説明

キッチン音響システム

【課題】キッチンルームで遠方にあるテレビの音声を聞くことのできるキッチン音響システムを提供する。
【解決手段】遠方にあるテレビ3をキッチン側から見ることができるキッチン設備において、キッチン設備の適所に、キッチン使用者の作業領域に向かってテレビ音声を出力する音声出力装置4を設ける。これにより、リビング等の遠方にある大型のテレビ画面をキッチンルームで見ると同時に、テレビ画面と同じチャンネルの音声を聞くことができる。そのため、キッチンルームにおいて、料理や洗い物等のキッチン作業を行いながらスポーツ中継を見たり、音楽番組を見ることができ、しかも同時にキッチンルームにおいて臨場感あふれる音響を楽しむことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リビング等の遠方にあるテレビの音声出力を、キッチン側において行うようにしたキッチン音響システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
キッチンルームにラジカセや液晶テレビを設置すると邪魔である。また電源をコンセントから引いてこなくてはいけなく、電源コードが露出し、煩雑になっていた。
一方、最近では、テレビも大型化しており、キッチン側から遠方のリビングに設置されたテレビを見ることのできる対面式キッチン設備が公知である。対面式キッチンの場合は、キッチンルームにテレビを設置せず、リビングにあるテレビを利用していることが多いが、テレビの画像はキッチンルームから見ることはできても、音声は聞こえづらいという問題があった。
【0003】
またキッチンルームにおいて、音声を出力するようにした装置も特許文献1及び特許文献2によって公知である。特許文献1に記載された技術は、キッチンキャビネットの使用者の足元部に対応する蹴込み空間内に音響再生用のスピーカーを取り付けることで、キッチンシンクで発生する湯の蒸気や水滴などの影響を受けにくくし、耐久性の向上を実現している。また蹴込み空間内にスピーカーを設置することで、蹴込み空間がエンクロージャーとして機能し、素直な低域特性が得られるようにしている。
【0004】
これに対して、特許文献2に示す技術は、システムキッチンのアッパーキャビネット(吊戸棚)の下面側に、収納ボックスを設置し、該収納ボックス内にテレビ、ラジオ、カセットデッキ、カセットケース入れ、プリメインアンプ、スピーカーの音響装置を組み込むようにしている。
【特許文献1】特開2003−88433号公報
【特許文献2】特開昭61−203907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載された技術では、閉鎖された蹴込み空間内において、キッチンキャビネットの蹴込み板の裏面側に、スピーカーを設置するようにしてり、あらかじめ蹴込み板の裏面側にスピーカーを取り付けておかなければならなかった。そのため、キッチンキャビネットを組み立てるときに、スピーカーを破損させないように注意を払って行う必要があり、組立工数の増大となる欠点があった。またスピーカーをメンテナンスするとき、設備を一部分解して行う必要があり、手間がかかるという欠点もあった。
【0006】
特許文献2に記載された技術では、アッパーキャビネットの下面側に、大掛かりな収納ボックスを設置し、該収納ボックス内にテレビ、ラジオ等の音響設備を設置しており、設備全体が大型化するという問題があった。またこれらの音響設備をアッパーキャビネットの下面側に設置するため、アッパーキャビネット自体の取付強度をかなり高いものにする必要があった。
【0007】
本発明は従来の前記課題に鑑みてこれを改良除去したものであって、キッチンルームで遠方にあるテレビの音声を聞くことのできるキッチン音響システムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
而して、前記課題を解決するために本発明が採用した請求項1の手段は、遠方にあるテレビをキッチン側から見ることができるキッチン設備において、キッチン設備の適所に、キッチン使用者の作業領域に向かってテレビ音声を出力する音声出力装置を設けたことを特徴とするキッチン音響システムである。
【0009】
本発明が採用した請求項2の手段は、前記テレビに、放映チャンネルの音声信号を送信する送信機を設け、前記音声出力装置に、前記送信機の信号を受信して音声信号を出力する受信機と、該受信機の音声信号を受けて音声を出力する音声出力機とを設けた請求項1に記載のキッチン音響システムである。
【0010】
本発明が採用した請求項3の手段は、前記音声出力装置に、テレビ用チューナーと、該テレビ用チューナーの発する音声信号を受けて音声を出力する音声出力機と、チャンネル切換信号を受けるリモコン受信機とを設け、前記テレビにチャンネル切換信号を受けるリモコン受信機を設け、当該テレビのリモコン受信機と前記音声出力装置のリモコン受信機とにチャンネル切換信号を発信するリモコンを設けた請求項1に記載のキッチン音響システムである。
