ガラスシートの物理的形状を維持する支持装置およびその使用方法
加熱処理などの熱処理加工中にガラスシートの物理的形状を維持するために、ガラスシートを支持するための装置および方法を開示する。この装置は隣接するガラスシートを接触しないように分離するための手段を有する。この分離手段には、ガラスシートを受け入れるために構成された突出部および溝を有する分離コーム、ガラスシート間に設置されるよう構成された分離ロッド、あるいは分離コームと分離ロッドの組合せが含まれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理加工中にガラスシートを支持するための装置および方法に関する。特に、加熱処理加工中に、隣接するガラスシートが接触しないように分離し、その物理的形状を維持するようにガラスシートを支持するための装置および方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ガラスシート(例えば、液晶ディスプレイすなわち「LCD」ガラスシート)の製造業者は、出荷前にガラスシートに加熱処理を施して、ガラスを予備収縮または圧縮することが多い。ガラスシートの予備収縮や圧縮は、一般にガラスシートの歪み点よりも低い色々な温度で行われる。圧縮すなわち緻密化は、顧客がガラスシートを処理している間にガラスの寸法が変化することを最小限に抑えるために行われる。
【0003】
一例としては、ガラスシートに、限られた時間(例えば約1時間)の間その平坦性や表面品質など物理的特性の仕様に影響を与えることなく、650℃で加熱処理を施すことができる。この加工を利用している製品は、高解像度用途に使用されているポリシリコン液晶ディスプレイ(P−Si LCD)機器である。LCDガラスは製造加工中、比較的高温(例えば、500℃以上)にさらされる。もしガラスシートに予備収縮が施されていなければ、仕上がったディスプレイの品質に悪影響を与える可能性のある外形変化がシートに生じる可能性がある。予備収縮は、ガラス表面の品質を落とし得るガラス片を生成することなく行われなければならず、また空間的に不均一な加熱および/または冷却パターンを通してガラスシート表面を歪ませる。
【0004】
従来、特許文献1に記述されているように、加熱処理中にガラスシートを支持する「閉鎖型カセット」が使用されている。「開放型」や「標準型」のカセットもまた、いくつかの用途に用いられている。閉鎖型カセット支持方法では、多数のガラスシートがカセットの囲い区画内に鉛直方向に保持される。ガラスシートは水平および鉛直の支持材(例えばステンレススチール製のもの)で支持される。特に、反りや表面品質などの物理的特性を維持するために、ガラスシートは周辺部の周囲で支持される。ガラスシートは、一般的に4辺全ての全長に沿って保持される。
【0005】
開放型カセット支持方法では、多数のガラスシートがカセット内部で鉛直方向に保持される。ガラスシートの両側辺および底辺は夫々鉛直および水平の支持材で支持される。閉鎖型カセット支持方法と同様に、ガラスシートはその物理的特性を維持するため周辺部の周囲で支持される。開放型および閉鎖型カセットによる両方法は、加熱処理中のガラスへの重力の影響を一般に最小限に抑える。
【0006】
閉鎖型および開放型の両カセット支持構造では、ガラスシートの少なくとも3つのエッジの略全てに沿って接触されている。この接触によって、シートの損傷すなわち損失がたびたび生じる。全接触による支持はまた、システムの温度特性に対しても影響を与える。明らかであろうが、各エッジに沿った金属の質量濃度は、熱がガラスへと到達する前にエッジやコーナーに沿って金属を通って伝わることにより、エッジの温度プロファイルに影響を与える。さらに、両支持構造において、破片(ガラス粒子およびガラス片を含む)が、掃除が非常に難しい下端エッジの支持材に堆積してしまう。結果として、これらの支持構造では、ガラスシートが下部でプレート破片により著しく汚染されてしまう可能性がある。
【0007】
前述の両支持構造は、シート材料(ステンレススチールなど)を屈曲し成形して必要な組立部品とすることにより製造される。元々、これらの手順は緻密ではなく、製造は難しく、また製造コストがかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0193772号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このため、当技術においては、ガラスシートの物理的形状および特性を維持する加熱処理中に、破片汚染やガラスシートのエッジ沿いの極端な温度勾配を最小限に抑えながらガラスシートを支持するためのシステムおよび方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数のガラスシートを支持するための装置および方法を提供する。一態様において、複数のガラスシート夫々が隣接するシートと接触しないように分離するための支持枠およびセパレータを備えた装置が提供される。さらなる態様において、この分離するためのセパレータは、長手軸を画定するコーム基部と、コーム基部に沿って間隔を空けて配置され外側に突出している複数の突出部とを備えた分離コームを含む。一態様において、隣接する突出部はそれらの間に、ガラスシートのエッジの一部など各ガラスシートの一部を受け入れるように構成された溝を画定する。
【0011】
別の態様において、分離するためのセパレータは、ガラスシート夫々によって画定される平面に実質的に平行な方向で、隣接するガラスシート間に設置するよう構成された少なくとも1つの分離ロッドを含む。さらなる態様において、分離ロッドはガラスシート夫々のエッジ近傍に設置するように構成される。この装置に、分離ロッドを支持するためのセパレータをさらに備えてもよい。
【0012】
さらに別の態様において、分離するためのセパレータは、少なくとも1つの分離コームと、少なくとも1つの分離ロッドを含む。この態様において、ガラスシートの各第1エッジを少なくとも1つの分離コームによって分離し、ガラスシートの第2エッジを少なくとも1つの分離ロッドによって分離してもよいと意図されている。
【0013】
一実施の形態において、複数のガラスシートを加熱処理するための方法が提供される。例示的方法の一態様では、複数のガラスシートを、ガラスシート夫々を分離するための支持枠およびセパレータを備えている装置内に設置する工程を含む。この方法は、ガラスシート夫々をエッジに沿って分離するセパレータを設置する工程、この装置を炉に設置する工程、およびガラスシートを加熱するように炉を操作する工程をさらに含む。
【0014】
本発明のさらなる実施の形態は、その一部が詳細な説明および続く任意の請求項において明らかになるであろう。また一部は詳細な説明から導き出されるであろうし、あるいは本発明を実施することにより分かるであろう。前述の一般的な説明と以下の詳細な説明は両方とも単に例示的および説明的なものであり、開示および/または請求されたとして本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0015】
本発明の好適な実施形態におけるこれらおよび他の特徴は、添付された以下の図面を参照してなされる詳細な説明においてより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一態様によるガラスシート支持装置を示す概略側面図
【図2】本発明の別の態様によるガラスシート支持装置を示す概略側面図
【図3】本発明のさらに別の態様によるガラスシート支持装置を示す概略側面図
【図4】図1、2または3のいずれかに示したような、本発明の一態様によるガラスシート支持装置を示す概略正面図
【図5】本発明の別の態様によるガラスシート支持装置を示す概略側面図
【図6】図5に示したような、本発明の一態様によるガラスシート支持装置を示す概略正面図
【図7】本発明の別の態様によるガラスシート支持装置を示す概略側面図
【図8】本発明のさらに別の態様によるガラスシート支持装置を示す概略側面図
【図9】図8に示したような、本発明の一態様によるガラスシート支持装置を示す概略正面図
【図10】本発明の別の態様によるガラスシート支持装置を示す概略斜視図
【図11】本発明のさらに別の態様によるガラスシート支持装置を示す概略斜視図
【図12】本発明の一態様による分離コームを示す概略図
【図13】本発明の一態様によるコーム枠を示す概略側面図
【図14】本発明の一態様による複数の分離コームの線形配列を示す概略平面図
【図15】本発明のさらに別の態様による複数の分離コームの弓状配列を示す概略平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の以下の説明は、本発明の有効な教示として、その最良の現在分かっている実施形態で提供される。このため、本書において説明された本発明の種々の実施形態に対し、本発明の利益ある効果を得たまま多くの変更を加えることが可能であることは、関連技術の当業者には認識されるであろうし、また明らかであろう。また、本発明の望ましい利益の一部は、本発明の一部の特徴を選択することにより、他の特徴を利用することなく手に入れることができることも明らかであろう。したがって、本発明に対する多くの変更および改作が可能であり、ある状況下では望ましくさえある可能性があり、また本発明の一部であることが当業者には分かるであろう。このため、以下の説明は本発明の原理の実例として提供されるものであり、それを制限するものではない。
