説明

ガラス熱シールドを備えた高輝度放電発光管

【課題】発光管の最大温度が発光管材料の動作温度の限界を上回らないような形で、コールドスポットの温度をより高くしたメタルハライドランプを実現する。
【解決手段】改良型の断熱材を有した発光管を備える高輝度放電ランプである。断熱材は、発光管の少なくとも1つの端部の近傍に形成されているが、発光管の外部中央部分の周囲には存在していない。加えて、断熱材は、可視光を透過するにもかかわらず熱放射を透過しない、という材料で作られている。断熱材を発光管のコールドスポット領域に加えることにより、当該領域からの放射熱損失が大幅に小さくなり、当該地域の温度が上昇する。さらに、酸化しないと共に可視光を遮断しない、という材料を選択することにより、より高いランプ有効性が実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開示は高輝度放電ランプに関し、より具体的には、発光管のそれぞれの端部に断熱材を備える形に構成された放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギー照明システムに対する関心の高まりに伴い、さらに高いランプ有効性を持つメタルハライドランプが望まれている。発光管内の金属ハロゲン化物充填物の化学作用の最適化の他に、発光管の熱制御もまた重要である。メタルハライドランプの場合、ランプ性能は、通常の動作条件における金属ハロゲン化物充填物の蒸気圧に直接的に関連する。発光管のコールドスポットの温度によって、金属ハロゲン化物充填物の蒸気圧は制御される。コールドスポットの温度が高くなるほど、発光管の内部の金属ハロゲン化物充填物の蒸気圧も高くなる。蒸気圧がより高くなると、ランプの性能は向上し、ランプ有効性が高まると共に、演色特性もより良くなる。通常、コールドスポットの位置は、発光管の2つの端部における発光管電極の背後である。
【特許文献1】米国特許第4,383,197号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、発光管の最大温度が発光管材料の動作温度の限界を上回らないような形で、コールドスポットの温度をより高くしたメタルハライドランプの実現が望まれている。発光管の内部の金属ハロゲン化物蒸気圧は、所定のワット数において高めなければならない。そうすれば、ランプ有効性および色性能は向上する。加えて、発光管のコールドスポットの温度を上げるにあたっては、発光管から生じる可視光出力を妨げないようにすべきであり、そうすると、コールドスポット温度上昇による有効性の向上分の全てをランプの外部に伝えることができる。本項目において述べた内容は、単に本発明の開示に関連した背景情報を提供するもので、先行技術を構成するわけではない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
改良型の断熱材を有した発光管を備える高輝度放電ランプである。断熱材は、発光管の少なくとも1つの端部の近傍に形成されているが、発光管の外部中央部分の周囲には存在していない。加えて、断熱材は、可視光を透過するにもかかわらず熱放射を透過しない、という材料で作られている。
【発明の効果】
【0005】
断熱材を発光管のコールドスポット領域に加えることにより、当該領域からの放射熱損失は大幅に小さくなり、当該領域の温度は上昇する。さらに、酸化しないと共に可視光を遮断しない材料を選択することで、より高いランプ有効性を達成することができる。
更なる適用領域は、本文書で述べる説明から明らかになるであろう。理解すべき点として、ここでの説明と特定の実施例とは、例示のみを目的としたもので、本発明の開示の範囲を限定することを意図してはいない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
ここで示す図面は例示のみを目的としており、いかなる形であれ本発明の開示の範囲を限定することは意図していない。
図1が示すのは、例示的な高輝度放電ランプ10である。ランプ10は、一般的な形として、細長い形状を有して外側エンベロープ14の中に配置された発光管12を有する。発光管12は閉じられた放電スペースを形作っており、その中には、イオン性材料(例えば、金属ハロゲン化物や水銀)と、開始ガス(starting gas)(例えば、アルゴンやキセノン)が入っている。理解されるとおり、他の材料を発光管の中に封入することもできる。また同様に、発光管ならびに外側エンベロープの形状を異なるものにした場合も、本発明の開示の範囲に含まれる、ということも理解されるであろう。
【0007】
外側エンベロープの一方の端部には、エンドキャップ16が設けられている。また、一対のリード線18がエンドキャップ16から、外側エンベロープ14によって形成された内部空洞の中に延びている。一対のリード線18は次いで、発光管12の各端部において、電流フィードスルー部材19に電気的に接続されている。また、不純物ガスを閉じ込めるためのゲッタ13を、リード線のうち1本に接合しておいてもよい。
【0008】