【0011】
本発明が採用した請求項4の手段は、前記音声出力機の入力側に切換器を設けて成り、該切換器は前記音声信号とCDプレイヤー等の再生装置の出力信号とを選択的に切り換えるものである請求項2又は3に記載のキッチン音響システムである。
【0012】
本発明が採用した請求項5の手段は、前記音声出力機における音の発生は、発音用アクチュエータでキッチンキャビネットの構成部材を振動させて行うものである請求項1〜4に記載のキッチン音響システムである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明にあっては、リビング等の遠方にある大型のテレビ画面をキッチンルームで見ると同時に、テレビ画面と同じチャンネルの音声を聞くことができる。そのため、キッチンルームにおいて、料理や洗い物等のキッチン作業を行いながらスポーツ中継を見たり、音楽番組を見ることができ、しかも同時にキッチンルームにおいて臨場感あふれる音響を楽しむことが可能である。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1の発明の音声出力装置の具体的な構成を示すものであり、これにより、キッチンルームにおいてテレビと同じ音声を聞くことが可能である。
【0015】
請求項3の発明にあっては、リビング等にあるテレビをリモコン操作してチャンネルを切り換えると、同時にキッチン側の音声出力装置がテレビと同じチャンネルの音声信号に切り換えられるので、別々の操作をしなくても、キッチンルームにおいてテレビと同じ音声を楽しむことが可能である。
【0016】
請求項4の発明にあっては、音声出力機の入力側に切換器が設けられており、切換器を切り換えてCDプレイヤー等の再生装置の出力信号を出力することができる。従って、キッチンルームでテレビを見ないときには、CD等の音楽を楽しむことも可能である。
【0017】
請求項5の発明にあっては、キッチン設備の適所に設けた音声出力装置の音の発生を、発音用アクチュエータでキッチンキャビネットの構成部材を振動させて行うようにしており、キッチンキャビネットの構成部材自体が平面スピーカーとしての機能を有するようになる。そのため、コーン紙のある大きなスピーカーが不要であり、全体構成が極めてシンプルなものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の構成を図面に示す発明の実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。図1乃至図6は、本発明の一実施の形態に係るものであり、対面式キッチン流し台1のサイド板2をキッチン設備として選択した場合のものである。図1はリビング側に配設されたテレビ3と、キッチン流し台1の全体を示す斜視図である。図2はリビング側のテレビ3と、キッチン側の音声出力装置4との間の信号のやりとりを示すブロック図、図3はその別態様を示すブロック図である。図4は流し台1を示すものであり、図(A)はその正面図、図(B)は同側面図である。図5は流し台1のサイド板2を示すものであり、図(A)は側面図、図(B)は縦断面平面図である。図6は発音用アクチュエータとしてエキサイター5を用いた場合のものであり、図(A)はエキサイター5の部分断面平面図、図(B)は同正面図である。
【0019】
図1に示すように、対面式のキッチン流し台1は、手前側の上部に配設されたシンク6寄りの正面側がキッチンルームに面しており、奥部の上面に配設されたカウンター7の背面側がリビング又はダイニング等に面している。そして、流し台1の左側面にはサイド板2が立設されており、キッチン設備と他の空間とを区画している。サイド板2は、図5の図(A)及び図(B)に示すように、薄板8及び木材9からなる心材10の両サイドの薄い表面材11を貼着したフラッシュ板等であり、内部にテレビ3のキッチン側における音声出力装置4が組み込まれている。
【0020】
すなわち、心材10と表面材11との間には、付属部品室12と、エキサイター室13と、アンプ室14とが設けられており、付属部品室12にはスイッチ15及びボリューム16、ピンジャック17等の付属部品が収納配設されており、エキサイター室13には、発音用アクチュエータとしてのエキサイター5が収納配設されており、アンプ室14にはアンプ、テレビチューナー等の機器が収納配置されている。またサイド板2の左外側面には、前記スイッチ15、ボリューム16及びピンジャック17の付属部品が操作できるように露呈しており、その他、CDプレイヤー等のメディア再生装置18及びCD19等を係止しておく、係止棚部20A,20Bと、リモコン21のホルダー22が取り付けられている。更に、サイド板2の正面側の端面には、コンセント23が設けられている。
【0021】
