説明

ガス腐食試験装置

【課題】この発明は、試験槽内の壁面に結露を生じることなく温湿度サイクル試験を行いながらガス腐食試験を行うことができ、試験槽内のガス濃度の安定性および試験結果の再現性を向上することができ、常にガス濃度を管理されているガス雰囲気下で温湿度サイクル試験を行うことができるガス腐食試験装置を実現することを目的とする。
【解決手段】この発明は、ガス腐食試験機において、試験槽の壁面に結露を発生させないようにする温度と、湿度と、腐食ガスの濃度との設定値を各々少なくとも1つの条件で設定し、設定した条件の試験を1回または複数回組合せて所定の温度移行時間ごとに繰り返す温湿度サイクル試験を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス腐食試験装置に係わり、特に、温湿度サイクル試験が可能で単一または複数混合のガス試験におけるガス濃度を自動で調整できるガス腐食試験装置に関する。
【0002】
電子部品、めっき製品、その他製品の耐ガス腐食性の試験を行う腐食試験装置には、試験槽内に設置した試料に2種類以上の腐食ガスを接触させて前記試料の腐食試験を行うガス腐食試験装置(特許文献1)がある。
【0003】
ガス腐食試験装置では、結露が発生すると、発生した結露水にガスが溶解し、ガス濃度が安定しないという問題があり、これを解決するために、ガス腐食試験で使用される腐食ガスの水分を除去するガス腐食試験機(特許文献2)、試験槽に連絡する空気の経路に対して他方の経路に加湿槽を介装し、両経路を混合・切換えて試験槽に連通することで試験槽の温度を調整する環境試験装置の湿度調整装置(特許文献3)がある。
【0004】
また、試験槽外側を覆う含水性材質に温度調整された液体を注液し、試験槽内温度を調整する環境試験槽(特許文献4)、試料に水を噴射しながら結露センサの出力で調湿装置により試験槽内の湿度を調整し、試料に一定粒径の結露を生じさせる耐候性試験装置(特許文献5)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3108729号
【特許文献2】特許第2990167号
【特許文献3】特許第2990170号
【特許文献4】特許第2975601号
【特許文献5】特許第2942444号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のガス腐食試験装置には、試験槽内に結露水が発生し、腐食ガスが結露水に溶解してガス濃度が安定しないため試験の再現性が悪いという問題があった。このため、試験槽内の結露を防止するために、試験で使用する腐食ガスから水分を除去する技術や、空気の経路と加湿器を介した経路とを混合・切換えて試験槽に連通して湿度調整を行う技術が用いられているが、試験槽を形成する蓋や蓋と本体とのパッキンシール部分が外気と触れているために、その部分から温度が低下してしまい、例えば温度40℃、湿度95%RHで試験した場合など試験条件によっては、試験槽内の壁面に結露が発生していた。
【0007】
また、従来のガス腐食試験装置においては、温度や湿度を変化させる温湿度サイクル試験を行うと、温度や湿度の移行時に試験槽内に結露水が発生し、腐食ガスが結露水に溶解してガス濃度が安定しないため、温湿度サイクル試験を行いながらガス腐食試験を行うことができなかった。
【0008】
このため、従来のガス腐食試験装置では、屋外の自然環境において、日々繰り返される昼夜の温度差や、屋外と屋内における温度差等の、自然環境下で実際に試料が受けている「温度ショック」を再現する温湿度サイクル試験を行う考えはあったが、実際には温湿度サイクル試験を行うことは困難であった。
【0009】
また、試験槽外周から加熱する間接加熱方式では、温度移行時に試験槽内の温度が試験槽外周の恒温槽(エアジャケット)温度に大きく遅れるため移行する温度にオーバーシュート、アンダーシュートを生じ、これに起因して試験槽内の壁面に結露が発生する。このため、間接加熱方式で温湿度サイクル試験を行いながら、ガス腐食試験を行うと、試験槽内の壁面に発生した結露水に腐食ガスが溶解し、ガス濃度が安定しないことや、結露水が原因で温度上昇が遅れることにより、試験結果の再現性が良くないという恐れがあった。
