説明

キトサンを担持させた粒状組成物とそれを含有するたばこフィルタ

【課題】アルデヒド類を効率よく除去できるたばこフィルタ用として適した粒状組成物と、その製造方法の提供。
【解決手段】要件(a)〜(d)を満たす、酢酸セルロース粒子にキトサン塩が坦持された複合体を含む粒状組成物。(a)酢酸セルロース粒子の粒度:1.7〜0.1mm(b)酢酸セルロース粒子の比表面積が0.1〜1000m2/g(c)酢酸セルロース粒子の嵩比重が0.1〜0.6(d)酢酸セルロース粒子のリモネン吸収量が1〜60%

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニコチンやタールなどの喫味成分を保持しつつ、アルデヒド類(特に、ホルムアルデヒド)を選択的に効率よく除去するのに有用な粒状組成物、その製造方法、粒状組成物を含むたばこフィルタ、このたばこフィルタを備えたたばこに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ニコチンやタールがタバコ煙中の主な有害成分と考えられ、ニコチンやタールのデリバリーに関心がもたれ、多くの国でニコチンとタールの表示義務が課せられている。しかし、ニコチンそのものは、タバコの嗜好成分であり、喫煙の満足感に直接関与すると考えられる。また、タールについても、タバコ煙成分中のタール成分を相対的に高いレベルで除去することは、香喫味を損なうために好ましいことではない。すなわち、タールやニコチンを含めた揮発性の低い煙成分を無差別に除去すると、味が軽くなるとともに満足感が得られなくなる。
【0003】
アルデヒド類、特にホルムアルデヒドは、刺激的な臭いを有するだけでなく、最近アレルギーの原因物質のひとつとして注目されているように、健康上好ましくない物質であり、極力除去することが好ましい。したがって、ホルムアルデヒドの選択吸着性を維持しつつ、タールやニコチンの吸着量が少ない、たばこ用フィルタが求められていた。
【0004】
たばこ煙中の成分をろ過するための吸着体として種々の構成成分が提案されている。このような構成成分としては、酸性成分の吸着、ホルムアルデヒドの吸着などを目的としてアミン成分などの塩基性成分を添加するものが多く報告されている。しかし、塩基性成分の多くは、特に合成高分子アミンは、分解や低分子量成分の残存により特有のアミン臭を呈することが多い。また、塩基性成分自体又はその中に含まれる揮発性物質は、揮発して人体に対して毒性を示すことが多い。このように、通常の塩基性成分を用いた吸着体では、酸性物質やアルデヒドなどの除去にある程度有効であると考えられるものの、安全性やその効果に問題があり、たばこフィルタ用吸着剤として実用的でなかった。
【0005】
塩基性物質の中でも、キチンやキトサンなどのキトサン誘導体は、結晶化や揮発を生じることがなく、人体に対しても安全であり、抗菌性を有することが知られている。
【0006】
特開平11−100713号公報(特許文献1)には、キトサンを含有し、滅菌率が26%以上であるキトサン含有セルロースアセテート繊維が開示されている。この文献には、セルロースアセテートの溶剤にキトサンを所定の大きさ以下(最大粒子径3μm以下)に粉砕、分散させた分散液を添加又は混合する方法、直接キトサンを添加又は混合し、所定の分散条件によりキトサンの大きさを調製する方法などにより、キトサンを紡糸原液中に分散含有させることが記載されている。
【0007】
キチンやキトサン誘導体を用いたたばこフィルタも提案されている。特開昭53−142600号公報(特許文献2)には、タバコフィルタ素材に対して、キチンもしくはキチン誘導体を3wt%以上の割合で含有するタバコフィルタが開示されている。この文献には、キチン及びキチン誘導体はその構造にアセチル基を所有するために、特にアセテートフィルタに配合した場合、アセテートのアセチル基との相乗効果によって独特の軽い香喫味をタバコに与えることが記載されており、実施例において、タールの除去率が34〜41%、ニコチンの除去率が28〜29%であり従来品と同等もしくはそれ以上であったことが記載されている。
【0008】
特開昭60−168373号公報(特許文献3)には、キチン又はその誘導体(キチンのアセチルアミノ基の一部又は全部を脱アセチル化したキトサン、そのOH基やCH2OH基がエーテル化、エステル化、ヒドロキシエチル化あるいはO−メチル化された化合物など)からなる繊維を素材とするタバコ用フィルタが開示されている。この文献には、前記繊維を製造する方法として、キチン又はその誘導体を溶剤に溶かしてドープとなし、このドープを湿式紡糸して繊維化する方法が好ましく用いられることが記載されている。この文献のたばこフィルタは、トリアセチルセルロースやレーヨンを素材としたフィルタに比べて使用中にタールやニコチンを吸着しやすく、従来のものに比べて1.5〜2倍以上の吸着付着能力を有している。
【0009】
特開昭62−111679号公報(特許文献4)には、喫煙時における煙中の変異原物質を除去するために、多糖類イオン交換体や粉末状多糖類(セルロース、アガロース、アミロース、キチン、キトサンなど)を含有するたばこ用フィルタ材が開示されている。この文献には、多糖類イオン交換体や粉末状多糖類をたばこ本体のフィルタとして、またアセテートフィルタの空間に分散または挟み込む形状で使用できることが記載されている。