【0018】
本書において使用される単数形は、文脈が明らかにそれ以外を指示していなければ複数形の指示対象を含む。このため、例えば分離コームを参照するとき、文脈が明らかにそれ以外を指摘していなければ2以上の同様の分離コームを有する実施形態が含まれる。
【0019】
本書において範囲は、「約」ある特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして表現されることがある。このようにある範囲が表現されるとき、別の実施形態が、そのある特定の値から、および/またはそのもう一方の特定の値までを含む。同様に、値が先行詞「約」を用いて近似値として表現されるとき、その特定の値は別の実施形態を形成することが理解されるであろう。さらに、その範囲夫々の端点は、もう一方の端点との関連において、かつ、もう一方の端点とは独立して、意味のあるものであることが理解されるであろう。
【0020】
本書において使用される「選択的な」または「選択的には」という用語は、続いて記述される事象や状況が起こり得るまたは起こり得ないことを意味し、しかもその記述は、その事象や状況が起こる場合の事例と、起こらない場合の事例を含む。
【0021】
上記で簡潔に概要を述べたように、種々の実施形態において、本発明は加熱処理などの熱処理加工中に複数のガラスシートを支持するための装置および方法を提供する。本発明の一態様における装置は、複数のガラスシートを支持するために提供される。明らかであろうが、本発明の種々の態様によるガラスシートは1つ以上のエッジを有するものとすることができる。例えばガラスシートを、4つのエッジと、一般に正方形、長方形、台形、平行四辺形または他の形状を有するものとすることができる。選択的には、1つの連続的なエッジを有する実質的に円形、横長、または楕円形のガラスシートとすることもできる。また、2つ、3つ、5つなどのエッジを有する他のガラスシートとすることも可能であり、これらは本発明の範囲内であると意図される。様々な長さ、高さおよび厚さを含む種々のサイズのガラスシートもまた本発明の範囲内で意図される。
【0022】
装置は、一態様において、複数のガラスシート夫々が隣接するシートと接触しないように分離するためのセパレータを備える。例えば、図1に示すように、長手軸を画定するコーム基部112を有する、分離コーム110を提供することができる。コーム基部に沿って間隔を空けて配置された複数の突出部114は、コーム基部から外側に向けて突出しているものとしてもよい。一態様においてこの突出部は、コーム基部の長手軸を実質的に横切る外側方向に突出している。図1に見られるように、隣接した突出部を、それらの間に溝116を画定するように間隔を空けて配置してもよい。各溝は、各ガラスシート104の第1エッジなど、その一部を受け入れるように構成することもできる。特定の態様において、各溝は少なくともガラスシートの厚さと同じ幅を有する。このため、一態様においては、選択される溝の幅を、それに支持されるガラスシートの特定の厚さによって変化させてもよい。明らかであろうが、各溝はガラスシートの各エッジや一部を支持するだけではなく、ガラスシートを隣接するガラスシートから分離するように構成される。
【0023】
一態様において、分離コームの各突出部114は、図1に示すように傾斜した端部を備える末端部分を有してもよい。各ガラスシートが分離コームに挿入されるとき、この傾斜した端部は各ガラスシートを各溝へと導くために用いることができる。種々の態様において、突出部を任意形状とすることができる。例えば図3を参照すると、一態様において、分離コーム210は実質的に「T」字状の突出部214を有して提供される。突出部の基端を第1の距離d1の間隔を空けて配置し、突出部の先端を第2の距離d2の間隔を空けて配置することができる。ある態様において、第2の距離は少なくとも各ガラスシートの厚さと同じ幅を有する。上述したように、この距離は各溝216に受け入れられるガラスシートの特定の厚さによって選択してもよい。この手法では、各ガラスシートが分離コーム210によって支持されているときに、溝に受け入れられるエッジ106bのようなガラスシートのエッジが分離コームと接触しないように突出部を成形することができる。
【0024】
他の形状を有する突出部が本発明の範囲内で意図されており、例えば、ガラスシートを分離するが、隣接する突出部間の溝に設置されるエッジとの接触を最小限とするように、または接触しないように構成された突出部もある。例えば、各突出部がその基端部と先端部との間に延在する側面を有し、この側面が各溝に対して凹状を呈するものが挙げられる。このように一例として、各溝を実質的にフットボール状のものとすることができる。
【0025】
一態様において、1つ以上のガラスシートを分離するために2以上の分離コームを提供してもよい。例えば図2に示すように、ガラスシートを分離するために、端部が傾斜している突出部を有する2以上の分離コーム110を使用してもよい。第1分離コーム110Aを、ガラスシートの第1エッジ106aを受け入れて分離するように設置し、第2分離コーム110Bを、ガラスシートの対向する第2エッジ106bを受け入れて分離するように設置してもよい。第1および第2エッジはガラスエッジの任意のエッジとすることができると意図されているが、一態様において、第1エッジを下端エッジとし、第2エッジを上端エッジとしてもよい。側面エッジなど、ガラスシートの第3エッジ106cおよび/または第4エッジでガラスシートを分離するように、1つ以上の分離コームをさらに提供してもよい。例えば4つのエッジを有するガラスシートの場合には、2以上の分離コームを、上端および下端エッジ、上端および側面エッジ、下端および側面エッジ、両側面エッジ、あるいは全エッジなど、任意のエッジの組合せでガラスシートを分離するように提供してもよい。さらに、2以上の分離コームを、各ガラスシート夫々の単一のエッジに沿ってガラスシートを分離するように提供してもよい。例えばガラスシートの下端エッジ、または上端エッジ、あるいは側面エッジを分離するために複数の分離コームを提供してもよい。その他のエッジを支持するようにさらなる分離コームを提供してもよく、例えば、複数のエッジ夫々を複数の分離コームによって分離してもよい。
【0026】
図3に示すように、いくつかの態様において、ガラスシートを隣接するガラスシートから1つのエッジ106aに沿って分離するために、端部が傾斜している突出部を有する第1分離コーム110を提供することができる。「T」字形の突出部を有する第2分離コーム210を、ガラスシートを他のガラスシートから別のエッジ106bに沿って分離するために提供してもよい。上述したように、この分離コームは任意の組合せで任意の数量、提供することが可能であり、ガラスシートの任意のまたは全てのエッジに沿って、複数のガラスシートを分離することができる。図4は、図2または3に示すような、2つの分離コームによりガラスシートの上端および下端エッジに沿って支持されているガラスシートの正面図を示したものである。
【0027】
別の態様において、複数のガラスシートを分離するために他のセパレータを提供することもできる。例えば、図5および6に示すように、1つ以上の細長い分離ロッド130をガラスシートを分離するために提供してもよい。明らかであろうが、各分離ロッドは、基端部および対向する先端部を有するとすることができる。一態様において各分離ロッドは、少なくとも2つの隣接したガラスシート間に、ガラスシート夫々によって画定される平面に実質的に平行な方向で設置されるように構成されている。この分離ロッドは、各隣接するガラスシートの上端、下端、あるいは側面エッジなどのエッジの近傍に設置してもよい。
【0028】
さらなる態様において、セパレータを、少なくとも1つの分離ロッドを支持するために提供することもできる。図5に示すように、例えば、1つ以上の溝134を有する支持構造物132を提供してもよい。各溝は分離ロッド夫々の一部を受け入れるように構成することができる。例えば、図6の正面図に示すように、分離ロッドは、ガラスシート104の第1エッジ106bの近傍に、これに実質的に平行に延在するように設置することができる。分離ロッドの基端部および先端部は、隣接する第2エッジ106cおよび第3エッジ106dを超えて延在してもよい。分離ロッドの基端部を第1支持構造物によって支持し、分離ロッドの先端部を第2支持構造物によって支持してもよい。
【0029】
図7に示すように、一態様において、複数の第1分離ロッド130Aは、ガラスシートの各第1エッジ(例えば、これに限定されないが、下端エッジ)近傍で複数のガラスシートを分離するように提供することができる。複数の第2分離ロッド130Bは、ガラスシートの各第2エッジ(例えば、これに限定されないが、上端エッジ)近傍でガラスシートを分離するように提供することができる。各支持構造物132は、第1および第2の分離ロッド列の、基端部および先端部を支持するように提供してもよい。
【0030】
明らかであろうが、数個の分離ロッドを提供して、上端、下端、側面エッジおよび他のエッジを含むガラスシートの種々のエッジ近傍に設置することができる。一態様において、1つ以上の分離ロッドを、例えば図7、9および10に示すように、ガラスシートの各下端エッジ近傍でガラスシートを分離するように提供することができる。この態様において、1つ以上の支持板140を、ガラスシートの下端エッジの少なくとも一部を支持するように提供してもよい。