円筒形の電極スリーブ23(「キャピラリ(capillary)」とも呼ぶもの)が、発光管の各先端部から外に、縦方向に延びている。各円筒形電極スリーブ23には貫通穴があり、この穴を通って、電流フィードスルー部材19が、発光管の外側から発光管の内部空洞の中へと延びている。発光管の内部空洞を閉じるために、シーリングフリットが電極スリーブ23の端部から中に入れられて、電流フィードスルー部材19の周囲の隙間を埋めている。放電ランプに関する基本的構造は上で述べた通りであるが、容易に理解される通り、この開示内容から、こうした設計に変形を施すことも考えられる。
【0009】
通常、高輝度放電ランプにおけるコールドスポット(cold spot)は、発光管の端部または発光管のキャピラリ部分に位置する。熱放出の位置が原因で、発光管の端部およびそのキャピラリは他の部分よりも温度が低く、その結果、塩添加物(salt additives)がこの場所で凝縮する。この場所の温度が、熱くなった電流フィードスルー部材からの熱エネルギー損失を収集して再放射することによって上げられるのであれば、ランプ添加物(lamp additive)蒸気圧が発光管の内部で高まり、性能はより高くなる。断熱材をコールドスポット領域に追加することで、当該領域からの放射熱の損失は相当に小さくなり、当該領域の温度は高くなる。さらに、金属などのようにランププロセス条件による酸化が生じることがなく、可視光も遮断しない、という材料を選択することで、より高いランプ有効性を達成することができる。従って、本発明の開示では、可視光領域では非常に高い透過性を有するが、赤外線熱放射に対しては透過性がない、という材料で作られた断熱材を使用する。以下の説明は石英(quartz)に関して述べるものであるが、断熱材に他の材料(例:アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩)も用いられることは理解されるであろう。
【0010】
1つの例示的な実施の形態では、図1で示すように、2本の真っ直ぐな石英管22A、22Bが断熱材として使用されている。2本の石英管は、一対の金属ワイヤクリップ24a、24bによって所定位置に保持されており、これらクリップは、電流フィードスルー部材19のうち発光管12の外にある部分に溶接されている。2本の石英管22A、22Bの内径は、発光管12の外径よりもわずかに大きくなっている。このように、2本の石英管22A、22Bは、発光管12の各端部を囲んでおり、その結果、コールドスポットの温度は熱放射の反射、吸収、そして再放射によって高くなる。発光管の中央部分を囲む断熱材は存在しないため、発光管の中央部分において温度の上昇はない。留意すべき点として、まっすぐな石英管の製造コストは比較的安価である。
【0011】
本実施の形態の別の側面として、断熱材が発光管のキャピラリ部分の全体を囲むわけではない、という点が好ましい。図2を参照する。好ましい構成として、断熱材22Aは、シーリングフリット21が電極スリーブ23の内部に入り込んでいる場所には接しておらず、そのため、この領域において温度の上昇はない。シーリングフリット近くで温度を比較的低く保つことで、金属ハロゲン化物の充填物とシーリング材との間で生じうる化学反応が制限され、その結果、ランプの寿命をより長くすることが可能となる。
【0012】
図3(a)、3(b)に示すのは、本発明の開示による断熱材を有した放電ランプ10の、別の例示的な実施の形態である。この実施の形態では、断熱材32A、32Bは、発光管のうちキャピラリ部分だけを囲むようにサイズが設定されている。図3(b)を参照する。断熱材32A、32Bは、発光管のキャピラリ部分を囲んだ隙間嵌めとなっている。金属ワイヤ11は、断熱材32A、32Bを所定位置に保持する用途に用いられている。例示的な実施の形態では、ワイヤは発光管の外輪郭に沿っており、各端部においてフック形状になっている。ただし、断熱材を所定位置に保持するためのメカニズムとしては、他のものを用いることも考えられる。
【0013】
上述した通り、断熱材は32A、32Bは、可視光領域に対して高い透過性を有するが、赤外線熱放射に対しては透過性がない、という素材で作られている。それに加え、断熱材32A、32Bは、好ましい構成として、キャピラリ部分の端部までは延びておらず、よって、シーリングフリット21が電極スリーブ23の内部に入っている場所には接していない。この構造により、キャピラリ部分内部にある金属ハロゲン化物の化学物質の温度は上昇し、それにより、発光管内部の金属ハロゲン化物の化学物質充填物の量をより少なくした形で、メタルハライドランプを設計することが可能となる。金属ハロゲン化物の化学物質充填物の量がより少なくなれば、発光管の内部の不純物も少なくなり、発光管内部での金属ハロゲン化物の充填材と発光管の壁の素材との間の科学反応も小さくなる。
【0014】
図4に示すのは、本発明の開示による断熱材を有した放電ランプの更に別の例示的な実施の形態化である。本実施の形態では、断熱材42A、42Bのそれぞれが、一方の端部にフレア形部分を有した端部開放形のシリンダで作られている。シリンダの内径はここでも、発光管のキャピラリ部分を囲むようにサイズが設定されている。加えて、シリンダは、キャピラリのうちシーリングフリットが存在する領域には接していない。フレア形部分の内表面の輪郭は、発光管の端部の外表面をなぞった形となっている。上述した通り、金属ワイヤ11は断熱材42A、42Bを所定位置に保持するのに用いられている。必須ではないが、断熱材22Aを発光管の外表面から空間的に隔てられた状態にして、発光管から熱が逃れる形の熱伝導移動を避ける、とするのが好ましい。
