説明

ガス状炭化水素流の冷却方法及び装置

(a)水中パイプライン中のガス状炭化水素流10を海上の炭化水素設備18に供給する工程、(b)1つ以上の冷却流40で該ガス状炭化水素流10を冷却して該ガス状炭化水素流10から熱を除去し、こうして冷たい炭化水素流20及び1つ以上の暖かい冷却流30を供給する工程、(c)暖かい冷却流30のうちの少なくとも1つの熱を用いて、前記パイプライン12中に供給されるガス状炭化水素流10を加熱する工程を少なくとも含む天然ガス流のようなガス状炭化水素流10の冷却方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中パイプライン、特に海中パイプライン、更に特に海底坑井に至るパイプラインから供給される(sourced)天然ガスのようなガス状炭化水素流の冷却方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水中又は海中の天然ガス貯留層のような炭化水素貯留層は、海中パイプライン経由で海上又は陸上の炭化水素設備に輸送するための炭化水素を抽出する海中坑井により開発できる。このような設備は、特に液化天然ガス(LNG)を得るため、炭化水素流の加工、処理、及び/又は液化を含むことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
WO 02/21060 A1には液化プラントを備えた艀を有する天然ガスの液化用浮きプラントが記載されている。この液化プラントには、冷却水が端部開口の水取入れ導管経由で供給され、この冷却水は熱交換器から除去された後、容器の外殻(hull)内に延びる煙突中の排出導管から海に直接排出される。多くの場合、冷却水にはこのような環境中に排出できるが、液化方法に対し制約を加える特定の最高温度がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、
(a)水中パイプライン中のガス状炭化水素流を海上の炭化水素設備に供給する(sourcing)工程、
(b)1つ以上の冷却流で該ガス状炭化水素流から熱を除去することにより該ガス状炭化水素流を冷却して、冷たい炭化水素流及び1つ以上の暖かい冷却流を供給する(provide)工程、
(c)暖かい冷却流のうちの少なくとも1つの熱を用いて、前記パイプライン中に供給される(sourced)ガス状炭化水素流を加熱する工程、
を少なくとも含む天然ガス流のようなガス状炭化水素流の冷却方法を提供する。
【0005】
前記暖かい冷却流の熱は、パイプラインに供給されるガス状炭化水素流の加熱に使用されるので、この熱は海に付加されない。したがって、いかなる排出規格にも容易に適合し、冷却方法の設計及び操作上の制限を緩和する。
【0006】
他の局面では本発明は、
ガス状炭化水素流を海上の炭化水素設備に供給する(sourcing)ため、該炭化水素設備に向かう水中パイプライン、
該ガス状炭化水素流を1つ以上の冷却流で冷却して、冷たい炭化水素流及び1つ以上の暖かい冷却流を供給する冷却システム、及び
前記暖かい冷却流のうちの少なくとも1つの熱をパイプライン中の前記ガス状炭化水素流に通すための加熱用ライン、
を少なくとも備えた天然ガス流のような炭化水素流の冷却装置を提供する。
【0007】
以下、本発明を単なる例示の実施態様及び添付の非限定的図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施態様による海中パイプラインから供給された炭化水素流を冷却するための浮きプラントの全体図である。
【図2】本発明の各種実施態様図である。
【図3】図1の更に詳細な図である。
【0009】
説明の目的で、ラインにも該ラインで運ばれる流れにも単一の参照番号を割り当てた。同一参照符号は同様な構成成分を言う。
【0010】
海上の炭化水素設備にガス状炭化水素流を供給する水中パイプラインを有利に使用することが提案されている。この提案では、炭化水素冷却プロセスのうちの少なくとも1つの暖かい冷却流の熱をパイプライン中のガス状炭化水素流に加える。
【0011】
本発明は、ガス状炭化水素流の冷却により供給される熱であって、この熱は環境を著しく撹乱することなく除去することは困難である可能性がある無駄な又は余分の熱かも知れないが、このような熱を水中、一般に海中のパイプラインに供給されるガス状炭化水素流の加熱に直接又は間接的に使用できると言う識見に基づいている。こうして、パイプライン中のガス水和物の形成を防止する助けとなる可能性がある。