而して、図2に示すように、リビング側に配設されたテレビ3には、リモコン21から野テレビ操作信号を受信するリモコン受信機24と、テレビ電波を受信してチャンネルを切り換えるチューナー25と、該チューナー25が受信しているチャンネルの音声信号を出力する送信機26とが組み込まれている。またキッチン側の音声出力装置4は、前記送信機26からの信号を受信する受信機27と、当該受信機27からの音声信号とメディア再生装置18からの音声信号とを選択的に切り換える切換器28と、音声出力機29とが組み込まれている。音声出力機29は、図6の図(A)及び図(B)に示すエキサイター5である。
【0022】
エキサイター5は、皿状に形成したヨーク30と、ヨーク30の凹部に取り付けた磁石31と、磁石31の外周に嵌合装着したボビン32と、ボビン32の外周面に巻回したボイスコイル33と、ヨーク30及びボビン32の二部材を連結するダンパー34と、ボビン32の先端側に設けた出力部(フランジ)35とを備えている。また磁石31の上面側にはプレート36が積層され、更に消磁用磁石37が積層されている。これらは磁気回路38を構成し、ボイスコイル33との間で磁気ギャップを形成する。また出力部35は、木質,セラミック質等の音質調整具39を介して薄板8に接しており、筒状のケーシング40をビス41等で連結することにより、薄板8の裏面側にエキサイター5の全体を取り付けるようにしている。ケーシング40の他端面側には、環状の切欠きを間欠的に且つ多重に形成することで、バネ性を付与した押圧具32が取り付けられており、エキサイター5を薄板8に対して押圧付勢している。
【0023】
エキサイター5の音発生原理は、ボイスコイル33に音響再生信号が流れると、その強さに応じてボイスコイル33と共にボビン32がピストン運動し、ボビン32の先端側の振動出力部35に当接する薄板8を振動させて音を再生するものである。なお、前記音発生器は、エキサイター(励振器)5に限定するものではなく、図示は省略したが、電磁コイルで生じる磁界変化で超磁歪ロッドを伸縮させる超磁歪式アクチュエータ−や、圧電振動子を用いたアクチュエータ等を選択することも可能である。
【0024】
次に、このように構成されたキッチン音響システムの使用態様を説明する。キッチン側のサイド板2に取り付けられたホルダー22に装着されているリモコン21を操作し、テレビ3のチャンネルを切り換えると、図2に示すように、リモコン21から切換信号がリモコン受信機24に受信され、チューナー25を切り換えるようになる。そのため、テレビ3の本体側ではその画面上に受信チャンネルの画像が表示され、内臓スピーカーから音声が出力される。一方、チューナー25では、選択されたチャンネルの電波を受信し、その音声信号を送信機26へ出力する。これにより、キッチン側のサイド板2内に組み込まれた受信機27が前記音声信号を受信する。この音声信号は切換器28を介して音声出力機29であるエキサイター5に入力される。
【0025】
エキサイター5に前記音声信号が入力されると、その強さに応じてボイスコイル33と共にボビン32がピストン運動し、ボビン32の先端側の振動出力部35に当接する薄板8を振動させて音を再生する。つまり、キッチンルームでのキッチン作業者は、流し台1越しにリビング等のテレビ3の映像を見ることができ、同時に、エキサイター5による映像チャンネルの音声信号を聞くことができるので優れた音響効果が得られる。また薄板8を振動板として利用することにより、平面スピーカーを構成することができ、スピーカー部品を別途準備する必要がなく、部品点数を少なくすることができる。しかも、薄板8の材質を木質板や各種金属板又はプラスチック板等から適宜選択することにより、発生する音や音色の周波数帯並びに波形を変えることが可能である。更にまた、平面スピーカーとしての薄板8が直接、外部から見えることがなく、見栄えが良いという利点もある。なお、エキサイター5の取り付けは、図4の図(B)に示すように、薄板8の代わりにサイド板2のシンク寄りの右側面の一部に開口を設けて該開口に振動板43を着脱自在に取り付け、該振動板43の裏面側に取り付けるようにしてもよい。
【0026】
ところで、リビング側のテレビ3と、キッチン側の音声出力装置4との間の信号のやりとりは、図2の方式に代えて、図3に示す方式にすることが可能である。この図3の方式では、テレビ3側をリモコン受信機24とチューナー25とで構成し、音声出力装置4側をリモコン受信機24と、チューナー25と、切換器28と、音声出力機29とで構成している。リモコン21を操作し、テレビ3のチャンネルを切り換えると、図3に示すように、リモコン21から切換信号がテレビ3側と音声出力装置4側との両方のリモコン受信機24,24に受信され、それぞれのチューナー25を切り換えるようになる。そのため、テレビ3の本体側ではその画面上に受信チャンネルの画像が表示され、内臓スピーカーから音声が出力される。一方、音声出力装置4側のチューナー25では、選択されたチャンネルの電波を受信し、その音声信号を切換器28を介して音声出力機29であるエキサイター5に出力する。
【0027】
