説明

ガラス化のための急冷装置

ガラス化方法による好結果の凍結保存は速い冷却速度に依存する。ガラス化を行う施術者は、液体窒素をその本来有する安全性及び低コストにより、冷却極低温流体として使用することを好む。液体窒素の静止プール内へガラス化極低温容器を浸漬させることによって、理論的な可能性よりも低い冷却速度が常にもたらされる。この冷却速度の低下は、公知のライデンフロスト効果によるものとされている。本発明の目的は、液体窒素を使用するガラス化中に改良された冷却速度を提供することである。本発明の一つの特徴は、冷却速度を増すために、対流による熱伝達方式をもたらす接触装置である。本発明の別の特徴においては、極低温流体の速度は、飽和極低温流体が入っている自己加圧型のジュワー瓶によってもたらされる。自己加圧は、ジュワー瓶の内容物の周囲の加熱によってなされる。もう一つ別の実施例においては、プロパンのような過冷却された極低温流体が、自己加圧型ジュワー瓶内で、LN2のような飽和極低温流体と協同して使用される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物標本の凍結保存のための装置の分野に関する。
【0002】
(関連出願)
本願は、2008年1月17日に出願された“ガラス化のための急冷装置”という名称の米国仮特許出願第61/021661号に基づく優先権を主張している。前記米国仮特許出願は、これに言及することによって参考として本明細書に組み入れられている。
【背景技術】
【0003】
凍結保存は、生命科学において、価値のある細胞の生物活性を長期間に亘って一時停止させる目的で行なわれている。凍結保存の成功の一つの要因は、氷結晶形成の有害作用を減じるか又は排除することである。凍結保存中に水が凍結して氷になる本来的な傾向を阻止するためには高度な方法が必要とされる。“ガラス化”はこのような方法の一つである。ガラス化は、急速冷却時の流体粘度の急速な増加として説明することができ、これによって水分子はランダムな配向で捕捉される。この方法の成功は、細胞を損傷させる氷が一緒に形成されることを避けることを基礎とする。
【0004】
ガラス化
ガラス化における初期段階は、一つの細胞又は複数の細胞を浸透性の及び/又は非浸透性の凍結保護物質(「CPA」)を含む水溶液(「ガラス化剤」)によって脱水することである。一つの細胞又は複数の細胞は、少量のガラス化剤と共に、「生物標本」を構成している。生物標本は、次いで、適当な極低温容器内に配置される。極低温容器は極低温温度で使用するのに適している容器である。ここで使用されている「極低温温度」は、−80℃より低い温度を意味している。
【0005】
生物標本は、次いで、極低温流体例えば液体窒素(「LN2」)内に浸漬されて急冷される。冷却速度とCPA濃度とを適切に組み合わせることによって、細胞内水分が損傷を生じさせる規則的な氷結晶状態ではなく固体状の無害のガラス質(ガラス状)状態を呈することになる。
【0006】
医療用ガラス化は2つの主要な目的を有している。第一の目的は、LN2のような極低温流体内での長期間貯蔵である。第二の目的は、生物学的に生存可能な細胞を加温後に回復させることである。しかしながら、ガラス化剤は細胞が温められるときに細胞に対して有害であることが多い。従って、脱水及び加温(氷は形成されないので、「解凍」ではない)中に細胞をガラス化剤に曝す時間は、細胞の損傷を避けるために注意深く制御しなければならない。
【0007】
ゆっくりした冷却速度は、ガラス化剤の高く且つ比較的有害性のある濃度例えば60%w/wCPA濃度を必要とする。急速冷却速度においては、低く且つ有害性が少ない濃度が使用され得る。10℃/分以上の冷却速度を得ることができる場合には、ガラス化は、凍結保護物質を全く使用しないで行なうことができる。
【0008】
急速に冷却することが望ましく、速ければ速いほど良い。生物標本をLN2内へ直接浸すことは、急速な冷却が達成されるが、生物標本を汚染に曝すかも知れない。市販によって入手可能な液体窒素は細菌種及び真菌種を含んでいるかも知れず、これらは加温すると生存可能である。更に、ガラス化された細胞は、LN2内に配置されているウイルス性病原体によって感染され得る。
【0009】
感染の可能性は、生物標本が容器内に配置されており且つLN2内で冷却される前にシールされている閉鎖型極低温容器の開発を導いてきた。極低温容器はまた、長期貯蔵中に生物標本を病原体を含む極低温流体から隔離する貯蔵容器としても機能する。
【0010】
可能な最も急速な冷却速度を直接浸漬型の開口型極低温容器か閉鎖型極低温容器のどちらによっても達成することに対する制限のうちの一つは、最初の温かいガラス化装置がLN2と接触することによって該装置周囲に絶縁窒素蒸気コーティングの発生がもたらされることである。この蒸気バリアは、液体窒素が温かい標本と接触する際の液体窒素の沸騰によって生じる。これはライデンフロスト効果として知られている。窒素蒸気は冷却速度を著しく遅くさせる熱絶縁体である。ライデンフロスト効果が減じられるか又は排除された場合には冷却速度はより速くなり、有害性がより少ないガラス化剤を使用することができ、これはより良好な医学結果につながる潜在的可能性がある。
【0011】
従って、ライデンフロスト効果を克服することによって、ガラス化中の生物標本の冷却速度を増すための方法及び装置が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願第12/267708号
【発明の概要】
【0013】