【0010】
特開平7−31452号公報(特許文献5)には、キチンまたはキトサンを5〜100重量%有するたばこ用フィルタが開示されている。キチン・キトサン溶液を使用する具体的な方法として、実施例5では、脱脂綿80mgをキチン・キトサン(脱アセチル化度50%)の1%水溶液に浸した後に真空乾燥し、20mgのキチン・キトサンが含浸した脱脂綿100mgを紙筒に充填してフィルタチップを形成し、ニコチン捕集率48%、タール捕集率45%、アクロレイン捕集率72%のフィルタを得たことが記載されている。
【0011】
しかし、上記のようなキチンやキトサン誘導体を用いたたばこフィルタは、比較的人体に対して安全である一方で、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類だけでなく、ニコチンやタールなどの物質も多く除去してしまうため、喫味(又は香喫味)を損なう。さらに、キトサンなどはそれ自身が固く脆い物であり、キトサンの繊維からなるフィルタでは、フィルタから脱落したキトサン繊維が人体に吸い込まれ、気管支の鞭毛を傷つけたりする可能性もある。また、特許文献5に記載されているように、たばこ用の煙フィルタとして常用されているセルロースアセテートのフィルタにキトサンの粒子を添加した場合でも、粒子が脱落し、上記と同様に気管支の鞭毛を傷つけたりする可能性がある。
【0012】
特開2007−319041号公報(特許文献6)は、たばこフィルタに一般的に用いられているセルロースアセテートの繊維に、アミノ酸溶液を添着したたばこフィルタを開示している。この発明では、アミノ酸または及びその塩(および必要に応じてヒドロキシ酸などの酸性成分)を溶液の形態で担体(セルロールエステル繊維のトウ構造の担体など)を処理するので、タールやニコチンなどの喫味(又は香喫味)成分を高レベルで保持しつつ、アルデヒド類(特に、ホルムアルデヒド)を効率よく除去できることが記載されている。また、粒状物をフィルタ素材の中に含まないので通気抵抗に与える影響が少なく、喫味を保持できることが記載されている。このたばこフィルタは、ニコチンやタールなどの喫味成分を保持しつつ、ホルムアルデヒドを選択的に効率よく除去するのに有用なことが記載されている。このようなたばこフィルタは、ホルムアルデヒドを効率よく選択除去でき、たばこフィルタを通過する煙中のニコチン及びタールをそれぞれ保持率80%以上に保持しつつ、ホルムアルデヒド除去率を60%以上にできることが記載されている。しかしながら、アミノ酸は高価であり、フィルター素材の価格を高騰させる。
【0013】
WO2006/070662号公報(特許文献7)には、担体が、アミノ基を有する多糖類および極性溶媒で被覆処理されているたばこフィルター用素材が開示されている。この発明では、担体がトウ構造の担体であり、(i)平均脱アセチル化度70%以上のキトサンを、担体100重量部に対して3〜15重量部、(ii)ヒドロキシル基を有する溶媒を、前記キトサンのグリコース単位1モルに対してヒドロキシル基換算で9モル以上、および(iii)モノヒドロキシC2-6アルカンモノカルボン酸を、前記キトサンのグリコース単位1モルに対して、カルボキシル基換算で0.5〜2モル含む請求項7記載のたばこフィルター用素材が記載されている。この発明では、さらに保湿成分を含んでいてもよいことが記載されている。具体的な保湿成分としては、ポリグリセリン(ジグリセリン、トリグリセリンなど)が開示されている。実施例においては、保湿剤を含有しない実施例1で極性溶媒として水を123mg添加したものでホルムアルデヒド類の除去率が66%、実施例6で水6mg、保湿剤としてグリセリン28mgを添加したもので57%のホルムアルデヒド類の除去率を示すことが記載されている。このようにニコチンやタールなどの喫味成分を保持しつつ、ホルムアルデヒドを選択的に効率よく除去するのに有用なたばこフィルター用素材の発明が開示されている。
【0014】
特開2008−48650号公報(特許文献8)にはアミノ基を含む多糖類とシリカゲルからなるたばこフィルタ素材およびそれを用いたたばこフィルタが開示されている。この発明では、たばこフィルタを、アミノ酸類およびアミノスルホン酸類から選択された少なくとも1種のアミノ基を有する多糖類と平均細孔径20nm以上のシリカゲルとで構成されているたばこフィルタ用素材で構成することが記載されている。この発明のたばこフィルタ用素材では、(i)アミノ基を有する多糖類がキトサンであり、(ii)シリカゲルが、平均細孔径25nm以上、温度22℃および60%RHにおける平衡水分率0.10〜1.00%のシリカゲルであり、(iii)アミノ基を有する多糖類の割合がシリカゲル100重量部に対して、0.05〜10重量部であってもよいことが記載されている。そして、さらに、保湿剤を含んでいてもよいことが記載されており、このような保湿剤は、ポリオール類(例えば、グリセリンなど)で構成されていてもよいことが記載されている。そして、このような保湿剤は、前記たばこフィルタ用素材によるアルデヒド類の選択吸着性を効率よく向上するのに有用であることが記載されている。
