説明

ガス給排装置

【課題】 放電容器などに効率よくガスを封入できる装置を提供する。
【解決手段】 加熱処理室5にはArなどの雰囲気ガス導入部12が形成され、またジョイント部材20を介してガス供給装置としての容積可変部材30が接続されている。この容積可変部材30は容積を変化させることでガスを圧送または吸引する機能を有する。また前記ジョイント部材20は配管21の途中に切替弁22を備え、この切替弁22を操作することで、前記加熱処理室5内が真空ポンプ23及び容積可変部材30に選択的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はHIDランプ(高輝度放電ランプ)やハロゲンランプに封入するガスを最適な状態で供給し、使用を回収し、再利用するガス給排装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ランプの発光部内には一対の電極が臨むとともに、レアアースガスとしてヘリウム、窒素やアルゴン、クリプトン、キセノン、水銀、ナトリウム、などのハロゲン化物と共に高い演色性を発現させる目的でディスプロシウム(Dy)、スカンジウム(Sc)、ネオジウム(Nd)、ユロピウム(Eu)、ホルミウム(Ho)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)など希土類金属の複数からなるハロゲン化合物が封入されている。
【0003】
また、発光部位の片側に封止部位を設け、この封止部位に一対の電極を保持するタイプの先行技術として、特許文献1及び特許文献2が知られており、発光部位の両側に封止部位を設け、各封止部位に電極を保持するタイプの先行技術として、特許文献3が既知である。
【0004】
何れのタイプのランプにあっても、封止方法は同様であるので、発光部位の片側に封止部位を設けたタイプの放電ランプの封止方法を図7に基づいて説明する。
【0005】
先ず図7(a)に示すように、封止前のランプは発光部位100の片側に封止部位(一次封止)101を設け、この封止部位101にて電極102,102をモリブデン箔103,103を介して外部リード104,104に接続している。また、発光部位100を挟んで反対側には排気用のパイプ105が設けられている。
【0006】
上記のランプのパイプ部105をジョイント部材106にスウェージロックを介して挿入する。ジョイント部材106はガスの供給路107と排気路108を備え、供給路107と排気路108には開閉弁109,110が併設され,更に供給路107は封止ガスを収納するボンベ111に接続され、排気路108は真空ポンプ112に接続される。
【0007】
そして、開閉弁109を閉、開閉弁110を開として真空ポンプ112によって、いったん発光部位100内を減圧して真空にする。この後、図7(b)に示すように、開閉弁109を開、開閉弁110を閉とし、次いで液体窒素に浸した発光部位100内にキセノン(Xe)やクリプトン(Kr)に、窒素ガス、炭化水素或いはハロゲンなどの混合ガスを送り込む。
【0008】
次いで封入圧にバラツキが生じないように発光部位100の内圧調整を行なう。一般に内圧調整は図7(c)に示すように、開閉弁109を閉、開閉弁110を半開状態として行なう。この後、図7(d)に示すように、バーナによってジョイント部材106の直下部分、つまり排気管を酸水素バーナなどで溶断し、図7(e)に示す所望のランプを得る。
【特許文献1】特開平10−321135号公報
【特許文献2】特開2000−077029号公報
【特許文献3】特開2000−331606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の封止方法にあっては、図7(b)と(c)で説明したように、一旦ランプ内にガスを充填した後に、ガスの繊細な内圧調整を行う必要がある。この減圧調整の際に大量の上記ガスが外部に排出され、コストと環境に多大な課題を残している。最近では環境に負とされる水銀を用いないランプの研究が急務とされるようになっており、このようなランプでは始動ガスとして、近年高騰しているキセノン(Xe)を封入ガスとして用いているため、従来方法では製造上大きな問題となっている。
【0010】
従来方式にあっては、グローブボックス内のキセノン(Xe)など封入ガスを真空ポンプによって毎回外部に排出した後に、ボンベから新たなガスを導入しているのが現状がある。しかしながらボンベ内に蓄えられているガスは水分などの不純物を含んでいる場合が多く、封止作業を連続するとグローボックスの露点が、作業開始時−90℃程度であったものが−70℃以下になってしまい、その結果、ランプの始動性が著しく悪くなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するべく本発明に係るガス給排装置は、ガスが送り込まれる部材に密結接続されるジョイント部材と、このジョイント部材に密結接続されるとともに容積を伸縮変化させることでガスを送出または吸引する容積可変部材とを備え、前記ジョイント部材には切替弁を備えたガスの供給路と排気路が設けられ、また前記容積可変部材にはガス供給源が接続された構成とした。
【0012】
気体の状態方程式:(容器全体の体積)×(内部封入ガスの圧力)=一定 の考えを応用したものである。
【0013】
前記容積可変部材としては、その前提としてエアシリンダなどのシリンダユニットや、ネオブレンゴム等のガスを透過しない材質からなる蛇腹管が望ましい。また、前記容積可変部材にはガスを循環してガス中の水分など不純物を吸着除去できる(ゼオライト+触媒からなる)ガス精製器を並列に密結接続し、ガスを循環させることで、封入ガスの露点を常に高く維持できる。
