説明

ガンマシンチグラフィー評価のために処方物を放射性標識する方法

本発明は、ガンマシンチグラフィーに用いるための、好ましくは胃滞留処方物とともに用いるための放射性標識生成物を生産するための新規方法に向けられる。本発明の一態様は、好適な放射性核種を活性炭などの基体に吸着し、この核種/基体生成物を不溶性ポリマーとブレンドすること、該ポリマーミックスの溶融ブレンドを形成し、固体を形成するために、該溶融ブレンドを冷却し、その後、該固体をより小さな粒子に分解することを含む方法である。好適には、前記溶融ブレンドの温度は、前記ポリマー材料を分解するほどではないが前記ポリマーを溶解するのに十分に高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インビボ画像研究のために胃滞留処方物を放射性標識する方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、ガンマシンチグラフィー評価のために胃滞留処方物を放射性標識する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
胃滞留処方物(GRF)は、吸収域の狭い製剤原料としてのこれらの処方物の明らかな利益から、局所治療の解析のために、または他の困難な薬物動態学的および薬力学的状況のために、産学両方によって長期間追求されている。胃滞留戦略は5つの基本カテゴリー:浮遊薬剤、高密度薬剤、生体接着性薬剤、大型薬剤および胃運動性薬剤に分けることができる。
【0003】
多数のGRFは、胃内で、投与時のサイズおよび幽門を通過することができないサイズよりも大きなサイズを得る膨張/分解に基づき、胃滞留のカテゴリーに入る。しかしながら、特定の物体を胃内に滞留させるために必要とされるサイズははっきりと分かっていない。大きな異物の摂取および胃石の内視鏡的データからは、大きくかなり剛性のある物体を胃内に長期間滞留させるためには、長さ5cm、直径2cmより大きなサイズでなければならないことが示されている。また、内視鏡的データからは、異物が差し迫った健康リスクをもたらさず、このサイズより小さいならば、外科的介入は必要でなく、その物体は胃から排出されるはずであることも示されている。これはGRFを作出するのに必要なサイズおよび強度の対照評価とは程遠いが、胃滞留に必要であるGRFのサイズおよび体積膨張のタイプに関するガイダンスこそ提供する。このサイズを得、医薬上許容される形(例えば錠剤またはカプセル剤)で投薬することができるように、体積膨潤の量は元のサイズの約15倍である。これはかなり困難な課題であるが、適切な処方物を用いて達成することができる。
【0004】
GRFの最終的な成功は、製剤原料の薬物動態パラメーターおよび適当な送達に基づく。処方物が胃内に正確に滞留されるかどうかを判定するためには、GRFの物理的性質を変更しない非侵襲的アプローチが好ましい。この分野では磁気共鳴画像法が人気を得ているが、かかる処置は患者にとって苦痛であることがある。別の選択肢はカプセル状の飲み込めるカメラである。飲み込めるカメラのビデオ解像度は例外的であり、しかしながら、バッテリー寿命は限られており、現時点ではカメラの方向および胃腸管通過を制御することはできない。ガンマシンチグラフィーは、in vivoでの投与形の位置の追跡のために広く使用されており、通過研究の「ゴールドスタンダード」と呼ばれることが多い。
【0005】
ガンマシンチグラフィーを行うためには、少量の放射性元素を投与形に組み込む、例えばγ線を放出するGRF。その後、ガンマカメラなどの外部デバイスにより体内におけるその位置を追跡することができる。
【0006】
放射性核種を使用して、ガンマシンチグラフィーを用いてGRFをうまく画像化するためには、その放射性核種がGRFによって長期間保持される必要がある。これは、胃環境における放射性核種の特性およびGRFの特徴に応じて、深刻な問題をもたらす。
【0007】
典型的な放射性標識アプローチを種々の経口処方物に用いることに成功したが、GRFはさらなる問題を提供する。GRFは、意図的に、圧縮機械消化力が作用している、低くなお変動するpH環境において長期間滞留させる。加えて、大きなサイズに基づいた胃滞留を追求し、その元のサイズの15倍以上膨潤する処方物を必要とする場合には、その処方物は膨潤状態においてかなり穴が多くなる場合が多く、放射性核種の滞留についてのさらなる問題がもたらされる。処方物からの放射性標識の早期漏出は、GRFの胃内容排出または崩壊を不正確に示す可能性がある。活性炭およびAmberlite(商標)(Rohm & Haas)樹脂担体への吸収、水性キャスト膜、および従来のビーズコーティングなどの他の方法は全て、胃の厳しい条件を受けると効果がないことが証明されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在用いられている現行法は効果がないと考えられているため、上記に記載した生理学的問題を克服する、好ましくは放射性標識としての、胃滞留投与形の適切な標識が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、新規放射性標識を生産する方法であって、該新規放射性標識が通常の製造プロセスによってデバイスまたは処方物に組み込まれ、該デバイスまたは処方物が哺乳類における該デバイスまたは処方物の位置の決定のために該放射性標識を利用する、方法を提供する。好適には、前記位置は哺乳類、好ましくはヒトの胃腸管である。
【0010】
本発明はまた、放射性標識を生産するための方法であって、哺乳類の胃腸管における位置の決定のために該放射性標識を利用するデバイスまたは処方物に組み込まれたときに、胃環境の圧縮力および消化力によって該放射性核種を早期に放出しない、方法も提供する。
【0011】
本発明はまた、放射性標識を生産するための方法であって、哺乳類の胃腸管におけるデバイスまたは処方物の位置の決定のために該デバイスまたは処方物に組み込まれたときに、胃環境内での変動するpHレベルによって該放射性核種を早期に放出しない、方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】投薬後18時間のヒト胃内部の、本発明で放射性標識したGRFの図である。
【図2】5.3%SmOx、47.35%ポリビニルアセテートおよび47.35%セルロースアセテートの組成を有するエレクトロスパン繊維を示す。
【図3】95.2%ポリカプロラクトンおよび4.8%SmOxの組成を有するエレクトロスパン繊維のSEMを示す。
【図4】3.2%SmOx 96.8%ポリエチレンビニルアセテートの組成を有する大径ビーズ状エレクトロスパン繊維のSEMを示す。
【図5】6.25%SmOxおよび93.75%ポリエチレン−ビニルアセテートの組成を有するエレクトロスプレービーズのSEMを示す。
【図6】ヒトにおける1日を通した胃のpH変動についてのグラフ表現である。
【図7】有効半減期31時間を有する、ポリエチレンビニルアセテートSmOx繊維のpH1.5における理論放射能量と実測放射能量(uCi)の両方を示す。
