説明

ガラス丸棒の螺旋状加工装置

【課題】ガラス丸棒を直線部を有する螺旋形状に加工するのに適するガラス丸棒の螺旋状加工装置を提供する。
【解決手段】本ガラス丸棒の螺旋状加工装置は、ガラス丸棒の両側を把持し、送りチャックと旋回チャックとからなる一対のチャックと、加熱手段と、送りチャック移動機構と、旋回チャック回動機構を備え、送りチャックによりガラス丸棒を微小送りするとともに、旋回チャックを傾斜面に沿って旋回させて、ガラス丸棒を傾斜状態の屈曲形状に形成し、直線部を有する螺旋形状に加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス丸棒の螺旋状加工装置に係り、特に、ガラス丸棒を自動的に直線部を有する螺旋形状に加工するのに適するガラス丸棒の螺旋状加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス管の曲げあるいは螺旋形状の加工作業は人手で行われており、バーナの火力、被加熱部とバーナとの距離、加熱時間、曲げ加工速度等は、全て作業者の経験により判断されていた。このような人手による作業は、その作業時間等が作業者の熟練度に大きく左右され、安定した品質を得ることが困難であり、また、バーナを使用する作業となるため安全上の問題があった。
【0003】
そこでこれらの問題を解決するために、多くの提案がなされている。
【0004】
例えば、ガラス管の一端を把持する一方のチャックをガラス管軸方向に移動可能にし、他方のチャックを、一点を中心として回動可能にし、固定位置に設けられたガスバーナによってガラス管を一点で加熱し、他方のチャックを制御器により制御し旋回駆動してガラス管を環状に加工するガラス管の加工装置が提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、加熱されて可塑性が与えられたガラス管を巻き付けドラムに巻き付けながら、巻き付けドラムを軸方向に移動して、ガラス管を螺旋加工するガラス管螺旋加工装置が提案されている(特許文献2)。
【0006】
さらに、ガラス管の一側を把持する移動側チャックを回動させると共に移動させ、かつ、加熱手段を移動側チャックと同期させて移動させることによりガラス管の曲げ加工を行うガラス管の曲げ加工装置が提案されている(特許文献3)。
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3のガラス管の加工装置はいずれも一般的なガラス管を環状に加工するには適するが、ガラス管を長円螺旋形状(いわゆるトラック形状)のガラス管の加工には適さない。
【特許文献1】特開平3−131541号公報
【特許文献2】特開2002−12434号公報
【特許文献3】特開2003−277086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、自動化され、ガラス丸棒を直線部を有する螺旋形状に加工するのに適するガラス丸棒の螺旋状加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するため、本発明に係るガラス丸棒の螺旋状加工装置は、ガラス丸棒の両側を把持し、送りチャックと旋回チャックとからなる一対のチャックと、この両チャック間に位置するガラス丸棒を加熱する加熱手段と、前記送りチャックを直線的に進退させる送りチャック移動機構と、前記旋回チャックをこの旋回チャックの旋回中心を通る垂直線に対して所定角度傾いた旋回軸に対して旋回させ、かつ直線状に進退させる旋回チャック回動機構を備え、前記送りチャックによりガラス丸棒を微小送りするとともに、前記旋回チャックを傾斜面に沿って旋回させて、ガラス丸棒を傾斜状態の屈曲形状に形成し、ガラス丸棒を直線状に移動して、ガラス丸棒を直線部を有する螺旋形状に加工することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、自動化され、ガラス丸棒を直線部を有する螺旋形状に加工するのに適するガラス丸棒の螺旋状加工装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係るガラス丸棒の螺旋状加工装置について添付図面を参照して説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施形態に係るガラス丸棒の螺旋状加工装置の概念図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のガラス丸棒の螺旋状加工装置1は、ガラス管あるいは中実ガラス棒のようなガラス丸棒Gを送る送り側部2と、ガラス丸棒Gを加工する加工側部3と、ガラス丸棒Gを加熱する加熱手段としてのバーナ4とから構成され、ガラス管Gは送り側部2と加工側部3に橋渡すように載置される。
