説明

ガス遮断器

【課題】工場内及び現地での組立作業・試験を極小化することができ、コストの低減が可能となると共に、組立信頼性が向上したガス遮断器を得ることができる。
【解決手段】複数相分の接地タンク1と、ブッシング2と、上部ハウジング3と、下部ハウジング4と、ブッシング2が設置されている各相の接地タンク1、上部ハウジング3、及び下部ハウジング4が設置されるベース5と、ブッシング2が設置されている各相の接地タンク1、上部ハウジング3、及び下部ハウジング4が設置されるベース5を支持する架台8とを備え、下部ハウジング4を、上部ハウジング3および接地タンク1より下側に配置される運用時の第1の状態と、上部ハウジング3および接地タンク1とほぼ同じ高さ位置に設置する輸送時の第2の状態とに切り換える蝶番構造部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変電所や開閉所に設置されるガス遮断器に関し、特に長尺ブッシングが取り付けられた高電圧クラスのものを、少ない分割数で輸送制限高さに収めての輸送を可能にするガス遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
変電所や開閉所などに設置されるガス遮断器として、特許文献1には、電圧クラスの低い168kVガス遮断器に関する、輸送を考慮した構造が開示されている。この特許文献1では、1つのベースの上に、ブッシングが2個ずつ設置された3個の接地タンクと、3つの操作機構部を収納した1個の操作器箱と、制御装置箱とを設置し、これらベース、接地タンク、操作器箱および制御装置箱を一体の本体部とし、輸送の際には、該本体部と、本体部を設置するための架台と、ケーブル保護ダクトとに分解して輸送することが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載のガス遮断器の場合は、電圧クラスの低い168kVガス遮断器であるので、ブッシングからの絶縁距離が問題にならず、制御装置箱は、接地タンクや操作器箱と同じ高さ位置での運用が可能である。
【0004】
しかしながら、長尺ブッシングが取り付けられる高電圧クラス(例えば362kV)のガス遮断器では、上記制御装置箱は、ブッシングとの絶縁距離を確保するために、接地タンクや操作器箱より下側に配置する必要がある。このため、操作器箱を上部ハウジング、制御装置箱を下部ハウジングと呼称すると、高電圧クラスのガス遮断器では、従来、輸送高さ制限をクリアーするために、ブッシングが設置された接地タンクおよび上部ハウジングをベースに載せ一体にした遮断器本体部分と、架台と、下部ハウジングと、ガス配管と、電線管とに分けて輸送している。
【0005】
【特許文献1】特開2003−009318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなガス遮断器は、工場で製作、組立てた後、現地に輸送する必要があるが、従来の高電圧クラスのガス遮断器では、下部ハウジング、ガス配管および電線管を遮断器本体部分から取り外し、ブッシングが設置された接地タンクおよび上部ハウジングをベースに載せ一体にした遮断器本体部分と、架台と、下部ハウジングと、ガス配管と、電線管とに分解して輸送しているので、工場内で組立て電気的試験やガス漏れ試験を行った後、一旦解体し、輸送後に現地において再度組立てる必要があった。
【0007】
また、現地における組立作業は、分解されるユニット数が多いので、作業に多くの時間がかかり、また電気的試験やガス漏れ試験を再度行う必要があり、作業能率が悪いという問題がある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、工場内及び現地における作業を極小化し、現地コストの低減と、組立信頼性が向上したガス遮断器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、接離可能な開閉接点を有する主回路を収納し、絶縁性ガスで満たされた複数相分の接地タンクと、各相の接地タンクの上部に設置され、各相の接地タンク内部の主回路と電気的に外部と繋がる複数のブッシングと、前記各相の接地タンク内の主回路開閉接点を駆動するための開閉操作機構部を収納する上部ハウジングと、前記各相の開閉操作機構部の動作を電気的に制御する制御装置と前記接地タンク内に絶縁ガスを補給するためのガス補給口を収納する、前記上部ハウジングおよび接地タンクより下側に配置された下部ハウジングと、前記ブッシングが設置されている各相の接地タンク、前記上部ハウジング、及び前記下部ハウジングが設置されるベースと、前記ブッシングが設置されている各相の接地タンク、前記上部ハウジング、及び前記下部ハウジングが設置されるベースを支持する架台とを備え、前記下部ハウジングを、前記上部ハウジングおよび接地タンクより下側に配置される運用時の第1の状態と、上部ハウジングおよび接地タンクとほぼ同じ高さ位置に設置する輸送時の第2の状態とに切り換える位置可変機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、位置可変機構により、下部ハウジングを、上部ハウジングおよび接地タンクより下側に配置される運用時の第1の状態と、上部ハウジングおよび接地タンクとほぼ同じ高さ位置に設置する輸送時の第2の状態とに切り換えることができるので、分解されるユニット点数が少なくなり、現地での下部ハウジングと上部ハウジング間の電気結線作業及びガス配管の組立作業が不要となり、結果として現地作業コストの低減が可能となると共に、組立信頼性が向上したガス遮断器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明にかかるガス遮断器の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかるガス遮断器の実施の形態の構造を示す図であり、362kV三相一括操作式単体ガス遮断器の構造を示す正面図である。図2は、362kV三相一括操作式単体ガス遮断器の構造を示す側面図である。
【0013】
このガス遮断機では、ベース5に、3個の接地タンク1と、各相の接地タンク1内の主回路開閉接点を三相一括操作で駆動するための1つの操作機構部を収納した1個の略直方体形状の上部ハウジング3と、略直方体形状の下部ハウジング4とを設置している。接地タンク1には、各相2本ずつの気中絶縁のための長尺のブッシング2を設けている。そして、ブッシング2が設置された3つの接地タンク1、上部ハウジング3および下部ハウジング4をベース5に取り付けることで、一体の遮断器本体を構成している。これら各構成要素が設置されたベース5を架台8上に搭載している。
【0014】
3つの接地タンク1は、それぞれ接離可能な開閉接点を有する主回路を収納し、絶縁性ガスが満たされている。各ブッシング2は、各相の接地タンク1の内部の主回路と電気的に接続される導体要素などが内蔵され、外部端子としてのブッシング上部シールド9を介して外部と電気的に繋がっている。ブッシング2には、接地タンク1と同様絶縁ガスが封入充填されている。並置された3つの接地タンク1間は可撓性のあるガス配管6により連通され、ガス配管6は上部ハウジング3内を経由して、下部ハウジング4内に設置された絶縁ガスを補給するためのガス補給口に繋がっている。
【0015】
上部ハウジング3には、各相の接地タンク1内の主回路開閉接点を駆動する1つの操作機構部と、この操作機構部の駆動により電気的な開閉動作を行う補助開閉装置とを収納している。これら操作機構部および補助開閉装置を総称して開閉操作機構部と総称する。下部ハウジング4には、上部ハウジング内の操作機構部の動作を電気的に制御する制御装置と、接地タンク1内に絶縁ガスを補給するためのガス補給口を収納している。
【0016】
正面から見て、中央に配置された接地タンク1には、ブッシング2が直立するように設置され、また左右に配置された接地タンク1には、ブッシング2が傾斜するように設置されている。362kVクラスの三相一括操作式単体ガス遮断器では、電圧が高いため、中央に配置された接地タンク1のブッシング2に対して、必要な絶縁距離を確保するため、左右に配置された接地タンク1にブッシング2が傾斜するように配置されている。
【0017】
また、左右に配置された接地タンク1のブッシング2に対して必要な絶縁距離を確保するため(図1の場合では、左側に配置された接地タンク1のブッシング2に対して必要な絶縁距離を確保するため)、この接地タンク1に並置される下部ハウジング4は、接地タンク1や上部ハウジング3よりも低位置に配置されている。
【0018】
また、上部ハウジング3は、接地タンク1の長手方向の片側に配置している。このようにすることで、3個の接地タンク1の間隔を縮めることが可能となる。また、下部ハウジング4は、上部ハウジング3とはスペース的に一体化が困難であるため別箱とし、左右何れかの接地タンク1の下側で、左右何れかの接地タンク1と並置されている。
【0019】
