ガス絶縁電力機器の導体接続装置
【課題】絶縁耐圧を大きくする。
【解決手段】絶縁ガス1が封入された接地容器2内に収容された導体3を接続するコネクタ導体4の外周面を覆う固体絶縁物本体5と、導体3の少なくとも端部3a外周面を被覆する固体絶縁物被覆6と、固体絶縁物本体5に設けられ、固体絶縁物被覆6を囲んで接地容器2と固体絶縁物被覆6の端面の接触界面6aとの間の沿面長を延長させる筒状部7を備え、筒状部7と固体絶縁物被覆6との間には、接触界面を排除するギャップ8が設けられている。
【解決手段】絶縁ガス1が封入された接地容器2内に収容された導体3を接続するコネクタ導体4の外周面を覆う固体絶縁物本体5と、導体3の少なくとも端部3a外周面を被覆する固体絶縁物被覆6と、固体絶縁物本体5に設けられ、固体絶縁物被覆6を囲んで接地容器2と固体絶縁物被覆6の端面の接触界面6aとの間の沿面長を延長させる筒状部7を備え、筒状部7と固体絶縁物被覆6との間には、接触界面を排除するギャップ8が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接地容器内に絶縁ガスを封入すると共に導体を収容し、導体を接地容器から浮かせた状態で支持するガス絶縁電力機器の導体接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する関心が高まっており、ガス絶縁開閉装置やガス絶縁送電線路等のガス絶縁電力機器の主絶縁媒体であるSF6ガスが地球温暖化ガスとして注目されている。このため、SF6代替ガス絶縁の研究がなされている。SF6代替ガスはSF6ガスに比べて絶縁性能に劣ることから、導体を固体絶縁物で被覆することが研究されている。
【0003】
【非特許文献1】ハイブリッドガス絶縁方式の開発、[online]、[平成20年3月14日検索]、インターネット<http://criepi.denken.or.jp/jp/electric/substance/08.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、導体を固体絶縁物で被覆する場合、導体の接続部分で被覆に接触界面が生じる。ここで、固体絶縁物の被覆に接触界面が発生しないように導体の接続部分も含めて全ての部分に連続して被覆を施すことも考えられる。しかしながら、導体の熱伸縮、被覆の長期信頼性、施工性、将来のタンク(接地容器)開放の可能性等を考慮すると、導体の接続にコネクタ導体を使用することが好ましい。そのため、固体絶縁物の被覆を全ての部分で連続したものにすることは困難あり、接触界面が生じてしまうことから絶縁耐圧を十分に大きくすることが困難である。
【0005】
本発明は、絶縁耐圧を大きくすることができるガス絶縁電力機器の導体接続装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、請求項1記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置は、絶縁ガスが封入された接地容器内に収容された導体を接続するコネクタ導体の外周面を覆う固体絶縁物本体と、導体の少なくとも端部外周面を被覆する固体絶縁物被覆と、固体絶縁物本体に設けられ、固体絶縁物被覆を囲んで接地容器と固体絶縁物被覆の端面の接触界面との間の沿面長を延長させる筒状部を備え、筒状部と固体絶縁物被覆との間には、接触界面を排除するギャップが設けられているものである。
【0007】
導体に固体絶縁物被覆を施すことで、仮に、接地容器と導体との間に絶縁破壊が生じるとしたら固体絶縁物被覆の端面の接触界面に沿って絶縁破壊が生じることになる。固体絶縁物本体に筒状部を設けることで、接地容器と固体絶縁物被覆の端面の接触界面との間の沿面長を延長することができる。また、筒状部を設けることで、接地容器と固体絶縁物被覆との間よりも接地容器と筒状部との間に絶縁破壊が生じやすくなるので、固体絶縁物被覆を設ける範囲が狭まる。
【0008】
ここで、請求項2記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置のように、固体絶縁物本体が、導体の接続部分を支持する絶縁スペーサ、又は導体を接続する絶縁コネクタであることが好ましい。
【0009】
また、請求項3記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置のように、筒状部は 固体絶縁体によって成形されたシースでも良く、請求項4記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置のように、筒状部にシールド電極が埋め込まれていても良い。
【0010】
さらに、請求項5記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置は、筒状部の内周面と、固体絶縁物被覆の外周面の筒状部に臨む部分とのうち、少なくともいずれか一方に周方向に環状の突部が設けられている。したがって、接地容器と固体絶縁物被覆の端面の接触界面との間の沿面長がより一層長くなる。また、仮に接地容器と固体絶縁物被覆の端面の接触界面との間に絶縁破壊が生じるとすると、その放電が突部を乗り越えることが逆電界となる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置では、筒状部によって接地容器と固体絶縁物被覆の端面の接触界面との間の沿面長を延長することができるので、その分だけ絶縁耐圧を大きくすることができる。また、筒状部と固体絶縁物被覆との間にギャップを設けているので、筒状部と固体絶縁物被覆との間に接触界面が存在することがなく、接触界面のボイド等に起因した電界集中を防止することができ、絶縁耐圧の低下を防止することができる。したがって、ガス絶縁電力機器の大型化を招かずにSF6よりも絶縁性能に劣る絶縁ガスの使用が可能になる。また、絶縁ガスとしてSF6を使用する場合には、ガス絶縁電力機器を小型化することができる。さらに、筒状部によって沿面長を増加させているので、筒状部の長さを変えることで沿面長の増加を調節することができ、その調節が容易である。
【0012】
また、請求項2記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置では、導体の接続部分を支持する絶縁スペーサ又は導体を接続する絶縁コネクタを利用して絶縁耐圧を増加させることができる。
【0013】
また、請求項3記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置のように、筒状部は 固体絶縁体によって成形されたシースでも良く、請求項4記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置のように、筒状部にシールド電極が埋め込まれていても良い。
【0014】
さらに、請求項5記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置では、突部によって接地容器と固体絶縁物被覆の端面の接触界面との間の沿面長をより一層長くできると共に、仮に絶縁破壊が生じるとすると逆電界となる部分を作ることができるので、絶縁破壊をより一層生じ難くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1に本発明のガス絶縁電力機器の導体接続装置の実施形態の一例を示す。ガス絶縁電力機器の導体接続装置(以下、単に導体接続装置という)は、絶縁ガス1が封入された接地容器2内に収容された導体3を接続するコネクタ導体4の外周面を覆う固体絶縁物本体5と、導体3の少なくとも端部3a外周面を被覆する固体絶縁物被覆6と、固体絶縁物本体5に設けられ、固体絶縁物被覆6を囲んで接地容器2と固体絶縁物被覆6の端面の接触界面6aとの間の沿面長を延長させる筒状部7を備え、筒状部7と固体絶縁物被覆6との間には、接触界面を排除するギャップ8が設けられている。
【0017】
本実施形態の導体接続装置は、導体3の端面同士を接続する絶縁コネクタ9である。ただし、絶縁コネクタ9に限るものではなく、導体3を接続するものであれば例えば絶縁スペーサ10等にも適用可能である。
【0018】
ガス絶縁電力機器は、例えばガス絶縁開閉装置(GIS:Gas-Insulated Switchgear)、ガス絶縁送電線路(GIL:Gas-Insulated Line)等のガス絶縁電力機器である。ただし、これらに限るものではない。本実施形態では、GISを例に説明する。
【0019】
接地容器2は例えばGISの接地タンクであり、その内部には絶縁ガス1が封入されている。絶縁ガス1としては、例えばN2ガス、CO2ガス等の使用が可能である。ただし、絶縁ガス1としてはN2ガス、CO2ガスに限るものではなく、例えばSF6ガス、その他の絶縁ガスの使用が可能である。導体3はコネクタ導体4によって接続され、図示しない絶縁スペーサによって接地容器2から浮かせた状態で支持されている。コネクタ導体4としては、例えば金属接触子を用いた差し込み方式のものの使用が可能である。ただし、他の方式でも良い。
【0020】
固体絶縁物本体5は、例えばエポキシ樹脂、ポリエチレン等の固体絶縁材料から成る筒体であり、コネクタ導体4の外周面を覆っている。
【0021】
固体絶縁物被覆6は、例えばエポキシ樹脂、ポリエチレン等の固体絶縁材料から成る被覆である。本実施形態では、導体3の外周面を全長にわたり被覆している。ただし、導体3の外周面を全長にわたり被覆する必要はなく、少なくとも端部3a、即ち接地容器2と導体3との間に絶縁破壊が生じる場合において、固体絶縁物被覆6の端面の接触界面6aと筒状部7の先端との間の沿面長をL1、固体絶縁物被覆6の接触界面6aとは反対側の端と筒状部7の先端との間の沿面長をL2とした場合、L1≦L2となる範囲、又はL1>L2であってもL1とL2との差が僅かになるような範囲に固体絶縁物被覆6を設ければ足りる。即ち、導体3の全長に固体絶縁物被覆6を設けることで接地容器2と導体3との間の絶縁耐圧を導体3の全長にわたって増加させることができるが、絶縁コネクタ9を設けた場合、この部分が絶縁耐圧の小さな部位となるので、この部分の絶縁耐圧を大きくする必要がある。導体3の少なくとも端部3aに固体絶縁物被覆6を施すことで、少なくとも絶縁耐圧を大きくすべき部位について絶縁耐圧を大きくすることができる。本実施形態では、導体3の外径とコネクタ導体4の外径は同一であり、固体絶縁物被覆6の端面の接触界面6aは固体絶縁物本体5との間に形成される。
【0022】
筒状部7は固体絶縁体によって成形されたシースであり、固体絶縁物本体5と一体成形されている。即ち、固体絶縁物本体5と同じ固体絶縁材料によって成形されている。筒状部7の横断面形状は、導体3の横断面形状と相似形になっている。本実施形態の導体3の横断面形状は円形であるので、筒状部7の横断面形状も円形になっている。筒状部7は導体3と同心円状に配置されている。筒状部7は固体絶縁物本体5の両面に形成され、接続する2本の導体3の軸線方向に形成されている。
【0023】