【0031】
図5に示すように、本発明の一態様による分離ロッドは、実質的に円形の断面を有する。しかしながら、分離ロッドは、例えばこれらに限られないが、正方形、長方形、楕円形、三角形、横長状、または他の非円形形状など、非円形の断面を有するものとしてもよいと意図されている。
【0032】
種々の態様において、隣接したシートが接触しないように種々のセパレータを提供することができる。上述したように、ガラスシートの1つ以上のエッジに沿って1つ以上の分離コームを設置することができる。選択的には、1つ以上の分離ロッド列を、ガラスシートの1つ以上のエッジの近傍に設置してもよい。さらに別の態様において、分離コームと分離ロッドの組合せを提供することもできる。図5は、ガラスシートの下端エッジを受け入れるための端部が傾斜した突出部と溝とを有する、少なくとも1つの分離コーム110を備えた例示的装置を示している。ガラスシートの上端エッジ近傍の部分は、少なくとも1つの支持構造物132によって支持される分離ロッド130により分離される。図10はこの例示的態様の斜視図であり、ここでは数個の分離コームの列がガラスシートの下端エッジを支持し分離するために提供されている。図8は、上端エッジ近傍でガラスシートを分離するための「T」字形突出部を有する、少なくとも1つの分離コーム210を備えた別の例示的装置を示している。複数の分離ロッドが、その下端エッジ近傍でガラスシートを分離するために提供される。この下端エッジは、1つ以上の支持板140により支持してもよい。図9はこの例示的態様の正面図を示し、ここでは数個の支持板がガラスシートの下端エッジを支持するために提供されている。明らかであろうが、ガラスシートの任意のあるいは全てのエッジを支持するために、分離コームと分離ロッドを任意の組合せで提供することが可能であり、上述の組合せには限られないと意図されている。
【0033】
一態様では、複数の分離コームを提供して、複数のガラスシートを分離するように構成することができる。この複数の分離コームは、各ガラスエッジに沿って互いに間隔を空けて配置してもよい。ある特定の態様においては、各コーム基部の長手軸が実質的に互いに平行になるように分離コームを配置してもよい。さらなる態様において、連結器を介して分離コームを互いに接続してもよい。例えば図12を参照すると、分離コームのコーム基部112は、各連結器を受け入れおよび/または嵌め込むための1つ以上の開口124を画定することができる。図13は、例えば、連結ロッド122によって接続された数個の分離コームの側面を示している。連結ロッドは、隣接する各分離コームの対応する開口を貫通することができる。選択的には、図10に例示的に示すように、隣接する分離コームを接続するため、連結器222を分離コームの一部に取り付け、溶接、さもなければ接続してもよい。
【0034】
一態様において、数個の分離コームを連結器を介して接続し、コーム枠を形成することができる。図14には、配列を形成するため、数個の分離コームを数個の連結ロッド122で接続した例示的なコーム枠120が示されている。特定の態様によれば、各分離コームの対応する溝116が実質的に共通の平面内に位置する線形配列を形成するように、分離コームを接続することができる。この共通の平面を、分離コームの長手軸に垂直な方向に実質的に平坦で、溝により画定される軸と平行であるとすることもできる。このため、図14に見られるように、ガラスシート104は分離コームの対応する溝内に設置することができ、その平坦で平面的な形状を維持することができる。線形的な外形を有していない(例えば、これに限定されないが、円形エッジなどの)ガラスのエッジを支持するために分離コームを互いにずらすことができると意図されているが、一方で溝は共通の平面内に留まるであろう。このため、エッジは様々な部分で支持される可能性があるが、その間ガラスシートは平坦で平面的な形状に維持される。
【0035】
選択的には、分離コームを非線形配列を形成するように設置してもよく、例えば分離コーム夫々の対応する溝が共通の弓状平面に位置する、弓状の配列とすることもできる。例えば図15を参照すると、分離コームを、各コーム基部の長手軸が各隣接する分離コームと平行になるように設置することができるが、各溝を隣接する溝とずらしてもよい。この態様では、分離コームによって分離されるガラスシートの形状に影響を与えるように、特定の様式で分離コームを設置することができる。例えば、分離コームを弓状の配列で設置することにより、図15に示すように、ガラスシートを弓状平面に形成することができる。
【0036】
種々の態様によれば、熱処理(例えば、加熱および/または冷却)中の形状変形を減少させるために、セパレータの製造に低膨張材料を使用してもよい。一態様においてロッドを、セラミックを含むものとすることができる。選択的には、分離ロッドを、スチールを含むものとしてもよい。さらに別の態様において、分離ロッドは非鉄金属を含むものであってもよい。分離コームは、一態様において、スチールを機械加工したものであってもよい。他の材料をセパレータの製造に用いることも可能であり、本発明の範囲内で意図される。
【0037】
さらなる態様において、例えば図10および11に示すような支持枠102を装置に備えてもよい。この支持枠を、開放構造を画定する部材を含むものとしてもよい。選択的には、支持枠は閉鎖構造を画定する壁を有するものであってもよい。この支持枠は、著しく変形することなく高温に耐え得るスチールや他の金属など、当技術において公知の種々の材料から組み立てることができる。分離コームは、この支持枠に取り付けまたは設置することができる。例えば、図1のように、支持枠の一部を受け入れるように構成された切込みを分離コーム110の両端部に設けてもよい。選択的には、図3に示すように、支持枠の一部に載るように構成されたコーム基部から伸びる突出部を、分離コーム210に備えてもよい。
【0038】
支持枠に分離コームを取り付けまたは設置するには種々の手法が可能であると考えられ、図面に示された手法に限られるものではないと意図されている。例えば、1つ以上の分離コームを支持枠に取外しできないように、または取外し可能に取り付けることができる。同様に、分離ロッドを支持するために構成された支持構造物132を、支持枠の一部に取り付けてもよい。選択的には、支持枠の一部を、支持構造物を形成するように機械加工してもよい。
【0039】
複数のガラスシートを加熱処理する方法は、本発明の種々の態様に従って提供される。一態様における方法は、複数のガラスシートを、そのガラスシートを分離するためのセパレータを備えた装置内に設置する工程を含む。これまでずっと述べてきたように、例示的装置は、長手軸を確定するコーム基部と、このコーム基部に沿って間隔を空けて配置された複数の突出部とを備えた1つ以上の分離コームを含むものとすることができる。この突出部は、図1に示されているように、傾斜している先端を有するように成形してもよい。選択的には、この突出部を図3に示されているように、実質的に「T」字形としてもよい。さらに別の態様において、この突出部を任意の形状としてもよく、例えばガラスシートの一部を受け入れるように構成された溝をその間に画定する隣接する突出部が挙げられる。
【0040】
さらなる態様によれば、この方法は、少なくとも1つの分離コームをガラスシートの少なくとも1つのエッジに沿って設置する工程を含む。例えば、4つのエッジを有するガラスシートは、図4に示すように提供することができる。分離コームは、上端、下端または側面エッジ、あるいはこれらを2以上組み合わせたエッジに沿って設置してもよい。一態様において、端部が傾斜している突出部を備えた分離コームを提供することができる。この態様において、ガラスシートのエッジに沿って分離コームを設置する工程は、各ガラスシートを夫々溝へと滑り込ませる工程を含むものとすることができる。上述したように、傾斜した突出部はガラスシートを夫々溝へと導く助けとなり得る。選択的には、「T」字形の突出部を備えている分離コーム210を提供してもよい。この態様において、分離コームを、第1エッジ近傍でガラスシートを分離するように構成してもよい。このガラスシートは、挿入時に第1エッジが分離コームと接触しないように、分離コームの側面から溝216へと滑り込ませてもよい。例えば、いくつかの用途においては、ガラスシートの品質に影響を与え得る小片、ひび、または他の表面欠陥や粒子が生じないように、ガラスシートのエッジとの実質的な接触を避けることが重要となり得る。
【0041】
この方法は、ガラスシートの1つ以上のさらなるエッジに沿って、追加の分離コームを設置する工程をさらに含むこともできる。この分離コームは、ガラスシートの全エッジよりも少ないエッジを分離コームによって支持するように、互いに距離を空けて配置してもよい。この態様では、ガラスシートのエッジ全体を支持する装置と比較して、エッジ近傍のガラスシートの温度プロファイルに与える影響が減少する可能性がある。このため、温度処理加工中の加熱または冷却時におけるガラスシートの温度プロファイルを、より均一に維持することができる。
【0042】
