説明

ガス給湯器

【課題】ガス給湯器の利用者に煩雑な判断を強いることなく、コスト削減を適切に実現可能なガス給湯器を提供する。
【解決手段】浴槽内湯水量を検出する浴槽内湯水量検出手段S5を備え、浴槽内湯水量検出手段S5の検出情報に基づいて浴槽内に湯水があるか否かを判別する判別手段H1を備え、判別手段H1が湯水があると判別した場合に、浴槽内に湯水がある状態から浴槽内湯水量を設定目標湯水量とし且つ浴槽内湯水温度を設定目標湯水温度とすべく浴槽貯湯運転を実行する場合の湯沸かし時コストと、浴槽内に湯水がない状態から浴槽内湯水量を設定目標湯水量とし且つ浴槽内湯水温度を設定目標湯水温度とすべく浴槽貯湯運転を実行する場合の湯張り時コストとを算出するコスト算出処理を実行するコスト算出手段H2を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯器本体と浴槽との間で循環する湯水を加熱する追焚運転、又は、給水源から供給される給水を加熱して前記浴槽に供給する給湯運転のいずれか一方又は双方を実行することによって、前記浴槽内に設定目標湯水量かつ設定目標湯水温度の湯を貯湯する浴槽貯湯運転を実行可能なガス給湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス給湯器で浴槽貯湯をする場合、浴槽内に湯水が貯留されていないときには、浴槽内に設定目標湯水量かつ設定目標湯水温度の湯を貯湯する浴槽貯湯運転として、給水源からの給水を加熱部にて加熱して浴槽に供給する給湯運転を行うことになるが、浴槽内に湯水が残っているときにおいて浴槽貯湯運転を行う場合には、浴槽内の湯水を排出し、浴槽を一度空にしてから給湯運転を行う方法、又は、湯水を浴槽内に残した状態で設定目標湯水量まで給水源からの湯水を追加し、浴槽内の湯水と給水源からの湯水とを加熱部にて加熱する追焚運転を行う方法のいずれかを実行することになる。
【0003】
このようなガス給湯器として、従来、給湯器本体と浴槽との間で循環する湯水を加熱する追焚運転を実行可能に構成され、且つ、給水源からの給水を加熱部にて加熱して浴槽に供給する給湯運転を実行可能に構成されて、ガス給湯器の利用者が、追焚運転又は給湯運転のいずれかの実行をリモコンより指令することによって、その指令された運転にて浴槽貯湯運転を実行するように構成されたものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−138527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、保温性能に優れた高断熱浴槽の普及に伴って、前回の入浴時に沸かした湯水の温度が、次回の入浴時においても比較的高温に保たれている場合がある。このような場合には、追焚運転を実行することによって浴槽貯湯運転に要するコストを低減させることができるように思われるが、追焚運転においては、加熱対象となる湯水の温度と設定目標湯水温度との差が小さいため、エネルギ利用効率が低くなる傾向にあり、給湯運転を行った場合よりも却って浴槽貯湯運転に要するコストが高くなる場合がある。
【0006】
このように、追焚運転と給湯運転とのいずれを実行すれば浴槽貯湯運転に要するコストを低減させることが可能となるかをガス給湯器の利用者が判断することは難しく、ガス給湯器の利用者は、コスト削減を実現するために追焚運転又は給湯運転のいずれを選択するかについて経験や勘に頼って決定せざるを得なかった。このため、コスト削減を実現するにあたりガス給湯器の利用者に煩雑な判断を強いることとなっていた。