【0015】
上記の特許文献7及び特許文献8に記載されている通り、キトサンを用いている場合には保湿剤がホルムアルデヒド類の選択吸着性の向上に有効であることが記載されており、保湿剤を含有する目的はフィルタ素材に水を保持することであり、上記の特許文献7及び特許文献8の技術では水が失われるとホルムアルデヒドの低減の効果も失われるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平11−100713号公報
【特許文献2】特開昭53−142600号公報
【特許文献3】特開昭60−168373号公報
【特許文献4】特開昭62−111679号公報
【特許文献5】特開平7−31452号公報
【特許文献6】特開2007−319041号公報
【特許文献7】WO2006/070662号公報
【特許文献8】特開2008−48650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、アルデヒド類(特に、ホルムアルデヒド)を効率よく除去できるたばこフィルタ用として適した粒状組成物と、その製造方法を提供することである。
【0018】
本発明の他の課題は、上記の粒状組成物を用いたたばこフィルタと、たばこフィルタを用いたたばこを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、課題の解決手段として、要件(a)〜(d)を満たす、酢酸セルロース粒子にキトサン塩が坦持された複合体を含む粒状組成物を提供する。
(a)酢酸セルロース粒子の粒度:1.7〜0.1mm
(b)酢酸セルロース粒子の比表面積が0.1〜1000m2/g
(c)酢酸セルロース粒子の嵩比重が0.1〜0.6
(d)酢酸セルロース粒子のリモネン吸収量が1〜60%
【0020】
本発明は、他の課題の解決手段として、
請求項1又は2記載の粒状組成物の製造方法であって、
キトサン塩を水に溶解させてキトサン塩水溶液を得る工程、
キトサン塩水溶液に酢酸セルロース粒子を浸漬又はキトサン塩水溶液を酢酸セルロース粒子に噴霧する工程、
酢酸セルロースを取り出した後、減圧乾燥して複合体を得る工程を有する、粒状組成物の製造方法を提供する。
【0021】
本発明は、他の課題の解決手段として、
請求項1又は2記載の粒状組成物の製造方法であって、
キトサン塩を水に溶解させてキトサン塩水溶液を得る工程、
必要に応じてキトサン塩水溶液にアルカリを添加する工程、
キトサン塩水溶液に酢酸セルロース粒子を浸漬又はキトサン塩水溶液を酢酸セルロース粒子に噴霧する工程、
酢酸セルロースを取り出した後、加熱乾燥して複合体を得る工程を有する、粒状組成物の製造方法を提供する。
【0022】
本発明は、上記の粒状組成物を含有するたばこフィルタと、前記たばこフィルタを備えたたばこを提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の粒状組成物は、アルデヒド類、特にホルムアルデヒドに対する選択吸着性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1の粒状組成物断面のSEM写真。
【図2】実施例10〜13の粒状組成物を用いたリモネン吸収量とホルムアルデヒド保持率との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<粒状組成物>
本発明の粒状組成物は、下記の要件(a)〜(d)を満たす、酢酸セルロース粒子にキトサン塩が坦持された複合体を含むものである。
【0026】
要件(a)
酢酸セルロース粒子の粒度(実施例記載の方法により測定する)は、1.7〜0.1mm、好ましくは1.0〜0.18mm、より好ましくは0.85〜0.25mmである。
【0027】
要件(a)の粒度は、90質量%以上の量が、目開き(JIS Z 8801−1 2006)1.7〜0.1mmの範囲(但し、目開き1.7mmの篩を通過するが、0.1mmの篩は通過しない)であることを意味する。よって、上記各範囲における各上限値の目開きの篩は通過するが、各下限値の目開きの篩は通過しないことを意味する。
【0028】
このような粒度とすることで、たばこフィルタ素材に求められる通気抵抗にほとんど影響することがない。尚、通常の多孔質体粒状物の場合、粒度と比表面積は相関関係があり、本発明のような粒度とする場合には比表面積が低下する。しかしながら、酢酸セルロースの場合その製造方法に特徴がある。
【0029】
すなわち、酢酸セルロースは酢酸溶媒の存在下でセルロースと無水酢酸を反応させてアセチル化させて、ほとんど完全にアセチル基で置換された酢酸セルロース(一次酢酸セルロース)を得る。次いで、この一次酢酸セルロースを酢酸溶液の溶解状態で水を添加して所望の酢化度に調整して酢酸セルロースを得る。得られた所望の置換度を持つ酢酸セルロースは酢酸溶媒中に溶解している濃厚溶液(ドープ)となる。このドープに水を添加することで酢酸セルロースが希釈化された酢酸セルロース溶液から沈殿して、酢酸セルロースの固形物を得る。
【0030】