本発明を理解するためのガイドとして本発明の概要を述べる。本概要は必ずしも本発明の最も包括的な実施例又はここに開示されている本発明の全ての種類を記載していない。
【0014】
改良されたガラス化冷却装置及び方法
ここに記載されている発明は、ガラス化におけるライデンフロスト効果を排除するか又は減らした冷却装置及び方法からなる。冷却極低温流体が飽和液(例えば,LN2)である場合には、沸騰によって発生した蒸気を強制的に移動させるために速い極低温流体速度が使用される。極低温流体が冷媒によって冷却された過冷却液体である場合には、極低温流体の温度を極低温流体を凍結させることなく制御するための簡単な機構が説明されている。
【0015】
本発明の一つの実施例においては、飽和極低温流体は、外側が室温に曝されている閉鎖型ジュワー瓶内に保持されている。周囲の加温はジュワー瓶を加圧し、この圧力によって、飽和極低温流体がジュワー瓶から液体ジェットとして押し出される。このジェットは、ガラス化装置上へ導かれて発生した蒸気を強制的に移動させ、ライデンフロスト効果の形成が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】2つの従来技術によるガラス化装置を示している概略図である。その第一は閉鎖型装置であり、その第二は開放型担持具である。
【図2】本発明による閉鎖型ガラス化装置を示している概略図である。
【図3】ガラス化装置上のライデンフロスト効果及びそれを緩和する機構を示している概略図である。
【図4】圧力を極低温流体速度に変換することができる方法を示している概略図である。
【図5】2つのタイプの開放型の接触装置を示している概略図である。
【図6】槽型の接触装置を示している概略図である。
【図7】飽和極低温流体を含んでいる本発明のジュワー瓶の構造を示している概略図である。
【図8】窒素の蒸気圧と温度との関係を示している概略図である。
【図9A】閉鎖型接触器の構造を示している概略図である。
【図9B】閉鎖型接触器と共に使用するためのクランプを示している概略図である。
【図10】接触器が開放型極低温容器内の生物標本をガラス化するために使用され得る方法を示している概略図である。
【図11】集束/発散ノズルを備えた接触器が閉鎖型極低温容器内の生物標本をガラス化するために使用され得る方法を示している概略図である。
【図12】括れ作用を呈する接触器が閉鎖型極低温容器内の生物標本をガラス化するために使用され得る方法を示している概略図である。
【図13】極低温容器内の標本を、接触器及び液体窒素の自己加圧型ジュワー瓶を使用してガラス化する方法を示している概略図である。
【図14】2つのリザーバを備えているジュワー瓶の構造を示している概略図である。第一のリザーバは、ジュワー瓶を加圧する飽和極低温流体のためのものである。第二のリザーバは、生物標本をガラス化するために使用される過冷却極低温流体のためのものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の詳細な説明は、本発明の種々の実施例及び特徴を開示している。これらの実施例及び特徴は、例示のためのものであり且つ限定的なものではないことを意味している。
【0018】
本明細書で使用されているように、温度を除いて、特に別途指示されていない限り、「約」という用語は所与のパラメータ値の±20%以内であることを意味している。温度については、「約」という用語は所与の値の±2℃であることを意味している。
【0019】
種々の生物細胞が、本発明を使用して無菌凍結保存(ガラス化)することができる。一つの種類の細胞は、精子、卵母細胞、胚、桑実胚、胚盤胞及びその他の初期胎細胞のような哺乳動物生育細胞である。これらの細胞は、補助生殖処置中に凍結保存される。もう一つ別の種類は、再生医療において使用される幹細胞である。最も広い範疇は、本発明によって得られる冷却速度でガラス化できる細胞又は細胞群である。
【0020】
ガラス化装置
ガラス化装置として使用される極低温容器は、本発明による利点を得ることができる広範囲の設計に亘るものである。例示的な極低温容器を以下に説明する。
【0021】
図1は、極低温容器管102を備えている例示的な極低温容器100の略管状要素の長手方向断面図である。この装置は、生物標本を極低温容器管内へ引き込むために真空吸引を使用している。極低温容器管の両端は最初は開いている。注射器(図示せず)が極低温容器管の第一の開口部104に取り付けられている。注射器は真空を形成しており、この真空によって、生物標本106が極低温容器管の第二の開口部108内へ引き込まれる。生物標本は、ガラス化剤110と1つ以上の細胞112とからなる。物品120を参照すると、次いで、極低温容器管の両端が加熱され且つクリンプされて無菌シール122及び124が形成される。このようにして、生物標本126を含んでいる極低温容器が冷却のために準備される。
【0022】
図1の物品140は、ガラス化のための開放型担持具を示している。該担持具は、軸144に取り付けられている把手142を備えている。軸144は、装填片持ち梁146に取り付けられている。生物標本148は該片持ち梁上に配置されている。
【0023】
図2は、例示的な極低温容器の略管状部材の長手方向断面図であり、この極低温容器は変形可能な壁を有している。このような壁は形状記憶材料からなる。この極低温容器は、「形状が変化するガラス化装置(shape−Shifting Vitrification Device)」という名称の同時係属中の米国特許出願第12/267708号に更に詳しく説明されている。該米国特許出願及びそれの全ての一部断続出願は、これに言及することによって本明細書に参考として組み入れられている。
