説明

ガス絶縁変電所

【課題】環境に調和し、変電所全体のSFガス削減の割合を大きくしたガス絶縁変電所を提供する。
【解決手段】ガス絶縁母線2aと、ガス絶縁開閉器4−1と、ガス絶縁変圧器8−1とを備えたガス絶縁変電所において、ガス絶縁開閉器4−1およびガス絶縁変圧器8−1に封入される絶縁ガスは、ガス絶縁母線2aに封入される絶縁ガスより地球温暖化係数が小さい絶縁ガスにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地球温暖化対策に対応したガス絶縁開閉装置などの機器を有するガス絶縁変電所に関する。
【背景技術】
【0002】
使用電圧が500kVクラスの変電設備では、建設費、用地の高騰とともに、充電部汚損、安全性、騒音などの問題から開閉装置の小形化や密閉化の要求に応えるために、近年の傾向として絶縁性能および消弧性能に優れた六フッ化硫黄(SF)ガスを封入したガス絶縁開閉装置(GIS)とSFガスを封入したガス絶縁変圧器とを直結した全ガス絶縁変電所もしくは開閉所が設置されるようになってきた。この場合、ガス絶縁変圧器からガス絶縁開閉装置(GIS)に引き込まれた高電圧は、接地金属容器内部に挿入された導体を介して断路器、避雷器、ガス遮断器等の電気機器に接続される。
【0003】
SFガスは空気と比較して約100倍の消弧性能と約3倍の絶縁性能を持つことが知られている。このSFガスは常温大気圧においては化学的に安定度の高い無毒、無臭、無色、不燃性の気体で、大気中での寿命は3200年と長く、赤外線吸収量も大きいため、100年間の地球温暖化係数(GWP;Global Warming Potential)は、炭酸ガス(CO)の23,900倍と大きい。
【0004】
ただし、地球温暖化への寄与の大きさはGWPと大気中濃度の積で与えられ、現時点ではSFガスの大気中濃度が極めて低いため、SFガスの影響力はCOに比べると極めて小さい。しかしながら、GWPが大きいということは温暖化への潜在的影響力が大きいということであり、今後SFガスの排出量が増え、大気中での濃度が増加すると、その影響力はCOと比較してかなり大きくなる可能性もある。
【0005】
このような観点から、1997年12月に京都で開催された第3回気候変動に関する国際連合枠組み条約締約国会議(COP3)において、SFも削減対象ガスとして加えられ、排出の抑制と削減についての対応が要求されている。このように環境面からも、開閉装置にSFガスの使用量の削減が望まれている。
【0006】
このような要望に応えるため、ガス絶縁変電所において、避雷器を付加配置し、開閉部を有するガス区画と、開閉部を有しないガス区画である主母線ユニット、母線、ブッシング、避雷器とを分離し、開閉部を有する区画には遮断性能確保のためSFガスを使用し、開閉部を有しない区画には避雷器定格の選定もしくは追加配置により過電圧を抑制し、SFガス量の削減あるいはSFガス以外の絶縁ガスを使用する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、ガス絶縁変圧器とガス絶縁開閉装置とを管路母線で接続したものにおいて、ガス絶縁変圧器には、環境低負荷ガスを使用し、ガス絶縁開閉装置にSFガスを使用して変電所全体に対するSFガスの量を低減する提案がなされている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
さらに、電流遮断を行う消弧ガス室には70%乃至100%のSFを封入し、電流遮断を行わない線路区分には10〜30%のSFと残りの90〜70%の窒素ガス(N)との混合ガスを封入して、変電所全体に対するSFガスの量を低減する提案がなされている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平11−299020号公報
【特許文献2】特開2007−88274号公報
【特許文献3】特開平11−18223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献に記載の発明では、検討の結果以下のような問題点が新たに生じることがわかった。