【0012】
暖かい冷却流の熱の少なくとも一部を除去するためガス状炭化水素流を使用すると、暖かい冷却流の熱は、海に加える際の可能な温度よりも高い温度で除去される。
【0013】
本発明は、陸上ベース設備、他の容器、海上又は海中の他の容器又は構造、或いは海底の他の坑口への又はそこからの水中パイプライン中のガス状炭化水素流に熱を与えるために広がる。このようなパイプライン及びその他のいかなるライン又は導管及びそれらの絶縁体の配列(arrangement)もここで説明するとおりである。
【0014】
2つ以上のパイプラインは、同じ坑口から、又は他の坑口から浮き容器に任意に用意できる。好適な配列又は集成装置(arrangement)は、ピグ(pig)を海面から海底を通って海面まで戻る一方向に移動できるように、海底で互いにU状に巻いた複数対のパイプライン(或いは1つの単一パイプラインに一緒にした複数対の炭化水素運搬導管12a)を用意するものである。
【0015】
炭化水素流の冷却及び/又はいずれかの予備処理により供給された熱は、加熱用流体、好ましくは加熱水流の形態で水中パイプラインに運搬できる。
【0016】
本発明の他の実施態様では、加熱用流体は、冷却により直接供給され、及び/又は流体、流れ、ユニット又はデバイス等との熱交換による予備処理により供給されるが、このような加熱用流体は、パイプライン中を通るガス状炭化水素流に熱を与えるため、例えば加熱用ライン中で直接使用できる。
【0017】
代りの実施態様では、炭化水素流の冷却及び/又はいずれかの予備処理により供給された熱は、別の回路又はサイクル中の中間流体、例えば別の水流と熱交換され、次いでこのような中間流体は、パイプライン中を通る加熱用流体又流れと熱交換される。
【0018】
本発明に含まれる暖かい冷却流、加熱流、加熱用流体及び/又は中間流体のいずれも1種以上の塩付着防止剤又は腐食防止剤等も含有してよい。
【0019】
ガス状炭化水素流の源泉は、通常、海底又は海底内の1つ以上の貯留層から、海底又はその近くに配置した坑井又は坑口を通って抽出したもの(extraction)である。次いでこの炭化水素流は、坑井又は坑口から好適なパイプラインに沿って浮き容器に入る。
【0020】
図1は、海底16の坑口14と、海上の海面上炭化水素設備との間のパイプライン12から供給される天然ガスのようなガス状炭化水素流10を冷却する方法を示す。ここでは海面上炭化水素設備は、船18のような浮き容器の形態で示す。パイプラインは、船自体に物理的に接続してはならず、或いはガス状炭化水素流10は、パイプライン12から直接、船18に供給してはならない。炭化水素設備は、例えば船18を係留できるタレット等を備えてよく、これによりガス状炭化水素流10はタレット経由で船18に供給される。
【0021】
ガス状炭化水素流10は、冷却される好適ないかなる炭化水素含有ガス流であってもよいが、通常は1つ以上の天然ガス又は石油貯留層から得られる天然ガス流である。通常、天然ガス流は実質的にメタンからなる。この炭化水素流は、メタンを好ましくは60モル%以上、更に好ましくは80モル%以上含有する。
【0022】
1つ以上の海底貯留層から天然ガスのようなガス状炭化水素流10の抽出法は、坑口14の配列及び操作のように当該技術分野で知られている。
パイプライン12は、当該技術分野で公知のいかなる好適な配列においても1つ以上のライン及び導管、並びに絶縁体を持ってよい。一例はガス状炭化水素流10用の中央導管12a、及びガス状炭化水素流用中央導管12aを囲むように平行配列した1つ以上の導管を有し、各導管は1つ以上の熱絶縁性材料中に埋込まれた加熱用ライン90である。
【0023】
パイプライン12の長さは、当該技術分野で公知のように、水の深さ及び/又はパイプラインの所望の通路に従って変化できる。
パイプライン12は、船18の上又は中にガス状炭化水素流10の根源を与え、ここでパイプライン12から炭化水素流10が放出される。図1に示す実施態様では、次いでこの炭化水素流は冷却システム22に入る。
【0024】
当該技術分野では冷却システム及び/又は液化システムは知られていて、通常、各冷却段階は1つ以上の熱交換器を有する1つ以上の冷却段階を含む。冷却システム及び/又は液化システムは、例えば圧縮熱を除去するため、専用の及び/又は標準の冷媒圧縮機及び下流熱交換器を備えた1つ以上の冷媒回路を持っていてよい。冷却システムは、LNG生産設備のように、冷却段階及び続いてガス状炭化水素流を液化するための液化段階を含んでよい。ガス状炭化水素流の共通の冷却方法は、1つ以上の熱交換器中で該炭化水素流を、冷媒のような1つ以上の冷却用流体と熱交換することである。
