説明

キシリトールまたはエリスリトールを含む清涼効果を持たない無糖菓子

【課題】低減された清涼効果を有することを特徴とする、キシリトールまたはエリスリトールを高い含量で含む無糖菓子を提供すること。
【解決手段】本発明の主題は、菓子の清涼効果を低減するために、キシリトールまたはエリスリトールとデキストリンとの混合物を含むことを特徴とする、キシリトールまたはエリスリトールに富む無糖菓子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、低減された清涼効果を有することを特徴とする、キシリトールまたはエリスリトールを高い含量で含む無糖菓子である。
【背景技術】
【0002】
口内の清涼効果または冷涼感は、ある種のポリオールの水への負の溶解熱に関連しており、さらにそれらの溶解速度にも関連している。キシリトールは、もっとも強い冷涼感を付与するため、この点において特に効力があり、ソルビトールとエリスリトールはキシリトールよりわずかに低い清涼効果を有し、一方、他のポリオールは清涼効果を持たないかまたはほとんど持たない。
【0003】
相当な含量のキシリトールを含む菓子製品を配合しようとするとき、この口内での清涼効果の存在は必ずしも利点とは限らず、特に菓子がチョコレートである場合がそうである。一部の特定のミントチョコレートでは清涼効果が求められるが、ダークチョコレート、ホワイトチョコレート、またはミルクチョコレートなどのより伝統的なチョコレートでは望ましくない。
【0004】
キシリトールチョコレートは長年にわたって市販され入手可能であるが、このチョコレートは依然として口内の冷涼感を特徴としている。この欠点を回避するための唯一の解決策は、チョコレートのキシリトール含量を非常に低い値まで下げることであり、多くの場合、乾燥重量で10%未満であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実際に、これまで結晶化したキシリトールの菓子製品の清涼効果を排除するのは不可能であり、さらに非晶質形態のキシリトールに富む、満足できる品質の菓子製品を調製することも不可能であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的問題の克服に当たって、本出願人は、キシリトールと難消化性デキストリンとの非晶質混合物を菓子に組み入れることによって、キシリトールに富み、清涼効果を持たない無糖菓子製品を調製することができることを見出したという功績を有する。
【0007】
この原理は、結晶形態のキシリトールは吸熱性の溶解エネルギーを有し、したがって清涼効果を発揮するが、非晶質形態のキシリトールの溶解エネルギーは吸熱性でなく、したがって清涼効果を示さないという事実に基づいている。
【0008】
このことは37℃での溶解度と比較考量されるべきである。たとえばマンニトールは、ソルビトールより高い溶解熱を有するが、溶解度が低いことを考えると清涼効果は低い。
【0009】
非晶質形態のキシリトールを菓子の品質または安定性をそれによって低減することなく含む菓子製品を調製するために、本出願人は、キシリトールと、キシリトールの結晶化を抑える作用を有する難消化性デキストリンとの混合物から菓子を調製し、かつ、この混合物のガラス転移温度を上昇させるのが適切であることを見出した。
【0010】
キシリトールは、-20℃程度の非常に低いガラス転移温度を有する。すなわち-20℃を超える室温では、純粋なキシリトールはガラス状態で存在できない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
したがって、本発明の主題は、菓子の清涼効果を低減するために、キシリトールと難消化性デキストリンとの非晶質混合物を含むことを特徴とする、キシリトールに富む無糖菓子製品である。
【0012】
「キシリトールに富む」という表現は、本発明によれば、菓子が乾燥ベースの重量で少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%のキシリトールを含むという事実を意味するものであると理解される。確かにこのような含量は一見すると低いが、清涼効果を持たない菓子製品としては、特別に高く、新規である。
【0013】
考慮する菓子の種類に応じて、キシリトール/デキストリンの重量比は、25/75から75/25、好ましくは30/70から70/30であり、ある種の菓子(例えば、特に、噛み応えのあるペースト(chewy paste)等)に関しては、他の菓子より多量のキシリトールを含むことも可能である。このような比率の範囲外では、清涼効果が充分に低減されてないか、または菓子製品のテクスチャが適切でない。デキストリンは、キシリトールの抗結晶化剤として作用し、その結果、キシリトールが菓子において非晶質形態で存在することを可能にする。
【0014】
本発明において「難消化性デキストリン」という表現は、特に、ピロデキストリンとも呼ばれる、酸性媒体中でデンプンを焙焼することによって得られたデキストリン(例えば、NUTRIOSE(登録商標)の名称で本出願人により販売されているものなど)を意味するものであると理解される。これらのデキストリンは、そのままで、または水素添加された形態で用いることができる。
【0015】
これらのデキストリンは、500から4500g/molまで変動し得る数平均分子量(Mn)を有し、1000から3000g/mol程度の数平均分子量を有するデキストリンで最良の結果が得られる。重量平均分子量(Mw)で表すと、本発明においてもっとも適切な分子量は、2800から5100g/mol、好ましくは4000から5100g/molである。