【0010】
さらに、従来のガス腐食試験装置は、試験槽内の壁面に対する結露防止手段を備えていないため、結露を防止することができなかった。また、結露の発生は試験槽平面のみではなく、試料に発生する場合もあるが、試料の結露の有無を確認することができなかった。このため、試料表面の結露の有無によっても試験結果が異なってしまい、試験の再現性が悪いという問題があった。
【0011】
さらに、2種類以上の腐食ガスによりガス腐食試験を行うガス腐食試験装置においては、HS、SOを同時に供給して試験槽内で各々のガスの濃度を自動コントロールしながら試験を行うものが無かった。これは、HSの濃度を直接測定する測定器がないためであり、HSの濃度を測定する場合には、HSをOと反応させてSOに変換(2HS+3O→2SO+2HO)し、SO測定器で測定していた。しかし、測定する気体内にHSとSOが混在している場合には、混在しているSOも測定されてしまうため、測定値がHSのみの濃度ではなくなり、HSの濃度が実際よりも高く測定されてしまう問題があった。
【0012】
この発明は、試験槽内の壁面に結露を生じさせることなく温湿度サイクル試験を行いながら、常にガス濃度を管理されているガス雰囲気下でガス腐食試験を行うことができ、試験槽内のガス濃度の安定性及び試験結果の再現性を向上することができるガス腐食試験装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の請求項1は、温度及び湿度を制御する手段を有する試験槽内に少なくとも1種類の腐食ガスを供給し、前記腐食ガスの濃度が所定の設定濃度になるように制御する手段を設け、前記試験槽内に設置した試料に前記単一または複数の腐食ガスを接触させて前記試料のガス腐食試験を行うガス腐食試験機において、前記試験槽の壁面に結露を発生させないようにする温度と、湿度と、前記腐食ガス濃度との設定値を各々少なくとも1つの条件で設定し、前記設定した条件の試験を1回または複数回組合せて所定の温度移行時間ごとに繰り返す温湿度サイクル試験を行うことを特徴とする。
【0014】
この発明の請求項2は、前記試験槽を内壁により区画形成し、前記試験槽全てを囲むように外壁により恒温槽を区画形成し、前記試験槽内に供給する少なくとも1種類の腐食ガスを所定の設定濃度になるように調整して供給するガス供給装置を備え、前記試験槽内の温度が所定の設定温度になるように前記恒温槽に供給する空気温度を調整する恒温槽温度調整装置を備え、前記試験槽内の湿度が所定の設定湿度になるように前記試験槽に供給する蒸気を調整する試験槽湿度調整装置を備え、前記恒温槽温度調整装置は、前記恒温槽の各部に空気を均等に分配供給する風量調整器を備え、前記恒温槽温度調整装置は、前記試験槽内の温度を他の設定温度に移行させる際に、前記試験槽内の温度が他の設定温度に到達する前は前記試験槽内の温度に基づき前記恒温槽に供給する空気温度を調整し、前記試験槽内の温度が他の設定温度に到達した後は前記試験槽内の温度と前記恒温槽内の温度とに基づき前記恒温槽に供給する空気温度を調整することを特徴とする。
【0015】
この発明の請求項3は、前記試験槽内に設定した試料の結露状態を検出する結露センサを備え、予備試験時に試料の結露状態を検出して試料に結露させる条件、及び/または、結露無しの条件を設定・確認し、その値を基に本試験時の結露の有無に合わせて条件の設定とその表示を行う結露量設定・表示器を備えることを特徴とする。
【0016】
この発明の請求項4は、前記試験槽湿度調整装置は、前記試験槽内の壁面温度と前記試験槽内の露点温度との差が設定値に収束するように前記試験槽に供給する蒸気を調整することを特徴とする。
【0017】
この発明の請求項5は、前記ガス供給装置は、SO、NO、HSの三種類の腐食ガスを前記試験槽に供給するガス供給手段と、前記ガス供給手段によるSO、NO、HSのガス供給量を調整するガス供給量調整手段とを備え、前記ガス供給量調整手段は、前記試験槽内から取り出したSO、NOの各ガス濃度を単独で測定し、単独で測定したSO、NOの各ガス濃度に基づき前記試験槽内のSO、NOの各ガス濃度がそれぞれ所定の設定濃度になるように前記ガス供給手段によるSO、NOのガス供給量を調整するとともに、前記試験槽内から取り出したHSをOと反応させてSOに変換し、変換したSOのガス濃度を測定し、変換後測定したSOのガス濃度を前記単独で測定したSOのガス濃度で補正する電子回路によりHS単独のガス濃度を求め、求められたHSのガス濃度に基づき前記試験槽内のHSのガス濃度が所定の設定濃度になるように前記ガス供給手段によるHSのガス供給量を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