【0025】
当該技術分野では冷却用流体又は冷媒は知られていて、プロパン又は窒素のような単一成分冷媒、或いは窒素、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ペンタン及びC6+炭化水素を含む群から選ばれた、通常、2種以上を含む混合冷媒が挙げられる。
【0026】
冷却には、少なくとも1つの圧縮機及び少なくとも1つの下流熱交換器を含んでよく、これらの圧縮機及び熱交換器は、炭化水素流を冷却するための1つ以上の冷却回路の一部であってよい。冷媒は、通常、少なくとも1つの冷媒圧縮機及び圧縮流を冷却するための少なくとも1つの下流熱交換器を備えた冷媒回路を、通常、順々に回る。
【0027】
冷却システム及び/又は液化システムは、機器からの熱は加熱用ラインに使用できる、ボイラー、タービン、凝縮器のような他の熱供給器又は熱発生機を備えてよい。このような熱は、ユニット自体、或いは排気又は廃棄流から出るものであってよい。例えばタービンの排気は、暖めた流れ又は加熱流を供給するための熱交換器に含有できる。
【0028】
こうして、再び図1を参照すると、冷却システムは、ガス状炭化水素流10を冷却して、冷却炭化水素流20を得る(provide)ように適応させた、いかなる集成装置、装置、ユニット、デバイス、又はそれらの組合わせであってもよい。冷却炭化水素流20は、以下に説明するように、精製及び/又は液化天然ガス流であってよい。
【0029】
本発明の一実施態様では、炭化水素流の冷却は0℃未満までである。この冷却工程は、液化天然ガスのような液化炭化水素流の形態で、冷却炭化水素流20を得るため、天然ガスのような炭化水素流の液化工程を含む。
【0030】
冷却システム22の1つ以上の部品、ユニット、完成品(item)又は流れは、熱交換器24を通る暖かい冷却流30を供給し、またその戻りの冷却流40は冷却システム22内に戻る。
【0031】
暖かい冷却流30は、圧縮冷媒を含有してよい。或いは暖かい冷却流は、水及び任意に1種以上の他の熱成分を含有してよい。或いはライン30は、暖かい冷却流自体の代りに、暖かい冷却流から除去された熱の少なくとも一画分を運ぶ伝熱用流体を運んでよい。
【0032】
ライン30中の前記水及び任意に1種以上の熱成分のような流れは、>20℃、好ましくは>30℃、>40℃又は>50℃を超える温度、更には例えば150℃又は200℃のように100℃を超える温度であってよい。
【0033】
図1は、一般には船18の周囲の海水からの水を、濾過システム28を有する容器26に入れる水取入れ導管50も示す。濾過システム28は、回転ドラム又はサイクロンのように、水を連続的に浄化するのに好適な濾過設備を備えることができる。
【0034】
濾過システム28は濾過水流60を供給し、この濾過水流はポンプ32によりポンプ送り水流70を供給し、更にこの水流70も熱交換器24に入る。この方法で、暖かい冷却流30の熱は、熱交換器24中でポンプ送り水流70に交換され、加熱水流80が得られる。
【0035】
パイプラインは、ガス状炭化水素流10用の少なくとも1つの炭化水素導管12a、及び暖かい冷却流の熱と平行して通る少なくとも1つの加熱用ライン90を有することが好ましい。次いで加熱水流80は、パイプライン12の入口34から直接、加熱用ライン90に入ることができ、これにより加熱水流80の熱は、ガス状炭化水素流10を運ぶパイプライン12の導管12aに熱を与える。
【0036】
加熱用ライン90は、パイプラインと平行して部分的に延びてよいが、船18間のパイプライン12を通って、坑口14で又はその近くでパイプライン12の端部に近接又は隣接する位置まで延びていることが好ましい。当業者ならばパイプライン12及びその導管の詳細な構造又は配置構成(configuration)を変化できる。
【0037】
坑口14の近くでは加熱用ライン90は、その流れ90をパイプライン12の出口に解放ライン100(及び海に戻す)沿いに通すことができる。解放ラインの長さは当該技術分野でいかなる好適な長さであってもよい。出口36を通る流れ90の温度は好ましくは周囲の海温よりも高く、例えば+30℃である。入口34を通る加熱水流80の温度は、この加熱水流が加熱用ライン90を経由しないで周囲の海に直接放出したと仮定した場合、許容される温度を超えてよい。こうして、水取入れ導管50経由で取入れるのに必要な冷却水の流量は、加熱用ライン90経由で放出することにより低下する。