酢酸セルロースはその固形物がフレークという用語で呼ばれている通り、上記の沈殿工程では、粘度が高いポリマーが非相容系の溶媒に触れることにより、その溶液と高分子溶液の接触界面でまず固化が生じる。この段階では高分子溶液の内部の酢酸濃度は高いので、ポリマーは溶媒に溶解した高分子溶液状態で存在するが、ドメインの内部に希薄な酢酸溶液が侵入するにつれて順次固化してゆく。固化する段階で酢酸セルロースの高分子溶液の体積と固体状の酢酸セルロースの体積は当然異なるので、連通または非連通の多孔質体として沈殿する。
【0031】
このような酢酸セルロースの製造工程により、上記の特定の粒度を保ちながら、特定の比表面積とリモネン吸収量をもつ粒状物を得ることできる。このため、上記のように粒径が大きくても、適切な比表面積を持つことができる。尚、本発明で用いられる酢酸セルロース粒子は、上記の一般的な酢酸セルロースの製造における沈殿工程を経ることにより製造できるものであり、特別な加工を必要としない。後述の通り、一般的に市販されている酢酸セルロースから粒度を選別して使用することで得られる。
【0032】
なお、キトサン塩は酢酸セルロース粒子の表面と細孔内に坦持されるものであるため、粒度に与える影響は小さく、酢酸セルロース粒子の粒度と複合体の粒度は実質的に同一と考えてよい。
【0033】
要件(b)
酢酸セルロース粒子の比表面積(実施例記載の方法により測定する)は、0.1〜1000m2/gであり、好ましくは1〜200m2/g、より好ましくは2〜50m2/g、よりよく好ましくは2〜20m2/gである。なお、上記の通り、酢酸セルロース粒子の場合、粒子表面に優先的にキトサン塩が被服するということは考えにくく、キトサン塩は酢酸セルロース粒子の表面と細孔内を被服するように坦持されるものであるためか、酢酸セルロース粒子と複合体の比表面積は殆ど変化がない。
【0034】
要件(c)
酢酸セルロース粒子の嵩比重(実施例記載の方法により測定する)は、0.1〜0.6であり、好ましくは0.2〜0.6、より好ましくは0.3〜0.5である。
【0035】
要件(d)
酢酸セルロース粒子のリモネン吸収量(実施例記載の方法により測定する)は1〜60%であり、好ましくは10〜50%、より好ましくは20〜40%、特に好ましくは20〜30%、より良く好ましくは20〜25%である。
【0036】
酢酸セルロース粒子の酢化度は、43〜62%の範囲内であればよいが、好ましくは50〜58%のものである。
【0037】
複合体中の酢酸セルロース粒子の含有割合は80〜99.5質量%が好ましく、より好ましくは85〜98質量%、さらに好ましくは90〜95質量%であり、キトサン塩(キトサン量に換算して)の含有割合は0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜10質量%、さらに好ましくは0.5〜5質量%、特に好ましくは0.5〜2.0質量%であり、水を含んでいる。
キトサン塩の含有割合が大きくなると酢酸セルロースの細孔を閉塞するためかホルムアルデヒド低減率が低下する傾向がある。逆にキトサン塩の含有割合が少なくなるとホルムアルデヒド低減効果を有するキトサン塩の量が少なくなり、全ての細孔にキトサン塩が行き渡らないためホルムアルデヒド低減率がやはり低下する。
【0038】
水銀圧入法累計細孔容積もホルムアルデヒド低減率に深く関連しており、水銀圧入法累計細孔容積が0.3ml/gよりも大きいものであればホルムアルデヒド類低減効果が大きく、好適な範囲としては0.3〜0.7ml/gである。
【0039】
複合体は上記の通り水を含んでおり、水の含有割合としては2〜10質量%であり、好ましくは3〜9質量%、特に好ましくは4〜7質量%、よりよく好ましくは4〜6質量%である。水の含有割合が大きくなると、水が空気中の黴などの微生物の影響を受けて異臭が発生する可能性がある。また少なくする場合は乾燥工程の負荷が多大となる。
【0040】
粒状組成物中には、例えばたばこフィルタに添加するその他の成分を含有することができるが、グリセリンのような保湿剤は含有していない。本発明においては、保湿剤を含有しなくても特定の比表面積とリモネン吸収量を有する酢酸セルロース粒子にキトサンが担持させることで、ホルムアルデヒド類を効率良く吸収する。その他の成分としては、例えば、特許第2709077号公報、特許第3112468号公報、特開平11−178562号公報に記載された公知の各種香料を挙げることができる。
【0041】
<粒状組成物の製造方法>
(1)第1の製造方法
以下における各工程は、別々の工程として実施してもよいし、2つ以上の工程を1つの工程として実施してもよい。
【0042】
最初の工程にて、キトサンを対応する酸(例えば乳酸)の水溶液に溶解し、キトサン塩水溶液を得る。キトサン塩は、キトサン自体が水不溶性であるため、水溶性にするために塩にしたものである。
例えば、キトサンXgを精製水Ygに添加、攪拌して分散させ、そこへ50質量%乳酸水溶液Xgを滴下し、攪拌することでキトサンを溶解させ、キトサン乳酸塩のZ質量%(Z質量%={1.5X/(2X+Y)}×100)水溶液を得る。更に、調製した上記キトサン乳酸塩Z質量%水溶液に水を添加し、必要に応じて濃度調製を行うことも好ましい方法である。
【0043】
本発明で用いるキトサンは、下記の要件を満たすものが好ましい。