この発明の請求項1のガス腐食試験装置は、温湿度サイクル試験中に試験槽内壁に結露の発生がないため、安定したガス雰囲気下で試料のガス腐食試験を行うことができるので再現性のある、実環境にあったガス腐食試験が可能となる。
【0019】
この発明の請求項2のガス腐食試験装置は、試験槽内に結露が発生しないので、試験槽内のガス濃度の安定性及び試験結果の再現性を向上することができ、ランニングコストの低減にも寄与する。また、試験槽内の温度を他の設定温度に移行させる際、恒温槽に供給する空気温度の制御方法を、他の設定温度に到達する前後で変化させることにより、試験槽内壁に結露を発生させることなく他の設定温度への移行時間の短縮を行うことができる。これにより、単位時間当たりのサイクル試験回数を増やすことが可能となる。
【0020】
この発明の請求項3のガス腐食試験装置は、試料の結露の有無を選択して試験を行うことができ、試料の使用目的に合致した試験を行うことができる。
【0021】
この発明の請求項4のガス腐食試験装置は、温湿度サイクル試験中においても試験槽内の壁面の結露を防止することができる。
【0022】
この発明の請求項5のガス腐食試験装置は、SO、NO、HSの3種類の腐食ガスのガス濃度を自動で調整できるので、試験の精度及び再現性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ガス腐食試験装置のシステム構成図である。
【図2】ガス腐食試験装置の風量調整器部分の平面図である。
【図3】風量調整器の斜視図である。
【図4】ガス腐食試験装置の平面図である。
【図5】ガス腐食試験装置の正面図である。
【図6】図5のガス腐食試験装置のVI−VI線による断面図である。
【図7】ガス濃度自動調節計の正面図である。
【図8】ガス濃度自動調節計の側面図である。
【図9】ガス腐食試験装置の風量調整器部分の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明は、試験槽内の濃度管理されているガス雰囲気下で、試験槽内の壁面に結露が発生することを防止し、温湿度サイクル試験を行いながら試料のガス腐食試験を行うものである。
以下、図面に基づいて説明する。
【0025】
図1〜図8は、この発明の実施の形態を示すものである。図4〜図6において、1はガス腐食試験装置、2は架台、3は本体である。ガス腐食試験装置1は、架台2上に本体3を搭載している。本体3は、試験部4と、制御部5と排気部6とを備えている。
【0026】
前記試験部4は、内壁7と外壁8とにより二重壁構造とし、試験槽9を内壁7により区画形成し、試験槽9を囲むように外壁8により恒温槽10を区画形成している。内壁7は、四角板状の内壁底部11と四角筒状の内壁測部12と四角板状の内壁上部13とにより四角箱形状にされ、内壁測部12に試料Sを試験槽9に出し入れする内壁扉14を設けている。外壁8は、四角板状の外壁底部15と四角筒状の外壁測部16と四角板状の外壁上部17とにより四角箱形状にされ、外壁測部16に内壁扉14にアクセスするための外壁扉18を設けている。
【0027】
前記試験槽9内には、下方に試料Sを載せる試料枠19を設け、試料枠19の上方に試料Sを吊す試料吊り棒20を設け、試料枠19下方の最下部にガスを攪拌する攪拌翼21を設けている。攪拌翼21は、内壁底部11から下方外部の架台2内に延長される攪拌軸22の上端に取り付けられている。攪拌軸22の下端は、架台2内に設置した攪拌モータ23に連結されている。
【0028】
前記制御部5には、電源スイッチ24、制御盤25、試験プログラム設定器26、運転時間計27、記録計(ガス濃度3点、乾球温度、湿度、結露)28、温度偏差調節器(試験槽壁温度、湿球温度)29、ガス流量設定器(SO、NO、HS、空気)30、結露量設定・表示器31、が設けられている。