【0038】
加熱用ライン90の流れは、パイプラインで運ばれるガス状炭化水素流10に熱を与えて、パイプライン中、特に炭化水素導管12a中で起こる恐れがある水和物の形成を低減し、好ましくは防止する。
【0039】
全てでなければ殆どの炭化水素流体は、水和物の形成を防止するため、海中坑口からの炭化水素流の温度を25℃より高く、更には30℃より高く維持することが望ましい。海がそれよりも冷たいか、冷たい可能性があるならば、炭化水素流にグリコール化合物を、海水の温度及び炭化水素流中の水分の関数となる量、添加することが多い。
【0040】
グリコール化合物の必要量は、特に非熱帯水域では多くても、非常に多くてもよく、例えば20〜30容量%であってよい。当該技術分野では海中パイプラインを絶縁又は加熱する方法が、グリコール化合物の添加必要量を低減するために各種固体及び液体絶縁材料の使用を含めて、数多く説明されている。しかし、先行技術では熱源は、別途の加熱設備からであると説明されているに過ぎない。
【0041】
図1に示す集成装置は、ガス状炭化水素流10の冷却システム22により供給される熱を使用し、これにより組み合わせ操作の効率を向上することが可能である。この効率は、加熱用ライン90を下る流体用の別個の加熱装置、ユニット又は設備を用意する資金及び/又は運転コストを低減すること、並びに熱を使用しなければ大気中に廃棄又は排気するかも知れないが、冷却システム22により作った熱を使用することも意味している。
【0042】
こうして、本発明は液化プラントの資金及び/又は運転コスト及び海中パイプラインの加熱を簡素化及び/又は低減できる。
本発明はパイプライン中のいずれの炭化水素導管及びいずれの加熱用ラインのいかなる配列によっても限定されない。パイプラインは、当該技術分野で公知の1つ以上の他のライン及び/又はいかなる静電気絶縁体も任意に含有してよい。
【0043】
これに関連して、海中パイプライン自体は当該技術分野で知られ、またこのようなパイプライン用に使用され、提案された配列又は集成装置も多数ある。多くはガス状炭化水素流と並流及び/又は向流の他の流体の絶縁及び/又は通路を含んでいる。このような配列又は集成装置としては、同軸の複数の通路、複数の導管、複数のライン等、及び/又は複数の平行ライン等が挙げられる。また、このような配列には、1つのパイプラインケーシング内に多数のライン又は導管を“束ねること”も含まれる(例えばWO 02/053869 A1参照)。
【0044】
US 2004/0040716 A1には、パイプ中パイプ(pipe−in−pipe)流ラインの環部に熱絶縁材料及び/又は部分的真空部を有する炭化水素輸送用パイプ中パイプ流ラインに含まれる炭化水素液体を、環部沿いに熱水を通すことによっても積極的に加熱する方法が記載されている。熱水は海面(surface)上炭化水素プロセス設備から供給できる。しかし、US 2004/0040716 A1は、炭化水素流の冷却方法を含まないし、或いは炭化水素冷却法からの余分なプロセス熱を取扱う問題に対処していない。
【0045】
加熱用ライン又は各加熱用ライン90は、加熱用ラインの熱が炭化水素導管への熱路を持つ限り、パイプラインの炭化水素導管に近いか、隣接するか、該導管内にあるか、或いは他のいずれかの近接関係、好ましくは密接関係にあることで、炭化水素導管又は各炭化水素導管の“そば(alongside)”にあることが好ましい。
【0046】
加熱用ライン90は、パイプライン中で熱を均等に又は不均等に運ぶように適応させた1つ以上のラインで構成してよい。
炭化水素導管12aは、パイプライン中でガス状炭化水素流を均等に又は不均等に運ぶように適応させた1つ以上の導管で構成してよい。
【0047】
必要又は所望ならば、水和物の形成防止を助けるため、海底のパイプラインには、更にアルコール化合物、例えばメタノール、又はグリコール化合物、例えばMEG、PEG及びTEGのような、1種以上の水和物阻止流体を添加できる。
【0048】
パイプラインの表面端部には導管12aからガス状炭化水素流を受取って、ガス状炭化水素を分離するため、気液分離器、例えばスラグ捕獲器を設けてよい。このガス状炭化水素は、同伴の凝縮物炭化水素、水相(恐らく水和物阻止剤を含有する)及び/又は固体からライン10中に供給してよい。同様に、ライン10中のガス状炭化水素流を予備処理するため、当業者に公知の設備を設けてよい。この予備処理は、必要に応じて、当業者に公知のように、脱水、酸成分、特にCO及びHSの除去、並びに水銀の除去の1つ以上を含んでよい。