【0015】
発光管の2つの端部に断熱材を使用すると、発光管の最高温度と発光管のコールドスポット温度との間の温度差を小さくすることができ、その結果、発光管の本体にわたっての動作温度の分布はより等温に近づく。発光管がより等温に近い状態で動作することで、望ましい利点が生じる。通常、大部分のランプ特性(例えば、発光効率および色性能)は、最大温度が上昇しない形でコールドスポット温度を上昇させると、大幅に向上する。大部分のメタルハライドランプの最高温度は、良好な保守と長い製品寿命とを目的として、発光管材料の限界に非常に近くなっている。最高温度が更に高くなると、ランプの製品寿命は短くなる。発光管の最高温度が固定されている場合、コールドスポット温度を比較的高くすることで、演色性が向上する。これは、より多くの金属ハロゲン化物添加物が気相となるからである。また、発光管最高温度を下げることで、金属ハロゲン化物添加物とアルミナの発光管本体との間の化学反応が少なくなる。温度差が小さくなるため、発光管壁の内部の熱応力は小さくなる。これにより、ランプ製品寿命中に、熱応力に起因するひび割れ問題がアルミナ発光管に生じることはなくなるであろう。
【0016】
実験データからも、こうした断熱材の効果は証明されている。下に示す表では、発光管幾何学形状と化学物質充填材とが異なる2つのセラミックメタルハライドランプの測光データが、石英断熱材を有する場合と有していない場合とについて示してある。
【0017】
【表1】

【0018】
赤外線イメージング技術を用いた発光管壁の温度測定が示しているのは、石英断熱材を備える場合、発光管の中央部近くでは最高温度が下がり、キャピラリの近くでは最低温度が上がって、発光管がより均一な温度となる、ということである。より等温に近い発光管では、メタルハライドランプは、様々に向きが異なっても、より優れた性能を有するであろう。加えて、石英熱シールドをランプの発光管に用いると、ランプ有効性が大幅に向上する。2つのランプの演色評価数も向上する。こうしたランプ性能の向上は、コールドスポットの温度がより高くなることで、発光管内部の金属ハロゲン化物蒸気圧がより高くなることによる。
【0019】
ここでの発明の説明は、本質的に例示的なものでしかなく、従って、本発明の主旨から逸脱しない形の変形例は、本発明の範囲に含まれることを意図している。そうした変形例は、本発明の精神および範囲からの逸脱と見なすべきではない。理解すべき点として、全図面を通して、対応する複数の参照番号は、同一または対応関係にある部品または特徴部を指している。
【産業上の利用可能性】
【0020】
発光管の最大温度が発光管材料の動作温度の限界を上回らないような形で、コールドスポットの温度をより高くしたメタルハライドランプを実現する、という点で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の開示による断熱材を有した高輝度放電ランプの例示的な実施の形態を示す断面図である。
【図2】放電ランプの部分的な断面図である。
【図3】(a)別の例示的な実施の形態による断熱材を有した高輝度放電ランプの断面図である。 (b)図3(a)の線A−A´に沿った発光管のキャピラリ部分の断面図である。
【図4】さらに別の例示的な実施の形態による断熱材を有した高輝度放電ランプの断面図である。
【符号の説明】
【0022】
10 ランプ
14 外側エンベロープ
22、32、42 断熱材
23 電極スリーブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高輝度放電ランプであって、
外側エンベロープと、
外側エンベロープの中に配置されて、細長い形状を有した発光管と、そして、
発光管の少なくとも1つの端部の近傍に形成されていると共に、発光管の外部中央部分の周囲には存在していない、という断熱材と、を有し、
前記断熱材は可視光を透過すると共に熱放射を透過しない、という材料で作られていること、
を特徴とする高輝度放電ランプ。
【請求項2】
断熱材は端部開放形のシリンダの形状を有すること、
を特徴とする請求項1に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項3】
断熱材の内表面の輪郭は、発光管の端部の外表面の輪郭を実質的になぞった形となっていること、
を特徴とする請求項1に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項4】
断熱材は発光管の外表面から空間的に隔てられていること、
を特徴とする請求項1に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項5】
発光管の端部から縦方向に延びた電極と、そして、
電極に溶接されて、断熱材を発光管の端部の近傍に保持するように構成されたクリップと、を更に有すること、
