説明

キノリン化合物の製造方法

一般式(II)で示されるキノリンカルバルデヒドを一般式(III)で示されるイミン化合物と反応させ、次いで加水分解することを特徴とする一般式(I)で示されるキノリン化合物の製造方法によって、医薬、農薬などの合成中間体として有用なキノリン化合物を、工業的に入手容易で、かつ取り扱いの容易な原料を用い、短工程で効率よく工業的に有利に製造することができる。


(式中、R、R、R、R、R、RおよびRは明細書に記載のとおりである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、後記一般式(I)で示されるキノリン化合物の製造方法に関する。本発明で得られるキノリン化合物は医薬・農薬などの合成中間体として有用であり、例えば(E)−3−(4’−(4”−フルオロフェニル)−2’−シクロプロピルキノリン−3’−イル)プロペンアルデヒドは、コレステロール生合成の律速酵素であるHMG−CoA還元酵素の阻害剤として知られるキノリン系化合物の合成中間体である。
【背景技術】
従来、キノリン化合物、例えば(E)−3−(4’−(4”−フルオロフェニル)−2’−シクロプロピルキノリン−3’−イル)プロペンアルデヒドの製造方法としては、(1)テトラヒドロフラン中でシス−1−エトキシ−2−(トリ−n−ブチルスタニル)エチレンにブチルリチウムを作用させ、次いで−60〜−78℃で4−(4’−フルオロフェニル)−2−シクロプロピルキノリン−3−カルバルデヒドと反応させ、得られたビニルエーテル体を酸触媒の存在下で加水分解する方法(特開平1−279866号公報参照)、(2)4−(4’−フルオロフェニル)−2−シクロプロピルキノリン−3−カルバルデヒドにアルコキシカルボニルメチルホスホネートを反応させて相当するα,β−不飽和カルボン酸エステルを得、次いでこの化合物のエステル部分を例えばジイソブチルアルミニウムヒドリドなどの金属水素化物を用いて還元してアルコールに変換した後、活性二酸化マンガンなどの酸化剤を用いて酸化する方法(特開平1−279866号公報参照)、および(3)4−(4’−フルオロフェニル)−2−シクロプロピルキノリン−3−カルバルデヒドにtert−ブチルリチウムの存在下、(1,3−ジオキソラン−2−イルメチル)トリフェニルホスホニウムブロミドまたはジエチルホスホノアセトアルデヒドジエチルアセタールを反応させて相当するα,β−不飽和アルデヒドアセタールを得、次いで該化合物のアセタール部分を加水分解する方法(特開2001−316369号公報参照)が知られている。
しかるに、上記の方法(1)は、用いる有機スズ化合物が工業的に入手困難である上、−60〜−78℃という極低温で反応を行わなければならず、特殊な反応設備を必要とする。上記の方法(2)は、エステル部分を還元する際に用いる金属水素化物の取り扱いが困難である。また、上記の方法(2)および方法(3)は目的物を得るために多数の工程を経る必要がある。したがって、これらの方法はいずれも、(E)−3−(4’−(4”−フルオロフェニル)−2’−シクロプロピルキノリン−3’−イル)プロペンアルデヒドなどのキノリン化合物の工業的に有利な製造方法とは言い難い。
しかして、本発明の目的は、キノリン化合物を、工業的に入手容易で、かつ取り扱いの容易な原料を用い、短工程で、効率よく工業的に有利に製造し得る方法を提供することにある。
【発明の開示】
本発明によれば上記の目的は、一般式(II)

(式中、R、R、R、R、RおよびRはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基または置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。)
で示されるキノリンカルバルデヒド[以下、これをキノリンカルバルデヒド(II)と称する]を一般式(III)

(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基を表す。)
で示されるイミン化合物[以下、これをイミン化合物(III)と称する]と反応させ、次いで加水分解することを特徴とする一般式(I)

