説明

ガーゼ計数システム及びガーゼ計数用プログラム

【課題】種々の場面において手術に用いられるガーゼを確実に計数して、ガーゼの使用に関する安全管理等を万全とすることが可能なガーゼ計数システムを提供する。
【解決手段】ガーゼGのそれぞれを識別するためのガーゼ識別情報を記憶するICタグをそれぞれに備えるガーゼGを計数するガーゼ計数システムSであって、ガーゼGが収納される収納部12、13を備え、収納されたガーゼGをガーゼ識別情報に基づいて計数して告知する本体装置1と、手術室OP内にある使用済みガーゼGのガーゼ識別情報を読み取って告知するハンディ装置30と、ガーゼGが載置される載置台を備え、載置台上に載置されたガーゼGのガーゼ識別情報を無線により読み取り、読み取られたガーゼ識別情報に基づいて、載置されているガーゼGを計数する卓上装置31と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガーゼ計数システム及びガーゼ計数用プログラムの技術分野に属し、より詳細には、手術に用いられるガーゼを計数するガーゼ計数システム及び当該ガーゼ計数用のプログラムの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、手術においては大量のガーゼが使用される。このようなガーゼの数を管理することは、手術事故を防止する上で極めて重要である。
【0003】
近年では、いわゆるIC(Integrated Circuit)タグをガーゼそれぞれに設け、このICタグ内にガーゼそれぞれを識別するためのガーゼ識別情報を不揮発性に記憶させ、当該ガーゼ識別情報を無線により読み取って各ガーゼを管理する試みが為されている。ここのようなICタグを用いたガーゼの管理については、例えば下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−287846号公報(第1図、第5図及び第6図等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記特許文献1では、ICタグを用いて無線によりガーゼを計数するという大まかな概念が開示されているに過ぎない。
【0006】
一方、手術におけるガーゼの用いられ方は実に様々であり、それぞれの用いられ方で、例えば手術に用いられる滅菌済みのガーゼであって、滅菌状態が保持されているガーゼ(以下、当該ガーゼを「滅菌保持ガーゼ」と称する)と、それ以外の非滅菌保持ガーゼ(具体的には、滅菌状態を保持するための包装材を開封し、手術室内の清潔野に載置されているガーゼ(以下、「開封済みーゼ」と称する)と、実際に手術に使用されて汚れたガーゼ(以下、「使用済みガーゼ」と称する)とがある)と、を確実に区別して取り扱う必要がある等、様々な注意すべき点がある。これに対し、上記特許文献1に開示されている技術では、このような様々な用いられ方や注意すべき点に配慮したガーゼの計数はできない。
【0007】
そこで、本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、その課題は、種々の場面において手術に用いられるガーゼを確実に計数して、ガーゼの使用に関する安全管理等を万全とすることが可能なガーゼ計数システム及び当該ガーゼ計数用のプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、手術に用いられるガーゼそれぞれを識別するためのガーゼ識別情報であって、無線により読み取られるガーゼ識別情報を記憶するICタグ等の識別情報記憶手段をそれぞれに備えるガーゼを計数するガーゼ計数システムであって、前記ガーゼが収納される第1収納部等の収納手段と、前記収納されたガーゼの前記識別情報記憶手段に記憶されている前記ガーゼ識別情報を無線により読み取るアンテナ等の第1読取手段と、前記第1読取手段により読み取られた前記ガーゼ識別情報に基づいて、前記収納されているガーゼを計数する第1計数手段と、前記第1計数手段による計数結果を告知する第1告知手段と、を備える本体装置等の第1装置と、手術室内にある使用済みの前記ガーゼの前記識別情報記憶手段に記憶されている前記ガーゼ識別情報を無線により読み取る第2読取手段と、前記第2読取手段により読み取られた前記ガーゼ識別情報を告知する第2告知手段と、を備える携帯可能なハンディ装置等の第2装置と、前記ガーゼが載置される載置台と、前記載置台上に載置された前記ガーゼの前記識別情報記憶手段に記憶されている前記ガーゼ識別情報を無線により読み取る第3読取手段と、前記第3読取手段により読み取られた前記ガーゼ識別情報に基づいて、前記載置されているガーゼを計数する第3計数手段と、を備える卓上装置等の第3装置と、を備える。