【0029】
前記排気部6には、排気処理装置32、排気送風機33、ガス漏れ警報機操作盤34が設けられている。排気処理装置32は、図1に示すよう、試験槽9内の排気口35から排気管36に排出された腐食ガスを無害化処理し、排気送風機33で外部に排出する。排気送風機33は、排気モータ37で駆動され、腐食試験中に試験槽9を吸引することで、試験槽9内を負圧状態にする。
【0030】
このガス腐食試験装置1は、図1に示すように、試験槽9内に設置した試料Sに腐食ガスを接触させて試料Sのガス腐食試験を行うものであり、試験槽9を内壁7により区画形成し、試験槽9を囲むように外壁8により恒温槽10を区画形成している。
【0031】
ガス腐食試験装置1は、試験槽9内に供給する腐食ガスを所定の設定濃度になるように調整して供給するガス供給装置38を備え、試験槽9内の温度が所定の設定温度になるように恒温槽10に供給する空気温度を調整する恒温槽温度調整装置39を備え、試験槽9内の湿度が所定の設定湿度になるように試験槽9に供給する蒸気を調整する試験槽温度調整装置40を備えている。
【0032】
前記ガス供給装置38は、腐食ガスとして、SO、NO、HSの3種類の腐食ガスを試験槽9に供給するガス供給手段41と、このガス供給手段41によるSO、NO、HSのガス供給量を調整するガス供給量調整手段42とを備えている。
【0033】
前記ガス供給手段41は、SO、NO、HSの3種類の腐食ガスを貯蔵するSOボンベ43、NOボンベ44、HSボンベ45を設け、ガス希釈用の空気を供給する空気供給器46を設けている。これら各ボンベ43〜45及び空気供給機46には、ガス供給管47の一端側を分岐して並列に接続している。ガス供給管47は途中で集合して他端側を試験槽9内の内壁底部11に設けたガス供給口48に接続している。各ボンベ43〜45直下流のガス供給管47には、それぞれSO供給量調整弁49、NO供給量調整弁50、HS供給量調整弁51を設けている。また、空気供給機46直下流のガス供給管47には、空気供給量調整弁52を設けている。
【0034】
ガス供給手段41は、SOボンベ43、NOボンベ44、HSボンベ45からSO、NO、HSをSO供給量調整弁49、NO供給量調整弁50、HS供給量調整弁51でそれぞれ調整して取り出し、取り出したSO、NO、HSを空気供給機46から空気供給量調整弁52で調整して取り出した空気により希釈し、ガス供給管47によりガス供給口48から試験槽9に供給する。
【0035】
前記ガス供給量調整手段42は、試験槽9の壁部12に設けたガス取出口53に一端側を接続するガス取出管54の途中にガス除湿器55を設け、ガス取出管54の他端側を分岐してSO濃度測定器56、NO濃度測定器57に並列に接続するとともに、HS―SO変換器58を介してSO濃度測定器59に並列に接続している。SO濃度測定器56、NO濃度測定器57は、SO制御器60、NO制御器61にそれぞれ接続している。SO濃度測定器59は、SO濃度測定器56に接続したHS濃度補正器62を介してHS制御器63に接続している。SO制御器60、NO制御器61、HS制御器63は、前記SO供給量調整弁49、NO供給量調整弁50、HS供給量調整弁51に接続している。
【0036】
ガス供給量調整手段42は、試験槽9から取り出した混合ガス中のSO、NOの各ガス濃度をSO濃度測定器56、NO濃度測定器57により単独で測定し、測定されたSO、NOの各ガス濃度をSO制御器60、NO制御器61に入力する。SO制御器60、NO制御器61は、測定されたSO、NOの各ガス濃度に基づき、試験槽9内のSO、NOの各ガス濃度がそれぞれ所定の設定濃度になるように、ガス供給量制御信号によりガス供給手段41のSO供給量調整弁49、NO供給量調整弁50を駆動してSO、NOのガス供給量を調整する。
【0037】
