説明

キッチン用フロアキャビネット

【課題】 スライド部材に大面積の大型サブカウンターを取付けることができるキッチン用フロアキャビネットを提供する。
【解決手段】 キャビネット本体2の上部前面に、左右方向に延在するレール部材3を設けて、このレール部材3にスライド部材4をスライド可能に係合させたキッチン用フロアキャビネット1であって、前記レール部材3には、側面視で略L字状の係合溝31を形成するとともに、前記スライド部材4には、側面視で略L字状の係合部41を形成し、前方から回し操作しながら係合させる一方、前記スライド部材3にはサブカウンター5を連設するとともに、このサブカウンター5には、フロア面10に接地可能な脚部6を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチン用フロアキャビネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キッチン用フロアキャビネットでは、調理に使用する部分の面積を広く確保するために、シンクの周縁部に段差部を設け、この段差部に可動式のプレートを載置することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年では、大型鍋等を調理器からシンクへ簡単に移動させることができ、しかも調理に使用する部分の面積を広く確保することができるキッチン用フロアキャビネットが求められている。
【0004】
そこで、調理器やシンク等を有するキャビネット本体の上部前面にレール部材を設けて、このレール部材に台板を有するスライド部材をスライド可能に係合させることによって、大型鍋等を台板に載せて調理器からシンクへ移動できるようにするとともに、台板を調理台としても使用できるようにしたキッチン用フロアキャビネットが提案されつつある。
【0005】
このようなレール部材とスライド部材との係合構造は、一般的にレール部材の端部からスライド部材の係合部を差し込むようになっているため、スライド部材が不要な場合にスライド部材をレール部材から取外そうとしても、前方から取外すことはできず、またキャビネット本体の側面がキッチンの壁に面して設置される場合にはキャビネット本体設置後にスライド部材を取外すことはできない。
【0006】
そこで、本出願人は、スライド部材をレール部材の前方から簡単に取付けたり、取外したりすることができるキッチン用フロアキャビネットを先に提案した。
【0007】
かかるキッチン用フロアキャビネットは、レール部材には、側面視で略L字状の係合溝を形成するとともに、スライド部材には、側面視で略L字状の係合部を形成し、レール部材の略L字状の係合溝にスライド部材の略L字状の係合部を、前方から回し操作しながら係合させるようにしたものである。
【特許文献1】特開平6−73767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようなキッチン用フロアキャビネットでは、スライド部材にキャビネット本体の前面から手前側に突出して調理台等として使用可能なサブカウンターを取付けて、このサブカウンターをスライド操作して使用することが考えられる。
【0009】
しかしながら、スライド部材の係合部はレール部材の係合溝に嵌り込んで係合しているだけであるから、このスライド部材に大面積の大型サブカウンターを取付けることは強度的に難しく、小面積のサブカウンターしか取付けられない。そこで、さらに大きな調理スペースを確保するために、大面積のサブカウンターをスライド部材に取付けることが望まれている。
【0010】
本発明は、このような要望に鑑み、スライド部材に大面積の大型サブカウンターを取付けることができるキッチン用フロアキャビネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するために、本発明に係るキッチン用フロアキャビネットは、キャビネット本体の上部前面に、左右方向に延在するレール部材を設けて、このレール部材にスライド部材をスライド可能に係合させたキッチン用フロアキャビネットであって、前記レール部材には、側面視で略L字状の係合溝を形成するとともに、前記スライド部材には、側面視で略L字状の係合部を形成し、前方から回し操作しながら係合させる一方、前記スライド部材にはサブカウンターを連設するとともに、このサブカウンターには、フロア面に接地可能な脚部を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
前記サブカウンターは、開閉操作可能なカウンター台板を備えることが好ましい。
【0013】
前記サブカウンターは、前記脚部に沿って折り畳み可能に構成することが好ましい。
【0014】
前記脚部に、フロア面を少なくとも左右方向に転動可能な転動部材を設けることが好ましい。
【0015】
前記サブカウンターの少なくとも前記スライド部材側の上面に左右方向に延在する突条部を設けることが好ましい。