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項4に記載の発明は、手術に用いられるガーゼそれぞれを識別するためのガーゼ識別情報であって、無線により読み取られるガーゼ識別情報を記憶するICタグ等の識別情報記憶手段をそれぞれに備えるガーゼを計数するガーゼ計数システムに含まれる本体装置等の計数装置であって、前記ガーゼが収納される第1収納部等の収納手段と、表示部等の告知手段と、を備える計数装置に含まれるコンピュータを、前記収納されたガーゼの前記識別情報記憶手段に記憶されている前記ガーゼ識別情報を無線により読み取る読取手段、前記読み取られたガーゼ識別情報に基づいて、前記収納されているガーゼを計数する計数手段、及び、前記計数された結果を前記告知手段により告知させる告知制御手段、として機能させる。
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項5に記載の発明は、手術に用いられるガーゼそれぞれを識別するためのガーゼ識別情報であって、無線により読み取られるガーゼ識別情報を記憶するICタグ等の識別情報記憶手段をそれぞれに備えるガーゼを計数するガーゼ計数システムに含まれる携帯可能なハンディ装置等の告知装置であって、告知手段を備える告知装置に含まれるコンピュータを、手術室内にある使用済みの前記ガーゼの前記識別情報記憶手段に記憶されている前記ガーゼ識別情報を無線により読み取る読取手段、及び、前記読み取られたガーゼ識別情報を前記告知手段により告知させる告知制御手段、として機能させる。
【0011】
上記の課題を解決するために、請求項6に記載の発明は、手術に用いられるガーゼそれぞれを識別するためのガーゼ識別情報であって、無線により読み取られるガーゼ識別情報を記憶するICタグ等の識別情報記憶手段をそれぞれに備えるガーゼを計数するガーゼ計数システムに含まれる計数装置であって、前記ガーゼが載置される載置台を備える計数装置に含まれるコンピュータを、前記載置台上に載置された前記ガーゼの前記識別情報記憶手段に記憶されている前記ガーゼ識別情報を無線により読み取る読取手段、及び、前記第3読取手段により読み取られた前記ガーゼ識別情報に基づいて、前記載置されているガーゼを計数する計数手段、として機能させる。
【0012】
請求項1又は請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の発明によれば、収納されたガーゼを無線により計数する第1装置と、使用済みのガーゼのガーゼ識別情報を無線により読み取って告知する携帯可能な第2装置と、載置台上に載置されたガーゼを無線により計数する第3装置と、を備えるので、種々の状態又はタイミングにおいて手術に用いられるガーゼが計数可能となることで、手術に用いられるガーゼを確実に計数して当該ガーゼの使用に関する安全管理等を万全とすることができる。
【0013】
上記の課題を解決するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のガーゼ計数システムにおいて、前記ガーゼには、滅菌状態の当該ガーゼである滅菌保持ガーゼと、滅菌状態が解かれた当該ガーゼである非滅菌保持ガーゼと、があり、前記第1装置の前記収納手段は、前記滅菌保持ガーゼが収納される第1収納部等の第1収納手段と、前記第1収納手段とは別個に形成された第2収納手段であって前記非滅菌保持ガーゼが収納される第2収納部等の第2収納手段と、を備えており、前記第1読取手段は、前記第1収納手段に収納された前記滅菌保持ガーゼの前記識別情報記憶手段に記憶されている前記ガーゼ識別情報又は前記第2収納手段に収納された前記非滅菌保持ガーゼの前記識別情報記憶手段に記憶されている前記ガーゼ識別情報の少なくともいずれか一方を、無線により読み取るように構成される。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、滅菌保持ガーゼと非滅菌保持ガーゼとが互いに接触することなく、それぞれ第1収納手段及び第2収納手段に収納されて計数されるので、滅菌保持ガーゼの清潔度を維持しながら開封する際に、当該滅菌保持ガーゼが汚れることを防止しつつ、ガーゼを計数できる。
【0015】