【0014】
前記ガスが送り込まれる部材としては、ランプ容器またはランプ容器を収納する加熱室が考えられ、この場合、前記ガスは、そのままランプやランプ容器内に封入されるガスになる。
【0015】
この伸縮部材の外側に、更にSUS、チタン、アルミなどのガスを透過させない材料からなる密閉容器を設け、その中に常圧もしくは加圧の同ガスを充填することで、伸縮する可変部材と外気の隔離を抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るガス供給装置によれば、高価なガスを廃棄する無駄を激減できる。その結果として的に製品価格を引き下げることが可能になる。またガス精製器を併用することで、長期に渡って封入ガスの劣化を防止でき、高い性能のランプを製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、図1は本発明に係るガス供給装置を備えたグローブボックスの斜視図、図2は封止前のグローブボックスの断面図、図3は封止中のグローブボックスの断面図、図4(a)〜(e)は本発明に係るガス供給装置を用いて放電ランプにガスを封入する手順を説明した図、図5(a)はフリットガラス溶解前の状態を示す図、(b)はフリットガラスが溶解し、封止が完了した状態を示す図である。
【0018】
グローブボックス1の前面には透明プレート2が嵌め込まれ、その下方には作業者の手を挿入するグローブ3の挿入口が設けられ、グローブボックス1の側面にはグローブボックス1内のガス中の水分や不純物を吸着除去して再びグローブボックス1内に戻す循環型ガス精製器4が配置されている。
【0019】
またこのグローブボックス1の上面には加熱室5が付設されている。この加熱室5内にはヒーター加熱のためのタングステンコイル6が配置され、更に加熱室5とグローブボックス1内とは開口部7を介して連通しているが、ヒーター加熱時にはお互いが完全に独立するような構造になっている。
【0020】
前記開口部4下方のグローブボックス1内にはテーブル8が配置され、このテーブル8はシリンダユニットなどの昇降機構9のロッド先端に固定されている。そしてテーブル8の上面には封止を待つランプWがセット可能になっており、テーブル8の最下点で、グローブ3を用いて上記ランプWをテーブル8の上面に設置し、次いで昇降機構9を駆動してテーブル8を上昇させ、テーブル8によって前記開口部7を密閉閉塞する。このときテーブル8の上面の周囲には耐熱シール部材10が設けられているので、グローブボックス1内と加熱処理室5内とは気密に遮断できる。
【0021】
更に前記加熱室5の外周には水冷ジャケット11が設けられ、また加熱室5には、あらかじめ雰囲気ガス導入部12が形成され、更にジョイント部材20を介してガス供給装置としての容積可変部材30が密結接続されている。この容積可変部材30は容積を変化させることでガスを圧送または吸引する機能を有する。
【0022】
前記ジョイント部材20は配管21の途中に切替弁22を備え、この切替弁22を操作することで、前記加熱室5内が真空ポンプ23及び容積可変部材30に選択的に密結接続される。
【0023】
またジョイント部材20の配管の途中には封入用ガス(キセノン)のボンベ24からの配管25が接続され、ボンベ24と配管25との間には切替弁26が設けられている。
【0024】
一方、前記容積可変部材30はシリンダケース31とピストン32を備えたエアシリンダユニットにて構成され、シリンダケース31の外側にSUS製の密閉容器33を設け、シリンダケース31と容器33との間の空間には配管34を介して封入用ガス(キセノン)が供給される構造にしている。このように二重構造とし、シリンダケース31と容器33との間の空間に正圧状態の封入用ガス(キセノン)を配管27を介してボンベ24から充填しておくことで、容積可変部材30からのリークを完全に防止でき、長期に渡って信頼性を維持することができる。
【0025】
本実施例ではピストン32は3つの位置P1〜P3をとることができるようにされ、最も前進した位置P1よりも前進側において、封入用ガス(キセノン)中の水分や不純物を吸着除去する循環型ガス精製器34を接続している。この循環型ガス精製器34は前記ボンベ24からの配管25に接続しても構わない。
【0026】
以上の構成からなるガス供給装置を用いて一次封止が完了したランプWの二次封止を行う手順を図4(a)〜(d)に基づいて説明する。
【0027】
先ず図4(a)の状態では、ランプWをセットしたテーブル8によって開口部7が気密に閉じられ、また雰囲気ガス導入部12も閉じられている。また放電ランプWの下端封止部は既に封着され、上端部には図5(a)に示すように電極栓体35が挿入され、この栓体35の上部にフットリング36が保持されている。
【0028】
図4(a)の状態では切替弁22は加熱室5と真空ポンプ23とが連絡されており、この状態で真空ポンプ23を駆動することで加熱室5内のアルゴンガスを除去する。この時ピストン32はP1にある。
【0029】
次いで、図4(b)に示すように、切替弁22を操作して容積可変部材30と加熱室5とが連通した状態とし、容積可変部材30から封入用ガスを加熱室5に適量を送り込む。このとき加熱室5内には栓体35の外側にフリットリング36が保持されたランプWがセットされ、未封着の状態なので、ランプW内には適量の封入用ガスが供給される。
【0030】
次いで、図4(c)に示すように、容積可変部材30のピストン32を位置P1からP2まで慎重に移動させる(断熱膨張による温度変化を〜0にする)ことで、ランプW内に封入されるガス圧力が最適値になるように微調整する。