(1)特許文献1に記載の発明では、変電所に新たにサージ電圧を抑制するための避雷器を追加配置することにより定格電圧を下げた変電所として運用するため、既設変電所に避雷器を追加配置する際、現地で停電を伴う作業となりその取り付けが困難である。
【0010】
(2)特許文献1乃至3に記載の発明では、開閉部を有する区画には遮断性能を確保するためSFガスを使用しており、SFガスは電流遮断部でアーク放電に触れると、一部分解が生じ、化学的に活性な化合物であるSOF、SO、SO、SOF、HF、SiF等の分解生成物、分解ガスを生成する。この場合、分解ガスを含むSFガスを回収する場合、特別な処理や管理が必要になるという欠点がある。
【0011】
(3)さらに、特許文献1乃至3に記載の発明では、変電所内でも大型の電気機器の一つであるガス絶縁遮断器にSFガスを使用し、開閉部を有しない区画には環境を考慮した他の絶縁ガス例えば、窒素ガス(N)、炭酸ガス(CO)等を使用しているため、変電所全体で考えた場合のSFガス削減割合は小さく、更なる削減が望まれる。
【0012】
そこで本発明の目的は、環境に調和し、変電所全体のSFガス削減の割合を大きくしたガス絶縁変電所を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、請求項1記載の発明は、絶縁スペーサによって絶縁支持された導体を絶縁ガスの封入された接地タンク内に配置したガス絶縁母線と、絶縁スペーサによって絶縁支持された導体および開閉部を絶縁ガスの封入された接地タンク内に配置するとともに、前記導体を前記ガス絶縁母線の導体に接続し、さらに、前記接地タンクを絶縁スペーサを介して前記ガス絶縁母線の接地タンクに気密に接続したガス絶縁開閉機器と、変圧器要素を収納した変圧器タンク内に絶縁ガスを封入するとともに、当該変圧器要素を前記ガス絶縁開閉機器の導体に接続し、さらに、前記変圧器タンクを絶縁スペーサを介して前記ガス絶縁開閉機器の接地タンクに気密に接続したガス絶縁変圧器と、を備えたガス絶縁変電所において、前記ガス絶縁開閉機器およびガス絶縁変圧器に封入される絶縁ガスは、前記ガス絶縁母線に封入される絶縁ガスより地球温暖化係数が小さい絶縁ガスであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のガス絶縁変電所によれば、多量の絶縁ガスを使用するガス絶縁遮断器とガス絶縁変圧器等の変電設備機器に封入する絶縁ガスとして、SFガスに替えて炭酸ガスや窒素ガス等の地球温暖化係数の小さいガスを採用するので、全ガス絶縁変電所全体としてのSFガス削減割合を大きくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明による全ガス絶縁変電所の回路構成を示す単線結線図であり、図2は本発明の一実施例による全ガス絶縁変電所を示す概略配置図である。
【0016】
まず、図1に示す単線結線図により、ガス絶縁変電所に設置されている各変電設備機器の電気的な接続関係を説明する。
本発明のガス絶縁変電所とは、ガス絶縁開閉所も含むものである。
【0017】
1なる符号は、二重母線構成のガス絶縁開閉装置(GIS)の全体を示すものであり、第1主母線2aおよび第2主母線2bと、第1主母線2aに接続された母線用断路器3a1および3a2と、第2主母線2bに接続された母線用断路器3b1および3b2と、この母線用断路器3a1および3b1の共通接続部から導出される第1回線側ガス絶縁遮断器4−1、母線用断路器3a2および3b2の共通接続部から導出される第2回線側ガス絶縁遮断器4−2と、第1回線側ガス絶縁遮断器4−1および第2回線側ガス絶縁遮断器4−2にそれぞれ接続される第1回線側変圧器接続母線5−1および第2回線側変圧器接続母線5−2と、これら第1回線側変圧器接続母線5−1および第2回線側変圧器接続母線5−2にそれぞれ設置される接地断路器6−1および6−2と、避雷器7−1および7−2とから構成されており、全て絶縁ガスが封入されている接地タンク(接地容器)内に上記の変電設備機器を収納している。
なお、便宜上、電流開閉機能を有する、ガス絶縁遮断器および断路器、あるいは開閉器をガス絶縁開閉機器と総称する。
【0018】