ギャップ8は、固体絶縁物被覆6と筒状部7の間に全周にわたって設けられている。ギャップ8の距離(ギャップ長)は、固体絶縁物被覆6と筒状部7との間に電界集中が起こらない程度の距離となっている。即ち、ギャップ長が短いと、固体絶縁物被覆6と筒状部7との間に電界の集中を引き起こすので、この電界集中を実質的に影響のない程度まで抑えることができる距離L3のギャップ8が設けられている。なお、ギャップ長は距離L3以上であれば良いが、ギャップ長を増加させると、筒状部7と接地容器2との距離が短くなることから絶縁耐圧が減少する。このため、接地容器2との距離を考慮してギャップ長を決定することが好ましい。なお、適切なギャップ長は、筒状部7の長さ、電圧、絶縁ガス1の種類・濃度・圧力等によって変化するので、例えば実験や計算等を行って適宜決定することが好ましい。ギャップ長の一例としては、例えば5mmである。ただし、5mmに限るものではない。
【0024】
次に、導体接続装置の作用について説明する。
【0025】
導体3に固体絶縁物被覆6を施すことで、接地容器2と導体3との間の絶縁耐圧を増加させることができる。この場合、固体絶縁物被覆6の端面の接触界面6aが発生しないように導体3の接続部分も含めて全ての部分に連続した固体絶縁物被覆6を施すことも考えられる。しかしながら、導体3の熱伸縮、固体絶縁物被覆6の長期信頼性、施工性、将来のタンク(接地容器2)開放の可能性等を考慮すると、導体3の接続にコネクタ導体4を使用することが好ましい。そのため、固体絶縁物被覆6を全ての部分で連続したものにすることは困難あり、接触界面6aが発生する。接触界面6aが発生する場合、絶縁破壊は接触界面6aを介して生じる可能性が高く、したがって、この部分での絶縁耐圧を大きくする必要がある。
【0026】
本発明の導体接続装置によって接触界面6aを介して生じる絶縁破壊に対して絶縁耐圧を大きくすることができる。即ち、筒状部7を設けることで、接地容器2と接触界面6aとの間に生じる放電の沿面長が増加するので、その分だけ絶縁耐圧を向上させることができる。また、筒状部7と固体絶縁物被覆6との間にギャップ8が設けられており、筒状部7と固体絶縁物被覆6との間に接触界面が存在することがないので、接触界面のボイド等に起因した電界集中を防止することができ、絶縁耐圧の低下を防止することができる。
【0027】
また、筒状部7の長さを変えることで沿面長の増加を調節することができるので、絶縁耐圧の大きさ調節が容易である。
【0028】
このように本発明の導体接続装置の使用によって絶縁耐圧を大きくすることができるので、絶縁ガス1として、SF6ガスよりも絶縁能力に劣るN2ガス、CO2ガス等の使用が可能になる。即ち、絶縁ガス1としてN2ガス、CO2ガス等を使用する場合には、SF6ガスを使用する場合に比べて圧力を高くする必要がある。例えば、0.5MPa(平均値)のSF6ガスと同等の絶縁耐力を得るためには、N2ガス、CO2ガスの圧力を2.0MPaまで上昇させる必要がある。ガス圧の増加により、接地容器2等の耐圧性を高めることが必要となり、GISが実用的なものではなくなる。あるいは、接地容器2と導体3との距離を延長させる必要があり、GISが大型化して実用的なものではなくなる。
【0029】
しかしながら、導体3に固体絶縁物被覆6を施し、本発明の導体接続装置を使用することで、絶縁耐圧を増加させることができるので、N2ガス、CO2ガスを使用する場合であってもGISを実用的なものにすることができる。逆に、同じ絶縁ガス1を使用する場合には、接地容器2を小型化することができ、GISをよりコンパクトにすることができる。
【0030】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、筒状部7にシールド電極11を埋め込んでも良い。この場合の例を図2に示す。
【0031】
また、上述の説明では、導体3の外径とコネクタ導体4の外径を同一にしていたが、例えば図3に示すように、導体3の外径よりもコネクタ導体4の外径を小さくしても良い。また、図4に示すように、固体絶縁物被覆6の外径とコネクタ導体4の外径を同一にしても良い。
【0032】
また、上述の説明では、導体接続装置を絶縁コネクタ9に適用していたが、適用可能なものとしては絶縁コネクタ9に限るものではなく、例えば絶縁スペーサ10等にも適用可能である。図5に絶縁スペーサ10に適用した例を示す。なお、この場合にも筒状部7にシールド電極11を埋め込んでも良い。
【0033】
また、図6に示すように、筒状部7の近傍の固体絶縁物被覆6の外周面に沿面長を延長させる障害部材12を設けても良い。この場合には上述のL2の沿面長をかせぐことができるので、固体絶縁物被覆6を導体3の全長にわたって設けない場合に、固体絶縁物被覆6を設ける範囲を狭くすることができる。
【0034】
さらに、筒状部7の内周面7aと、固体絶縁物被覆6の外周面の筒状部7に臨む部分6bとのうち、少なくともいずれか一方に周方向に環状の突部18を設けても良い。筒状部7の内周面7aと固体絶縁物被覆6の部分6bの両方に突部18を設けた実施形態を図16に示す。筒状部7側の突部18(以下、固体絶縁物被覆6側の突部18と区別する場合には突部18Aという)と固体絶縁物被覆6側の突部18(以下、筒状部7側の突部18Aと区別する場合には突部18Bという)は、導体3の軸線方向にずらして互い違いになるようにすることが好ましい。ただし、必ずしも突部18Aと突部18Bを互い違いにしなくても良い。本実施形態では、例えば4つの突部18Aと4つの突部18Bを互い違いに設けている。ただし、突部18A,18Bの数は4つに限るものではなく、その他の個数でも良い。各突部18A,18Bの横断面形状は例えば半円形状を成している。ただし、必ずしも突部18A,18Bの横断面形状は半円形状に限るものではなく、他の形状でも良いが、角のない形状であることが好ましい。角部分が電界の特異点になるのを防止するためである。本実施形態では、筒状部7側の突部18Aは一つ一つ独立しており、固体絶縁物被覆6側の突部18Bは一体化されている。ただし、筒状部7側の突部18Aを一体化させても良く、固体絶縁物被覆6側の突部18Bを一つ一つ独立させても良い。突部18A,18Bは、例えばエポキシ樹脂、ポリエチレン等の固体絶縁材料で形成されている。本実施形態では突部18Aを筒状部7と別に形成し、突部18Bを固体絶縁物被覆6と別に形成しているが、突部18Aを筒状部7と一体成形し、突部18Bを固体絶縁物被覆6と一体成形しても良い。突部18Aは筒状部7対して、突部18B固体絶縁物被覆6に対して例えば接着剤によって固着されている。また、本実施形態では、突部18Aの内径と突部18Bの外径を同一にしている。ただし、突部18Aの内径を突部18Bの外径よりも大きくしても良いし、突部18Aの内径を突部18Bの外径よりも小さくしても良い。
【0035】
突部18Aを設けることで、筒状部7の内周面を伝わる接地容器2と接触界面6aとの間の沿面長がより一層長くなり、突部18Bを設けることで、固体絶縁物被覆6の外周面を伝わる接地容器2と接触界面6aとの間の沿面長がより一層長くなる。また、仮に接地容器2と接触界面6aとの間に絶縁破壊が生じるとすると、その放電が筒状部7の内周面に沿う場合には突部18Aを乗り越えることが逆電界となり、固体絶縁物被覆6の外周面に沿う場合には突部18Bを乗り越えることが逆電界となる。これらのため、接地容器2と接触界面6aとの間の絶縁破壊をより一層生じ難くすることができる。
【0036】
なお、上述の説明では、横断面形状が半円形状の突部18を複数設けていたが、例えば図17に示すように、傾斜面18cを有する突部18を設けても良い。本実施形態では、筒状部7側の突部18Aと固体絶縁物被覆6側の突部18Bの両方を傾斜面18cを有する突部にしている。ただし、突部18Aと突部18Bの両方を傾斜面18cを有するものにする必要はなく、例えば図18に示すように、固体絶縁物被覆6側の突部18Bのみを傾斜面18cを有するものにしても良く、逆に筒状部7側の突部18Aのみを傾斜面18cを有するものにしても良い。突部18が傾斜面18cを有するものの場合にも、接地容器2と接触界面6aとの間の沿面長をより一層長くできると共に、仮に絶縁破壊が生じるとすると逆電界となる部分を作ることができるので、絶縁破壊をより一層生じ難くすることができる。
【0037】
また、上述の説明では、筒状部7の内周面7aと固体絶縁物被覆6の部分6bの両方に突部18を設けていたが、必ずしも両方に設ける必要はなく、いずれか一方にのみ突部18を設けるようにしても良い。即ち、筒状部7の内周面7aと固体絶縁物被覆6の部分6bの両方に突部18を設けることで、絶縁破壊が生じる経路が筒状部7の内周面に沿う場合と固体絶縁物被覆6の外周面に沿う場合のいずれであっても絶縁破壊をより一層生じ難くすることができるが、絶縁破壊が生じる経路が上記2つの経路のうちいずれか一方であることが予測できる場合等には予測できる経路にのみ突部18を設けるようにしても良い。例えば、GISやGIL等のガス絶縁電力機器では導体3から接地容器2に向けて絶縁破壊が生じると予測できるので、ギャップ8が大きく、導体3から生じた絶縁破壊が接続界面6aから固体絶縁物本体5の側面に沿って筒状部7の内周面に伝わり、筒状部7の先端から接地容器2へと伝わることが予測できる場合等には筒状部7側の突部18Aのみを設けても良い。
【実施例1】
【0038】
本発明の導体接続装置の使用によって絶縁耐圧即ち耐電圧を増加させることができることを確認するための実験を行った。
【0039】
導体接続装置の検討を行うにあたって、以下の2つのコンセプトを考えた。
(i)接続部の沿面長の増加
(ii)接触界面6aの電界集中の緩和
沿面放電を考えるとき、沿面長の増加に比例するほどには耐電圧は増加しないが、沿面長の増加は確実に耐電圧の増加につながる。したがって、GISまたはGILの接続箇所において、できる限り(または合理的に)沿面放電に対する沿面長を増加できるようにした(沿面長を適用箇所に応じて任意に設定できる)。
【0040】
電界の集中する場所は放電の起点となる。したがって、耐電圧の上昇のためには、極力電界集中を避ける必要がある。導体3の接続部分で固体絶縁物被覆6同士が接続される場合、固体絶縁物被覆6の端面の接触界面6aには微小ギャップ(ボイド)の存在が避けられず、この微小ギャップは電界の集中を引き起こす。また、左右から接続する場合、接続部の表面を完全に平坦とすることは困難である。たとえ微小であっても段差があれば、電界の集中を引き起こすことになり、電気的な弱点となる。
【0041】
以上の点を考慮し、実験では以下の5つのパターンを検討した。実際の実験配置は後述するように、簡単のために平行平板電極系で行ったが、ここでは実機におけるハイブリッド絶縁方式(導体3を絶縁ガス1と固体絶縁物被覆6とで絶縁する方式)の接続について理解を容易にするために、各コンセプトを同軸円筒モデルで示す。
【0042】
(1)固体絶縁物被覆6なし(構造A)
コネクタ導体4について固体絶縁物被覆6なしの場合を図7に示す。本方式はハイブリッド絶縁方式ではなく、単純な気中絶縁方式である。今回の実験の中で、ハイブリッド絶縁方式による絶縁耐力の向上率を比較するための基準として設定した。
【0043】
(2)シールド電極方式(構造B,C)