【0049】
本発明の一実施態様では、パイプライン12中を流れるガス状炭化水素流10用の熱は、冷媒回路の少なくとも1つの下流熱交換器により少なくとも部分的に供給される。冷媒回路は2つ以上の下流熱交換器を備えてよく、この熱交換器から本発明に熱が供給できる。
【0050】
図2は、パイプライン中のガス状炭化水素流10の加熱に使用される冷却システム22からの2つの可能な熱源を示す。両配列とも、冷却システム22の通過前に、アキュムレーター38を通る冷却流40、バルブ39のような膨張器、及び充分気化した暖かい冷却流30としての流出流(outflow)を含む。ここで圧縮冷却器24aとして表した下流熱交換器を通る流出流の通過前に、暖かい冷却流30は圧縮機36を通る。圧縮機36は、直列、並列又はそれらの組み合わせの1つ以上の圧縮機であってよい。圧縮冷却器24aは、直列、並列又はそれらの組み合わせの1つ以上の冷却器で構成してよい。
【0051】
一集成装置では、第一水流70bは1つ以上の圧縮冷却器24aを通って、圧縮した冷却流から熱を奪い、こうして加熱水流80bを供給する。次いで加熱水流の熱は、パイプライン12中の加熱用ライン90に通すことができる。
【0052】
第二の代りの及び/又は別の集成装置では、圧縮機36を駆動するための駆動機35がある。駆動機35は、駆動機からの熱排気流用排気37を有し、排気流の小道中では、排気流により恐らく100℃より高温に加熱され、こうして第二加熱水流80aを供給する第二水流70aとなり得る。第二加熱水流80aは、パイプライン12中の加熱用ライン90に通すことができる。
【0053】
こうして、図2に示す集成装置は、暖かい冷却流30及び/又は駆動機35熱排気流により供給される熱を使用し、これにより組み合わせ操作の効率を向上すると共に、熱を使用しなければ大気中に廃棄又は排気するかも知れない熱を使用することができる。
【0054】
図3は図1の一層詳細な図を示す。同じ方法で、海底16の坑口14からのガス状炭化水素流10は、パイプライン12中の中央導管12aを通って船18に供給される。同様に、取入れ水流50は容器26、濾過システム28、及びポンプ送り水流70を供給するためのポンプ32経由で供給される。
【0055】
図3は船18の上又は中に3つのユニットを示し、各1つのユニット、又はそれらのいずれかの組合わせは、炭化水素流10の冷却及び任意に予備処理に使用できる。こうして、図3に示す集成装置は、図示のユニットの組み合わせ、又は各ユニットにより得られる後述の熱集成装置に限定されない。
【0056】
ガス状炭化水素流はその出所に依存して、メタンより重質の炭化水素、例えばエタン、プロパン、ブタン及びペンタン、並びに幾つかの芳香族炭化水素を種々の量含有する。ガス状炭化水素流は、HO、N、CO、HS及びその他の硫黄化合物等のような非炭化水素も含有してよい。
【0057】
ガス状炭化水素流は、冷却前に予備処理してよい。予備処理は、例えば酸ガス除去システム又はユニットにより二酸化炭素及び任意に硫化水素及び/又はCOSを除去するためである。当該技術分野ではガス状炭化水素流から二酸化炭素/酸ガスを低減するプロセス、方法及びシステムが、有機溶剤又は有機溶剤の水溶液、通常、化学溶剤及び物理溶剤の使用を含めて数多く知られている。WO 03/057348 A1には、二酸化炭素及び任意に硫化水素及び/又はCOSを含むガス流を水、スルホラン及びエタノールアミンから誘導される第二又は第三アミンを含む洗浄用水溶液で洗浄することにより該ガス流からこれらの化合物を除去する方法が記載されている。
【0058】
このような酸ガス除去プロセス、システム及び方法では、システムのデバイス又はユニットに動力を供給するのに使用される1つ以上の発生機によるか、或いは周囲温度を超える二酸化炭素又は酸ガスの排気流のような加熱流を供給又は作ることで熱を発生できる。
このような熱は、パイプライン中の炭化水素流に直接又は間接的に熱を供給するのに使用できる。
【0059】
こうして、他の一局面では本発明は、天然ガスのようなガス状炭化水素流の冷却及び/又は液化のための製造において、
(a)水中パイプラインから、任意に海底から、ガス状炭化水素流を、例えば浮き容器の形態の海上炭化水素設備に供給する工程、
(b)該炭化水素流を処理して、炭化水素流から1種以上の成分を低減及び/又は除去すると共に、処理済み炭化水素流及び加熱流を供給する工程、