下部ハウジング4は、位置可変機構としての蝶番構造部10によってベース5に支えられ、遮断器本体部分との一体輸送を考慮して90度回転可能な構造を有している。すなわち、下部ハウジング4は、図1に示すような、接地タンク1の下側に位置する運用時の状態と、図3に示すような、接地タンク1および上部ハウジング3とほぼ同じ高さ位置に位置する輸送時の状態の2状態を取り得る。位置可変機構としては、同様の機能を達成することができれば、他の任意の機構を採用するようにしてもよい。
【0020】
このような90度回転可能な下部ハウジング4の取り付け構造に対応するため、下部ハウジング4内に設置されたガス供給口から上部ハウジング3内を経由して、各相の接地タンク1に可とう性のあるガス配管6を連結している。また、下部ハウジング4内に設置された制御装置と上部ハウジング3内の補助開閉装置を電気的に繋ぐ電線を収納するために、これら下部ハウジング4および上部ハウジング3とを可とう性のある電線管7で連結している。
【0021】
図3は、本実施の形態による362kV三相一括操作式単体ガス遮断器の輸送形態を示す図である。図1および図2に示した運用形態から図3に示した輸送形態に分離するには、ベース5上で一体となったブッシング2が設置された各相の接地タンク1、上部ハウジング3、下部ハウジング4からなる遮断器本体部分13を架台8から外し分離する。その場合、輸送高さ制限内に収まるように、下部ハウジング4を蝶番構造部10の回りに90度回転させて水平置きが可能なような形態とする。そして、分離された大略2つの荷物を現地に輸送する。現地では、遮断器本体部分13を架台8上に載せ、下部ハウジング4を逆に90度回転させて元に戻して結合し、6本のブッシング2の上部にブッシング上部シールド9を取付けることで据付作業が完了する。
【0022】
なお、上記では、本発明を362kV三相一括操作式単体ガス遮断器に適用したが、本発明を362kV単相操作式単体ガス遮断器に適用するようにしてもよい。単相操作式単体ガス遮断器の場合は、上部ハウジング3に各相の3個の開閉操作機構部(操作機構部および補助開閉装置)が設けられることになる。また、本発明を362kV以上の高圧クラスのガス遮断器に適用するようにしてもよい。
【0023】
図4及び図5は、従来の362kV三相一括操作式単体ガス遮断器の構造を示す図である。図4は正面図、図5は側面図である。図6は、従来の三相一括操作式単体ガス遮断器の輸送形態を示す図である。
【0024】
従来の三相一括操作式単体遮断器は、接離可能な開閉接点を有する主回路を収納し、絶縁性ガスで満たされた接地タンク101と、ブッシング102と、ブッシング上部シールド109と、操作機構部を収納する上部ハウジング103と、各相の操作機構部の動作を電気的に制御する制御装置およびと接地タンク101内に絶縁ガスを補給するためのガス補給口を収納する下部ハウジング104と、ベース105と、ガス配管111と、電線管112と、架台8とからなる。
【0025】
従来技術においても、下部ハウジング104は、左右に配置された接地タンク101のブッシング102に対して、必要な絶縁距離を確保するため、接地タンク101や上部ハウジング103よりも低位置に配置されている。下部ハウジング104は、ベース105に対しネジ固定されている。このため、従来は、輸送高さ制限をクリアーするために、図6に示すように、下部ハウジング104をベース105から取り外し、ブッシング102が設置された接地タンク101および上部ハウジング103をベース105に載せ一体にした遮断器本体部分113と、架台108と、下部ハウジング104と、ブッシング上部シールド109と、ガス配管111と、電線管112とに分けて輸送している。
【0026】
以上で述べた従来の三相一括操作式単体遮断器のような輸送形態を採る場合、工場内で組立て電気的試験やガス漏れ試験を行った後、一旦解体し、輸送後に現地において再度組立てる必要があった。また、現地における組立作業は、ブッシング102が設置されかつ主回路を収納する各相の接地タンク101と、上部ハウジング103をベース105に載せ一体にした遮断器本体部分113を、架台108の上に組立て、下部ハウジング104を遮断器本体部分113に取り付け、下部ハウジング104と上部ハウジング103間の結線作業、配管の組立、真空引き、ガス入れ、及びガス漏れ試験、制御配線確認作業を実施しなければならない。それゆえ、従来の362kV三相一括操作式単体ガス遮断器は、組立・解体・再組立作業及び2度の試験が必要であり、同じ組立・試験を重複して行わなければならず、現地における据付作業も多いという問題があった。
【0027】
