説明

キメラエンドヌクレアーゼおよびその使用

本発明は、エンドヌクレアーゼ、および1つもしくは複数のZn2C6ジンクフィンガーを含有する異種DNA結合ドメインを含むキメラエンドヌクレアーゼ、ならびにキメラエンドヌクレアーゼを用いたポリヌクレオチドの標的組み込み、標的欠失もしくは標的変異の方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドヌクレアーゼ、および1つもしくは複数のZn2C6ジンクフィンガーを有する異種DNA結合ドメインを含んでなるキメラエンドヌクレアーゼ、ならびにそうしたキメラエンドヌクレアーゼを用いたポリヌクレオチドの標的組み込み、標的欠失もしくは標的変異の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲノム工学は、ゲノム内で特定の遺伝子配列を挿入する、欠失させる、置換する、もしくは他に操作を行うさまざまな技術を総括する一般的用語であり、治療およびバイオテクノロジーに数多く応用される。あらゆるゲノム工学技術は、多かれ少なかれ、相同組み換えを進めるために、リコンビナーゼ、インテグラーゼ、または所定の部位でDNA二本鎖切断を引き起こすエンドヌクレアーゼを使用する。
【0003】
DNA二本鎖切断を引き起こすために非常に多くの方法が用いられてきたという事実にもかかわらず、ゲノム内の高度に特異的な部位でDNA二本鎖切断を生じさせる有効な手段を開発することは、依然として、遺伝子治療、農業科学技術、および合成生物学における主たる目標である。
【0004】
この目的を達成するための1つのアプローチは、ゲノム内で1カ所にしか存在しないほど大きな配列に特異性を有するヌクレアーゼを使用することである。このような約15から30ヌクレオチドの大きなDNA配列を認識するヌクレアーゼは、そのために「メガヌクレアーゼ」または「ホーミングエンドヌクレアーゼ」と呼ばれ、植物および真菌のゲノムによく見られるグループ1自己スプライシング型イントロンおよびインテインなどの、寄生的DNA要素と結びついていることが多い。メガヌクレアーゼは、通常4つのファミリーに分類される:LAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、His-Cys boxファミリーおよびHNH ファミリー。これらのファミリーは、構造モチーフに特徴があり、それが触媒活性およびそれらのDNA認識配列の配列に影響を及ぼす。
【0005】
LAGLIDADGファミリーの天然メガヌクレアーゼは、昆虫および哺乳動物細胞培養において、ならびに植物、酵母、もしくはマウスなどの多くの生物においても、部位特異的ゲノム修飾を効果的に促進するために使用されているが、このアプローチはDNA認識配列が保存されている相同遺伝子の改変、または認識配列が導入された操作済みゲノムに限定されている。こうした限定を回避して、DNA二本鎖切断で引き起こされる遺伝子改変の計画的な実施を推進するために、新しいタイプのヌクレアーゼが作製された。
【0006】
ある種の新規ヌクレアーゼは、非特異的ヌクレアーゼと特異性の高いDNA結合ドメインとの人工的な組み合わせで構成される。この戦略の有効性は、改変されたジンクフィンガーDNA結合ドメインとFokI制限酵素の非特異的ヌクレアーゼドメインとの間のキメラ融合を用いて、さまざまな生物で実証されている(たとえばWO03/089452)。このアプローチのバリエーションが、Lippow et al., “Creation of a type IIS restriction endonuclease with a long recognition sequence”, Nucleic Acid Research (2009), Vol.37, No.9, pp. 3061-3073に記載のように、メガヌクレアーゼの不活性バリアントを、FokIのような非特異的ヌクレアーゼと融合させるDNA結合ドメインとして使用することである。
【0007】
もう一つのアプローチは、天然メガヌクレアーゼのDNA結合領域を、ゲノム内に存在する部位に結合するようにカスタマイズするために、天然メガヌクレアーゼを遺伝子操作することであり、それによって新たな特異性を有する遺伝子操作されたメガヌクレアーゼを作製することである(たとえば、WO07093918、WO2008/093249、WO09114321)。しかしながら、DNA切断特異性に関して操作された多くのメガヌクレアーゼは、それらの由来する起源である天然に存在するメガヌクレアーゼと比べて切断活性が低下していた(US2010/0071083)。ほとんどのメガヌクレアーゼは、その最適な結合部位に類似した配列にも作用するが、そのことは、意図しない、または有害でさえあるオフターゲット効果をもたらす可能性がある。たとえば、改変ヌクレアーゼの細胞核への、ひいてはその標的部位への輸送を、デキサメタゾンもしくは類似化合物の添加によって促進または誘導するために、ヌクレアーゼをラットのグルココルチコイド受容体のリガンド結合ドメインと融合させることによって、メガヌクレアーゼによって引き起こされる相同組み換えの効率を高めるいくつかのアプローチがすでになされている(WO2007/135022)という事実にもかかわらず、当技術分野において、高い相同組み換え誘導率、および/またはその結合部位について高い特異性を有し、それによってオフターゲット効果のリスクを抑えるメガヌクレアーゼを開発する必要性はまだ残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第03/089452号パンフレット
【特許文献2】国際公開第07/093918号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2008/093249号パンフレット
【特許文献4】国際公開第09/114321号パンフレット
【特許文献5】米国特許出願第2010/0071083号明細書
【特許文献6】国際公開第2007/135022号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Lippow et al., “Creation of a type IIS restriction endonuclease with a long recognition sequence”, Nucleic Acid Research (2009), Vol.37, No.9, pp. 3061-3073
【発明の概要】
【0010】
本発明は、少なくとも1つのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼ、および少なくとも1つの異種DNA結合ドメインを含んでなるキメラエンドヌクレアーゼを提供するが、この異種DNA結合ドメインは1つもしくは複数のZn2C6ジンクフィンガーを含んでなる。好ましくは、キメラエンドヌクレアーゼは、配列番号1、2、3、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、161または165のいずれか1つに記載のポリペプチドに対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、少なくとも1つのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを含有する。配列番号1、2、または3に記載のポリペプチドに対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、少なくとも1つのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを含有することが好ましい。ある好ましい実施形態において、キメラエンドヌクレアーゼは、少なくとも1つのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを含んでなるが、これは操作された、もしくは最適化されたエンドヌクレアーゼ、または操作されたエンドヌクレアーゼの最適化された型のものであり、好ましくは最適化されたエンドヌクレアーゼ、または操作されたエンドヌクレアーゼの最適化された型のものである。もう1つの実施形態において、キメラエンドヌクレアーゼは、異種DNA結合ドメインを含んでなるが、これは、転写因子に由来する1つもしくは複数のZn2C6ジンクフィンガーを含んでなる。好ましい実施形態において、キメラエンドヌクレアーゼは、配列番号57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120または121のいずれか1つに記載のポリペプチドに対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する、少なくとも1つのポリペプチドを含んでなる、異種RNA結合ドメインを含有する。本明細書に記載のキメラエンドヌクレアーゼは、少なくとも1つのエンドヌクレアーゼと少なくとも1つの異種DNA結合ドメインとを結合するためのリンカーを含んでいてもよいが、含んでいなくてもよい。好ましくは、リンカー(「リンカーポリペプチド」と同義)は、少なくとも3アミノ酸からなり、このリンカーポリペプチドのアミノ酸配列中のアミノ酸の少なくとも3分の1は、グリシン、またはセリン、またはアラニン、またはグリシン、セリン、およびアラニンの組み合わせである。好ましくは、キメラエンドヌクレアーゼは、少なくとも1つのNLS配列、および/またはSacIIIもしくはSacIV分泌シグナルを含んでなる。本発明のある実施形態は、キメラエンドヌクレアーゼを提供するが、その異種DNA結合ドメインのDNA結合活性は誘導性であって、好ましくは、二量体もしくはヘテロ二量体LAGLIDADGエンドヌクレアーゼの第2のモノマーの発現によって誘導することができる。本発明はさらに、本発明のキメラエンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含んでなる、単離されたポリヌクレオチドを提供する。好ましくは、単離されたポリヌクレオチドは、コドン最適化されており、またはRNA不安定性モチーフの含有量が少なく、またはコドンリピートの含有量が少なく、または潜在的スプライス部位の含有量が少なく、または選択すべき開始コドンの含有量が少なく、または制限酵素部位の含有量が少なく、またはRNA二次構造の含有量が少なく、またはそうした特徴を任意に組み合わせて有する。本発明のもう1つの実施形態は、上記の単離されたポリヌクレオチドを、プロモーターおよび転写終結配列と機能的に組み合わせて含んでなる、発現カセットである。
【0011】
本発明の他の実施形態は、約15から約300ヌクレオチドの長さを有するキメラ認識配列であって、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼの認識配列、および1つもしくは複数のZn2C6ジンクフィンガーを有する異種DNA結合ドメインの認識配列を含んでなる前記キメラ認識配列を含んでなる、単離されたポリヌクレオチドである。好ましくは、異種DNA結合ドメインの認識配列は、配列番号57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120または121のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、少なくとも1つのDNA結合ドメインと結合させることができる。
【0012】
本発明はまた、キメラ認識配列を含んでなる単離されたポリヌクレオチドを提供し、好ましくはこのキメラ認識配列は、発現カセットに含まれ、または5'もしくは3'末端に近接し、または両方の末端に近接するが、この発現カセットは、プロモーター、ターミネーター、およびプロモーターにより発現可能な配列を含んでなる。発現可能な配列はマーカー遺伝子をコードしていることが好ましい。
【0013】
本発明はさらに、I-SceIのDNA認識配列、および次のような認識配列を含んでなるキメラ認識配列を提供するものであって、この認識配列は、配列番号57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120または121のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含んでなる少なくとも1つのDNA結合ドメインに連結されているが、これは直接連結されるか、または1から10ヌクレオチドの配列によって連結される。ある実施形態において、キメラ認識配列は、I-SceIのDNA認識配列、およびAlcR、またはAlcR(1-60)を含んでなり、直接連結、もしくは1から10ヌクレオチドの配列によって連結されている。本発明のある実施形態において、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号13、14、15、16、43、44、45もしくは46のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド配列を含んでなるキメラ認識配列を含んでなる。
【0014】
本発明の他の実施形態は、キメラエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、またはキメラエンドヌクレアーゼをコードする単離されたポリヌクレオチド、もしくはキメラ認識配列を含んでなる単離されたポリヌクレオチド、またはキメラエンドヌクレアーゼもしくはキメラ認識配列をコードするポリヌクレオチドを含んでなる発現カセットを含有するベクター、宿主細胞もしくは非ヒト生物、ならびに、上記のキメラエンドヌクレアーゼ、単離されたポリヌクレオチド、および発現カセットの組み合わせを含んでなるベクター、宿主生物もしくは非ヒト生物である。好ましくは非ヒト生物は植物である。
【0015】
本発明は、本明細書に記載のキメラエンドヌクレアーゼおよびキメラ認識配列を用いて、相同組み換えまたは末端結合事象を誘導もしくは促進する方法を提供する。好ましくは配列の標的組み換えまたは除去のための方法において、前記キメラエンドヌクレアーゼおよびキメラ認識配列を使用する方法である。好ましくは、除去される配列はマーカー遺伝子である。
【0016】
本発明のある実施形態は、キメラエンドヌクレアーゼを提供するための方法であって、それは次のステップを含んでなる:
a) 少なくとも1つのエンドヌクレアーゼコード領域を提供するステップ、
b) 少なくとも1つの異種DNA結合ドメインコード領域を提供するステップ、
c) ステップa)の1つもしくは複数のエンドヌクレアーゼの、1つもしくは複数の潜在的DNA認識配列を有し、かつ、ステップb)の1つもしくは複数の異種DNA結合ドメインの、1つもしくは複数の潜在的認識配列を有する、ポリヌクレオチドを提供するステップ、
d) ステップa)のすべてのエンドヌクレアーゼのコード領域、およびステップb)のすべての異種DNA結合ドメインの翻訳融合物を作製するステップ、
e) ステップd)で作製された翻訳融合物からキメラエンドヌクレアーゼを発現させるステップ、
f) ステップc)のポリヌクレオチドの切断について、ステップe)で発現されたキメラエンドヌクレアーゼをテストするステップ。
【0017】
本発明はさらに、以下のステップを含んでなる、ポリヌクレオチドの相同組み換えのための方法を提供する:
a) 相同組み換えに適したコンピテント細胞を提供するステップ、
b) 配列Aおよび配列Bが両側に配置されたキメラ認識部位を含んでなるポリヌクレオチドを提供するステップ、
c) 配列A'およびB'を含んでなるポリヌクレオチドであって、配列Aおよび配列Bに対して十分長くて相同的であり、前記細胞における相同組み換えを可能にする前記ポリヌクレオチドを提供するステップ、
d) 本明細書に記載のキメラエンドヌクレアーゼ、または本明細書に記載の発現カセットを提供するステップ、
e) 前記細胞においてb)、c)、およびd)を組み合わせるステップ、ならびに
f) b)とc)の組み換えられたポリヌクレオチドを検出する、またはb)とc)の組み換えられたポリヌクレオチドを有する細胞を選択し、または増殖させるステップ。
好ましくは、ポリヌクレオチドの相同組み換えのための方法は、ステップa)のコンピテント細胞に含まれるポリヌクレオチド配列がステップf)の増殖細胞のゲノムから欠失しているような、相同組み換えをもたらす。本発明のもう1つの方法は、下記のステップを含んでなる標的変異のための方法である:
a) キメラエンドヌクレアーゼのキメラ認識部位を含んでなるポリヌクレオチドを有する、細胞を提供するステップ、
b) ステップa)のキメラ認識部位を切断することができるキメラエンドヌクレアーゼを提供するステップ、
c) 前記細胞においてa)とb)を組み合わせるステップ、ならびに
d) 変異したポリヌクレオチドを検出する、または変異したポリヌクレオチドを有する増殖細胞を選択するステップ。
本発明の別の好ましい実施形態において、上記の方法は、生物の交雑によって、形質転換によって、または最適化されたエンドヌクレアーゼと融合されたSec IIIもしくはSecIVペプチドを介した輸送によって、キメラエンドヌクレアーゼおよびキメラ認識部位を少なくとも1つの細胞内で組み合わせるステップを含んでなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、I-SceIをN末端、ならびにAlcRのアミノ酸1から60をC末端ドメインとして含んでなるキメラヌクレアーゼのモデルを表す。
【図2】図2は、実施例10および20dの実験結果をグラフで表したものである。それによって野生型I-SceIおよびキメラエンドヌクレアーゼの3つの異なるバリアントが、植物において相同組み換えを引き起こす能力を比較する。引き起こされる相同組み換えの頻度は、相同組み換え後にGUS活性を示す植物のパーセンテージで示される(% 青色の植物)。図2は、wt標的部位と称される野生型I-SceIのDNA認識配列のポリヌクレオチド配列、ならびにキメラエンドヌクレアーゼのキメラ認識部位(I-SceI-AlcR(1-60)、I-SceI#2-AlcR(1-60)、およびI-SceI#1-AlcR(1-60))のポリヌクレオチド配列も含んでいる。図2では、さらに、さまざまな変異を有するSce-IのC末端を示すアミノ酸配列、リンカーとして使用されるリジン(L)、ならびにキメラエンドヌクレアーゼを作製するために使用されるAlcR (1-60)の元のN末端の、最初の6アミノ酸も与えられる。wt I-SceIの元のC末端でのさまざまな変異は、野生型アミノ酸配列 “TISSETFLK”を、キメラエンドヌクレアーゼI-SceI#1-AlcR(1-60)では“TIKSEETFLK”に、キメラエンドヌクレアーゼI-SceI#2-AlcR(1-60)では“AIANQAFLK”に変化させる。
【図3】図3は、さまざまなI-SceIホモログの配列アラインメントを表すが、この1は配列番号1であり、2は配列番号122、3は配列番号123、4は配列番号124、5は配列番号125である。
【図4】図4は、さまざまなI-CreIホモログの配列アラインメントを表すが、この1は配列番号126であり、2は配列番号127、3は配列番号128、4は配列番号129、5は配列番号130である。
【図5a】図5aから5cは、さまざまなPI-SceIホモログの配列アラインメントを表すが、この1は配列番号145であり、2は配列番号146、3は配列番号147、4は配列番号148、5は配列番号149である。
【図5b】図5aから5cは、さまざまなPI-SceIホモログの配列アラインメントを表すが、この1は配列番号145であり、2は配列番号146、3は配列番号147、4は配列番号148、5は配列番号149である。
【図5c】図5aから5cは、さまざまなPI-SceIホモログの配列アラインメントを表すが、この1は配列番号145であり、2は配列番号146、3は配列番号147、4は配列番号148、5は配列番号149である。
【図6】図6は、さまざまなI-CeuIホモログの配列アラインメントを表すが、この1は配列番号131であり、2は配列番号132、3は配列番号133、4は配列番号134、5は配列番号135である。
【図7】図7は、さまざまなI-ChuIホモログの配列アラインメントを表すが、この1は配列番号136であり、2は配列番号137、3は配列番号138、4は配列番号139、5は配列番号140である。
【図8】図8は、さまざまなI-DmoIホモログの配列アラインメントを表すが、この1は配列番号141であり、2は配列番号142、3は配列番号143、4は配列番号144である。
【図9】図9は、さまざまなI-MsoIホモログの配列アラインメントを表すが、この1は配列番号150であり、2は配列番号151である。
【図10】図10は、AlcRのDNA結合ドメイン(AlcR 1-60)に相同な、さまざまなZn2C6ドメインの配列アラインメントを示す。コンセンサス配列は、そうしたホモログで保存されているアミノ酸を示す(AlcR 1-60コンセンサス配列)。配列の番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、および25は、それぞれ配列番号70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、および94を指す。