【図8】図8(a)は塩化インジウム/活性炭/セルロースアセテート粉末が組み込まれたGRFのpH1.5における溶解を示す(理論放射能量と測定放射能量の両方を示す)。 図8(b)は、塩化インジウム/活性炭/セルロースアセテート粉末が組み込まれたGRFのpH4.5における溶解を示す(理論放射能量と測定放射能量の両方を示す)。
【図9】投薬後11時間の雑種イヌ胃内の(実施例1の)放射性標識GRFを示す。胃の輪郭は、同時投薬した99テクネチウム標識卵の画像化に基づいたものである。
【図10】図10(a)は酸化サマリウム粉末が組み込まれたGRFのpH1.5における溶解を示す(理論放射能量と測定放射能量の両方)。 図10(b)は酸化サマリウム粉末が組み込まれたGRFのpH4.5における溶解を示す(理論放射能量と測定放射能量の両方)。
【図11】図11(a)は塩化インジウム粉末が組み込まれたGRFのpH1.5における溶解を示す(理論放射能量と測定放射能量の両方)。 図11(b)は塩化インジウム粉末が組み込まれたGRFのpH4.5における溶解を示す(理論放射能量と測定放射能量の両方)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、新規放射性標識を生産するための方法であって、該新規放射性標識がデバイスまたは処方物の通常の製造プロセスに容易に組み込むことができ、該デバイスまたは処方物が哺乳類、好ましくはヒトにおける該デバイスまたは処方物の位置の決定のために、該放射性標識を利用する、方法を提供する。好適には、前記新規放射性標識とともに使用される前記デバイスまたは処方物は胃滞留処方物(GRF)である。
【0014】
本明細書に記載する特定の場合において、選択されたモデルGRFは、胃で滞留するのに十分に大きいサイズまで膨潤することができ、その結果この膨潤したGRFの非常に穴の多い性質から最も困難なケースを表しているものである。これらのGRF処方物は、US公開番号20040219186 A1、2004年11月4日、Ayers et al.に詳細に記載されており、この開示内容は引用することによりそのまま本明細書の一部とされる。
【0015】
本発明はまた、放射性標識を生産するための方法であって、哺乳類の胃腸管における位置の決定のために該放射性標識を利用するデバイスまたは処方物に組み込まれたときに、胃環境の圧縮力および消化力によって該放射性核種を早期に放出しない、方法も提供する。Kamba et.al.(2001) Int. J. Pharm. Vol. 228, 209-217によって、胃が典型的な投与形に及ぼす力は、絶食状態ではおよそ1.5N、摂食直後では1.9Nであることが報告されている。
【0016】
本発明はまた、放射性標識を生産するための方法であって、哺乳類の胃腸管におけるデバイスまたは処方物の位置の決定のために該デバイスまたは処方物に組み込まれたときに、胃環境内での変動するpHレベルによって該放射性核種を早期に放出しない、方法も提供する。絶食状態での典型的なpH値は1.0〜1.5であり、摂食直後での典型的なpH値は、摂取食物の種類およびサイズに応じてpH2.0〜5.0の範囲であり得る。一般に、摂食直後のpH範囲は4.0〜5.0である。よって、1日を通して食物が摂取され、消化されるため、胃内のpHは、食事量および回数に対応して1.0(絶食状態)〜5.0(摂食直後)間を変動するであろう。
【0017】
本発明のこれらおよび他の目的および利点は、デバイスまたは処方物の放射性標識についての現在分かっている問題を克服し、胃腸管を通じて投与形を追跡する能力を提供する放射性標識法によって提供される。一実施形態では、前記投与形はGRFである。
【0018】
前記方法は、一般に液状で入手可能な前記放射性核種を取得する工程、およびGI液中に早期に浸出しない、そのGI管通過中前記デバイスまたは処方物とともに留まる粉末状の放射性核種を得る工程を含む。好適には、放射性核種は、イオン交換樹脂または活性炭などの基体に吸着される。これらの放射性標識基体はこのように用いることができるが、実施例節で示すように、前記放射性核種が前記デバイスまたは処方物から浸出すると思われることからそれらは理想的ではない。本方法では、最初に液体放射性核種を取得し、その核種を活性炭に吸着し、その後、この放射性標識基体を不溶性ポリマーと混合する。次いで、その混合物を溶解して、放射性核種とポリマーのブレンドを形成し、その溶融ブレンドを冷却して、脆性固体を形成し、この脆性固体をさらにより小さな粒径に分解する。
【0019】
下記に記述するように、本発明の方法には、数多くの同位元素およびポリマーを使用することができる。
【0020】
上述のとおり、本発明は、胃運動性および、重要である場合には、胃腸管通過の追跡に好適な種々のデバイスに組み込むことができる新規放射性標識を提供するための方法に向けられる。この新規技術は、好適な放射性核種のカプセル封入および胃処方物におけるその使用を提供する。本発明を例示するために、胃で滞留するのに十分に大きいサイズまで膨潤することができるモデルデバイス、大型胃滞留処方物を選択した。この放射性標識を使用することができる代替処方物としては、限定されるものではないが:従来の錠剤および多粒子処方物(multiparticulate formulations)、ミニ錠剤、医薬フィルム、医薬ヒドロゲルおよびキセロゲル、ならびに他のタイプの胃滞留投与形(浮遊または高密度錠剤、多粒子、フィルム、エレクトロスパン繊維および/もしくは不織布マット、フォーム、ゲルおよびビーズ、生体接着性錠剤、多粒子、ゲル、フォーム、フィルム、および膨潤錠剤など)が挙げられる。
【0021】
本発明による放射性標識を調製するためには、第一の工程は、放射性核種を好適な基体、特に活性炭または医薬上許容されるイオン交換樹脂(Amberjet、Amberlite、Duolite、CM−セルロースまたはDEAE−セルロースなど)に吸着することである。
【0022】
本明細書における使用に好適な放射性核種または同位元素は、不安定原子核を有し、ある特定の半減期において減衰し、γ線を放出する核種である。前記放射性核種としては、限定されるものではないが、塩化インジウム(111InCl)、インジウム、サマリウム、酸化サマリウム、テクネチウム、ヨウ素化合物およびそれらの誘導体またはキレート(例えばテクネチウムスズコロイド、インジウムペンテト酸二ナトリウムなど)または化合物形態のものが挙げられる。好ましい放射性核種は、好ましくは塩化インジウム形態の、インジウム−111である。
【0023】
記述したとおり、サマリウム、インジウムおよびテクネチウムは全て、ガンマシンチグラフィー評価に理想的な放射性核種候補に相当する。しかしながら、製造にかなりの時間(〜24時間)を要するいくつかの処方物では、ある特定の同位元素、例えばインジウムおよびサマリウムと比べて短い半減期を有するテクネチウムは適当でない可能性がある。サマリウムは単独で中性子照射でき、または最終投与形であり得るため、サマリウムは、酸化サマリウムのように、非放射性サマリウムを使用して製造する能力を提供する。
【0024】
本明細書において、「放射性標識」とは、放射性物質を有する生成物、またはそれに組み込まれた放射性核種である。用語「放射性標識」とは、胃処方物に組み込まれる最終生成物を指すものとする。また、本発明では、特定の用語(放射性核種、同位元素、または放射性物質など)を同義的に用いてよい。
【0025】