また、ガス供給量調整手段42は、試験槽9から取り出した混合ガス中のHSをHS―SO変換器58によりOと反応させてSOに変換(2HS+3O→2SO+2HO)し、HSから変換されたSOのガス濃度をSO濃度測定器59により測定する。この測定値には、混合ガス中に単独で存在したSOの濃度が含まれている。そこで、ガス供給量調整手段42は、HS濃度補正器62により、SO濃度測定器59が測定した変換されたSOのガス濃度を、SO濃度測定器56が測定した単独のSOのガス濃度で補正(変換されたSOのガス濃度−単独のSOのガス濃度)して、HS単独のガス濃度を求める。求められたHSのガス濃度に基づき、試験槽9内のHSのガス濃度が所定の設定濃度になるように、ガス供給量制御信号によりガス供給手段41のHS供給量調整弁51を駆動してHSのガス供給量を調整する。
【0038】
これにより、ガス腐食試験装置1は、ガス供給装置38のガス供給手段41とガス供給量調整手段42によって、試験槽9内に供給する3種類の腐食ガス(SO、NO、HS)をそれぞれ所定の設定濃度になるように自動で調整して供給することができるので、試験の精度及び再現性を向上することができる。
【0039】
なお、ガス供給装置38のガス供給量調整手段42は、図7・図8に示すように、ガス濃度自動調節計64としてガス腐食試験装置1と別体に構成している。ガス濃度自動調節計64は、本体65内に、ガス除湿器55、SO濃度測定器56、NO濃度測定器57、HS−SO変換器58、SO濃度測定器59、SO制御器60、NO制御器61、HS濃度補正器62、HS制御器63を組み込んでいる。また、ガス濃度自動調節計64には、SO濃度調整器66、NO濃度調整器67、HS濃度調整器68を備えている。
【0040】
前記恒温槽温度調整装置39は、図1に示すように、試験槽9の後測の恒温槽10内に、隔壁69により上下方向に延びる温度調節通路70を区画形成している。温度調整通路70には、上端と下端とにおいて恒温槽10と連絡し、冷凍機71に接続された冷却器72と、電源73に接続されたヒータ74とを下から上に向かって順次に配設している。温度調整通路70上端には、循環モータ75で駆動される循環送風機76を配設している。
【0041】
前記冷却器72とヒータ74とは、プログラム温度制御器77に接続されている。プログラム温度制御器77には、恒温槽温度設定器78と前記試験プログラム設定器26とが接続されている。恒温槽温度設定器78には、後述する風量調節器81の前面吹出部82に設けた恒温槽10内の温度を測定する恒温槽温度測定器79を接続している。試験プログラム設定器26には、試験槽9内に設けた乾球温度及び湿球温度を測定する乾湿球温度測定器80を接続している。
【0042】
プログラム温度制御器77は、恒温槽温度設定器78により設定された恒温槽温度と恒温槽温度測定器79が測定した恒温槽10の温度とを入力し、試験プログラム設定器26により設定され試験槽温度と乾湿球温度測定器80が測定した乾湿球温度とを入力し、これら入力した温度に基づいて試験槽9内の温度が所定の設定温度になるように、冷却器制御信号及びヒータ制御信号により冷却器72及びヒータ74を駆動して恒温槽10の温度を調節する。
【0043】
プログラム温度制御器77は、試験槽9内の温度が試験プログラム設定器26の設定温度到達後、制御法を切換えて、それまでの試験プログラム設定器の設定値単独の信号でヒータを制御する方式から恒温槽温度設定器78からの信号によってもヒータ回路を制御する方式にする。
【0044】
これにより、ガス腐食試験装置1は、恒温槽10に供給する空気温度をプログラム温度制御器77が試験槽9の設定温度到達後に設定器26と恒温槽温度設定器78の2つの信号によるヒータ制御に切換えることにより、試験槽9の設定温度と同一かそれ以上に調整して循環させることで試験槽9を間接的に加熱・冷却し、試験槽9内の温度を所定の設定温度に調整することができる。
【0045】
この恒温槽温度調整装置39は、循環送風機76が吹き出す空気を恒温槽10の各部に均等に分配供給する風量調節器81を備えている。風量調節器81は、内壁上部13と外壁上部17との間の恒温槽10に配置されている。
【0046】
風量調節器81は、図2・図3に示すように、試験槽9上方の後側(循環送風機側)に配設される後側吹出部82と、試験槽9上方の中央部位に配設される中央吹出部83と、試験槽9上方の前側(外扉側)に配設される前側吹出部84とによって、平面視において略H字形状に形成される風量調整通路85を設けている。
【0047】