上記の課題を解決するために、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のガーゼ計数システムにおいて、前記第3装置は、前記第3計数手段による前記ガーゼの計数結果を前記第1装置に送信する第3送信手段を備え、前記第2装置は、前記第1装置からのガーゼ情報を受信する第2受信手段を備え、前記第1装置は、前記第3装置から送信されてきた前記計数結果を受信する受信手段と、前記受信した計数結果を記憶する記憶手段と、前記記憶された計数結果及び前記第1計数手段による計数結果に基づいて前記ガーゼ情報を前記第2装置に送信する送信手段と、を備える。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の作用に加えて、第3装置から送信されてきた計数結果を第1装置内に記憶し、記憶された計数結果及び第1計数手段による計数結果に基づいたガーゼ情報が携帯可能な第2装置に送信されるので、当該第2装置を用いて、例えば所在不明のガーゼの探査を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、収納手段に収納されたガーゼを無線により計数する第1装置と、使用済みのガーゼのガーゼ識別情報を無線により読み取って告知する携帯可能な第2装置と、載置台上に載置されたガーゼを無線により計数する第3装置と、を備えるので、種々の状態又はタイミングにおいて手術に用いられるガーゼが計数可能となることで、手術に使用されるガーゼを確実に計数して当該ガーゼの使用に関する安全管理等を万全とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係るガーゼを示す図であり、(a)はその外観図であり、(b)は封入されたガーゼの状態を例示する図である。
【図2】実施形態に係るガーゼ計数システムの構成を示す概念図である。
【図3】実施形態に係る本体装置の外観を示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は右側面図であり、(c)は正面図であり、(d)は左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための形態について、図1乃至図3を用いて説明する。なお以下に説明する実施形態は、手術に用いられるガーゼを計数するガーゼ計数システムに対して本発明を適用した場合の実施形態である。
【0020】
また、図1は実施形態に係るガーゼを示す図であり、図2は実施形態に係るガーゼ計数システムの構成を示す概念図であり、図3は実施形態に係る本体装置の外観を示す図である。
【0021】
図1(a)に示すように、実施形態に係る各ガーゼGには、そのガーゼGを他のガーゼGから識別するためのガーゼ識別情報が不揮発性に記憶されている識別情報記憶手段の一例としてのICタグTが、例えば接着又は縫い込み等の方法によりそれぞれ装着されている。ここで、実施形態のガーゼ係数システムが用いられる手術の場合、図1(b)に示すように、複数のガーゼGが例えば互いに重ねられた状態で包装材により包装され、その後に当該包装材ごと滅菌処理されてパッケージPとされることで、滅菌状態が保持されているガーゼG(以下、単に滅菌保持ガーゼGと称する)としての滅菌状態を維持しつつ、パッケージPとして後述する手術室に搬送される。
【0022】
次に、手術室内に設けられた実施形態に係るガーゼ係数システムの構成及び動作について、図2及び図3を用いて説明する。
【0023】
先ず図2に示すように手術室OP内には、手術を受ける患者Pが寝かせられる手術台Bが設置されており、この手術台Bの周囲がいわゆる清潔野ARとされている。この清潔野ARとは、例えば当該手術において、執刀医、器械出し看護師及び手術助手がその手術に関する活動を行うことが認められている、手術室OP内の一定の領域をいう。通常清潔野ARは、手術台Bを中心とした領域である。これに対し、手術に関わる他の看護師であるいわゆる外回り看護師等が活動する手術室OP内の清潔野AR以外の領域は、不潔野と称される。ここに不潔野とは、一般にいう不潔な場所という意味ではない。
【0024】
なお上記「器械出し看護師」とは、清潔野ARにおいて執刀医等に対して手術用器械を手渡す業務や、後述する卓上装置31の載置台を含む器械台にある開封済みのガーゼG(以下、単に開封済みガーゼGと称する)を含む手術用器械を逐次計数する業務等を行う看護師である。また「外回り看護師」とは、通常は手術室OPにおける不潔野において、実施形態に係るガーゼGの計数を含むガーゼGの取り扱い業務等、器械出し看護師が行う業務以外の業務等を行う看護師である。
【0025】
そして実施形態に係るガーゼ係数システムSは、通常は不潔野内の所定の位置に配置される第1装置の一例及び計数装置の一例としての本体装置1と、例えば外回り看護師に携帯されて操作される第2装置の一例及び告知装置の一例としてのハンディ装置30と、通常は清潔野AR内の手術台Bの近傍に配置される第3装置の一例及び計数装置の一例としての卓上装置31と、により構成されている。