脱アセチル化度70%以上のもの、より好ましくは脱アセチル化度80%以上のもの。
酢酸1質量%水溶液の20℃における水溶液粘度をB型粘度計(回転数30r/m、ローターNo.1)で測定したときの値が3〜100mPa・sのもの。
【0044】
本発明で用いる酸は、食品添加物公定書に収載されている有機酸が好ましいが、臭いが無いので乳酸が好適である。
【0045】
キトサン塩水溶液の濃度は0.5〜15質量%が好ましい。次工程にて浸漬するとき又は噴霧するときは、添加する酢酸セルロース粒子が完全に浸漬できるように又は噴霧できるように、水溶液の濃度を調整することが好ましい。
【0046】
次の工程にて、キトサン塩水溶液に酢酸セルロース粒子を浸漬する。なお、酸の水溶液に対してキトサンと酢酸セルロース粒子を同時に添加することで、2つの工程を1つにすることもできる。
【0047】
この工程では、酢酸セルロース粒子とキトサン塩(キトサン量に換算して)が上記の含有割合になるように両成分の量を調整する。
【0048】
浸漬は、キトサン塩水溶液に酢酸セルロース粒子が完全に浸漬された状態にて、室温(20〜30℃)で1〜60分間放置するか、必要に応じて撹拌することもできる。その際に、減圧脱泡してもよい。
噴霧は、キトサン塩水溶液と酢酸セルロース粒子が充分に接触できるようにすればよく、噴霧後にそのまま次の乾燥工程に移行することもできる。
【0049】
次の工程にて、キトサン塩が坦持された酢酸セルロースを取り出した後、減圧乾燥して複合体を得る。
【0050】
減圧乾燥は、圧力−40kPa以下、好ましくは−80kPa以下で、複合体中の含水率が10質量%以下、好ましくは5質量%以下になるまで行う。乾燥時の温度は、常温〜80℃が好ましく、40〜60℃がより好ましい。
【0051】
上記の通り減圧乾燥するのは、高温で乾燥することを避けるためである。本発明の複合体の製造方法において、高温で熱風乾燥した場合にはキトサン塩の性状が変化するためかホルムアルデヒド低減率が低下する。この減少は水の沸点を大きく超えるような温度で行われた場合に特に顕著となる。水は大きな潜熱を有しているため、乾燥するためには工業的には高温にすることで潜熱を超える熱エネルギーを物質に加えることで乾燥する。このため、熱媒の温度にもよるが、工業的な乾燥では150℃程度の温度で乾燥される場合が多い。
【0052】
このような高温で乾燥した場合には、本発明の目的を奏しないが、水の沸点に近い温度(105℃)までの温度で熱風乾燥した場合には、水の潜熱のため複合体の実温度は100℃未満となるため本発明の目的を奏する場合もある。しかしながら、このような温度で熱風乾燥した場合では、上記の減圧乾燥で得られたものよりもホルムアルデヒド吸着性が劣るものとなる。
【0053】
(2)第2の製造方法
第2の製造方法では、キトサンを対応する酸の水溶液に溶解させてキトサン塩水溶液を得る工程は、第1の製造方法と同じである。
【0054】
第2の製造方法では、キトサン塩水溶液にアルカリを添加する方法と、アルカリを添加しない方法のいずれか選択することができる。アルカリを添加しないときは、乾燥方法を除いて、第1の製造方法と同じである。
【0055】
キトサン塩水溶液にアルカリを添加するときには、公知のアルカリが使用され、特に限定は無く、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが好ましい。アルカリ添加後のpHは4〜9が好ましく、7.5〜8.5がより好ましい。アルカリを添加して加熱乾燥したとき、粒状組成物のホルムアルデヒドの選択的吸着性能を損なうことなく生産性を高めることができるので好ましい。
【0056】
次の工程にて、アルカリ添加のキトサン塩水溶液、又はアルカリ無添加のキトサン塩水溶液に酢酸セルロース粒子を浸漬する。尚、キトサン塩水溶液にアルカリを加える工程では、事前に当該キトサン塩水溶液に酢酸セルロース粒子を浸漬しておき、これにアルカリを加えてpHを調整してもよい。これらの工程は、第1の製造方法と同じように浸漬する。また、第1の製造方法と同様にして噴霧することもできる。
【0057】
次の工程にて、キトサン塩が坦持された酢酸セルロースを取り出した後、加熱乾燥して複合体を得る。
加熱乾燥は、温度40〜150℃、好ましくは60〜120℃で、複合体中の含水率が10質量%以下、好ましくは5質量%以下になるまで行う。乾燥は、常圧で、熱風を吹き付ける方法、所定の温度雰囲気に放置する方法等を適用することができる。
【0058】
上記の第1の製造方法又は第2の製造方法を適用して得た複合体は、担体となる酢酸セルロース粒子の表面および主にはそれが有する細孔内にキトサン塩が坦持されたものである。
【0059】
本発明の粒状組成物は、上記の第1の製造方法又は第2の製造方法を適用して得た複合体のみからなるものでもよいし、さらに香料等の他の成分を含有させたものでもよい。香料を含有させる場合には、複合体の製造途中にて含有させてもよいが、乾燥工程後に含有させることが好ましい。
【0060】
本発明の粒状組成物は、アルデヒド類、特にホルムアルデヒドを選択的に吸着することができる。この吸着作用は、グリセリン等の保湿剤を含有すると返って低下する。