前記放射性核種を活性炭(Sigma Aldrich)に吸着させる場合には、一定の吸収パターンであることが好ましい。このことを確実にするためには、前記混合物に少量の水または酸性化した水(炭100mg当たりおよそ0.5mL)を加えて、前記放射性核種の濃度を希釈し、湿潤スラリーまたは懸濁液に類似した前記放射性核種(インジウムなど)の前記炭への適切で均一な曝露を可能にすることができる。酸を利用する場合には、それはpHを値2未満に低下させるはずのものである。好適な酸としては、限定されるものではないが、塩酸、リン酸または酢酸が挙げられる。本発明の一実施形態では、前記酸は0.1N塩酸である。
【0026】
前記放射性核種が加えられた前記活性炭は乾燥させる(本明細書では放射性標識基体または放射性標識炭とも呼ぶ)。最も一般的な乾燥法は、ガラスバイアル中で、該フラスコの底に向けてヒートガンを用いて前記スラリーを加熱し、該フラスコ内の温度を、その液体を蒸発させるのに十分に高くする(例えば>100℃)ことによるものである。あるいは、オーブン内で、ホットプレートを用いて、など、で乾燥するような他の方法も使用することができる。
【0027】
活性炭への塩化インジウムの有効吸収/保持は、活性炭100mg当たり50uCi〜1.2mCiの範囲で評価した。
【0028】
好適には、前記乾燥放射性標識炭は、次いで、粉末状の不溶性ポリマーと乾式ブレンドする。ポリマーと放射性標識炭のブレンドは、それが溶融状態になる温度まで加熱し、脆性ガラスに類似した堅さを有する時点まで冷却する。選択される温度は、前記ポリマー材料を分解するほどではないが前記不溶性ポリマーを溶解するのに十分に高くあるべきある。一般に、この温度は前記ポリマーガラス転移温度(Tg)より少なくとも10℃高いであろう。ポリマーは各々異なるTg温度を有することが確認されている。例えば、ポリマーとして溶融温度230〜300℃を有するセルロースアセテートを使用する場合、該ポリマーを分解しないで溶解するのには、この範囲以上350℃までの温度が好適であり、この際、該ポリマーはこの温度に短時間(最大およそ5分)曝される。前記冷却混合物は、次いで、GRFへの組み込みに好適な小粒子に粉砕する。粉砕または破砕に好適ないずれの方法も用いてよい。
【0029】
本発明は不溶性ポリマーの使用を意図し、これらの不溶性ポリマーとしては、限定されるものではないが、セルロースアセテート、ポリビニルアセテート、ポリエチルビニルアセテート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびポリ(乳酸−グリコール酸共重合体)(PLGA)が挙げられる。好ましい不溶性ポリマーはセルロースアセテートである。本発明の方法において腸溶性ポリマーも使用することができることが確認されているが、それらは胃内で起こる高pH変動の影響を受けやすいため一般には好ましくない。さらに、腸溶性ポリマーは、腸内で溶解するため、完全な胃腸管通過を定量することができないであろう。
【0030】
本発明において利用することができる好適な放射性標識炭対ポリマー重量比は約1:3〜約1:100の範囲である。好ましい放射性標識炭対ポリマー重量比は約5対30、より好ましくは約1対約6である。一例は0.3gのセルロースアセテート(Grade CA-398 Eastman Chemicals)対0.05gの放射性標識活性炭である。
【0031】
前記放射性標識の粒径は、好ましくは、約5μm〜約20μm間である。前記粒子は、必要に応じて前記GRFにおける保持を最適化するためにまたは前記放射性標識の前記GRFの物理的性質に対する影響を最小限に抑えるために、様々な粒径に破砕することができる。あるいは、非胃滞留用途では、GI管内通過への粒径効果を調査するために、前記粒子を様々なサイズに破砕し、別々に投与することができる。本発明のさらなる実施形態では、非胃滞留用途で、あるサイズより小さな粒子が腸内でパイエル板を通して吸収されるかまたはエンドサイトーシスによって取り込まれるというサイズが存在するかを確認するために、前記粒子をナノ破砕することができる。
【0032】
代替基体として、イオン交換樹脂(IER)上に前記放射性核種を置き、前記活性炭のものと同様に取り扱ってよいが、溶融ブレンドを形成するために該イオン交換樹脂/放射性核種を不溶性ポリマーと組み合わせる必要はない。主として、選択デバイスまたは処方物におけるさらなる操作のために、前記放射性標識を好適な乾燥状態にすることが望ましい。例えば、塩化インジウムを水溶液で提供し、その水溶液を、次いで、前記炭に吸収させ、乾燥させるか、あるいは前記炭の代わりにIERに対して用いる。
【0033】
本発明の別の実施形態では、前記放射性標識粒子は、体の特定部位(腫瘍部位など)を標的にする特定化合物でコーティングすることができる。前記粒子は、吸入または経鼻デバイスにより使用される粉末に類似した物理的特性で生産することもでき、それらによって典型的な流れパターンおよびin-vivoでの沈着の調査が行われるであろう。吸入デバイスによる製剤原料粉末の体内動態の確認は、その適当な製剤原料が標的領域に到達するが、咽頭に沈着せず、胃の中に入り、場合によってその薬剤治療を無効にすることを確実にするために重要である。経鼻デバイスの場合にも同じことが言え、その一部は、例えば、血液脳関門を迂回して、治療薬を中枢神経系に直接送達し得る特定部位を標的にするために、鼻腔の特定部位を標的にすることがある。また、この放射性標識生成物は、キトサン、carbopol、gantrezなどのような粘膜付着性ポリマーでコーティングして、コーティングが鼻腔内での滞留時間を延長させるかどうかを確認することもできる。
【0034】
本発明において使用される放射性核種に理想的な光子エネルギーは、約100keV〜約200keVの間である。この範囲未満では、組織散乱により分解能が低下し、この範囲を超えると、感度が低下する。前記放射性核種の別の重要な側面はその半減期である。前記放射性核種の半減期によって、それが放射性標識処方物を画像化することができる時間の長さが決まる。従って、特定放射性核種の半減期が長いほど、試験被験体においてその放射性核種を含む処方物を長く画像化することができる。例えば、111Inの半減期は2.8日であり、その光子エネルギーは247keVであり、153Smの半減期は46.27時間であり、その光子エネルギーは103keVであり、99mTcの半減期は6.01時間であり、その光子エネルギーは140keVである。
【0035】
インジウムは、本発明の方法に用いるための多数の最適特性を有する同位元素である。塩化インジウムを組み込んでいる胃処方物は、ヒト身体に類似した条件下でのガンマシンチグラフィー解析で有効に働くことが分かった。具体的に言えば、モデルGRF処方物とともに使用した塩化インジウムは、pHレベル約1.5および約4.5において好ましい滞留を示した。これらのpHレベルは、それぞれ、ヒト胃によって絶食中および摂食後に示されるものに相当する。インジウムは、シンチグラフィー解析を充実させる好ましい半減期特性も示す。
【0036】