【0016】
前記サブカウンターの前記スライド部材側の端部に、前記キャビネット本体の上方まで張り出す張り出し部を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、サブカウンターに脚部を設けたから、サブカウンターはスライド部材が係合するレール部材と脚部とで略水平状態に支えられるため、大面積の大型サブカウンターとすることができ、調理スペースを広く確保することができる。また、不使用時には、サブカウンターを持ち上げてスライド部材の係合部を回し操作するだけで、レール部材に対する係合状態を解除することができるので、スライド部材とともにサブカウンターをキャビネット本体側から取外すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1および図2に示すように、キッチン用フロアキャビネット1は、キャビネット本体2と、このキャビネット本体2の上部前面に設けられ、左右方向に延在するレール部材3と、このレール部材3にスライド可能に係合するスライド部材4と、このスライド部材4に連設されるサブカウンター5と、このサブカウンター5の下面に設けられ、フロア面10に接地可能な脚部6とを備えている。
【0020】
前記キャビネット本体2は、略直方体の形状をなしており、人造大理石等で構成されるカウンター21と、カウンター21を支持する箱体23とを有して、箱体23の前面に前後方向に開閉可能な扉25や引き出し24が設けられている。
【0021】
前記カウンター21には、調理器(図示せず)やシンク22が組み込まれている。
【0022】
前記レール部材3は、前記カウンター21の下面と箱体23の前面との角部分にビス等で固定されていて、前方に開口する係合溝31が形成されている。この係合溝31は、前後方向に延びる基部溝31aと、基部溝31aの後側で斜め上方に立ち上がる立上り溝31bとからなり、側面視で略L字状をなしている。
【0023】
前記スライド部材4は、側面視で略逆T字状をなしていて、前記レール部材3の係合溝31に嵌り込んで係合する係合部41と、前記サブカウンター5に固定する固定部42とを有している。
【0024】
前記係合部41は、前後方向に延びて、レール部材3の係合溝31の基部溝31aの下面に載置可能な基部41aと、基部41aの後側で斜め上方に立ち上がって、レール部材3の係合溝31の立上り溝31bに係合可能な立上り部41bとからなり、側面視で略L字状をなしている。
【0025】
そして、前記係合部41は、下から上に回し操作しながら係合溝3に挿入することにより、立上り部41bが基部溝31aを通過して立上り溝31bに係合するようになっている。
【0026】
前記スライド部材4は、前方からレール部材3に取付けたり、取外したりすることができる。すなわち、スライド部材4をレール部材3から取外すには、図3(a)の取付け状態から図3(b)のように、サブカウンター5とともにスライド部材4を矢印aのように持ち上げて、係合部41を上から下に回し操作する。この状態で、図3(c)のように、サブカウンター5とともにスライド部材4の係合部41を矢印bのように手前側(同図中の右側)に引き抜けば、前方からの操作でサブカウンター5とともにスライド部材4をレール部材3から取外すことができる。
【0027】
逆に、サブカウンター5とともにスライド部材4をレール部材3に取付けるには、前記操作とは逆にすればよい。すなわち、図3(c)の取外し状態から図3(b)のように、サブカウンター5とともにスライド部材4の係合部41をレール部材3の係合溝31に嵌め込み、この状態でサブカウンター5とともにスライド部材4の係合部41を下から上に回し操作すれば、図3(a)のように、立上り部41bが立上り溝31bに係合するとともに基部41aが基部溝31aの下面に載ることで、サブカウンター5とスライド部材4の自重によって係合部41の係合溝31への係合状態が維持される。
【0028】
前記脚部6は、前記サブカウンター5の前端部下面に固定されており、サブカウンター5は、図1に二点鎖線で示すように、サブカウンター5の下方でキャビネット本体2の扉25や引出し24を開閉操作しても扉25等が脚部6に当らない大きさに設定されている。
【0029】
なお、サブカウンター5には、図4に示すような把手55が取付けられていてもよい。
【0030】
サブカウンター5は、開閉操作可能なカウンター台板51と、このカウンター台板51を支持するフレーム52とを有している。そして、フレーム52の後端部に前記スライド部材4の固定部42が固定されている。
【0031】
前記フレーム52は、平面視で前方に開口する略コ字状をなしており、前側の左右両端部は左右方向に延在する回動軸54によって相互に連結されているとともに、その下面には前記脚部6がそれぞれ取付けられている。
【0032】