このように構成されたガス絶縁開閉装置(GIS)1の第1回線側変圧器接続母線5−1および第2回線側変圧器接続母線5−2に対して、それぞれ第1回線側ガス絶縁変圧器8−1、第2回線側ガス絶縁変圧器8−2が接続されるようになっている。
【0019】
なお、図1中、破線の枠で示したものは、ガス絶縁変圧器の変圧器タンクあるいはGISの接地タンク(接地容器)であり、また、菱形のシンボルSは、接地タンク(容器)同士を気密に結合してガス区分するとともに、接地タンク(容器)内に収納した導体等を絶縁支持する絶縁スペーサである。
【0020】
図2の全ガス絶縁変電所の概略配置図は、図1の第1回線側の母線用断路器3a1からガス絶縁変圧器8−1までの変電設備機器を示す。
図2では、主母線2aは絶縁ガス2aGを封入した円筒状の接地容器2aT内の中心部に絶縁スペーサによって絶縁支持された中心導体(高圧導体ともいう)2aCを配置した構成になっている。
【0021】
この主母線2aの中心導体2aCは絶縁スペーサS1を貫通し、絶縁ガス3a1Gを封入した母線用断路器3a1の接地タンク3a1T内に収容された母線用断路器開閉部3a1Bの端部に位置する接続導体3a1Cを介して電気的に接続されている。
【0022】
さらに、この母線用断路器開閉部3a1Bの他の端部に位置する接続導体3a1Cは、絶縁スペーサS2を貫通し、絶縁ガス4−1Gを封入したガス絶縁遮断器4−1の接地タンク4−1T内に収容されている接続導体4−1Cを介してガス絶縁遮断器開閉部4−1Bに接続されている。
【0023】
また、ガス絶縁遮断器開閉部4−1Bの他の端部に位置する接続導体4−1Cは絶縁スペーサS3を貫通し、絶縁ガス5−1Gを封入した変圧器接続母線5−1の接地タンク5−1T内に収容されている中心導体5−1Cに接続されている。
【0024】
この変圧器接続母線5−1の中心導体5−1Cは、絶縁スペーサS4を貫通し、絶縁ガス8−1Gを封入した第1回線側ガス絶縁変圧器8−1のタンク8−1T内の図示しない変圧器要素に接続されている。そして、この中心導体5−1Cの中間部には絶縁スペーサS5、S6をそれぞれ貫通してタンク型の接地断路器7−1と、避雷器8−1とが接続されている。
【0025】
このように構成したガス絶縁開閉装置(GIS)1と、ガス絶縁変圧器8とからなる全ガス絶縁変電所において、本実施形態では、多量の絶縁ガスを使用する変電設備機器、あるいは電流を遮断する変電設備機器である、ガス絶縁変圧器8−1、8−2やガス絶縁遮断器4−1、4−2、さらには母線用断路器、接地断路器等のガス絶縁開閉機器の接地タンク(接地容器)に封入する絶縁ガス3a1G、4−1G、5−1Gおよび8−1Gとして、地球温暖化係数が1である炭酸ガス(CO)または地球温暖化係数がほぼゼロである窒素ガス(N)あるいは、他の地球温暖化係数の小さい絶縁ガスを採用する。
【0026】
これら炭酸ガス(CO)または窒素ガス(N)は、SFよりも絶縁性能、消弧性能とも劣るものの、絶縁、消弧媒体として優れたガスであるので、近年これらの絶縁ガスを消弧媒体として用いたガス絶縁遮断器が開発・発表されており、本発明のガス絶縁遮断器やガス絶縁変圧器にも採用できるものである。
【0027】
一方、ガス絶縁遮断器やガス絶縁変圧器のように多量の絶縁ガスを使用する変電設備機器でもなく、また、電流を遮断する変電設備機器でもない、ガス絶縁母線2a、変圧器接続母線5−1に封入する絶縁ガス2aG、5−1Gには炭酸ガスや窒素ガスよりも地球温暖化係数の大きい絶縁ガス、例えばSFガスを採用する。
【0028】
このように、本実施形態の全ガス絶縁変電所によれば、多量の絶縁ガスを使用するガス絶縁遮断器とガス絶縁変圧器等の変電設備機器に封入する絶縁ガスとして、SFガスに替えて炭酸ガス(CO)または窒素ガス(N)等の地球温暖化係数の小さいガスを採用することで、ガス絶縁変電所全体としてのSFガスの削減割合を大きくすることができる。
【0029】
また、電流を遮断する変電設備機器ではないガス絶縁母線、変圧器接続母線に封入する絶縁ガス2aG、5−1GとしてSFガスを採用しているので、ガス絶縁母線から各回線のガス絶縁変圧器までの全ての変電設備機器に地球温暖化係数の小さいガスを採用する場合に比べ、同一電圧の機器の場合、小型化でかつ、低ガス圧で機器を製作することができるので、ガス絶縁母線が小型化される分、変電所全体の敷地面積を縮小できる。
