説明

ガス絶縁開閉装置

【課題】アーク短絡事故等が生じた場合に、周囲環境に対して悪影響を及ぼさず、被害を最小限に押さえ、装置の軽量、小形化を図れるガス絶縁開閉装置を提供する。
【解決手段】ガス絶縁開閉装置は、絶縁性ガスを充填された密閉金属容器10と、密閉金属容器10内に収納された導体20と、密閉金属容器10内を連続する複数の室に機密に仕切るとともに導体20を貫通させて密閉金属容器10から絶縁支持する絶縁スペーサ30とを備え、この導体20には、隣接する複数の室を連通する放圧流路21a,24aが形成されており、この放圧流路には、室内の圧力が所定未満のときに放圧流路を閉塞するとともに、室内の圧力が所定以上となったときに破損して圧力の大きい室内の絶縁性ガスを隣接する圧力の小さい室内に移動させる放圧板28が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス絶縁開閉装置の放圧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス絶縁開閉装置において、内部におけるアーク短絡事故等により内部圧力が上昇した場合の対策として例えば次ぎの手段が採用されている。すなわち、ガス絶縁開閉装置の筐体の強度を強固なものとし、内部圧力の上昇に耐えるようにする。すなわち、筐体の板厚を厚くしたり、補強用リブを設けたり、筐体の形状を丸形にして応力の集中を避けるようにする。また、筐体に形成した放圧口に放圧板を設け、内部圧力が放圧板の動作圧力に達したとき、外部へ放圧するようにする。
【0003】
しかしながら、ガス絶縁開閉装置の筐体の強度を上げる場合、筐体の重量,加工性,小形化の点で不利であり、とくに、筐体のガス封入容積が小さい時は、事故時の内圧上昇がかなり大になるため、その内圧上昇に耐えるのがきわめて困難である。また、外部へ放圧する場合、外部へ放出されるガスが六フッ化硫黄ガス等の絶縁性の分解ガスであり、このガスが電気室に充満したり、或いは屋外設備では大気中に放出したり、周囲環境への影響が大きい。
【0004】
そのため、従来、基礎ベースを兼ねた直方体状の中空のガス収容容器上に、複数個のガス絶縁開閉装置の筐体(室)を並べて設け、各筐体とガス収容容器とを連通した放圧口に当該放圧口を閉塞する放圧板を設け、筐体内でアーク短絡事故等により封入された絶縁ガスの分解ガスが発生し、内部圧力が急激に上昇した際に放圧板を破裂させるようにして分解ガスをガス収容容器へ流入するようにして、筐体の内部圧力を低下させる方法が提案されている。このガス収容容器を設ける方法においては、分解ガスが外部へ流出することがなく、被害も該当の筐体内のみとすることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平8−103007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術のガス収容容器を設ける方法においては、列を成して並ぶガス絶縁開閉装置の筐体(室)に沿って全長にわたってガス収容容器を設ける必要があり、装置が大きくなるという課題があり、改善が望まれていた。一方、通常300kVの電圧が印加される装置内には、センサやモータ等の電気機器類は設けたくないという要望もあった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、アーク短絡事故等が生じた場合に、周囲環境に対して悪影響を及ぼさず、被害を最小限に押さえ、装置の軽量、小形化を図ることのできるガス絶縁開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のガス絶縁開閉装置は、絶縁性ガスを充填された密閉金属容器と、密閉金属容器内に収納された導体と、密閉金属容器内を連続する複数の室に機密に仕切るとともに導体を貫通させて密閉金属容器から絶縁支持する絶縁スペーサとを備え、導体には、隣接する複数の室を連通する放圧流路が形成されており、放圧流路には、室内の圧力が所定未満のときに放圧流路を閉塞するとともに、室内の圧力が所定以上となったときに破損して圧力の大きい室内の絶縁性ガスを隣接する圧力の小さい室内に移動させる放圧板が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、アーク短絡事故等が生じた場合に、ガス収容容器を設けることなく、分解ガスが外部へ流出することがなくして被害を筐体内のみとすることができ、周囲環境に対して悪影響を及ぼさず、被害を最小限に押さえ、筐体の軽量、小形化を図ることができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明にかかるガス絶縁開閉装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は本発明にかかるガス絶縁開閉装置の実施の形態1の横断面図である。図1において、ガス絶縁開閉装置101は、六フッ化硫黄ガス等の絶縁性ガスが充填されて密閉された金属容器(密閉金属容器)10と、この金属容器10内に収納された導体20と、金属容器10内に設けられ、金属容器10内を連続する複数の室に機密に仕切るとともに金属容器10から導体20を絶縁支持する絶縁スペーサ30とを有している。