図1に関しては、ヒト胃内部の、活性炭に吸収させ、セルロースアセテートでコーティングした塩化インジウムで放射性標識した胃滞留処方物のガンマシンチグラフィー画像を示している。図1の画像は、ガンマシンチグラフィーを用いて作成し、放射性標識GRFを投薬した18時間後に撮影した。図に示された基準は、シンチグラフィーカメラ下での適切な位置決めに用いたインジウム標識マーカーである。加えて、胃の輪郭を提供するために、GRFをテクネチウム標識食物と同時投薬した。図に示されるとおり、GRF中に前記放射性標識が高度に滞留し、GRFからの前記放射性標識の漏出は実質的にない。これは本発明の方法の利点を明らかにしている。
【0037】
上述の方法は、他の画像技術(磁気共鳴画像法または磁気モーメント画像法など)に用いるマーカーをコーティングするために使用することもできる。
【0038】
また、放射能を扱う作業であることから、放射性標識の製造に通常使用可能な装置のタイプおよび装置の規模が制限される。加えて、前記放射性標識の製造は、投薬前日に臨床現場で行われることが多い。そのため、かかる作業は、ほとんどの研究所で使用可能な一般的な装置しか必要とせず、一方で、必要な時間を最小限に抑え、製造中の放射能量の喪失を最小限に抑えるべきである。本発明は、ホットプレートおよび乳棒と乳鉢などの限られた研究室装置しか必要としない。
【0039】
本発明の別の実施形態は、ナノサイズの放射性標識粒子を封入した繊維またはビーズ状繊維を作出するためのエレクトロスピニングの使用であり、例えば、SmOxナノ粒子を使用することができる。
【0040】
本発明の別の実施形態は、放射性核種を封入した類似最終生成物(後に照射することができる放射性核種(例えば、酸化サマリウム)を用いたものなど)を作出するための当技術分野で周知の他の方法を用いた溶融押出繊維、溶融押出顆粒、またはエレクトロスプレービーズ(Loscertales et. al. Science, vol.295, 2002, p.1695において見られるものなど)の使用である。これらの方法に使用できるポリマーには、本明細書において記載したポリマー溶解アプローチで上記に記述したものなどが含まれ、限定されるものではないが:セルロースアセテート、ポリビニルアセテート、ポリエチルビニルアセテート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸(polyactic acid)、ポリグリコール酸、およびポリ(乳酸−グリコール酸共重合体)(PLGA)が挙げられる。好ましくは、これらの方法に用いるための前記ポリマーはポリエチレンビニルアセテート(PEVAc)およびポリカプロラクトン(PCL)である。
【0041】
前記エレクトロスピニングプロセスには、有機溶媒などの好適な溶媒が必要なことがある。好ましくは、選択溶媒はGRAS認可有機溶媒、またはGRAS認可を得るのに好適なものであるが、結果として生じる量は検出値に満たないため、その溶媒は必ずしも「医薬上許容される」ものでなくてよく、または食用に供するための、それらを使用してよい限界を設定してもよい。ICHガイドラインを選択に用いることが示唆される。GRASは「一般に安全と認められる(generally recognized as safe)」の頭字語である。
【0042】
本明細書における使用に好適な溶媒としては、限定されるものではないが、酢酸、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ブタノール、N,N ジメチルアセトアミド、N,N ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、ジスイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ペンタン、ヘキサン、2−メトキシエタノール、ホルムアミド、ギ酸、ヘキサン、ヘプタン、エチレングリコール、ジオキサン、2−エトキシエタノール、トリフルオロ酢酸、メチルイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、ジメトキシプロパン、塩化メチレンなど、またはその混合物が挙げられる。好ましくは、前記溶媒はエタノール、メタノール、アセトン、乳酸エチル、イソプロピルアルコール、ジクロロメタン、THFおよびその混合物である。前記溶媒には、その水性混合物を含めてよい。前記ポリマーPEVAcに好ましい溶媒はTHFである。PCLに好ましい溶媒は、アセトンおよび乳酸エチルの60:40混合物中の1,1,1,3,3,3−ヘキサルフオロ−2−プロパノールである。
【0043】
前記溶媒対ポリマー組成物比は、結果として得られる処方物の所望の粘度によって適宜決定される。典型的なポリマー範囲は、前記溶媒中5〜10%w/wであり、全容量の残りの部分は有機溶媒である。放射性標識ポリマー組成物のエレクトロスピニングでは、主要パラメーターには前記溶媒/ポリマー組成物の粘度、表面張力、および導電性が含まれる。
【0044】
本明細書における用語「ナノ粒子状物質」とは、前記エレクトロスパン繊維などの内部にあるナノ粒子サイズの前記放射性核種を意味する。
【0045】
本発明の別の実施形態では、前記放射性核種は、放射性核種を封入した類似最終生成物(後に照射することができる放射性核種(例えば、酸化サマリウム)を用いたものなど)を作出するための当技術分野で周知の方法を用いてビーズ(糖球または微晶質セルロースビーズなど)上にコーティングすることができる。前記ビーズは、前記放射性核種と前もって混合した好適なコーティング剤を用いて流動床で噴霧または生産することができる。好適なコーティング剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)または他の好適なセルロース誘導体が挙げられる。前記HPMCは、前記酸化サマリウムに対して〜5%w/wの量で使用されるように、前記核種、例えばサマリウムを、前記糖球に付着するために使用される。HPMCおよび酸化サマリウムの混合物を前記ビーズレットに塗布して、ほぼ10〜15%w/w程度の好適な%重量増加を達成する。そのビーズレットを、次いで、バリア層、Surelease(登録商標)など、例えばエチルセルロース系コーティング剤でオーバーコーティングする。前記ビーズのオーバーコーティング量は、重量/重量ベースで、使用される放射性核種、例えば、酸化サマリウムの量のおよそ1.5倍である。
【0046】
調製方法
ここで、次の実施例を参照することにより本発明を説明するが、それらの実施例は単に例示するものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。特に断りのない限り、総ての温度は摂氏温度で示し、総ての溶媒は利用可能な最高の純度である。
【0047】
実施例1:(塩化インジウム/活性炭/セルロースアセテート)
放射性標識調製:
50mgの活性炭をシンチレーションバイアルに秤量し、これに〜130uCiの塩化インジウム111溶液を加え、続いて、混合物の改善された均質性を得るために、該インジウムを希釈するための1mLの濾過水を加える。この混合物をゆっくりとかき混ぜ、次いで、その水分総てが除去されるまでヒートガンを用いてその水分を蒸発させる。この混合物は粉末として残るはずである。この放射性標識炭粉末をセルロースアセテート(CA−398−10NF)(およそ300mg)と1:6比で組み合わせ、確実に均一にするためにスパチュラでこの乾燥混合物をブレンドする。この混合物が溶解するまでこの混合物をホットプレート上に置く。この混合物を脆性ガラス様の堅さまで冷却する。この混合物を前記容器から取り出し、その粒径がおよそ10〜20μmとなるまで乳棒で破砕するために乳鉢に移す。