一態様において、ガラスシートを、ガラスシートの周辺すなわち外側エッジから離れた位置に良質領域を夫々備えたものとしてもよい。逆に言うと、エッジとこの良質領域の間には、非良質領域を含む区域が存在してもよい。例えば、これ以外の距離が当技術では公知であるが、LCDガラスシートは、約0mmから約25mmの範囲の距離でガラスシートのエッジから内側に延伸する非良質領域を有することが知られている。いくつかの用途においては、仮に接触したとしても、ガラスシートの非良質領域のみが分離コームと接触するように構成するよう意図されている。このため、分離コームを、良質領域が接触しないような大きさおよび形状とすることもできる。
【0043】
この方法は、第2分離コームをガラスシートの第1エッジに沿って第1分離コームから距離を空けて設置する工程をさらに含むこともできる。上述したように、いくつかの態様においては、複数の分離コームを互いに距離を空けて実質的に線形の配列に配置してもよい。この態様においては、分離コームの長手軸は互いに実質的に平行であり、各分離コーム夫々の対応する溝は実質的に共通の平面内に位置するとしてもよい。例示的な線形配列は図14に示されている。選択的には、分離コームを互いに距離を空けて弓状の配列に配置してもよい。弓状の配列において、長手軸は互いに実質的に平行であり、各分離コーム夫々の対応する溝は実質的に共通の弓状平面内に位置するとしてもよい。例示的な弓状配列は図15に示されている。
【0044】
ガラスシートの第1エッジに沿って分離コームを設置する工程には、最初にコームを線形配列に配置し、さらにガラスシートを対応する溝に設置する工程を含んでもよい。設置する工程には、その後、加熱処理加工の前またはその間に、コームを線形配列から弓状配列へと動かす工程を含んでもよい。一態様において、最初から弓状に配列されたコームにガラスシートが設置されるとしても、あるいは、ガラスシートを受け入れた後に弓状配列が配置されるとしても、ガラスシートが弓状配列の共通の弓状平面に対応する外形となるように十分にガラスシートを加熱する工程をこの方法に含むことができる。
【0045】
数個の分離コームを(これに限られるものではないが、線形または弓状の配列で)配置し、連結器を介して互いに接続してコーム枠を形成してもよい。従って、ガラスシートの1つのエッジは1つのコーム枠によって支持することができる。第2コーム枠を複数の第2分離コームによって形成し、ガラスシートの第2エッジを支持するために用いることもできる。さらなる態様において、数個のコーム枠を互いに接続して、ガラスシートの実質的に各エッジを支持する枠を形成してもよい。
【0046】
さらに別の態様において、例示的装置は、隣接するガラスシートの間に、ガラスシート夫々によって画定される平面に実質的に平行な方向で設置するように構成された1つ以上の細長い分離ロッドを含むものとすることができる。本発明の方法は、少なくとも2つの隣接するガラスシート間に少なくとも1つの分離ロッドを設置する工程をさらに含むこともできる。分離ロッドは、ガラスシート夫々によって画定される平面に実質的に平行な方向で、ガラスシートの第1エッジ近傍に設置してもよい。上述のように、ガラスシートのさらなるエッジ近傍に、さらに分離ロッドを設置してもよい。一態様において、分離ロッドはガラスシートのエッジ近傍に設置されるがエッジに接触することはなく、ガラスシートのエッジ全体を支持する装置と比較すると、結果的にエッジに沿った温度プロファイルに与える影響が減少する。種々の態様において、複数のガラスシートを分離するために、分離コームと分離ロッドの組合せを提供することもできる。
【0047】
さらなる態様において本発明の方法は、この装置を炉に設置する工程を含む。この炉は、装置内に設置されたガラスシート夫々を加熱するように操作することができる。一態様においてガラスシートは、対流により加熱してもよい。選択的には、ガラスシートを放射線により、あるいは放射線と対流を組み合わせて加熱してもよい。
【0048】
最後に、本発明についてここまである実例や特定の実施形態に関し詳細に説明してきたが、これに限定されると考えられるべきではなく、添付の請求項において画定される本発明の広い精神および範囲から逸脱することなく多くの変形が可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0049】
104 ガラスシート
106a、106b エッジ
110、210 分離コーム
112 コーム基部
114、214 突出部
116、216 溝
130 分離ロッド
132 支持構造物
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理加工中にガラスシートを支持するための装置および方法に関する。特に、加熱処理加工中に、隣接するガラスシートが接触しないように分離し、その物理的形状を維持するようにガラスシートを支持するための装置および方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ガラスシート(例えば、液晶ディスプレイすなわち「LCD」ガラスシート)の製造業者は、出荷前にガラスシートに加熱処理を施して、ガラスを予備収縮または圧縮することが多い。ガラスシートの予備収縮や圧縮は、一般にガラスシートの歪み点よりも低い色々な温度で行われる。圧縮すなわち緻密化は、顧客がガラスシートを処理している間にガラスの寸法が変化することを最小限に抑えるために行われる。
【0003】
一例としては、ガラスシートに、限られた時間(例えば約1時間)の間その平坦性や表面品質など物理的特性の仕様に影響を与えることなく、650℃で加熱処理を施すことができる。この加工を利用している製品は、高解像度用途に使用されているポリシリコン液晶ディスプレイ(P−Si LCD)機器である。LCDガラスは製造加工中、比較的高温(例えば、500℃以上)にさらされる。もしガラスシートに予備収縮が施されていなければ、仕上がったディスプレイの品質に悪影響を与える可能性のある外形変化がシートに生じる可能性がある。予備収縮は、ガラス表面の品質を落とし得るガラス片を生成することなく行われなければならず、また空間的に不均一な加熱および/または冷却パターンを通してガラスシート表面を歪ませる。
【0004】
従来、特許文献1に記述されているように、加熱処理中にガラスシートを支持する「閉鎖型カセット」が使用されている。「開放型」や「標準型」のカセットもまた、いくつかの用途に用いられている。閉鎖型カセット支持方法では、多数のガラスシートがカセットの囲い区画内に鉛直方向に保持される。ガラスシートは水平および鉛直の支持材(例えばステンレススチール製のもの)で支持される。特に、反りや表面品質などの物理的特性を維持するために、ガラスシートは周辺部の周囲で支持される。ガラスシートは、一般的に4辺全ての全長に沿って保持される。
【0005】
開放型カセット支持方法では、多数のガラスシートがカセット内部で鉛直方向に保持される。ガラスシートの両側辺および底辺は夫々鉛直および水平の支持材で支持される。閉鎖型カセット支持方法と同様に、ガラスシートはその物理的特性を維持するため周辺部の周囲で支持される。開放型および閉鎖型カセットによる両方法は、加熱処理中のガラスへの重力の影響を一般に最小限に抑える。
【0006】
閉鎖型および開放型の両カセット支持構造では、ガラスシートの少なくとも3つのエッジの略全てに沿って接触されている。この接触によって、シートの損傷すなわち損失がたびたび生じる。全接触による支持はまた、システムの温度特性に対しても影響を与える。明らかであろうが、各エッジに沿った金属の質量濃度は、熱がガラスへと到達する前にエッジやコーナーに沿って金属を通って伝わることにより、エッジの温度プロファイルに影響を与える。さらに、両支持構造において、破片(ガラス粒子およびガラス片を含む)が、掃除が非常に難しい下端エッジの支持材に堆積してしまう。結果として、これらの支持構造では、ガラスシートが下部でプレート破片により著しく汚染されてしまう可能性がある。
【0007】
前述の両支持構造は、シート材料(ステンレススチールなど)を屈曲し成形して必要な組立部品とすることにより製造される。元々、これらの手順は緻密ではなく、製造は難しく、また製造コストがかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0193772号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このため、当技術においては、ガラスシートの物理的形状および特性を維持する加熱処理中に、破片汚染やガラスシートのエッジ沿いの極端な温度勾配を最小限に抑えながらガラスシートを支持するためのシステムおよび方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数のガラスシートを支持するための装置および方法を提供する。一態様において、複数のガラスシート夫々が隣接するシートと接触しないように分離するための支持枠およびセパレータを備えた装置が提供される。さらなる態様において、この分離するためのセパレータは、長手軸を画定するコーム基部と、コーム基部に沿って間隔を空けて配置され外側に突出している複数の突出部とを備えた分離コームを含む。一態様において、隣接する突出部はそれらの間に、ガラスシートのエッジの一部など各ガラスシートの一部を受け入れるように構成された溝を画定する。
【0011】
別の態様において、分離するためのセパレータは、ガラスシート夫々によって画定される平面に実質的に平行な方向で、隣接するガラスシート間に設置するよう構成された少なくとも1つの分離ロッドを含む。さらなる態様において、分離ロッドはガラスシート夫々のエッジ近傍に設置するように構成される。この装置に、分離ロッドを支持するためのセパレータをさらに備えてもよい。