シールド電極方式を用いた接続装置を図8および図2に示す。本方式は導体接続装置内部にシールド電極11を埋め込むことで、固体絶縁物被覆6の接続部側の電界を緩和する方式である。本方式では、導体3(中心導体)の固体絶縁物被覆6と筒状部7との間に接触界面13がある場合(構造B:図8)、および両者の間にギャップ8を設けることで接触界面13を除した場合(構造C:図2)を検討した。
【0044】
(3)絶縁物シース方式(構造D,E)
絶縁物シース方式を用いた接続装置を図9および図1に示す。本方式は導体接続装置のうち、中心導体3を電気的に接続する部分以外はすべて樹脂である。すなわち、固体の接触界面13の電界緩和をシールド電極11等で積極的には行わない。この場合もシールド電極方式と同様に、中心導体3の固体絶縁物被覆6と筒状部7との間に接触界面13がある場合(構造D:図9)、および両者の間にギャップ8を設けることで接触界面13を除した場合(構造E:図1)を検討した。
【0045】
構造Aを除くすべてのハイブリッド絶縁方式においては、いずれの場合も導体接続装置のアーム(筒状部7)を軸方向に延長することで、沿面長を任意に設定できる。
【0046】
次に、実験配置および電圧印加方法について説明する。
【0047】
図10に実験配置を示す。なお、図10(a)中のC−C線は、このC−C線を軸として回転対称にすると同軸円筒モデルと等しくなることを意味する。また、図10(b)は(a)において模擬接続装置14の付近のみを図示している。
【0048】
実際のGIS、GILは同軸円筒構造であるが、実験では平坦部直径290mmの平板電極系で実験を行い、雰囲気ガスは0.1MPa(abs.)のSF6とした。同図において、上部電極15(平坦部直径290mm)が実際のGISの接地タンク(接地容器2)、下部電極16(平坦部直径290mm)が中心導体3に相当する。下部電極16上に中心導体3の固体絶縁物被覆6を模擬したシリコンゴム17(直径300mm、厚さ5mm)を設置し、その上に直径120mm、厚さ20mmの模擬接続装置14を設置することでハイブリッド絶縁(絶縁ガスと固体絶縁物被覆とによる絶縁)を構成した。模擬接続装置14下面の中央にはロッド14a(模擬接続装置14と同一材料。後述するシールド電極11方式の場合は、SUS)がついており、これがシリコンゴム17を貫通している。したがって、この場合の全路破壊は、上部電極15と模擬接続装置14間の気中絶縁破壊、および模擬接続装置14上の沿面放電、もしくは模擬接続装置14とシリコンゴム17との接触界面における界面放電を経て、模擬接続装置14下面中央のシリコンゴム17貫通部を放電進展し、下部電極16に達することで完了する。すなわち、同軸円筒構成(図1,図2,図7,図8,図9)の場合と同じである。シリコンゴム17のうち、下部電極16との接触面には導電性塗料を塗布しており、電極とシリコンゴム17の間にボイドが生じても電界集中が生じないようにしている。また、配置の都合上、上部電極15に電圧を印加している。
【0049】
模擬接続装置14は、前述したように、固体絶縁物被覆6なし、シールド電極方式、および絶縁物シース方式の3種類を用いた。シールド電極方式および絶縁物シース方式については、図10(a)に示す模擬接続装置14と固体絶縁物被覆6(シリコンゴム17)との間に接触界面13のある場合、および同図(b)に示すように模擬接続装置14とシリコンゴム17の間にギャップ(g3=5mm)を設けることで接触界面を除した場合で実験を行った。ギャップが狭い場合はかえって電界の集中を招くことになるが、実験では模擬接続装置14の上部高電圧側電極側が気中の最大電界となるよう設定した(各配置における電界計算結果は後述する)。
【0050】
各模擬接続装置14の詳細を図11に示す。固体絶縁物被覆なし(同図(a))は、ステンレス製で鏡面仕上げを施してある。この条件は、上述の構造Aに相当する。全路破壊は上部電極15とステンレス製の模擬接続装置14間の気中破壊で完了する。シールド電極方式(同図(b))は、鏡面仕上げを施したステンレス製電極をエポキシ(固体絶縁物被覆6)でモールドしたものであり、絶縁物シース方式(同図(a))は、すべてアクリル(PMMA)である。このシールド電極方式、絶縁物シース方式は、上述のとおり、接触界面13のある場合(図10(a))、および接触界面13のない場合(図4(b))について実験を行った。これは、構造B、C(シールド方式)、および構造D、E(絶縁物シース方式)に相当する。
【0051】
上下電極間のギャップ長、各模擬接続装置14の配置は、事前に電界計算を実施し、気中の最大電界(模擬接続装置14の上面端部付近)がほぼ一致するように設定した。模擬接続装置14が絶縁物シース方式もしくはシールド電極方式で、シリコンゴム17との接触界面13が存在する場合(構造B、D)、最大電界点は模擬接続装置14、シリコンゴム17、 SF6ガスによる三重点付近となるが、実験では模擬接続装置14の上面における最大電界で整理することとした。
【0052】
実験条件を表1にまとめ、電界計算結果を図12に示す。電界計算は、電荷重畳法を用い、簡単のため接地側電極の固体絶縁物(シリコンゴム17:厚さ5mm)は考慮しないこととした。シリコンゴム17が単純な平板で厚さが薄いため電界を乱すことが無く、シリコンゴム17を考慮しない場合でも、前述の気中最大電界はほとんど変化しない(例えば、図12(a)の場合、高電圧側電極に1kV印加した時の最大電界値は、シリコンゴム17を考慮する場合0.717kV/cm、考慮しない場合で0.716kV/cm)。
【0053】
【表1】
【0054】
印加電圧は図13に示す正・負の標準雷インパルス(1.2/48μs)とし、50%スパークオーバ電圧(V50)および最低破壊電圧(V50−3σ)を推定するための電圧印加法はステップ上昇法を用いた。ステップ上昇法は、昇降法などと同様に絶縁破壊の50%電圧や最低スパークオーバ電圧の推定に用いられる電圧印加法である。本実験で使用したステップ上昇法による試験の手順は以下の通りである(図14)。
(1)予想される全路破壊電圧値の50%〜80%の電圧を印加する。
(2)全路破壊が生じない場合、一定の電圧幅ΔV(今回は平均4kV)だけ電圧を上昇させて再び電圧を印加する。
(3)(2)の操作を全路破壊が生じるまで行う。
(4)(1)〜(3)を20回繰り返す(絶縁破壊電圧の取得回数nを20とする)。
【0055】
ステップ上昇法では、絶縁破壊が生じるごとに印加電圧を開始レベルまで戻すために破壊確率の小さい低電圧における絶縁破壊を捕らえることができる。また、絶縁破壊と次の絶縁破壊までの間隔が必然的に長くなるため、前回の絶縁破壊の影響(例えば、空間の残留電荷の影響など)を避けることができるなどのメリットがある。また、今回の実験では2台のスチルカメラを用いて放電様相を観察した。
【0056】
(模擬接続装置14と放電進展様相)
観察の結果、いずれの場合も、気中ギャップ(図10(a)のg1)の絶縁破壊部分は模擬接続装置14の上面端部であった。この部分は、前述したとおり気中の最大電界部分である(接触界面13が存在する場合の三重点付近を除く)。
【0057】
接触界面13がある場合、印加電圧の極性および模擬接続装置14の材質によらず、模擬接続装置14とシリコンゴム17の接触界面13を放電が進展して全路破壊に至る場合と、三重点付近のシリコンゴム17を貫通破壊して全路破壊に至る場合があった。いずれの場合も絶縁破壊電圧に有意な差は無かった。また、一度貫通破壊を生じた供試体であっても貫通破壊した場所が選択的に破壊することは無く、その後界面放電による全路破壊を生じたり、異なる場所で貫通破壊を生じたりしたため、20回の破壊においてシリコンゴム17は交換しなかった。構造B,Dについては、接続模擬部下のシリコンゴム17に貫通破壊痕があった。後述するが、接触界面13が無い場合(構造CおよびE)は貫通破壊を生じることはなく、接触界面13がある場合の特有の現象であった。これは、三重点付近が電界の特異点となることから、気中(図10のギャップg1)の絶縁破壊によらず、この付近では界面放電もしくは貫通破壊が発生しているものと考えられる。今回の実験では、貫通破壊の場合と界面放電の場合で絶縁破壊電圧に有意な差が無かったことから、仮にシリコンゴム17よりも貫通破壊に対する絶縁耐力が高い固体絶縁物を使用しても、絶縁破壊電圧の向上は難しいと考えられる。
【0058】
模擬接続装置14がシールド電極方式で、接触界面13がない場合(構造C)、印加電圧の極性によらず、全ての場合で模擬接続装置14表面の沿面放電により全路破壊を生じていた。すなわち、模擬接続装置14とシリコンゴム17が向かい合っている部分(模擬接続装置14の下面側)においても、沿面放電はシリコンゴム17表面ではなく模擬接続装置14の表面を進展していた。これはシールド電極方式の沿面放電がいわゆる背後電極ありの沿面放電であり、放電が進展しやすいためであると考えられる。シリコンゴム17側も背後電極が存在するが、シリコンゴム17の沿面放電のためには、模擬接続装置14とシリコンゴム17間の気中ギャップ(g3)を絶縁破壊する必要があり、結果的にシールド電極方式模擬接続装置14沿面の方が進展しやすかったものと考えられる。
【0059】
模擬接続装置14が絶縁物シース方式の場合(構造E)、印加電圧の極性によらず、ほとんどの場合でシリコンゴム17表面の沿面放電により全路破壊を生じていた。模擬接続装置14の下面において、途中までは模擬接続装置14に沿って進展しても、最終的には気中ギャップ(g3)を絶縁破壊し、シリコンゴム17表面に放電が移行し沿面放電を形成していた。これはシールド電極方式の場合と異なり、模擬接続装置14中には電極が存在しないために模擬接続装置14側に放電を保持する吸引効果がなく、気中ギャップ(g3)を絶縁破壊して背後電極のあるシリコンゴム17側に放電が移行したものと考えられる。
【0060】
(50%破壊電圧および最低破壊電圧の推定)
ステップ上昇法により推定された50%スパークオーバ電圧(V50)および最低破壊電圧(V50−3σ)を表2および図15に示す。表2より、いずれの模擬接続装置14の場合でも、50%破壊電圧は正極性の方が低いことがわかる。正極性の場合、沿面放電が進展しやすいことが知られており、絶縁破壊電圧が低下しているものと考えられる。同表にはV50およびV50−3σについて、それぞれ模擬接続装置14が絶縁被覆なしの場合(構造A)の値を基準(100%)とした場合の向上率も示している。
【0061】
【表2】
【0062】
接触界面13が存在する場合(構造B,D)は、模擬接続装置14がシールド電極方式の方が絶縁物シース方式の場合よりも若干高いが、いずれも絶縁破壊電圧の向上率は小さい(絶縁物シース方式の場合、負極性のV50−3σは逆に97.1%と減少している)。シールド電極方式の方が若干高いのは、ボイドの存在が避けられない接触界面13の電界が緩和されるためと考えられるが、上述したとおり接触界面13の三重点付近に電界の特異点が存在するため、絶縁破壊電圧が向上し難いものと考えられる(今回の実験における向上率は、V50の正極性で8%、負極性で10%、V50−3σの正極性で14%、負極性で17%程度)。
【0063】
