説明

ガス絶縁装置

【課題】絶縁スペーサの埋め金に異物等が入り込んでも、容易に異物等を除去することができるガス絶縁装置を得る。
【解決手段】この発明に係るガス絶縁装置は、金属容器1と、金属容器1の内側に設けられた外部導体2と、金属容器1と外部導体2との間に設けられ、外部導体2の端部と嵌合する金属の埋め金4およびこの埋め金4が埋め込まれ周縁部が金属容器1に固定された絶縁性の樹脂体5からなる絶縁スペーサ3とを備えたガス絶縁装置において、埋め金4の周縁部には、外側が外部導体2側に向かって立ち上がった第1の段差部4aおよび第2の段差部4bが形成され、第1の段差部4aは、外部導体2の端部と嵌合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂体に埋め込まれた外部導体支持用の埋め金を有する絶縁スペーサを備えたガス絶縁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、埋め金と樹脂体との境界面近傍における埋め金の表面には溝が設けられ、この溝により、溝から前記境界面までの前記埋め金の厚みが薄く弾性変形が容易である絶縁スペーサを備えたガス絶縁装置が知られている。このものの場合、埋め金および樹脂体のそれぞれの線膨張係数等の物性値の違いにより熱応力が発生した場合に、前記埋め金が変形して、前記埋め金と前記樹脂体との前記境界面の剥離を防止する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平1−110011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のこのガス絶縁装置では、埋め金の溝には異物等が入りやすく、この溝に異物等が入り込んだ場合には、その異物等を溝から除去することが困難である等の問題点があった。
【0005】
この発明は、上述のような問題点を解決することを課題とするものであって、その目的は、埋め金の溝に異物等が入り込んだ場合に、この溝から異物等を容易に除去することができるガス絶縁装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るガス絶縁装置は、金属容器と、前記金属容器の内側に設けられた外部導体と、前記金属容器と前記外部導体との間に設けられ、前記外部導体の端部と嵌合する金属の埋め金およびこの埋め金が埋め込まれ周縁部が前記金属容器に固定された絶縁性の樹脂体からなる絶縁スペーサと、を備えたガス絶縁装置において、前記埋め金の周縁部には外側が前記外部導体側に向かって立ち上がった複数の段差部が形成され、最下段の前記段差部は、前記外部導体の前記端部と嵌合している。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るガス絶縁装置によれば、埋め金の溝に異物等が入り込んだ場合に、この溝から異物等を容易に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の各実施の形態を図に基づいて説明するが、各図において、同一または相当の部材、部位については、同一符号を付して説明する。
実施の形態1.
図1(a)は実施の形態1に係るガス絶縁装置の要部断面図、図1(b)は図1(a)の要部拡大図である。
実施の形態1に係るガス絶縁装置は、円筒形状の金属容器1と、この金属容器1の内部に設けられ、電流が流れる外部導体2と、金属容器1と外部導体2との間に設けられ、外部導体2を支持する円盤形状の絶縁スペーサ3とを備えている。
絶縁スペーサ3の両面には、外部導体2がそれぞれ連結されており、絶縁スペーサ3は、外部導体2の端部と嵌合する金属からなる埋め金4と、この埋め金4が中心部に埋め込まれ、周縁部が金属容器1に固定された絶縁性の樹脂体5とを有している。
例えば、埋め金4はアルミから構成され、樹脂体5はエポキシ樹脂から構成されている。
【0009】
埋め金4の周縁部には、全周に渡って、外側が外部導体2側に向かって立ち上がった第1の段差部4aおよび第2の段差部4bが設けられている。
第1の段差部4aは最下段の段差部であり、第2の段差部4bは第1の段差部4aより外側に設けられている。
第1の段差部4aと外部導体2の端部とは取外し可能に嵌合しており、外部導体2の側面とこの側面と対向した第2の段差部4bの面との間には、1.0mm以上かつ1.5mm以下の隙間Cが設けられている。
外部導体2は埋め金4から取り外すことができ、外部導体2と第2の段差部4bとの隙間Cに入り込んだ異物等を容易に除去することができる。
【0010】