【0012】
さらに別の態様において、分離するためのセパレータは、少なくとも1つの分離コームと、少なくとも1つの分離ロッドを含む。この態様において、ガラスシートの各第1エッジを少なくとも1つの分離コームによって分離し、ガラスシートの第2エッジを少なくとも1つの分離ロッドによって分離してもよいと意図されている。
【0013】
一実施の形態において、複数のガラスシートを加熱処理するための方法が提供される。例示的方法の一態様では、複数のガラスシートを、ガラスシート夫々を分離するための支持枠およびセパレータを備えている装置内に設置する工程を含む。この方法は、ガラスシート夫々をエッジに沿って分離するセパレータを設置する工程、この装置を炉に設置する工程、およびガラスシートを加熱するように炉を操作する工程をさらに含む。
【0014】
本発明のさらなる実施の形態は、その一部が詳細な説明および続く任意の請求項において明らかになるであろう。また一部は詳細な説明から導き出されるであろうし、あるいは本発明を実施することにより分かるであろう。前述の一般的な説明と以下の詳細な説明は両方とも単に例示的および説明的なものであり、開示および/または請求されたとして本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0015】
本発明の好適な実施形態におけるこれらおよび他の特徴は、添付された以下の図面を参照してなされる詳細な説明においてより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一態様によるガラスシート支持装置を示す概略側面図
【図2】本発明の別の態様によるガラスシート支持装置を示す概略側面図
【図3】本発明のさらに別の態様によるガラスシート支持装置を示す概略側面図
【図4】図1、2または3のいずれかに示したような、本発明の一態様によるガラスシート支持装置を示す概略正面図
【図5】本発明の別の態様によるガラスシート支持装置を示す概略側面図
【図6】図5に示したような、本発明の一態様によるガラスシート支持装置を示す概略正面図
【図7】本発明の別の態様によるガラスシート支持装置を示す概略側面図
【図8】本発明のさらに別の態様によるガラスシート支持装置を示す概略側面図
【図9】図8に示したような、本発明の一態様によるガラスシート支持装置を示す概略正面図
【図10】本発明の別の態様によるガラスシート支持装置を示す概略斜視図
【図11】本発明のさらに別の態様によるガラスシート支持装置を示す概略斜視図
【図12】本発明の一態様による分離コームを示す概略図
【図13】本発明の一態様によるコーム枠を示す概略側面図
【図14】本発明の一態様による複数の分離コームの線形配列を示す概略平面図
【図15】本発明のさらに別の態様による複数の分離コームの弓状配列を示す概略平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の以下の説明は、本発明の有効な教示として、その最良の現在分かっている実施形態で提供される。このため、本書において説明された本発明の種々の実施形態に対し、本発明の利益ある効果を得たまま多くの変更を加えることが可能であることは、関連技術の当業者には認識されるであろうし、また明らかであろう。また、本発明の望ましい利益の一部は、本発明の一部の特徴を選択することにより、他の特徴を利用することなく手に入れることができることも明らかであろう。したがって、本発明に対する多くの変更および改作が可能であり、ある状況下では望ましくさえある可能性があり、また本発明の一部であることが当業者には分かるであろう。このため、以下の説明は本発明の原理の実例として提供されるものであり、それを制限するものではない。
【0018】
本書において使用される単数形は、文脈が明らかにそれ以外を指示していなければ複数形の指示対象を含む。このため、例えば分離コームを参照するとき、文脈が明らかにそれ以外を指摘していなければ2以上の同様の分離コームを有する実施形態が含まれる。
【0019】
本書において範囲は、「約」ある特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして表現されることがある。このようにある範囲が表現されるとき、別の実施形態が、そのある特定の値から、および/またはそのもう一方の特定の値までを含む。同様に、値が先行詞「約」を用いて近似値として表現されるとき、その特定の値は別の実施形態を形成することが理解されるであろう。さらに、その範囲夫々の端点は、もう一方の端点との関連において、かつ、もう一方の端点とは独立して、意味のあるものであることが理解されるであろう。
【0020】
本書において使用される「選択的な」または「選択的には」という用語は、続いて記述される事象や状況が起こり得るまたは起こり得ないことを意味し、しかもその記述は、その事象や状況が起こる場合の事例と、起こらない場合の事例を含む。
【0021】
上記で簡潔に概要を述べたように、種々の実施形態において、本発明は加熱処理などの熱処理加工中に複数のガラスシートを支持するための装置および方法を提供する。本発明の一態様における装置は、複数のガラスシートを支持するために提供される。明らかであろうが、本発明の種々の態様によるガラスシートは1つ以上のエッジを有するものとすることができる。例えばガラスシートを、4つのエッジと、一般に正方形、長方形、台形、平行四辺形または他の形状を有するものとすることができる。選択的には、1つの連続的なエッジを有する実質的に円形、横長、または楕円形のガラスシートとすることもできる。また、2つ、3つ、5つなどのエッジを有する他のガラスシートとすることも可能であり、これらは本発明の範囲内であると意図される。様々な長さ、高さおよび厚さを含む種々のサイズのガラスシートもまた本発明の範囲内で意図される。
【0022】
装置は、一態様において、複数のガラスシート夫々が隣接するシートと接触しないように分離するためのセパレータを備える。例えば、図1に示すように、長手軸を画定するコーム基部112を有する、分離コーム110を提供することができる。コーム基部に沿って間隔を空けて配置された複数の突出部114は、コーム基部から外側に向けて突出しているものとしてもよい。一態様においてこの突出部は、コーム基部の長手軸を実質的に横切る外側方向に突出している。図1に見られるように、隣接した突出部を、それらの間に溝116を画定するように間隔を空けて配置してもよい。各溝は、各ガラスシート104の第1エッジなど、その一部を受け入れるように構成することもできる。特定の態様において、各溝は少なくともガラスシートの厚さと同じ幅を有する。このため、一態様においては、選択される溝の幅を、それに支持されるガラスシートの特定の厚さによって変化させてもよい。明らかであろうが、各溝はガラスシートの各エッジや一部を支持するだけではなく、ガラスシートを隣接するガラスシートから分離するように構成される。
【0023】
一態様において、分離コームの各突出部114は、図1に示すように傾斜した端部を備える末端部分を有してもよい。各ガラスシートが分離コームに挿入されるとき、この傾斜した端部は各ガラスシートを各溝へと導くために用いることができる。種々の態様において、突出部を任意形状とすることができる。例えば図3を参照すると、一態様において、分離コーム210は実質的に「T」字状の突出部214を有して提供される。突出部の基端を第1の距離d1の間隔を空けて配置し、突出部の先端を第2の距離d2の間隔を空けて配置することができる。ある態様において、第2の距離は少なくとも各ガラスシートの厚さと同じ幅を有する。上述したように、この距離は各溝216に受け入れられるガラスシートの特定の厚さによって選択してもよい。この手法では、各ガラスシートが分離コーム210によって支持されているときに、溝に受け入れられるエッジ106bのようなガラスシートのエッジが分離コームと接触しないように突出部を成形することができる。
【0024】
他の形状を有する突出部が本発明の範囲内で意図されており、例えば、ガラスシートを分離するが、隣接する突出部間の溝に設置されるエッジとの接触を最小限とするように、または接触しないように構成された突出部もある。例えば、各突出部がその基端部と先端部との間に延在する側面を有し、この側面が各溝に対して凹状を呈するものが挙げられる。このように一例として、各溝を実質的にフットボール状のものとすることができる。
【0025】
一態様において、1つ以上のガラスシートを分離するために2以上の分離コームを提供してもよい。例えば図2に示すように、ガラスシートを分離するために、端部が傾斜している突出部を有する2以上の分離コーム110を使用してもよい。第1分離コーム110Aを、ガラスシートの第1エッジ106aを受け入れて分離するように設置し、第2分離コーム110Bを、ガラスシートの対向する第2エッジ106bを受け入れて分離するように設置してもよい。第1および第2エッジはガラスエッジの任意のエッジとすることができると意図されているが、一態様において、第1エッジを下端エッジとし、第2エッジを上端エッジとしてもよい。側面エッジなど、ガラスシートの第3エッジ106cおよび/または第4エッジでガラスシートを分離するように、1つ以上の分離コームをさらに提供してもよい。例えば4つのエッジを有するガラスシートの場合には、2以上の分離コームを、上端および下端エッジ、上端および側面エッジ、下端および側面エッジ、両側面エッジ、あるいは全エッジなど、任意のエッジの組合せでガラスシートを分離するように提供してもよい。さらに、2以上の分離コームを、各ガラスシート夫々の単一のエッジに沿ってガラスシートを分離するように提供してもよい。例えばガラスシートの下端エッジ、または上端エッジ、あるいは側面エッジを分離するために複数の分離コームを提供してもよい。その他のエッジを支持するようにさらなる分離コームを提供してもよく、例えば、複数のエッジ夫々を複数の分離コームによって分離してもよい。