接触界面13が存在しない場合(構造C,E)には、絶縁物シース方式の方がシールド電極方式の場合よりも高い。前述の通り、シールド電極方式の場合の放電は、いわゆる背後電極ありの沿面放電であるため、放電が進展しやすく絶縁破壊電圧が向上しにくいものと考えられる(シールド電極方式の場合、今回の実験における向上率はV50の正極性で12%、負極性で15%、V50−3σの正極性で15%、負極性で25%程度)。結果的にもっとも耐電圧が向上したのは、電界の特異点となる三重点が無く、模擬接続装置14に背後電極の無い「絶縁物シース方式・接触界面13なし(構造E)」の場合であり、V50およびV50−3σともに正極性で約50%、負極性で約40%向上している。前述したとおり、この場合の放電進展は模擬接続装置14背面で気中ギャップ(g3)を絶縁破壊し、背後電極のあるシリコンゴム17の沿面放電へと移行する。この耐電圧の上昇分は背後電極の無い模擬接続装置14の沿面放電電圧と模擬接続装置14背面の気中ギャップ(g3)の絶縁破壊電圧の向上によるものと推定される。したがって、模擬接続装置14の沿面長を長くするとともに、模擬接続装置14背面のギャップ(g3)を最適化することで更なる絶縁性能の向上が期待できる(g3の拡大により、g3部分の気中破壊を抑制できれば更なる耐電圧の向上が期待できる。g3が狭すぎると電界集中を起こし、かえって絶縁性能の低下を招く可能性がある)。この接続部沿面長と接続部背面ギャップ(g3)は、ガス種・ガス圧力(気中の絶縁破壊性能)とともに相関関係があると考えられ、沿面の形状も含め、今後最適条件の検討を行う予定である。さらにこの形状の場合、シールド電極11がある場合に比べて、同じ形状における気中(接続部の表面)の最大電界を低減できるメリットがある。すなわち今回の実験の場合、表1に示すとおり模擬接続装置14の表面電界が一定になるような配置とするとき、シールド電極11がある場合(構造C)の実ギャップ長(図10のg2:高電圧側電極と接地側電極の距離)が46mmであるのに対し、シールド電極11が無い場合(構造E)は32.5mmと3割程度コンパクトである。
【0064】
以上の結果を踏まえ、実際のGIS,GIL等の同軸円筒構造に適用した場合の概念を図1,図5に示す。図1は中心導体3の接続のみの場合、図5はスペーサ部で中心導体3の接続を行う場合である。固体絶縁物被覆6−筒状部7の接触界面13がほとんど無く、現行機器と同じ差込み方式で導体3を連結できるため施工も容易である。
【0065】
以上をまとめると、次の通りである。
(1)シールド電極方式(構造B、C)は、接続部の電界を緩和できるが、模擬接続装置14が背後電極つきの固体絶縁物となるため沿面放電が進展しやすく、比較的向上率の良かった構造Cの場合でも、向上率は正極性で15%、負極性で25%程度であった。
(2)絶縁物シース方式においては、接触界面13がある場合(構造D)はほとんど耐電圧が向上しない。これは接触界面13のボイドおよび三重点の影響によるものと考えられる。接触界面13が無い場合(構造E)は、接触界面13のボイド、三重点、および背後電極の効果がないことから、実験の条件の中で最も耐電圧が向上し、正極性で50%、負極性で40%程度向上した。
【0066】
以上より、「シールド電極方式、固体絶縁物接触界面13なし(構造C)」と「絶縁物シース方式、固体絶縁物接触界面13なし(構造E)」の場合、耐電圧が向上することが確認できた。特に構造Eの場合、耐電圧が顕著に向上することが確認できた。
【実施例2】
【0067】
突部18を設けることで絶縁破壊がより一層生じ難くなることを確認するための実験を行った。実験には、図10に示す実施例1の実験と同じ装置を使用した。ただし、シリコンゴム17に代えて、厚さ5mmのアクリル板19(図19(b)参照)で固体絶縁物被覆6を模擬した。模擬接続装置14としては、絶縁物シース方式(図11(a))のものを2グループ準備し、そのうち1グループには、図19に示すように固体絶縁物被覆6を模擬したアクリル板19に臨む部分に突起18Aを模擬した突起20Aを設けた。また、固体絶縁物被覆6を模擬したアクリル板19も2グループ準備し、そのうち1グループには模擬接続装置14に臨む部分に突起18Bを模擬した突起20Bを設けた。各突起20A,20Bは2つずつ設けられており、互い違いになるように同心円状に配置した。各突起20A,20Bの高さを5mm、模擬接続装置14とアクリル板との間隔(g3)を10mm、模擬接続装置14の厚さを20mmとした。また、模擬接続装置14の直径(シース長)を120mmとした。気中ギャップg1を2.5mm、実ギャップ長g2を37.5mmとした。
【0068】
実験は、突起20Aの無い模擬接続装置14と突起20Bの無いアクリル板19との組み合わせ(バリアなし)と、突起20Aを有する模擬接続装置14と突起20Bを有するアクリル板19との組み合わせ(Wバリア)について行なった。上述の実施例1の実験では印加電圧は図13に示す正・負の標準雷インパルス(1.2/48μs)としたが、本実験では図13に示す正の標準雷インパルス(1.2/48μs)とした。また、50%スパークオーバ電圧(V50)および最低破壊電圧(V50−3σ)を推定するための電圧印加法は、上述の実施例1の実験と同じステップ上昇法を用いた。
【0069】
ステップ上昇法により推定された最低破壊電圧(V50−3σ)を表3および図20に示す。Wバリアの場合はアクリル板19が貫通破壊したたため、アクリル板19の準備枚数との関係で2回しか実験をおこなうことができなかった。しかしながら、いずれの場合も絶縁破壊電圧が228.2kVであったため、図20ではラインで示している。一方、バリアなしの場合は167.5kVであった。したがって、バリアなしの場合に対するWバリアの場合の最低破壊電圧の向上率は36%であった。この結果、突起18を設けることで絶縁破壊がより一層生じ難くなることを確認することができた。
【0070】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明のガス絶縁電力機器の導体接続装置の第1の実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明のガス絶縁電力機器の導体接続装置の第2の実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明のガス絶縁電力機器の導体接続装置の第3の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明のガス絶縁電力機器の導体接続装置の第4の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明のガス絶縁電力機器の導体接続装置の第5の実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明のガス絶縁電力機器の導体接続装置の第6の実施形態を示す断面図である。
【図7】本発明の効果を確認するために想定した第1の比較例の概念を示す断面図である。
【図8】本発明の効果を確認するために想定した第2の比較例の概念を示す断面図である。
【図9】本発明の効果を確認するために想定した第3の比較例の概念を示す断面図である。
【図10】本発明の効果を確認するための実験で使用した装置を示し、(a)は模擬接続装置と固体絶縁物被覆との間に接触界面がある場合(構造A,B,D)の図、(b)は模擬接続装置と固体絶縁物被覆との間に接触界面がない場合(構造C,E)の図である。
【図11】模擬接続装置を示し、(a)は固体絶縁物被覆なしの場合(SUSの場合と絶縁物シース方式の場合)の断面図、(b)は固体絶縁物被覆がある場合の断面図である。
【図12】各構造における電界計算結果を示し、(a)は固体絶縁物被覆なし(構造A)の場合の図、(b)はシールド電極方式・接触界面あり(構造B)の場合の図、(c)はシールド電極方式・接触界面なし(構造C)の場合の図、(d)は絶縁物シース方式・接触界面あり(構造D)の場合の図、(e)は絶縁物シース方式・接触界面なし(構造E)の場合の図である。
【図13】印加電圧波形(標準雷インパルス)を示す図である。
【図14】ステップ上昇法の概念を示す図である。
【図15】50%破壊電圧値および最低破壊電圧値を示し、(a)は正極性についての図、(b)は負極性についての図である。
【図16】本発明のガス絶縁電力機器の導体接続装置の第7の実施形態を示す断面図である。
【図17】本発明のガス絶縁電力機器の導体接続装置の第8の実施形態を示す断面図である。
【図18】本発明のガス絶縁電力機器の導体接続装置の第9の実施形態を示す断面図である。
【図19】本発明の効果を確認するための実験で使用した模擬接続装置とアクリル板を示し、(a)は模擬接続装置とアクリル板に設けられた突起の位置関係を示す平面図、(b)は模擬接続装置とアクリル板の断面図である。
【図20】50%破壊電圧値および最低破壊電圧値(正極性)を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1 絶縁ガス
2 接地容器
3 導体
4 コネクタ導体
5 固体絶縁物本体
3a 導体の端部
6 固体絶縁物被覆
6a 固体絶縁物被覆の端面の接触界面
6b 固体絶縁物被覆の外周面の筒状部に臨む部分
7 筒状部
7a 筒状部の内周面
8 ギャップ
9 絶縁コネクタ
10 絶縁スペーサ
11 シールド電極
18 突部
【技術分野】
【0001】
本発明は、接地容器内に絶縁ガスを封入すると共に導体を収容し、導体を接地容器から浮かせた状態で支持するガス絶縁電力機器の導体接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する関心が高まっており、ガス絶縁開閉装置やガス絶縁送電線路等のガス絶縁電力機器の主絶縁媒体であるSF6ガスが地球温暖化ガスとして注目されている。このため、SF6代替ガス絶縁の研究がなされている。SF6代替ガスはSF6ガスに比べて絶縁性能に劣ることから、導体を固体絶縁物で被覆することが研究されている。
【0003】
【非特許文献1】ハイブリッドガス絶縁方式の開発、[online]、[平成20年3月14日検索]、インターネット<http://criepi.denken.or.jp/jp/electric/substance/08.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、導体を固体絶縁物で被覆する場合、導体の接続部分で被覆に接触界面が生じる。ここで、固体絶縁物の被覆に接触界面が発生しないように導体の接続部分も含めて全ての部分に連続して被覆を施すことも考えられる。しかしながら、導体の熱伸縮、被覆の長期信頼性、施工性、将来のタンク(接地容器)開放の可能性等を考慮すると、導体の接続にコネクタ導体を使用することが好ましい。そのため、固体絶縁物の被覆を全ての部分で連続したものにすることは困難あり、接触界面が生じてしまうことから絶縁耐圧を十分に大きくすることが困難である。
【0005】