【0026】
この構成において卓上装置31は、滅菌保持ガーゼGが封入されているパッケージPから取り出された開封済みガーゼGが載置される例えば平板上の載置台を備えている。そして当該載置台に載置された開封済みガーゼGのICタグTからそれに記憶されているガーゼ識別情報を無線により読み取り、当該載置されている開封済みガーゼGを計数する。この計数結果は、当該計数に用いられたガーゼ識別情報と共にガーゼ情報D1として所定のタイミングで本体装置1に送信される。卓上装置31は、それ自体が手術用のガーゼ台として用いられてもよいし、それが別途のガーゼ台又は器械台上に載置されていてもよい。
【0027】
なおここで、実施形態に係るガーゼGの「計数」には、無線により読み取られるガーゼ識別情報を記憶するため(即ち登録するため)の計数と、当該ガーゼ識別情報が記憶されて識別可能となった一枚又は複数枚のガーゼGの枚数を確認するための計数と、があり、計数時には両方の計数を同時に行っても良いし、何れか一方だけを行っても良い。以下、前者の計数を「記憶計数」と称し、後者の計数を「確認計数」と称する。
【0028】
次にハンディ装置30は、例えば手術に実際に使用された後に床に落とされている使用済みのガーゼG(以下、単に使用済みガーゼGと称する)のICタグTに記憶されているガーゼ識別情報を、無線により例えば清潔野ARの外から読み取ることにより、当該落とされている使用済みガーゼGを探査する。この時ハンディ装置30は、手術室OP内において使用済みガーゼGを広範囲に探査する場合、ガーゼ識別情報の受信可能範囲を上下左右に拡大して探査する。例えば、広範囲で探査する範囲を手術室OP全体にすれば、探査対象の使用済みガーゼGが先ずは手術室に有るか否かを確認することができ、仮に交代した医療スタッフが誤って手術室OP外に持ち出してしまった可能性の有無を判断することができる。この場合、探査する時間を大幅に短くすることができるため、病院経営の面からも大変有効である。これに対して、手術室OP内の狭い位置をピンポイントで探査する場合、ガーゼ識別情報の受信可能範囲をビーム状に狭めて探査を行う。例えば、狭い範囲を探査する場合、探査する医療スタッフ、例えば外回り看護師が手術室OPの中を必要以上に動き回ることがなくなり、この時も探査時間を短くすることができる。
【0029】
次に本体装置1は、収納手段の一例及び第1収納手段の一例としての第1収納部12と、収納手段の一例及び第2収納手段の一例としての第2収納部13と、をその内部に別個に備えている。第1収納部12及び第2収納部13内には、ICタグTからガーゼ識別情報を読み取るための第1読取手段の一例としてのアンテナ2及びアンテナ3が、それぞれ備えられている。第1収納部12には、滅菌保持ガーゼGが図3(c)に白矢印で示すように例えばパッケージPのまま投入され、アンテナ2は当該投入されたパッケージPに封入されている滅菌保持ガーゼGのICタグTに記憶されているガーゼ識別情報を読み取ることにより、当該滅菌保持ガーゼGの記憶計数を行う。これに対して第2収納部13には、手術に使用されて汚れた使用済みガーゼGが、例えばガーゼ入れ32に投入された状態でガーゼ入れ32ごと投入され、アンテナ3は当該投入された使用済みガーゼGのICタグTに記憶されているガーゼ識別情報を読み取ることにより、当該使用済みガーゼGの確認計数を行う。このとき本体装置1は、第2収納部13において使用済みガーゼGの確認計数が行われたとき、当該確認計数が行われた時点で第1収納部12に残っている滅菌保持ガーゼGの有無を確認する(若しくは、当該確認を看護師に行わせるための指示を告知する)。第1収納部12に滅菌保持ガーゼGが残っていれば、その残っている滅菌保持ガーゼGのガーゼ識別情報を受信すると共に当該残っている滅菌保持ガーゼGの確認計数を行う。これに加えて本体装置1は、卓上装置31の載置台上に残っている開封済みガーゼGの有無を卓上装置31に確認させる旨の指令を当該卓上装置31に送信し、当該確認を卓上装置31に行わせる(若しくは、当該確認を看護師に行わせるための指示を告知する)。この結果卓上装置31は、載置台上に残っている開封済みガーゼGがあれば、その残っている開封済みガーゼGのガーゼ識別情報を受信すると共に当該残っている開封済みガーゼGの確認計数を行い、当該受信したガーゼ識別情報及び計数結果を本体装置1に送信する。
【0030】