(式中、R、R、R、R、RおよびRは前記定義のとおりである。)
で示されるキノリン化合物[本明細書中、キノリン化合物(I)と略記する場合もある]の製造方法を提供することにより達成される。
好ましい実施態様において、上記したR、R、RおよびRが水素原子であり、Rがハロゲン原子であり、Rが炭素数1〜6のアルキル基である。
より好ましい実施態様において、上記したR、R、RおよびRが水素原子であり、Rがフッ素原子であり、Rが炭素数1〜6のアルキル基である。
さらに好ましい実施態様において、上記したR、R、RおよびRが水素原子であり、Rがフッ素原子であり、Rがイソプロピル基またはシクロプロピル基である。
【発明を実施するための最良の形態】
本明細書において、R、R、R、R、RおよびRがそれぞれ表すハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、これらの中でもフッ素原子が好ましい。
、R、R、R、RおよびRがそれぞれ表す水酸基は保護されていてもよく、水酸基の保護基としては、水酸基を保護する目的のために通常用いられる保護基であれば特に制限はなく、例えばベンジル基などのアラルキル基;トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基などの三置換シリル基;メトキシメチル基、1−エトキシエチル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基などのエーテル型保護基などが挙げられる。
、R、R、R、R、RおよびRがそれぞれ表すアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状または環状のいずれでもよい。好ましくは炭素数1〜6の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。これらのアルキル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えば水酸基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの好ましくは炭素数1〜4のアルコキシル基;フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基などの置換基を有していてもよい好ましくは炭素数6〜10のアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。
、R、R、R、RおよびRがそれぞれ表すアリール基としては、好ましくは炭素数6〜10のアリール基、例えばフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
、R、R、R、RおよびRがそれぞれ表すアラルキル基としては、アルキル部分として好ましくは炭素数1〜6のアルキル基を有し、アリール部分として好ましくは炭素数6〜10のアリール基を有するアラルキル基が挙げられ、例えばベンジル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。これらのアリール基およびアラルキル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えば水酸基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などの好ましくは炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの好ましくは炭素数1〜4のアルコキシル基;フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基などの置換基を有していてもよい好ましくは炭素数6〜10のアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。
、R、R、R、RおよびRがそれぞれ表すアルコキシル基としては、好ましくは炭素数1〜4の直鎖状または分岐鎖状のアルコキシル基が挙げられ、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。これらのアルコキシル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えば水酸基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの好ましくは炭素数1〜4のアルコキシル基;フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基などの置換基を有していてもよい好ましくは炭素数6〜10のアリール基などが挙げられる。
、R、R、R、RおよびRがそれぞれ表すアリールオキシ基としては、アリール部分として好ましくは炭素数6〜10のアリール基を有するアリールオキシ基、例えばフェノキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。これらのアリールオキシ基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えば水酸基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などの好ましくは炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの好ましくは炭素数1〜4のアルコキシル基;フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基などの置換基を有していてもよい好ましくは炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。
キノリンカルバルデヒド(II)およびキノリン化合物(I)として、好ましくは、R、R、RおよびRが水素原子であり、Rがハロゲン原子であり、Rが炭素数1〜6のアルキル基である化合物が挙げられる。
キノリンカルバルデヒド(II)およびキノリン化合物(I)として、より好ましくはR、R、RおよびRが水素原子であり、Rがフッ素原子であり、Rが炭素数1〜6のアルキル基である化合物が挙げられる。
キノリンカルバルデヒド(II)およびキノリン化合物(I)として、さらに好ましくはR、R、RおよびRが水素原子であり、Rがフッ素原子であり、Rがイソプロピル基またはシクロプロピル基である化合物が挙げられる。
イミン化合物(III)として、好ましくはRがエチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基である化合物が挙げられる。
イミン化合物(III)として、より好ましくはRがイソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基である化合物が挙げられる。
本発明のキノリン化合物(I)の製造方法は、キノリンカルバルデヒド(II)をイミン化合物(III)と反応させ、次いで加水分解することによって行われる。
本発明の方法では、工業的に入手容易で、かつ取り扱いの容易な原料を用い、短工程で、効率よくキノリン化合物(I)を工業的に有利に製造することができる。