【0016】
低分子量のデキストリンの場合は、最良の結果を得るために、より高いMnまたはMwの他のデキストリン、あるいは、ガラス転移温度を上昇させることができるポリサッカライド(例えばアラビアゴム等)と混ぜ合わせることが得策である。
【0017】
本発明によれば、清涼効果が望ましくない種々のキシリトール菓子製品:噛み応えのあるペースト、有平糖(boiled sugar)、キャラメルを調製することができる。これらの菓子製品は、本発明の有利な変形形態によれば、新規な製品を構成する、清涼効果を持たない無糖チョコレート菓子製品を得るために、無糖チョコレートに封入物の形態で組み入れるか、またはチョコレートで被覆することができる。実際、例えばキシリトールに富む噛み応えのあるペーストまたはフォンダンなどの菓子製品は当業者に知られているが、これまでいずれのものも、それらが含有する結晶形態のキシリトールのために高い清涼効果を特徴としていた。
【0018】
一部のみが本発明による混合物を含む菓子製品、例えば、少なくとも1つの非晶質有平糖層と、結晶形態のキシリトールからなる他の層とを含む多層菓子製品を調製することも可能であろう。
【0019】
同様に、キシリトール/デキストリン混合物に加えて、少量の他のポリオールまたは増量剤(例えば、イソマルト、ラクチトール、マンニトール、エリスリトール、イヌリン、フルクトオリゴサッカライド、ポリデキストロース、アラビアゴム等)を含む菓子製品も本発明に包含される。
【0020】
本発明の変形形態によれば、菓子製品は、キシリトールと難消化性デキストリンとの混合物(好ましくは水素添加されたもの)を含む噛み応えのあるペーストである。これらの噛み応えのあるペーストは、重量で30%から50%のキシリトール、および15%から30%のデキストリンを含む。
【0021】
有平糖またはハードキャラメルに関しては、これらは重量で20%から55%のキシリトール、および15%から75%のデキストリンを含んでいてよい。
【0022】
典型的には、キシリトール/デキストリンの重量比は、有平糖の場合、30/70から70/30、好ましくは30/70から45/55、噛み応えのあるペーストの場合、35/55から70/30であってよい。60/40の比率で、特に満足できる、噛み応えのあるペーストのテクスチャが得られる。もっとも納得できる有平糖は、比率30/70から45/55、特に35/65から40/60を含む。
【0023】
チョコレートの場合、封入物(複数または単数)は、チョコレートの調製中に製造することができ、その大きさは所望する菓子によって決まり、前記封入物は本発明による菓子製品からなる。清涼効果が低減されているかまたは清涼効果を持たない前記チョコレートは、従来技術よりもはるかに高量のキシリトールを含有することができ、どんな場合でも少なくとも10重量%のキシリトールを含有することができる。
【0024】
したがって、本発明はまた、1種または複数種の封入物の形態の本発明の菓子製品を含むことを特徴とする無糖チョコレートに関する。
【0025】
前記無糖チョコレートは、好ましくはマルチトール、ラクチトール、またはイソマルトのチョコレートである。
【0026】
本発明の他の変形形態によれば、菓子製品は、菓子のテクスチャを制御するために、他のポリオール(例えば、特にマンニトール等)を含むことができる。マンニトールは実際に、結晶化を抑制するデキストリンの存在下、キシリトールに優先して結晶化する。この目的のために、イソマルト、または口内で低い溶解性と低い清涼効果を同時に有する他の任意のポリオールも用いることも可能であろう。このようなポリオールは、上述した軟らかい菓子製品のテクスチャを制御するのに特に有効である。
【0027】
有利な変形形態によれば、本発明の菓子製品は、さらにマンニトールを含む。乾燥ベースの重量で5から15%のマンニトール、18から24%の水素添加されたデキストリン、および36から42%のキシリトールを含む菓子製品について良好な結果が得られている。
【0028】
本発明の菓子製品を製造するために、従来の方法を用いることができる。チョコレートの場合、まず第一に、キシリトールと難消化性デキストリンとの混合物を含む菓子製品を調製し、次いで、それを粉砕または切断した後にチョコレートのマトリクスに組み入れるか、または、従来の被覆方法によって、そのままのものをチョコレートでコーティングする。
【0029】
本発明の主題はまた、キシリトール/デキストリンの重量比が25/75から75/25、好ましくは70/30から30/70、または65/35から35/65である、キシリトールと難消化性デキストリンとの非晶質混合物である。
【0030】
言うまでもなく、本発明は、清涼効果を有する他のポリオール(例えば、特にエリスリトール等)にも当てはまる。この場合、清涼効果の欠如およびテクスチャの観点から、エリスリトール/デキストリンの比率40/60で最良の結果が得られた。
【0031】
本発明は、例示的かつ非限定的である以下の実施例を読むことにより、さらに明確に理解されるであろう。
【実施例】
【0032】
(実施例1):本発明のキャラメルの調製
キシリトールと難消化性デキストリンとの混合物を含む本発明のキャラメルを調製する。
試験A:キシリトール、Nutriose(登録商標)FB6、比率40/60
試験BおよびC:キシリトール、Nutriose(登録商標)FB6、マンニトール、比率35/55/10
【0033】
【表1】