前記カウンター台板51は、フレーム52に載置可能な大きさになっており、前端部の下面には、フレーム52の左右内側面間に嵌り込み可能な左右方向に延在する筒状体51aが取付けられている。
【0033】
前記筒状体51aの内径は、回動軸54の外径よりも僅かに大きく設定されていて、回動軸54が筒状体51aに挿通されることにより、カウンター台板51がフレーム52に図2(c)の矢印cのように上下方向に回動可能に支持されるようになっており、これによりカウンター台板51が上下方向に開閉操作可能となっている。
【0034】
なお、カウンター台板51は、上下方向に開閉操作可能である必要はなく、例えば回動軸54を前後方向に延在させて左右方向に開閉操作可能としてもよい。また、カウンター台板51を開閉操作可能とする構造は、適宜選定可能であり、例えば図5に示すように、フレーム52の対向する内側面に溝部52aを形成し、カウンター台板51を2分割として溝部52aに嵌め込んで、カウンター台板51を引き違い式に開閉操作可能としてもよい。
【0035】
また、カウンター台板51のスライド部材4側である後端部の上面には、左右両端部を結ぶように左右方向に延在する突条部51bが設けられている。
【0036】
さらに、フレーム52の後端面には、図1では省略しているが、図2(a)のように、カウンター21の上方まで張り出す張り出し部53が固定部42を介して取付けられている。
【0037】
サブカウンター5の後端面とカウンター21の前面との間には、図3(b)に示すようなスライド部材4の係合部41の回動操作を可能とするための隙間t(図2(a)参照)が必要であり、前記張り出し部53は、この隙間tを上方から覆うためのものである。
【0038】
張り出し部53は、ステンレス鋼板が折り曲げ形成されることにより、下方及び後方に延びる略L字状であって、後端部がさらに内側に折り返された形状に形成されている。
【0039】
そして、張り出し部53の後端部は、上下方向に撓み変形可能となっており、図3(b)に示すようにサブカウンター5を持ち上げて、スライド部材4をレール部材3から取外す際に、仮に張り出し部53の先端部がカウンター21に当接してもカウンター21を傷つけないようになっている。
【0040】
なお、前記張り出し部53は、ステンレス鋼板で構成されている必要はなく、合成樹脂等で構成されていてもよい。
【0041】
前記脚部6は、上下方向に延びる柱状をなしており、下端部には、フロア面10を左右方向に転動可能なローラ7が設けられている。なお、このローラ7は、フロア面10を少なくとも左右方向に転動可能であればよく、その向きを360°変えられる自在ローラであってもよいし、球を利用したどの方向にも転動可能な転動部材であってもよい。
【0042】
本実施形態のキッチン用フロアキャビネット1では、サブカウンター5に脚部6を設けたから、サブカウンター5はスライド部材4が係合するレール部材3と脚部6とで略水平状態に支えられるため、大面積の大型サブカウンター5とすることができ、調理スペースを広く確保することができる。また、不使用時には、サブカウンター5を持ち上げてスライド部材4の係合部41を回し操作するだけで、レール部材3に対する係合状態を解除することができるので、スライド部材4とともにサブカウンター5をキャビネット本体2側から取外すことができる。
【0043】
さらに、サブカウンター5が大面積であれば、脚部6があってもサブカウンター5の下方からキャビネット本体2の扉25や引き出し24を開閉操作することができ、扉25等を開閉操作するためにサブカウンター5を移動させる必要もない。
【0044】
そして、サブカウンター5のカウンター台板51が固定されている場合には、引き出し24を引き出してもサブカウンター5が引き出し24の上方を塞いでしまうため、収容物を出し入れすることはできないが、カウンター台板51を開閉操作可能に構成したから、カウンター台板51を開けば、サブカウンター5を移動させずに、カウンター台板51を開いた部分から収容物を出し入れすることができる。
【0045】
また、脚部6にはローラ7を設けたから、サブカウンター5を軽力でレール部材3に沿って左右方向に移動させることができる。
【0046】
また、カウンター台板51の後端部の上面に突条部51bを設けたから、カウンター台板51の上面に溜まった水が流れ落ちてレール部材3に入り込むことを抑制することができる。
【0047】
さらに、サブカウンター5にカウンタ−21の上方まで張り出す張り出し部53を設けたから、サブカウンター5とレール部材3との間の隙間tの上方からレール部材3側に水が入り込むことをより有効に防止することができる。
【0048】
なお、前記実施形態では、カウンター台板51の後端部の上面に突条部51bが設けられているが、突条部51bがカウンター台板51の全周縁部に沿って設けられていれば、カウンター台板51上に溜まった水がこぼれ落ちることや物が落下することを防止できる。ただし、前記実施形態のように少なくともスライド部材4側に設けられていれば、レール部材3に水が入り込むことを抑制することができる。