【図11】図11は、Af1RのDNA結合ドメインに相同な、さまざまなZn2C6ドメインの配列アラインメントを示す。コンセンサス配列は、そうしたホモログで保存されているアミノ酸を示す(Af1Rコンセンサス配列)。配列の番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、および12は、それぞれ配列番号57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、および69を指す。
【図12】図12は、Hap1のDNA結合ドメインに相同な、さまざまなZn2C6ドメインの配列アラインメントを示す。コンセンサス配列は、そうしたホモログで保存されているアミノ酸を示す(Hap1コンセンサス配列)。配列の番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、および13は、それぞれ配列番号95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、および107を指す。
【図13】図13は、Leu3のDNA結合ドメインに相同な、さまざまなZn2C6ドメインの配列アラインメントを示す。コンセンサス配列は、そうしたホモログで保存されているアミノ酸を示す(Leu3コンセンサス配列)。配列の番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、および14は、それぞれ配列番号108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、および121を指す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
本発明は、キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを提供するが、これは少なくとも1つのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼ、および少なくとも1つの異種DNA結合ドメインを含んでなり、このDNA結合ドメインは1つもしくは複数のZn2C6ジンクフィンガーを含んでいる。
【0020】
LAGLIDADGエンドヌクレアーゼ
本発明に有用なLAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、藻類、菌類、酵母、原生動物、葉緑体、ミトコンドリア、細菌、および古細菌のゲノムに見いだすことができる。LAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、少なくとも1つの保存されたLAGLIDADGモチーフを含有する。LAGLIDADGモチーフという名称は、すべてのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼに見られる特徴的なアミノ酸配列に基づく。LAGLIDADGという用語は、特許出願におけるヌクレオチドおよびアミノ酸配列リストの発表に関するPCIPI執行調整委員会(Executive Coordination Committee)によって採用された標準、すなわちSTANDARD ST.25に記載の一文字記号によるこのアミノ酸配列の頭字語である。
【0021】
しかしながら、LAGLIDADGモチーフは、すべてのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼにおいて完全に保存されているわけではない(たとえば、Chevalier et al. (2001), Nucleic Acids Res. 29(18): 3757 to 3774、またはDalgaard et al. (1997), Nucleic Acids Res. 25(22): 4626 to 4638を参照されたい)ので、一部のLAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、それらのLAGLIDADGモチーフの中に1つもしくは複数のアミノ酸の変化を含んでいる。LAGLIDADGモチーフを1つだけ含有するLAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、通常、ホモ二量体もしくはヘテロ二量体として作用する。LAGLIDADGモチーフを2つ含有するLAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、単量体として作用し、通常、疑似二量体構造をとる。
【0022】
LAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、例示する目的で表1から6に記載される生物のポリヌクレオチドから単離することができるが、たとえば当業者に知られている公開データベース、たとえばGenbank (Benson (2010), Nucleic Acids Res 38:D46-51)またはSwissprot (Boeckmann (2003), Nucleic Acids Res 31:365-70)において利用可能な配列情報を用いて、当技術分野で公知の技術により、デノボ合成することもできる。
【0023】
LAGLIDADGエンドヌクレアーゼ群は、タンパク質ファミリーに関するPFAMデータベースに見いだすことができる。PFAMデータベース受託番号PF00961はLAGLIDADG 1タンパク質ファミリーを表すが、これには約800個のタンパク質配列が含まれる。PFAM-Database受託番号PF03161はLAGLIDADG 2タンパク質ファミリーメンバーを表すが、これは約150個のタンパク質配列を含んでいる。また別のLAGLIDADGエンドヌクレアーゼ群がInterProデータベースに見いだされ、たとえば、InterPro受託番号IPR004860である。
【0024】
LAGLIDADGエンドヌクレアーゼという用語は、人工ホモおよびヘテロ二量体LAGLIDADGエンドヌクレアーゼも当然含んでおり、これはホモもしくはヘテロ二量体形成を促すために単量体のタンパク質−タンパク質相互作用領域を改変することによって、作製することができる。1つのドメインとしてLAGLIDADGエンドヌクレアーゼI-Dmo Iを含んでなる人工ヘテロ二量体LAGLIDADGエンドヌクレアーゼの例は、たとえばWO2009/074842およびWO2009/074873に見いだすことができる。
【0025】
それに加えて、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼという用語は、人工一本鎖エンドヌクレアーゼも当然含んでおり、これはホモもしくはヘテロ二量体LAGLIDADGエンドヌクレアーゼの単量体の翻訳融合物を作ることによって作製することができる。
【0026】
他の実施形態において、キメラエンドヌクレアーゼに含まれるLAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、単量体、ホモ二量体、人工ホモもしくはヘテロ二量体、または人工一本鎖LAGLIDADGエンドヌクレアーゼとすることができる。
【0027】
ある実施形態において、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、単量体、ホモ二量体、ヘテロ二量体、または人工一本鎖LAGLIDADGエンドヌクレアーゼである。好ましくはこのエンドヌクレアーゼは、単量体、または人工一本鎖LAGLIDADGエンドヌクレアーゼである。
【0028】
好ましいLAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、I-AniI、I-Sce I、I-Chu I、I-Dmo I、l-Cre I、I-Csm I、PI-Sce I、PI-Tli I、PI-Mtu I、I-Ceu I、I-Sce II、I-Sce III、HO、PI-Civ I、PI Ctr I、PI-Aae I、PI-Bsu I、PI-Dha I、PI-Dra I、PI-Mav I、PI-Mch I、PI-Mfu I、PI-Mfl I、PI-Mga I、PI-Mgo I、PI-Min I、PI-Mka I、PI-Mle I、PI-Mma I、PI-Msh I、PI-Msm I、I-Mso I、PI-Mth I、PI-Mtu I、PI-Mxe I、PI-Npu I、PI-Pfu I、PI-Rma I、PI-Spb I、PI-Ssp I、PI-Fac I、PI-Mja I、PI-Pho I、PI-Tag I、PI-Thy I、PI-Tko I、および PI-Tsp I、ならびにアミノ酸レベルで少なくとも49%、51%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有する、これらのいずれか1つのホモログである;より好ましいのは、I-Sce I、I-Chu I、I-Dmo I、l-Cre I、I-Csm I、PI-Pfu I、PI-Sce I、PI-Tli I、I-Mso I、PI-Mtu I、I-Ceu I、I-Sce II、I-Sce III、およびHO、ならびにアミノ酸レベルで少なくとも49%、51%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有する、これらのいずれか1つのホモログである;よりいっそう好ましいのは、I-Sce I、I-Chu I、I-Dmo I、I-Cre I、I-Csm I、PI-Sce I、PI-Pfu I、PI-Tli I、I-Mso I、PI-Mtu I、およびI-Ceu I、ならびにアミノ酸レベルで少なくとも49%、51%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有する、これらのいずれか1つのホモログである;さらにもっと好ましいのは、I-Dmo I、I-Cre I、I-Sce I、I-Mso I、およびI-Chu I、ならびにアミノ酸レベルで少なくとも49%、51%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有する、これらのいずれか1つのホモログであり、もっとも好ましいのは、I-Sce I、ならびにアミノ酸レベルで少なくとも49%、51%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するI-Sce Iのホモログである。
【0029】
好ましい単量体LAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、I-AniI、I-Sce I、I-Chu I、I-Dmo I、I-Csm I、PI-Sce I、PI-Tli I、PI-Mtu I、I-Sce II、I-Sce III、HO、PI-Civ I、PI Ctr I、PI-Aae I、PI-Bsu I、PI-Dha I、PI-Dra I、PI-Mav I、PI-Mch I、PI-Mfu I、PI-Mfl I、PI-Mga I、PI-Mgo I、PI-Min I、PI-Mka I、PI-Mle I、PI-Mma I、PI-Msh I、PI-Msm I、PI-Mth I、PI-Mtu I、PI-Mxe I、PI-Npu I、PI-Pfu I、PI-Rma I、PI-Spb I、PI-Ssp I、PI-Fac I、PI-Mja I、PI-Pho I、PI-Tag I、PI-Thy I、PI-Tko I、および PI-Tsp I、ならびにアミノ酸レベルで少なくとも49%、51%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有する、これらのいずれか1つのホモログである。
【0030】
好ましくは、I-Sce I、I-Chu I、I-Dmo I、I-Csm I、PI-Pfu I、PI-Sce I、PI-Tli I、PI-Mtu I、I-Sce II、I-Sce III、およびHO、ならびにアミノ酸レベルで少なくとも49%、51%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有する、これらのいずれか1つのホモログである。
【0031】
より好ましい単量体LAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、I-Sce I、I-Chu I、I-Dmo I、I-Csm I、PI-Sce I、PI-Tli I、およびPI-Mtu I、ならびにアミノ酸レベルで少なくとも49%、51%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有する、これらのいずれか1つのホモログである。
【0032】
さらにもっと好ましい単量体LAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、I-Dmo I、I-Sce I、およびI-Chu I、ならびにアミノ酸レベルで少なくとも49%、51%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有する、これらのいずれか1つのホモログである。
【0033】
好ましいLAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、表1〜6に記載のLAGLIDADGエンドヌクレアーゼ、およびアミノ酸レベルで少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有する、これらのホモログである。
【0034】
ある種のホモログLAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、人工一本鎖LAGLIDADGエンドヌクレアーゼであって、これはWO03078619に記載のように同一LAGLIDADGエンドヌクレアーゼの2サブユニットを含んでいてもよいが、異なるLAGLIDADGエンドヌクレアーゼの2サブユニットを含んでいてもよい。異なるLAGLIDADGエンドヌクレアーゼの2サブユニットを含んでなる人工一本鎖LAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、ハイブリッドメガヌクレアーゼと呼ばれる。
【0035】
好ましい人工一本鎖LAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、一本鎖I-CreI、一本鎖I-CeuI、または一本鎖I-CeuII、ならびに次のようなハイブリッドメガヌクレアーゼ:I-Sce/I-Chu I、I-Sce/PI-Pfu I、I-Chu/I-Sce I、I-Chu/PI-Pfu I、I-Sce/I-Dmo I、I Dmo I/I-See I、I-Dmo I/PI-Pfu I、I-Dmo I/I-Cre I、I-Cre I/I-Dmo I、I-Cre I/PI-Pfu I、I-Sce I/I-Csm I、I-Sce I/I-Cre I、I-Sce I/PI-Sce I、I-Sce I/PI-Tli I、I-Sce I/PI-Mtu I、I-Sce I/ I-Ceu I、I-Cre I/I-Ceu I、I-Chu I/I-Cre I、I-Chu I/I-Dmo I、I-Chu I/I-Csm I、I-Chu I/PI-Sce I、I-Chu I/PI-Tli I、I-Chu I/PI-Mtu I、I-Cre I/I-Chu I、I-Cre I/I-Csm I、I-Cre I/PI-Sce I、I Cre I/PI-Tli I、I-Cre I/PI-Mtu I、I-Cre I/I-Sce I、I-Dmo I/I-Chu I、I-Dmo I/I-Csm I、I Dmo I/ PI-Sce I、I-Dmo I/PI-Tli I、I-Dmo I/PI-Mtu I、I-Csm I/I-Chu I、I-Csm I/PI-Pfu I、I-Csm I/I-Cre I、I-Csm I/I-Dmo I、I-Csm I/PI-Sce I、I-Csm I/PI-Tli I、I-Csm I/PI-Mtu I、I-Csm I/I-Sce I、PI-Sce I/I-Chu I、PI-Sce I/I-Pfu I、PI-Sce I/I-Cre I、PI-Sce I/I Dmo I、PI-Sce I/I-Csm I、PI-Sce I/PI-Tli I、PI-Sce I/PI-Mtu I、PI-Sce I/ I-Sce I、PI-Tli I/I Chu I、PI-Tli I/PI-Pfu I、PI-Tli I/I-Cre I、PI-Tli I/I-Dmo I、PI-Tli I/I-Csm I、PI-Tli I/PI Sce I、PI-Tli I/PI-Mtu I、PI-Tli 1/I-Sce I、PI-Mtu I/I-Chu I、PI-Mtu I/PI-Pfu I、PI-Mtu I/I-Cre I、PI-Mtu I/I-Dmo I、PI-Mtu I/I-Csm I、PI-Mtu I/ I-Sce I、PI-Mtu I/PI-Tli I、およびPI-Mtu I/I-SceI(WO03078619、WO09/074842、WO2009/059195、およびWO09/074873に記載)、ならびにLlG3-4SC(WO09/006297に記載)、または一本鎖I-Cre I V2 V3(Sylvestre Grizot et al., “Efficient targeting of a SCID gene by an engineered single-chain homing endonuclease”, Nucleic Acids Research, 2009, Vol. 37, No. 16, 5405-5419ページに記載)である。
【0036】
特に好ましい一本鎖LAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、一本鎖I-Cre Iである。
【0037】
好ましい二量体LAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、I-Cre I、I-Ceu I、I-Sce II、I-Mso I、およびI-Csm I、ならびにアミノ酸レベルで少なくとも49%、51%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有する、これらのいずれか1つのホモログである。
【0038】
好ましいヘテロ二量体LAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、WO 07/034262、WO 07/047859、およびWO08093249に記載されている。
【0039】
LAGLIDADGエンドヌクレアーゼのホモログは、他の生物からクローニングすることができるが、たとえば、所与のLAGLIDADGエンドヌクレアーゼのアミノ酸配列の中のアミノ酸の置換、付加、または欠失によって、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼを変異させることにより作製することもできるが、これはLAGLIDADGエンドヌクレアーゼのDNA結合親和性、その二量体形成親和性に影響を及ぼさず、そのDNA認識配列を変化させないことが好ましい。
【0040】
本明細書で使用される場合、「DNA結合親和性」は、メガヌクレアーゼもしくはLAGLIDADGエンドヌクレアーゼが基準となるDNA分子(たとえばDNA認識配列、または任意の配列)と非共有結合する性向を意味する。結合親和性は、解離定数KDによって評価される(たとえば、I-CreIのWT DNA認識配列に対するKD は約0.1 nMである)。本明細書で使用される場合、組み換えメガヌクレアーゼの基準DNA認識配列に対するKDが、基準メガヌクレアーゼまたはLAGLIDADGエンドヌクレアーゼと比べて統計上有意な(p < 0.05)量だけ増加または減少しているならば、メガヌクレアーゼは、「変化した」結合親和性を有している。
【0041】
メガヌクレアーゼ単量体もしくはLAGLIDADGエンドヌクレアーゼ単量体に関して本明細書で使用される場合、「二量体形成への親和性」という用語は、単量体が、基準となるメガヌクレアーゼ単量体もしくはLAGLIDADGエンドヌクレアーゼ単量体と非共有結合する性向を意味する。二量体形成への親和性は、同一の単量体(すなわちホモ二量体形成)、または異なる単量体(すなわちヘテロ二量体形成)、たとえば基準野生型メガヌクレアーゼまたは基準LAGLIDADGエンドヌクレアーゼなどで評価することができる。結合特異性は、解離定数KDにより評価される。本明細書で使用される場合、組み換えメガヌクレアーゼ単量体もしくは組み換えLAGLIDADGエンドヌクレアーゼ単量体の、基準メガヌクレアーゼ単量体もしくは基準LAGLIDADGエンドヌクレアーゼに対するKDが、基準メガヌクレアーゼ単量体もしくは基準LAGLIDADGエンドヌクレアーゼ単量体と比べて統計上有意な(p < 0.05)量だけ増加または減少しているならば、メガヌクレアーゼは、二量体形成について「変化した」親和性を有している。
【0042】