【0048】
胃滞留投与形調製:
高剪断混合および熱を利用して水に溶かした、1gのキサンタンガムおよび1gのローカストビーンガムを用いてGRFを調製する。これらの多糖類の溶解後、必要に応じて(乾燥状態にあるときに確実に柔軟性であるように)3gのポリエチレングリコール400を加え、前記放射性標識調製物(上記の前実施例、パート1からのもの)を加える。この水性混合物を金型1.5cmx1cmx7.5cmに注ぎ、物理的架橋の形成を通じてゲル化させる。ゲル化後、この処方物を50℃のThermoSavant RVT400冷却蒸気トラップを備えたIsotemp真空炉モデル282Aに入れて、およそ95%の水分を除去する。この乾燥ゲルを圧縮し、圧延し、000カプセルに入れる。
【0049】
この実施例で得られたin-vitroデータを図8(a)および図8(b)に示す。
【0050】
図8(a)は、塩化インジウム/活性炭/セルロースアセテート粉末が組み込まれたGRFのpH1.5における溶解を示している。このグラフにおける理論測定値は、この核種の放射能の経時的自然減衰を示している。理論測定値および実測値は一致することが好ましい。このグラフおよび図8(b)における理論測定値と実測値との差は、このGRF投与形からの放射性核種の喪失を示している。
【0051】
図8(b)は、塩化インジウム/活性炭/セルロースアセテート粉末が組み込まれたGRFのpH4.5における溶解を示している。
【0052】
図9は、投薬後11時間の雑種イヌ胃内の、実施例1の放射性標識GRFのin vivoデータを示している。胃の輪郭は、同時投薬した99テクネチウム標識卵の画像化に基づいたものである。
【0053】
大型イヌモデルにおける放射性標識GRFの評価は、ヒトと潜在的によりよい相関関係であることが確定された。これまでの研究では、ビーグルイヌは前記GRFをかなりの時間保持したが、ヒトにおける性能は大幅に短かった。このことから第二の大型イヌモデルにおける評価を行った、フォックスハウンド(30〜40kg)対ビーグル(10〜15kg)。フォックスハウンドのGRF滞留はヒトにおける性能と比べて長期間続き、さらにビーグルイヌのGRF滞留よりも正確に予測できた。フォックスハウンドの代わりに、雑種イヌ(15〜20kg)をこれらの放射性標識GRF滞留の評価に用いた。雑種イヌにおける放射性標識GRFの投薬では、図9の画像で示されるように、投薬後11時間でさえも放射性標識の漏出が実質的にないことが明らかであった。この結果は、放射性標識の完全性が十分であるという確信を提供し、胃の収縮および消化作用の付加的複雑性により放射性標識の早期放出が起こらないことを明らかにしている。雑種イヌの胃のpHは低基礎酸分泌速度のために食間に上昇することが多く、この上昇が高pHにおける長期滞留を提供し得ることが確認された。
【0054】
臨床研究におけるGRFのその後の評価(本明細書に記載)でも放射性標識がGRF中に高度に保持されることが明らかになった。図1は、ヒト被験体の18時間の画像を示しており、GRFが胃内になお滞留されており、ガンマシンチグラフィーによりはっきりと分かる。この図では、放射性標識の漏出が実質的に認められないことが分かる。胃の輪郭は、同時投薬した99テクネチウム標識卵の画像化に基づいたものである。実際には、初期投薬時放射能量111In 0.5MBqに基づき、完全GI通過時間の予測のためにシンチグラフィーによる評価によって48時間の時点を過ぎてもGRFの位置を決定することができた。
【0055】
実施例2:(酸化サマリウム粉末〜5um)
放射性標識調製:
酸化サマリウム粉末(〜5um)をミズーリ大学研究用原子炉(the Missouri University Research Reactor)(MURR)核施設に送り、投与形調製前に中性子照射した。この実施例では前記核種を炭にもイオン交換樹脂にも吸着させなかった。
【0056】
胃滞留投与形調製:
実施例1と同様、ただし、200mgの中性子放射化酸化サマリウム粉末をポリエチレングリコール400に加え、十分に混合した後、放射性標識としてキサンタンガム ローカストビーンガム混合物に加えた。このゲルを乾燥させ、実施例1に記載のとおりカプセル封入した。このカプセル封入GRFを、その後、in-vitro評価またはin-vivo評価に用いた。
【0057】
この実施例でのin-vitro データを図10(a)および図10(b)に示す。
【0058】
図10(a)は、酸化サマリウム粉末が組み込まれたGRFのpH1.5における溶解を示している。
図10(b)は、酸化サマリウム粉末が組み込まれたGRFのpH4.5における溶解を示している。
【0059】
有効半減期:
【表1】

注記:Sm半減期は46.27時間である
【0060】
実施例3:(酸化サマリウムビーズ)
放射性標識調製:
糖球(30〜35メッシュ, JRS Pharma)を、Glatt流動床中、酸化サマリウム/ヒドロキシプロピルメチルセルロース混合物で13%重量増加までコーティングし、続いて、エチルセルロース(Surelease(登録商標) E-7-19010, Colorcon)のバリアコートで15%増加までコーティングした。GRFに組み込む前に、これらの酸化サマリウムビーズをミズーリ大学研究用原子炉施設(the Missouri University Research Reactor nuclear reactor facility)において中性子照射した。
【0061】
SmOビーズの組成を以下に記載する。HPMC対SmO比は1:19.06である。
【0062】
【表2】

【0063】
胃滞留投与形調製:
上記実施例1の手順を用いて、GRF調製物を調製した。ただし、放射性標識として組み込まれる中性子放射化酸化サマリウムビーズ(およそ450mg)を用いた。
【0064】
酸化サマリウムビーズを用いてin-vitroでの有効半減期は以下であると確定した
【表3】

注記:Sm半減期は46.27時間である
【0065】
実施例4:(セルロースアセテート/ポリビニルアセテート/SmOxのエレクトロスピニング)
放射性標識調製:
この実施例では、ナノサイズのSmOx粒子を封入した繊維またはビーズ状繊維を作出するために、エレクトロスピニングの別の代替実施形態を利用する。放射性標識を含む活性剤のエレクトロスピニングは、WO 01/54667(US2003/0017208)において見つけることができ、この開示内容は引用することによりそのまま本明細書の一部とされる。
【0066】