【0012】
金属容器10は、短尺の円筒部材11が複数連結されて長尺の円筒状を成している。すなわち、金属容器10は、両端部にフランジ部11aが形成された円筒部材11が、対向する相互のフランジ部11a間に絶縁スペーサ30を挟みながら隣接する円筒部材11と機密状態に連結されている。
【0013】
導体20は、2つの絶縁スペーサ30間に設けられた長尺主導体21或いは図示しない短尺主導体と、これら主導体21の両端に設けられた接触子23と、接触子23を覆うように配置されたシールド24と、絶縁スペーサ30の中心に埋め込まれ、絶縁スペーサ30を挟んで対向するシールド24を電気的に接続する接続導体25とを含んで構成されている。このような構成により、金属容器10には、絶縁スペーサ30にてガス区分された複数の室が軸方向に複数形成されている。
【0014】
本実施の形態においては、説明の便宜上、重要機器である遮断器41や断路器42が収納された室を室R0、そしてこれに隣接して続く2室を第一室R1と第二室R2として説明する。第一室R1内に収納された短尺主導体22Aには、中心軸に沿って中央まで延びる横穴とこの横穴に連通して直角方向に貫通する貫通穴とからなる概略T字型の流通穴22aが形成されている。シールド24にも中心軸に沿って横穴24aが形成されている。
【0015】
また、第二室R2内に収納された長尺主導体21Aには、中心軸に沿って中央まで延びる横穴とこの横穴に連通して直角方向に貫通する貫通穴とからなる概略T字型の流通穴21aが形成されている。シールド24にも中心軸に沿って横穴24aが形成されている。そして、短尺主導体22Aに形成された概略T字型の流通穴22aと、長尺主導体21Aに形成された概略T字型の流通穴21aと、シールド24に形成された横穴24aとは、放圧流路を構成している。そしてさらに、この放圧流路が絶縁スペーサ30を貫通する位置に、接続導体25に替わって放圧板28が設けられている。
【0016】
放圧板28は、破損させたい中央部が優先して破損するように、中央部に切れ込みが形成された金属板である。放圧板28は、室内の圧力が所定未満のときに放圧流路を閉塞するとともに、室内の圧力が所定以上となったときに破損して圧力の大きい室内の絶縁性ガスを隣接する圧力の小さい室内に移動させる。
【0017】
絶縁性ガスが、圧力の大きい室内から隣接する圧力の小さい室内に移動した際、放圧流路の開口から噴出する白い粉状のフッ化生成物が絶縁スペーサ30に付着すると、絶縁スペーサ30がダメージを受け絶縁性が落ち耐電圧性能が低下するので、放圧流路の開口は、この開口から噴出するフッ化生成物が絶縁スペーサ方向に吐出することのないように絶縁スペーサ30に向く方向と異なる方向に向いている。
【0018】
このように構成されたガス絶縁開閉装置101においては、重要機器が収納された室R0と、これに続く第一室R1と第二室R2とが形成され、この第一室R1と第二室R2の間には、隣接する二つの室を連通する放圧流路(21a,22a,24a)が形成されており、この放圧流路には、室内の圧力が所定未満のときに放圧流路を閉塞するとともに、室内の圧力が所定以上となったときに破損して圧力の大きい室内の絶縁性ガスを隣接する圧力の小さい室内に移動させる放圧板28が設けられている。そのため、第一室R1と第二室R2のいずれか一方の室内でアーク短絡事故等により封入された絶縁ガスの分解ガスが発生し、内部圧力が急激に上昇した場合であっても、放圧板28が破裂して分解ガスが他方の室に流入するので、内部圧力が低下して、重要機器が収納された室R0に被害がおよぶことがない。
【0019】
このようにして、アーク短絡事故等が生じた場合に、分解ガスが外部へ流出することがなくして被害を筐体内のみとすることができ、周囲環境に対して悪影響を及ぼさず、被害を最小限に押さえ、さらに筐体の軽量、小形化を図ることができる。
【0020】
また、本実施の形態のガス絶縁開閉装置101においては、軸方向に長さの小さな第一室R1には短尺主導体22Aが用いられ、軸方向に長さの大きな第二室R2には長尺主導体21Aが用いられている。このように、予め長さの異なる複数種類の短尺主導体22Aおよび長尺主導体21Aを用意しておき、室の長さに対応するものを選択して用いることにより、複数の長さの室が形成されるガス絶縁開閉装置に対して容易に対応することができる。
【0021】
実施の形態2.