【0024】
極低温容器は、シャトル200とシース220とを備えている。シャトル200は、チャネル206を提供するために、端部に切断された切り目204を備えた管202からなる。生物標本208はチャネル上に配置されている。
【0025】
シースは管状本体222を備えており、管状本体222の第一の端部224は熱シールされている。第二の端部226は開口している。生物標本の位置に対応するシースの部分は変形可能である。従って、シャトルがシース内に装填された後に、該変形可能な部分はクリンプされて生物標本と接触するようになされている。このことにより、前記の生物標本に対する熱伝達率が増大する。この変形可能な壁が形状記憶材料である場合には、極低温容器が温められたときに、該壁はクリンプされない形状に戻る。これによって、生物標本の取り出しが容易になる。
【0026】
物品240は組み立てられ且つシール(242)されているがクリンプ前のシャトル及びシースを示している。
【0027】
物品260は、極低温容器の、装填及びシール直後の断面A−Aにおける断面図である。生物標本262は空気264によって包囲されている。物品280はクリンプ後の同じ断面図である。このようにして変形可能な壁の主要部分282が生物標本と接触する。従って、生物標本への熱伝達率は、冷却中と加温中との両方において増大せしめられる。
【0028】
熱伝達
図3は、一般的な手段によってLN2の槽内へ浸されるように極低温容器が作用する方法を示している。
【0029】
物品300は、生物標本306を含んでいる極低温容器302の一部分内への熱伝達の力学を示している。浸漬はLN2の静止プール304内に対して行なわれる。極低温容器は浸漬前は20℃の室温中にある。LN2が相対的に極めて高温の極低温容器表面308と接触すると、最初にLN2が蒸発せしめられて極低温容器を取り巻いている蒸気雲310(停滞ガス)が形成される。それに続く熱伝達が、極低温容器の蒸気によって被覆された面312から停滞蒸気を介して極低温流体と接触している反対側の面314へと生じる。停滞ガスは、窒素蒸気であり且つ熱絶縁体であり、これは低い熱伝導率につながる。これは所謂ライデンフロスト効果である。極低温容器の冷却速度は、熱が停滞ガス層を横切って伝導され得る速度によって制御される。
【0030】
極低温容器の外径をDとすると、次いで、熱伝達領域の長さ316は生物標本のフットプリント318よりも約2Dだけ広いと評価できる。本明細書に記載されている急速冷却方法は、熱伝達領域全体に適用されるのが好ましい。
【0031】
本発明によると、ライデンフロスト効果は、極低温流体が極低温容器全体を覆って高速で流される場合に減少させることができる。極低温流体の速度は、極低温容器の主軸線320及び322に沿ったいずれの向きとすることもできる。別の方法として、極低温流体は、極低温容器を横切って横方向324へ流れるか又は横方向の流れと長手方向の流れとを適切に組み合わせた方向へ流れるように付勢することができる。
【0032】
物品340は、流動する極低温流体344(「流入する流れ」)を使用したガラス化装置342の冷却を示している。物品346は流動している極低温流体内の制御体積を示しており、この制御体積は熱伝達領域348と等しい長さを有している。極低温流体の流れの噴流特性により、前記の制御体積の面350を横切る熱伝達又は質量移動が存在しないことが仮定できる。温かい極低温容器は制御体積内を流動する極低温流体352を加熱する。従って、極低温容器からの熱の全てが、極低温流体の流れ354(“流出する流れ”)内の制御体積を出て行く。極低温容器の面356を横切る極低温流体の流れは対流による熱伝達を惹き起す。このモードの熱伝達は、停滞ガスの層を介する伝導よりも優れている。極低温容器によって放出される熱は全て流出する流れ内の制御体積を出て行く。
【0033】
本発明は、ガラス化させるのにかかる時間の間、何百回も制御体積の内容物を入れ替える速度を有している流入する流れを想定している。沸騰した蒸気は、この速度によって生じるモーメント及び剪断力によって制御体積から移動せしめられるだろう。流れが乱流であるためには、少なくとも1,000以上のレイノルズ数が適している。
【0034】
極低温流体の速度
図4は、極低温流体を必要な速度まで加速するための方法を示している。極低温流体404を備えている容器402は、周囲410の圧力408よりも高い圧力406にある。この容器から管412がつながっており、管412は、周囲へと移す出口414を備えている。容器内の圧力によって、極低温流体は、速度416で管内を流れ且つ周囲へと出て行く。出口での流体の速度は、容器の圧力及び管内の摩擦損失に依存する。
【0035】
極低温流体がLN2のような飽和流体である場合には、そのうちの幾らかは、管内を通るときに急速に気化して蒸気となってもよい。この気化は、管を絶縁418し、その長さ424を短く保ち、流体の動きによる摩擦損失を最少にし、プラスチックのような低熱伝導性材料を使用することによって、最少化することができる。該装置は、LN2の大部分が、生物標本を含む極低温容器を通過するときに蒸気の形態である場合でさえ有効である。
【0036】
極低温流体を加速するためのもう一つの方法は、高速のガス状の非凝縮な流れ(例えば、ヘリウム)を極低温流体と接触させることである。この接触によって、ガス状の流れと極低温流体とが移動する飛沫同伴する流れを形成するように付勢される。
【0037】
飽和極低温流体を備えた容器は、気化させて蒸気とさせる傾向と引き替えに高速の極低温流体を形成するであろう。従って、容器の圧力は、実験によって、極低温容器の所与の幾何学的構造のための熱伝達の最適値を付与して過度の急速な気化をすることなく速度が速くなるように調整することができる。