本明細書で使用される「酵素活性」という用語は、メガヌクレアーゼ、たとえばLAGLIDADGエンドヌクレアーゼが特定のDNA認識配列を切断する速度を表す。こうした活性は、二本鎖DNAのホスホジエステル結合の加水分解に関わる測定可能な酵素反応である。特定のDNA基質に作用するメガヌクレアーゼの活性は、その特定のDNA基質に対するメガヌクレアーゼの親和性(アフィニティもしくはアビディティ)の影響を受けるが、これはさらに、DNAとの配列特異的相互作用および配列に非特異的な相互作用にいずれも影響される。
【0043】
たとえば、核局在化シグナルを、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼのアミノ酸配列に付加すること、および/または1つもしくは複数のアミノ酸を変更すること、および/またはその配列の一部、たとえばN末端の一部もしくはC末端の一部、を欠失させることができる。
【0044】
たとえば、I-SceIのホモログLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを、そのアミノ酸配列中のアミノ酸を変異させることによって、作製することができる。
【0045】
I-SceIのDNA結合親和性にほとんど影響を及ぼさないが、そのDNA認識配列を変化させる可能性のある変異は、たとえばA36G、L40M、L40V、I41S、I41N、L43A、H91AおよびI123Lであるが、他を排除するものではない。
【0046】
本発明のある実施形態において、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼのホモログは、ハイブリッドメガヌクレアーゼ、他の生物からクローニングされるホモログ、遺伝子操作されたエンドヌクレアーゼ、もしくは最適化されたヌクレアーゼを含むか否かにかかわらず、人工一本鎖LAGLIDADGエンドヌクレアーゼの一群から選択される。
【0047】
ある実施形態において、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、I-Sce I、I-Cre I、I-Mso I、I-Ceu I、I-Dmo I、I-Ani l、PI-Sce I、I-Pfu I、またはアミノ酸レベルで少なくとも49%、51%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するこれらのいずれか1つのホモログからなる一群から選択される。
【0048】
別の実施形態において、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、I-Sce I、I-Chu I、I-Cre I、I-Dmo I、I-Csm I、PI-Sce I、PI-Pfu I、PI-Tli I、PI-Mtu I、およびI-Ceu I、ならびにアミノ酸レベルで少なくとも49%、51%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するこれらのいずれか1つのホモログからなる一群から選択される。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【0049】
他の生物からクローニングされるエンドヌクレアーゼのホモログは、基準のエンドヌクレアーゼと比較すると、異なる酵素活性、DNA結合親和性、二量体形成親和性、またはそのDNA認識配列の変化を有している可能性があるが、この基準のエンドヌクレアーゼは、たとえば表1に記載のホモログについてはI-SceI(配列番号1)、表2に記載のホモログについてはI-CreI(配列番号126)、表3に記載のホモログについてはPI-SceI(配列番号145)、表4に記載のホモログについてはI-CeuI(配列番号131)、表5に記載のホモログについてはI-ChuI(配列番号136)、または表6に記載のホモログについてはI-DmoI(配列番号141)である。配列番号151に記載のI-MsoIホモログは、基準エンドヌクレアーゼである配列番号150に記載のI-MsoIと比べて、異なる酵素活性、DNA結合親和性、二量体形成親和性、またはそのDNA認識配列の変化を有している可能性がある。別の好ましいエンドヌクレアーゼはI-AniI(配列番号161)であるが、活性を強める変異:F13YおよびS111Y、またはF13Y、S111YおよびK222R、またはF13Y、I55V、F91I、S92TおよびS111Yを含んでいることが好ましい。
【0050】
したがって、本発明のある実施形態において、キメラエンドヌクレアーゼは、配列番号1、2、3、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、161もしくは165のいずれか1つに記載のポリペプチドに対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、少なくとも1つのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを含んでいる。
【0051】
本発明のもう一つの実施形態において、キメラエンドヌクレアーゼは、配列番号126、127、128、129、もしくは130のいずれか1つに記載のポリペプチドに対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、少なくとも1つのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを含んでいる。
【0052】
本発明のもう一つの実施形態において、キメラエンドヌクレアーゼは、配列番号131、132、133、134、もしくは135のいずれか1つに記載のポリペプチドに対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、少なくとも1つのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを含んでいる。
【0053】
本発明のもう一つの実施形態において、キメラエンドヌクレアーゼは、配列番号136、137、138、139、もしくは140のいずれか1つに記載のポリペプチドに対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、少なくとも1つのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを含んでいる。
【0054】
本発明のもう一つの実施形態において、キメラエンドヌクレアーゼは、配列番号141、142、143、もしくは144のいずれか1つに記載のポリペプチドに対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、少なくとも1つのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを含んでいる。
【0055】
本発明のもう一つの実施形態において、キメラエンドヌクレアーゼは、配列番号145、146、147、148、もしくは149のいずれか1つに記載のポリペプチドに対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、少なくとも1つのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを含んでいる。
【0056】
本発明のもう一つの実施形態において、キメラエンドヌクレアーゼは、配列番号150、もしくは151のいずれか1つに記載のポリペプチドに対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、少なくとも1つのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを含んでいる。
【0057】
本発明のもう一つの実施形態において、キメラエンドヌクレアーゼは、好ましくは活性を強める変異:F13YおよびS111Y、またはF13Y、S111YおよびK222R、またはF13Y、I55V、F91I、S92TおよびS111Yを有する、配列番号161のいずれか1つに記載のポリペプチドに対して、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、少なくとも1つのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを含んでいる。
【0058】
本発明のもう一つの実施形態において、キメラエンドヌクレアーゼは、配列番号1、2、3、または165に記載のポリペプチドに対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、少なくとも1つのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを含んでいる。
【0059】
I-Dmo I、H-Dre I、I-Sce I、I-Cre Iのように、正確なタンパク質結晶構造が決定されているLAGLIDADGエンドヌクレアーゼ、またはアミノ酸レベルで少なくとも49%、51%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有する上記のいずれか1つのホモログが好ましいが、これらは容易にI-Dmo I、H-Dre I、I-Sce I、I-Cre Iの結晶構造をモデルにすることができる。I-Cre Iの結晶構造をモデルにすることができるエンドヌクレアーゼの一例がI-Mso Iである(Chevalier et al., Flexible DNA Target Site Recognition by Divergent Homing Endonuclease Isoschizomers I-CreI and I-MsoI, J. Mol. Biol. (2003) 329, pages 253-269)。
【0060】
LAGLIDADGエンドヌクレアーゼのホモログを作製するもう1つの方法は、そのDNA結合親和性、二量体形成親和性を変更し、そのDNA認識配列を変化させるために、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼのアミノ酸配列を変異させることである。
【0061】
DNA結合親和性、二量体形成親和性を変更し、DNA認識配列を変化させるために変異させた、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼのホモログを、遺伝子操作エンドヌクレアーゼと称する。
【0062】
遺伝子操作エンドヌクレアーゼを作製するための1つのアプローチは、分子進化を用いることである。エンドヌクレアーゼの候補酵素をコードするポリヌクレオチドは、たとえば、DNAシャッフリング法で変化させることができる。DNAシャッフリングは、再帰的な組み換えおよび変異のプロセスであって、関連遺伝子プールのランダムな断片化を行った後、ポリメラーゼ連鎖反応のようなプロセスによりその断片を再構築するものである。たとえば、Stemmer (1994) Proc Natl Acad Sci USA 91:10747-10751; Stemmer (1994) Nature 370:389-391; ならびにUS 5,605,793、US 5,837,458、US 5,830,721、およびUS 5, 811,238を参照されたい。遺伝子操作されたエンドヌクレアーゼは、所与のエンドヌクレアーゼの結晶構造に関する他の知識に基づいて、合理的設計を用いることによって作製することもできる。たとえば、Fajardo-Sanchez et al., “Computer design of obligate heterodimer meganucleases allows efficient cutting of custom DNA sequences”, Nucleic Acids Research, 2008, Vol. 36, No. 7 2163-2173を参照されたい。LAGLIDADGエンドヌクレアーゼホモログのタンパク質構造決定、ならびに配列アラインメントは、それを変化させて、その酵素活性、そのDNA結合親和性、その二量体形成親和性に影響を及ぼし、またはそのDNA認識配列を変更することができる、アミノ酸に関する合理的選択を可能にする。
【0063】
遺伝子操作されたエンドヌクレアーゼの多数の例、ならびにそれぞれのDNA認識部位は、当技術分野で知られており、たとえば、WO 2005/105989、WO 2007/034262、WO 2007/047859、WO 2007/093918、WO 2008/093249、WO 2008/102198、WO 2008/152524、WO 2009/001159、WO 2009/059195、WO 2009/076292、WO 2009/114321、WO 2009/134714、またはWO 10/001189に記載されているが、これらはすべて参考として本明細書に含められる。
【0064】
DNA結合親和性が増加または減少している、遺伝子操作されたI-SceI, I-CreI, I-MsoIおよびI-CeuIの型は、たとえば、WO07/047859およびWO09/076292に記載されている。
【0065】
特に明記しない限り、すべての変異体は、それぞれのエンドヌクレアーゼの野生型アミノ酸配列のアミノ酸番号にしたがって命名され、たとえば、I-SceIの変異体L19は、配列番号1に記載の野生型I-SceIアミノ酸配列の19位のロイシンのアミノ酸が交換されている。I-SceIのL19H変異体は、野生型I-SceIアミノ酸配列19位のアミノ酸ロイシンがヒスチジンで置換されている。
【0066】
たとえば、I-SceIのDNA結合親和性は、(a) D201、L19、L80、L92、Y151、Y188、I191、Y199もしくはY222 のH, N, Q, S, T, K もしくはR による置換;または(b) N15、N17、S81、H84、N94、N120、T156、N157、S159、N163、Q165、S166、N194もしくはS202のKもしくはRによる置換、からなる一群から選択される置換に相当する、少なくとも1つの改変によって、増加させることができる。
【0067】
I-SceIのDNA結合親和性は、(a) K20, K23, K63, K122, K148, K153, K190, K193, K195もしくはK223のH, N, Q, S, T, D もしくはE による置換;または(b) L19、L80、L92、Y151、Y188、I191、Y199、Y222、N15、N17、S81、H84、N94、N120、T156、N157、S159、N163、Q165、S166、N194もしくはS202のDもしくはEによる置換、からなる一群から選択される置換に相当する、少なくとも1つの変異によって、減少させることができる。
【0068】
変化したDNA認識配列を有する、I-SceI, I-CreI, I-MsoIおよびI-CeuIの遺伝子操作された型は、たとえば、WO07/047859およびWO09/076292に記載されている。
【0069】
たとえば、I-SceIの重要なDNA認識部位は次の配列を有する(配列番号12で表される):
センス 5'- T T A C C C T G T T A T C C C T A G -3’
塩基位置: 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
アンチセンス 3'- A A T G G G A C A A T A G G G A T C -5'
I-SceIの次の変異は、4位でのCの優先をAに変える:K50。
【0070】
I-SceIの次の変異は、4位でのCの優先を維持する:K50、CE57。
【0071】
I-SceIの次の変異は、4位でのCの優先をGに変える:E50、R57、K57。
【0072】
I-SceIの次の変異は、4位でのCの優先をTに変える:K57、M57、Q50。
【0073】
I-SceIの次の変異は、5位でのCの優先をAに変える:K48、Q102。
【0074】
I-SceIの次の変異は、5位でのCの優先を維持する:R48、K48、E102、E59。
【0075】
I-SceIの次の変異は、5位でのCの優先をGに変える:E48、K102、R102。
【0076】
I-SceIの次の変異は、5位でのCの優先をTに変える:Q48、C102、L102、V102。
【0077】
I-SceIの次の変異は、6位でのCの優先をAに変える:K59。
【0078】
I-SceIの次の変異は、6位でのCの優先を維持する:R59、K59。
【0079】
I-SceIの次の変異は、6位でのCの優先をGに変える:K84、E59。
【0080】
I-SceIの次の変異は、6位でのCの優先をTに変える:Q59、Y46。
【0081】
I-SceIの次の変異は、7位でのTの優先をAに変える:C46、L46、V46。
【0082】
I-SceIの次の変異は、7位でのTの優先をCに変える:R46、K46、E86。
【0083】
I-SceIの次の変異は、7位でのTの優先をGに変える:K86、R86、E46。
【0084】
I-SceIの次の変異は、7位でのTの優先を維持する:K68、C86、L86、Q46*。
【0085】
I-SceIの次の変異は、8位でのGの優先をAに変える:K61、S61、V61、A61、L61。
【0086】
I-SceIの次の変異は、8位でのGの優先をCに変える:E88、R61、H61。
【0087】
I-SceIの次の変異は、8位でのGの優先を維持する:E61、R88、K88。
【0088】
I-SceIの次の変異は、8位でのGの優先をTに変える:K88、Q61、H61。
【0089】
I-SceIの次の変異は、9位でのTの優先をAに変える:T98、C98、V98、L9B。
【0090】
I-SceIの次の変異は、9位でのTの優先をCに変える:R98、K98。
【0091】
I-SceIの次の変異は、9位でのTの優先をGに変える:E98、D98。
【0092】
I-SceIの次の変異は、9位でのTの優先を維持する:Q98。
【0093】
I-SceIの次の変異は、10位でのTの優先をAに変える:V96、C96、A96。
【0094】
I-SceIの次の変異は、10位でのTの優先をCに変える:K96、R96。
【0095】
I-SceIの次の変異は、10位でのTの優先をGに変える:D96、E96。
【0096】
I-SceIの次の変異は、10位でのTの優先を維持する:Q96。
【0097】
I-SceIの次の変異は、11位でのAの優先を維持する:C90、L90。
【0098】
I-SceIの次の変異は、11位でのAの優先をCに変える:K90、R90。
【0099】
I-SceIの次の変異は、11位でのAの優先をGに変える:E90。
【0100】
I-SceIの次の変異は、11位でのAの優先をTに変える:Q90。
【0101】
I-SceIの次の変異は、12位でのTの優先をAに変える:Q193。
【0102】
I-SceIの次の変異は、12位でのTの優先をCに変える:E165、E193、D193。
【0103】
I-SceIの次の変異は、12位でのTの優先をGに変える:K165、R165。
【0104】
I-SceIの次の変異は、12位でのTの優先を維持する:C165、L165、C193、V193、A193、T193、S193。
【0105】
I-SceIの次の変異は、13位でのCの優先をAに変える:C193、L193。
【0106】
I-SceIの次の変異は、13位でのCの優先を維持する:K193、R193、D192。
【0107】
I-SceIの次の変異は、13位でのCの優先をGに変える:E193、D193、K163、R192。
【0108】
I-SceIの次の変異は、13位でのCの優先をTに変える:Q193、C163、L163。
【0109】
I-SceIの次の変異は、14位でのCの優先をAに変える:L192、C192。
【0110】
I-SceIの次の変異は、14位でのCの優先を維持する:E161、R192、K192。
【0111】
I-SceIの次の変異は、14位でのCの優先をGに変える:K147、K161、R161、R197、D192、E192。
【0112】
I-SceIの次の変異は、14位でのCの優先をTに変える:K161、Q192。
【0113】
I-SceIの次の変異は、15位でのCの優先を維持する:E151。
【0114】
I-SceIの次の変異は、15位でのCの優先をGに変える:K151。
【0115】
I-SceIの次の変異は、15位でのCの優先をTに変える:C151、L151、K151。
【0116】
I-SceIの次の変異は、17位でのAの優先を維持する:N152、S152、C150、L150
、V150、T150。
【0117】
I-SceIの次の変異は、17位でのAの優先をCに変える:K152、K150。
【0118】
I-SceIの次の変異は、17位でのAの優先をGに変える:N152、S152、D152、D150、E150。
【0119】
I-SceIの次の変異は、17位でのAの優先をTに変える:Q152、Q150。
【0120】
I-SceIの次の変異は、18位でのGの優先をAに変える:K155、C155。
【0121】
I-SceIの次の変異は、18位でのGの優先をCに変える:R155、K155。
【0122】
I-SceIの次の変異は、18位でのGの優先を維持する:E155。
【0123】
I-SceIの次の変異は、18位でのGの優先をTに変える:H155、Y155。
【0124】