【0026】
図3に示すように、いくつかの態様において、ガラスシートを隣接するガラスシートから1つのエッジ106aに沿って分離するために、端部が傾斜している突出部を有する第1分離コーム110を提供することができる。「T」字形の突出部を有する第2分離コーム210を、ガラスシートを他のガラスシートから別のエッジ106bに沿って分離するために提供してもよい。上述したように、この分離コームは任意の組合せで任意の数量、提供することが可能であり、ガラスシートの任意のまたは全てのエッジに沿って、複数のガラスシートを分離することができる。図4は、図2または3に示すような、2つの分離コームによりガラスシートの上端および下端エッジに沿って支持されているガラスシートの正面図を示したものである。
【0027】
別の態様において、複数のガラスシートを分離するために他のセパレータを提供することもできる。例えば、図5および6に示すように、1つ以上の細長い分離ロッド130をガラスシートを分離するために提供してもよい。明らかであろうが、各分離ロッドは、基端部および対向する先端部を有するとすることができる。一態様において各分離ロッドは、少なくとも2つの隣接したガラスシート間に、ガラスシート夫々によって画定される平面に実質的に平行な方向で設置されるように構成されている。この分離ロッドは、各隣接するガラスシートの上端、下端、あるいは側面エッジなどのエッジの近傍に設置してもよい。
【0028】
さらなる態様において、セパレータを、少なくとも1つの分離ロッドを支持するために提供することもできる。図5に示すように、例えば、1つ以上の溝134を有する支持構造物132を提供してもよい。各溝は分離ロッド夫々の一部を受け入れるように構成することができる。例えば、図6の正面図に示すように、分離ロッドは、ガラスシート104の第1エッジ106bの近傍に、これに実質的に平行に延在するように設置することができる。分離ロッドの基端部および先端部は、隣接する第2エッジ106cおよび第3エッジ106dを超えて延在してもよい。分離ロッドの基端部を第1支持構造物によって支持し、分離ロッドの先端部を第2支持構造物によって支持してもよい。
【0029】
図7に示すように、一態様において、複数の第1分離ロッド130Aは、ガラスシートの各第1エッジ(例えば、これに限定されないが、下端エッジ)近傍で複数のガラスシートを分離するように提供することができる。複数の第2分離ロッド130Bは、ガラスシートの各第2エッジ(例えば、これに限定されないが、上端エッジ)近傍でガラスシートを分離するように提供することができる。各支持構造物132は、第1および第2の分離ロッド列の、基端部および先端部を支持するように提供してもよい。
【0030】
明らかであろうが、数個の分離ロッドを提供して、上端、下端、側面エッジおよび他のエッジを含むガラスシートの種々のエッジ近傍に設置することができる。一態様において、1つ以上の分離ロッドを、例えば図7、9および10に示すように、ガラスシートの各下端エッジ近傍でガラスシートを分離するように提供することができる。この態様において、1つ以上の支持板140を、ガラスシートの下端エッジの少なくとも一部を支持するように提供してもよい。
【0031】
図5に示すように、本発明の一態様による分離ロッドは、実質的に円形の断面を有する。しかしながら、分離ロッドは、例えばこれらに限られないが、正方形、長方形、楕円形、三角形、横長状、または他の非円形形状など、非円形の断面を有するものとしてもよいと意図されている。
【0032】
種々の態様において、隣接したシートが接触しないように種々のセパレータを提供することができる。上述したように、ガラスシートの1つ以上のエッジに沿って1つ以上の分離コームを設置することができる。選択的には、1つ以上の分離ロッド列を、ガラスシートの1つ以上のエッジの近傍に設置してもよい。さらに別の態様において、分離コームと分離ロッドの組合せを提供することもできる。図5は、ガラスシートの下端エッジを受け入れるための端部が傾斜した突出部と溝とを有する、少なくとも1つの分離コーム110を備えた例示的装置を示している。ガラスシートの上端エッジ近傍の部分は、少なくとも1つの支持構造物132によって支持される分離ロッド130により分離される。図10はこの例示的態様の斜視図であり、ここでは数個の分離コームの列がガラスシートの下端エッジを支持し分離するために提供されている。図8は、上端エッジ近傍でガラスシートを分離するための「T」字形突出部を有する、少なくとも1つの分離コーム210を備えた別の例示的装置を示している。複数の分離ロッドが、その下端エッジ近傍でガラスシートを分離するために提供される。この下端エッジは、1つ以上の支持板140により支持してもよい。図9はこの例示的態様の正面図を示し、ここでは数個の支持板がガラスシートの下端エッジを支持するために提供されている。明らかであろうが、ガラスシートの任意のあるいは全てのエッジを支持するために、分離コームと分離ロッドを任意の組合せで提供することが可能であり、上述の組合せには限られないと意図されている。
【0033】
一態様では、複数の分離コームを提供して、複数のガラスシートを分離するように構成することができる。この複数の分離コームは、各ガラスエッジに沿って互いに間隔を空けて配置してもよい。ある特定の態様においては、各コーム基部の長手軸が実質的に互いに平行になるように分離コームを配置してもよい。さらなる態様において、連結器を介して分離コームを互いに接続してもよい。例えば図12を参照すると、分離コームのコーム基部112は、各連結器を受け入れおよび/または嵌め込むための1つ以上の開口124を画定することができる。図13は、例えば、連結ロッド122によって接続された数個の分離コームの側面を示している。連結ロッドは、隣接する各分離コームの対応する開口を貫通することができる。選択的には、図10に例示的に示すように、隣接する分離コームを接続するため、連結器222を分離コームの一部に取り付け、溶接、さもなければ接続してもよい。
【0034】
一態様において、数個の分離コームを連結器を介して接続し、コーム枠を形成することができる。図14には、配列を形成するため、数個の分離コームを数個の連結ロッド122で接続した例示的なコーム枠120が示されている。特定の態様によれば、各分離コームの対応する溝116が実質的に共通の平面内に位置する線形配列を形成するように、分離コームを接続することができる。この共通の平面を、分離コームの長手軸に垂直な方向に実質的に平坦で、溝により画定される軸と平行であるとすることもできる。このため、図14に見られるように、ガラスシート104は分離コームの対応する溝内に設置することができ、その平坦で平面的な形状を維持することができる。線形的な外形を有していない(例えば、これに限定されないが、円形エッジなどの)ガラスのエッジを支持するために分離コームを互いにずらすことができると意図されているが、一方で溝は共通の平面内に留まるであろう。このため、エッジは様々な部分で支持される可能性があるが、その間ガラスシートは平坦で平面的な形状に維持される。
【0035】
選択的には、分離コームを非線形配列を形成するように設置してもよく、例えば分離コーム夫々の対応する溝が共通の弓状平面に位置する、弓状の配列とすることもできる。例えば図15を参照すると、分離コームを、各コーム基部の長手軸が各隣接する分離コームと平行になるように設置することができるが、各溝を隣接する溝とずらしてもよい。この態様では、分離コームによって分離されるガラスシートの形状に影響を与えるように、特定の様式で分離コームを設置することができる。例えば、分離コームを弓状の配列で設置することにより、図15に示すように、ガラスシートを弓状平面に形成することができる。
【0036】
種々の態様によれば、熱処理(例えば、加熱および/または冷却)中の形状変形を減少させるために、セパレータの製造に低膨張材料を使用してもよい。一態様においてロッドを、セラミックを含むものとすることができる。選択的には、分離ロッドを、スチールを含むものとしてもよい。さらに別の態様において、分離ロッドは非鉄金属を含むものであってもよい。分離コームは、一態様において、スチールを機械加工したものであってもよい。他の材料をセパレータの製造に用いることも可能であり、本発明の範囲内で意図される。
【0037】
さらなる態様において、例えば図10および11に示すような支持枠102を装置に備えてもよい。この支持枠を、開放構造を画定する部材を含むものとしてもよい。選択的には、支持枠は閉鎖構造を画定する壁を有するものであってもよい。この支持枠は、著しく変形することなく高温に耐え得るスチールや他の金属など、当技術において公知の種々の材料から組み立てることができる。分離コームは、この支持枠に取り付けまたは設置することができる。例えば、図1のように、支持枠の一部を受け入れるように構成された切込みを分離コーム110の両端部に設けてもよい。選択的には、図3に示すように、支持枠の一部に載るように構成されたコーム基部から伸びる突出部を、分離コーム210に備えてもよい。