次に、実施の形態1に係るガス絶縁装置において、埋め金4および樹脂体5のそれぞれの線膨張率の違いにより熱応力が発生した場合について説明する。
埋め金4に樹脂を注型することにより生成された絶縁スペーサ3を冷却すると、樹脂体5の線膨張率は埋め金4の線膨張率より大きいので、樹脂体5は埋め金4より収縮する変化が大きく、埋め金4と樹脂体5との境界面Bには応力が発生する。
埋め金4と樹脂体5との境界面Bの中で、最も先に剥離が発生する部位は、埋め金4と樹脂体5とが接触している境界面Bの外表面部である。
埋め金4の樹脂体5との境界面Bにおける外表面部の近傍は、第2の段差部4bにより径方向の厚みが薄く、柔軟性が向上しているので、樹脂体5の収縮とともに樹脂体5側へ弾性変形する。
その結果、埋め金4と樹脂体5との境界面Bにおける応力が低減し、境界面Bの剥離の発生を防止する。
したがって、従来技術に記載のガス絶縁装置と同様に境界面Bの剥離の発生を防止する効果を得ることができる。
【0011】
以上説明したように、実施の形態1に係るガス絶縁装置によると、埋め金4と樹脂体5との境界面Bにおける応力が全周に渡って低減し、境界面Bの剥離の発生を防止するとともに、外部導体2を埋め金4から取り外すことで、外部導体2と第2の段差部4bとの隙間Cに異物等が入り込んだ場合に、容易に異物を除去することができる。
【0012】
また、外部導体2の側面とこの側面と対向した第2の段差部4bの面との間には、1.0mm以上かつ1.5mm以下の隙間Cが設けられているので、電磁力等により外部導体2に曲げの力が発生し、外部導体2が変形した場合であっても、外部導体2が第2の段差部4bと接触せず、その結果、埋め金4と樹脂体5との境界面Bに応力が生じることを防止している。
【0013】
実施の形態2.
図2(a)は実施の形態2に係るガス絶縁装置の要部断面図、図2(b)は図2(a)の要部拡大図である。
樹脂体5の内側周縁部5aは、埋め金4の第2の段差部4bの上部に向かって盛り上げられて形成されている。
その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0014】
この実施の形態2に係るガス絶縁装置によると、樹脂体5の埋め金4との境界面Bにおける外表面部の近傍は、肉厚が薄く形成されているので、樹脂体5の埋め金4との境界面B近傍の端部は、熱による体積の変形が小さい。
その結果、樹脂体5による埋め金4への応力が低減されるので、埋め金4と樹脂体5との境界面Bの剥離の発生を防止することができる。
【0015】
実際、本願発明者は、埋め金4と樹脂体5との境界面Bの外表面部に仮想的に1mmの剥離を形成して、樹脂を注型し冷却する際に生じる熱応力を負荷して剥離の発生に対応する応力拡大係数を計算した。
図3(a)は、埋め金4に段差部がない絶縁スペーサ3とその要部拡大図、図3(b)は、実施の形態2に係る絶縁スペーサ3とその要部拡大図、図3(c)は、図3(a)および図3(b)の絶縁スペーサ3の場合における応力拡大係数を比較した図である。
実施の形態2に係る絶縁スペーサ3は、段差部がない絶縁スペーサ3と比較して、応力拡大係数が1/4程度に減少しており、埋め金4と樹脂体5との境界面Bの剥離を起こさせる応力が弱くなっていることがわかる。
【0016】
以上説明したように、実施の形態2に係るガス絶縁装置によると、実施の形態1の効果に加えて、樹脂体5の埋め金4との境界面Bの外表面部の近傍の肉厚が薄く形成されているので、樹脂体5の熱による体積変化を低減させ、埋め金4と樹脂体5との境界面Bの剥離の発生を実施の形態1のものより確実に防止することができる。
【0017】
実施の形態3.
図4(a)は実施の形態3に係るガス絶縁装置の要部断面図、図4(b)は図4(a)の要部拡大図である。
外部導体2の端部の周縁部には、外部導体2と埋め金4の第2の段差部4bとの間に空隙を形成する切り欠き部2aが、第2の段差部4bを覆って設けられている。
その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0018】
この実施の形態3に係るガス絶縁装置によると、外部導体2の端部の周縁部には、外部導体2と埋め金4の第2の段差部4bとの間に隙間Cを形成する切り欠き部2aが、第2の段差部4bを覆って設けられているので、外部導体2の端部の側面と第2の段差部4bとの空隙Cに異物が入るのを防いでいる。
【0019】
以上説明したように、実施の形態3に係るガス絶縁装置によると、実施の形態1の効果に加えて、切り欠き部2aが第2の段差部4bを覆って設けられているので、外部導体2の端部の側面と第2の段差部4bとの隙間Cに異物が入るのを防ぐことができる。
【0020】
実施の形態4.