本発明は、絶縁耐圧を大きくすることができるガス絶縁電力機器の導体接続装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、請求項1記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置は、絶縁ガスが封入された接地容器内に収容された導体を接続するコネクタ導体の外周面を覆う固体絶縁物本体と、導体の少なくとも端部外周面を被覆する固体絶縁物被覆と、固体絶縁物本体に設けられ、固体絶縁物被覆を囲んで接地容器と固体絶縁物被覆の端面の接触界面との間の沿面長を延長させる筒状部を備え、筒状部と固体絶縁物被覆との間には、接触界面を排除するギャップが設けられているものである。
【0007】
導体に固体絶縁物被覆を施すことで、仮に、接地容器と導体との間に絶縁破壊が生じるとしたら固体絶縁物被覆の端面の接触界面に沿って絶縁破壊が生じることになる。固体絶縁物本体に筒状部を設けることで、接地容器と固体絶縁物被覆の端面の接触界面との間の沿面長を延長することができる。また、筒状部を設けることで、接地容器と固体絶縁物被覆との間よりも接地容器と筒状部との間に絶縁破壊が生じやすくなるので、固体絶縁物被覆を設ける範囲が狭まる。
【0008】
ここで、請求項2記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置のように、固体絶縁物本体が、導体の接続部分を支持する絶縁スペーサ、又は導体を接続する絶縁コネクタであることが好ましい。
【0009】
また、請求項3記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置のように、筒状部は 固体絶縁体によって成形されたシースでも良く、請求項4記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置のように、筒状部にシールド電極が埋め込まれていても良い。
【0010】
さらに、請求項5記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置は、筒状部の内周面と、固体絶縁物被覆の外周面の筒状部に臨む部分とのうち、少なくともいずれか一方に周方向に環状の突部が設けられている。したがって、接地容器と固体絶縁物被覆の端面の接触界面との間の沿面長がより一層長くなる。また、仮に接地容器と固体絶縁物被覆の端面の接触界面との間に絶縁破壊が生じるとすると、その放電が突部を乗り越えることが逆電界となる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置では、筒状部によって接地容器と固体絶縁物被覆の端面の接触界面との間の沿面長を延長することができるので、その分だけ絶縁耐圧を大きくすることができる。また、筒状部と固体絶縁物被覆との間にギャップを設けているので、筒状部と固体絶縁物被覆との間に接触界面が存在することがなく、接触界面のボイド等に起因した電界集中を防止することができ、絶縁耐圧の低下を防止することができる。したがって、ガス絶縁電力機器の大型化を招かずにSF6よりも絶縁性能に劣る絶縁ガスの使用が可能になる。また、絶縁ガスとしてSF6を使用する場合には、ガス絶縁電力機器を小型化することができる。さらに、筒状部によって沿面長を増加させているので、筒状部の長さを変えることで沿面長の増加を調節することができ、その調節が容易である。
【0012】
また、請求項2記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置では、導体の接続部分を支持する絶縁スペーサ又は導体を接続する絶縁コネクタを利用して絶縁耐圧を増加させることができる。
【0013】
また、請求項3記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置のように、筒状部は 固体絶縁体によって成形されたシースでも良く、請求項4記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置のように、筒状部にシールド電極が埋め込まれていても良い。
【0014】
さらに、請求項5記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置では、突部によって接地容器と固体絶縁物被覆の端面の接触界面との間の沿面長をより一層長くできると共に、仮に絶縁破壊が生じるとすると逆電界となる部分を作ることができるので、絶縁破壊をより一層生じ難くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1に本発明のガス絶縁電力機器の導体接続装置の実施形態の一例を示す。ガス絶縁電力機器の導体接続装置(以下、単に導体接続装置という)は、絶縁ガス1が封入された接地容器2内に収容された導体3を接続するコネクタ導体4の外周面を覆う固体絶縁物本体5と、導体3の少なくとも端部3a外周面を被覆する固体絶縁物被覆6と、固体絶縁物本体5に設けられ、固体絶縁物被覆6を囲んで接地容器2と固体絶縁物被覆6の端面の接触界面6aとの間の沿面長を延長させる筒状部7を備え、筒状部7と固体絶縁物被覆6との間には、接触界面を排除するギャップ8が設けられている。
【0017】
本実施形態の導体接続装置は、導体3の端面同士を接続する絶縁コネクタ9である。ただし、絶縁コネクタ9に限るものではなく、導体3を接続するものであれば例えば絶縁スペーサ10等にも適用可能である。
【0018】
ガス絶縁電力機器は、例えばガス絶縁開閉装置(GIS:Gas-Insulated Switchgear)、ガス絶縁送電線路(GIL:Gas-Insulated Line)等のガス絶縁電力機器である。ただし、これらに限るものではない。本実施形態では、GISを例に説明する。
【0019】
接地容器2は例えばGISの接地タンクであり、その内部には絶縁ガス1が封入されている。絶縁ガス1としては、例えばN2ガス、CO2ガス等の使用が可能である。ただし、絶縁ガス1としてはN2ガス、CO2ガスに限るものではなく、例えばSF6ガス、その他の絶縁ガスの使用が可能である。導体3はコネクタ導体4によって接続され、図示しない絶縁スペーサによって接地容器2から浮かせた状態で支持されている。コネクタ導体4としては、例えば金属接触子を用いた差し込み方式のものの使用が可能である。ただし、他の方式でも良い。
【0020】
固体絶縁物本体5は、例えばエポキシ樹脂、ポリエチレン等の固体絶縁材料から成る筒体であり、コネクタ導体4の外周面を覆っている。
【0021】
固体絶縁物被覆6は、例えばエポキシ樹脂、ポリエチレン等の固体絶縁材料から成る被覆である。本実施形態では、導体3の外周面を全長にわたり被覆している。ただし、導体3の外周面を全長にわたり被覆する必要はなく、少なくとも端部3a、即ち接地容器2と導体3との間に絶縁破壊が生じる場合において、固体絶縁物被覆6の端面の接触界面6aと筒状部7の先端との間の沿面長をL1、固体絶縁物被覆6の接触界面6aとは反対側の端と筒状部7の先端との間の沿面長をL2とした場合、L1≦L2となる範囲、又はL1>L2であってもL1とL2との差が僅かになるような範囲に固体絶縁物被覆6を設ければ足りる。即ち、導体3の全長に固体絶縁物被覆6を設けることで接地容器2と導体3との間の絶縁耐圧を導体3の全長にわたって増加させることができるが、絶縁コネクタ9を設けた場合、この部分が絶縁耐圧の小さな部位となるので、この部分の絶縁耐圧を大きくする必要がある。導体3の少なくとも端部3aに固体絶縁物被覆6を施すことで、少なくとも絶縁耐圧を大きくすべき部位について絶縁耐圧を大きくすることができる。本実施形態では、導体3の外径とコネクタ導体4の外径は同一であり、固体絶縁物被覆6の端面の接触界面6aは固体絶縁物本体5との間に形成される。
【0022】
筒状部7は固体絶縁体によって成形されたシースであり、固体絶縁物本体5と一体成形されている。即ち、固体絶縁物本体5と同じ固体絶縁材料によって成形されている。筒状部7の横断面形状は、導体3の横断面形状と相似形になっている。本実施形態の導体3の横断面形状は円形であるので、筒状部7の横断面形状も円形になっている。筒状部7は導体3と同心円状に配置されている。筒状部7は固体絶縁物本体5の両面に形成され、接続する2本の導体3の軸線方向に形成されている。
【0023】
ギャップ8は、固体絶縁物被覆6と筒状部7の間に全周にわたって設けられている。ギャップ8の距離(ギャップ長)は、固体絶縁物被覆6と筒状部7との間に電界集中が起こらない程度の距離となっている。即ち、ギャップ長が短いと、固体絶縁物被覆6と筒状部7との間に電界の集中を引き起こすので、この電界集中を実質的に影響のない程度まで抑えることができる距離L3のギャップ8が設けられている。なお、ギャップ長は距離L3以上であれば良いが、ギャップ長を増加させると、筒状部7と接地容器2との距離が短くなることから絶縁耐圧が減少する。このため、接地容器2との距離を考慮してギャップ長を決定することが好ましい。なお、適切なギャップ長は、筒状部7の長さ、電圧、絶縁ガス1の種類・濃度・圧力等によって変化するので、例えば実験や計算等を行って適宜決定することが好ましい。ギャップ長の一例としては、例えば5mmである。ただし、5mmに限るものではない。
【0024】
次に、導体接続装置の作用について説明する。
【0025】
導体3に固体絶縁物被覆6を施すことで、接地容器2と導体3との間の絶縁耐圧を増加させることができる。この場合、固体絶縁物被覆6の端面の接触界面6aが発生しないように導体3の接続部分も含めて全ての部分に連続した固体絶縁物被覆6を施すことも考えられる。しかしながら、導体3の熱伸縮、固体絶縁物被覆6の長期信頼性、施工性、将来のタンク(接地容器2)開放の可能性等を考慮すると、導体3の接続にコネクタ導体4を使用することが好ましい。そのため、固体絶縁物被覆6を全ての部分で連続したものにすることは困難あり、接触界面6aが発生する。接触界面6aが発生する場合、絶縁破壊は接触界面6aを介して生じる可能性が高く、したがって、この部分での絶縁耐圧を大きくする必要がある。
【0026】
本発明の導体接続装置によって接触界面6aを介して生じる絶縁破壊に対して絶縁耐圧を大きくすることができる。即ち、筒状部7を設けることで、接地容器2と接触界面6aとの間に生じる放電の沿面長が増加するので、その分だけ絶縁耐圧を向上させることができる。また、筒状部7と固体絶縁物被覆6との間にギャップ8が設けられており、筒状部7と固体絶縁物被覆6との間に接触界面が存在することがないので、接触界面のボイド等に起因した電界集中を防止することができ、絶縁耐圧の低下を防止することができる。
【0027】
また、筒状部7の長さを変えることで沿面長の増加を調節することができるので、絶縁耐圧の大きさ調節が容易である。
【0028】
このように本発明の導体接続装置の使用によって絶縁耐圧を大きくすることができるので、絶縁ガス1として、SF6ガスよりも絶縁能力に劣るN2ガス、CO2ガス等の使用が可能になる。即ち、絶縁ガス1としてN2ガス、CO2ガス等を使用する場合には、SF6ガスを使用する場合に比べて圧力を高くする必要がある。例えば、0.5MPa(平均値)のSF6ガスと同等の絶縁耐力を得るためには、N2ガス、CO2ガスの圧力を2.0MPaまで上昇させる必要がある。ガス圧の増加により、接地容器2等の耐圧性を高めることが必要となり、GISが実用的なものではなくなる。あるいは、接地容器2と導体3との距離を延長させる必要があり、GISが大型化して実用的なものではなくなる。