【0038】
開口型接触器装置を使用した極低温流体の接触
図5は、高速の極低温流体を極低温容器と接触させるための開口型接触器装置を示している。
【0039】
物品500は、極低温流体速度発生源504に近接した極低温容器502を示している。極低温流体速度発生源は極低温流体を所望の方向に流れさせることができる装置である。一つの例は、出口管を備えた加圧容器である。極低温流体の流れ506は、熱伝達領域の5〜10倍の好ましい直径を有している噴射の形態である。熱伝達領域の1.5〜3倍の直径であるのが更に好ましい。極低温流体の流れは、熱伝達領域上に導かれて該極低温容器を冷却し且つその内容物のガラス化を行なう。極低温流体の流れは、ガス、過冷却液体、飽和液体又はこれらの混合物とすることができる。複数の極低温流体の流れが存在して、極低温容器の周囲を完全に覆うことを確保しても良い。一つの例は、2つの対向する流れ506及び508である。ガラス化の後に、極低温容器は長期保存のために極低温流体の槽内に配置される。
【0040】
物品520は、ある角度に傾けられている極低温容器522を示している。適切な角度は水平から2°〜45°の範囲内である。極低温容器の遠位先端を包囲しているのは三面包囲体524であり、これはチャネル526を形成している(図A−A)。該チャネルの適切な幅及び高さは、極低温容器の直径の1.5〜10倍である。速度発生源528からの液体の極低温流体は凍結の流れ530を形成しており、該極低温流体の流れは、熱伝達領域において又はその近くで極低温容器にぶつかる。極低温流体の流れの流量は、極低温容器を完全に浸漬させ且つこれを冷却し且つその内容物をガラス化させるチャネル流532(図A−A)を形成するのに十分な流量である。ガラス化の後に、極低温容器は長期保存のために極低温流体の槽内に配置される。
【0041】
図6は、液体極低温流体602を含んでいる開口容器600を示しており、極低温流体602は過冷却液体又は飽和液体とすることができる。該容器には撹拌装置が取り付けられており、該撹拌装置はモーター604を備えており、該モーターはシャフト606に結合されており、シャフト606が撹拌機608に結合されている。回転する撹拌機は、該容器の内容物を矢印610によって示されているように流れさせる。形成される流れパターンの特性は代替の攪拌装置と異なっていても良い。ポンプによって駆動される外部再循環ループが好適な代替である。磁気撹拌装置もまた適している。重要な要素は容器の領域内での流体速度である。浸漬前に、極低温容器612は、熱伝達領域を極低温流体の面に近づけて配向される。次いで、極低温容器は、極低温流体内に熱伝達領域が浸漬される深さ614まで浸漬される。極低温流体に曝されると、極低温容器の内容物がガラス化される。極低温流体が飽和液体である場合には、開口容器内の極低温流体速度はライデンフロスト作用を最少化させる。
【0042】
生物標本を保管するために開口した極低温容器を使用してガラス化するとき、極低温流体速度は制限されなければならない。これは生物標本が、坦持部材から極低温流体内へ移動するのを防止するためである。
【0043】
飽和極低温流体ジュワー瓶
図7は、極低温流体の高速の流れを発生させるための加圧容器の使用方法を示している。飽和極低温流体(例えばLN2)の容器を加圧する一つの方法は、極低温流体をシールされた容器例えば閉鎖型ジュワー瓶700内に配置して極低温流体に周囲の熱を吸収させることである。次いで、周囲の熱によって極低温流体の一部分が蒸発せしめられてヘッドスペースの圧力が上昇せしめられる。
【0044】
ジュワー瓶は、頂部アセンブリ702とボトル704とを備えている。頂部アセンブリは、放出弁706と、吹出し弁708と、出口管710と、圧力解放弁712とを備えている。ボトルは、LN2 716を含んでいるチャンバ714と、窒素蒸気を含んでいるヘッドスペース718を備えている。ボトルの壁720は、真空絶縁された二重壁である。真空はボトルの内容物を熱的に絶縁している。ボトルの外側は、ユーザーの手を低温から保護するために絶縁722されても良い。放出弁には浸漬管724が結合されており、浸漬管724はLN2を抜き出すためにボトル内へ伸長している。頂部アセンブリは、ねじが切られている結合部726によってボトルに結合されている。
【0045】
ジュワー瓶を使用するためにアセンブリ同士が最初に分離される。多量のLN2がボトル内に注がれて液面728が形成される。次いで、頂部アセンブリがボトル上にねじ込まれる。
【0046】
圧力解放弁は、2つの設定すなわち“抜き取り”設定と“加圧”設定とを有している。抜き取り設定においては、圧力解放弁は開放されておりヘッドスペースの圧力は周囲圧力730と同じである。加圧設定においては、圧力解放が設定され、次いで、周囲熱がLN2によって吸収され且つLN2が蒸発するとヘッドスペースは加圧される。ヘッドスペースの圧力732は、圧力解放弁の設定点に達するまで上昇する。次いで、圧力解放弁は過剰圧力734を解放し、LN2を一定の圧力に維持する。十分絶縁された状態では、手持ちのジュワー瓶は、蒸発するLN2の量を最少化することによって一日中ジュワー瓶の設定点圧力を維持することができる。
【0047】
LN2をジュワー瓶から分配736するために、放出弁706が開かれてヘッドスペースの圧力によってLN2 738が浸漬管内を上方へ付勢されて出口管から押し出される。
【0048】