【0014】
送り側部2は固定基板5を備え、この固定基板5には送りチャック移動機構6が設けられ、この送りチャック移動機構6は送りチャック7を直線的に進退させるものであり、固定基板5の裏面に設けられた駆動モータ8と、この駆動モータ8により回転されるボールねじ9と、送りチャック7の底部に設けられ、ボールねじ9に螺合し、固定基板5の長手方向に沿って設けたガイド溝10に沿って直線的に進退するスライダ部11からなる。
【0015】
送りチャック7は平板状の一対の送りチャック爪7aと、この送りチャック爪7aをロック/アンロック状態に開閉するエアシリンダ7bからなる。
【0016】
さらに、送り側部2には、送りチャック7とバーナ4間に長尺のガラス管Gを適宜支持する補助チャック12が設けられ、さらに、送りチャック7の外側にはガラス管Gを常時支持するローラ13が設けられている。補助チャック12はL字状の一対の補助チャック爪12aと、この補助チャック爪12aをロック/アンロック状態に開閉するエアシリンダ12bからなり、送りチャック7aと同様、補助チャック12の底部に設けられ、ボールねじ9に螺合し、ガイド溝10に沿って直線的に進退するスライダ12cからなる。
【0017】
図2に示すように、加工側部3には旋回チャック回動機構14が設けられ、この旋回チャック回動機構14は取付基台15と、この取付基台15に取り付けられた旋回チャック16からなり、この旋回チャック16は垂直線vに対して所定の角度θ傾斜する旋回軸aをなすように傾斜して取り付けられ、θ傾いた傾斜面sに平行に沿って回転する構造をなす。さらに、旋回チャック16は軸心cからの長さがRの腕を有し、半円の軌跡で旋回するL字状の一対の旋回チャック爪16aと、この旋回チャック爪16aをロック/アンロック状態に開閉するエアシリンダ16bと、旋回チャック爪16a及びエアシリンダ16bを90°回動させる回動機構17を備える。
【0018】
図1に示すように、バーナ4は加工側部3に上下2本配され、ガス流れ制御器18によって、ガス流が制御されて火力が制御される。バーナ4の位置は曲げる方向と直交しているのがよい。曲げ部分内側を加熱するとRが潰れてしまい、外側を加熱させると局部的に肉薄となってしまう。
【0019】
ガラス管の曲げ加工装置1には、このガラス管の曲げ加工装置1全体を制御する制御装置19が設けられており、送りチャック7、補助チャック12、旋回チャック14及びバーナ4等の制御は、予め制御装置19にプログラムされた制御手順に従って行われ、また、必要に応じ制御装置19に設けられた入力手段(図示せず)からの入力により行われる。
【0020】
なお、加工後のガラス管の変形もしくは破損を極力避けるために、必要な場所に支持チャックあるいは支持ローラを設けるようにしてもよい。
【0021】
次に本発明に係るガラス丸棒の螺旋状加工装置を用いたシリカガラス管の螺旋状曲げ加工方法について、主として図3に沿って説明する。
【0022】
図1及び図3(a)に示すように、螺旋状加工を行うガラス管Gを用意し、このガラス管Gをガラス丸棒の螺旋状加工装置1にセットして加工準備を行う。
【0023】
はじめに、曲げ半径Rが形成されるような位置に予め設置、固定された送りチャック7、補助チャック12及び旋回チャック16を開放しておき、チャック爪7a、16aによりガラス管Gを支持し、その後、制御装置2からの指令によりエアシリンダ7b、16bを作動させてチャック爪7a、16aによりガラス管Gを把持する。
【0024】
次に、送りチャック7及び補助チャック12で支持した状態で、送りチャック7でガラス管Gを送りながら、着火されたバーナ4によりガラス管Gを加熱し、図1、図3(b)及び(d)に示すように、旋回チャック回動機構14により旋回チャック16を旋回させて、ガラス管Gを曲げ半径Rの半円状に加工する。
【0025】
このとき、図2に示すように、旋回チャック16は垂直線vに対して所定の角度θ傾斜する旋回軸aをなすように傾斜して取り付けられ、θ傾いた傾斜面sに平行に沿って回転するので、図3(b)の正面図である(c)及び(d)の正面図である(e)に示すように、ガラス管Gの半円状部位gはスロープ状をなす。
【0026】
図3(f)に示すように、半径Rの半円状の加工終了後、送りチャック7及び旋回チャック16のロックを継続させた状態で、補助チャック12もロック状態にする。