いくつかの変異の組み合わせは、効果を強める可能性がある。1つの例が、三重変異体W149G、D150CおよびN152Kであって、これはI-SceIの17位でのAに対する優先性がGに変化したものである。
【0125】
LAGLIDADGエンドヌクレアーゼの酵素活性を保存するために、次の変異は避けるべきである:
I-SceIについて:I38S、I38N、G39D、G39R、L40Q、L42R、D44E、D44G、D44H、D44S、A45E、A45D、Y46D、I47R、I47N、D144E、D145E、D145NおよびG146E。
I-CreIについて:Q47E、
I-CeuIについて:E66Q、
I-MsoIについて:D22N、
PI-SceIについて:D218、D229、D326またはT341における変異。
【0126】
高い酵素活性を有する、I-AniIの遺伝子操作エンドヌクレアーゼバリアント(配列番号161)は、Takeuchi et al., Nucleic Acid Res.(2009), 73(3): 877-890に記載されている。I-AniIの好ましい遺伝子操作エンドヌクレアーゼバリアントは、次の変異を含んでいる:F13YおよびS111Y、またはF13Y、S111YおよびK222R、またはF13Y、I55V、F91I、S92TおよびS111Y。
【0127】
当該エンドヌクレアーゼ、たとえばLAGLIDADGエンドヌクレアーゼの、DNA結合親和性、二量体形成親和性を変化させ、またはDNA認識配列を変化させる変異を組み合わせて、遺伝子操作エンドヌクレアーゼ、たとえばI-SceIを基本とし、配列番号1に記載のI-SceIと比べて変化したDNA結合親和性および/または変化したDNA認識配列を有する遺伝子操作エンドヌクレアーゼを、作製することができる。
【0128】
最適化されたヌクレアーゼ:
ヌクレアーゼは、たとえば、そのDNA結合特異性を変化させる(たとえばそのDNA認識部位の特異性を高める、もしくは低下させる)変異を挿入することによって、またはヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド配列を、エンドヌクレアーゼを発現させる予定の生物のコドン使用頻度に適合させることによって、または別の開始コドンを欠失させることによって、または潜在的ポリアデニル化シグナルもしくは潜在的スプライス部位もしくは潜在的miRNA標的を、エンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド配列から欠失させることによって、最適化することができる。
【0129】
最適化されたヌクレアーゼを作製するための変異および変更を、遺伝子操作エンドヌクレアーゼの作製に使用される変異と組み合わせてもよく、たとえば、I-SceIのホモログは本明細書に記載の最適化されたヌクレアーゼとなりうるが、そのDNA結合親和性を変更し、および/またはそのDNA認識配列を変化させるために用いられる変異を含んでいることがある。
【0130】
ヌクレアーゼをさらに最適化することはタンパク質の安定性を高める可能性がある。したがって、最適化されたヌクレアーゼは、最適化されていないヌクレアーゼのアミノ酸配列と比べて、
a) PEST配列、
b) KENボックス、
c) Aボックス、
d) Dボックスを含まないか、もしくはその数が減少している、または
e) N末端則にしたがって、安定性のために最適化されたN末端を有する、
f) 2番目のN末端アミノ酸としてグリシンを含有する、または
g) a)、b)、c)、d)、e) およびf)の任意の組み合わせである。
【0131】
PEST配列は、少なくとも12アミノ酸長の親水性領域として定義され、少なくとも1つのプロリン(P)、1つのアスパラギン酸(D)もしくはグルタミン酸(E)、および少なくとも1つのセリン(S)またはスレオニン(T)を含有する必要がある。負電荷を有するアミノ酸はこうしたモチーフ内でクラスター化するが、正電荷を有するアミノ酸、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)、およびリジン(K)は一般に禁じられている。PEST配列はたとえば、Rechsteiner M, Rogers SW. “PEST sequences and regulation by proteolysis.” Trends Biochem. Sci. 1996; 21(7), 267から271ページに記載されている。
KENボックスのアミノ酸コンセンサス配列は、KENXXX(N/D)である
Aボックスのアミノ酸コンセンサス配列は、AGRXLXXSXXXQRVLである
Dボックスのアミノ酸コンセンサス配列は、RXXLである。
【0132】
ヌクレアーゼを分解に対して安定化するための他の方法は、それぞれのエンドヌクレアーゼのN末端のアミノ酸配列を、N末端則にしたがって最適化することである。真核生物における発現に最適化されたヌクレアーゼは、メチオニン、バリン、グリシン、スレオニン、セリン、アラニンもしくはシステインを、アミノ酸配列の開始メチオニンの後に含有する。原核生物における発現に最適化されたヌクレアーゼは、アミノ酸配列の開始メチオニンの後に、メチオニン、バリン、グリシン、スレオニン、セリン、アラニン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、アスパラギン、イソロイシンもしくはヒスチジンを含有する。
【0133】
ヌクレアーゼは、そのエンドヌクレアーゼ活性を損なうことなく、そのアミノ酸配列のうち50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、もしくは1アミノ酸を欠失させることによって、さらに最適化することができる。たとえば、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼのアミノ酸配列の一部を欠失させる場合、上記のLAGLIDADGエンドヌクレアーゼモチーフを保持していることが重要である。
【0134】
PEST配列、または他の、KENボックス、DボックスおよびAボックスなどの不安定化モチーフを欠失させることが好ましい。そうしたモチーフは、単一アミノ酸の交換、たとえば、正電荷を有するアミノ酸(アルギニン、ヒスチジンおよびリジン)のPEST配列への導入によって破壊することができる。
【0135】
ヌクレアーゼを最適化するもう一つの方法は、核局在化シグナル、たとえば配列番号4で表される核局在化シグナルを、ヌクレアーゼのアミノ酸配列に加えることである。
【0136】
最適化されたヌクレアーゼは、上記の方法および特徴を組み合わせて含んでいてもよく、たとえば、核局在化シグナルを含み、2番目のN-末端アミノ酸としてグリシンを含有してもよく、もしくはC末端に欠失を含んでいてもよく、またはこうした特徴を組み合わせて含んでいてもよい。たとえば、上記の方法および特徴を組み合わせて有する、最適化されたヌクレアーゼは、たとえば配列番号2、3、および5に記載される。
【0137】
ある実施形態において、最適化されたヌクレアーゼは最適化されたI-SceIであって、これは、配列:HVCLLYDQWVLSPPH、LAYWFMDDGGK、KTIPNNLVENYLTPMSLAYWFMDDGGK、KPIIYIDSMSYLIFYNLIK、KLPNTISSETFLKもしくはTISSETFLKで表されるアミノ酸配列を含有しない、
または、配列:HVCLLYDQWVLSPPH、LAYWFMDDGGK、KPIIYIDSMSYLIFYNLIK、KLPNTISSETFLKもしくはTISSETFLKで表されるアミノ酸配列を含有しない、
または、配列:HVCLLYDQWVLSPPH、LAYWFMDDGGK、KLPNTISSETFLKもしくはTISSETFLKで表されるアミノ酸配列を含有しない、
または、配列:LAYWFMDDGGK、KLPNTISSETFLKもしくはTISSETFLKで表されるアミノ酸配列を含有しない、
または、配列:KLPNTISSETFLKもしくはTISSETFLKで表されるアミノ酸配列を含有しない。
【0138】
ある実施形態において、最適化されたヌクレアーゼは、野生型I-SceI、またはアミノ酸レベルで少なくとも49%、51%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%配列同一性を有し、かつC末端にアミノ酸配列TISSETFLKを有するそのホモログのC末端で、アミノ酸配列TISSETFLKが欠失または変異している、I-SceI、またはアミノ酸レベルで少なくとも49%、51%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%配列同一性を有するそのホモログである。
【0139】
アミノ酸配列TISSETFLKは、野生型I-SceI、またはアミノ酸レベルで少なくとも49%、51%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%配列同一性を有し、かつC末端にアミノ酸配列TISSETFLKを有するそのホモログの、C末端の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、もしくは9アミノ酸を欠失または変異させることによって、欠失または変異させることができる。
【表7】

【0140】
あるいはまた、アミノ酸配列TISSETFLKは、たとえばアミノ酸配列TIKSETFLK(配列番号37)、またはAIANQAFLK(配列番号38)に変異していてもよい。
【0141】
同様に好ましいのは、配列番号1に記載の野生型I-SceIのアミノ酸配列の229位のセリン(配列番号2を基準とすればアミノ酸230)をLys、Ala、Pro、Gly、Glu、GIn、Asp、Asn、Cys、TyrまたはThrに変異させることである。それによって、I-SceI変異体S229K、S229A、S229P、S229G、S229E、S229Q、S229D、S229N、S229C、S229Y、またはS229Tが作製される(アミノ酸は配列番号1に準じて番号を付す)。
【0142】
本発明のもう1つの実施形態において、配列番号1に記載の野生型I-SceIのアミノ酸配列の203位のアミノ酸であるメチオニン(配列番号2を基準とすればアミノ酸204)をLys、HisまたはArgに変異させる。それによって、I-SceI変異体M202K、M202H、およびM202Rが作製される。
【0143】
好ましい最適化型I-SceIは、欠失体I-SceI -1、I-SceI -2、I-SceI -3、I-SceI -4、I-SceI -5、I-SceI -6、I-SceI -7、I-SceI -8、I-SceI -9、ならびに変異体S229KおよびS229H、S229Rであるが、より好ましいのは、欠失体I-SceI -1、I-SceI -2、I-SceI -3、I-SceI -4、I-SceI -5、I-SceI -6、および変異体S229Kである。
【0144】
たとえば、I-SceI -1の欠失とS229Kの変異とを組み合わせることによって、上記の欠失および変異を組み合わせることも可能であって、それによってC末端にアミノ酸配列TIKSETFLが作製される。
【0145】
たとえば、I-SceI -1の欠失とS229Aの変異とを組み合わせることによって、上記の欠失および変異を組み合わせることも可能であって、それによってC末端にアミノ酸配列TIASETFLが作製される。
【0146】
さらに好ましい最適化型I-SceIは、変異M203K、M203H、M203Rと組み合わせた欠失体I-SceI -1、I-SceI -2、I-SceI -3、I-SceI -4、I-SceI -5、I-SceI -6、I-SceI -7、I-SceI -8、I-SceI -9、または変異体S229KおよびS229H、S229Rである。
【0147】
より好ましいのは、変異M203Kと組み合わせた欠失体I-SceI -1、I-SceI -2、I-SceI -3、I-SceI -4、I-SceI -5、I-SceI -6、または変異体S229Kである。
【0148】
本発明の別の実施形態において、配列番号1に記載の野生型I-SceIのアミノ酸配列の75位のアミノ酸であるグルタミン、130位のグルタミン酸、または199位のチロシン(配列番号2を基準とすればアミノ酸76、131、および120)をLys、HisまたはArgに変異させる。それによって、I-SceI変異体Q75K、Q75H、Q75R、E130K、E130H、E130R、Y199K、Y199HおよびY199Rが作製される。
【0149】
上記の欠失および変異は、アミノ酸レベルで少なくとも49%、51%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%配列同一性を有し、かつC末端にアミノ酸配列TISSETFLKを有する、I-SceIのホモログにも適用することができる。
【0150】
したがって、本発明のある実施形態において、最適化されたエンドヌクレアーゼは、最適化型のI-SceI、またはアミノ酸レベルで少なくとも49%、51%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%配列同一性を有するそのホモログの1つであって、I-SceI -1、I-SceI -2、I-SceI -3、I-SceI -4、I-SceI -5、I-SceI -6、I-SceI -7、I-SceI -8、I-SceI -9、S229K、S229A、S229P、S229G、S229E、S229Q、S229D、S229N、S229C、S229Y、S229T、M203K、M203H、M203R、Q77K、Q77H、Q77R、E130K、E130H、E130R、Y199K、Y199HおよびY199Rからなる一群から選択される、1つもしくは複数の変異または欠失を有するものであるが、このアミノ酸番号は配列番号1に記載のアミノ酸配列を基準とする。
【0151】
本発明の他の実施形態において、最適化されたエンドヌクレアーゼは、最適化型のI-SceI、またはアミノ酸レベルで少なくとも49%、51%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%配列同一性を有するそのホモログの1つであって、I-SceI -1、I-SceI -2、I-SceI -3、I-SceI -4、I-SceI -5、I-SceI -6、S229K、およびM203Kからなる一群から選択される、1つもしくは複数の変異または欠失を有するものであるが、このアミノ酸番号は配列番号1に記載のアミノ酸配列を基準とする。
【0152】
特に好ましい、最適化されたエンドヌクレアーゼは、配列番号1に記載のI-SceIの野生型もしくは遺伝子操作型、またはアミノ酸レベルで少なくとも49%、51%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%配列同一性を有するそのホモログの1つであって、下記の一群から選択される1つもしくは複数の変異を有するものである:
a) I-SceI -1、I-SceI -2、I-SceI -3、I-SceI -4、I-SceI -5、I-SceI -6、I-SceI -7、I-SceI -8、およびI-SceI -9;
b) S229K、S229A、S229P、S229G、S229E、S229Q、S229D、S229N、S229C、S229Y、S229T、M203K、M203H、M203R、Q77K、Q77H、Q77R、E130K、E130H、E130R、Y199K、Y199HおよびY199R;
c) アミノ酸配列の開始メチオニンの後のメチオニン、バリン、グリシン、スレオニン、セリン、アラニン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、アスパラギン、イソロイシン、もしくはヒスチジン;または
d) 上記a)およびb)、a)およびc)、b)およびc)、またはa)、b)およびc)から選択される1つもしくは複数の変異の組み合わせ。
【0153】
異種DNA結合ドメイン:
本発明のキメラエンドヌクレアーゼは、少なくとも1つの異種DNA結合ドメインを含んでおり、これは1つもしくは複数のZn2C6ジンクフィンガーを含有する。
【0154】
Zn2C6ジンクフィンガーは、ユニークな一群のDNA結合ドメインを形成するが、これらはおおむね酵母および真菌の転写因子にもっぱら見いだされる。これらは、2つの亜鉛イオンが一般式:
-Cys-(X)2-Cys-(X)6-Cys-(X)5-41-Cys-(X)2-Cys-(X)6-8-Cys-
[式中、Cysはシステインを表し、Xは任意のアミノ酸を表す]
で表されるアミノ酸モチーフによって複合体を形成する共通構造を特徴とする。
【0155】
6つのシステインの変異解析は、それらのシステインが2、6、5〜41、2、および6〜8個の他のアミノ酸を間においており、そのすべてが2つの亜鉛イオンの複合体化に必要であることを明らかにしたが、次にその亜鉛イオンはクローバーリーフ型構造の正しいフォールディングを助ける。塩基性残基は通常、2番目と3番目のシステインの間の第1、第3、第4、および第6残基で優位を占める。これらの残基の3番目または4番目のいずれかにおける非保存的変異は、このDNA結合ドメインのDNA結合能力を消失させることが多い。2番目と3番目のシステインの間のアミノ酸残基は通常、特に第1、第3、第4、および第6位で、塩基性である。構造研究から、こうした塩基性残基が多くの場合、DNAとの接点を形成することが明らかになった。3番目と4番目のシステインの間のループ領域は、長さおよび配列の変動性を示し、可変性小領域として知られている(図3〜6を参照されたい)。可変性小領域における変異は、概してほとんど影響を示さないが、一部の変異は機能を低下させる。
【0156】
この可変性小領域において、プロリン残基は、ほとんどの場合、4番目のシステインに対してN-末端の1もしくは2残基で認められる。このプロリンは、アミノ酸鎖のターンをサポートすると考えられ、正確なフォールディングに必要であるが、保存されたプロリンは絶対必要というわけではなく、可変性小領域において他にプロリンが存在するならば、多くの場合、たとえば、ロイシン、グルタミンもしくはアルギニンで置き換えることができる。
【0157】
それらの構造のため、Zn2C6ジンクフィンガーは、容易に、たとえばC2H2- もしくはCCHC-型の、他の亜鉛含有DNA結合ドメインと区別することができるが、そのことはたとえば、WO07/014275、WO08/076290、WO08/076290もしくはWO03/062455に記載されている。
【0158】
Zn2C6ジンクフィンガーは、たいていの場合、それらのコア領域内においてグアニンおよびシステインからなるトリヌクレオチド、たとえばCGGもしくはCGAを有するDNA結合部位に結合する;しかしながら、他の末端トリヌクレオチド、たとえばGGGもしくはGGAが、またはTCC、TCG、GCC、もしくはGCAまでが、一部の結合部位の中に見られる。
【0159】
DNA結合ドメインにおいて、またはDNA結合ドメインとして、Zn2C6ジンクフィンガーを含有する多くの転写因子は、当技術分野においてたとえば、WO 02/24865にすでに記載されている。Zn2C6ジンクフィンガー含有転写因子の限定的でない例は、配列番号166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、177、178、179、180、181、182、183、184、および185で表されるタンパク質である。
【0160】
好ましい異種DNA結合ドメインは、Zn2C6ジンクフィンガードメインを含有する転写因子、またはそのDNA結合ドメインを含んでなり、このジンクフィンガーはアルギニンもしくはリジン(一文字コードではRもしくはK)などの塩基性アミノ酸のN末端もしくはC末端反復配列を介して追加の接点を形成し、および/または単量体としてDNAと結合する能力を有する。そうしたタイプのZn2C6ジンクフィンガー転写因子はたとえば、AflR、ArgR、Hap1もしくはLeu3である。
【0161】
好ましい実施形態において、キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼの異種DNA結合ドメインには、配列番号6で表されるAlcR、およびアミノ酸レベルで少なくとも50%, 60%, 70%, 80%, 85%, 90%, 92%, 93%, 94%, 95%, 96%, 97%, 98%または99%の配列同一性を有するAlcRのホモログが含まれる。
【0162】
本発明のある実施形態において、1つもしくは複数のZn2C6ジンクフィンガーを含有する転写因子の全長配列、またはその大きな断片を使用することは、たとえば、転写因子もしくはその断片のDNA結合ドメイン結合活性が誘導性である場合に、有利である。たとえば、AlcRのDNA結合活性は、エタノール、アセトアルデヒド、スレオニン、エチルアミン、プロパン-1-オール、およびブタン-2-オールによって誘導することができる。
【0163】
したがって、本発明のある実施形態において、キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼの少なくとも1つの異種DNA結合ドメインは、Zn2C6ジンクフィンガー転写因子、またはその大きな断片を含んでなる。