【0061】
<たばこフィルタとたばこ>
本発明のたばこフィルタは、上記の粒状組成物を含むものであり、フィルタトウ中に粒状組成物が分散されたものでもよいし、たばこフィルタの一部に粒状組成物からなる層が形成されたものでもよい。なお、たばこフィルタは、本発明の課題を解決するためには、グリセリン等の保湿剤を含有させる必要はない。
本発明のたばこは、上記のたばこフィルタを備えたもので、アルデヒド類、特にホルムアルデヒドに対する選択吸着性が優れている。
【実施例】
【0062】
表1に示す各項目の測定方法は以下のとおりである。
【0063】
(a)90質量%以上の量の粒度
粒度の測定は、株式会社伊藤製作所製電磁振動式ふるい分器MS−200を用いて、振幅2mm、時間2分で行った。
【0064】
(b)比表面積
BET法(窒素ガス使用)にて求めた。
【0065】
(c)嵩比重
嵩比重(ρ)は、あらかじめ質量(Wg)を測定した試料約150ml程度を300mlのメスシリンダーに充填し、実験台上に水平に敷いた厚さ1mmのゴムシートの上に置く。次に、前記メスシリンダーの底をできるだけ水平に保った状態で、約10mmの高さからおおむね垂直に10回自由落下させた後、メスシリンダーのメモリで正確な容積(Vml)を測定し、次式により計算した。
ρ=W/V
【0066】
(d)リモネン吸収量(質量%)
三角フラスコに粒状の酢酸セルロース10gを入れ、そこにD-リモネン(和光純薬試薬1級)を添加したとき、粒状の酢酸セルロースが吸収し切れずに、フラスコがD-リモネンで濡れ始めるまでの添加量(xg)を測定(室温22℃で測定)し、x/(10+x)×100で求めた。
【0067】
(酢化度)
酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテートなどの試験方法)の酢化度の測定法に準じて測定した。
まず、乾燥した酢酸セルロース1.9gを精秤し、アセトンとジメチルスルホキシドとの混合溶媒(容量比4:1)150mlに溶解した後、1N−水酸化ナトリウム水溶液30mlを添加し、25℃で2時間ケン化する。次に、フェノールフタレイン溶液を指示薬として添加し、1N−硫酸で過剰の水酸化ナトリウムを滴定した後、下記式にしたがって酢化度を算出する。なお、同様の方法により、ブランク試験を行う。
酢化度(%)=〔6.005×(B−A)×F〕/W
(式中、Aは試料の滴定に要した1N−硫酸のml数、Bはブランク試験の滴定に要した1N−硫酸のml数、Fは1N−硫酸の濃度ファクター、Wは試料重量を示す)。
【0068】
(たばこサンプルの作製)
市販の煙草[ピース・ライト・ボックス(登録商標第2122839号)(日本たばこ産業株式会社製)]のセルロースジアセテート捲縮繊維トウのフィルタ本体(25mm)の末端から14mmの部分をカミソリで切断した。長片(すなわち、タバコ葉充填片)側のフィルタ部にガラス管(長さ20mm,内径8mm)を、長片の残存フィルタ長に相当する長さ(11mm)だけ(タバコ葉充填の端部まで)挿入し、これらをシーリングテープにて結束した。
【0069】
このガラス管の挿入によって突出した長さ9mmのガラス管の空間に、評価対象の粒状組成物を100mg充填した。次に先に切断した短片(すなわち、長さ14mmのフィルタ部)を用いてガラス管の開放端に栓をした。そして、このガラス管とフィルタの接続部分にもシーリングテープを巻いて密閉し、喫煙試験用のたばこサンプルを得た。従って、セルロースジアセテート捲縮繊維トウのフィルタの長さは25mmとなる。また、フィルタ間の延長された部分には、煙草一本当たり100mgの粒状組成物が充填されている。
【0070】
また、粒状組成物を充填しない以外は、上記たばこサンプルの作製と同様にして、対照となるたばこサンプルを得た。
【0071】
これらのたばこサンプルの喫煙実験を実施して、ホルムアルデヒドの保持率、ニコチン保持率及びタール保持率を評価した。
【0072】
(ニコチン保持率、タール保持率)
たばこサンプルを用い、ピストンタイプの定容量型自動喫煙器(ボルグワルド社製RM20/CS)により、流量17.5ml/秒で喫煙時間2秒/回、喫煙頻度1回/分の条件で喫煙を行った。たばこサンプルを通過した煙中のニコチン及びタールはガラス繊維製フィルタ(ケンブリッジフィルタ)で捕集し、ニコチン量はガスクロマトグラフ((株)日立製作所製G−3000)を用いて測定した。タール量は重量法により測定を行った。
【0073】
対照のたばこサンプルのケンブリッジフィルタに付着したニコチン及びタール量をTn、Ttとし、比較例及び実施例でケンブリッジフィルタに付着したニコチン量及びタール量をCn、Ctとして次式によりニコチン及びタールの保持率を算出した。
ニコチン保持率(%)=100×Cn/Tn
タール保持率(%)=100×Ct/Tt
【0074】
(ホルムアルデヒド保持率)
たばこサンプルを用い、ピストンタイプの定容量型自動喫煙器(ボルグワルド社製RM20/CS)により、流量17.5ml/秒で喫煙時間2秒/回、喫煙頻度1回/分の条件で喫煙を行った。たばこサンプルを通過した煙中のホルムアルデヒドは、DNPH(ジニトロフェニルヒドラジン)溶液で捕集し、DNPHで誘導体化した上でガスクロマトグラフ((株)日立製作所製G−3000)を用いてUV(紫外線)の吸光度を用い測定した。