図2は本発明にかかるガス絶縁開閉装置の実施の形態2の横断面図である。図2において、本実施の形態のガス絶縁開閉装置102においては、軸方向に長さの小さな第一室R1と第二室R2には、それぞれ短尺主導体22Aが用いられている。その他の構成は実施の形態1と同様である。このように構成されたガス絶縁開閉装置102においては、概略実施の形態1と同様の効果を得ることができ、特に本実施の形態のように比較的小さなガス区分が連続するものにおいては、放圧機能が効果的に機能する。
【0022】
実施の形態3.
図3は本発明にかかるガス絶縁開閉装置の実施の形態3の横断面図である。図3において、本実施の形態のガス絶縁開閉装置103においては、絶縁スペーサ30の向きが実施の形態2のものと反対の方向を向いている。その他の構成は実施の形態2と同様である。このように構成されたガス絶縁開閉装置103においては、概略実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明にかかるガス絶縁開閉装置は、変電所等に設置されるガス絶縁開閉装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明にかかるガス絶縁開閉装置の実施の形態1の横断面図である。
【図2】本発明にかかるガス絶縁開閉装置の実施の形態2の横断面図である。
【図3】本発明にかかるガス絶縁開閉装置の実施の形態3の横断面図である。
【符号の説明】
【0025】
10 金属容器(密閉金属容器)
11 円筒部材
20 導体
21,21A 長尺主導体
21a 流通穴(放圧流路)
22A 短尺主導体
22a 流通穴
23 接触子
24 シールド
24a 横穴(放圧流路)
25 接続導体
28 放圧板
30 絶縁スペーサ
41 遮断器(重要機器)
42 断路器(重要機器)
101,102,103 ガス絶縁開閉装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性ガスを充填された密閉金属容器と、
前記密閉金属容器内に収納された導体と、
前記密閉金属容器内を連続する複数の室に機密に仕切るとともに前記導体を貫通させて前記密閉金属容器から絶縁支持する絶縁スペーサとを備え、
前記導体には、隣接する複数の室を連通する放圧流路が形成されており、
前記放圧流路には、室内の圧力が所定未満のときに前記放圧流路を閉塞するとともに、室内の圧力が所定以上となったときに破損して圧力の大きい室内の前記絶縁性ガスを隣接する圧力の小さい室内に移動させる放圧板が設けられている
ことを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項2】
前記放圧流路および前記放圧板は、重要機器が収納された室に隣接する第一室と第二室との間に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項3】
前記放圧板は、破損させたい箇所が優先して破損するよう切れ込みが形成された金属板である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項4】
前記放圧板は、前記放圧流路の前記絶縁スペーサを貫通する位置に設けられている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項5】
前記放圧流路の開口は、該開口から噴出するフッ化生成物が前記絶縁スペーサ方向に飛散することのないように前記絶縁スペーサ方向と異なる方向に向いている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項6】
前記導体は、主導体と、該主導体の両端に設けられた接触子と、該接触子を覆うシールドとを含んで構成されている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項7】
前記主導体は、長さの異なる複数のものから前記室の長さに対応するものが選択されて用いられる
ことを特徴とする請求項6に記載のガス絶縁開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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