【0029】
しかしながら、導体3に固体絶縁物被覆6を施し、本発明の導体接続装置を使用することで、絶縁耐圧を増加させることができるので、N2ガス、CO2ガスを使用する場合であってもGISを実用的なものにすることができる。逆に、同じ絶縁ガス1を使用する場合には、接地容器2を小型化することができ、GISをよりコンパクトにすることができる。
【0030】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、筒状部7にシールド電極11を埋め込んでも良い。この場合の例を図2に示す。
【0031】
また、上述の説明では、導体3の外径とコネクタ導体4の外径を同一にしていたが、例えば図3に示すように、導体3の外径よりもコネクタ導体4の外径を小さくしても良い。また、図4に示すように、固体絶縁物被覆6の外径とコネクタ導体4の外径を同一にしても良い。
【0032】
また、上述の説明では、導体接続装置を絶縁コネクタ9に適用していたが、適用可能なものとしては絶縁コネクタ9に限るものではなく、例えば絶縁スペーサ10等にも適用可能である。図5に絶縁スペーサ10に適用した例を示す。なお、この場合にも筒状部7にシールド電極11を埋め込んでも良い。
【0033】
また、図6に示すように、筒状部7の近傍の固体絶縁物被覆6の外周面に沿面長を延長させる障害部材12を設けても良い。この場合には上述のL2の沿面長をかせぐことができるので、固体絶縁物被覆6を導体3の全長にわたって設けない場合に、固体絶縁物被覆6を設ける範囲を狭くすることができる。
【0034】
さらに、筒状部7の内周面7aと、固体絶縁物被覆6の外周面の筒状部7に臨む部分6bとのうち、少なくともいずれか一方に周方向に環状の突部18を設けても良い。筒状部7の内周面7aと固体絶縁物被覆6の部分6bの両方に突部18を設けた実施形態を図16に示す。筒状部7側の突部18(以下、固体絶縁物被覆6側の突部18と区別する場合には突部18Aという)と固体絶縁物被覆6側の突部18(以下、筒状部7側の突部18Aと区別する場合には突部18Bという)は、導体3の軸線方向にずらして互い違いになるようにすることが好ましい。ただし、必ずしも突部18Aと突部18Bを互い違いにしなくても良い。本実施形態では、例えば4つの突部18Aと4つの突部18Bを互い違いに設けている。ただし、突部18A,18Bの数は4つに限るものではなく、その他の個数でも良い。各突部18A,18Bの横断面形状は例えば半円形状を成している。ただし、必ずしも突部18A,18Bの横断面形状は半円形状に限るものではなく、他の形状でも良いが、角のない形状であることが好ましい。角部分が電界の特異点になるのを防止するためである。本実施形態では、筒状部7側の突部18Aは一つ一つ独立しており、固体絶縁物被覆6側の突部18Bは一体化されている。ただし、筒状部7側の突部18Aを一体化させても良く、固体絶縁物被覆6側の突部18Bを一つ一つ独立させても良い。突部18A,18Bは、例えばエポキシ樹脂、ポリエチレン等の固体絶縁材料で形成されている。本実施形態では突部18Aを筒状部7と別に形成し、突部18Bを固体絶縁物被覆6と別に形成しているが、突部18Aを筒状部7と一体成形し、突部18Bを固体絶縁物被覆6と一体成形しても良い。突部18Aは筒状部7対して、突部18B固体絶縁物被覆6に対して例えば接着剤によって固着されている。また、本実施形態では、突部18Aの内径と突部18Bの外径を同一にしている。ただし、突部18Aの内径を突部18Bの外径よりも大きくしても良いし、突部18Aの内径を突部18Bの外径よりも小さくしても良い。
【0035】
突部18Aを設けることで、筒状部7の内周面を伝わる接地容器2と接触界面6aとの間の沿面長がより一層長くなり、突部18Bを設けることで、固体絶縁物被覆6の外周面を伝わる接地容器2と接触界面6aとの間の沿面長がより一層長くなる。また、仮に接地容器2と接触界面6aとの間に絶縁破壊が生じるとすると、その放電が筒状部7の内周面に沿う場合には突部18Aを乗り越えることが逆電界となり、固体絶縁物被覆6の外周面に沿う場合には突部18Bを乗り越えることが逆電界となる。これらのため、接地容器2と接触界面6aとの間の絶縁破壊をより一層生じ難くすることができる。
【0036】
なお、上述の説明では、横断面形状が半円形状の突部18を複数設けていたが、例えば図17に示すように、傾斜面18cを有する突部18を設けても良い。本実施形態では、筒状部7側の突部18Aと固体絶縁物被覆6側の突部18Bの両方を傾斜面18cを有する突部にしている。ただし、突部18Aと突部18Bの両方を傾斜面18cを有するものにする必要はなく、例えば図18に示すように、固体絶縁物被覆6側の突部18Bのみを傾斜面18cを有するものにしても良く、逆に筒状部7側の突部18Aのみを傾斜面18cを有するものにしても良い。突部18が傾斜面18cを有するものの場合にも、接地容器2と接触界面6aとの間の沿面長をより一層長くできると共に、仮に絶縁破壊が生じるとすると逆電界となる部分を作ることができるので、絶縁破壊をより一層生じ難くすることができる。
【0037】
また、上述の説明では、筒状部7の内周面7aと固体絶縁物被覆6の部分6bの両方に突部18を設けていたが、必ずしも両方に設ける必要はなく、いずれか一方にのみ突部18を設けるようにしても良い。即ち、筒状部7の内周面7aと固体絶縁物被覆6の部分6bの両方に突部18を設けることで、絶縁破壊が生じる経路が筒状部7の内周面に沿う場合と固体絶縁物被覆6の外周面に沿う場合のいずれであっても絶縁破壊をより一層生じ難くすることができるが、絶縁破壊が生じる経路が上記2つの経路のうちいずれか一方であることが予測できる場合等には予測できる経路にのみ突部18を設けるようにしても良い。例えば、GISやGIL等のガス絶縁電力機器では導体3から接地容器2に向けて絶縁破壊が生じると予測できるので、ギャップ8が大きく、導体3から生じた絶縁破壊が接続界面6aから固体絶縁物本体5の側面に沿って筒状部7の内周面に伝わり、筒状部7の先端から接地容器2へと伝わることが予測できる場合等には筒状部7側の突部18Aのみを設けても良い。
【実施例1】
【0038】
本発明の導体接続装置の使用によって絶縁耐圧即ち耐電圧を増加させることができることを確認するための実験を行った。
【0039】
導体接続装置の検討を行うにあたって、以下の2つのコンセプトを考えた。
(i)接続部の沿面長の増加
(ii)接触界面6aの電界集中の緩和
沿面放電を考えるとき、沿面長の増加に比例するほどには耐電圧は増加しないが、沿面長の増加は確実に耐電圧の増加につながる。したがって、GISまたはGILの接続箇所において、できる限り(または合理的に)沿面放電に対する沿面長を増加できるようにした(沿面長を適用箇所に応じて任意に設定できる)。
【0040】
電界の集中する場所は放電の起点となる。したがって、耐電圧の上昇のためには、極力電界集中を避ける必要がある。導体3の接続部分で固体絶縁物被覆6同士が接続される場合、固体絶縁物被覆6の端面の接触界面6aには微小ギャップ(ボイド)の存在が避けられず、この微小ギャップは電界の集中を引き起こす。また、左右から接続する場合、接続部の表面を完全に平坦とすることは困難である。たとえ微小であっても段差があれば、電界の集中を引き起こすことになり、電気的な弱点となる。
【0041】
以上の点を考慮し、実験では以下の5つのパターンを検討した。実際の実験配置は後述するように、簡単のために平行平板電極系で行ったが、ここでは実機におけるハイブリッド絶縁方式(導体3を絶縁ガス1と固体絶縁物被覆6とで絶縁する方式)の接続について理解を容易にするために、各コンセプトを同軸円筒モデルで示す。
【0042】
(1)固体絶縁物被覆6なし(構造A)
コネクタ導体4について固体絶縁物被覆6なしの場合を図7に示す。本方式はハイブリッド絶縁方式ではなく、単純な気中絶縁方式である。今回の実験の中で、ハイブリッド絶縁方式による絶縁耐力の向上率を比較するための基準として設定した。
【0043】
(2)シールド電極方式(構造B,C)
シールド電極方式を用いた接続装置を図8および図2に示す。本方式は導体接続装置内部にシールド電極11を埋め込むことで、固体絶縁物被覆6の接続部側の電界を緩和する方式である。本方式では、導体3(中心導体)の固体絶縁物被覆6と筒状部7との間に接触界面13がある場合(構造B:図8)、および両者の間にギャップ8を設けることで接触界面13を除した場合(構造C:図2)を検討した。
【0044】
(3)絶縁物シース方式(構造D,E)
絶縁物シース方式を用いた接続装置を図9および図1に示す。本方式は導体接続装置のうち、中心導体3を電気的に接続する部分以外はすべて樹脂である。すなわち、固体の接触界面13の電界緩和をシールド電極11等で積極的には行わない。この場合もシールド電極方式と同様に、中心導体3の固体絶縁物被覆6と筒状部7との間に接触界面13がある場合(構造D:図9)、および両者の間にギャップ8を設けることで接触界面13を除した場合(構造E:図1)を検討した。
【0045】
構造Aを除くすべてのハイブリッド絶縁方式においては、いずれの場合も導体接続装置のアーム(筒状部7)を軸方向に延長することで、沿面長を任意に設定できる。
【0046】
次に、実験配置および電圧印加方法について説明する。
【0047】
図10に実験配置を示す。なお、図10(a)中のC−C線は、このC−C線を軸として回転対称にすると同軸円筒モデルと等しくなることを意味する。また、図10(b)は(a)において模擬接続装置14の付近のみを図示している。
【0048】
実際のGIS、GILは同軸円筒構造であるが、実験では平坦部直径290mmの平板電極系で実験を行い、雰囲気ガスは0.1MPa(abs.)のSF6とした。同図において、上部電極15(平坦部直径290mm)が実際のGISの接地タンク(接地容器2)、下部電極16(平坦部直径290mm)が中心導体3に相当する。下部電極16上に中心導体3の固体絶縁物被覆6を模擬したシリコンゴム17(直径300mm、厚さ5mm)を設置し、その上に直径120mm、厚さ20mmの模擬接続装置14を設置することでハイブリッド絶縁(絶縁ガスと固体絶縁物被覆とによる絶縁)を構成した。模擬接続装置14下面の中央にはロッド14a(模擬接続装置14と同一材料。後述するシールド電極11方式の場合は、SUS)がついており、これがシリコンゴム17を貫通している。したがって、この場合の全路破壊は、上部電極15と模擬接続装置14間の気中絶縁破壊、および模擬接続装置14上の沿面放電、もしくは模擬接続装置14とシリコンゴム17との接触界面における界面放電を経て、模擬接続装置14下面中央のシリコンゴム17貫通部を放電進展し、下部電極16に達することで完了する。すなわち、同軸円筒構成(図1,図2,図7,図8,図9)の場合と同じである。シリコンゴム17のうち、下部電極16との接触面には導電性塗料を塗布しており、電極とシリコンゴム17の間にボイドが生じても電界集中が生じないようにしている。また、配置の都合上、上部電極15に電圧を印加している。