そして、第2収納部13において確認計数された使用済みガーゼGの数が、第1収納部12において記憶計数された滅菌保持ガーゼGの数と上記ガーゼ情報D1として卓上装置31から送信されてきた記憶計数の結果との合計数から、第2収納部13における確認計数が行われた時点で卓上装置31の載置台上及び第1収納部12にガーゼGが残っていた場合のその数の合計数を差し引いた結果より少ない場合、手術室OP内のいずれかの位置に使用済みガーゼG等が残置されている可能性があることになる。このとき本体装置1は、第1収納部12及び卓上装置31において初めに又はその後の残置確認において読み取られた(記憶計数された)ガーゼ識別情報並びに第2収納部13における確認計数が行われた時点で卓上装置31の載置台上において読み取られた(確認計数された)ガーゼ識別情報及び第1収納部12にガーゼGが残っていた場合に読み取られた(確認計数された)ガーゼ識別情報と、第2収納部13において読み取られたガーゼ識別情報と、を比較し、その差、即ち第2収納部13において読み取られずに手術室OP内に残置されている可能性のあるガーゼ識別情報を含むガーゼ情報D2を生成して、所定のタイミングでハンディ装置30に送信する。これによりハンディ装置30は、ガーゼ情報D2として受信したガーゼ識別情報が記憶されているICタグTを備える使用済みガーゼG等を、手術室OP内において探査する(若しくは、当該確認を看護師に行わせるための指示を告知する)。このときハンディ装置30を操作する外回り看護師は、患者Pの体内に使用済みガーゼGが残置している可能性も考慮して、患者Pの方向を含めて使用済みガーゼGを探査する。探査すべき使用済みガーゼG等のICタグTに記憶されているガーゼ識別情報がハンディ装置30により受信できた場合、ハンディ装置30においてその旨を告知する。なお当該告知と合わせて、その旨及び受信したガーゼ識別情報をハンディ装置30から本体装置1にガーゼ情報D3として送信し、本体装置1において当該ガーゼ識別情報の内容等を告知するように構成してもよい。
【0031】
なお、本体装置1の第2収納部13における確認計数時において、使用済みガーゼGの重量及び当該使用済みガーゼGが吸収した血液量等を測定するべく、第2収納部13に投入された使用済みガーゼG等の重量を測定する機能を本体装置1に持たせても良い。
【0032】
より具体的には、第2収納部13における確認計数の際に使用するガーゼ入れ32は、その容量、若しくは予め設定された使用済みガーゼGの投入可能枚数に使用済みガーゼGの数が到達するまでは、使用済みガーゼGを継ぎ足して投入することができる。しかしながらこの場合、例えば、手術の初期段階とその終了段階では、ガーゼ入れ32内の内容物(使用済みガーゼGを含む)の重量が減少している恐れがあり(つまり使用済みガーゼGが吸収した血液等が、長い時間に若干蒸発している場合等である)、このことは、手術記録を正確に留めておくこと等を考慮すると好ましいことではない。
【0033】
そのため、使用済みガーゼGの投入量が最大になるまでに複数回の確認計数を行う場合は、その都度の重量を記憶させておき、最新の確認計数の際には、前回の確認計数時の若しくは当該ガーゼ入れ32の初回の確認計数時から前回の確認計数時までの重量の使用済みガーゼG(それに染み込んだ液体等を含む)がガーゼ入れ32にあると仮定し、当該確認計数時に投入した使用済みガーゼGと、当該使用済みガーゼGが吸収した血液量と、を正しく測定するための補正機能を持たせても良い。またその際、予め使用済みガーゼGのみの重量を測定しておき、これを本体装置1に記憶させておけば、使用済みガーゼGの重量を除いた血液量等の重量を正確に割り出すことが可能である。
【0034】
次に、図2に示すガーゼ係数システムSにおけるガーゼGの取り扱いについて、具体的に例示しつつ説明する。
【0035】
先ず、パッケージPに封入されて手術室OPに持ち込まれた滅菌保持ガーゼGは、本体装置1の第1収納部12に投入され、アンテナ2によりそれぞれのICタグTに記憶されているガーゼ識別情報が無線により読み取られることにより、その数の記憶計数が行われる(図2符号S1参照)。この時読み取られたガーゼ識別情報及び計数結果は、本体装置1内に記憶される。この後、数えられ滅菌保持ガーゼGは、不潔野の外回り看護師が当該滅菌保持ガーゼG及びパッケージPの内側に触れないようにしてパッケージPが開封されて、清潔野AR内のガーゼ台上に展開されて開封済みガーゼGとなる(図2符号S3参照)。
【0036】
一方、手術室OPに持ち込まれた滅菌保持ガーゼGは、不潔野の外回り看護師が当該滅菌保持ガーゼG及びパッケージPの内側に触れないようにしてパッケージPが開封され、清潔野AR内の卓上装置31の載置台上に載置されて開封済みガーゼGとなってもよい(図2符号S2参照)。この場合に卓上装置31は、載置され開封済みガーゼGのICタグTに記憶されているガーゼ識別情報を読み取ることにより載置された開封済みガーゼGの記憶計数を行う。この計数結果は、ガーゼ情報D1として所定のタイミングで本体装置1に送信される。