【0164】
Zn2C6ジンクフィンガー転写因子の大きな断片は、野生型Zn2C6ジンクフィンガー転写因子のアミノ酸配列の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、または 98%の断片を意味する。
【0165】
本発明のある実施形態において、キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼの少なくとも1つの異種DNA結合ドメインは、誘導性DNA結合活性を有するZn2C6ジンクフィンガー転写因子を含んでなる。
【0166】
本発明のある実施形態において、キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼの少なくとも1つの異種DNA結合ドメインは、AlcR、AflR、Hap1、Leu3、またはアミノ酸レベルで少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは 99%の配列同一性を有する、これらのいずれか1つのホモログを含んでなる。
【0167】
本発明のある実施形態において、キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼの少なくとも1つの異種DNA結合ドメインは、AlcR、AflR、Hap1、Leu3、またはアミノ酸レベルで少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは 99%の配列同一性を有する、これらのいずれか1つのホモログの、大きな断片を含んでなる。
【0168】
しかしながら、別の場合には、1つもしくは複数の小さな異種DNA結合ドメインを用いることが好ましい。したがって、本発明のある実施形態において、異種DNA結合ドメインは、ほぼ、Zn2C6ジンクフィンガー含有転写因子のDNA結合ドメイン、すなわちDNA結合ドメイン断片のみを含んでなる。
【0169】
したがって、同様に好ましい実施形態において、キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼの異種DNA結合ドメインは、配列番号70で表されるAlcRのDNA結合ドメイン断片(AlcR 1-60)、およびアミノ酸レベルで少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは 99%の配列同一性を有するAlcR(1-60)のホモログを含んでなる。
【0170】
AlcRのDNA結合ドメイン断片は、図3に示すコンセンサス配列で表すことができる、一群のホモログに属する。この一群のメンバーはたとえば、配列番号71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、および94のいずれか1つで表されるアミノ酸配列を含んでなる。
【0171】
Zn2C6ジンクフィンガー含有転写因子の他のDNA結合ドメイン断片、ならびにそのコンセンサス配列は、図4、5、および6で表される。
【0172】
したがって、本発明の別の実施形態において、キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼの異種DNA結合ドメインは、配列番号57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、および121で表される配列、またはアミノ酸レベルで少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは 99%の配列同一性を有するこれらのいずれか1つのホモログの一群から選択される、アミノ酸配列を含んでなる。
【0173】
好ましい実施形態において、キメラエンドヌクレアーゼは、配列番号57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、もしくは121のいずれか1つで表されるポリペプチドに対して、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%アミノ酸配列同一性を有する、少なくとも1つのポリペプチドを含有する、異種DNA結合ドメインを含んでなる。
【0174】
もう1つの好ましい実施形態において、キメラエンドヌクレアーゼは、配列番号57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、もしくは69のいずれか1つで表されるポリペプチドに対して、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%アミノ酸配列同一性を有する、少なくとも1つのポリペプチドを含有する、異種DNA結合ドメインを含んでなる。
【0175】
もう1つの好ましい実施形態において、キメラエンドヌクレアーゼは、配列番号70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、もしくは94のいずれか1つで表されるポリペプチドに対して、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%アミノ酸配列同一性を有する、少なくとも1つのポリペプチドを含有する、異種DNA結合ドメインを含んでなる。
【0176】
もう1つの好ましい実施形態において、キメラエンドヌクレアーゼは、配列番号95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、もしくは107のいずれか1つで表されるポリペプチドに対して、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%アミノ酸配列同一性を有する、少なくとも1つのポリペプチドを含有する、異種DNA結合ドメインを含んでなる。
【0177】
もう1つの好ましい実施形態において、キメラエンドヌクレアーゼは、配列番号108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、もしくは121のいずれか1つで表されるポリペプチドに対して、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%アミノ酸配列同一性を有する、少なくとも1つのポリペプチドを含有する、異種DNA結合ドメインを含んでなる。
【0178】
もう1つの好ましい実施形態において、キメラエンドヌクレアーゼは、配列番号57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、もしくは75のいずれか1つで表されるポリペプチドに対して、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%アミノ酸配列同一性を有する、少なくとも1つのポリペプチドを含有する、異種DNA結合ドメインを含んでなる。
【0179】
本発明の他の実施形態において、異種DNA結合ドメインは、AlcR、およびアミノ酸レベルで少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは 99%の配列同一性を有するこれらのいずれか1つのホモログ、またはAlcR、およびアミノ酸レベルで少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは 99%の配列同一性を有するこれらのいずれか1つのホモログのDNA結合ドメイン断片からなる一群から選択される。
【0180】
好ましいDNA結合ドメイン断片は、AlcRのアミノ酸1-60、またはアミノ酸レベルで少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは 99%の配列同一性を有する、そのホモログである。
【0181】
キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼの調製:
LAGLIDADGエンドヌクレアーゼおよび異種DNA結合ドメインは、多くの別法で組み合わせることができる。
【0182】
たとえば、2つ以上のLAGLIDADGエンドヌクレアーゼと1つもしくは複数の異種DNA結合ドメインを組み合わせる、または2つ以上の異種DNA結合ドメインと1つのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼとを組み合わせることが可能である。2つ以上のLAGLIDADGエンドヌクレアーゼと2つ以上の異種DNA結合ドメインを組み合わせることも可能である。
【0183】
1つもしくは複数の異種DNA結合ドメインを、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼのN末端もしくはC末端で融合することができる。1つもしくは複数の異種DNA結合ドメインを、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼのN末端で、ならびに1つもしくは複数の異種DNA結合ドメインを同C末端で融合することも可能である。LAGLIDADGエンドヌクレアーゼと異種DNA結合ドメインの別の組み合わせをすることも可能である。
【0184】
キメラエンドヌクレアーゼが2つ以上のLAGLIDADGエンドヌクレアーゼもしくは2つ以上の異種DNA結合ドメインを含んでなる場合、同一の異種DNA結合ドメインもしくはLAGLIDADGエンドヌクレアーゼの複数コピーを用いること、または複数の異なる異種DNA結合ドメインもしくはLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを用いることができる。
【0185】
上記で最適化されたヌクレアーゼについて記載された方法および特徴を、キメラエンドヌクレアーゼの完全な配列に適用することも可能であって、それはたとえば、キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼに核局在化シグナルを加えること、または下記の数を減らすこと:
a) PEST配列、
b) KENボックス、
c) A-ボックス、
d) D-ボックス、もしくは
e) N末端則にしたがって安定性に最適なN末端を含んでいること、
f) 2番目のN末端アミノ酸としてグリシンを含んでいること、または
g) キメラエンドヌクレアーゼの完全なアミノ酸配列についてa)、b)、c)、d)、e)、およびf)の任意の組み合わせ、
によって可能となる。
【0186】
ある実施形態において、キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼは:
I-SceIおよびAlcR、またはI-SceIおよびAlcR (1 - 60)、またはI-CreIおよびAlcR、またはI-CreIおよびAlcR (1 - 60)、またはI-MsoIおよびAlcR、またはI-MsoIおよびAlcR (1 - 60)の組み合わせであるが、このAlcRもしくはAlcR(1 - 60)はNもしくはC末端でI-SceI、I-CreIまたはI-MsoIに融合されており、このI-SceI、I-CreI、I-MsoI、AlcR、AlcR (1 - 60)は、アミノ酸レベルで少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは 99%の配列同一性を有するそれらのホモログを含む。
【0187】
好ましい実施形態は、AlcR、またはAlcRのアミノ酸1 - 60(AlcR 1 - 60)の、I-SceIとのNもしくはC末端融合物である。
【0188】
さらにより好ましいのは、AlcR、またはAlcRのアミノ酸1 - 60(AlcR 1 - 60)の、I-SceIとのC末端融合物である。
【0189】
好ましい例は、たとえば、VC-SAH 48、49、50および51で表される、リンカー配列としてリジンを1つだけ含有するI-SceIと、AlcR、またはAlcRのアミノ酸1 - 60(AlcR 1 - 60)のC末端融合物であり、これは配列番号7、8、9および10で表されるアミノ酸配列を有する。
【0190】
キメラエンドヌクレアーゼは、多くの方法および組み合わせで構築することができる。実例として次の構造:
N末端- LAGLIDADGエンドヌクレアーゼ- Zn2C6 ジンクフィンガー - C末端、
N末端- Zn2C6 ジンクフィンガー - LAGLIDADGエンドヌクレアーゼ - C末端、
N末端- Zn2C6 ジンクフィンガー - LAGLIDADGエンドヌクレアーゼ - Zn2C6 ジンクフィンガー - C末端、
が挙げられるが、
他の組み合わせも可能であり、この場合1つのエンドヌクレアーゼは、1つもしくは複数のZn2C6ジンクフィンガーをNもしくはC末端に有する可能性がある。
【0191】
本発明のもう一つの実施形態において、キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼは次の構造を有する:
N末端-I-SceI - AlcR - C末端、または
N末端-I-SceI - AlcR (1 - 60) - C末端、または
N末端-I-CreI - AlcR - C末端、または
N末端-I-CreI - AlcR (1 - 60) - C末端、または
N末端-I-MsoI - AlcR - C末端、または
N末端-I-MsoI - AlcR (1 - 60) - C末端、または
N末端- AlcR - I-SceI- C末端、または
N末端- AlcR (1 - 60)-I-SceI - C末端、または
N末端- AlcR - I-CreI - C末端、または
N末端- AlcR (1 - 60)-I-CreI - C末端、または
N末端- AlcR - I-MsoI - C末端、または
N末端- AlcR (1 - 60)-I-MsoI - C末端。
【0192】
キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、好ましくは、核局在化配列(NLS)との融合タンパク質として発現される。このNLS配列は、核の中への輸送の促進を可能にし、組み換え系の効率を高める。さまざまなNLS配列が当業者に知られており、特にJicks GR and Raikhel NV (1995) Annu. Rev. Cell Biol. 11:155-188に記載されている。植物に好ましいのは、たとえば、SV40ラージ抗原のNLS配列である。実例はWO 03/060133に記載されており、参考として本明細書に含められる。NLSは、エンドヌクレアーゼおよび/またはDNA結合ドメインに対して異種であってもよいが、エンドヌクレアーゼおよび/またはDNA結合ドメインに天然の状態で含まれていてもよい。
【0193】
核局在化シグナルを有するキメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、たとえば、配列番号8、10、50、51、52、53で表される。
【0194】
好ましい実施形態において、キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼをコードする配列は、イントロン配列の挿入によって改変されている。これによって原核生物宿主において機能的酵素の発現が妨げられ、したがってクローニングおよび形質転換手順が容易になる(たとえば、大腸菌(E. coli)もしくはアグロバクテリウム(Agrobacterium)を基本とする)。真核生物、たとえば植物においては、植物はイントロンを認識し、スプライスして除くことができるので、機能的酵素の発現が実現される。好ましくは、イントロンは上記で好ましいと言及されたホーミングエンドヌクレアーゼに(たとえばI-SceIまたはI-CreIに)挿入される。
【0195】
別の好ましい実施形態において、キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼのアミノ酸配列は、キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼのNもしくはC末端へのSec IV分泌シグナルの付加によって改変されている。
【0196】
好ましい実施形態において、Sec IV分泌シグナルは、アグロバクテリウムのVirタンパク質に含まれるSec IV分泌シグナルである。こうしたSec IV分泌シグナルの例、ならびにこれらを使用する方法は、WO 01/89283、Vergunst et al, Positive charge is an important feature of the C-terminal transport signal of the VirB/D4-translocated proteins of Agrobacterium, PNAS 2005, 102, 03, 832〜837ページに記載されており、これらは参考として本明細書に含められる。
【0197】
Sec IV分泌シグナルは、WO01/38504の明細書に記載されたのと同様の方法で、エンドヌクレアーゼもしくはキメラエンドヌクレアーゼにVirタンパク質の断片を付加することにより、または完全なVirタンパク質、たとえば完全なVirE2タンパク質を付加することによっても、付加することができるが、このWO01/38504はRecA/VirE2融合タンパク質を記載しており、参考として本明細書に含めるものとする。
【0198】
別の好ましい実施形態において、キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼのアミノ酸配列は、Sec III分泌シグナルをキメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼのNもしくはC末端に付加することで改変されていてもよい。適当なSec III分泌シグナルはたとえばWO 00/02996に記載されており、参考として本明細書に含められる。
【0199】
Sec III分泌シグナルが付加される場合、このキメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼは細胞内で発現されることが有利であると考えられるが、この細胞は、機能的III型分泌系の一部、もしくは完全な前記分泌系をコードする組み換え構築物も含んでおり、その目的はそうした細胞において部分的な、もしくは完全な、機能的III型分泌系を過剰発現させること、または補完することである。部分的な、もしくは完全な機能的III型分泌系をコードする組み換え構築物は、たとえば、WO 00/02996およびWO05/085417に記載されており、参考として本明細書に含められる。
【0200】
SecIV分泌シグナルがキメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼに付加され、そのキメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼがたとえばAgrobacterium rhizogenesもしくはAgrobacterium tumefaciensで発現される予定であるならば、キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼをコードするDNA配列を、発現生物のコドン使用頻度に合わせるのが有利である。キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、発現生物のゲノムにおいてDNA認識配列がない、または、少ししかないことが好ましい。選択されたキメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼがAgrobacteriumゲノムにおいてDNA認識配列を有しない、またはあまり好ましくないDNA認識配列を有するならば、さらにいっそう有利である。キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼが原核生物で発現される予定であるならば、ヌクレアーゼもしくはキメラヌクレアーゼをコードする配列は、イントロンを有していてはならない。
【0201】
ある実施形態において、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼおよび異種DNA結合ドメインはリンカーポリペプチド(リンカー)を介して連結されている。
【0202】
好ましくは、リンカーポリペプチドは1-30アミノ酸からなるが、1-20であればより好ましく、1-10アミノ酸であればさらにいっそう好ましい。
【0203】
たとえば、リンカーポリペプチドは、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、アスパラギン、グルタミン、およびプロリンからなる一群から選択される複数の残基で構成することができる。
【0204】
好ましくはリンカーポリペプチドは、生理的条件下で二次構造をとらないようにデザインされ、好ましくは親水性である。電荷をもつ残基もしくは非極性の残基が含まれていてもよいが、それらが相互作用して二次構造を形成したり、溶解性が低下したりする可能性があるので、あまり好ましくない。
【0205】