(c)該加熱流の熱を用いて水中パイプライン中の該炭化水素流を加熱する工程、
を少なくとも含むガス状炭化水素流の予備処理方法を提供する。
【0060】
前記処理は処理システムにより実施(provide)でき、ガス状炭化水素流の性質又は構成要素(constituency)に影響を与えるため、いかなる物理的及び/又は化学的プロセス又はプロセスの組み合わせも含んでよい。このようなプロセスは、限定されるものではないが、ガス状炭化水素流の1種以上の成分の低減及び/又は除去を含む。
処理システムは、熱をガス状炭化水素流と交換するか、或いは熱を他の流れと交換するため、1つ以上の熱交換器も備えてよい。
【0061】
炭化水素流の冷却及び/又はいずれかの予備処理は、熱を生成するか、或いは、発生機で発生する動力を含むエネルギーを必要とする1つ以上のユニット、装置又はデバイスを有してよい。このような発生機としては、電気、タービン及び当該技術分野で公知の、モーター及び駆動機を含むその他の発生機が挙げられる。このような発生機は、圧縮機、ポンプ、分離器等に作用でき、それらの操作は一般に熱を作る。冷却及び/又は予備処理も抽出するのに望ましい熱を有する別の流れを作るか、或いは供給する。これら熱源のいずれか又は全ては、本発明の加熱に直接又は間接的に使用できる。
【0062】
図3において、ガス状炭化水素流10は、まず酸ガス除去(AGR)ユニット又はシステム52を通って酸ガスが除去される。AGRシステム52は、別個の又は専用のユニット、或いはこのユニットと1種以上の他のユニット又は装置とを一体化したものでもよい。AGRシステム52は、当該技術分野で公知の方法、例えばWO 03/057348 A1に記載の1つ以上の方法に従って二酸化炭素及び硫化水素及び/又はCOSを除去する方法を提供する。
【0063】
AGRシステム52は、処理済み流110を供給し、一方、AGRシステム52中の1つ以上のユニット、デバイス又は熱交換器は、伝熱用流れ120により第一副熱交換器54に入り得る熱を供給する。第一副熱交換器54では、この熱は透明化海水のポンプ送り流の第一画分703に通し、これにより第一熱水流70cが得られる。第一熱水流70cは加熱水流80の一部又は全部となり得るもので、このような加熱水流80は、入口34経由でパイプライン12に入って、前述のような方法で加熱用ライン90を下降できる。
【0064】
次いで処理済み炭化水素流110は、第一冷却段62に入り得る。第一冷却段62は、冷却システム及び/又は液化システムの一部を構成してよい。第一冷却段62は、並列及び/又は直列の1つ以上の熱交換器を備えてよく、処理済み炭化水素流110の温度を、好ましくは0℃未満、更に好ましくは−10〜−70℃の範囲の温度に低下させて、冷却炭化水素流130を供給できる。
【0065】
第一冷却段62は、当該技術分野で公知のいかなる構造又は配置構成であってもよく、一般に1種以上の冷媒を通して、冷たさ又は冷エネルギーを処理済み炭化水素流110に供給する1つ以上の冷媒回路を備える。一例の冷媒回路は、当該技術分野で公知のプロパン冷媒回路である。
【0066】
図3は、冷媒回路140が通る第一冷却段62を示す。第一冷却段62からは、処理済み炭化水素流110を冷却後、膨張させた冷媒流が再度圧縮のため第一段圧縮機66に入る。第一段圧縮機66は、当該技術分野で公知の直列又は並列の1つ以上の圧縮機を備えてよい。冷媒を圧縮すると、通常、冷媒の温度は上昇するので、第一段圧縮機66の下流にある1つ以上の下流熱交換器(図2の第二副熱交換器64で表す)により冷媒は冷却される。下流熱交換器は、当該技術分野で公知の1つ以上の周囲水冷却器及び/又は周囲空気冷却器を備えてよい。
【0067】
図3に示す配列又は集成装置では、ポンプ送り流又はその第二画分702も、第一段圧縮機66からの圧縮流の熱を受取り、これにより少なくとも部分的に加熱されて、第二熱水流70bが得られるように、第二副熱交換器64に通す。第二熱水流70bは、加熱用ライン90に使用される加熱水流80の一部又は全部になり得る。熱交換器64からの冷媒は、第一冷却段62に再度入る前に、バルブを通ることができる。
【0068】
図3は、第二冷却段72を通過する冷却炭化水素流130も示す。第二冷却段72は、更に冷却した炭化水素流150、好ましくは液化天然ガスのような液化炭化水素流を得るため、並列及び/又は直列の1つ以上の熱交換器を備え、冷却炭化水素流130を更に冷却及び/又は液化するように設計されている。LNGのような更に冷却した炭化水素流150は、船18の貯蔵所、例えば1つ以上の貯蔵槽(図示せず)に入れるか、或いは別のパイプライン又は導管(図示せず)経由で陸上ベース設備又は他の浮き容器のような、どこか他の所に設けた1つ以上の貯蔵槽に入れることができる。