図5(a)は実施の形態4に係るガス絶縁装置の要部断面図、図5(b)は図5(a)の要部拡大図である
実施の形態3と同様に、外部導体2の端部の周縁部には、外部導体2と埋め金4の第2の段差部4bとの間に空隙Cを形成する切り欠き部2aが、第2の段差部4bを覆って設けられている。
その他の構成は、実施の形態2と同様である。
【0021】
この実施の形態4に係るガス絶縁装置によると、実施の形態3と同様に外部導体2の端部側面と第2の段差部4bとの隙間Cに異物が入るのを防ぐとともに、実施の形態2と同様に樹脂体5による埋め金4への応力を低減させて、埋め金4と樹脂体5との境界面Bの剥離を防止している。
【0022】
なお、上記各実施の形態では、第1の段差部4aおよび第2の段差部4bが埋め金4の周縁部の全周に渡って設けられたガス絶縁装置について説明したが、埋め金4と樹脂体5との境界面Bに応力がかからない部位がある場合には、その境界面B近傍には第2の段差部4bを設けなくてもよい。
【0023】
また、上記各実施の形態では、外部導体2の側面とこの側面と対向した第2の段差部4bの面との間には、1.0mm以上かつ1.5mm以下の隙間Cが設けられているガス絶縁装置について説明したが、勿論この隙間Cに限らず、電磁力等により外部導体2に曲げの力が発生し、外部導体2が変形した場合に、外部導体2が第2の段差部4bと接触ない程度に隙間Cが設けられ、かつ、埋め金4の機械的強度が損なわれない程度に第2の段差部4bと境界面Bとの間に肉厚がある隙間Cであればよい。
【0024】
また、上記各実施の形態では、複数の段差部が第1の段差部4aおよび第2の段差部4bの2段からなる埋め金4を有したガス絶縁装置について説明したが、勿論このものに限らず、例えば、複数の段差部が3段である埋め金4を有したガス絶縁装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1(a)は実施の形態1に係るガス絶縁装置の要部断面図、図1(b)は図1(a)の要部拡大図である。
【図2】図2(a)は実施の形態2に係るガス絶縁装置の要部断面図、図2(b)は図2(a)の要部拡大図である。
【図3】図3(a)は埋め金に段差部がない絶縁スペーサとその要部を拡大した図、図3(b)は実施の形態2に係る絶縁スペーサとその要部を拡大した図、図3(c)は図3(a)および図3(b)の絶縁スペーサの場合における応力拡大係数を比較した図である。
【図4】図4(a)は実施の形態2に係るガス絶縁装置の要部断面図、図4(b)は図4(a)の要部拡大図である。
【図5】図5(a)は実施の形態2に係るガス絶縁装置の要部断面図、図5(b)は図5(a)の要部拡大図である
【符号の説明】
【0026】
1 金属容器、2 外部導体、2a 切り欠き部、3 絶縁スペーサ、4 埋め金、4a 第1の段差部、4b 第2の段差部、5 樹脂体、5a 内側周縁部、B 境界面、C 隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属容器と、
前記金属容器の内側に設けられた外部導体と、
前記金属容器と前記外部導体との間に設けられ、前記外部導体の端部と嵌合する金属の埋め金およびこの埋め金が埋め込まれ周縁部が前記金属容器に固定された絶縁性の樹脂体からなる絶縁スペーサと、
を備えたガス絶縁装置において、
前記埋め金の周縁部には、外側が前記外部導体側に向かって立ち上がった複数の段差部が形成され、最下段の前記段差部には、前記外部導体の前記端部が取外し可能に嵌合していることを特徴とするガス絶縁装置。
【請求項2】
前記樹脂体の内側周縁部は、前記段差部の上部に向かって盛り上げられていることを特徴とする請求項1に記載のガス絶縁装置。
【請求項3】
前記外部導体の前記端部の周縁部には、前記外部導体と前記埋め金との間に空隙を形成する切欠き部が前記段差部を覆って設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス絶縁装置。
【請求項4】
前記段差部は、前記埋め金の全周に渡って設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のガス絶縁装置。
【請求項5】
前記外部導体の側面とこの側面に対向した最下段を除く前記段差部の面との間には、1.0mm以上かつ1.5mm以下の隙間が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のガス絶縁装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−11601(P2008−11601A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176951(P2006−176951)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】