後側吹出部82には、循環送風機76の送風口86に接続されて風量調整通路85に空気を導入する導入口87を設け、風量調整通路85に供給された空気を試験槽9の後側の恒温槽10に向かって下方に吹き出す後側吹出口88を設けている。中央吹出部83には、風量調整通路85に供給された空気を試験槽9の上面13に向かって下方に吹き出す中央吹出口89と、試験槽9両側方の恒温槽10側面に向かって各測方に吹き出す測方吹出口90・91とを設けている。前側吹部出口84には、風量調整通路85に供給された空気を試験槽9の前側の恒温槽10に向かって下方に吹き出す前側吹出口92を設けている。各吹出口88〜92は最適な吹出量になるように、各々の開口面積を設定している。
【0048】
これにより、ガス腐食試験装置1は、循環送風機76が吹き出す空気を風量調整器81によって恒温槽10の各部に空気を均等に分配供給することができ、恒温槽10の各部の温度を同一にすることができ、試験槽9内の温度を設定温度に安定させることができる。
【0049】
この恒温槽温度調整装置39は、試験プログラム設定器26(温度調整器77)によって、試験槽9内の温度を現在の設定温度から他の設定温度に移行させる際に、試験槽9内の温度が他の設定温度に到達する前後において、以下のように、恒温槽10に供給する空気温度を調整する。恒温槽温度調整装置39は、試験槽9内の温度が他の設定温度に到達する前は、乾湿球温度測定器80の測定する試験槽9内の温度に基づき試験プログラム設定器26(温度調整器77)により恒温槽10に供給する空気温度を調整し、また、試験槽9内の温度が他の設定温度に到達した後は、乾湿球温度測定器80の測定する試験槽9内の温度と恒温槽温度測定器79の測定する恒温槽10内の温度とに基づき恒温槽10に供給する空気温度を調整する。
【0050】
これにより、ガス腐食試験装置1は、間接加熱式特有の、温度移行時に恒温槽10の温度の移行に対して試験槽9の温度の移行遅れによるオーバーシュート、アンダーシュートを抑え、短時間で試験槽9の温度を安定させることができ、オーバーシュート、アンダーシュートに起因して発生する試験槽9内の壁面の結露を防止することができる。
【0051】
前記試験槽湿度調整装置40は、湿度発生器93を湿度供給管94により試験槽9の内壁底部11の湿度供給口95に接続している。湿度発生器93は、前記試験プログラム設定器26が接続されている。湿度調節器96は、試験プログラム設定器26により設定された試験槽9の温度と乾湿球温度測定器80の測定した乾湿球温度とを入力し、これら入力した湿度及び温度に基づいて試験槽9内の湿度が所定の設定湿度になるように、湿度制御信号により湿度発生器93を駆動して恒温槽10の湿度を調節する。これにより、ガス腐食試験機1は、試験槽9内の湿度が所定の設定湿度になるように試験槽9に供給する蒸気を調整することができる。
【0052】
この試験槽湿度調整装置40は、乾湿球温度測定器80の測定した乾湿球温度から、試験槽9内の壁面温度と試験槽9内の露点温度との差が設定値に収束するように、試験槽9に供給する蒸気を調整する。例えば、試験槽湿度調整装置40は、湿度調節器94によって、試験槽9内の壁面温度t1と試験槽9内の露点温度t2との差Δt(t1−t2)を求め、差Δtが設定値以上のときは湿度発生器91を駆動し、差Δtが設定値以内のときは湿度発生器90を停止することで、試験槽9内に供給する蒸気を調整する。なお、露点温度は、乾湿球温度測定器80の測定した乾湿球温度から求め、あるいは、試験槽9内に配設した露点温度測定器(図示せず)により求める。これにより、ガス腐食試験装置1は、ガス腐食試験中においても試験槽9内の壁面の結露を防止することができる。
【0053】
このように、このガス腐食試験装置1は、試験槽9内に供給する腐食ガスの濃度が所定の設定濃度になるように調整し、試験槽9内を形成する内壁7の壁面に結露が発生しないように温度及び湿度を変化させる温湿度サイクル試験を行いながら、試験槽9内の濃度管理されているガス雰囲気下で試料Sのガス腐食試験を行うことができるので、実環境にあったガス腐食試験が可能となる。
【0054】
また、このガス腐食試験装置1は、試験槽9内に結露が発生しないので、試験槽9内のガス濃度の安定性及び試験結果の再現性を向上することができ、結露水へのガス溶解がないので、ガス消費量を少なくすることができ、ランニングコストの低減にも寄与する。