【0069】
第一冷却段62と同様、第二冷却段72は、冷却炭化水素流130を更に冷却するように適応させた冷媒を有する1つ以上の冷媒回路を備えてよい。一例の冷媒回路は混合冷媒であり、第二冷却段は、冷却炭化水素流130の温度を−100℃未満、好ましくは−150℃未満に冷却できる。
【0070】
図3は、第二冷媒回路160を示す。この冷媒回路では第二冷却段72からの膨張冷媒は、第二段圧縮機76(並列又は直列の1つ以上の圧縮機を備えてよい)を通り、次いで、得られた圧縮流は、通常、1つ以上の下流熱交換器、例えば図3において第三副熱交換器74で表される周囲水冷却器及び/又は周囲空気冷却器により冷却される。次いで第二冷媒回路160中の冷媒流は、当該技術分野で公知の方法でバルブに達して膨張し、更に第二冷却段72で再使用する前に、当該技術分野で公知の方法で第一冷却段62、任意に更に冷却するため第二冷却段を通る第一通路(図示せず)を通過する。
【0071】
第三副熱交換器74は、ポンプ送り流70又はその第三画分701を受取って、その圧縮前に第二冷媒回路160の冷媒流(第三副熱交換器74中)の熱を受容し、第三の熱い冷却流70aを供給できる。
【0072】
加熱流80を作るためのポンプ送り流70に供給される熱は、AGRシステム52の1つ以上、又はAGRシステム52、第一冷却段62及び第二冷却段72のいずれかの組み合わせにより供給してもよく、図3に示す集成装置に限定されない。
したがって、最終の加熱流80は、熱流70a、70b及び70cの1つ以上で得られる。
【0073】
AGRシステム52の1つ以上並びに第一及び第二冷却段62、72は、例示にすぎないが、第一及び第二圧縮機66、76のような1つ以上のデバイス、ユニット又は分離器を駆動するためのガスタービンのような1つ以上の発生機を有してよい。このような発生機は、ポンプ送り流70又はその画分に熱の少なくとも若干も直接又は間接的に供給できる。
【0074】
また図3では加熱水流80は、引続きパイプライン12中の入口34経由で加熱用ライン90に直接入れることができ、これにより加熱水流80中の熱は、坑口14からのガス状炭化水素10を運ぶパイプライン12中の導管12aに熱を供給する。図3に示す集成装置は、AGRシステム52の1つ以上並びに第一及び第二冷却段62、72により供給された熱を使用し、これにより組み合わせ操作の効率を向上すると共に、熱を使用しなければ大気中に廃棄又は排気するかも知れない熱を使用することができる。
【0075】
当業者ならば、付属の特許請求の範囲を逸脱しない限り、本発明を多くの各種方法で実施できることは理解している。
【符号の説明】
【0076】
10 ガス状炭化水素流
12 パイプライン
12a ガス状炭化水素流用中央導管
14 坑口
20 冷却炭化水素流
22 冷却システム
24 熱交換器
24a 圧縮冷却器
26 容器
28 濾過システム
30 暖かい冷却流
34 入口
35 駆動機
36 圧縮機
38 アキュムレーター
39 膨張器としてのバルブ
40 戻りの冷却流
50 水取入れ導管又は取入れ水流
52 酸ガス除去(AGR)ユニット又はシステム
54 第一副熱交換器
60 濾過水流
62 第一冷却段
64 第二副熱交換器
66 第一段圧縮機
70 ポンプ送り流
70a 第二水流、第三の熱い冷却流又は熱流
70b 第一水流、第二熱水流又は熱流
70c 第一熱水流又は熱流
72 第二冷却段
74 第三副熱交換器
76 第二段圧縮機
80 加熱水流
80a 第二加熱水流
90 加熱用ライン
110 処理済み流又は処理済み炭化水素流
120 伝熱用流れ
130 冷却炭化水素流
140 冷媒回路
150 更に冷却した炭化水素流
160 第二冷媒回路
701 ポンプ送り流の第三画分
702 ポンプ送り流の第二画分
703 ポンプ送り流の第一画分
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】
【特許文献1】WO 02/21060 A1
【特許文献2】WO 02/053869 A1
【特許文献3】US 2004/0040716 A1
【特許文献4】WO 03/057348 A1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水中パイプライン中のガス状炭化水素流を海上の炭化水素設備に供給する工程、