2mLの60:40 アセトン:乳酸エチルをシンチレーションバイアルに秤量し、18mgのセルロースアセテート398−10NFおよび18mgのポリビニルアセテート(MW 100,000)を加え、両方のポリマーが溶解するまで磁気攪拌子で攪拌する。2mgのナノ破砕酸化サマリウム(Aldrich 637319)を加え、均一分散が生じるまで混合する。20ゲージの先端がフラットな針を付けた3mLシリンジに入れる。このシリンジをシリンジポンプに入れ、このシリンジ針に高圧ケーブルをつなぐ。接地コレクションプレートをこのシリンジ針先端から24cmの位置に置く。2.0mL/時間の速度で前記溶液の供給を開始し、電圧を17kVに入れる。最終組成が5.3%SmOx、47.35%ポリビニルアセテートおよび47.35%セルロースアセテートであるエレクトロスパン繊維が生成する。この組成を有するエレクトロスパン繊維を図2に示す。in-vitro試験は前記繊維単独のみで行い、GRFモデル処方物では行わなかった。
【0067】
i vitroデータは以下の有効半減期を示す:
【表4】

注記:Sm半減期は46.27時間である
【0068】
実施例5:(エレクトロスパン繊維 ポリカプロラクトン/SmOx)
2mLの60:40 アセトン:乳酸エチルをシンチレーションバイアルに秤量し、20mgのポリカプロラクトン(Sigma)を加え、両方のポリマーが溶解するまで磁気攪拌子で攪拌する。2mgのナノ破砕酸化サマリウム(Aldrich 637319)を加え、均一分散が生じるまで混合する。20ゲージの先端がフラットな針を付けた3mLシリンジに入れる。このシリンジをシリンジポンプに入れ、このシリンジ針に高圧ケーブルをつなぐ。接地コレクションプレートをこのシリンジ針先端から24cmの位置に置く。1.0mL/時間の速度で前記溶液の供給を開始し、電圧を20kVに入れる。最終組成が95.2%ポリカプロラクトンおよび4.8%SmOxであるエレクトロスパン繊維が生成する。これらのエレクトロスパン繊維のSEMスキャン図3に示す。
【0069】
上記in-vitroデータから、実施例1と同様の方法での雑種イヌにおける評価を行った。SmOxを含むポリカプロラクトンのエレクトロスパン繊維で放射性標識したGRFの投薬では、雑種イヌの胃腸管における該GRFの位置の評価が成功した。前記GRFは雑種イヌの胃に3匹のイヌのうち2匹においておよそ22時間滞留した。
【0070】
in-vitroデータより以下の有効半減期が得られる:
【表5】

注記:Sm半減期は46.27時間である
【0071】
実施例6:(エレクトロスパン繊維 ポリエチレンビニルアセテート/SmOx)
2mLのテトラヒドロフラン(THF)をシンチレーションバイアルに秤量し、60mgのポリエチレンビニルアセテートを加え、両方のポリマーが溶解するまで磁気攪拌子で攪拌する。2mgのナノ破砕酸化サマリウム(Aldrich 637319)を加え、均一分散が生じるまで混合する。20ゲージの先端がフラットな針を付けた3mLシリンジに入れる。このシリンジをシリンジポンプに入れ、このシリンジ針に高圧ケーブルをつなぐ。接地コレクションプレートをこのシリンジ針先端から24cmの位置に置く。2.0mL/時間の速度で前記溶液の供給を開始し、電圧を17kVに入れる。最終組成が3.2%SmOx 96.8%ポリエチレンビニルアセテートであるエレクトロスパン繊維が生成する。大径ビーズ状繊維についてのSEMを図4に示す。
【0072】
in-vitro試験は前記繊維単独のみで行い、GRFモデル処方物では行わなかった。
In-vitroデータより以下の有効半減期が得られる:
【表6】

注記:Sm半減期は46.27時間である
【0073】
これらの繊維では、24時間の時点での造影能力で、さらにin-vivoモデルにおいても放射性標識滞留の成功が見られるように思われる。
【0074】
実施例7:(エレクトロスプレービーズ ポリエチレンビニルアセテート/SmOx)
繊維、またはビーズ状繊維、または小径ビーズを作出するための別の代替プロセスはエレクトロスプレーによるものである。この実施例では、〜15umビーズを、エレクトロスプレープロセスを通じて製造する(乾燥組成:6.25%SmOxおよび93.75%ポリエチレンビニルアセテート)。
【0075】
2mLのテトラヒドロフラン(THF)をシンチレーションバイアルに秤量し、30mgのポリエチレンビニルアセテートを加え、両方のポリマーが溶解するまで磁気攪拌子で攪拌する。これに2mgのナノ破砕酸化サマリウム(Aldrich 637319)を加え、均一分散が生じるまで混合する。20ゲージの先端がフラットな針を付けた3mLシリンジに入れる。このシリンジをシリンジポンプに入れ、このシリンジ針に高圧ケーブルをつなぐ。接地コレクションプレートをこのシリンジ針先端から24cmの位置に置く。1.5mL/時間の速度で前記溶液の供給を開始し、電圧を15kVに入れる。エレクトロスプレービーズの最終組成は6.25%SmOxおよび93.75%ポリエチレン−ビニルアセテートであった。前記ビーズの代表的なSEMを図5に示す。
【0076】
in-vitro試験は前記ビーズ単独のみで行い、GRFモデル処方物では行わなかった。
【0077】
in-vitroデータより以下の有効半減期が得られる:
【表7】

注記:Sm半減期は46.27時間である
【0078】
実施例8:(塩化インジウム/活性炭)
放射性標識調製:
50mgの活性炭をシンチレーションバイアルに秤量し、〜130uCiの塩化インジウム111溶液を加え、続いて、混合物の改善された均質性を得るために、該インジウムを希釈するための1mLの濾過水を加える。ゆっくりとかき混ぜ、次いで、その水分総てが除去されるまでヒートガンを用いてその水分を蒸発させる。この混合物は粉末として残るはずである。
【0079】
胃滞留投与形調製:
実施例1と同様、ただし、上記放射性標識(塩化インジウム/活性炭)を使用。
【0080】
in-vitro:
図11(a)は、塩化インジウム粉末が組み込まれたGRFのpH1.5における溶解を示している。
図11(b)は、塩化インジウム粉末が組み込まれたGRFのpH4.5における溶解を示している。
【0081】
有効半減期:塩化インジウム処方物
【表8】

注記:InCl半減期は67.2時間である
【0082】
実施例9:(塩化インジウム/Amberjet 4400)
放射性標識調製:
50mgのAmberjet(商標)4400イオン交換樹脂をシンチレーションバイアルに秤量し、これに〜130uCiの塩化インジウム111溶液を加え、続いて、混合物の改善された均質性を得るために、該インジウムを希釈するための1mLの濾過水を加える。これをゆっくりとかき混ぜ、次いで、その水分総てが除去されるまでヒートガンを用いてその水分を蒸発させる。この混合物は粉末として残るはずである。
【0083】
胃滞留投与形調製:
実施例1と同様、ただし、上記放射性標識(塩化インジウム/Amberjet 4400)を使用。
【0084】
in-vitroデータより塩化インジウム処方物について以下の有効半減期が得られる:
【表9】

注記:InCl半減期は67.2時間である
【0085】
次のアッセイおよびプロトコールを用いて上記実施例のいくつかの評価を確定した。
【0086】
溶解スクリーニング
溶解は、医薬製剤からの製剤原料の放出を特性化する一般的な技術であり、また前記放射性核種が必要な時間の間処方物中にうまく保持されるかどうかを判定する有効なツールでもある。
【0087】