【0038】
支持枠に分離コームを取り付けまたは設置するには種々の手法が可能であると考えられ、図面に示された手法に限られるものではないと意図されている。例えば、1つ以上の分離コームを支持枠に取外しできないように、または取外し可能に取り付けることができる。同様に、分離ロッドを支持するために構成された支持構造物132を、支持枠の一部に取り付けてもよい。選択的には、支持枠の一部を、支持構造物を形成するように機械加工してもよい。
【0039】
複数のガラスシートを加熱処理する方法は、本発明の種々の態様に従って提供される。一態様における方法は、複数のガラスシートを、そのガラスシートを分離するためのセパレータを備えた装置内に設置する工程を含む。これまでずっと述べてきたように、例示的装置は、長手軸を確定するコーム基部と、このコーム基部に沿って間隔を空けて配置された複数の突出部とを備えた1つ以上の分離コームを含むものとすることができる。この突出部は、図1に示されているように、傾斜している先端を有するように成形してもよい。選択的には、この突出部を図3に示されているように、実質的に「T」字形としてもよい。さらに別の態様において、この突出部を任意の形状としてもよく、例えばガラスシートの一部を受け入れるように構成された溝をその間に画定する隣接する突出部が挙げられる。
【0040】
さらなる態様によれば、この方法は、少なくとも1つの分離コームをガラスシートの少なくとも1つのエッジに沿って設置する工程を含む。例えば、4つのエッジを有するガラスシートは、図4に示すように提供することができる。分離コームは、上端、下端または側面エッジ、あるいはこれらを2以上組み合わせたエッジに沿って設置してもよい。一態様において、端部が傾斜している突出部を備えた分離コームを提供することができる。この態様において、ガラスシートのエッジに沿って分離コームを設置する工程は、各ガラスシートを夫々溝へと滑り込ませる工程を含むものとすることができる。上述したように、傾斜した突出部はガラスシートを夫々溝へと導く助けとなり得る。選択的には、「T」字形の突出部を備えている分離コーム210を提供してもよい。この態様において、分離コームを、第1エッジ近傍でガラスシートを分離するように構成してもよい。このガラスシートは、挿入時に第1エッジが分離コームと接触しないように、分離コームの側面から溝216へと滑り込ませてもよい。例えば、いくつかの用途においては、ガラスシートの品質に影響を与え得る小片、ひび、または他の表面欠陥や粒子が生じないように、ガラスシートのエッジとの実質的な接触を避けることが重要となり得る。
【0041】
この方法は、ガラスシートの1つ以上のさらなるエッジに沿って、追加の分離コームを設置する工程をさらに含むこともできる。この分離コームは、ガラスシートの全エッジよりも少ないエッジを分離コームによって支持するように、互いに距離を空けて配置してもよい。この態様では、ガラスシートのエッジ全体を支持する装置と比較して、エッジ近傍のガラスシートの温度プロファイルに与える影響が減少する可能性がある。このため、温度処理加工中の加熱または冷却時におけるガラスシートの温度プロファイルを、より均一に維持することができる。
【0042】
一態様において、ガラスシートを、ガラスシートの周辺すなわち外側エッジから離れた位置に良質領域を夫々備えたものとしてもよい。逆に言うと、エッジとこの良質領域の間には、非良質領域を含む区域が存在してもよい。例えば、これ以外の距離が当技術では公知であるが、LCDガラスシートは、約0mmから約25mmの範囲の距離でガラスシートのエッジから内側に延伸する非良質領域を有することが知られている。いくつかの用途においては、仮に接触したとしても、ガラスシートの非良質領域のみが分離コームと接触するように構成するよう意図されている。このため、分離コームを、良質領域が接触しないような大きさおよび形状とすることもできる。
【0043】
この方法は、第2分離コームをガラスシートの第1エッジに沿って第1分離コームから距離を空けて設置する工程をさらに含むこともできる。上述したように、いくつかの態様においては、複数の分離コームを互いに距離を空けて実質的に線形の配列に配置してもよい。この態様においては、分離コームの長手軸は互いに実質的に平行であり、各分離コーム夫々の対応する溝は実質的に共通の平面内に位置するとしてもよい。例示的な線形配列は図14に示されている。選択的には、分離コームを互いに距離を空けて弓状の配列に配置してもよい。弓状の配列において、長手軸は互いに実質的に平行であり、各分離コーム夫々の対応する溝は実質的に共通の弓状平面内に位置するとしてもよい。例示的な弓状配列は図15に示されている。
【0044】
ガラスシートの第1エッジに沿って分離コームを設置する工程には、最初にコームを線形配列に配置し、さらにガラスシートを対応する溝に設置する工程を含んでもよい。設置する工程には、その後、加熱処理加工の前またはその間に、コームを線形配列から弓状配列へと動かす工程を含んでもよい。一態様において、最初から弓状に配列されたコームにガラスシートが設置されるとしても、あるいは、ガラスシートを受け入れた後に弓状配列が配置されるとしても、ガラスシートが弓状配列の共通の弓状平面に対応する外形となるように十分にガラスシートを加熱する工程をこの方法に含むことができる。
【0045】
数個の分離コームを(これに限られるものではないが、線形または弓状の配列で)配置し、連結器を介して互いに接続してコーム枠を形成してもよい。従って、ガラスシートの1つのエッジは1つのコーム枠によって支持することができる。第2コーム枠を複数の第2分離コームによって形成し、ガラスシートの第2エッジを支持するために用いることもできる。さらなる態様において、数個のコーム枠を互いに接続して、ガラスシートの実質的に各エッジを支持する枠を形成してもよい。
【0046】
さらに別の態様において、例示的装置は、隣接するガラスシートの間に、ガラスシート夫々によって画定される平面に実質的に平行な方向で設置するように構成された1つ以上の細長い分離ロッドを含むものとすることができる。本発明の方法は、少なくとも2つの隣接するガラスシート間に少なくとも1つの分離ロッドを設置する工程をさらに含むこともできる。分離ロッドは、ガラスシート夫々によって画定される平面に実質的に平行な方向で、ガラスシートの第1エッジ近傍に設置してもよい。上述のように、ガラスシートのさらなるエッジ近傍に、さらに分離ロッドを設置してもよい。一態様において、分離ロッドはガラスシートのエッジ近傍に設置されるがエッジに接触することはなく、ガラスシートのエッジ全体を支持する装置と比較すると、結果的にエッジに沿った温度プロファイルに与える影響が減少する。種々の態様において、複数のガラスシートを分離するために、分離コームと分離ロッドの組合せを提供することもできる。
【0047】
さらなる態様において本発明の方法は、この装置を炉に設置する工程を含む。この炉は、装置内に設置されたガラスシート夫々を加熱するように操作することができる。一態様においてガラスシートは、対流により加熱してもよい。選択的には、ガラスシートを放射線により、あるいは放射線と対流を組み合わせて加熱してもよい。
【0048】
最後に、本発明についてここまである実例や特定の実施形態に関し詳細に説明してきたが、これに限定されると考えられるべきではなく、添付の請求項において画定される本発明の広い精神および範囲から逸脱することなく多くの変形が可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0049】
104 ガラスシート
106a、106b エッジ
110、210 分離コーム
112 コーム基部
114、214 突出部
116、216 溝
130 分離ロッド
132 支持構造物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
夫々が少なくとも各第1エッジを備える複数のガラスシートを支持するための装置であって、
支持枠、および、
ガラスシート夫々が隣接するシートと接触しないようにするための、少なくとも1つの分離コームを含むセパレータ、
を備え、該分離コームが、
長手軸を画定するコーム基部、および、
前記コーム基部に沿って間隔を空けて配置され、前記長手軸を実質的に横切る方向に該コーム基部から外側に突出している複数の突出部、を備え、
各突出部が、基端および離れて位置する先端を備え、隣接する突出部がそれらの間に溝を画定し、さらに各溝が各ガラスシートの前記第1エッジの一部を受け入れるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