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ガス給湯器の利用者に煩雑な判断を強いることなく、コスト削減を適切に実現可能なガス給湯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係るガス給湯器は、給湯器本体と浴槽との間で循環する湯水を加熱する追焚運転、又は、給水源から供給される給水を加熱して前記浴槽に供給する給湯運転のいずれか一方又は双方を実行することによって、前記浴槽内に設定目標湯水量かつ設定目標湯水温度の湯を貯湯する浴槽貯湯運転を実行可能なものであって、その第1特徴構成は、浴槽内湯水量を検出する浴槽内湯水量検出手段を備え、前記浴槽内湯水量検出手段の検出情報に基づいて前記浴槽内に湯水があるか否かを判別する判別手段を備え、前記判別手段が湯水があると判別した場合に、前記浴槽内に湯水がある状態から浴槽内湯水量を前記設定目標湯水量とし且つ前記浴槽内湯水温度を前記設定目標湯水温度とすべく前記浴槽貯湯運転を実行する場合の湯沸かし時コストと、前記浴槽内に湯水がない状態から浴槽内湯水量を前記設定目標湯水量とし且つ前記浴槽内湯水温度を前記設定目標湯水温度とすべく前記浴槽貯湯運転を実行する場合の湯張り時コストとを算出するコスト算出処理を実行するコスト算出手段を備えている点にある。
【0009】
すなわち、判別手段が浴槽内に湯水があると判別した場合には、コスト算出手段が、浴槽内に湯水がある状態から浴槽内湯水量を設定目標湯水量とし且つ浴槽内湯水温度を設定目標湯水温度とすべく浴槽貯湯運転を実行する場合の湯沸かし時コストと、浴槽内に湯水がない状態から浴槽内湯水量を設定目標湯水量とし且つ浴槽内湯水温度を設定目標湯水温度とすべく浴槽貯湯運転を実行する場合の湯張り時コストとを算出するコスト算出処理を実行することになるから、浴槽内に湯水がある場合において、浴槽内に湯水がある状態から浴槽貯湯運転を実行したときに必要となるコストと、浴槽内の湯水を排出してから浴槽貯湯運転を実行したときに必要となるコストを把握することができるものとなる。
【0010】
そして、ガス給湯器の利用者は、上述のようにして把握した湯沸かし時コストと湯張り時コストとに基づいて、浴槽内に湯水がある状態から浴槽内湯水量を設定目標湯水量とし且つ浴槽内湯水温度を設定目標湯水温度とすべく浴槽貯湯運転を実行する場合と、浴槽内に湯水がない状態から浴槽内湯水量を設定目標湯水量とし且つ浴槽内湯水温度を設定目標湯水温度とすべく浴槽貯湯運転を実行する場合とでいずれがより低コストであるかを判断することができるものとなる。
【0011】
要するに、第1特徴構成によれば、ガス給湯器の利用者に煩雑な判断を強いることなく、コスト削減を適切に実現可能なガス給湯器を提供することができる。
【0012】
本発明に係るガス給湯器の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、前記コスト算出処理として、
前記湯沸かし時コストが、次式
(TE−TN)×VN÷η1×CG+(VE−VN)×CW+(TE−TW)×(VE−VN)÷η2×CG
にて算出され、
前記湯張り時コストが、次式
VE×CW+(TE−TW)×VE÷η2×CG
にて算出される点にある。
但し、TE:設定目標湯水温度、TN:浴槽内湯水温度、VE:設定目標湯水量、VN:浴槽内湯水量、TW:供給水温度、CG:燃料ガスの単位量あたりのコスト、CW:供給水の単位量あたりのコスト、η1:追焚運転時のエネルギ効率、η2:給湯運転時のエネルギ効率である。
【0013】
すなわち、コスト算出処理として、湯沸かし時コスト及び湯張り時コストが、設定目標湯水温度、浴槽内湯水温度、設定目標湯水量、浴槽内湯水量、供給水温度、燃料ガスの単位量あたりのコスト、供給水の単位量あたりのコスト、追焚時のエネルギ効率、及び、給湯時のエネルギ効率を用いて算出することができるものとなる。
したがって、第2特徴構成によれば、上記第1特徴構成の好適な実施形態を提供することができる。
【0014】