溶解を評価する際には生理的に適切なpH媒質を用いるべきである。胃環境によく似た最も一般的なpHはpH1.0であり、また絶食した胃のpHによく似た1.5であるが、摂食直後では胃のpHはpH4.5の高さまで上昇し得る。加えて、GRFは1日を通して胃のpH変動にも曝されるであろう(図6参照、Williams et. al. (1998) Aliment. Pharmacol. Ther., Vol. 12, p.1079-1089)。GRFにおける放射性核種の滞留をpH1.5およびpH4.5の両方において評価した。
【0088】
放射性標識GRFの初期放射能をCapintec Radioisotope Calibrator(登録商標)モデルCRC−12で測定し、その後、攪拌速度30rpmおよび温度37℃のVankel USP II装置内の500mLのpH1.5またはpH4.5媒質に入れた。このGRFを適当な時点において取り出し、その放射能を測定した。pHを変動させる際には、GRFをpH1.5の一溶解容器からpH4.5の第二の容器へと物理的に移動した。高い方のpHのバッファーは、酢酸ナトリウムを濃度25mMまで加え、1M HCLでpHをpH4.5に調整することによって調製した。低いpHのバッファーは、2%NaClで0.03N HCL溶液を作製することによって調製した。いずれの溶解媒質の調製においても胃の酵素を使用しなかった。
【0089】
酸化サマリウム粉末を含むGRFのin-vitro評価中に、GRFからの放射性標識の放出速度が指数関数的減衰プロセスと同様に現われることが認められた。これは、特定領域における経時的濃度変化がその系でのその点における濃度勾配の変化に比例することを提示する拡散についてのフィックの第二法則と一致する。これは、理想的なケースでは、指数関数によってモデリングすることができる一次プロセスに相当する。よって、GRFからの放射性標識の放出を指数関数によってモデリングすることにより、GRF中の放射性標識の有効半減期を得た。有効半減期は、GRF内に保持される放射性標識の能力を利用可能にするために、そしてGRFをin-vivoでどのくらいの期間画像化することができるかを理解するために有用な値である。
【0090】
この有効半減期に基づき、24時間の時点においてGRF中に、ガンマシンチグラフィーを用いてそれをうまく画像化するのに十分な放射性標識が存在するかどうかを予測することができる。好ましくは、両方のpHの場合における有効半減期の最低必要条件は10時間より長いことであるべきである。これは、GRFの性能の正確な評価だけでなく、GRFが胃から排出されることを保証する安全上の理由も提供する。GRFの位置、および潜在的除去を調査するために、その後に内視鏡的処置を行う必要がないことが好ましい。
【0091】
放射性標識の性能の前臨床評価
雄雑種イヌ、同じくらいの体重のもの(17kg)を個別ケージに収容し、標準的な食餌(Canine food 5006, LabDiet(登録商標), IA, U.S.A.)および水を自由に与えた。これらの動物は、試験期間を通して臨床的に健康であり、血液学的かつ生化学的に正常であった。この調査は、“Principles of Labatory Animal Care” (NIH publication #85-23、1985年に改定)に従った。人道的な扱いを順守する認可動物プロトコールおよび実験動物のケアに関する指針に基づき、覚醒ビーグルをスリングに楽に座らせ、ガンマシンチレーションカメラの下に場所を定めて、カメラヘッドをビーグルの背に置いた。e.Cam Fixed 180 デュアルヘッドSPECTガンマカメラ(Siemens Medical Solutions, PA, U.S.A.)には2つの対向検出器が装備されており、533x387mmの視野を有する各々の検出器には低エネルギー平行コリメーターを取り付け、二元同位元素捕捉用に設定した。
【0092】
153Smまたは111In標識GRFを99mTc標識リバートリートと同時投薬して、胃の輪郭を提供した。画像取得のためにイヌをカメラの下に置く際には、適切な位置決めのために各イヌの上に1つの基準(参照マーカー)を置いた。30秒間のシンチグラフィー画像を前方および後方の検出器の両方から同時に、1時間間隔で最大12時間、そして24時間時点において最終画像を取得した。画像取得の合間には、イヌを、室内を自由に移動できるようにするか、またはそれらのケージに戻した。オンラインコンピューターをカメラと接続し、e.Soft programme(Siemens Medical Solutions)を用いてデジタル画像記録を行った。
【0093】
放射性標識の性能の臨床評価
単一施設、無作為、4方向、被験者内交差研究を行った。1964年のヘルシンキ宣言およびその後の改正の教義に従ったこの研究は、ノースグラスゴー大学病院トラスト倫理委員会(the North Glasgow Hospitals University Trust Ethics Committee)およびに放射性物質投与諮問委員会(the Administration of Radioactive Substances Advisory Committee)よって承認され、医薬品の臨床試験の実施の基準(Good Clinical Practice)をもたらした。
【0094】
体重が50kgより重く、肥満度指数(BMI)が19〜29.9kg/m(これらの値を含む)の範囲内である6人の健康な男性ボランティア(年齢範囲35〜60歳、これらの値を含む)が、書面によるインフォームド・コンセントの提出後、この研究に参加した。総てのボランティアは非喫煙者であり、薬剤治療を一切受けておらず、臨床検査、臨床化学または血液学検査において異常がなく、胃腸疾患の病歴もなかった。
【0095】
本記載および特許請求の範囲が一部を構成する本出願は、いかなる後願に関しても優先権の根拠として使用してよい。かかる後願の特許請求の範囲は、本明細書に記載した特徴のうちの任意の特徴または組合せを対象としてよい。それらは、生成物請求項、組成物請求項、方法請求項または使用請求項という形をとってよく、一例としてかつ制限なく、1以上の次の請求項を含んでよい:
【0096】
本明細書において引用した総ての刊行物(限定されるものではないが、特許および特許出願を含む)は、各刊行物が、十分に示されたように引用することにより本明細書の一部とされることを具体的にかつ個別に示されたように、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0097】
上記の説明では、本発明を、その好ましい実施形態を含めて、十分に開示している。本明細書において具体的に開示した実施形態の変形や改良は、次の特許請求の範囲の範囲内である。詳述されていなくても、当業者は、先行する記載によって、最大範囲で本発明を利用できるに違いない。従って、本明細書における実施例は、単に例示するものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではないと解釈されるべきである。独占的な所有権または権利を主張する本発明の実施形態は、次のように定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性標識生成物を生産するための方法であって、
a)放射性核種を活性炭に吸着させること、
b)工程a)の生成物を粉末状の不溶性ポリマーとブレンドし、混合物を形成させること、および