まず、キノリンカルバルデヒド(II)をイミン化合物(III)と反応させる工程[以下、工程1と称する]について説明する。
工程1においては塩基を存在させることが好ましく、塩基としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物;メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、フェニルリチウムなどの有機リチウム化合物;メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミドなどのアルキルマグネシウムハライド;リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジ(イソプロピル)アミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド、ブロモマグネシウムジ(イソプロピル)アミドなどの金属アミド;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシドなどの金属アルコキシドなどが挙げられる。これらの中でも、入手性、取り扱い易さ、反応性などの観点から、水素化ナトリウム、n−ブチルリチウム、リチウムジ(イソプロピル)アミドを使用するのが好ましい。塩基の使用量は、キノリンカルバルデヒド(II)に対して0.1〜10モル倍の範囲であることが好ましく、後処理の容易さ、経済性などの観点から0.1〜5モル倍の範囲であることがより好ましい。
工程1において使用するイミン化合物(III)としては、例えば、エチリデンイソプロピルアミン、エチリデンn−ブチルアミン、エチリデンイソブチルアミン、エチリデンtert−ブチルアミン、エチリデンシクロヘキシルアミンなどが挙げられる。イミン化合物(III)の使用量は、キノリンカルバルデヒド(II)に対して1.0〜10モル倍の範囲であることが好ましく、後処理の容易さ、経済性の観点から1.0〜5モル倍の範囲であることがより好ましい。
工程1は、溶媒の存在下に行うのが好ましい。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない限り特に制限はなく、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノールなどのアルコール;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;ベンゾニトリルなどのニトリル;ピリジンなどの含窒素芳香族化合物;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどのアミドなどが挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、取り扱い易さ、入手性、反応性などの観点から、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフランが好ましい。溶媒の使用量は、キノリンカルバルデヒド(II)に対して、1〜50質量倍の範囲であるのが好ましく、経済性の観点などから、1〜10質量倍の範囲であるのがより好ましい。
工程1の反応温度は、使用するキノリンカルバルデヒド(II)の種類、イミン化合物(III)の種類、塩基の種類、溶媒の種類などにより異なるが、通常、−100〜130℃の範囲であることが好ましく、−30〜100℃の範囲であることがより好ましい。
工程1の反応時間は、反応温度などによっても異なるが、通常、0.1〜24時間の範囲であることが好ましい。反応は、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスの雰囲気下に実施することが好ましい。
工程1の操作手法に特に制限はなく、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスの雰囲気下に、キノリンカルバルデヒド(II)、イミン化合物(III)および溶媒の混合物中に塩基を添加する方法、塩基中にキノリンカルバルデヒド(II)、イミン化合物(III)および溶媒の混合物を添加する方法、キノリンカルバルデヒド(II)、塩基および溶媒の混合物中にイミン化合物(III)を添加する方法、キノリンカルバルデヒド(II)および溶媒の混合物中にイミン化合物(III)と塩基を別々に同時に添加する方法、イミン化合物(III)および塩基の混合物をキノリンカルバルデヒド(II)および溶媒の混合物中に添加する方法などにより行うことができる。工程1の反応の停止は反応系内に水を添加することなどにより行うことができる。工程1の反応は、回分式、連続式のいずれでも行うことができる。
なお、工程1において使用するイミン化合物(III)、例えばエチリデンtert−ブチルアミンは、tert−ブチルアミンとアセトアルデヒドを反応させることによって容易に製造することができる(米国特許第2582128号明細書参照)。
工程1により得られた反応混合物は、通常の有機化合物の単離・精製に用いられる方法により単離・精製することができるが、本発明では該反応混合物をそのまま以下に述べる次工程に供する。
次に、工程1で得られた反応混合物を、加水分解することによりキノリン化合物(I)を得る工程[以下、工程2と称する]について説明する。
工程2は、水を含む溶媒中で、例えば、酸を作用させる一般的な加水分解条件を適用することができる。水の使用量に特に制限はないが、通常、工程1で用いるキノリンカルバルデヒド(II)に対して1モル倍以上であることが好ましく、1〜1000モル倍の範囲であることがより好ましい。
工程2において酸を使用する場合、その酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸などの鉱酸;酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの有機酸またはその水和物もしくはその塩などが挙げられる。酸の使用最に特に制限はないが、通常、工程1で原料として用いるキノリンカルバルデヒド(II)の使用量に対して0.01〜5モル倍の範囲であることが好ましい。
工程2において使用する溶媒は工程1において使用したものと同じ溶媒を使用することができる。溶媒の使用量は、工程1で原料として用いるキノリンカルバルデヒド(II)に対して、1〜50質量倍の範囲であることが好ましく、経済性の観点などから、1〜10質量倍の範囲であることがより好ましい。
工程2の反応温度は、使用する酸の種類、溶媒の種類などにより異なるが、通常、0〜100℃の範囲であることが好ましい。また、反応時間は、反応温度によっても異なるが、通常、1〜24時間の範囲であることが好ましい。
工程2の操作手法に特に制限はなく、例えば、工程1において得られた反応混合物、水、酸および溶媒を混合し、所定温度にて攪拌することにより行うことができる。工程2の反応は、回分式、連続式のいずれでも行うことができる。