本発明に係るガス給湯器の第3特徴構成は、上記第1又は第2特徴構成に加えて、前記コスト算出手段が算出した前記湯沸かし時コストと前記湯張り時コストとの大小を比較する比較手段を備え、前記比較手段の比較結果を、報知手段にて報知可能に構成されている点にある。
【0015】
すなわち、比較手段が、コスト算出手段が算出した湯沸かし時コストと湯張り時コストとの大小を比較し、報知手段が、比較手段の比較結果を報知することになる。
したがって、ガス給湯器の利用者は、比較手段の比較結果として湯沸かし時コストと湯張り時コストとの大小を容易に認識することができるものとなるため、浴槽内に湯水がある状態から浴槽内湯水量を設定目標湯水量とし且つ浴槽内湯水温度を設定目標湯水温度とすべく浴槽貯湯運転を実行する場合と、浴槽内に湯水がない状態から浴槽内湯水量を設定目標湯水量とし且つ浴槽内湯水温度を設定目標湯水温度とすべく浴槽貯湯運転を実行する場合とのうち、よりコストの小さい処理を選択して浴槽貯湯運転を行うことが容易にできるものとなる。
【0016】
したがって、第3特徴構成によれば、上記第1又は第2特徴構成による作用効果に加えて、浴槽内に湯水がある状態から浴槽内湯水量を設定目標湯水量とし且つ浴槽内湯水温度を設定目標湯水温度とすべく浴槽貯湯運転を実行する場合と、浴槽内に湯水がない状態から浴槽内湯水量を設定目標湯水量とし且つ浴槽内湯水温度を設定目標湯水温度とすべく浴槽貯湯運転を実行する場合とのいずれがよりコストを削減できるかの判断を、ガス給湯器の利用者がより容易に行うことができるものとなる。
【0017】
本発明に係るガス給湯器の第4特徴構成は、上記第3特徴構成に加えて、前記報知手段が、前記ガス給湯器に対する運転を指令するリモコンに設けられる表示手段である点にある。
【0018】
すなわち、ガス給湯器に対する運転を指令するリモコンに設けられる表示手段によって、コスト算出手段が算出した湯沸かし時コストと湯張り時コストとの大小の比較結果を表示することになるから、ガス給湯器の利用者は、ガス給湯器に対して浴槽貯湯運転を指令すべくリモコンを操作する際に、湯沸かし時コストと湯張り時コストとの大小の比較結果を知ることができる。
したがって、第4特徴構成によれば、上記第3特徴構成による作用効果に加えて、コスト算出手段が算出した湯沸かし時コストと湯張り時コストとの大小の比較結果を効率的にガス給湯器の利用者に報知することができる。
【0019】
本発明に係るガス給湯器の第5特徴構成は、上記第1又は第2特徴構成に加えて、前記浴槽貯湯運転を実行する制御手段と、前記浴槽に、その浴槽内の湯水を自動排水する自動排水手段が設けられ、前記制御手段が、前記自動排水手段を駆動して前記浴槽内の湯水を排水する自動排水処理を実行可能に構成されるとともに、算出した前記湯沸かし時コストと前記湯張り時コストとの大小を判別するように構成され、前記湯沸かし時コストの方が前記湯張り時コストよりも小さいと判別したときには、前記浴槽貯湯運転として前記給湯運転及び前記追焚運転を実行し、前記湯張り時コストの方が前記湯沸かし時コストよりも小さいと判別しかつ前記浴槽内湯水量検出手段の検出情報に基づいて湯水がないと判別したときには前記浴槽貯湯運転として前記給湯運転を実行し、前記湯張り時コストの方が前記湯沸かし時コストよりも小さいと判別しかつ前記浴槽内湯水量検出手段の検出情報に基づいて湯水があると判別したときには前記浴槽貯湯運転として前記自動排水処理を実行した後に前記給湯運転を実行するように構成されている点にある。
【0020】
すなわち、制御手段が、算出した湯沸かし時コストと湯張り時コストとの大小を判別し、湯沸かし時コストの方が湯張り時コストよりも小さいと判別したときには、浴槽貯湯運転として給湯運転及び追焚運転を実行し、湯張り時コストの方が湯沸かし時コストよりも小さいと判別しかつ浴槽内湯水量検出手段の検出情報に基づいて湯水がないと判別したときには浴槽貯湯運転として給湯運転を実行し、湯張り時コストの方が湯沸かし時コストよりも小さいと判別しかつ浴槽内湯水量検出手段の検出情報に基づいて湯水があると判別したときには浴槽貯湯運転として自動排水処理を実行した後に給湯運転を実行することになる。