【0049】
また、張り出し部53は、略L字状の部材をフレーム52の後端面に取付けることによって構成しているが、カウンター台板51の後端部をカウンター21の上方まで延ばすことによって構成することも可能である。
【0050】
さらに、前記実施形態では、サブカウンター5と脚部6とが固定されているが、サブカウンター5は、図6に示すように、脚部6に沿って折り畳み可能に構成されていることが好ましい。
【0051】
このようにすれば、サブカウンター5をキャビネット本体2から取外した際にコンパクトに収納することができる。
【0052】
具体的には、サブカウンター5のフレーム52の前端部に下方に突出する突出部56を設けるとともに、脚部6の上端部に後方に突出する突出部61を設け、これらの突出部56,61同士を左右方向に延びる軸を介して回動自在に連結すればよい。
【0053】
また、フレーム52の下面には、サブカウンター5を折り畳んだときに脚部6に当接するストッパー57を設ける。ここで、ストッパー57を脚部6に設けずにフレーム52の下面に設けるようにしたのは、図6(a)に示す使用状態としたときの見栄えを向上させるためである。
【0054】
さらには、脚部6には、図6に示すように、レベルアジャスター8を取付けることも可能である。ただし、脚部6に前述したような自在ローラを取付けた場合には、サブカウンター5を脚部6に沿って折り畳んだときに移動し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】(a)(b)は本発明の一実施形態に係るキッチン用フロアキャビネットの斜視図であり、サブカウンターの台板を開閉する前後の状態を示した図である。
【図2】(a)は図1の要部を拡大した断面側面図、(b)はその正面図、(c)はサブカウンターの台板を開いたときの断面側面図である。
【図3】(a)〜(c)は、レール部材に対してスライド部材を取付けたり、取外したりするときの操作を説明する断面側面図である。
【図4】変形例のサブカウンターの斜視図である。
【図5】変形例のサブカウンターの斜視図である。
【図6】(a)(b)は本発明の他の一実施形態に係るサブカウンター及び脚部の側面図であり、サブカウンターを折り畳む前後の状態を示した図である。
【符号の説明】
【0056】
1 キッチン用フロアキャビネット
2 キャビネット本体
21 カウンター
24 引き出し
25 扉
3 レール部材
31 係合溝
4 スライド部材
41 係合部
5 サブカウンター
51 台板
6 脚部
7 ローラ
8 レベルアジャスター
10 フロア面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネット本体の上部前面に、左右方向に延在するレール部材を設けて、このレール部材にスライド部材をスライド可能に係合させたキッチン用フロアキャビネットであって、前記レール部材には、側面視で略L字状の係合溝を形成するとともに、前記スライド部材には、側面視で略L字状の係合部を形成し、前方から回し操作しながら係合させる一方、前記スライド部材にはサブカウンターを連設するとともに、このサブカウンターには、フロア面に接地可能な脚部を設けたことを特徴とするキッチン用フロアキャビネット。
【請求項2】
前記サブカウンターは、開閉操作可能なカウンター台板を備えたことを特徴とする請求項1に記載のキッチン用フロアキャビネット。
【請求項3】
前記サブカウンターは、前記脚部に沿って折り畳み可能に構成したことを特徴とする請求項1または2に記載のキッチン用フロアキャビネット。
【請求項4】
前記脚部に、フロア面を少なくとも左右方向に転動可能な転動部材を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のキッチン用フロアキャビネット。
【請求項5】
前記サブカウンターの少なくとも前記スライド部材側の上面に左右方向に延在する突条部を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のキッチン用フロアキャビネット。
【請求項6】
前記サブカウンターの前記スライド部材側の端部に、前記キャビネット本体の上方まで張り出す張り出し部を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のキッチン用フロアキャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−218174(P2006−218174A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−35946(P2005−35946)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】