流動しているLN2の流れの重要な特性は、液体窒素と蒸気窒素との相対的な比率である。液体窒素が高い比率を有することが望ましい。このことを達成するために、ジュワー瓶の設計は、低い熱伝導率及び/又は熱容量のプラスチック又はこれに類似の材料を浸漬管及び出口管のために使用して、最少量のLN2が前記管を冷却する際に沸騰せしめられるようにすべきである。出口管の長さ740もまたこの寄生性の加熱を制限するために最小に維持されるべきである。ボトルから周囲への液体通路全体は、流体の動きによる摩擦損失を最少化すべきである。出口の流れの液体内容物の全体量は80体積%を越えてもよい。
【0049】
寄生性の加熱を減らすためには、吹出し弁708は、ガラス化期間毎の間は、開放状態にしたままとすることができる。次いで、冷たいガス状窒素の少量の流れが出口管内を流れて該出口管を冷却する。この流れはまた、周囲の空気が出口管内へ逆流するのを防止する。空気は湿気を含んでおり、この湿気は、冷たい表面上で凍結し且つ潜在的に遮断を生じさせ得る。
【0050】
幾つかの実施例においては、ガス状窒素を出口管内を通して分配することが好ましいかもしれない。これは、LN2ではなくヘッドスペースから吸い出す比較的短い浸漬管を使用することによって容易に達成される。
【0051】
典型的な極低温容器内に保持されている典型的な生物標本のガラス化のために、約40グラムのLN2が消費されてもよい。出口管を冷却された状態に保ち且つ周囲の空気を抜き出した状態に保つための吹出し窒素の消費量は1時間当たり25グラムであってもよい。複数の標本をガラス化する典型的な研究室は、他方が使用されている間に一方にLN2を再充填するようになされた2つの器具を必要ととしてもよい。
【0052】
図8は、LN2の蒸気圧と温度との関係を示している。図7の極低温容器の圧力解放値が1バール(100kPa)の絶対圧で通気するように設定されている場合に、対応する温度802は、LN2の通常の沸点−196℃である。圧力解放弁が、1.6バール(160kPa)に設定されている場合には、ボトル内のLN2は804の−192℃まで温まる。より高い温度806、808は、より高い加圧設定によって達成することができる。第二の極低温流体例えばプロパン又はオクタフルオロプロパンが同じジュワー瓶内に保持されている用途(下記参照)に対しては、より高い温度が必要とされるかも知れない。第二の極低温流体が凍結しないようにするには、これより高い温度が必要である。
【0053】
閉鎖型接触器を使用した極低温流体接触
図9Aは、閉鎖型接触器装置900の断面図であり、接触器900は、円筒形本体902と、極低温流体入口904と、極低温容器開口部906と、排出口908とを備えている。前記入口は、極低温流体の流れを受け入れるようになされている。前記開口部は、極低温容器を接触器内へ受け入れることができるようになされている。本体は、極低温容器が開口部を通して装填されるときに極低温流体を極低温容器へ導くようになされている。排出口は、極低温容器が前記開口部を通して装填されるときに、極低温流体を極低温容器から導き出すようになされている。
【0054】
接触器の全長910は約6cmである。排出口の長さ912は同様に約6cmである。円筒形本体は軸線914を有している。円筒形本体の内径916は約1.7cmである。円筒形本体の適切な内径は極低温容器の直径の1.5〜10倍の範囲内とすることができる。極低温容器の適切な直径は、100ミクロン〜2.5mmの範囲内とすることができる。例えば極低温容器の直径が2mmである場合には、円筒形本体の適切な内径は3mmであろう。
【0055】
円筒形本体は更に、ブシュ918とスリーブ920とを備えている。スリーブの軸線922は、円筒形本体の軸線と一致していても良いし又はずれているか若しくはある角度をなしていても良い。スリーブの内径と極低温容器との間のクリアランスは最小に保たれるべきである。しかしながら、このクリアランスは、極低温容器の容易な進入及び引き出しを許容するのに十分でなければならない。
【0056】
円筒形本体の断面は円形、四角形又はその他の適当な形状とすることができる。円筒形本体の断面が円形と異なっている場合には、本体の“内径”は、その断面を横切る最小の距離である。同様に、極低温容器の開口部が非円形である場合には、開口部の“内径”は、その断面を横切る最短距離を指す。
【0057】
これらの部品を製造するための材料は、極低温温度に適したものであるべきである。極低温容器の熱伝達領域の上流で極低温流体と接触する構成部品は、低い熱伝導率と小さい熱容量を有してもよい。プラスチックはこれらの特性を有している。スリーブは、ガラス化装置の周囲をクランプすることを許容するほどの可撓性を有している必要がある。スリーブのための適切な材料はポリテトラフルオロエチレンである。
【0058】
図9Bを参照すると、クランプ940は、掴み具944を備えている本体942を有しており、掴み具944は、ばね946によって閉じた状態に保たれている。把手948及び950を同時に動かすことによって掴み具は開かれる。
【0059】
図9Aを参照すると、接触器の本体は、極低温流体の入口において流動する極低温流体の発生源(図示せず)に取り付けられている。矢印924は、接触器内を流れる極低温流体の一般的な流れを示している。円筒形本体に取り付けられる極低温流体供給管の直径は、前記円筒形本体の直径よりも著しく大きくすることができる。極低温流体供給管は、径違いユニオン継手によって円筒形本体に取り付けられる。これによって、圧力の低下従って極低温流体供給リサーバから閉鎖型接触器装置への急速な気化(極低温流体が飽和している場合)が最少化される。
【0060】
