化物と反応するので、この導入されたガスの流動が反応器246内の床299における粒子の上方への流れを誘発する。床298の頂部又はその近くにおいて、反応器246における固体金属臭化物と酸素との実質的に完全な反応により耐腐食性支持体の上に実質的に固体の金属酸化物を具備する粒子は、堰又はサイクロン又は他の従来の固/気分離手段を介して回収され、重力によりライン264を流れ落ち、反応器240の固体金属臭化物粒子の床298の底部又はその近くに導入される。この方法では、反応器240及び246は、操作のパラメータを変えることなく連続して操作することができる。
【0053】
図11Bに例示する実施形態では、酸化剤ガスとして酸素が用いられ、ライン210を介して反応器246に移送される。従って、図11Aに例示した本発明の方法の実施形態は、反応器246から生成された臭素気体をライン242及び225を介して第一の反応器230に直接移送するように改変される。酸素は反応性であり、系に蓄積されないので、窒素等の非反応性の成分を除去するために臭素気体を凝縮する必要が無くなる。市販の空気分離器ユニットなどの実質的に全ての酸素の商業的供給源がライン210に必要な圧力で酸素を供給できるので、コンプレッサ213は図11には記載していない。仮にそうでないならば、当業者には明らかなように、そのような圧力を達成するためにコンプレッサ213を利用することができる。
【0054】
図12に例示した本発明の方法の別の実施形態によると、アルキル臭素化及びアルキル臭化物変換の段階が、以下に述べる点を除いて、図9Aについて詳細に記載した対応する段階と実質的に類似する手法で操作される。反応器246から放出された残存空気及び臭素気体が、ライン247、バルブ248及びライン242及びバルブ300を介して熱交換器又は冷却器221へ移送され、そこで臭素含有ガスが約30℃から約300℃の範囲の温度まで冷却される。臭素含有気体は、次いでライン242を介して、還元原子価状態の固相金属臭化物の床322を具備する容器又は反応器320に移送される。還元原子価状態の金属臭化物の金属は、銅(Cu)、鉄(Fe)、又はモリブデン(Mo)から選択される。金属は、望まれる操作温度に対するその物理的及び熱力学的特性の影響を加味して、また、潜在的な環境的及び健康的影響及びコストを加味して選択される。好ましくは銅又は鉄が金属として採用され、銅が最も好ましい。固体金属臭化物は、好ましくは適当な耐腐食性の支持体、例えば、メリーランド州コロンビアのDavison Catalystsによって製造されたDavicat Grade 57といった合成非晶質シリカ等の上に固定化される。反応器320において、臭素気体は、好ましくは適当な耐腐食性支持体上に保持された固相金属臭化物と、約300℃以下、好ましくは30℃から約200℃の間の温度で、以下の一般式に従って反応するが、下記式におけるMは金属を表す:
2MBr + Br → 2MBrn+1
この方法では、臭素は第二金属臭化物、即ち2MBrn+1として反応器320内に貯蔵されるが、得られる残存空気及び酸素を含む気体はライン324、バルブ326及びライン318を介して反応器320から排出される。
【0055】
原料ガス(ライン211)及びリサイクルガス流からなる低分子量アルカンを含むガス流は、ライン262を介して熱交換器352に移送又は搬送され、そこでガス流は約150℃から約600℃の範囲の温度まで予備加熱され、バルブ304及びライン302を介して酸化原子価状態の固相金属臭化物の床312を具備する第二の容器又は反応器310に至る。酸化原子価状態の金属臭化物の金属は、銅(Cu)、鉄(Fe)、又はモリブデン(Mo)から選択される。金属は、望まれる操作温度に対するその物理的及び熱力学的特性の影響を加味して、また、潜在的な環境的及び健康的影響及びコストを加味して選択される。好ましくは銅又は鉄が金属として採用され、銅が最も好ましい。酸化状態の固体金属臭化物は、好ましくは適当な耐腐食性の支持体、例えば、メリーランド州コロンビアのDavison Catalystsによって製造されたDavicat Grade
57といった合成非晶質シリカ等の上に固定化される。ガス流の温度は、約150℃から約600℃、好ましくは約200℃から約450℃である。第二の反応器310において、ガス流の温度は、酸化原子価状態にある固相金属臭化物を熱分解させ、以下の一般式に従って分子状臭素気体及び還元原子価状態の固体金属臭化物を生成するが、下記式におけるMは金属を表す:
2MBrn+1 → 2MBr + Br
得られた臭素気体は、低分子量アルカンとともに、ライン314、315、バルブ330を介して、熱交換器226に移送され、その後アルキル臭素化反応器230に導入される。
【0056】
反応器310及び320は循環形式で操作することもできる。図12に例示するように、バルブ304は解放状態で操作すると低分子量アルカンを含有するガス流を第二の反応器310に移送することが可能であり、一方、バルブ317を解放状態で操作すると、反応器310で生成された臭素気体を含むガス流をアルキル臭素化反応器230に移送することが可能である。同様に、バルブ306を解放状態で操作すると、反応器246からの臭素気体を反応器320に移送することができ、一方バルブ326を解放状態で操作すると残存空気又は酸素を反応器320から排出できる。反応器320及び310各々内の還元された金属臭化物及び酸化された金属臭化物が、対応する酸化及び還元状態へ有意に変換されれば、これらのバルブは図13に示すように閉鎖される。