したがって、ガス給湯器の利用者が、ガス給湯器に対して浴槽内に湯水がある状態から浴槽貯湯運転を実行するか、浴槽内に湯水がない状態から浴槽貯湯運転を実行するかの選択をすることなく、単に浴槽貯湯運転を実行することを指令するのみの簡易な操作で、コスト削減を適切に実現可能となるガス給湯器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るガス給湯器の全体構成図
【図2】運転制御部の構成を説明する図
【図3】運転制御部の制御を説明するフローチャート
【図4】リモコンの外観を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係るガス給湯器の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、このガス給湯器は、浴室Yに備えられる浴槽Y1の下部に備えられる風呂アダプタY2と給湯器本体1に備えられる加熱部Nとの間を、浴槽戻路C1と浴槽往路C2とから構成され且つ循環ポンプPにより浴槽Y1内の残水を加熱部Nとの間で強制循環させるように構成される循環路Cにて接続して、給湯器本体と浴槽との間で循環する浴槽Y1内の湯水を加熱部Nにて加熱して浴槽Y1に供給する追焚運転を実行可能に構成されている。
また、このガス給湯器は、給水源と循環路Cにおける加熱部Nよりも上流側との間を、加熱部Nを経由して接続する給湯回路C3を備え、給水源から供給される給水を加熱部Nにて加熱し、循環路Cを介して浴槽Y1に供給する給湯運転を実行可能に構成されている。
【0023】
循環路Cにおける浴槽戻路C1には、追焚運転における浴槽の湯水の通流方向における上流側から順に、循環ポンプP、浴槽内の湯温を検出する浴槽戻りサーミスタS1が設けられ、その後、加熱部Nの熱交換器内を通過した後に、浴槽往路C2に接続されている。浴槽往路C2には、追焚運転時における加熱後の湯水温度を検出する浴槽往きサーミスタS2が設けられている。
【0024】
給湯回路C3は、一端を上水道等の給水源に接続され、他端を浴槽戻路C1における風呂アダプタY2と循環ポンプPとの間に接続されている。そして、給水の通流方向上流側から順に、通流量調整式の注湯電磁弁K1、給水源からの給水量を検出する給湯水量センサS4、給水源からの給水の温度を検出する入水サーミスタS3が設けられ、その後加熱部Nの熱交換器内を通過し、さらにその下流側に、逆止弁K3、及び、浴槽Y1内の水量を水圧にて検出する浴槽水量センサS5が設けられている。
【0025】
加熱部Nは、複数のフィンが離間状態に設けられ、その複数のフィンを循環路Cの一部及び給湯回路C3の一部が貫通する状態で設けられて構成されている。そして、加熱部Nの下方に設けられるバーナBにて燃料ガスを燃焼させることによって生じる熱によって、加熱部N中を通過する循環路C内の流体、又は、給湯回路C3内の流体を加熱するように構成されている。また、バーナBは、供給する燃料ガスの量を調整するガス電磁弁K2によってその燃焼能力を調整することができるように構成されている。燃焼能力を調整する方法については公知の手段を用いているため、詳細の説明は省略する。
【0026】
このガス給湯器の運転状態を制御する制御手段としての運転制御部Hは、給湯器本体1に装備され、マイクロコンピュータを備えたプログラム制御方式のコントローラで構成されている。図2に示すように、運転制御部Hは、浴槽戻りサーミスタS1、浴槽往きサーミスタS2、入水サーミスタS3、給湯水量センサS4、及び、浴槽内湯水量検出手段としての浴槽水量センサS5と通信可能に接続されて、それらからの検出情報を入力可能に構成されている。