各突出部が実質的に「T」字形を成し、前記突出部の前記基端が第1の距離だけ間隔を空けて配置され、かつ前記突出部の前記先端が第2の距離だけ間隔を空けて配置され、前記第1の距離が前記第2の距離よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記ガラスシート夫々が第2エッジを備え、前記複数のガラスシートの前記第1エッジを支持するように構成された第1コーム枠と、前記複数のガラスシートの前記第2エッジを支持するように構成された第2コーム枠とをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記ガラスシート夫々が第2エッジを備え、前記セパレータが、基端部および反対側に先端部を有する少なくとも1つの細長い分離ロッドをさらに備え、前記少なくとも1つの細長い分離ロッドが、前記ガラスシート夫々によって画定される平面に実質的に平行な方向で、少なくとも2つの隣接するガラスシートの間に設置されるように構成され、さらに、前記少なくとも1つの細長い分離ロッドが、各隣接するガラスシートの少なくとも前記第2エッジ近傍に設置されるように構成されることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの細長い分離ロッドを支持するための支持要素をさらに備え、該支持要素が、
前記少なくとも1つの細長い分離ロッドの前記基端部を受け入れるための少なくとも1つの溝を備えた第1支持構造物、および、
前記少なくとも1つの細長い分離ロッドの前記先端部を受け入れるための少なくとも1つの溝を備えた第2支持構造物、
を備えていることを特徴とする請求項4記載の装置。
【請求項6】
夫々が少なくとも各第1エッジを備える複数のガラスシートを支持するための装置であって、
支持枠、および、
ガラスシート夫々が隣接するシートと接触しないようにするための、基端部および反対側に先端部を有する少なくとも1つの細長い分離ロッドを含むセパレータ、
を備え、該少なくとも1つの細長い分離ロッドが、前記ガラスシート夫々によって画定される平面に実質的に平行な方向で、少なくとも2つの隣接するガラスシートの間に設置されるように構成され、さらに、前記少なくとも1つの細長い分離ロッドが、各隣接するガラスシートの少なくとも前記第1エッジ近傍に設置されるように構成されることを特徴とする装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの細長い分離ロッドを支持するための支持要素をさらに備え、該支持要素が、
前記少なくとも1つの細長い分離ロッドの前記基端部を受け入れるための少なくとも1つの溝を備えた第1支持構造物、および、
前記少なくとも1つの細長い分離ロッドの前記先端部を受け入れるための少なくとも1つの溝を備えた第2支持構造物、
を備えていることを特徴とする請求項6記載の装置。
【請求項8】
ガラスシート夫々が第2エッジを備え、かつ前記セパレータが少なくとも1つの分離コームをさらに備え、該分離コームが、
長手軸を画定するコーム基部、および、
前記コーム基部に沿って間隔を空けて配置され、前記長手軸を実質的に横切る方向に該コーム基部から外側に突出している複数の突出部、
を備え、各突出部が、基端および離れて位置する先端を備え、隣接する突出部がそれらの間に溝を画定し、さらに各溝が各ガラスシートの前記第2エッジの一部を受け入れるように構成されていることを特徴とする請求項6記載の装置。
【請求項9】
前記複数の突出部が、コーム基部に沿って、少なくとも各ガラスシートの厚さと同じ幅の所定距離だけ間隔を空けて配置されることを特徴とする請求項8記載の装置。
【請求項10】
各突出部が実質的に「T」字形を成し、前記突出部の前記基端が第1の距離だけ間隔を空けて配置され、かつ前記突出部の前記先端が第2の距離だけ間隔を空けて配置され、前記第1の距離が前記第2の距離よりも大きいことを特徴とする請求項8記載の装置。
【請求項1】
夫々が少なくとも各第1エッジを備える複数のガラスシートを支持するための装置であって、
支持枠、および、
ガラスシート夫々が隣接するシートと接触しないようにするための、少なくとも1つの分離コームを含むセパレータ、
を備え、該分離コームが、
長手軸を画定するコーム基部、および、
前記コーム基部に沿って間隔を空けて配置され、前記長手軸を実質的に横切る方向に該コーム基部から外側に突出している複数の突出部、を備え、
各突出部が、基端および離れて位置する先端を備え、隣接する突出部がそれらの間に溝を画定し、さらに各溝が各ガラスシートの前記第1エッジの一部を受け入れるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
各突出部が実質的に「T」字形を成し、前記突出部の前記基端が第1の距離だけ間隔を空けて配置され、かつ前記突出部の前記先端が第2の距離だけ間隔を空けて配置され、前記第1の距離が前記第2の距離よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記ガラスシート夫々が第2エッジを備え、前記複数のガラスシートの前記第1エッジを支持するように構成された第1コーム枠と、前記複数のガラスシートの前記第2エッジを支持するように構成された第2コーム枠とをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記ガラスシート夫々が第2エッジを備え、前記セパレータが、基端部および反対側に先端部を有する少なくとも1つの細長い分離ロッドをさらに備え、前記少なくとも1つの細長い分離ロッドが、前記ガラスシート夫々によって画定される平面に実質的に平行な方向で、少なくとも2つの隣接するガラスシートの間に設置されるように構成され、さらに、前記少なくとも1つの細長い分離ロッドが、各隣接するガラスシートの少なくとも前記第2エッジ近傍に設置されるように構成されることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの細長い分離ロッドを支持するための支持要素をさらに備え、該支持要素が、
前記少なくとも1つの細長い分離ロッドの前記基端部を受け入れるための少なくとも1つの溝を備えた第1支持構造物、および、
前記少なくとも1つの細長い分離ロッドの前記先端部を受け入れるための少なくとも1つの溝を備えた第2支持構造物、
を備えていることを特徴とする請求項4記載の装置。
【請求項6】
夫々が少なくとも各第1エッジを備える複数のガラスシートを支持するための装置であって、
支持枠、および、
ガラスシート夫々が隣接するシートと接触しないようにするための、基端部および反対側に先端部を有する少なくとも1つの細長い分離ロッドを含むセパレータ、
を備え、該少なくとも1つの細長い分離ロッドが、前記ガラスシート夫々によって画定される平面に実質的に平行な方向で、少なくとも2つの隣接するガラスシートの間に設置されるように構成され、さらに、前記少なくとも1つの細長い分離ロッドが、各隣接するガラスシートの少なくとも前記第1エッジ近傍に設置されるように構成されることを特徴とする装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの細長い分離ロッドを支持するための支持要素をさらに備え、該支持要素が、
前記少なくとも1つの細長い分離ロッドの前記基端部を受け入れるための少なくとも1つの溝を備えた第1支持構造物、および、
前記少なくとも1つの細長い分離ロッドの前記先端部を受け入れるための少なくとも1つの溝を備えた第2支持構造物、
を備えていることを特徴とする請求項6記載の装置。
【請求項8】
ガラスシート夫々が第2エッジを備え、かつ前記セパレータが少なくとも1つの分離コームをさらに備え、該分離コームが、
長手軸を画定するコーム基部、および、
前記コーム基部に沿って間隔を空けて配置され、前記長手軸を実質的に横切る方向に該コーム基部から外側に突出している複数の突出部、
を備え、各突出部が、基端および離れて位置する先端を備え、隣接する突出部がそれらの間に溝を画定し、さらに各溝が各ガラスシートの前記第2エッジの一部を受け入れるように構成されていることを特徴とする請求項6記載の装置。
【請求項9】
前記複数の突出部が、コーム基部に沿って、少なくとも各ガラスシートの厚さと同じ幅の所定距離だけ間隔を空けて配置されることを特徴とする請求項8記載の装置。
【請求項10】
各突出部が実質的に「T」字形を成し、前記突出部の前記基端が第1の距離だけ間隔を空けて配置され、かつ前記突出部の前記先端が第2の距離だけ間隔を空けて配置され、前記第1の距離が前記第2の距離よりも大きいことを特徴とする請求項8記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2010−526753(P2010−526753A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507402(P2010−507402)
【出願日】平成20年4月29日(2008.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/005499
【国際公開番号】WO2008/140680
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月29日(2008.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/005499
【国際公開番号】WO2008/140680
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
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