【0049】
模擬接続装置14は、前述したように、固体絶縁物被覆6なし、シールド電極方式、および絶縁物シース方式の3種類を用いた。シールド電極方式および絶縁物シース方式については、図10(a)に示す模擬接続装置14と固体絶縁物被覆6(シリコンゴム17)との間に接触界面13のある場合、および同図(b)に示すように模擬接続装置14とシリコンゴム17の間にギャップ(g3=5mm)を設けることで接触界面を除した場合で実験を行った。ギャップが狭い場合はかえって電界の集中を招くことになるが、実験では模擬接続装置14の上部高電圧側電極側が気中の最大電界となるよう設定した(各配置における電界計算結果は後述する)。
【0050】
各模擬接続装置14の詳細を図11に示す。固体絶縁物被覆なし(同図(a))は、ステンレス製で鏡面仕上げを施してある。この条件は、上述の構造Aに相当する。全路破壊は上部電極15とステンレス製の模擬接続装置14間の気中破壊で完了する。シールド電極方式(同図(b))は、鏡面仕上げを施したステンレス製電極をエポキシ(固体絶縁物被覆6)でモールドしたものであり、絶縁物シース方式(同図(a))は、すべてアクリル(PMMA)である。このシールド電極方式、絶縁物シース方式は、上述のとおり、接触界面13のある場合(図10(a))、および接触界面13のない場合(図4(b))について実験を行った。これは、構造B、C(シールド方式)、および構造D、E(絶縁物シース方式)に相当する。
【0051】
上下電極間のギャップ長、各模擬接続装置14の配置は、事前に電界計算を実施し、気中の最大電界(模擬接続装置14の上面端部付近)がほぼ一致するように設定した。模擬接続装置14が絶縁物シース方式もしくはシールド電極方式で、シリコンゴム17との接触界面13が存在する場合(構造B、D)、最大電界点は模擬接続装置14、シリコンゴム17、 SF6ガスによる三重点付近となるが、実験では模擬接続装置14の上面における最大電界で整理することとした。
【0052】
実験条件を表1にまとめ、電界計算結果を図12に示す。電界計算は、電荷重畳法を用い、簡単のため接地側電極の固体絶縁物(シリコンゴム17:厚さ5mm)は考慮しないこととした。シリコンゴム17が単純な平板で厚さが薄いため電界を乱すことが無く、シリコンゴム17を考慮しない場合でも、前述の気中最大電界はほとんど変化しない(例えば、図12(a)の場合、高電圧側電極に1kV印加した時の最大電界値は、シリコンゴム17を考慮する場合0.717kV/cm、考慮しない場合で0.716kV/cm)。
【0053】
【表1】
【0054】
印加電圧は図13に示す正・負の標準雷インパルス(1.2/48μs)とし、50%スパークオーバ電圧(V50)および最低破壊電圧(V50−3σ)を推定するための電圧印加法はステップ上昇法を用いた。ステップ上昇法は、昇降法などと同様に絶縁破壊の50%電圧や最低スパークオーバ電圧の推定に用いられる電圧印加法である。本実験で使用したステップ上昇法による試験の手順は以下の通りである(図14)。
(1)予想される全路破壊電圧値の50%〜80%の電圧を印加する。
(2)全路破壊が生じない場合、一定の電圧幅ΔV(今回は平均4kV)だけ電圧を上昇させて再び電圧を印加する。
(3)(2)の操作を全路破壊が生じるまで行う。
(4)(1)〜(3)を20回繰り返す(絶縁破壊電圧の取得回数nを20とする)。
【0055】
ステップ上昇法では、絶縁破壊が生じるごとに印加電圧を開始レベルまで戻すために破壊確率の小さい低電圧における絶縁破壊を捕らえることができる。また、絶縁破壊と次の絶縁破壊までの間隔が必然的に長くなるため、前回の絶縁破壊の影響(例えば、空間の残留電荷の影響など)を避けることができるなどのメリットがある。また、今回の実験では2台のスチルカメラを用いて放電様相を観察した。
【0056】
(模擬接続装置14と放電進展様相)
観察の結果、いずれの場合も、気中ギャップ(図10(a)のg1)の絶縁破壊部分は模擬接続装置14の上面端部であった。この部分は、前述したとおり気中の最大電界部分である(接触界面13が存在する場合の三重点付近を除く)。
【0057】
接触界面13がある場合、印加電圧の極性および模擬接続装置14の材質によらず、模擬接続装置14とシリコンゴム17の接触界面13を放電が進展して全路破壊に至る場合と、三重点付近のシリコンゴム17を貫通破壊して全路破壊に至る場合があった。いずれの場合も絶縁破壊電圧に有意な差は無かった。また、一度貫通破壊を生じた供試体であっても貫通破壊した場所が選択的に破壊することは無く、その後界面放電による全路破壊を生じたり、異なる場所で貫通破壊を生じたりしたため、20回の破壊においてシリコンゴム17は交換しなかった。構造B,Dについては、接続模擬部下のシリコンゴム17に貫通破壊痕があった。後述するが、接触界面13が無い場合(構造CおよびE)は貫通破壊を生じることはなく、接触界面13がある場合の特有の現象であった。これは、三重点付近が電界の特異点となることから、気中(図10のギャップg1)の絶縁破壊によらず、この付近では界面放電もしくは貫通破壊が発生しているものと考えられる。今回の実験では、貫通破壊の場合と界面放電の場合で絶縁破壊電圧に有意な差が無かったことから、仮にシリコンゴム17よりも貫通破壊に対する絶縁耐力が高い固体絶縁物を使用しても、絶縁破壊電圧の向上は難しいと考えられる。
【0058】
模擬接続装置14がシールド電極方式で、接触界面13がない場合(構造C)、印加電圧の極性によらず、全ての場合で模擬接続装置14表面の沿面放電により全路破壊を生じていた。すなわち、模擬接続装置14とシリコンゴム17が向かい合っている部分(模擬接続装置14の下面側)においても、沿面放電はシリコンゴム17表面ではなく模擬接続装置14の表面を進展していた。これはシールド電極方式の沿面放電がいわゆる背後電極ありの沿面放電であり、放電が進展しやすいためであると考えられる。シリコンゴム17側も背後電極が存在するが、シリコンゴム17の沿面放電のためには、模擬接続装置14とシリコンゴム17間の気中ギャップ(g3)を絶縁破壊する必要があり、結果的にシールド電極方式模擬接続装置14沿面の方が進展しやすかったものと考えられる。
【0059】
模擬接続装置14が絶縁物シース方式の場合(構造E)、印加電圧の極性によらず、ほとんどの場合でシリコンゴム17表面の沿面放電により全路破壊を生じていた。模擬接続装置14の下面において、途中までは模擬接続装置14に沿って進展しても、最終的には気中ギャップ(g3)を絶縁破壊し、シリコンゴム17表面に放電が移行し沿面放電を形成していた。これはシールド電極方式の場合と異なり、模擬接続装置14中には電極が存在しないために模擬接続装置14側に放電を保持する吸引効果がなく、気中ギャップ(g3)を絶縁破壊して背後電極のあるシリコンゴム17側に放電が移行したものと考えられる。
【0060】
(50%破壊電圧および最低破壊電圧の推定)
ステップ上昇法により推定された50%スパークオーバ電圧(V50)および最低破壊電圧(V50−3σ)を表2および図15に示す。表2より、いずれの模擬接続装置14の場合でも、50%破壊電圧は正極性の方が低いことがわかる。正極性の場合、沿面放電が進展しやすいことが知られており、絶縁破壊電圧が低下しているものと考えられる。同表にはV50およびV50−3σについて、それぞれ模擬接続装置14が絶縁被覆なしの場合(構造A)の値を基準(100%)とした場合の向上率も示している。
【0061】
【表2】
【0062】
接触界面13が存在する場合(構造B,D)は、模擬接続装置14がシールド電極方式の方が絶縁物シース方式の場合よりも若干高いが、いずれも絶縁破壊電圧の向上率は小さい(絶縁物シース方式の場合、負極性のV50−3σは逆に97.1%と減少している)。シールド電極方式の方が若干高いのは、ボイドの存在が避けられない接触界面13の電界が緩和されるためと考えられるが、上述したとおり接触界面13の三重点付近に電界の特異点が存在するため、絶縁破壊電圧が向上し難いものと考えられる(今回の実験における向上率は、V50の正極性で8%、負極性で10%、V50−3σの正極性で14%、負極性で17%程度)。
【0063】
接触界面13が存在しない場合(構造C,E)には、絶縁物シース方式の方がシールド電極方式の場合よりも高い。前述の通り、シールド電極方式の場合の放電は、いわゆる背後電極ありの沿面放電であるため、放電が進展しやすく絶縁破壊電圧が向上しにくいものと考えられる(シールド電極方式の場合、今回の実験における向上率はV50の正極性で12%、負極性で15%、V50−3σの正極性で15%、負極性で25%程度)。結果的にもっとも耐電圧が向上したのは、電界の特異点となる三重点が無く、模擬接続装置14に背後電極の無い「絶縁物シース方式・接触界面13なし(構造E)」の場合であり、V50およびV50−3σともに正極性で約50%、負極性で約40%向上している。前述したとおり、この場合の放電進展は模擬接続装置14背面で気中ギャップ(g3)を絶縁破壊し、背後電極のあるシリコンゴム17の沿面放電へと移行する。この耐電圧の上昇分は背後電極の無い模擬接続装置14の沿面放電電圧と模擬接続装置14背面の気中ギャップ(g3)の絶縁破壊電圧の向上によるものと推定される。したがって、模擬接続装置14の沿面長を長くするとともに、模擬接続装置14背面のギャップ(g3)を最適化することで更なる絶縁性能の向上が期待できる(g3の拡大により、g3部分の気中破壊を抑制できれば更なる耐電圧の向上が期待できる。g3が狭すぎると電界集中を起こし、かえって絶縁性能の低下を招く可能性がある)。この接続部沿面長と接続部背面ギャップ(g3)は、ガス種・ガス圧力(気中の絶縁破壊性能)とともに相関関係があると考えられ、沿面の形状も含め、今後最適条件の検討を行う予定である。さらにこの形状の場合、シールド電極11がある場合に比べて、同じ形状における気中(接続部の表面)の最大電界を低減できるメリットがある。すなわち今回の実験の場合、表1に示すとおり模擬接続装置14の表面電界が一定になるような配置とするとき、シールド電極11がある場合(構造C)の実ギャップ長(図10のg2:高電圧側電極と接地側電極の距離)が46mmであるのに対し、シールド電極11が無い場合(構造E)は32.5mmと3割程度コンパクトである。
【0064】
以上の結果を踏まえ、実際のGIS,GIL等の同軸円筒構造に適用した場合の概念を図1,図5に示す。図1は中心導体3の接続のみの場合、図5はスペーサ部で中心導体3の接続を行う場合である。固体絶縁物被覆6−筒状部7の接触界面13がほとんど無く、現行機器と同じ差込み方式で導体3を連結できるため施工も容易である。
【0065】
以上をまとめると、次の通りである。
(1)シールド電極方式(構造B、C)は、接続部の電界を緩和できるが、模擬接続装置14が背後電極つきの固体絶縁物となるため沿面放電が進展しやすく、比較的向上率の良かった構造Cの場合でも、向上率は正極性で15%、負極性で25%程度であった。