浴槽水量センサS5は、水圧検出式に構成されて、運転制御部Hは、ガス給湯器の試運転時に計測した水量と浴槽水量センサS5にて計測した水圧との関係をテーブルに保持するように構成されている。そして、運転制御部Hは、浴槽水量センサS5にて検出した水圧値の情報と保持した水量と水圧との関係に基づいて浴槽Y1内の水量を検出するように構成されている。
また、運転制御部Hは、注湯電磁弁K1、ガス電磁弁K2、及び、循環ポンプPと通信可能に接続されて、それらに対して作動を指令するように構成されている。また、運転制御部Hは、ガス電磁弁K2の開度とバーナBへのガス供給量との相関についてのテーブルを保持している。
【0027】
さらに、運転制御部Hには、図4に示すように、ガス給湯器に対する運転を指令するリモコンRが接続されている。リモコンRは、浴室Y等に設けられ、ガス給湯器の利用者とガス給湯器との間の入出力インタフェースとして機能している。
ガス給湯器の利用者によるガス給湯器への情報入力は、リモコンRに備えられる設定ボタン26、選択ボタン27、及び確定ボタン28と、インクリメントボタン22及びデクリメントボタン23との組み合わせによって実現され、浴槽Y1内に貯留したい湯水の設定目標湯水量と設定目標湯水温度とを設定可能に構成されている。また、リモコンRには、沸かし直しを指令する沸かし直しボタン24と、湯はりを指令する湯はりボタン25が設けられている。ここで、沸かし直しボタン24は、浴槽Y1内に湯水がある状態から浴槽内湯水量を設定目標湯水量とし且つ浴槽内湯水温度を設定目標湯水温度とすべく浴槽貯湯運転を実行することを指令するためのものであり、湯はりボタン25は、浴槽Y1内に湯水がない状態から浴槽内湯水量を設定目標湯水量とし且つ浴槽内湯水温度を設定目標湯水温度とすべく浴槽貯湯運転を実行することを指令するためのものである。
さらに、ガス給湯器からガス給湯器の利用者への情報の出力は、報知手段としての液晶表示部20又はスピーカ21を通じて実行されるように構成されている。
【0028】
さらに、運転制御部Hには、浴槽内湯水量検出手段の検出情報に基づいて前記浴槽内に湯水があるか否かを判別する判別手段H1と、後述する湯沸かし時コストと湯張り時コストとを算出するコスト算出処理を実行するコスト算出手段H2と、コスト算出手段H2が算出した湯沸かし時コストと湯張り時コストとの大小を比較する比較手段H3とが、上記マイクロコンピュータにて実行されるプログラムモジュールとして実装されている。
【0029】
運転制御部Hは、追焚運転として、ガス電磁弁K2を所定の開度となるように調整してバーナBを所定の燃焼能力にて燃焼させ、且つ、循環ポンプPを所定の回転数で駆動して、循環路Cに浴槽Y1内の湯水を循環させることにより、加熱部Nにて湯水を浴槽往きサーミスタS1で所定の温度(例えば50℃等)が検出されるように加熱した後、浴槽Y1に供給するように構成されている。追焚運転は、浴槽戻りサーミスタS2にて検出される温度が設定目標湯水温度となるまで継続される。
【0030】
さらに、運転制御部Hは、給湯運転として、ガス電磁弁K2を所定の開度となるように調整して、バーナBを所定の燃焼能力にて燃焼させ、且つ、注湯電磁弁K1を所定開度に調整して、給湯回路C3に給水源からの給水を給水圧によって通流させることにより、加熱部Nにて給水を加熱した後、浴槽Y1に供給するように構成されている。
尚、給湯運転においては循環ポンプPは停止しており、加熱された給水は、浴槽戻路C1と浴槽往路C2との双方から浴槽Y1に供給される。
【0031】
給湯運転においては、入水サーミスタS3によって検出される給水の温度と設定目標湯水温度との差に基づいて、ガス電磁弁K2の開度が決定され、浴槽戻りサーミスタS2にて検出される温度が設定目標湯水温度となるように注湯電磁弁K1の開度が調整される。そして、給湯運転は、浴槽水量センサS5によって検出される浴槽内湯水量が設定目標湯水量となるまで継続される。
【0032】