【0037】
次に、卓上装置31を含むガーゼ台に展開された開封済みガーゼGは、必要に応じて手術に使用され(図2符号S4参照)。使用後の汚れた使用済みガーゼGは、図2符号G1として示すように通常はガーゼ入れ32に投入される(図2符号S5参照)が、場合によっては、図2符号G2として示すように手術室OPの床に落とされる場合もある(図2符号S6参照)。
【0038】
次に、ガーゼ入れ32に投入された使用済みガーゼGは、ガーゼ入れ32ごと本体装置1の第2収納部13に投入され、アンテナ3によりそれぞれのICタグTに記憶されているガーゼ識別情報が無線により読み取られることにより、その数の確認計数が行われる(図2符号S8参照)。この時読み取られたガーゼ識別情報及び計数結果は、本体装置1内に記憶される。
【0039】
そして、図2符号S8で示した動作に対応して第2収納部13において確認計数された使用済みガーゼGの数が、図2符号S1で示した第1収納部12において記憶計数された滅菌保持ガーゼGの数とガーゼ情報D1として卓上装置31から送信されてきた記憶計数結果との合計数から、第2収納部13における確認計数が行われた時点で卓上装置31の載置台上及び第1収納部12にガーゼGが残っていた場合のその数の合計数を差し引いた結果より少ない場合、本体装置1は、上記ガーゼ情報D2を生成して所定のタイミングでハンディ装置30に送信する。これによりハンディ装置30は、ガーゼ情報D2として受信したガーゼ識別情報が記憶されているICタグTを備える使用済みガーゼG等を、手術室OP内において探査する。必要な使用済みガーゼG等が探査されてハンディ装置30において告知されたら、ハンディ装置30を操作する外回り看護師は、当該告知に基づいて、例えば落とされている使用済みガーゼG2を拾い上げてガーゼ入れ32に投入する(図2符号S7参照)。その後ガーゼ入れ32は本体装置1の第2収納部13に再度投入され、その中の使用済みガーゼGについて確認計数が行われる。以上の動作は、第2収納部13において確認計数が行われた使用済みガーゼGの数が、第1収納部12において記憶計数が行われた滅菌保持ガーゼGの数とガーゼ情報D1として卓上装置31から送信されてきた記憶計数結果との合計数から、第2収納部13における確認計数が行われた時点で卓上装置31の載置台上及び第1収納部12にガーゼG(多くの場合は開封済みガーゼGである)が残っていた場合のその数の合計数を差し引いた結果と等しくなるまで繰り返される。
【0040】
ここで、実施形態に係る第1収納部12及び第2収納部13に収納されたガーゼGを無線により計数する本体装置1と、使用済みガーゼGのガーゼ識別情報を無線により読み取って告知する携帯可能なハンディ装置30と、載置台上に載置された開封済みガーゼG又は滅菌保持ガーゼGを無線により計数する卓上装置31を用いた上述してきた一連のカウント業務は、手術の開始時(例えば麻酔開始前)、終了時(例えば閉腹前)に限らず、医療スタッフの交代時、手術の経過時間による時(例えば1時間毎)及び手術の術式によっては特定の手技を行う時など、種々のタイミングで行われる。その際、患者体内にガーゼGが置き忘れられることが無いよう万全を期すために、どのガーゼGがどこに何枚所在しているのかを確認するのと同時に、手術の進行の妨げにならないよう迅速に行われる必要があるが、上記のように本体装置1、ハンディ装置30及び卓上装置31の3点の装置を組み合わせることによって、実現が可能となる。
【0041】
次に、実施形態に係る本体装置1の具体的な構成について、図3に例示しつつ説明する。
【0042】
図3にそれぞれ示すように、本体装置1には、その内部に、上記アンテナ2を備えた第1収納部12と、上記アンテナ3を備えた第2収納部13と、を別個に備えており、その全体は下部四隅の脚20により支持されている。
【0043】
第1収納部12には、取っ手11を持って手前に引き出せる投入口10が備えられており、当該投入口10を手前に引き出してパッケージPを投入し、その後投入口10を元の位置に戻すことでパッケージPが第1収納部12に収納される。その後、投入されたパッケージP内の滅菌保持ガーゼGのICタグTに記憶されたガーゼ識別情報がアンテナ2により読み取られ、当該滅菌保持ガーゼGの記憶計数が行われる。
【0044】