【0031】
この後、タングステンコイル6に通電することでフリットリング36を加熱溶融する。溶解したフリットリング36は図5(b)に示すように毛細管現象により、栓体35の外側面とランプWの脚部内側面との間に介入して二次封止が完了する。
【0032】
そして、図4(d)に示すように、容積可変部材30のピストン32を、更に位置P2からP3まで移動し、加熱室5内のガスを可変部材30内に可能な限り回収した後、切替弁22を閉にし、この後加熱室5内にグローボックス内と同じアルゴンガスを導入部12を介して供給し、加熱室5内を常圧迄戻し、テーブル8を下降し、テーブル8上にセットされている二次封止完了後のランプWを払い出す。
【0033】
図6(a)〜(e)は別実施例に係るガス供給装置を用いてランプにガスを封入する手順を説明した工程図であり、前記実施例では容積可変部材30としてエアシリンダユニットを構成要素としているが、この実施例では容積可変部材30としてネオブレンゴム等の弾性材料を主とする蛇腹管を構成要素としても良い。
【0034】
具体的には、ジョイント部材40と容積可変部材として蛇腹管30からなり、蛇腹管30の一端はジョイント部材40に連結され、他端は循環型のガス精製器50に連結されている。ジョイント部材40はガスの供給路41と排気路42を備え、供給路41と排気路42には開閉弁43、44が設けられ、排気路44は真空ポンプ45に接続されている。
【0035】
二次封止を行うには、図6(a)に示すように、開閉弁43を閉、開閉弁44を開として真空ポンプ45よってランプWの発光部内を減圧する。この後、図6(b)に示すように、開閉弁43を開、開閉弁44を閉とし蛇腹管30を収縮せしめて蛇腹管30内の封止用ガスをランプWの発光部内に適量送り込む。
【0036】
次いで図6(c)に示すように、蛇腹管30を伸長させ発光部内の封止用ガス圧力を微量調整する。この後、図6(d)に示すように、開閉弁43、44を閉じ、酸水素バーナによってジョイント部材40の直下の排気管を溶断し、図6(e)に示す所望のランプを得る。
【0037】
以上の実施例としてはランプにガスを封入する例を示したが、本発明に係るガス供給装置はランプ以外の減圧微調整機構に対して応用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るガス供給装置を備えたグローブボックスの斜視図
【図2】封止前のグローブボックスの断面図
【図3】封止中のグローブボックスの断面図
【図4a】本発明に係るガス供給装置を用いてランプ内にガスを供給する手順を説明した概略図
【図4b】本発明に係るガス供給装置を用いてランプ内にガスを供給する手順を説明した概略図
【図4c】本発明に係るガス供給装置を用いてランプ内にガスを供給する手順を説明した概略図
【図4d】本発明に係るガス供給装置を用いてランプ内にガスを供給する手順を説明した概略図
【図5】(a)はフリットガラスの溶解前の状態を示す図、(b)はフリットガラスが溶解してシール状態となった状態を示す図
【図6】(a)〜(e)は別実施例に係るガス供給装置を用いてランプ内にガスを封入する手順全般を示した図
【図7】(a)〜(e)はランプ内にガスを供給する従来の手順を説明した図
【符号の説明】
【0039】
1…グローブボックス、2…透明プレート、3…グローブ、4…循環型ガス精製器、5…加熱室、6…タングステンコイルヒーター、7…開口部、8…テーブル、9…昇降機構、10…シール部材、11…水冷ジャケット、12…雰囲気ガス導入部、20…ジョイント部材、21…配管、22…切替弁、23…真空ポンプ、24…ボンベ、25…配管、26…切替弁、27…配管、30…容積可変部材(エアシリンダユニット、弾性材料からなる蛇腹管)、31…シリンダケース、32…ピストン、33…ステンレス製の容器、34…配管、35…栓体、36…フリットリング、40…ジョイント部材、41…供給路、42…排気路、43、44…開閉弁、45…真空ポンプ、50…循環型ガス精製器、W…ランプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが送り込まれる部材に接続されるジョイント部材と、このジョイント部材に接続されるとともに容積を伸縮変化させることでガスを送出または吸引する容積可変部材を備えたであって、前記ジョイント部材には切替弁を備えたガスの供給路と排気路が設けられ、また前記容積可変部材にはガスの供給源が接続されていることを特徴とするガス給排装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガス供給装置において、前記容積可変部材はシリンダユニットまたはネオブレンゴム等のガスが透過しにくい材質からなる蛇腹管であることを特徴とするガス給排装置。
【請求項3】
請求項1に記載のガス供給装置において、前記容積可変部材にはガスを循環してガス中の水や酸素などの不純物を吸着除去するためのガス精製器が接続されていることを特徴とするガス給排装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のガス供給装置において、前記ガスが送り込まれる部材とはランプまたはランプを封止するための加熱室であり、前記ガスはランプ内に封入されるガスであることを特徴とするガス給排装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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