そして、運転制御部Hは、リモコンRにて設定された設定目標湯水量且つ設定目標湯水温度の湯水を浴槽Y1に貯湯すべく、上記追焚運転、又は、給湯運転のいずれか一方又は双方を行う浴槽貯湯運転を実行するように構成されている。
【0033】
次に、本発明における運転制御部Hによる制御について、図3のフローチャートに基づいて説明する。
運転制御部Hは、図4に示すリモコンRのいずれかのボタンが操作されたか否かを検出するように構成されている。そして、リモコンRのいずれかのボタンが操作されたことを識別すると(#1)、浴槽内湯水量検出手段の検出情報に基づいて浴槽Y1内の湯水の水量を検出し(#2)、判別手段が#2での検出結果に基づいて浴槽内に湯水があるか否かを判別する(#3)。
【0034】
#3において湯水があると判別すると、循環ポンプPを作動させて循環路C内に浴槽Y1内の湯水を循環させ(#5)、循環路Cにおける浴槽戻路C1に設けられている浴槽戻りサーミスタS1にて湯水温度を検出する湯水温度確認処理を実行する(#6)。
【0035】
続いて、コスト算出手段H2が、浴槽内に湯水がある状態から浴槽内湯水量検出手段にて検出される浴槽内湯水量を設定目標湯水量とし、且つ、浴槽戻りサーミスタS1にて検出される浴槽内湯水温度を設定目標湯水温度とすべく浴槽貯湯運転を実行する場合の湯沸かし時コストと、浴槽Y1内に湯水がない状態から浴槽内湯水量検出手段にて検出される浴槽内湯水量を設定目標湯水量とし、且つ、浴槽内湯水温度を浴槽戻りサーミスタS1にて検出される設定目標湯水温度とすべく浴槽貯湯運転を実行する場合の湯張り時コストとを算出する(#7)。
【0036】
上記湯沸かし時コスト及び湯張り時コストは、具体的には、以下のように算出される。すなわち、
湯沸かし時コストが、次式
(TE−TN)×VN÷η1×CG+(VE−VN)×CW+(TE−TW)×(VE−VN)÷η2×CG
にて算出され、
前記湯張り時コストが、次式
VE×CW+(TE−TW)×VE÷η2×CG
にて算出される。
ここで、TEはリモコンRにて設定された設定目標湯水温度であり、TNは浴槽戻りサーミスタS1にて検出される浴槽内湯水温度であり、VEはリモコンRにて設定された設定目標湯水量であり、VNは浴槽内湯水量検出手段にて検出された浴槽内湯水量であり、TWは入水サーミスタS3にて検出された供給水温度であり、CGは燃料ガスの単位量あたりのコストであり、CWは供給水の単位量あたりのコストであり、η1は追焚運転時のエネルギ効率であり、η2は給湯運転時のエネルギ効率である。
【0037】
尚、運転制御部Hは、燃料ガスの単位量あたりのコストCG(すなわち単位体積あたりのガス料金)、及び、供給水の単位量あたりのコストCW(すなわち単位体積あたりの水道料金)を、定期的にガス給湯器の利用者に問い合わせ、入力を促すように構成されている。なお、このとき、運転制御部Hに対して、インターネットや電話回線によるセンター通信等の環境が整備されている場合は、自動的に燃料ガスの単位量あたりのコストCG及び供給水の単位量あたりのコストCWを取り込むように構成することもできる。
また、追焚運転時のエネルギ効率η1、及び、給湯運転時のエネルギ効率η2は、事前に測定された値であり、追焚運転時のエネルギ効率η1は約70、給湯運転時のエネルギ効率η2は約82〜83である。
【0038】
続いて、運転制御部Hは、上述したコスト算出手段H2が算出した湯沸かし時コストと湯張り時コストとの大小を比較手段H3にて比較し(#8)、その比較手段H3の比較結果に基づいて、湯沸かし時コストの方が湯張り時コストより小であると判別すると、リモコンに備える表示手段としての液晶表示部20(報知手段の一例)に、例えば「沸かし直しがお得です」等といった情報を出力する(#9)。
【0039】
また、上記#3にて湯水がないと判別された場合、及び、上記#8にて湯沸かし時コストが湯張り時コストより小ではないと判別されたときには、リモコンに備える表示手段としての液晶表示部20(報知手段の一例)に、例えば「お湯はりがお得です」等といった情報を出力する(#4)。