これに対し、本実施の形態のガス遮断器では、下部ハウジング4を蝶番構造などの位置可変機構によって、図1、図2に示すような、接地タンク1の下側に位置する運用時の状態と、図3に示すような、接地タンク1および上部ハウジング3とほぼ同じ高さ位置に位置する輸送時の状態の2状態を取り得るようにして遮断器本体部分と連結するようにしているので、下部ハウジングを遮断器本体部分と一体輸送することができ、分解ユニット点数が少なくなり、工場内及び現地での組立作業・試験を極小化することができ、コストの低減が可能となると共に、組立信頼性が向上したガス遮断器を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明にかかるガス遮断器は、ブッシングと下部ハウジング間に所要の絶縁距離を確保する必要のある高圧クラスのガス遮断器に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による362kV三相一括操作式単体ガス遮断器の構造を示す正面図である。
【図2】本発明による362kV三相一括操作式単体ガス遮断器の構造を示す側面図である。
【図3】本発明による362kV三相一括操作式単体ガス遮断器の輸送形態を示す図である。
【図4】従来の362kV三相一括操作式単体ガス遮断器の構造を示す正面図である。
【図5】従来の362kV三相一括操作式単体ガス遮断器の構造を示す側面図である。
【図6】従来の362kV三相一括操作式単体ガス遮断器の輸送形態を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 接地タンク
2 ブッシング
3 上部ハウジング
4 下部ハウジング
5 ベース
6 可とう性のあるガス配管
7 可とう性のある電線管
8 架台
9 ブッシング上部シールド
10 蝶番構造部
11 ガス配管
12 電線管
13 遮断器本体部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接離可能な開閉接点を有する主回路を収納し、絶縁性ガスで満たされた複数相分の接地タンクと、
各相の接地タンクの上部に設置され、各相の接地タンク内部の主回路と電気的に外部と繋がる複数のブッシングと、
前記各相の接地タンク内の主回路開閉接点を駆動するための開閉操作機構部を収納する上部ハウジングと、
前記各相の開閉操作機構部の動作を電気的に制御する制御装置と前記接地タンク内に絶縁ガスを補給するためのガス補給口を収納する、前記上部ハウジングおよび接地タンクより下側に配置された下部ハウジングと、
前記ブッシングが設置されている各相の接地タンク、前記上部ハウジング、及び前記下部ハウジングが設置されるベースと、
前記ブッシングが設置されている各相の接地タンク、前記上部ハウジング、及び前記下部ハウジングが設置されるベースを支持する架台と、
を備え、
前記下部ハウジングを、前記上部ハウジングおよび接地タンクより下側に配置される運用時の第1の状態と、上部ハウジングおよび接地タンクとほぼ同じ高さ位置に設置する輸送時の第2の状態とに切り換える位置可変機構を備えることを特徴とするガス遮断器。
【請求項2】
前記位置可変機構は、前記ベースと下部ハウジングを接続する蝶番構造であることを特徴とする請求項1に記載のガス遮断器。
【請求項3】
前記下部ハウジング内に設置されたガス供給口から前記上部ハウジング内を経由して、前記各相の接地タンクへ繋がる可とう性のあるガス配管と、前記下部ハウジング内に設置された制御装置から前記上部ハウジング内の開閉操作機構部を電気的に繋ぐ電線を収納する可とう性のある電線管とをさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載のガス遮断器。
【請求項4】
前記上部ハウジングを各相接地タンクの長手方向の片側に配置すると共に、前記下部ハウジングを各相の接地タンクに並置することを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載のガス遮断器。
【請求項5】
前記上部ハウジングは、前記各相の操作機構部が収納された1つの箱で形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載のガス遮断器。
【請求項6】
前記上部ハウジングは、前記各相の接地タンク内の主回路開閉接点を三相一括操作で駆動するための操作機構部および補助開閉装置を収納することを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載のガス遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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