ガラス化させるために、極低温容器の端部がスリーブを通して挿入される。この容器は、熱伝達領域が極低温流体の一般的な流れ内に浸漬される位置に配置されるまで挿入される。定位置に配置された状態では、クランプの開いている掴み具はスリーブの周囲の位置926に配置される。クランプの把手が解放され、これによって掴み具はスリ―ブを挟んで極低温容器に係合することが可能となる。極低温容器をスリーブにクランプする目的は、極低温流体が流れるときに極低温容器がスリーブから押し出されないように保つことである。しかしながら、クランプされたスリーブは、蒸気密又は液体密である必要はない。他の適当なクランプを使用することもできる。
【0061】
極低温容器が定位置に配置されると、極低温流体の流動が開始され、生物標本がガラス化される。極低温流体は、ガス、過冷却液体、飽和液体又はこれらの組み合わせとすることができる。ガラス化の後に、クランプが解放され、極低温容器は長期極低温貯蔵状態に置かれる。
【0062】
図10〜12は、閉鎖型接触器の設計の種々の実施例を示している。全ての場合において、極低温流体入口は極低温流体発生源に取り付けられ、極低温流体発生源は、ガス、過冷却液体又は飽和液体のいずれかとすることができる。更に、これらの実施例の例示においては上記した種々のガラス化装置を係合させることができる。
【0063】
図10は、開口型ガラス化装置1002が装填されている接触器1000を示している。露出された生物標本1010の繊細な特性のために、容器には極低温流体入口に制限オリフィス1004も設けられてもよい。極低温流体発生源は同じくガスとすることが好ましい。分配された極低温流体1006は、矢印1008によって示されているように接触器を横切る。極低温流体の流れは、開口担持部材と接触して生物標本をガラス化させる。
【0064】
図11は、閉鎖型ガラス化極低温容器が装填されている接触器1100を示している。集束/発散ノズル1102は、流入する極低温流体の流れを熱伝達領域の近く1106できわめて幅の狭い環状の流れに整形する1104設計とされている。速度への変換のための圧力を保つために、滑らかな移行部1108が熱伝達領域の両側に必要とされる。極低温流体の流れ1110によって生物標本1112がガラス化される。ガラス化極低温容器とノズルとの間の隙間は0.2〜1.5mmとすることができる。上流の圧力は、周囲より0.2〜3バール(20〜300kPa)高くても良い。排出口内の圧力1114は周囲の圧力である。従って、実際には圧力低下の全てがノズルにおいて起こる。熱伝達領域での極低温流体の速度は、毎秒0.5〜25メートル(m/s)とすることができる。この速度は、ライデンフロスト効果の形成を防止するのに十分な速度である。
【0065】
接触器本体の軸線は、極低温容器用の開口部の軸線とほぼ一致させて、極低温容器が該開口部を通して挿入されたときに熱伝達領域を集束発散ノズルの狭い通路に配置させることができるようになされている。
【0066】
図12は、閉鎖型ガラス化極低温容器1202が装填されている接触器1200を示している。流動オリフィス1204が、流入する極低温流体の流れを熱伝達領域の近くの下流の括れ部1208に向かって整形するように設計されている1206。極低温流体の流れ1210によって生物標本1212がガラス化される。
【0067】
図13は、LN2を含んでいるジュワー瓶1304に取り付けられた(1306)接触器1302を示している。ガラス化の前に、吹出し弁1308からの冷たいガス状窒素ガスは出口管1310内を移動する。これによって接触器は冷却されて寄生性の加熱を制限される。この流れはまた、湿気を含んでいるかも知れない周囲空気が排出口1312又は極低温容器の開口部1314から接触器へ入るのを防止している。
【0068】
ガラス化中に、極低温容器は開口部を通して配置され、LN2は放出弁1316を開けることによって放出される。出口管内のLN2の速度1318は、熱伝達領域内での速度1320に比して比較的遅い。このことは、ジュワー瓶から接触器への圧力低下を減じるので極めて望ましい。ジュワー瓶のヘッドスペース内の圧力は、熱伝達領域内のLN2の速度が少なくとも0.5m/sであるように十分高く設定されている。
【0069】
ダブルチャンバ型ジュワー瓶
図14は、飽和極低温流体のジュワー瓶が過冷却された極低温流体を分配するために使用され得る方法を示している。例示的な過冷却極低温流体はプロパンであり、プロパンは−42℃の沸点と−188℃の凝固点とを有している。プロパンは、その凝固点よりほんの少し高くまで冷却される場合に、ライデンフロスト効果の最少の可能性を有する流動極低温流体として使用することができる。
【0070】
物品1400はダブルチャンバ型のジュワー瓶であり、該ジュワー瓶においては、第一のチャンバ1402はLN2のためのリザーバとして機能する。第二のチャンバ1404は過冷却されたプロパンのためのリザーバとして機能する。2つのリザーバのヘッドスペース同士は、相互に物理的に連通していて内部の圧力がほぼ等しくされている。第一のリザーバと第二のリザーバとはまた、熱的にも相互に連通していてそれらの温度がほぼ等しくされている。
【0071】
圧力解放弁1406は、LN2の温度がプロパンの凝固点より少し高くなるようにヘッドスペースの圧力を上昇させる設定点を有している。2バール(200kPa)絶対圧が適切な圧力である(806、図8)
【0072】
プロパンガス発生源1408は、第二のチャンバに装填するためにジュワー瓶の出口1410に取り付けられる。吹出し弁1412が開かれ、該弁はプロパンガスが蒸気浸漬管1414を通して第二のチャンバへ流入するのを可能にする。比較的重いガス状のプロパンはガス状の窒素を移動させ且つ凝縮して液体1416となって第二にチャンバ内に溜まる。プロパンの充填を制御するために外部の重量計を使用することができる。充填が完了するとプロパン発生源は分離される。