を特徴とする請求項1に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項6】
発光管の各々の端部の近傍に断熱材が形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項7】
断熱材の材料は実質的にシリコン酸化物であること、
を特徴とする請求項1に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項8】
断熱材の材料は、実質的にアルミノケイ酸塩であるか、実質的にホウケイ酸塩であること、
を特徴とする請求項1に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項9】
発光管の各端部から縦方向に延びた円筒形の電極スリーブを更に有し、
前記電極スリーブの外径は発光管の外径よりも小さく、断熱材は電極スリーブの外表面に接するだけの形で形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項10】
発光管の外部から発光管の内部空洞の中に延びる電極のために、電極スリーブには貫通穴が設けられており、シーリング材は貫通穴のうち外に面した端部から中に入った位置に置かれ、断熱材は、電極スリーブのうちシーリング材に接する領域の周囲には延びていない、という形になっていること、
を特徴とする請求項9に記載の放電ランプ。
【請求項11】
高輝度放電ランプであって、
外側エンベロープと、
外側エンベロープの中に配置されて、細長い形状を有した発光管と、
発光管の各端部から縦方向に延びた電極スリーブであって、各電極スリーブには、発光管の外部から発光管の内部空洞の中に延びる電極のために貫通穴が設けられている、という電極スリーブと、そして、
電極スリーブの外表面にのみ隣接する形で形成された断熱材であって、可視光を透過すると共に熱放射を透過しない材料で作られた断熱材と、を有すること、
を特徴とする高輝度放電ランプ。
【請求項12】
断熱材は、電極スリーブの一部を囲む端部開放形のシリンダの形であること、
を特徴とする請求項11に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項13】
断熱材の内径は電極スリーブの外径よりも大きく、そのため、断熱材は電極スリーブから空間的に隔てられていること、
を特徴とする請求項12に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項14】
貫通穴のうち外に面した端部の中に配置されたシーリング物質に接する領域では、断熱材は電極スリーブを囲んでいないこと、
を特徴とする請求項11に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項15】
断熱材は、シリコン酸化物、アルミノケイ酸塩、またはホウケイ酸塩で作られていること、
を特徴とする請求項11に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項16】
電極スリーブの外表面に沿った所定位置に断熱材を保持するための手段を更に有すること、
を特徴とする請求項11に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項17】
高輝度放電ランプであって、
外側エンベロープと、
外側エンベロープの中に配置されて、細長い形状を有した発光管と、
発光管の各端部から縦方向に延びた電極スリーブであって、各電極スリーブには、発光管の外部から発光管の内部空洞の中に延びる電極のために貫通穴が設けられている、という電極スリーブと、そして、
電極スリーブの外表面を囲んでいるが、貫通穴の外に面した端部の中に配置されたシーリング材に接する領域では電極スリーブを囲んでいない、という断熱材と、を有すること、
を特徴とする高輝度放電ランプ。
【請求項18】
断熱材は、電極スリーブの一部を囲む端部開放形のシリンダの形をしていること、
を特徴とする請求項17に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項19】
断熱材の内径は電極スリーブの外径より大きく、そのため、断熱材は電極スリーブから空間的に隔てられていること、
を特徴とする請求項18に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項20】
断熱材は、シリコン酸化物、アルミノケイ酸塩、またはホウケイ酸塩で作られていること、
を特徴とする請求項17に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項21】
電極スリーブの外表面に沿った所定位置に断熱材を保持するための手段を更に有すること、
を特徴とする請求項17に記載の高輝度放電ランプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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