【0040】
ガス給湯器の利用者は、リモコンRの液晶表示部20に出力された上記の情報により、浴槽内に湯水がある状態から浴槽内湯水量を設定目標湯水量とし且つ浴槽内湯水温度を設定目標湯水温度とすべく浴槽貯湯運転を実行する場合と、浴槽内に湯水がない状態から浴槽内湯水量を設定目標湯水量とし且つ浴槽内湯水温度を設定目標湯水温度とすべく浴槽貯湯運転を実行する場合とのいずれの運転を行えば、よりコストを削減できるかを判断し、リモコンRに設けられる沸かし直しボタン24、又は、湯はりボタン25によって、よりコストの低減を期待できる運転方法を指令することができるものとなる。
【0041】
〔別実施形態〕
(イ)上記実施形態では、運転制御部Hが、#8における比較手段H3での比較結果に基づいて、リモコンRの液晶表示部20に湯沸かし時コストと湯張り時コストとの比較に基づく情報を液晶表示部20に出力するように構成したが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、以下のように構成してもよい。
【0042】
すなわち、浴槽Y1に浴槽Y1内の湯水を排水する状態と排水を停止する状態とに切換え可能な自動排水手段を設け、運転制御部Hの指令に基づいて浴槽内の湯水を自動排水自在に構成する。
そして、運転制御部Hが、#8における比較手段H3での比較結果に基づいて、湯沸かし時コストの方が湯張り時コストよりも小さいと判別したときには、浴槽貯湯運転として給湯運転及び追焚運転を実行し、湯張り時コストの方が湯沸かし時コストよりも小さいと判別しかつ浴槽内湯水量検出手段の検出情報に基づいて湯水がないと判別したときには浴槽貯湯運転として給湯運転を実行し、湯張り時コストの方が湯沸かし時コストよりも小さいと判別しかつ浴槽内湯水量検出手段の検出情報に基づいて湯水があると判別したときには浴槽貯湯運転として自動排水処理を実行した後に給湯運転を実行するように構成してもよい。
【0043】
(ロ)上記実施形態においては、報知手段としてリモコンRに設ける表示手段である液晶表示部20を用いる構成を説明したが、このような構成に限定されるものではなく、例えばリモコンRに設ける音声出力手段であるスピーカ21を報知手段として用いてもよく、又は、液晶表示部20とスピーカ21との双方を報知手段として用いてもよい。
【0044】
(ハ)上記実施形態においては、#3にて湯水がないと判別された場合にも「お湯はりがお得です」という表示を行うように構成したが、このような構成に限定されるものではない。つまり、湯水がない場合には給湯運転をするしか選択肢が無いため、上記のような表示を行わずに即時給湯運転を実行するように構成してもよい。
【0045】
(ニ)上記実施形態においては、リモコンRにおけるガス給湯器の利用者によるガス給湯器への情報入力を、入力用のボタンを用いて行う構成としたが、このような構成に代えて、リモコンにタッチパネル式の液晶表示画面を設け、この液晶表示画面に表示する入力操作アイコン部をタッチ操作することにより、情報入力を行うように構成してもよい。
【0046】
(ホ)上記実施形態においては、運転制御部Hは、図3におけるステップ#1においてリモコンRのいずれかのボタンが操作されたか否かを検出するように構成されているが、このような構成に代えて、その後ステップ#2〜#9までを実行するための専用のボタン(例えば、「コスト確認ボタン」等)を備えるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、ガス給湯器の利用者に煩雑な判断を強いることなく、コスト削減を適切に実現可能なガス給湯器を提供することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 給湯器本体