一方、第2収納部13には、取っ手14を持って上方に引き上げることによりヒンジ16を中心として回転する蓋15が備えられており、この蓋15を上方に引き上げることにより第2収納部13が開口される。開口された第2収納部13には、例えば上記ガーゼ入れ32ごと、使用済みガーゼGが投入される。その後、投入されたガーゼ入れ32内の使用済みガーゼGのICタグTに記憶されたガーゼ識別情報がアンテナ3により読み取られ、当該使用済みガーゼGの確認計数が行われる。
【0045】
そして、アンテナ2及びアンテナ3を用いた計数結果は、当該計数に用いられたガーゼ識別情報と共に本体装置1内部のメモリ18に不揮発性に記憶され、更に必要に応じて本体装置1上部の液晶ディスプレイ等からなる告知手段の一例及び第1告知手段の一例としての表示部17に表示され、例えば外回り看護師に告知される。
【0046】
なお、本体装置1の底部下面には、開口部22につま先を挿入することによりオンとなる例えば赤外線式のフットスイッチ21が備えられている。そして実施形態に係る本体装置1は、取っ手14を持って蓋15を手動で開けて第2収納部13を開口させる他に、例えば蓋15が閉じているときにフットスイッチ21がオンとされると当該蓋15が自動的に図2に破線で示す位置まで回転することで第2収納部13を開口させ、その後第2収納部13内にガーゼ入れ32ごと使用済みガーゼGが収納されたら再度フットスイッチ21がオンとされることで、自動的に蓋15が閉じられると共に当該ガーゼ入れ32内の使用済みガーゼGの確認計数が開始されるように構成することもできる。
【0047】
以上説明したように、実施形態に係るガーゼ計数システムSの動作によれば、手術に用いられるガーゼGを無線により計数する本体装置1と、使用済みガーゼG等のガーゼ識別情報を無線により読み取って告知するハンディ装置30と、載置台上に載置されたガーゼGを無線により計数する卓上装置31と、を備えるので、種々の状態又はタイミングにおいてガーゼGが計数可能となることで、ガーゼGを確実に計数して当該ガーゼGの使用に関する安全管理等を万全とすることができる。
【0048】
また、本体装置1においては、滅菌保持ガーゼGと非滅菌保持ガーゼGとが互いに接触することなく、それぞれ第1収納部12及び第2収納部13に収納されて計数されるので、滅菌保持ガーゼの清潔度を維持しながら開封する際に、当該滅菌保持ガーゼGが汚れることを防止しつつ、当該滅菌保持ガーゼGの記憶計数を行うことができる。
【0049】
更に、卓上装置31から送信されてきた記憶計数結果を本体装置1内に記憶し、記憶された計数結果及び本体装置1自体による記憶計数結果に基づいたガーゼ情報D2がハンディ装置30に送信されるので、当該ハンディ装置30を用いて、例えば所在不明の使用済みガーゼG等の探査を行うことができる。
【0050】
なお、上述してきた本体装置1、ハンディ装置30及び卓上装置31それぞれの動作に対応したプログラムを、コンパクトディスク等の記録媒体に記録しておき、或いはインターネット等のネットワークから取得して記録しておき、それを汎用のマイクロコンピュータ等により読み出して実行することにより、当該マイクロコンピュータ等を、本体装置1、ハンディ装置30及び卓上装置31それぞれの動作を制御する処理部として機能させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明したように、本発明はガーゼ計数システムの分野に利用することが可能であり、特にガーゼGの計数に係る安全管理の分野に適用すれば特に顕著な効果が得られる。
【符号の説明】
【0052】
1 本体装置
2、3 アンテナ
10 投入口
11、14 取っ手
12 第1収納部
13 第2収納部
15 蓋
16 ヒンジ
17 表示部
18 メモリ
20 脚
21 フットスイッチ
22 開口部
30 ハンディ装置
31 卓上装置
32 ガーゼ入れ

G、G1、G2 ガーゼ
T ICタグ
P パッケージ
OP 手術室
P 患者
B 手術台
AR 清潔野
D1、D2、D3 ガーゼ情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術に用いられるガーゼそれぞれを識別するためのガーゼ識別情報であって、無線により読み取られるガーゼ識別情報を記憶する識別情報記憶手段をそれぞれに備えるガーゼを計数するガーゼ計数システムであって、
前記ガーゼが収納される収納手段と、
前記収納されたガーゼの前記識別情報記憶手段に記憶されている前記ガーゼ識別情報を無線により読み取る第1読取手段と、
前記第1読取手段により読み取られた前記ガーゼ識別情報に基づいて、前記収納されているガーゼを計数する第1計数手段と、
前記第1計数手段による計数結果を告知する第1告知手段と、
を備える第1装置と、