一部の実施形態では、リンカーポリペプチドは、基本的に、グリシンおよびセリンから選択される複数の残基からなる。こうしたリンカーはたとえば、(一文字コードで)GS、またはGGS、またはGSGS、またはGSGSGS、またはGGSGG、またはGGSGGSGG、またはGSGSGGSGのアミノ酸配列を有する。
【0206】
リンカーが少なくとも3アミノ酸からなる場合、リンカーポリペプチドのアミノ酸配列は、少なくとも3分の1はグリシン、またはアラニン、またはグリシンおよびアラニンを含んでなる。
【0207】
ある好ましい実施形態において、リンカー配列はアミノ酸配列GSGSまたはGSGSGSである。
【0208】
好ましくは、ポリペプチドリンカーは、生物情報工学ツールを用いて合理的にデザインされており、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼおよびそれぞれのDNA認識部位、ならびに異種DNA結合ドメインおよびそれぞれのDNA結合部位をいずれもモデリングすることができる。適当な生物情報工学ツールはたとえば、Desjarlais & Berg, (1994), PNAS, 90, 2256-2260およびDesjarlais & Berg (1994), PNAS, 91, 11099-11103に記載されている。
【0209】
キメラエンドヌクレアーゼのDNA認識配列(キメラ認識配列):
キメラエンドヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼのDNA認識配列と異種DNA結合ドメインの認識配列とを組み合わせたDNA配列と結合している。キメラエンドヌクレアーゼがそのDNA内に2つ以上のエンドヌクレアーゼもしくは2つ以上の異種DNA結合ドメインを含有している場合、キメラエンドヌクレアーゼは、使用されたエンドヌクレアーゼのDNA認識配列と、使用された異種DNA結合ドメインのDNA結合配列との組み合わせである、DNA配列と結合していると考えられる。キメラエンドヌクレアーゼと結合したDNAの配列が、エンドヌクレアーゼと異種DNA結合ドメインを組み合わせた順序を反映していることは明白である。
【0210】
当技術分野で知られているエンドヌクレアーゼは、さまざまな異なるポリヌクレオチド配列を切断する。
【0211】
DNA認識配列およびDNA認識部位という用語は同意語として使用され、所与のエンドヌクレアーゼが結合して切断することができる特定の配列のポリヌクレオチドを表す。したがって当該配列のポリヌクレオチドは、1つのエンドヌクレアーゼに関するDNA認識配列またはDNA認識部位であるといえるが、別のエンドヌクレアーゼについてはDNA認識配列もしくはDNA認識部位であるかもしれないしそうでないかもしれない。
【0212】
エンドヌクレアーゼが結合して切断することができるポリヌクレオチド配列、すなわちこのエンドヌクレアーゼのDNA認識配列もしくはDNA認識部位に相当するポリヌクレオチド配列の例を、表8に記載する:"^"は、DNA認識配列内の、配列特異的DNAエンドヌクレアーゼの切断部位を示し、Nという文字は、任意のヌクレオチドを表しており、A、T、GまたはCで置き換えることができる。
【表8】

【0213】
エンドヌクレアーゼは、厳密に定義されたDNA認識配列を有するわけではないので、一塩基の変化は切断を止めはしないが、その効率をさまざまな程度まで低下させる可能性がある。所与のエンドヌクレアーゼに関する本明細書に記載のDNA認識配列は、認識および切断されることが判明している唯一の部位を表す。
【0214】
DNA認識部位の逸脱の例は、たとえば、Chevelier et al. (2003), J.Mol.Biol. 329, 253 - 269;Marcaida et al. (2008), PNAS, 105 (44), 16888 - 16893、およびMarcaida et al. 10.1073/pnas.0804795105に対する補足情報;Doyon et al. (2006), J. AM. CHEM. SOC. 128, 2477 - 2484;Argast et al, (1998), J.Mol.Biol. 280, 345 - 353、Spiegel et al. (2006), Structure, 14, 869 - 880;Posey et al. (2004), Nucl. Acids Res. 32 (13), 3947 - 3956;またはChen et al. (2009), Protein Engineering, Design & Selection, 22 (4), 249 - 256に記載されている。
【0215】
したがって、DNA認識配列として所定のポリヌクレオチド配列を有する、天然に存在するエンドヌクレアーゼを同定することができる。
【0216】
天然に存在するエンドヌクレアーゼを同定する方法、その遺伝子、およびそのDNA認識配列は、たとえばWO 2009/101625に記載されている。
【0217】
切断特異性、またはそのDNA認識配列の縮重のそれぞれは、異なる基質に対する活性をテストすることによって調べることができる。適当なin vivo法は、たとえばWO09074873に記載されている。
【0218】
あるいはまた、たとえば、アレイ上にスポットされた標識されたポリヌクレオチドを使用することによって、in vitroテストを用いることができるが、この場合さまざまなスポットは、基本的に特定の配列のポリヌクレオチドのみを含むものであって、これはさまざまなスポットのポリヌクレオチドとは異なっており、活性を調べるべきDNA認識配列であるかもしれないが、そうでないかもしれない。同様の方法は、たとえば、US 2009/0197775に記載されている。
【0219】
しかしながら、新たなポリヌクレオチドと結合してこれを切断することができるように、所定のLAGLIDADGエンドヌクレアーゼのアミノ酸配列を変異させることが可能であり、すなわち変化したDNA認識部位を有する遺伝子操作エンドヌクレアーゼを作製することができる。
【0220】
遺伝子操作エンドヌクレアーゼの多数のDNA認識部位の例が当技術分野で判明しており、たとえば、WO 2005/105989、WO 2007/034262、WO 2007/047859、WO 2007/093918、WO 2008/093249、WO 2008/102198、WO 2008/152524、WO 2009/001159、WO 2009/059195、WO 2009/076292、WO 2009/114321、WO 2009/134714、WO 10/001189、およびWO 10/009147に記載されている。
【0221】
したがって、特定のあらかじめ定められたポリヌクレオチド配列と同一のDNA認識配列を有する、遺伝子操作エンドヌクレアーゼを作製することも可能である。
【0222】
好ましくは、エンドヌクレアーゼのDNA認識配列およびオペレーター配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11以上の塩基対で隔てられている。好ましくは、それらは1から10、1から8、1から6、1から4、1から3、または2塩基対で隔てられている。
【0223】
ヌクレアーゼのDNA認識配列と異種DNA結合ドメインの認識配列を隔てるために用いられる塩基対の数は、キメラエンドヌクレアーゼにおけるヌクレアーゼのDNA結合領域と異種DNA結合ドメインのDNA結合領域の距離によって決まってくる。ヌクレアーゼのDNA結合領域と異種DNA結合ドメインのDNA結合領域の間の隔たりが大きいほど、ヌクレアーゼのDNA認識配列と異種DNA結合ドメインの認識配列を隔てる多数の塩基対に反映されることになる。分離塩基対の最適な数は、コンピューターモデルを用いて、またはヌクレアーゼのDNA認識配列と異種DNA結合ドメインの認識配列の間にさまざまな数の塩基対を有するいくつかのポリヌクレオチドに対する所定のキメラエンドヌクレアーゼの結合および切断効率を調べることによって、決定することができる。
【0224】
キメラエンドヌクレアーゼのDNA認識配列(それぞれのキメラエンドヌクレアーゼのキメラ認識部位または標的部位)の例:
I-SceI - AlcRまたはI-SceI AlcR (1 - 60)の構造を有する、好ましくは配列番号7、8、9、10、50、51、52および53で表されるアミノ酸配列を有するキメラエンドヌクレアーゼ。
I-SceI AlcR または
I-SceI AlcR (1 - 60) 標的部位1 cgtgcggatctagggataacagggtaat (配列番号13)
I-SceI AlcR または
I-SceI AlcR (1 - 60) 標的部位2 cgtgcggatcctagggataacagggtaat (配列番号14)
I-SceI AlcR または
I-SceI AlcR (1 - 60) 標的部位3 cgtgcggatcgctagggataacagggtaat (配列番号15)
I-SceI AlcR または
I-SceI AlcR (1 - 60) 標的部位4 cgtgcggatccgctagggataacagggtaat (配列番号16)
AlcR(1 - 60)-I-SceIの構造を有する、好ましくは配列番号54、55および56で表されるアミノ酸配列を有するキメラエンドヌクレアーゼ
AlcR (1-60) I-SceI または
AlcR-I-SceI 標的部位1 cgtgcggatcattaccctgttatcccta (配列番号43)
AlcR (1-60) I-SceI または
AlcR-I-SceI 標的部位2 cgtgcggatcnattaccctgttatcccta (配列番号44)
AlcR (1-60) I-SceI または
AlcR-I-SceI 標的部位3 cgtgcggatcnnattaccctgttatcccta (配列番号45)
AlcR (1-60) I-SceI または
AlcR-I-SceI 標的部位4 cgtgcggatcnnnattaccctgttatcccta (配列番号46)。
【0225】
異種DNA結合ドメインの認識配列の例は:
AlcRおよびAlcR (1-60) 5'- WGCGG-3'
AflR 5'-TCGNNNNNCGA-3' (配列番号164)
Hap1 5'-CGGNNNTA-3'
Leu3 5'-RGCCG-3'であって、
このAはアデニンを、Gはグアニンを、Cはシトシンを、Tはチミンを、Wはアデニンもしくはチミンを、Rはグアニンもしくはアデニンを、ならびにNはアデニンもしくはグアニンもしくはシトシンもしくはチミンを表す。
【0226】
AlcR (1-60)がAlcRと同じ、もしくは類似した認識配列と結合するように、Zn2C6ジンクフィンガーを含有するAlcR, AflR, Hap1, Leu3を含む転写因子およびその断片の、Zn2C6ジンクフィンガードメインと相同なZn2C6ジンクフィンガードメインは、同一の、もしくは非常に類似した結合部位に結合すると思われる。
【0227】
ポリヌクレオチド:
本発明は、上記キメラエンドヌクレアーゼをコードする単離されたポリヌクレオチドも含んでいる。
【0228】
このような単離されたポリヌクレオチドの例は、配列番号2、3、5、7、8、9、10、50、51、52、53、54、55、および56で表されるアミノ酸配列、または配列番号2、3、5、7、8、9、10、50、51、52、53、54、55、および56で表されるアミノ酸配列のいずれか1つに対して、少なくとも70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%のアミノ酸配列類似性を有し、好ましくは少なくとも70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする単離されたポリヌクレオチドである。
【0229】
好ましくは、単離されたポリヌクレオチドは、特定の宿主生物における発現に最適化されたコドン使用頻度を有し、またはRNA不安定性モチーフの含有率が低く、またはコドンリピートの含有率が低く、または潜在的スプライス部位の含有率が低く、または潜在的ポリA部位の含有率が低く、または潜在的miRNA標的の含有率が低く、またはRNA二次構造の含有率が低く、またはこれらの特徴を任意の組み合わせで有している。
【0230】
単離されたポリヌクレオチドのコドン使用頻度は、たとえば、植物での発現に最適化することができるが、好ましくは、イネ、トウモロコシ、コムギ、ナタネ、サトウキビ、ヒマワリ、テンサイ、タバコからなる一群から選択される植物における発現に最適化することができる。
【0231】
好ましくは、単離されたポリヌクレオチドは、特定の宿主生物におけるキメラエンドヌクレアーゼ発現用の機能的な発現カセットを形成するのに適した、プロモーター配列および転写終結配列と組み合わせて用いられる。
【0232】
適当なプロモーターはたとえば、構成的プロモーター、熱もしくは病原体誘導性プロモーター、または種子、花粉、花もしくは果実に特異的なプロモーターである。
【0233】
当業者にはそうした特徴を有する多くのプロモーターが知られている。
【0234】
たとえば、植物においていくつかの構成的プロモーターが知られている。それらのほとんどはウイルスもしくは細菌起源に由来するものであって、たとえばAgrobacterium tumefaciens由来のノパリンシンターゼ(nos)プロモーター(Shaw et al. (1984) Nucleic Acids Res. 12 (20) : 7831-7846)、マンノピンシンターゼ(mas)プロモーター(Co-mai et al. (1990) Plant Mol Biol 15(3):373-381)、もしくはオクトピンシンターゼ(ocs)プロモーター(Leisner and Gelvin (1988) Proc Natl Acad Sci USA 85 (5) :2553-2557)、またはカリフラワーモザイクウイルス由来のCaMV35Sプロモーター(US 5,352, 605)などである。後者は、植物における導入遺伝子の構成的発現に、もっとも多用された(Odell et al. (1985) Nature 313:810-812; Battraw and Hall (1990) Plant Mol Biol 15:527-538; Benfey et al. (1990) EMBO J 9(69):1677-1684; US 5,612,472)。しかしながら、このCaMV 35Sプロモーターは、異なる植物種のみならず、異なる植物組織においても、可変性を示す(Atanassova et al. (1998) Plant Mol Biol 37:275-85; Battraw and Hall (1990) Plant Mol Biol 15:527-538; Holtorf et al. (1995) Plant Mol Biol 29:637-646 ; Jefferson et al. (1987) EMBO J 6 :3901-3907)。さらに不利なのは、35Sプロモーターの転写制御活性が野生型CaMVウイルスで妨げられることである(Al-Kaff et al. (2000) Nature Biotechnology 18 :995-99)。構成的発現のためのもう1つのウイルスプロモーターはサトウキビ桿菌状ウイルス(Sugarcane bacilliform badnavirus)(ScBV)プロモーターである(Schenk et al. (1999) Plant Mol Biol 39 (6) :1221-1230)。
【0235】
植物の構成的プロモーターはいくつか報告されており、例としてシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のユビキチンプロモーター(Callis et al. (1990) J Biol Chem 265:12486- 12493; Holtorf S et al. (1995) Plant Mol Biol 29:637-747)があるが、これは、また一方で、選択マーカーの発現を制御できないと報告されており(WO03102198)、あるいは2つのトウモロコシユビキチンプロモーター(Ubi-1およびUbi-2; US 5,510,474; US 6,020, 190; US 6,054574)が挙げられるが、これは構成的発現プロファイルの他に、熱ショック誘導を示す(Christensen et al. (1992) Plant. Mol. Biol. 18(4):675-689)。安定して形質転換されたシロイヌナズナ属植物に基づく、CaMV 35S、オオムギのチオニンプロモーター、およびシロイヌナズナのユビキチンプロモーターの特異性および発現レベルの比較は、CaMV 35Sプロモーターについては高い発現率を示すが、チオニンプロモーターはほとんどの系統で不活性であり、シロイヌナズナのubi1プロモーターは中程度の発現活性しかもたらさなかった(Holtorf et al. (1995) Plant Mol Biol 29 (4):637-6469)。
【0236】
キメラ認識配列;
本発明には、キメラ認識配列を含有する単離されたポリヌクレオチドも含まれるが、このキメラ認識配列は約15から約300、または約20から約200、または約25から約100ヌクレオチドの長さであって、エンドヌクレアーゼの認識配列、および異種DNA結合ドメインの認識配列を含む。
【0237】
好ましくは、単離されたポリヌクレオチドは、ホーミングエンドヌクレアーゼのDNA認識配列、好ましくはLAGLIDADGエンドヌクレアーゼのDNA認識配列を含有する。
【0238】
ある実施形態において、単離されたポリヌクレオチドは、I-SceIのDNA認識配列を有する。
【0239】
好ましくは、単離されたポリヌクレオチドに含まれる異種DNA結合ドメインの認識配列は転写因子の認識配列である。より好ましくは、認識配列は転写因子scTet、scArcまたはAlcRの認識配列である。
【0240】
ある実施形態において、単離されたポリヌクレオチドは、I-SceIのDNA認識配列、および0から10ポリヌクレオチドのリンカー配列、およびscTet、scArcもしくはAlcRの認識配列を含んでいる。
【0241】
ある実施形態において、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号13、14、15、16、26、27、28、29、33、34、35、36、43、44、45および46からなる一群から選択される、DNA認識部位もしくはキメラ認識部位の配列を含んでいる。
【0242】
単離されたポリヌクレオチドは、キメラ認識部位、およびキメラヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド配列を組み合わせて含んでいてもよい。
【0243】
ベクター:
上記ポリヌクレオチドは、形質転換、トランスフェクション、クローニングもしくは過剰発現に適したDNAベクターに含まれていてもよい。
【0244】
一例として、上記ポリヌクレオチドは、非ヒト生物もしくは細胞の形質転換に適したベクターに含まれるが。この非ヒト生物は植物もしくは植物細胞であることが好ましい。
【0245】
本発明のベクターは通常、さらに機能性エレメントを含んでおり、この機能性エレメントとしては下記を挙げることができるが、それらに限定されるべきではない:
i) たとえば大腸菌(E. coli)において、本発明の発現カセットもしくはベクターの複製を保証する、複製開始点。例として挙げられるのは、ORI(DNA複製開始点)、pBR322 ori、またはP15A oriである。(Sam-brook et al.: Molecular Cloning. A Laboratory Manual, 2nd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)。
ii) 1つもしくは複数の核酸配列の挿入が可能であって、その挿入を促進する、多重クローニング部位(MCS)。
iii) 宿主生物のゲノム内への相同組み換えもしくは挿入を可能にする配列。
iv)植物ゲノム内への移動および組み込みのために、植物細胞内でアグロバクテリウムを介した伝達を可能にする、たとえば、T-DNAのライトボーダーもしくはレフトボーダーまたはvir領域といった、ボーダー配列などのエレメント。
【0246】
マーカー配列:
「マーカー配列」という用語は、広義では、形質転換された細胞、組織、または生物(たとえば、植物)の検出、同定、または選択を容易にする、すべてのヌクレオチド配列(および/またはそれから翻訳されたポリペプチド配列)を含むものと理解されるべきである。「形質転換された植物材料の選択を可能にする配列」、「選択マーカー」または「選択マーカー遺伝子」または「選択マーカータンパク質」または「マーカー」という表現は、基本的に同じ意味を持つ。
【0247】
マーカーには、選択可能なマーカーおよびスクリーニング可能なマーカーがある(が、これらに限定されない)。選択可能なマーカーは、細胞もしくは生物に、結果として増殖もしくは生存能力の相違をもたらす表現型を与える。選択可能なマーカーは、選択物質(たとえば除草剤もしくは抗生物質もしくはプロドラッグ)と相互作用して、この表現型を生じさせることができる。スクリーニング可能なマーカーは、細胞もしくは生物に、簡単に検出できる表現型、好ましくは、色もしくは染色などの、目で見て検出できる表現型を与える。スクリーニング可能なマーカーは、スクリーニング物質(たとえば色素)と相互作用して、この表現型を生じさせることができる。