(2)絶縁物シース方式においては、接触界面13がある場合(構造D)はほとんど耐電圧が向上しない。これは接触界面13のボイドおよび三重点の影響によるものと考えられる。接触界面13が無い場合(構造E)は、接触界面13のボイド、三重点、および背後電極の効果がないことから、実験の条件の中で最も耐電圧が向上し、正極性で50%、負極性で40%程度向上した。
【0066】
以上より、「シールド電極方式、固体絶縁物接触界面13なし(構造C)」と「絶縁物シース方式、固体絶縁物接触界面13なし(構造E)」の場合、耐電圧が向上することが確認できた。特に構造Eの場合、耐電圧が顕著に向上することが確認できた。
【実施例2】
【0067】
突部18を設けることで絶縁破壊がより一層生じ難くなることを確認するための実験を行った。実験には、図10に示す実施例1の実験と同じ装置を使用した。ただし、シリコンゴム17に代えて、厚さ5mmのアクリル板19(図19(b)参照)で固体絶縁物被覆6を模擬した。模擬接続装置14としては、絶縁物シース方式(図11(a))のものを2グループ準備し、そのうち1グループには、図19に示すように固体絶縁物被覆6を模擬したアクリル板19に臨む部分に突起18Aを模擬した突起20Aを設けた。また、固体絶縁物被覆6を模擬したアクリル板19も2グループ準備し、そのうち1グループには模擬接続装置14に臨む部分に突起18Bを模擬した突起20Bを設けた。各突起20A,20Bは2つずつ設けられており、互い違いになるように同心円状に配置した。各突起20A,20Bの高さを5mm、模擬接続装置14とアクリル板との間隔(g3)を10mm、模擬接続装置14の厚さを20mmとした。また、模擬接続装置14の直径(シース長)を120mmとした。気中ギャップg1を2.5mm、実ギャップ長g2を37.5mmとした。
【0068】
実験は、突起20Aの無い模擬接続装置14と突起20Bの無いアクリル板19との組み合わせ(バリアなし)と、突起20Aを有する模擬接続装置14と突起20Bを有するアクリル板19との組み合わせ(Wバリア)について行なった。上述の実施例1の実験では印加電圧は図13に示す正・負の標準雷インパルス(1.2/48μs)としたが、本実験では図13に示す正の標準雷インパルス(1.2/48μs)とした。また、50%スパークオーバ電圧(V50)および最低破壊電圧(V50−3σ)を推定するための電圧印加法は、上述の実施例1の実験と同じステップ上昇法を用いた。
【0069】
ステップ上昇法により推定された最低破壊電圧(V50−3σ)を表3および図20に示す。Wバリアの場合はアクリル板19が貫通破壊したたため、アクリル板19の準備枚数との関係で2回しか実験をおこなうことができなかった。しかしながら、いずれの場合も絶縁破壊電圧が228.2kVであったため、図20ではラインで示している。一方、バリアなしの場合は167.5kVであった。したがって、バリアなしの場合に対するWバリアの場合の最低破壊電圧の向上率は36%であった。この結果、突起18を設けることで絶縁破壊がより一層生じ難くなることを確認することができた。
【0070】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明のガス絶縁電力機器の導体接続装置の第1の実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明のガス絶縁電力機器の導体接続装置の第2の実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明のガス絶縁電力機器の導体接続装置の第3の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明のガス絶縁電力機器の導体接続装置の第4の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明のガス絶縁電力機器の導体接続装置の第5の実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明のガス絶縁電力機器の導体接続装置の第6の実施形態を示す断面図である。
【図7】本発明の効果を確認するために想定した第1の比較例の概念を示す断面図である。
【図8】本発明の効果を確認するために想定した第2の比較例の概念を示す断面図である。
【図9】本発明の効果を確認するために想定した第3の比較例の概念を示す断面図である。
【図10】本発明の効果を確認するための実験で使用した装置を示し、(a)は模擬接続装置と固体絶縁物被覆との間に接触界面がある場合(構造A,B,D)の図、(b)は模擬接続装置と固体絶縁物被覆との間に接触界面がない場合(構造C,E)の図である。
【図11】模擬接続装置を示し、(a)は固体絶縁物被覆なしの場合(SUSの場合と絶縁物シース方式の場合)の断面図、(b)は固体絶縁物被覆がある場合の断面図である。
【図12】各構造における電界計算結果を示し、(a)は固体絶縁物被覆なし(構造A)の場合の図、(b)はシールド電極方式・接触界面あり(構造B)の場合の図、(c)はシールド電極方式・接触界面なし(構造C)の場合の図、(d)は絶縁物シース方式・接触界面あり(構造D)の場合の図、(e)は絶縁物シース方式・接触界面なし(構造E)の場合の図である。
【図13】印加電圧波形(標準雷インパルス)を示す図である。
【図14】ステップ上昇法の概念を示す図である。
【図15】50%破壊電圧値および最低破壊電圧値を示し、(a)は正極性についての図、(b)は負極性についての図である。
【図16】本発明のガス絶縁電力機器の導体接続装置の第7の実施形態を示す断面図である。
【図17】本発明のガス絶縁電力機器の導体接続装置の第8の実施形態を示す断面図である。
【図18】本発明のガス絶縁電力機器の導体接続装置の第9の実施形態を示す断面図である。
【図19】本発明の効果を確認するための実験で使用した模擬接続装置とアクリル板を示し、(a)は模擬接続装置とアクリル板に設けられた突起の位置関係を示す平面図、(b)は模擬接続装置とアクリル板の断面図である。
【図20】50%破壊電圧値および最低破壊電圧値(正極性)を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1 絶縁ガス
2 接地容器
3 導体
4 コネクタ導体
5 固体絶縁物本体
3a 導体の端部
6 固体絶縁物被覆
6a 固体絶縁物被覆の端面の接触界面
6b 固体絶縁物被覆の外周面の筒状部に臨む部分
7 筒状部
7a 筒状部の内周面
8 ギャップ
9 絶縁コネクタ
10 絶縁スペーサ
11 シールド電極
18 突部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ガスが封入された接地容器内に収容された導体を接続するコネクタ導体の外周面を覆う固体絶縁物本体と、前記導体の少なくとも端部外周面を被覆する固体絶縁物被覆と、前記固体絶縁物本体に設けられ、前記固体絶縁物被覆を囲んで前記接地容器と前記固体絶縁物被覆の端面の接触界面との間の沿面長を延長させる筒状部を備え、前記筒状部と前記固体絶縁物被覆との間には接触界面を排除するギャップが設けられていることを特徴とするガス絶縁電力機器の導体接続装置。
【請求項2】
前記固体絶縁物本体は、前記導体の接続部分を支持する絶縁スペーサ、又は前記導体を接続する絶縁コネクタであることを特徴とする請求項1記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置。
【請求項3】
前記筒状部は 固体絶縁体によって成形されたシースであることを特徴とする請求項1記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置。
【請求項4】
前記筒状部にはシールド電極が埋め込まれていることを特徴とする請求項1記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置。
【請求項5】
前記筒状部の内周面と、前記固体絶縁物被覆の外周面の前記筒状部に臨む部分とのうち、少なくともいずれか一方に周方向に環状の突部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置。
【請求項1】
絶縁ガスが封入された接地容器内に収容された導体を接続するコネクタ導体の外周面を覆う固体絶縁物本体と、前記導体の少なくとも端部外周面を被覆する固体絶縁物被覆と、前記固体絶縁物本体に設けられ、前記固体絶縁物被覆を囲んで前記接地容器と前記固体絶縁物被覆の端面の接触界面との間の沿面長を延長させる筒状部を備え、前記筒状部と前記固体絶縁物被覆との間には接触界面を排除するギャップが設けられていることを特徴とするガス絶縁電力機器の導体接続装置。
【請求項2】
前記固体絶縁物本体は、前記導体の接続部分を支持する絶縁スペーサ、又は前記導体を接続する絶縁コネクタであることを特徴とする請求項1記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置。
【請求項3】
前記筒状部は 固体絶縁体によって成形されたシースであることを特徴とする請求項1記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置。
【請求項4】
前記筒状部にはシールド電極が埋め込まれていることを特徴とする請求項1記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置。
【請求項5】
前記筒状部の内周面と、前記固体絶縁物被覆の外周面の前記筒状部に臨む部分とのうち、少なくともいずれか一方に周方向に環状の突部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のガス絶縁電力機器の導体接続装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図12】
【公開番号】特開2009−261215(P2009−261215A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236038(P2008−236038)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年3月19日 社団法人電気学会発行の「平成20年電気学会全国大会講演論文集 第6分冊 電力システム」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年7月 財団法人電力中央研究所発行の「電力中央研究所報告 研究報告:H07019」に発表
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年3月19日 社団法人電気学会発行の「平成20年電気学会全国大会講演論文集 第6分冊 電力システム」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年7月 財団法人電力中央研究所発行の「電力中央研究所報告 研究報告:H07019」に発表
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
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