c)工程b)の混合物を、該ポリマー材料を分解するほどではないが該ポリマーを溶解するのに十分に高い温度まで加熱し、該放射性標識生成物を形成するすること
を含む、方法。
【請求項2】
工程a)吸着放射性核種が、放射性核種に水または酸/水混合物を加え、活性炭を含むスラリーまたは懸濁液を形成し、ついで該スラリーまたは懸濁液を乾燥させて、吸着放射性核種を形成することにより生産される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
水/酸混合物が塩酸、リン酸または酢酸を使用している、請求項3記載の方法。
【請求項4】
スラリーまたは懸濁液がオーブン内で乾燥される、請求項2記載の方法。
【請求項5】
不溶性ポリマーがセルロースアセテート、ポリビニルアセテート、ポリエチルビニルアセテート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸(polyactic acid)、ポリグリコール酸、およびポリ(乳酸−グリコール酸共重合体)(PLGA)である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
不溶性ポリマーがセルロースアセテートである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
工程a)放射性標識炭対不溶性ポリマー重量比が約1:3〜約1:100である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
工程a)放射性標識炭対不溶性ポリマー重量比が約1〜約6である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
放射性標識生成物の粒径が約5μm〜約20μm間である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
放射性核種がインジウム、サマリウム、テクネチウム、ヨウ素、およびそれらの誘導体またはそのキレートである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
放射性核種が塩化インジウム、酸化サマリウム、テクネチウムスズコロイドまたはインジウムペンテト酸二ナトリウムである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法により生産された生成物。
【請求項13】
放射性標識生成物を生産するための方法であって、
a)放射性核種をイオン交換樹脂と組み合わせること、および
d)必要に応じて工程a)の生成物の粒径を減少させること
を含む、方法。
【請求項14】
イオン交換樹脂がAmberjet、Amberlite、Duolite、CM−セルロースまたはDEAE−セルロースから選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
放射性核種がインジウム、サマリウム、テクネチウム、ヨウ素、およびそれらの誘導体またはそのキレートである、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
放射性核種が塩化インジウム、酸化サマリウム、テクネチウムスズコロイドまたはインジウムペンテト酸二ナトリウムである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法により生産された生成物。
【請求項18】
それを必要とするヒトに用いるための放射性標識胃滞留処方物(GRF)を生産する方法であって、
請求項12または請求項17に記載の生成物をGRFに組み込むこと
を含む、方法。
【請求項19】
放射性標識胃滞留処方物(GRF)が胃環境内での変動するpHレベルによって該放射性核種を早期に放出しない、請求項18記載の方法。
【請求項20】
それを必要とするヒトに用いるための放射性標識胃滞留処方物(GRF)を生産する方法であって、胃滞留処方物にエレクトロスパン繊維、溶融押出繊維、溶融押出顆粒、またはエレクトロスプレービーズに組み込まれた放射性核種を組み込むことを含む、方法。
【請求項21】
哺乳類の胃腸管においてデバイスまたは処方物の位置を決定する方法であって、エレクトロスパン繊維、溶融押出繊維、溶融押出顆粒、エレクトロスプレービーズ、または請求項12または請求項17に記載の生成物に放射性核種を組み込むことを含む、方法。
【請求項22】
有効量の放射性核種および活性炭を含んでなる、医薬組成物。
【請求項23】
有効量の放射性核種、活性炭、および不溶性ポリマーを含んでなる、医薬組成物。
【請求項24】
放射性核種がインジウム、サマリウム、テクネチウム、ヨウ素、およびそれらの誘導体またはそのキレートである、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
放射性核種が塩化インジウム、酸化サマリウム、テクネチウムスズコロイドまたはインジウムペンテト酸二ナトリウムである、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
不溶性ポリマーがセルロースアセテート、ポリビニルアセテート、ポリエチルビニルアセテート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸(polyactic acid)、ポリグリコール酸、およびポリ(乳酸−グリコール酸共重合体)(PLGA)である、請求項23記載の組成物。
【請求項27】
不溶性ポリマーがセルロースアセテートである、請求項26記載の組成物。
【請求項28】
放射性核種、炭対不溶性ポリマー重量比が約1:3〜約1:100である、請求項23記載の組成物。
【請求項29】
放射性核種、炭対不溶性ポリマー重量比が約1〜約6である、請求項28記載の組成物。
【請求項30】
組成物の粒径が約5μm〜約20μm間である、請求項23記載の組成物。
【請求項31】
放射性核種がインジウム、サマリウム、テクネチウム、ヨウ素、およびそれらの誘導体またはそのキレートであり、不溶性ポリマーがセルロースアセテート、ポリビニルアセテート、ポリエチルビニルアセテート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびポリ(乳酸−グリコール酸共重合体)(PLGA)であり、前記放射性核種、炭対不溶性ポリマー重量比が約1:3〜約1:100である、請求項23記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−543886(P2009−543886A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520988(P2009−520988)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/073835
【国際公開番号】WO2008/011496
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(591002957)スミスクライン・ビーチャム・コーポレイション (341)
【氏名又は名称原語表記】SMITHKLINE BEECHAM CORPORATION
【Fターム(参考)】