【0248】
選択可能なマーカー(または選択可能なマーカー配列)には下記のものがあるがこれらに限定されない:
a) ネガティブ選択マーカー、これは1つもしくは複数の毒物(植物の場合、植物に有害な物質)、たとえば抗生物質、除草剤、もしくは他の殺生物剤に対する抵抗性を与えるものである、
b) 対抗選択マーカー、これは(たとえば、毒性のない化合物を有毒な化合物に変換することによって)特定の化合物に対する感受性を与えるものである、ならびに
c) ポジティブ選択マーカー、これは(たとえば、オーキシン、ジベレリン、サイトカイニン、アブシジン酸およびエチレンなどの植物ホルモンの生産をもたらす、サイトカイニンもしくはホルモン生合成の重要成分の発現によって;Ebinuma H et al. (2000) Proc Natl Acad Sci USA 94:2117-2121)増殖優位性を与えるものである。
【0249】
ネガティブ選択マーカーを使用する場合、前記ネガティブ選択マーカーを含有する細胞もしくは植物だけが選択される。対抗選択マーカーを使用する場合、前記対抗選択マーカーを持たない細胞もしくは植物だけが選択される。対抗選択マーカーを用いて、ゲノムからの、(前記の対抗選択マーカーを含む)配列の除去の成功を検証することができる。スクリーニング可能なマーカー配列には、レポーター遺伝子(たとえば、ルシフェラーゼ、グルクロニダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)など)があるがこれに限定されない。好ましいマーカー配列には次のものがあるがこれらに限定されない。
【0250】
i) ネガティブ選択マーカー
通例、ネガティブ選択マーカーは、形質転換に成功した細胞を選択するのに有用である。ネガティブ選択マーカーは、本発明のDNA構築物を用いて導入されているが、殺生物剤もしくは植物に有害な物質(たとえば、ホスフィノトリシン、グリホサートもしくはブロモキシニルなどの除草剤)、2-デオキシグルコース-6-リン酸(WO 98/45456)などの代謝阻害剤、または抗生物質、たとえば、テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン、G418、ネオマイシン、ブレオマイシンもしくはハイグロマイシンに対する抵抗性を、形質転換に成功した細胞に、与えることができる。ネガティブ選択マーカーは、形質転換されない細胞から形質転換された細胞を選択することを可能にする(McCormick et al. (1986) Plant Cell Reports 5:81-84)。本発明のベクター中のネガティブ選択マーカーを、2つ以上の生物において抵抗性を与えるために使用することができる。たとえば、本発明のベクターは、細菌(大腸菌もしくはアグロバクテリウム(Agrobacterium))および植物での増幅のための選択マーカーを含有することができる。大腸菌のための択可能なマーカーの例としては、抗生物質、すなわちアンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシン、エリスロマイシンに対する耐性を特定する遺伝子、または他のタイプの選択可能な酵素活性、たとえばガラクトシダーゼを与える遺伝子、またはラクトースオペロンがある。哺乳動物細胞に使用するのに適した、選択可能なマーカーとしては、たとえば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(DHFR)、チミジンキナーゼ遺伝子(TK)、または薬剤耐性を与える原核細胞遺伝子、gpt(キサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ)、これはミコフェノール酸を用いて選択することができる; neo(ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ)、これはG418、ハイグロマイシン、もしくはピューロマイシンを用いて選択することができる;ならびにDHFR(ジヒドロ葉酸還元酵素)、これはメトトレキサートを用いて選択することができる:が挙げられる。植物細胞のための選択マーカーは、殺生物剤もしくは抗生物質、たとえば、カナマイシン、G418、ブレオマイシン、ハイグロマイシン、もしくはクロラムフェニコールに対する耐性、または除草剤抵抗性、たとえばクロルスルフロンもしくはバスタに対する抵抗性を与えることが多い。
【0251】
特に好ましいネガティブ選択マーカーは、除草剤抵抗性を与えるものである。ネガティブ選択マーカーの例としては下記のものがある。
【0252】
- ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(PAT)をコードするDNA配列、この酵素はグルタミン合成酵素阻害剤であるホスフィノトリシン(PPT)の遊離アミノ基をアセチル化することでPPTを無毒化する(de Block et al. (1987) EMBO J 6:2513-2518)(ビアラホス抵抗性遺伝子barとしても言及されている;EP 242236)。
【0253】
- 5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素遺伝子(EPSP合成酵素遺伝子)、これはグリホサート(N-(ホスホノメチル)グリシン)に対する抵抗性を与える。
【0254】
- gox遺伝子、これはグリホサート分解酵素であるグリホサートオキシドレダクターゼをコードする。
【0255】
- deh遺伝子(ダラポンを不活化する脱ハロゲン酵素をコードする)。
【0256】
- アセト乳酸合成酵素、これはスルホニル尿素およびイミダゾリノンに対する耐性を与える。
【0257】
- bxn遺伝子、これはブロモキシニルを分解するニトリラーゼ酵素をコードする。
【0258】
- カナマイシン、またはG418耐性遺伝子(NPTII)。NPTII遺伝子はリン酸化反応により、カナマイシン、ネオマイシン、G418およびパロモマイシンの阻害作用を低下させるネオマイシンホスホトランスフェラーゼをコードする(Beck et al (1982) Gene 19: 327)。
【0259】
- DOGR1遺伝子。DOGR1遺伝子は、酵母Saccharomyces cerevisiaeから単離された(EP 0 807 836)。これは、2-DOGに対する抵抗性を与える2-デオキシグルコース-6-リン酸ホスファターゼをコードする(Randez-Gil et al. (1995) Yeast 11:1233-1240)。
【0260】
- hyg遺伝子、これは酵素、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼをコードしており、抗生物質ハイグロマイシンに対する耐性を与える(Gritz and Davies (1983) Gene 25: 179)。
【0261】
- 特に好ましいのは、たとえばD-アラニンおよびD-セリンなどのD-アミノ酸による有毒作用に対する耐性を与えるネガティブ選択マーカーである(WO 03/060133; Erikson 2004)。これに関連して、ネガティブ選択マーカーとして特に好ましいのは、酵母Rhodotorula gracilis (Rhodosporidium toruloides)由来daol遺伝子(EC: 1.4. 3.3 : GenBank Acc.-No.: U60066)および大腸菌遺伝子dsdA(D-セリンデヒドラターゼ(D-セリンデアミナーゼ)、EC: 4.3. 1.18; GenBank Acc.-No.: J01603)である。
【0262】
ii) ポジティブ選択マーカー
ポジティブ選択マーカーには、サイトカイニン生合成の重要な酵素として、形質転換された植物の再生を促進することができる、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens) (菌株:PO22; Genbank Acc.-No.: AB025109)由来のイソペンテニルトランスフェラーゼのような増殖刺激選択マーカー(たとえば、サイトカイニンを含まない培地上で選択)があるがこれらに限定されない。対応する選択方法が記載されている(Ebinuma H et al. (2000) Proc Natl Acad Sci USA 94:2117-2121; Ebinuma H et al. (2000) Selection of Marker-free transgenic plants using the oncogenes (ipt, rol A, B, C) of Agrobacterium as selectable markers, In Molecular Biology of Woody Plants. Kluwer Academic Publishers)。形質転換されないものと比べて形質転換された植物に増殖優位性を与える、他のポジティブ選択マーカーは、たとえば、EP-A 0 601 092に記載されている。増殖刺激選択マーカーにはβグルクロニダーゼ(たとえばサイトカイニングルクロニドと組み合わせ)、マンノース-6-リン酸イソメラーゼ(マンノースと組み合わせ)、UDP-ガラクトース-4-エピメラーゼ(たとえばガラクトースと組み合わせ)を含めることができる(がそれに限定すべきではない)。マンノースと組み合わせたマンノース-6-リン酸イソメラーゼが特に好ましい。
【0263】
iii) 対抗選択マーカー
対抗選択マーカーは、正しく欠失させた配列による生物の選択を可能にする(Koprek T et al. (1999) Plant J 19(6):719-726)。チミジンキナーゼ(TK)およびジフテリア毒素A断片(DT-A)、シトシンデアミナーゼをコードするcodA遺伝子(Gleve AP et al. (1999) Plant Mol Biol 40(2):223-35; Pereat RI et al. (1993) Plant Mol Biol 23(4):793-799; Stougaard J (1993) Plant J 3:755-761)、シトクロムP450遺伝子(Koprek et al. (1999) Plant J 16:719-726)、ハロアルカン脱ハロゲン酵素をコードする遺伝子(Naested H (1999) Plant J 18:571-576)、iaaH遺伝子(Sundaresan V et al. (1995) Genes & Development 9:1797-1810)、tms2遺伝子(Fedoroff NV & Smith DL (1993) Plant J 3:273- 289)、およびD-アミノ酸の変換により有毒作用を引き起こすD-アミノ酸オキシダーゼ(WO 03/ 060133)。
【0264】
好ましい実施形態において、除去カセットは、これらをまだ含有している植物から正しく切り取られた配列を有する植物細胞もしくは植物を区別することができる、少なくとも1つの前記対抗選択マーカーを含む。より好ましい実施形態において、本発明の除去カセットは、二重機能マーカー、すなわち選抜法で用いられる基質に応じて、ネガティブ選択マーカーとしても対抗選択マーカーとしても使用することができるマーカーを含有する。二重機能マーカーはたとえば、酵母Rhodotorula gracilis由来のdaol遺伝子(EC: 1.4. 3.3 : GenBank Acc.-No.: U60066)であるが、これはD-アラニンおよびD-セリンなどのD-アミノ酸とともにネガティブ選択マーカーとして、ならびにD-イソロイシンおよびD-バリンなどのD-アミノ酸とともに対抗選択マーカーとして使用することができる(欧州特許出願第04006358.8号を参照されたい)。
【0265】
iv) スクリーニング可能なマーカー(レポーター遺伝子)
スクリーニング可能なマーカー(レポーター遺伝子など)は、簡単に数値化できる、もしくは検出できるタンパク質をコードしており、これは、内色素もしくは酵素活性によって、形質転換効率、または発現の位置もしくはタイミングを確実に評価する。特に好ましいのは、次のようなレポータータンパク質をコードする遺伝子である(Schenborn E, Groskreutz D. (1999) Mol Biotechnol 13(1):29-44も参照されたい):
- 「緑色蛍光タンパク質」(GFP)(Chui WL et al. (1996) Curr Biol 6:325-330; Lef-fel SM et al. (1997) Biotechniques 23(5):912-8; Sheen et al. (1995) Plant J 8(5):777-784; Haseloff et al. (1997) Proc Natl Acad Sci USA 94(6):2122-2127; Reichel et al. (1996) Proc Natl Acad Sci USA 93(12):5888-5893; Tian et al. (1997) Plant Cell Rep 16:267-271; WO 97/41228)、
- クロラムフェニコールトランスフェラーゼ、
- ルシフェラーゼ(Millar et al. (1992) Plant Mol Biol Rep 10:324-414; Ow et al. (1986) Science 234:856-859)、これは生物発光の検出により選択が可能となる、
- βガラクトシダーゼ、これはさまざまな発色基質が利用できる酵素をコードする、
- βグルクロニダーゼ(GUS)(Jefferson et al. (1987) EMBO J 6:3901-3907)またはuidA遺伝子、これはさまざまな発色基質に対する酵素をコードする、
- R遺伝子座遺伝子産物:植物組織においてアントシアニン色素(赤色着色)の生成を制御し、そうすることで追加の補助剤もしくは発色基質を加えることなく、プロモーター活性の直接的な分析を可能にするタンパク質(Dellaporta et al. (1988) In: Chromosome Structure and Function: Impact of New Concepts, 18th Stadler Genetics Symposium, 11:263-282)、
- βラクタマーゼ(Sutcliffe (1978) Proc Natl Acad Sci USA 75:3737-3741)、さまざまな発色基質(たとえばPADAC、発色性セファロスポリン)に対する酵素、
- xylE遺伝子産物(Zukowsky et al. (1983) Proc Natl Acad Sci USA 80:1101-1105)、発色するカテコール類を変換することができるカテコールジオキシゲナーゼ、
- αアミラーゼ(Ikuta et al. (1990) Bio/technol. 8:241-242)、
- チロシナーゼ(Katz et al.(1983) J Gene Microbiol 129:2703-2714)、チロシンを酸化してDOPAおよびドーパキノンを与える酵素であって、これらは次にメラニンを形成し、これは容易に検出できる、
- エクオリン(Prasher et al.(1985) Biochem Biophys Res Commun 126(3):1259-1268)、これはカルシウム感受性生物発光検出に使用できる。
【0266】
標的生物
形質転換またはキメラエンドヌクレアーゼの導入に適した任意の生物を標的生物として使用することができる。これには、原核生物、真核生物、および古細菌が含まれ、特に非ヒト生物、植物、真菌もしくは酵母であるが、ヒトもしくは動物細胞も含まれる。
【0267】
ある実施形態において標的生物は植物である。
【0268】
「植物」という用語には、植物全体、苗条栄養器官/構造(たとえば、葉、茎および塊茎)、根、花および花器官/構造(たとえば、苞葉、萼片、花弁、雄蘂、心皮、葯、および胚珠)、種子(胚、内胚乳、および種皮など)、および果実(成熟した子房)、植物組織(たとえば、維管束組織、基本組織など)、および細胞(たとえば、孔辺細胞、卵細胞、トリコームなど)、ならびにそれらの後代が含まれる。本発明の方法に使用することができる植物の種類は概して、形質転換法を受け入れられる高等植物および下等植物の分類ほど広範であって、被子植物(単子葉および双子葉植物)、裸子植物、シダ類、および多細胞藻類などがある。それには、異数体、倍数体、2倍体、半数体、および半接合体などのさまざまな倍数性レベルの植物が含まれる。
【0269】
植物界の高等および下等植物のあらゆる属および種が本発明の範囲に含まれる。さらに、成熟植物体、種子、苗条および幼苗、および部分、種苗(たとえば、種子および果実)、ならびに培養物、たとえば、それらに由来する細胞培養物が含まれる。
【0270】
下記の植物の科に属する植物および植物材料が好ましい:ヒユ科(Amaranthaceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、ナデシコ科(Caryophyllaceae)、アカザ科(Chenopodiaceae)、キク科(Compositae)、ウリ科(Cucurbitaceae)、シソ科(Labiatae)、マメ科(Leguminosae)、マメ亜科(Papilionoideae)、ユリ科(Liliaceae)、アマ科(Linaceae)、アオイ科(Malvaceae)、バラ科(Rosaceae)、ユキノシタ科(Saxifragaceae)、ゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)、ナス科(Solanaceae)、ツルナ科(Tetragoniaceae)。
【0271】
一年生、多年生、単子葉および双子葉植物が、トランスジェニック植物の作製に好ましい宿主生物である。さらに、組み換え系、すなわち本発明の方法を使用することは、すべての観賞植物、有用樹木もしくは鑑賞樹、花、切り花、低木、もしくは芝生において有利である。前記植物には、コケ植物、たとえば苔綱(苔類)および蘚綱(蘚類);シダ植物、たとえばシダ類、トクサ類、およびヒカゲノカズラ; 裸子植物、たとえば針葉樹、ソテツ、イチョウ、およびグネツム科(Gnetaceae);藻類、たとえば緑藻綱(Chlorophyceae)、褐藻綱(Phaeophpyceae)、紅藻網(Rhodophyceae)、藍藻綱(Myxophyceae)、黄緑藻綱(Xanthophyceae)、珪藻綱(Bacillariophyceae)(珪藻)、およびユーグレナ藻綱(Euglenophyceae)を含めることができるが、それらに限定されるべきではない。
【0272】
本発明の目的にかなう植物は、バラなどのバラ科(Rosaceae)、シャクナゲおよびツツジなどのツツジ科(Ericaceae)、ポインセチアおよびクロトンなどのトウダイグサ科(Euphorbiaceae)、ナデシコなどのナデシコ科(Caryophyllaceae)、ペチュニアなどのナス科(Solanaceae)、アフリカスミレなどのイワタバコ科(Gesneriaceae)、ホウセンカなどのツリフネソウ科(Balsaminaceae)、ランなどのラン科(Orchidaceae)、グラジオラス、アヤメ、フリージア、およびクロッカスなどのアヤメ科(Iridaceae)、マリーゴールドなどのキク科(Compositae)、ゼラニウムなどのフウロソウ科(Geraniaceae)、ドラセナなどのユリ科(Liliaceae)、イチジクなどのクワ科(Moraceae)、フィロデンドロンなどのサトイモ科(Araceae)に加えて他にも多数ある。
【0273】
本発明のトランスジェニック植物はさらに、具体的には、双子葉の作物の中から、たとえば、マメ科(Leguminosae)、エンドウ、アルファルファ、およびダイズなど;ナス科(Solanaceae)、タバコおよびその他多数;セリ科(Umbelliferae)、とくに、ニンジン属(Daucus)、なかでもとくにニンジン(D. carota)およびオランダミツバ属(Apium)、なかでもとくにセロリ(A. graveolens L. var dulce)、ならびにその他多数;ナス科(Solanaceae)、とくにトマト属(Lycopersicon)、なかでもとくにトマト(L. esculentum)、およびナス属(Solanum)、なかでもとくにジャガイモ(S. tuberosum)およびナス(S. melongena)、ならびにその他多数;さらにはトウガラシ属(Capsicum)、なかでもとくにトウガラシ(C. annuum)およびその他多数;マメ科(Leguminosae)、とくにダイズ属(Glycine)、なかでもとくにダイズ(G. max)およびその他多数;アブラナ科(Cruciferae)、とくにアブラナ属(Brassica)、なかでもとくにセイヨウアブラナ(B. napus)、アブラナ在来種(カブ)(B. campestris) 、キャベツ(栽培品種Tastie)(B. oleracea cv Tastie)、カリフラワー(栽培品種Snowball)(B. oleracea cv Snowball)、およびブロッコリー(栽培品種Emperor)(B. oleracea cv Emperor);ならびにシロイヌナズナ属(Arabidopsis)、なかでもとくにシロイヌナズナ(A. thaliana)およびその他多数;キク科(Compositae)、とくにアキノノゲシ属(Lactuca)、なかでもとくにレタス(L. sativa)およびその他多数;から選択される。