【0073】
この状態で、蒸気浸漬管はヘッドスペース内のガス状の窒素と連通しており、従って、吹出し弁はその機能を取り戻して窒素ガスの吹出しを提供する。
【0074】
液体プロパンを計量分配するために、ヘッドスペース内の圧力1418は、液体プロパン1420を付勢して浸漬管1422内を移動させ且つ放出弁1424を通過させ且つ出口管1426へと移動させる。接触器を出口においてジュワー瓶に取り付けることができ、液体プロパンによるガラス化を可能にしている。
【0075】
プロパンは、引火性の物質である。適切な非引火性の極低温流体はオクタフルオロプロパン(R218)であり、オクタフルオロプロパンは−37℃の沸点と−183℃の凝固点とを有する。オクタフルオロプロパンは、極低温流体の凍結を防止するために3.5バール(350kPa)絶対圧のヘッドスペース圧力を必要とする(808、図8)
【0076】
結論
以上、1つ以上の異なる例示的な実施例に関して本開示を説明したが、当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく種々の変更を施し且つ等価物を本開示の構成要素と置換することができることがわかるであろう。更に、多くの変形例を本開示の基本的な範囲または教示から逸脱することなく特別な状況に適合するようにすることができる。従って、本開示は、本発明を実施するために考えられたベストモードとして開示されているこれらの特別な実施例に限定されないことが意図されている。
【符号の説明】
【0077】
100 極低温容器、
102 極低温容器管、
104 第一の開口部、
106 生物標本、
108 第二の開口部、
110 ガラス化剤、
112 細胞、
120 物品
122,124 無菌シール、
126 生物標本、
140 物品
142 把手、
144 軸、
146 装填片持ち梁、
148 生物標本、
200 シャトル、
202 管、
204 切り目、
206 チャネル、
208 生物標本、
220 シース、
222 管状本体、
224 第一の端部、
226 第二の端部、
240 物品
242 シール
260 物品
262 生物標本、
264 空気、
280 物品
282 壁の主要部分、
300 物品
302 極低温容器、
304 静止プール、
306 生物標本、
308 極低温容器表面、
310 蒸気雲、
312 蒸気によって被覆された面、
314 反対側の面、
316 熱伝達領域の長さ、
318 生物標本のフットプリント、
320,322 極低温容器の主軸線、
324 横方向
340 物品
342 ガラス化装置、
344 流動する極低温流体、
346 物品
348 熱伝達領域、
350 制御体積の面、
352 極低温流体、
354 極低温流体の流れ、
356 極低温容器の面、
404 極低温流体、
402 容器、
408 圧力
406 圧力
410 周囲
412 管、
414 出口、
416 速度
418 絶縁
424 長さ
500 物品
502 極低温容器、
504 極低温流体速度発生源、
506 極低温流体の流れ、
506,508 2つの対向する流れ、
520 物品
522 極低温容器、
524 三面包囲体、
526 チャネル、
528 速度発生源、
530 凍結の流れ
532 チャネル流
602 極低温流体、
600 開口容器、
604 モーター、
606 シャフト、
608 撹拌機、
610 矢印
612 極低温容器、
614 深さ、
700 閉鎖型ジュワー瓶、
702 頂部アセンブリ、
704 ボトル、
706 放出弁、
708 吹出し弁、
710 出口管、
712 圧力解放弁、
714 チャンバ、
716 LN2、
718 ヘッドスペース、
720 ボトルの壁、
722 絶縁
724 浸漬管、
726 結合部、
728 液面、
730 周囲圧力、
732 ヘッドスペースの圧力、
734 過剰圧力
736 分配
738 LN2、
740 出口管の長さ
802 温度
804 温まる
806、808 温度
900 閉鎖型接触器装置、
902 円筒形本体、
904 極低温流体入口、
906 極低温容器開口部、
908 排出口、
910 接触器の全長、
912 排出口の長さ、
914 円筒形本体の軸線、
916 円筒形本体の内径、
918 ブシュ、
920 スリーブ、
922 スリーブの軸線、
924 矢印
926 位置
940 クランプ、
942 本体、
944 掴み具、
946 ばね、
948,950 把手、
1000 接触器、
1002 開口型ガラス化装置、
1004 制限オリフィス、
1006 極低温流体、
1008 矢印
1010 生物標本、
1100 接触器、
1102 集束/発散ノズル、
1106 熱伝達領域の近く
1108 滑らかな移行部、
1110 極低温流体の流れ、
1112 生物標本、
1114 排出口内の圧力、
1200 接触器、
1202 閉鎖型ガラス化極低温容器、
1204 流動オリフィス、
1206 成形するように設計
1208 括れ、
1210 極低温流体の流れ、
1212 生物標本、
1302 接触器、
1304 ジュワー瓶、
1306 ジュワー瓶に取付け
1308 吹出し弁、
1310 出口管、
1314 極低温容器の開口部、
1316 放出弁、
1318、1320 速度
1400 物品
1402 第一のチャンバ、
1404 第二のチャンバ、
1406 圧力解放弁、
1408 プロパンガス発生源、