【0075】
対照のたばこで捕集されたホルムアルデヒド量Tfとし、下記の比較例及び実施例で捕集したホルムアルデヒド量をCfとして次式によりホルムアルデヒド保持率を算出した。ホルムアルデヒドの保持率は、小さい方がホルムアルデヒドの吸着性能が優れていることを示している。
ホルムアルデヒド保持率(%)=100×Cf/Tf
【0076】
製造例1(酢酸セルロース粒子の製造)
ダイセル化学工業社製の酢酸セルロースL−40を、目開き(JIS Z 8801−1 2006)1.0mmと0.425mmの篩を用いて分級し、粒度が1.0〜0.425mmの範囲(但し、目開き1.0mmの篩を通過するが、0.425mmの篩は通過しない)の酢酸セルロース粒子Aを得た。
【0077】
また、ダイセル化学工業社製の酢酸セルロースL−40、LT−55、LM−80及びLL−10を、目開き(JIS Z 8801−1 2006)1.0mmと0.18mmの篩を用いて分級し、粒度が1.0〜0.18mmの範囲(但し、目開き1.0mmの篩を通過するが、0.18mmの篩は通過しない)の酢酸セルロース粒子B、C、D及びEを得た。
【0078】
製造例2
(キトサンの乳酸塩水溶液の調製)
キトサン(大日精化工業社製:商品名ダイキトサンVL 脱アセチル化度83%、粘度7mP・s)10gを精製水80gに添加、攪拌して分散させた。そこへ50質量%乳酸水溶液(武蔵野化学研究所社製)10gを滴下し、攪拌することでキトサンを溶解させ、キトサン乳酸塩(15%)水溶液100gを得た。
上記にて調製した水溶液に基づき、実施例1〜13及び比較例1〜4にて使用するキトサン乳酸塩各濃度の水溶液を調整した。
【0079】
実施例1〜5、比較例1〜3
表1に示す濃度のキトサンの乳酸塩水溶液50ml中に、表1に示す(a)〜(d)、酢化度を有する酢酸セルロース粒子Aの5gを室温(20〜25℃)で浸漬した。なお、比較例1〜3は、酢酸セルロース粒子の浸漬前において、キトサンの乳酸塩水溶液中にグリセリンを添加した。
【0080】
その後、その状態で5分間放置した後、キトサン乳酸塩が坦持された酢酸セルロース粒子を取り出した。
【0081】
その後、60℃で−84kPaの減圧雰囲気にて240分間乾燥して、本発明の複合体(粒状組成物)を得た。ホルムアルデヒド保持率の試験結果を表1に示す。
【表1】

【0082】
図1は、実施例1で得られた複合体のSEM写真である。0.1μm〜数μm程度の細孔が多数存在していることが確認できる。また、キトサン塩粒子は認められないため、キトサン塩は皮膜を形成した状態で、酢酸セルロース粒子の表面および細孔に坦持されているものと考えられる。
【0083】
SEM写真は、粒状組成物をカミソリで切断し断面を出し、白金蒸着して、SEM観察に供した。代表的な断面を10000倍で、断面に見られる亀裂部分を5000倍で、それぞれ2箇所づつ観察した。10000倍の写真で、黒っぽく写っている部分が空孔に相当する。空孔の表面に粒子状物は観測されてないので、キトサン乳酸塩は皮膜を形成していると推定された。
【0084】
実施例6、比較例4
キトサンの乳酸塩の3.0質量%水溶液50ml中に、表2に示す(a)〜(d)、酢化度を有する酢酸セルロース粒子Aの5gを室温(20〜25℃)で浸漬した。なお、比較例4は、酢酸セルロース粒子の浸漬前において、キトサンの乳酸塩水溶液中にグリセリンを添加した。
【0085】
その後、その状態で5分間放置した後、キトサン乳酸塩が坦持された酢酸セルロース粒子を取り出した。
【0086】
その後、105℃で100分間熱風乾燥して、本発明の複合体(粒状組成物)を得た。ホルムアルデヒド保持率の試験結果を表2に示す。
【0087】
【表2】

【0088】
実施例7〜9
実施例7は、実施例6と同様にして複合体を製造した。実施例8は、キトサンの乳酸塩水溶液のpHを調製したほかは、実施例6と同様にして複合体を製造した。また実施例9は、キトサン塩水溶液にアルカリを加える工程で、事前にキトサン塩水溶液に酢酸セルロース粒子を浸漬しておき、これにアルカリを加えてpHを調整したほかは、実施例6と同様にして複合体を製造した。比較のため、実施例1、6の複合体と共に、ホルムアルデヒド保持率の試験結果を表3に示す。
【表3】

【0089】
実施例10〜13
表4に示す濃度のキトサンの乳酸塩水溶液50ml中に、表4に示す(a)〜(d)、酢化度を有する酢酸セルロース粒子B、C、D及びEのそれぞれ5gを室温(20〜25℃)で浸漬した。その後、その状態で5分間放置した後、キトサン乳酸塩が坦持された酢酸セルロース粒子を取り出した。
【0090】
その後、60℃で−84kPaの減圧雰囲気にて240分間乾燥して、本発明の複合体(粒状組成物)を得た。ホルムアルデヒド保持率、ニコチン保持率及びタール保持率の試験結果を表4に示す。
【0091】
また、実施例10〜13の粒状組成物について、下記の水銀圧入法で測定した累積細孔容積も合わせて表4に示す。
(水銀圧入法による細孔径分布の測定)
測定装置:全自動細孔分布測定装置
PoreMaster 60-GT(QuantaChromeCo.)