【0055】
さらに、このガス腐食試験装置1は、試験槽9内に設置した試料Sの結露状態を検出する結露センサ97を備え、この結露センサ97を前記試験プログラム設定器26に接続し、腐食ガスを使用しない予備試験時に試料Sの結露状態を結露センサ97により検出して試料Sに結露させる条件、および/または、結露なしの条件を設定・確認し、その値を基に腐食ガスを使用する本試験時の結露の有無に合わせて条件の設定とその表示を行う前記結露量設定・表示器31を備えている。これにより、このガス腐食試験装置1は、試料Sの結露の有無を選択して試験を行うことができ、試料Sの使用目的に合致した試験を行うことができる。
【0056】
なお、上述の風量調整器81は、図9に示すように構成することもできる。図9に示す風量調整器81は、循環送風機76の送風口86から導入口87を介して風量調整通路85に導入された空気を、後側吹出部82の後側吹出口88に案内する後側案内板98を設け、中央吹出部83の側方吹出口90・91に案内する側方案内板99・100を設けている。
【0057】
図9に示す風量調整器81は、導入口87により風量調整通路85に導入された空気の流れ方向に対して、空気が流れにくい位置にある後側吹出口88、側方吹出口90・91に空気を積極的に案内することができるので、恒温槽10の各部に空気をより均等に分配供給することができ、恒温槽10の各部の温度を同一にすることができ、試験槽9内の温度を設定温度に安定させることができる。
【実施例】
【0058】
本発明を、例を用いて更に詳細に説明する。
(実施例1)試料として電子回路のプリント基板を用いた。
試験条件、移行時間、試験回数を設定する。
試験条件1に温度:25℃、湿度:60%RH、腐食ガス及び濃度SO:1ppm、NO:1ppm、HS:8ppm、試験時間:1時間、試料面:結露なしで設定し、
試験条件2に温度:60℃、湿度:95%RH、腐食ガス及び濃度SO:1ppm、NO:1ppm、HS:8ppm、試験時間:1時間、試料面:結露なしで設定し、
移行時間:1時間、試験回数:100回で設定しガス腐食試験を行ったところ、試験槽内に結露が発生することなく、腐食ガスSO、NO、HSを設定濃度に保ったままガス腐食試験を行うことができた。
【0059】
(実施例2)試料として電子回路のプリント基板を用いた。
試験条件、移行時間、試験回数を設定する。
試験条件1に温度:25℃、湿度:60%RH、腐食ガス及び濃度SO:1ppm、NO:1ppm、HS:8ppm、試験時間:1時間、試料面:結露ありで設定し、
試験条件2に温度:60℃、湿度:95%RH、腐食ガス及び濃度SO:1ppm、NO:1ppm、HS:8ppm、試験時間:1時間、試料面:結露ありで設定し、
移行時間:1時間、試験回数:100回で設定しガス腐食試験を行ったところ、試料面のみに結露が発生し、試料面以外では試験槽内には結露が発生することなく、腐食ガスSO、NO、HSを設定濃度に保ったままガス腐食試験を行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
この発明は、試験槽内の壁面に結露が発生しないように温湿度サイクル試験を行いながら、試験槽内の濃度管理されたガス雰囲気下で試料のガス腐食試験を行うものであり、より実環境に即した再現性のある腐食試験装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 ガス腐食試験装置
9 試験槽
10 恒温槽
32 排気処理装置
33 排気送風機
38 ガス供給装置
39 恒温槽温度調整装置
40 試験槽湿度調整装置
41 ガス供給手段
42 ガス供給量調整手段
43 SOボンベ
44 NOボンベ
45 HSボンベ
46 空気供給機
49 SO供給量調整弁
50 NO供給量調整弁
51 HS供給量調整弁
52 空気供給量調整弁
56 SO濃度測定器
57 NO濃度測定器
58 HS−SO変換器
59 SO濃度測定器
60 SO制御器
61 NO制御器
62 HS濃度補正器
63 HS制御器
70 温度調整通路
72 冷却器
74 ヒータ
76 循環送風機
77 プログラム温度制御器
78 恒温槽温度設定器