【0030】
また、ガス絶縁遮断器、母線用断路器等の消弧媒体として、炭酸ガス(CO)を用いた場合、SFガスを用いていたときのような分解ガスは発生せず、したがって、環境に優しいガス絶縁変電所を提供できる。
【0031】
さらに変電設備機器の点検などで、ガスの回収の必要性が生じた場合においても、ガス絶縁遮断器や断路器などの電流を遮断する機器の封入する絶縁ガスを炭酸ガス(CO)としているので、そのまま大気に放出が可能であり、ガス絶縁母線に封入したガスもSFの単体ガスなので極めて容易にガス回収が行え、点検時間を大幅に短縮することができる。
【0032】
なお、ガス絶縁変圧器内部の部分放電や過熱などに基づく内部絶縁物である紙の炭化により炭酸ガスが生じるので、ガス絶縁変圧器に封入する絶縁ガスとして炭酸ガス(CO)に替えて窒素ガス(N)を採用した場合、炭酸ガス(CO)をモニターすることによりガス絶縁変圧器内部の異常診断を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による全ガス絶縁変電所の回路構成を示す単線結線図。
【図2】本発明の一実施例による全ガス絶縁変電所を示す概略配置図。
【符号の説明】
【0034】
1…ガス絶縁開閉装置(GIS)、2a,2b…主母線、2aT…主母線接地タンク、2aC…主母線中心導体、3a1〜3b2…母線用断路器、3a1T…接地タンク、3a1B…断路器開閉部、3a1C…接続導体、4−1,4−2…ガス絶縁遮断器、4−1T…ガス絶縁遮断器接地タンク、4−1B…ガス絶縁遮断器開閉部、4−1C…ガス絶縁遮断器接続導体、5−1,5−2…変圧器接続母線、5−1T…変圧器接続母線接地タンク、5−1B…変圧器接続母線開閉部、5−1C…変圧器接続母線中心導体、6−1,6−2…接地断路器、7−1,7−2…避雷器、8−1,8−2…ガス絶縁変圧器、S,S1〜S6…絶縁スペーサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁スペーサによって絶縁支持された導体を絶縁ガスの封入された接地タンク内に配置したガス絶縁母線と、
絶縁スペーサによって絶縁支持された導体および開閉部を絶縁ガスの封入された接地タンク内に配置するとともに、前記導体を前記ガス絶縁母線の導体に接続し、さらに、前記接地タンクを絶縁スペーサを介して前記ガス絶縁母線の接地タンクに気密に接続したガス絶縁開閉機器と、
変圧器要素を収納した変圧器タンク内に絶縁ガスを封入するとともに、当該変圧器要素を前記ガス絶縁開閉機器の導体に接続し、さらに、前記変圧器タンクを絶縁スペーサを介して前記ガス絶縁開閉機器の接地タンクに気密に接続したガス絶縁変圧器と、を備えたガス絶縁変電所において、
前記ガス絶縁開閉機器およびガス絶縁変圧器に封入される絶縁ガスは、前記ガス絶縁母線に封入される絶縁ガスより地球温暖化係数が小さい絶縁ガスであることを特徴とするガス絶縁変電所。
【請求項2】
前記ガス絶縁母線に封入されている絶縁ガスが六フッ化硫黄ガスであり、前記ガス絶縁開閉機器および前記ガス絶縁変圧器に封入される絶縁ガスが前記SFより地球温暖化係数の小さい絶縁ガスであることを特徴とする請求項1記載のガス絶縁変電所。
【請求項3】
前記ガス絶縁開閉機器および前記ガス絶縁変圧器に封入される絶縁ガスが窒素ガスであることを特徴とする請求項2記載のガス絶縁変電所。
【請求項4】
前記ガス絶縁開閉機器および前記ガス絶縁変圧器に封入される絶縁ガスが炭酸ガスであることを特徴とする請求項2記載のガス絶縁変電所。
【請求項5】
前記ガス絶縁母線に封入されている絶縁ガスが六フッ化硫黄ガスであり、前記ガス絶縁開閉機器に封入される絶縁ガスが炭酸ガスであり、さらに前記ガス絶縁変圧器に封入される絶縁ガスが窒素ガスであることを特徴とする請求項2記載のガス絶縁変電所。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−51157(P2010−51157A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215639(P2008−215639)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】