【0034】
手順:デキストリンをまず水に溶解し、次いで、ポリオールおよび塩を添加する。
ゼラチンを60℃で1時間、水に溶解する。
脂肪を融解する。
ポリオールとデキストリンとの混合物を135℃で沸騰させた後、他の成分を加え、その後、混合物を90℃に冷却し、ゼラチンならびに香料を加える。
次いで、このマスキットを大理石に広げ、切断または成形する。
このように調製された菓子製品は、清涼効果を持たない。これらの菓子製品はさらに、チョコレートで被覆することができる。
【0035】
(実施例2):本発明の菓子製品の調製-キシリトール/デキストリン比の変化
30/70から70/30の間で、様々なキシリトール/デキストリンの比率を試験する。
本試験に用いるデキストリンは、水素添加されたピロデキストリンである。
量は重量パーセントで表す。
【0036】
1.有平糖の調製
【0037】
【表2】

【0038】
キシリトール/デキストリン混合物を水に溶解し、180℃で沸騰させる。冷却中、強い甘味料を、香料および着色料と共に添加する。
次いで、型に流し入れることによって塊を成形させる。
冷却後、菓子製品を型から取り外す。
【0039】
もっとも納得できる試験は、30/70から45/55、特に35/65から40/60の比率である。
50/50の比率で、わずかに軟らかい有平糖が得られる。
55/45では、型からの取り外しが困難となり、70/30を超えると、塊は非常に粘着性となる。
30/70未満では、成形が困難であり、混合物は激しく泡立つ。沸騰も困難となる。
得られた菓子製品は、清涼効果を持たない。
【0040】
2.ソフトキャラメルの調製
量は重量パーセントで表す。
【0041】
【表3】

【0042】
最良の結果は、65/35の比率で得られる。(70/30)を超えると、わずかな清涼効果が認められる。
60/40の比率で、満足できる噛み応えのあるペーストのテクスチャが得られる。
65/35の比率を含む菓子製品を、次いでチョコレートで被覆する。それによって、高いキシリトール含量を有し、清涼効果のないチョコレート菓子製品が得られる。
【0043】
3.硬質ガムの調製
量は重量パーセントで表す。
【0044】
【表4】