79 恒温槽温度測定器
80 乾湿球温度測定器
81 風量調整器
93 湿度発生器
96 湿度調整器
97 結露センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度及び湿度を制御する手段を有する試験槽内に少なくとも1種類の腐食ガスを供給し、前記腐食ガスの濃度が所定の設定濃度になるように制御する手段を設け、
試験槽内に設置した試料に前記腐食ガスを接触させて前記試料のガス腐食試験を行うガス腐食試験機において、
前記試験槽の壁面に結露を発生させないようにする温度と、湿度と、前記腐食ガスの濃度との設定値を各々少なくとも1つの条件で設定し、
前記設定した条件の試験を1回または複数回組合せて所定の温度移行時間ごとに繰り返す温湿度サイクル試験を行うことを特徴とするガス腐食試験装置。
【請求項2】
前記試験槽を内壁により区画形成し、
前記試験槽全てを囲むように外壁により恒温槽を区画形成し、
前記試験槽内に供給する少なくとも1種類の腐食ガスを所定の設定濃度になるように調整して供給するガス供給装置を備え、
前記試験槽内の温度が所定の設定温度になるように前記恒温槽に供給する空気温度を調整する恒温槽温度調整装置を備え、
前記試験槽内の湿度が所定の設定湿度になるように前記試験槽に供給する蒸気を調整する試験槽湿度調整装置を備え、
前記恒温槽温度調整装置は、前記恒温槽の各部に空気を均等に分配供給する風量調整器を備え、
前記恒温槽温度調整装置は、前記試験槽内の温度を他の設定温度に移行させる際に、前記試験槽内の温度が他の設定温度に到達する前は前記試験槽内の温度に基づき前記恒温槽に供給する空気温度を調整し、前記試験槽内の温度が他の設定温度に到達した後は前記試験槽内の温度と前記恒温槽内の温度とに基づき前記恒温槽に供給する空気温度を調整することを特徴とする請求項1に記載のガス腐食試験装置。
【請求項3】
前記試験槽内に設定した試料の結露状態を検出する結露センサを備え、
予備試験時に試料の結露状態を検出して試料に結露させる条件、及び/または、結露無しの条件を設定・確認し、
その値を基に本試験時の結露の有無に合わせて条件の設定とその表示を行う結露量設定・表示器を備えることを特徴とする請求項2に記載のガス腐食試験装置。
【請求項4】
前記試験槽湿度調整装置は、前記試験槽内の壁面温度と前記試験槽内の露点温度との差が設定値に収束するように前記試験槽に供給する蒸気を調整することを特徴とする請求項2に記載のガス腐食試験装置。
【請求項5】
前記ガス供給装置は、SO、NO、HSの三種類の腐食ガスを前記試験槽に供給するガス供給手段と、前記ガス供給手段によるSO、NO、HSのガス供給量を調整するガス供給量調整手段とを備え、
前記ガス供給量調整手段は、前記試験槽内から取り出したSO、NOの各ガス濃度を単独で測定し、単独で測定したSO、NOの各ガス濃度に基づき前記試験槽内のSO、NOの各ガス濃度がそれぞれ所定の設定濃度になるように前記ガス供給手段によるSO、NOのガス供給量を調整するとともに、
前記試験槽内から取り出したHSをOと反応させてSOに変換し、変換したSOのガス濃度を測定し、変換後測定したSOのガス濃度を前記単独で測定したSOのガス濃度で補正する電子回路によりHS単独のガス濃度を求め、求められたHSのガス濃度に基づき前記試験槽内のHSのガス濃度が所定の設定濃度になるように前記ガス供給手段によるHSのガス供給量を調整することを特徴とする請求項2に記載のガス腐食試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−21899(P2011−21899A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164522(P2009−164522)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年6月30日 スガ試験機株式会社発行の「SUGA TECHNICAL NEWS(第53巻第2号通巻210号)」に発表
【出願人】(000107583)スガ試験機株式会社 (28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】