この点において、反応器320の床322は、実質的に酸化状態の金属臭化物の床であるが、反応器310の床312は実質的に還元状態の金属臭化物である。図13に例示するように、バルブ304、317、306及び326を閉鎖し、次いでバルブ308及び332を解放すると、低分子量アルカンを含有するガス流がライン262を介して熱交換器352に移送又は搬送でき、そこでガス流が約150℃から約600℃の範囲に加熱され、バルブ308及びライン309を介して反応器320で反応器320に達し、酸化原子価状態の固相金属臭化物を熱分解して、分子状臭素及び還元状態の固体金属臭化物を生成する。バルブ332も解放すると、得られる臭素気体は低分子量アルカンを含有するガス流とともに、ライン324及び330及び熱交換器226を通して移送された後、アルキル臭素化反応器230に導入される。さらに、バルブ300が解放されると、反応器246から放出される臭素気体がライン242を介して交換器221を通り反応器310に移送され、そこで還元原子価状態の固相金属臭化物が臭素と反応して臭素が金属臭化物として有効に貯蔵される。さらに、バルブ316が解放されると、実質的に臭素を含まない得られたガスがライン314及び318を介して排出される。反応器310及び320各々内の還元された金属臭化物及び酸化された金属臭化物の床が実質的に対応する酸化された及び還元された状態への変換が起こるまで、反応器はこの方法で作動され、次いで反応器は、上記したようにバルブを解放及び閉鎖することにより図12に模式的に示した流れに循環させて戻す。
【0057】
図14に例示する本発明の実施形態では、反応器310及び320に各々備えられる床312及び322が流動化され、図11Aに例示した本発明の実施形態においては、各反応器へ又は各反応器からの流動方向を変えるために、バルブ等の装置を供する必要なく床を連続的に作動させるために、以下の手法で連結される。この実施形態では、反応器246からライン242を介して引き出された臭素含有ガスが、交換器370及び372内で、約30℃から約300℃の範囲の温度まで冷却され、流動状態で移動固体床322を具備する反応器320の底部に導入される。臭素気体が図12について上記したような仕方で床322の底部に入る還元された金属臭化物と反応するので、この導入された流体の流れが反応器320内の床322の粒子の上方への流れを誘発する。床322の頂部又はその近くで、反応器320内における還元された金属臭化物と臭素気体との実質的に完全な反応により耐腐食性支持体の上に実質的に酸化された金属臭化物を具備する粒子は、堰又はサイクロン又は他の従来の固/気分離手段を介して回収され、重力によりライン359を流れ落ち、反応器310の床312の底部又はその近くに導入される。図14に例示した実施形態では、原料ガス(ライン211)及びリサイクルされたガス流からなる低分子量アルカン含有ガス流は、ライン262及び熱交換器352を介して移送又は搬送され、そこでガス流が約150℃から約600℃の範囲まで加熱されて反応器310に導入される。加熱されたガス流は、床312の底部又はその近くの入口に存在する酸化原子価状態の固相金属臭化物を熱分解し、分子状臭素気体及び還元状態の固体金属臭化物を生成する。酸化された金属臭化物は熱分解されるので、反応器310内で床312中の粒子の上方への流動を誘発する。床312の頂部又はその近くにおいて、反応器310における実質的に完全な熱分解により耐腐食性支持体の上に実質的に還元された固体金属臭化物を具備する粒子は、堰又はサイクロン又は他の従来の固/気分離手段を介して回収され、重力によりライン364を流れ落ち、反応器310の床322の底部又はその近くに導入される。この方法では、反応器310及び320は、操作のパラメータを変えることなく連続して操作することができる。
【0058】
本発明の方法は、約1バールから約30バールの範囲の低圧で、ガス相については約20℃から約600℃、液相については好ましくは約20℃から約180℃の範囲の比較的低温で操作されるので、従来の方法より費用がかからない。これらの操作条件は、ガス相については容易に入手できる合金、液相についてはポリマー被覆した容器、配管及びポンプから比較的単純な仕様の安価な装置を使用することを可能にする。また本発明の方法は、操作に必要なエネルギーが少なく、望まれない副産物としての過剰な二酸化炭素の生成が最小化されるので効率的である。この方法により、有意な芳香族含有量を有する液化石油ガス(LPG)及びモーターガソリン燃料範囲にある種々の分子量の成分を含む混合炭化水素生成物を直接的に製造でき、それによりガソリン範囲燃料成分のオクタン価を増大させる。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載かつ示したが、示唆された又は他のもののような代替及び改変をすることができ、それらも本発明の範囲内にあると解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−202183(P2011−202183A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−153325(P2011−153325)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【分割の表示】特願2007−508523(P2007−508523)の分割
【原出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(509158819)マラソン ジーティーエフ テクノロジー, リミテッド (6)
【Fターム(参考)】