手術室内にある使用済みの前記ガーゼの前記識別情報記憶手段に記憶されている前記ガーゼ識別情報を無線により読み取る第2読取手段と、
前記第2読取手段により読み取られた前記ガーゼ識別情報を告知する第2告知手段と、
を備える携帯可能な第2装置と、
前記ガーゼが載置される載置台と、
前記載置台上に載置された前記ガーゼの前記識別情報記憶手段に記憶されている前記ガーゼ識別情報を無線により読み取る第3読取手段と、
前記第3読取手段により読み取られた前記ガーゼ識別情報に基づいて、前記載置されているガーゼを計数する第3計数手段と、
を備える第3装置と、
を備えることを特徴とするガーゼ計数システム。
【請求項2】
請求項1に記載のガーゼ計数システムにおいて、
前記ガーゼには、滅菌状態の当該ガーゼである滅菌保持ガーゼと、滅菌状態が解かれた当該ガーゼである非滅菌保持ガーゼと、があり、
前記第1装置の前記収納手段は、
前記滅菌保持ガーゼが収納される第1収納手段と、
前記第1収納手段とは別個に形成された第2収納手段であって前記非滅菌保持ガーゼが収納される第2収納手段と、
を備えており、
前記第1読取手段は、前記第1収納手段に収納された前記滅菌保持ガーゼの前記識別情報記憶手段に記憶されている前記ガーゼ識別情報又は前記第2収納手段に収納された前記非滅菌保持ガーゼの前記識別情報記憶手段に記憶されている前記ガーゼ識別情報の少なくともいずれか一方を、無線により読み取ることを特徴とするガーゼ計数システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のガーゼ計数システムにおいて、
前記第3装置は、前記第3計数手段による前記ガーゼの計数結果を前記第1装置に送信する第3送信手段を備え、
前記第2装置は、前記第1装置からのガーゼ情報を受信する第2受信手段を備え、
前記第1装置は、
前記第3装置から送信されてきた前記計数結果を受信する受信手段と、
前記受信した計数結果を記憶する記憶手段と、
前記記憶された計数結果及び前記第1計数手段による計数結果に基づいて前記ガーゼ情報を前記第2装置に送信する送信手段と、
を備えることを特徴とするガーゼ計数システム。
【請求項4】
手術に用いられるガーゼそれぞれを識別するためのガーゼ識別情報であって、無線により読み取られるガーゼ識別情報を記憶する識別情報記憶手段をそれぞれに備えるガーゼを計数するガーゼ計数システムに含まれる計数装置であって、前記ガーゼが収納される収納手段と、告知手段と、を備える計数装置に含まれるコンピュータを、
前記収納されたガーゼの前記識別情報記憶手段に記憶されている前記ガーゼ識別情報を無線により読み取る読取手段、
前記読み取られたガーゼ識別情報に基づいて、前記収納されているガーゼを計数する計数手段、及び、
前記計数された結果を前記告知手段により告知させる告知制御手段、
として機能させることを特徴とするガーゼ計数用プログラム。
【請求項5】
手術に用いられるガーゼそれぞれを識別するためのガーゼ識別情報であって、無線により読み取られるガーゼ識別情報を記憶する識別情報記憶手段をそれぞれに備えるガーゼを計数するガーゼ計数システムに含まれる携帯可能な告知装置であって、告知手段を備える告知装置に含まれるコンピュータを、
手術室内にある使用済みの前記ガーゼの前記識別情報記憶手段に記憶されている前記ガーゼ識別情報を無線により読み取る読取手段、及び、
前記読み取られたガーゼ識別情報を前記告知手段により告知させる告知制御手段、
として機能させることを特徴とするガーゼ計数用プログラム。
【請求項6】
手術に用いられるガーゼそれぞれを識別するためのガーゼ識別情報であって、無線により読み取られるガーゼ識別情報を記憶する識別情報記憶手段をそれぞれに備えるガーゼを計数するガーゼ計数システムに含まれる計数装置であって、前記ガーゼが載置される載置台を備える計数装置に含まれるコンピュータを、
前記載置台上に載置された前記ガーゼの前記識別情報記憶手段に記憶されている前記ガーゼ識別情報を無線により読み取る読取手段、及び、
前記第3読取手段により読み取られた前記ガーゼ識別情報に基づいて、前記載置されているガーゼを計数する計数手段、
として機能させることを特徴とするガーゼ計数用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−81563(P2013−81563A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222386(P2011−222386)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000137052)株式会社ホギメディカル (31)