試料前処理 :なし
サンプル量 :約0.3〜0.5g
サンプルセル:スモールセル(10Φ×30mm,0.5sec)
測定レンジ :高域
測定範囲 :細孔直径0.0036μm〜10μm
計算範囲 :細孔直径0.0036μm〜10μm
水銀接触角 :140deg
水銀表面張力:480dyn/cm
測定セル容積:0.5sec
【0092】
【表4】

【0093】
この結果から、これらの粒状組成物は、たばこ主流煙中のニコチン保持率及びタール保持率を90%以上に保ったまま、ホルムアルデヒドを低減できることがわかる。
【0094】
図2は、実施例10〜13で得られた粒状組成物の原料とした酢酸セルロース粒子の吸油量(リモネン吸収量)とホルムアルデヒドの低減率(100−ホルムアルデヒドの保持率)との関係を示したグラフである。リモネン吸収量の増加により、ホルムアルデヒドの低減効果が増加していることが確認された。
【0095】
実施例14
更に、高脱アセチル化度のキトサンを使用し、実施例3の方法同様に試験を行った。キトサン(大日精化工業社製:商品名ダイキトサン100D,脱アセチル化度98%、粘度50mP・s)2gを精製水96gに添加、攪拌して分散させた。そこへ50質量%乳酸水溶液(武蔵野化学研究所社製)2gを滴下し、攪拌することでキトサンを溶解させ、キトサン乳酸塩(3%)水溶液100gを得た。得られたキトサン水溶液に基づき、実施例3同様にホルムアルデヒド保持率の試験を実施した結果、60%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
要件(a)〜(d)を満たす、酢酸セルロース粒子にキトサン塩が坦持された複合体を含む粒状組成物。
(a)酢酸セルロース粒子の粒度:1.7〜0.1mm
(b)酢酸セルロース粒子の比表面積が0.1〜1000m2/g
(c)酢酸セルロース粒子の嵩比重が0.1〜0.6
(d)酢酸セルロース粒子のリモネン吸収量が1〜60%
【請求項2】
前記複合体が、酢酸セルロース粒子80〜99.5質量%、キトサン塩(キトサン量に換算して)0.1〜20質量%及び水を含有するものである、請求項1記載の粒状組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の粒状組成物の製造方法であって、
キトサン塩を水に溶解させてキトサン塩水溶液を得る工程、
キトサン塩水溶液に酢酸セルロース粒子を浸漬又はキトサン塩水溶液を酢酸セルロース粒子に噴霧する工程、
酢酸セルロースを取り出した後、減圧乾燥して複合体を得る工程を有する、粒状組成物の製造方法。
【請求項4】
減圧乾燥工程が、圧力−40kPa〜−80kPaで、含水率が10質量%以下になるまで乾燥する工程である、請求項3記載の粒状組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載の粒状組成物の製造方法であって、
キトサン塩を水に溶解させてキトサン塩水溶液を得る工程、
必要に応じてキトサン塩水溶液にアルカリを添加する工程、
キトサン塩水溶液に酢酸セルロース粒子を浸漬又はキトサン塩水溶液を酢酸セルロース粒子に噴霧する工程、
酢酸セルロースを取り出した後、加熱乾燥して複合体を得る工程を有する、粒状組成物の製造方法。
【請求項6】
加熱乾燥工程が、温度60〜150℃で、含水率が10質量%以下になるまで乾燥する工程である、請求項5記載の粒状組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2記載の粒状組成物を含有するたばこフィルタ。
【請求項8】
請求項7記載のたばこフィルタを備えたたばこ。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−177698(P2011−177698A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47491(P2010−47491)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】