Y1 浴槽
S5 浴槽水量センサ(浴槽内湯水量検出手段)
H 運転制御部(制御手段)
H1 判別手段
H2 コスト算出手段
H3 比較手段
R リモコン
20 液晶表示部(報知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯器本体と浴槽との間で循環する湯水を加熱する追焚運転、又は、給水源から供給される給水を加熱して前記浴槽に供給する給湯運転のいずれか一方又は双方を実行することによって、前記浴槽内に設定目標湯水量かつ設定目標湯水温度の湯を貯湯する浴槽貯湯運転を実行可能なガス給湯器であって、
浴槽内湯水量を検出する浴槽内湯水量検出手段を備え、
前記浴槽内湯水量検出手段の検出情報に基づいて前記浴槽内に湯水があるか否かを判別する判別手段を備え、
前記判別手段が湯水があると判別した場合に、
前記浴槽内に湯水がある状態から浴槽内湯水量を前記設定目標湯水量とし且つ浴槽内湯水温度を前記設定目標湯水温度とすべく前記浴槽貯湯運転を行う湯沸かし処理を実行する場合の湯沸かし時コストと、
前記浴槽内に湯水がない状態から浴槽内湯水量を前記設定目標湯水量とし且つ前記浴槽内湯水温度を前記設定目標湯水温度とすべく前記浴槽貯湯運転を行う湯張り処理を実行する場合の湯張り時コストとを算出するコスト算出処理を実行するコスト算出手段を備えたガス給湯器。
【請求項2】
前記コスト算出処理として、
前記湯沸かし時コストが、次式
(TE−TN)×VN÷η1×CG+(VE−VN)×CW+(TE−TW)×(VE−VN)÷η2×CG
にて算出され、
前記湯張り時コストが、次式
VE×CW+(TE−TW)×VE÷η2×CG
にて算出される請求項1記載のガス給湯器。
但し、TE:設定目標湯水温度、TN:浴槽内湯水温度、VE:設定目標湯水量、VN:浴槽内湯水量、TW:供給水温度、CG:燃料ガスの単位量あたりのコスト、CW:供給水の単位量あたりのコスト、η1:追焚運転時のエネルギ効率、η2:給湯運転時のエネルギ効率
【請求項3】
前記コスト算出手段が算出した前記湯沸かし時コストと前記湯張り時コストとの大小を比較する比較手段を備え、
前記比較手段の比較結果を、報知手段にて報知可能に構成されている請求項1又は2記載のガス給湯器。
【請求項4】
前記報知手段が、前記ガス給湯器に対する運転を指令するリモコンに設けられる表示手段である請求項3記載のガス給湯器。
【請求項5】
前記浴槽貯湯運転を実行する制御手段と、
前記浴槽に、その浴槽内の湯水を自動排水する自動排水手段が設けられ、
前記制御手段が、前記自動排水手段を駆動して前記浴槽内の湯水を排水する自動排水処理を実行可能に構成されるとともに、算出した前記湯沸かし時コストと前記湯張り時コストとの大小を判別するように構成され、
前記湯沸かし時コストの方が前記湯張り時コストよりも小さいと判別したときには、前記浴槽貯湯運転として前記給湯運転及び前記追焚運転を実行し、
前記湯張り時コストの方が前記湯沸かし時コストよりも小さいと判別しかつ前記浴槽内湯水量検出手段の検出情報に基づいて湯水がないと判別したときには前記浴槽貯湯運転として前記給湯運転を実行し、
前記湯張り時コストの方が前記湯沸かし時コストよりも小さいと判別しかつ前記浴槽内湯水量検出手段の検出情報に基づいて湯水があると判別したときには前記浴槽貯湯運転として前記自動排水処理を実行した後に前記給湯運転を実行するように構成された請求項1又は2記載のガス給湯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−180985(P2012−180985A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44742(P2011−44742)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】