【0027】
図3(g)に示すように、この位置の送りチャック7のロック状態を継続した状態で、旋回チャック16をアンロックにして、加工開始の状態に復し、補助チャック12をアンロックにして、直線部位の長さだけ送るのに必要な位置に戻す。
【0028】
図3(h)に示すように、旋回チャック16がアンロック状態、送りチャック7、補助チャック12をアンロック状態にして、送りチャック7と補助チャック12を移動させてガラス管Gをこのガラス管Gの直線部位gの長さだけ送る。
【0029】
このように、旋回チャック16がアンロック状態時、ガラス丸棒Gを送りチャック7及び補助チャック12で支持するので、ガラス管Gの片持ちは避けられ、ガラス管Gの自重によって、ワークがねじれたりするのを防止し、結果、高寸法精度の直線部を有するガラス管を得ることができる。
【0030】
ガラス管Gを直線部位g2の長さLだけ送った後、旋回チャック16をロックし、補助チャック12をアンロックにして、ガラス管Gの軸心のブレを修正し、その後、送りチャック7をロック状態にする。
【0031】
図4に示すように、このような加工工程を繰り返し、図5に示すように長円螺旋形状のガラス管Gを加工し、図6及び図7に示す長円螺旋形状のガラス管Gを得る。
【0032】
本実施形態によれば、自動化され、ガラス管を直線部を有する螺旋形状に加工するのに適するガラス丸棒の螺旋状加工装置が実現される。
【0033】
なお、上記実施形態では、ガラス管の傾斜状態を半円形状にした長円形状に加工するガラス管の螺旋状加工装置を例にとり説明したが、本発明に係るガラス丸棒の螺旋状加工装置は、旋回チャックの回動軌跡を変えることで、ガラス丸棒を正方形に曲げたり、あるいは正三角形に曲げたりするような正多角形の螺旋状加工にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るガラス丸棒の螺旋状加工装置の斜視図。
【図2】本発明に係るガラス丸棒の螺旋状加工装置に用いられる旋回チャックの側面図。
【図3】(a)〜(h)は本発明に係るガラス丸棒の螺旋状加工装置を用いたガラス管の加工工程図。
【図4】本発明に係るガラス丸棒の螺旋状加工装置を用いたガラス管の加工工程説明図。
【図5】本発明に係るガラス丸棒の螺旋状加工装置により加工された長円螺旋形状のガラス管の正面図。
【図6】本発明に係るガラス丸棒の螺旋状加工装置により加工された長円螺旋形状のガラス管の正面図。
【図7】本発明に係るガラス丸棒の螺旋状加工装置により加工された長円螺旋形状のガラス管の側面図。
【符号の説明】
【0035】
1 ガラス丸棒の螺旋状加工装置
2 送り側部
3 加工側部
4 バーナ
6 送りチャック移動機構
7 送りチャック
7a 送りチャック爪
12 補助チャック
12a 補助チャック爪
14 旋回チャック回動機構
15 取付基台
16 旋回チャック
16a 旋回チャック爪
17 回動機構
19 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス丸棒の両側を把持し、送りチャックと旋回チャックとからなる一対のチャックと、
この両チャック間に位置するガラス丸棒を加熱する加熱手段と、
前記送りチャックを直線的に進退させる送りチャック移動機構と、
前記旋回チャックをこの旋回チャックの旋回中心を通る垂直線に対して所定角度傾いた旋回軸に対して旋回させ、かつ直線状に進退させる旋回チャック回動機構を備え、
前記送りチャックによりガラス丸棒を微小送りするとともに、前記旋回チャックを傾斜面に沿って旋回させて、ガラス丸棒を傾斜状態の屈曲形状に形成し、ガラス丸棒を直線状に移動して、ガラス丸棒を直線部を有する螺旋形状に加工することを特徴とするガラス丸棒の螺旋状加工装置。
【請求項2】
前記送りチャックと旋回チャック間に補助チャックを設け、旋回チャックのアンロック時、ガラス丸棒を前記送りチャック及び前記補助チャックで支持することを特徴とする請求項1に記載のガラス丸棒の螺旋状加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−261850(P2007−261850A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87585(P2006−87585)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(507182807)コバレントマテリアル株式会社 (506)
【Fターム(参考)】