(b)1つ以上の冷却流で該ガス状炭化水素流から熱を除去することにより該ガス状炭化水素流を冷却して、冷たい炭化水素流及び1つ以上の暖かい冷却流を供給する工程、
(c)暖かい冷却流のうちの少なくとも1つの熱を用いて、前記パイプライン中に供給されるガス状炭化水素流を加熱する工程、
を少なくとも含む天然ガス流のようなガス状炭化水素流の冷却方法。
【請求項2】
(b)の冷却工程が、前記炭化水素流を0℃未満に冷却する冷却段階を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(b)の冷却工程が、前記炭化水素流を液化すると共に、液化天然ガスのような液化炭化水素流を得る液化段階を含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記冷却工程が、前記1つ以上の冷却流を少なくとも1つの圧縮機で圧縮し、少なくとも1つの下流熱交換器中で前記1つ以上の冷却流から熱を除去する工程を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記パイプラインを根源とするガス状炭化水素流用の工程(c)における前記熱が、下流熱交換器のうちの少なくとも1つにより少なくとも部分的に供給される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ガス状炭化水素流が、工程(b)の前の工程(a)の下流で予備加熱され、該処理が酸ガスの除去工程を含み、かつパイプラインを根源とする前記ガス状炭化水素流用の熱は、該酸ガスの除去工程により少なくとも部分的に供給される請求項1〜5のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項7】
パイプラインを根源とする前記ガス状炭化水素流用の熱が、加熱水流の形態で該パイプラインに供給される請求項1〜6のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項8】
前記加熱水流の少なくとも一部が、水流又はその画分と、前記暖かい冷却流の少なくとも1つとの熱交換により用意される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記加熱水流の少なくとも一部が、水流又はその画分と熱伝導流体間の熱交換により供給され、かつ該熱伝導流体は、前記暖かい冷却流の少なくとも1種から除去された熱の少なくとも一画分を運ぶ請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記パイプラインが、海底の1つ以上の坑口と海上の炭化水素設備間に渡る請求項1〜9のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項11】
前記海上の炭化水素設備が、浮き容器である請求項1〜10のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項12】
ガス状炭化水素流を海上の炭化水素設備に供給するため、該炭化水素設備に向かう水中パイプライン、
該ガス状炭化水素流を1つ以上の冷却流で冷却して、冷たい炭化水素流及び1つ以上の暖かい冷却流を供給する冷却システム、及び
前記暖かい冷却流のうちの少なくとも1つの熱をパイプライン中の前記ガス状炭化水素流に通すための加熱用ライン、
を少なくとも備えた天然ガス流のような炭化水素流の冷却装置。
【請求項13】
前記冷却システムが、前記ガス状炭化水素流を液化するための冷却段階及び液化段階を含む請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記海上炭化水素設備が浮き容器である請求項12又は13に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−535314(P2010−535314A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518639(P2010−518639)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059845
【国際公開番号】WO2009/016140
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】