【0045】
これらの混合物の沸騰を128℃で行い、その後、型で成形し、冷却する。
【0046】
本発明によれば、試験を行った比率に応じて、高いキシリトール含量を有し、清涼効果のない硬質ガムを得ることが可能である。
【0047】
4.2層有平糖の調製
冷却表面と中性表面とを有する菓子製品を消費者に提供するために、高いキシリトール含量を有し清涼効果を持たない本発明の層と、結晶化したキシリトールだけの層とを含む有平糖を調製する。これらの菓子製品は、次の配合に従って調製する。
【0048】
【表5】

【0049】
【表6】

【0050】
手順:
清涼効果を持たない層(透明黄色)
キシリトールおよびデキストリンNutriose(登録商標)FB06を水中で混合し、その混合物を120℃で沸騰させる。次いで、香料、酸、および着色料を添加する。この混合物を型で成形し、その後、冷却する。
【0051】
結晶化層(白色)
85〜90%のキシリトールをまず95℃で溶融する。次いで、残りの10〜15%のキシリトールをプライマーとして、溶融したキシリトールシロップに加え、慎重にシロップを混合し、その後、前述の層の上に手作業で載せ、得られた菓子製品を冷却し、その後、回収する。
【0052】
本発明に従って、1面のみが清涼効果を有し、もう1面は清涼効果を持たない2層菓子製品が得られる。
【0053】
(実施例3):本発明の菓子製品の調製-エリスリトール/デキストリン比の変化
30/70から70/30の間で、様々なエリスリトール/デキストリン(E/D)の比率を試験する。
本試験に用いる難消化性デキストリンは、分枝マルトデキストリンである。
量は重量パーセントで表す。
【0054】
1.ハードキャラメルおよびソフトキャラメルの調製
【0055】
【表7】

【0056】
ハードキャラメルの場合でもソフトキャラメルの場合でも、テクスチャおよび清涼効果の欠如に関して最良の結果は、E/D比=40/60で得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシリトールと難消化性デキストリンとの非晶質混合物を含むことを特徴とするキシリトールに富む無糖菓子。
【請求項2】
重量比25/75から75/25のキシリトールと難消化性デキストリンとの非晶質混合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の菓子。
【請求項3】
有平糖、ハードキャラメル、ソフトキャラメル、タフィー、噛み応えのあるペースト、またはチョコレートであることを特徴とする、請求項1または2に記載の菓子。
【請求項4】
乾燥ベースで20から55%のキシリトール、および15から75%のデキストリンを含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の菓子。
【請求項5】
マンニトール、マルチトール、イソマルト、イヌリン、またはアラビアゴムをさらに含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の菓子。
【請求項6】
乾燥ベースの重量で36から42%のキシリトール、18から24%のデキストリン、および5から15%のマンニトールを含むことを特徴とする、請求項5に記載の菓子。
【請求項7】
前記デキストリンが水素添加されたものであることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の菓子。
【請求項8】
ダーク、ホワイト、またはミルクの無糖チョコレートに組み入れられていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の菓子。
【請求項9】
前記チョコレートが、マルチトールチョコレートであることを特徴とする、請求項8に記載の菓子。
【請求項10】
噛み応えのあるペーストであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の菓子。
【請求項11】
エリスリトールと難消化性デキストリンとの非晶質混合物を含むことを特徴とする、エリスリトールに富む無糖菓子。
【請求項12】
キシリトール/デキストリンの重量比が25/75から75/25である、キシリトールと難消化性デキストリンとの非晶質混合物。
【請求項13】
エリスリトール/デキストリンの重量比が25/75から75/25である、エリスリトールと難消化性デキストリンとの非晶質混合物。

【公開番号】特開2013−34486(P2013−34486A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−243572(P2012−243572)
【出願日】平成24年11月5日(2012.11.5)
【分割の表示】特願2006−335830(P2006−335830)の分割
【原出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(592097428)ロケット・フルーレ (58)
【Fターム(参考)】