このようにして得られたキノリン化合物(I)は、通常の有機化合物の単離・精製に用いられる方法により単離・精製することができる。例えば、反応終了後の反応液に、必要に応じて炭酸水素ナトリウム水溶液、ナトリウムメトキシドなどの塩基を加えて酸を中和した後、ジエチルエーテル、酢酸エチル、塩化メチレンなどの有機溶媒で抽出し、有機層を濃縮して得られる粗生成物を、そのままキノリン系化合物などの医薬品の合成中間体として使用することができる。また、必要に応じて、該粗生成物を、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどにより、さらにその純度を高めることができる。
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
参考例1
温度計、滴下ロートおよび磁気攪拌装置を備えた内容量500mlの三つ口フラスコにtert−ブチルアミン166.0g(2.27mol)を入れ、2℃に冷却した後、滴下ロートよりアセトアルデヒド100.0g(2.27mol)を攪拌下に2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間攪拌し、次いで水酸化カリウム30.0g(0.53mol)を添加して30分間攪拌した後、静置し、有機層と水層を分離して得られた有機層に水酸化カリウム10.0g(0.18mol)を添加し、冷蔵庫中で15時間放置した。上層を分離し、常圧蒸留(沸点:77〜82℃)し、エチリデンtert−ブチルアミン182.3g(1.84mol、収率81.0%)を得た。
参考例2
温度計、滴下ロートおよび磁気攪拌装置を備えた内容量200mlの三つ口フラスコにシクロヘキシルアミン24.8g(250mmol)を入れ、2℃に冷却した後、滴下ロートよりアセトアルデヒド11.0g(250mmol)を攪拌下に2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間攪拌し、次いで、トルエン50mlを添加して30分間攪拌した後、静置し、有機層と水層を分離して得られた有機層を減圧蒸留(沸点:47〜48℃/1.6kPa)し、エチリデンシクロヘキシルアミン125.8g(206mmol、収率82.5%)を得た。
参考例3
温度計、滴下ロートおよび磁気攪拌装置を備えた内容量200mlの三つ口フラスコにn−ブチルアミン18.3g(250mmol)を入れ、2℃に冷却した後、滴下ロートよりアセトアルデヒド11.0g(250mmol)を攪拌下に2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間攪拌し、次いで、ジイソプロピルエーテル50mlを添加して30分間攪拌した後、静置し、有機層と水層を分離して得られた有機層を常圧蒸留(沸点:98〜105℃)し、エチリデンn−ブチルアミン20.0g(202mmol、収率80.7%)を得た。
【実施例1】
温度計、磁気攪拌装置および窒素風船を備えた内容量50mlの三つ口フラスコに、4−(4’−フルオロフェニル)−2−シクロプロピルキノリン−3−カルバルデヒド2.0g(6.9mmol)、エチリデンtert−ブチルアミン1.4g(14.1mmol)およびテトラヒドロフラン10mlを入れ、63℃に昇温した後、60質最%水素化ナトリウム0.44g(11.0mmol)を3時間かけて添加した。添加終了後、さらに8時間攪拌した。得られた反応混合液の一部を10質量%酢酸水溶液中にあけ、高速液体クロマトグラフィーによる内部標準法分析を行った結果、(E)−3−(4’−(4”−フルオロフェニル)−2’−シクロプロピルキノリン−3’−イル)プロペンアルデヒド1.5g(4.7mmol、収率68.0%)が生成していた。
融点:124−132℃
H−NMR(600MHz,CDCl,TMS,ppm)δ:1.08−1.13(2H,m),1.41−1.45(2H,m),2.32−2.38(1H,m),6.45(1H,dd,J=8,16Hz),7.22−7.25(4H,m),7.35−7.39(2H,m),7.56(1H,d,J=16Hz),7.67(1H,ddd,J=3,6,8Hz),7.98(1H,d,J=8Hz),9.51(1H,d,J=8Hz)
【実施例2】
実施例1において、エチリデンtert−ブチルアミン1.4g(14.1mmol)に代えて、エチリデンシクロヘキシルアミン1.7g(13.8mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた反応混合液の一部を10質量%酢酸水溶液中にあけ、高速液体クロマトグラフィーによる内部標準法分析を行った結果、(E)−3−(4’−(4”−フルオロフェニル)−2’−シクロプロピルキノリン−3’−イル)プロペンアルデヒド1.7g(5.4mmol、収率78.3%)が生成していた。
【実施例3】
実施例1において、エチリデンtert−ブチルアミン1.4g(14.1mmol)に代えて、エチリデンn−ブチルアミン1.4g(14.1mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた反応混合液の一部を10質量%酢酸水溶液中にあけ、高速液体クロマトグラフィーによる内部標準法分析を行った結果、(E)−3−(4’−(4”−フルオロフェニル)−2’−シクロプロピルキノリン−3’−イル)プロペンアルデヒド1.3g(4.2mmol、収率60.3%)が生成していた。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、医薬・農薬などの合成中間体として有用なキノリン化合物、例えばコレステロール生合成の律速酵素であるHMG−CoA還元酵素の阻害剤として知られるキノリン系化合物の重要な合成中間体である(E)−3−(4’−(4”−フルオロフェニル)−2’−シクロプロピルキノリン−3’−イル)プロペンアルデヒドなどのキノリン化合物を、短工程で、効率よく工業的に有利に製造することができる。
本発明は、日本に出願された特願2003−102134を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(II)

(式中、R、R、R、R、RおよびRはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、保護されていてもよい水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基または置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。)
で示されるキノリンカルバルデヒドを一般式(III)

(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基を表す。)
で示されるイミン化合物と反応させ、次いで加水分解することを特徴とする一般式(I)

(式中、R、R、R、R、RおよびRは前記定義のとおりである。)
で示されるキノリン化合物の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/089907
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505176(P2005−505176)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002464
【国際出願日】平成16年3月1日(2004.3.1)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】