エキサイター5に音声信号が入力されると、その強さに応じてボイスコイル33と共にボビン32がピストン運動し、ボビン32の先端側の振動出力部35に当接する薄板8を振動させて音を再生することは、前記図2の場合と同じである。これにより、キッチンルームでのキッチン作業者は、流し台1越しにリビング等のテレビ3の映像を見ることができ、同時に、エキサイター5による映像チャンネルの音声信号を聞くことができる。
【0028】
なお、キッチンルームにおいて、リビング側に配設されたテレビ3を見ない場合は、図2又は図3のいずれの方式であっても、切換器28をメディア再生装置18側へ切り換え、CD等の音声信号を音声出力機29としてのエキサイター5へ出力して音を再生する利用形態も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、適宜の変更が可能である。例えば、音発生用の振動発生器としては、エキサイター5の場合を例に説明したが、他にも超磁歪式のアクチュエータや圧電振動子を用いたアクチュエータ等が適用可能である。超磁歪式のアクチュエータは、電磁コイルで生じる磁界変化で超磁歪ロッドを伸縮させて振動を発生させるものである。その構成は、ケーシング内に、音信号が流れる電磁コイルと、電磁コイルで生ずる磁界変化により自由端側が伸縮する超磁歪ロッドと、超磁歪ロッドの圧縮方向にプリストレスを付与するスプリングと、超磁歪ロッドにバイアス磁界を付与する磁石とが内臓されており、超磁歪ロッドの自由端にプッシュロッドが連結してある。電磁コイルに音声信号が流れると磁界変化が生じ、超磁歪ロッドを伸縮させて音声信号に応じた変位をプッシュロッドの先端出力部に発生させるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施の形態に係るものであり、リビング側に配設されたテレビと、キッチン流し台の全体を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るものであり、リビング側のテレビと、キッチン側の音声出力装置との間の信号のやりとりを示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るものであり、リビング側のテレビと、キッチン側の音声出力装置との間の信号のやりとりを示す別態様のブロック図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るものであり、図(A)は流し台の正面図、図(B)は同側面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係るものであり、図(A)は流し台のサイド板の側面図、図(B)は同縦断面平面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係るものであり、図(A)はエキサイターの部分断面平面図、図(B)は同正面図である。
【符号の説明】
【0031】
1…対面式キッチンの流し台、2…サイド板、3…テレビ、4…音声出力装置、5…エ キサイター、6…シンク、7…カウンター、17…ピンジャック、18…CD等の再生 装置、19…CD、22…リモコン、24…リモコン受信機、25…チューナー、26 …送信機、27…受信機、29…切換器、29…音声出力機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠方にあるテレビをキッチン側から見ることができるキッチン設備において、キッチン設備の適所に、キッチン使用者の作業領域に向かってテレビ音声を出力する音声出力装置を設けたことを特徴とするキッチン音響システム。
【請求項2】
前記テレビに、放映チャンネルの音声信号を送信する送信機を設け、前記音声出力装置に、前記送信機の信号を受信して音声信号を出力する受信機と、該受信機の音声信号を受けて音声を出力する音声出力機とを設けた請求項1に記載のキッチン音響システム。
【請求項3】
前記音声出力装置に、テレビ用チューナーと、該テレビ用チューナーの発する音声信号を受けて音声を出力する音声出力機と、チャンネル切換信号を受けるリモコン受信機とを設け、前記テレビにチャンネル切換信号を受けるリモコン受信機を設け、当該テレビのリモコン受信機と前記音声出力装置のリモコン受信機とにチャンネル切換信号を発信するリモコンを設けた請求項1に記載のキッチン音響システム。
【請求項4】
前記音声出力機の入力側に切換器を設けて成り、該切換器は前記音声信号とCDプレイヤー等の再生装置の出力信号とを選択的に切り換えるものである請求項2又は3に記載のキッチン音響システム。
【請求項5】
前記音声出力機における音の発生は、発音用アクチュエータでキッチンキャビネットの構成部材を振動させて行うものである請求項1〜4に記載のキッチン音響システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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