1410 ジュワー瓶の出口、
1412 吹出し弁、
1414 蒸気浸漬管、
1416 液体
1418 ヘッドスペース内の圧力
1420 液体プロパン、
1422 浸漬管、
1424 放出弁、
1426 出口管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温容器内に保持されている生物標本を急冷するための接触器であり、
a.第一の極低温流体の流れを受け入れるようになされている入口と、
b.前記極低温容器を前記接触器内に受け入れるようになされている開口部と、
c.前記極低温容器が前記開口部を通して装填されるときに、前記極低温流体を前記極低温容器へ導くようになされている本体と、
d.前記極低温容器が前記開口部を通して装填されているときに、前記第一の極低温流体を前記極低温容器から離れる方向に導くようになされた排出口と、を備えており、
前記本体の内径が前記開口部の内径の少なくとも1.5倍である、接触器。
【請求項2】
閉鎖型接触器であり、前記開口部がスリーブを備えており、該スリーブの内径が100ミクロン〜3mmの範囲内であり、前記本体の前記内径が前記スリーブの前記内径の10倍以下である、請求項1に記載の接触器。
【請求項3】
前記第一の極低温流体の発生源を更に備えており、該第一の極低温流体の前記発生源が圧力解放弁を備えているシールされたジュワー瓶であり、前記圧力解放弁が、前記ジュワー瓶のヘッドスペース内の圧力を、前記第一の極低温流体が、前記本体を通過するときに少なくとも0.5m/sの速度まで該第一の極低温流体を加速することができるように維持するようになされており、前記第一の極低温流体の前記発生源が前記入口に結合されている、請求項1に記載の接触器。
【請求項4】
前記ジュワー瓶が、前記第一の極低温流体のための第一のリザーバと、第二の極低温流体のための第二のジュワー瓶とを備えており、前記第一のリザーバのヘッドスペースと第二のリザーバのヘッドスペースとが、相互に連通していて、前記ヘッドスペース内の圧力同士がほぼ等しくされている、請求項3に記載の接触器。
【請求項5】
前記第一の極低温流体が液体プロパンであり、前記第二の極低温流体が液体窒素であり、前記圧力解放弁が、前記液体窒素の温度が前記プロパンの凝固点より高いような圧力に設定されている、請求項4に記載の接触器。
【請求項6】
前記ヘッドスペース内のガスが前記本体内へ吹き込まれるように、前記ジュワー瓶の前記ヘッドスペースと前記本体との間で連通している弁を更に備えている、請求項3に記載の接触器。
【請求項7】
前記スリーブが可撓性の管を備え、前記管がクランプされているときに前記極低温容器との間にシールを形成するようになされている、請求項2に記載の接触器。
【請求項8】
前記本体が集束/発散ノズルを備えている、請求項1に記載の接触器。
【請求項9】
前記本体がオリフィスを備えており、該オリフィスは、前記第一の極低温流体がその中を通過した後に縮流部を形成することができる大きさとされている、請求項1に記載の接触器。
【請求項10】
前記本体が極低温装置に適したプラスチックからなる、請求項1に記載の接触器。
【請求項11】
前記スリーブがポリテトラフルオロエチレンからなる、請求項7に記載の接触器。
【請求項12】
前記本体の断面が四角形である、請求項1に記載の接触器。
【請求項13】
生物標本の急冷のための閉鎖型接触器装置であり、
a.入口と、
b.集束/発散ノズルを備えている円筒形本体と、
c.排出口と、
d.極低温容器を受け入れるための開口部と、を備えており、
前記円筒形本体の軸線が前記開口部の軸線とほぼ合致していて、前記開口部を通して挿入された極低温容器が前記ノズルの狭い通路内を通過するようになされている、接触器装置。
【請求項14】
ジュワー瓶を更に備えており、該ジュワー瓶は、前記入口と連通されていて極低温流体が前記ジュワー瓶から前記円筒形本体内を流れ得るようになされている、請求項13に記載の接触器装置。
【請求項15】
閉鎖型ジュワー瓶であり、
a.第一の極低温流体を収容するための第一のリザーバと、
b.第二の極低温流体を収容するための第二のリザーバと、
c.前記第一のリザーバのヘッドスペース内の圧力を周囲圧力より高く維持するための圧力解放弁と、を備えており、
前記第一のリザーバの前記ヘッドスペースと前記第二のリザーバのヘッドスペースとが、相互に物理的に連通していて、前記第一のリザーバの前記ヘッドスペース内の前記圧力が前記第二のリザーバの前記ヘッドスペース内の圧力とほぼ等しいようになされており、前記第一のリザーバが前記第二のリザーバと熱的に連通していて、前記第一のリザーバの温度が前記第二のリザーバの温度とほぼ等しいようになされている、閉鎖型ジュワー瓶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2011−511623(P2011−511623A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543274(P2010−543274)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/031242
【国際公開番号】WO2009/091971
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(508064322)ヴァンス プロダクツ インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】VANCE PRODUCTS INCORPORATED
【Fターム(参考)】