【0274】
本発明のトランスジェニック植物は、とくに単子葉の作物の中から、たとえば、コムギ、オオムギ、モロコシおよびキビ、ライムギ、ライコムギ、トウモロコシ、イネ、またはオートムギなどの穀類、およびサトウキビから選択される。
【0275】
特に好ましいのは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、タバコ(Nicotiana tabacum)、アブラナ、ダイズ、トウモロコシ、コムギ、アマニ、ジャガイモ、およびマンジュギクである。
【0276】
さらに、本発明の目的にかなう植物は、光合成作用を有する他の生物、たとえば、藻類もしくはラン藻、および蘚類である。好ましい藻類は、緑藻類、たとえばHaematococcus属、フェオダクチラム(Phaeodactylum tricornatum)、ボルボックス(Volvox)属またはドナリエラ(Dunaliella)属の藻類である。
【0277】
ヒトもしくは動物が摂取することができる本発明の遺伝子組み換え植物は、たとえばそのまま、またはその後加工して、食物または飼料としても使用することができる。
【0278】
ポリヌクレオチド構築物の構築
典型的には、非ヒト生物もしくは細胞、たとえば植物もしくは植物細胞に導入されるべきポリヌクレオチド構築物(たとえば発現カセットのための)は、導入遺伝子発現法を用いて調製される。組み換え発現法は、組み換え核酸の構築およびトランスフェクト細胞での遺伝子発現を含んでいる。こうした目的を達成する分子クローニング技術は当技術分野で知られている。組み換え核酸の構築に適した、さまざまなクローニングおよびin vitro増幅法は、当業者によく知られている。多くのクローニングの実習を通じて、当業者に十分指示することができる、上記の技術および教示の例は、Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology, Vol.152, Academic Press, hic., San Diego, CA (Berger) ; Current Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausubel et al., eds., Current Protocols, a joint venture between Greene Publish-ing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., (1998 Supplement), T. Maniatis, E.F. Fritsch and J. Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1989), T.J. Silhavy, M.L. Berman and L.W. Enquist, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1984)に見いだされる。本発明で使用されるDNA構築物は、当業者によく知られた組み換え、およびクローニング技術を用いて、前記配列内で、DNA構築物の前記必須成分を結合することによって作製されることが好ましい。
【0279】
ポリヌクレオチド構築物の構築は、概して、細菌において複製可能なベクターを使用する必要がある。細菌からプラスミドを精製するための数多くのキットが市販されている。単離精製されたプラスミドをその後さらに操作して、他のプラスミドを作製し、細胞にトランスフェクトするために使用してもよく、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)もしくはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)に導入して植物に感染させ、植物を形質転換することもできる。アグロバクテリウムが形質転換の手段である場合、シャトルベクターが構築される。
【0280】
構築物を標的細胞に導入するための方法
本発明で使用されるDNA構築物は、このDNA構築物が挿入されているベクターを用いて、細胞内に有利に導入することができる。ベクターの例は、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス、レトロウイルス、またはアグロバクテリアとすることができる。有利な実施形態において、発現カセットは、プラスミドベクターを用いて導入される。好ましいベクターは、発現カセットを宿主ゲノム内に安定して組み込むことができるベクターである。
【0281】
DNA構築物は、形質転換と呼ばれる手順である、当業者に知られているいくつかの手段のいずれかによって、標的植物細胞および/または生物に導入することができる(Keown et al. (1990) Meth Enzymol 185:527-537も参照されたい)。たとえば、DNA構築物は、さまざまな従来技術によって、培養下でも、植物器官においても、細胞に導入することができる。たとえば、DNA構築物は、DNA微粒子銃などの衝撃法を用いて直接、植物細胞に導入することができるが、細胞のエレクトロポレーションおよびマイクロインジェクションなどの技術を用いて導入することもできる。粒子を介した形質転換法(「微粒子銃」としても知られる)は、たとえば、Klein et al. (1987) Nature 327:70-73; Vasil V et al. (1993) BiolTechnol 11:1553-1558; およびBecker D et al. (1994) Plant J 5:299-307に記載されている。これらの方法は、核酸を、小ビーズもしくは微粒子のマトリックス内部か表面上に有する微小粒子による、細胞の貫通を伴うものである。微粒子銃PDS-1000 Gene Gun (Biorad, Hercules, CA) は、DNAコーティングした金またはタングステン微小担体を標的細胞に向かって加速するためにヘリウムガスを使用する。このプロセスは、植物を含めた生物の広範な組織および細胞に適用できる。他の形質転換法も当業者に知られている。
【0282】
マイクロインジェクション法は、当技術分野で知られており、科学文献および特許文献に十分記載されている。また、細胞は、化学的に、たとえばポリエチレングリコールを用いて、透過性にすることができるので、DNAは拡散によって細胞に入ることができる。DNAはまた、ミニ細胞、細胞、リソソームまたはリポソームなどの他のDNA含有ユニットとのプロトプラスト融合によって導入することもできる。ポリエチレングリコール(PEG)沈殿を用いたDNA構築物の導入は、Paszkowski et al. (1984) EMBO J 3:2717に記載されている。リポソームに基づく遺伝子デリバリーは、たとえば、WO 93/24640; Mannino and Gould-Fogerite (1988) BioTechniques 6(7):682-691; US 5,279,833; WO 91/06309; およびFelgner et al. (1987) Proc Natl Acad Sci USA 84:7413-7414)に記載されている。
【0283】
DNAを導入するもう1つの適当な方法はエレクトロポレーションであって、この場合細胞は、電気的パルスによって可逆的に透過性となる。エレクトロポレーション法は、Fromm et al. (1985) Proc Natl Acad Sci USA 82:5824に記載されている。植物プロトプラストの、PEGによる形質転換およびエレクトロポレーションは、Lazzeri P (1995) Methods Mol Biol 49:95-106で検討されている。挙げることができる好ましい一般法は、リン酸カルシウムによるトランスフェクション、DEAEデキストランによるトランスフェクション、カチオン性脂質によるトランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、および感染である。このような方法は当業者に知られており、たとえば、Davis et al., Basic Methods In Molecular Biology (1986)に記載されている。植物および細胞培養のための遺伝子導入法の総説については、Fisk et al. (1993) Scientia Horticulturae 55:5-36およびPotrykus (1990) CIBA Found Symp 154:198を参照されたい。
【0284】
単子葉植物および双子葉植物のいずれにおいても異種遺伝子を導入し発現させるための方法が知られている。たとえば、US 5,633,446, US 5,317,096, US 5,689,052, US 5,159,135, およびUS 5,679,558; Weising et al. (1988) Ann. Rev. Genet. 22: 421-477を参照されたい。単子葉植物の形質転換は、詳細には、エレクトロポレーション(たとえば、Shimamoto et al. (1992) Nature 338:274-276);微粒子銃(たとえば、EP-A1 270,356);およびアグロバクテリウム(たとえば、Bytebier et al. (1987) Proc Natl Acad Sci USA 84:5345-5349)などの、さまざまな技術を用いることができる。
【0285】
植物において、当業者によく知られている、植物組織もしくは植物細胞から植物を形質転換して再生させる方法は、一過性形質転換または安定な形質転換のために利用される。適当な方法は特に、ポリエチレングリコールによるDNA取り込みを用いたプロトプラスト形質転換、遺伝子銃などの微粒子銃による方法(「粒子衝撃」法)、エレクトロポレーション、乾燥した胚のDNA含有溶液中でのインキュベーション、超音波処理およびマイクロインジェクション、ならびに組織もしくは胚へのマイクロもしくはマクロインジェクションによる無傷の細胞もしくは組織の形質転換、組織エレクトロポレーション、または種子の真空浸潤法である。植物細胞へのDNAのインジェクションもしくはエレクトロポレーションの場合、使用するプラスミドは何ら特別な要件に合致する必要はない。pUC系のプラスミドのような単純なプラスミドを使用することができる。形質転換された細胞から完全な植物体を再生させるつもりならば、プラスミド上に追加の選択可能なマーカー遺伝子が存在することが役立つ。
【0286】
このような「直接的な」形質転換法に加えて、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)を用いた細菌の感染によっても形質転換を行うことができる。これらの菌株は、プラスミド(TiまたはRiプラスミド)を含有する。このプラスミドのT-DNA(転移DNA)と呼ばれる部分は、アグロバクテリウムの感染後、植物に移動し、植物細胞のゲノムに組み込まれる。
【0287】
アグロバクテリウムによる植物の形質転換のために、本発明のDNA構築物を、適当なT-DNAフランキング領域と組み合わせて、従来のアグロバクテリウム・ツメファシエンス宿主ベクターに導入することができる。細胞に細菌が感染したとき、A.ツメファシエンス宿主の毒性機能が、植物細胞DNAへの導入遺伝子および隣接するマーカー遺伝子(もしあれば)の挿入を指示する。アグロバクテリウム・ツメファシエンスによる形質転換法は、科学文献に十分記載されている。たとえば、Horsch et al. (1984) Science 233:496-498, Fraley et al. (1983) Proc Natl Acad Sci USA 80:4803-4807, Hooykaas (1989) Plant Mol Biol 13:327-336, Horsch RB (1986) Proc Natl Acad Sci USA 83(8):2571-2575), Bevans et al. (1983) Nature 304:184-187, Bechtold et al. (1993) Comptes Rendus De L’Academie Des Sciences Serie III-Sciences De La Vie-Life Sciences 316:1194-1199, Valvekens et al. (1988) Proc Natl Acad Sci USA 85:5536-5540を参照されたい。
【0288】
本発明のDNA構築物は、特定のプラスミド、シャトルベクターもしくは中間ベクター、またはバイナリーベクターに組み込まれることが好ましい。たとえば、TiもしくはRiプラスミドを形質転換に使用するつもりならば、TiもしくはRiプラスミドT-DNAの、少なくともライトボーダーであるが、ほとんどの場合ライトボーダーおよびレフトボーダーは、発現カセットと結合し、フランキング領域として導入される。バイナリーベクターを使用することが好ましい。バイナリーベクターは、大腸菌とアグロバクテリウムの両方で複製する能力を有する。通例、バイナリーベクターは選択マーカー遺伝子、および右もしくは左側のT-DNAフランキング配列に隣接するリンカーもしくはポリリンカーを含有する。バイナリーベクターは、直接アグロバクテリウムに入れて形質転換することができる(Holsters et al. (1978) Mol Gen Genet 163:181-187)。選択マーカー遺伝子は、形質転換されたアグロバクテリウムの選択を可能にするが、たとえば、nptII遺伝子であって、これはカナマイシン耐性を付与する。アグロバクテリウムはこの場合宿主生物の役割を果たしているが、これは当然vir領域を有するプラスミドを含有すべきである。vir領域はT-DNAを植物細胞に移すために必要である。こうして形質転換されたアグロバクテリウムは、植物細胞を形質転換するために使用することができる。
【0289】
アグロバクテリウム・ツメファシエンスの多くの菌株は、遺伝物質 - たとえば、本発明のDNA構築物 - を移行させる能力を有しており、その菌株はたとえば、菌株EHA101(pEHA101)(Hood EE et al. (1996) J Bacteriol 168(3):1291-1301)、EHA105(pEHA105)(Hood et al. 1993, Transgenic Research 2, 208-218)、LBA4404(pAL4404)(Hoekema et al. (1983) Nature 303:179-181)、C58C1(pMP90)(Koncz and Schell (1986) Mol Gen Genet 204,383-396)およびC58C1(pGV2260)(De-blaere et al. (1985) Nucl Acids Res. 13, 4777-4788)などである。
【0290】
形質転換に使用されるアグロバクテリウム菌株は、その病原性をなくした(disarmed)Tiプラスミドに加えて、導入されるべきT-DNAを有するバイナリープラスミドを含有しており、このプラスミドは通例、形質転換された細胞を選択するための遺伝子、および導入されるべき遺伝子を含有する。2つの遺伝子は、転写および翻訳の開始および終結シグナルを備えていなければならない。バイナリープラスミドは、たとえば、エレクトロポレーションもしくは他の形質転換法によって、アグロバクテリウム菌株に導入することができる(Mozo & Hooykaas (1991) Plant Mol Biol 16:917-918)。植物の外植片とアグロバクテリウム菌株の共培養は、通常、2、3日間行う。
【0291】
さまざまなベクターを使用することができる。原則として、アグロバクテリウムを介した形質転換、言い換えるとアグロバクテリウム感染、に使用することができるベクター、すなわち、T-DNA内に本発明のDNA構築物を含有するベクター、実際に植物ゲノムにT-DNAを安定して組み込むことができるベクターを識別する。さらに、ボーダー配列のないベクターを使用してもよく、これはたとえば、微粒子銃で植物細胞内に入れて形質転換することが可能であって、この場合一過性の発現および安定した発現をいずれももたらすことができる。
【0292】
植物細胞の形質転換のためのT-DNAの使用が研究され、集中的に報告されている(EP-A1 120 516; Hoekema, In: The Binary Plant Vector System, Offset-drukkerij Kanters B. V., Alblasserdam, Chapter V; Fraley et al. (1985) Crit Rev Plant Sci 4:1-45およびAn et al. (1985) EMBO J 4:277-287)。さまざまなバイナリーベクターが知られており、その中には、たとえばpBIN19 (Clontech Laboratories, Inc. USA)のように市販されているものもある。
【0293】
DNAを植物細胞に導入するために、植物外植片をアグロバクテリウム・ツメファシエンスまたはアグロバクテリウム・リゾゲネスとともに共培養する。感染した植物材料(たとえば、葉、根、または茎の切片であるが、植物細胞のプロトプラストもしくは懸濁液も)から出発して、適当な培地を用いて完全な植物体を再生することができるが、この培地は形質転換された細胞を選択するために、たとえば、抗生物質もしくは殺生物剤を含有することができる。得られた植物は、その後、導入されたDNA、この場合は本発明のDNA構築物、の存在についてスクリーニングを行うことができる。DNAが宿主ゲノムに組み込まれたならば、当該の遺伝子型は概して安定であり、当該の挿入は次世代にも認められる。通例、組み込まれた発現カセットは、殺生物剤(たとえば、除草剤)または抗生物質、たとえばカナマイシン、G418、ブレオマイシン、ハイグロマイシンもしくはホスフィノトリシンなどに対する耐性を形質転換された植物に与える、選択マーカーを含有する。選択マーカーは、形質転換された細胞の選択を可能にする(McCormick et al., Plant Cell Reports 5 (1986), 81-84)。得られた植物は、通常のやり方で栽培し、交雑させることができる。ゲノムの組み込みが安定であり、かつ遺伝することを確認するために、2世代以上栽培すべきである。
【0294】
上記の方法は、たとえば、B. Jenes et al., Techniques for Gene Transfer;Transgenic Plants, Vol. 1, Engineering and Utilization edited by SD Kung and R Wu, Academic Press (1993), 128-143、およびPotrykus (1991) Annu Rev Plant Physiol Plant Molec Biol 42:205-225に記載されている。発現されるべき構築物は、好ましくは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス、たとえばpBin19 (Bevan et al. (1984) Nucl Acids Res 12:8711)の形質転換に適したベクターにクローニングされる。
【0295】
本発明のDNA構築物を用いて、基本的に任意の植物に望ましい特徴を与えることができる。当業者は、DNA構築物がトランスジェニック植物に安定に組み込まれ、機能しうると確認されたら、それを雌雄の交雑によって他の植物に導入できると認識するであろう。交雑させる種に応じて、多数の標準的な育種法のうち任意のものを使用することができる。
【0296】
あるいはまた、ヌクレアーゼもしくはキメラエンドヌクレアーゼは、一過性に発現されることがある。キメラエンドヌクレアーゼは、標的細胞に導入されたDNAもしくはRNAとして一過性に発現されることがあり、および/またはタンパク質として送達されることもある。タンパク質としてのデリバリーは、ヌクレアーゼもしくはキメラエンドヌクレアーゼと融合した、細胞膜透過性ペプチドの助けにより、またはSEciVシグナルペプチドとの融合により達成することができるが、これらはデリバリー生物から標的生物の細胞内への分泌、たとえばアグロバクテリウム・リゾゲネスまたはアグロバクテリウム・ツメファシエンスから植物細胞への分泌を仲介するものである。
【0297】
トランスジェニック植物の再生
形質転換された細胞、すなわ宿主細胞のDNAに組み込まれたDNAを含有する細胞は、選択可能なマーカーが導入されたDNAの一部を占めているならば、形質転換されていない細胞から選別することができる。マーカーはたとえば、抗生物質もしくは除草剤に対する耐性を与えることができる任意の遺伝子とすることができる(たとえば上記を参照されたい)。こうしたマーカー遺伝子を発現する形質転換細胞は、形質転換されていない野生型を死滅させる、適当な抗生物質もしくは除草剤の濃度のもとで生存することができる。形質転換された植物細胞が作製されたならば、当業者に公知の方法を用いて、完全な植物体を得ることができる。たとえば、カルス培養を出発材料として使用する。芽および根の形成は、この未だ分化していない細胞生物体において既知の方法で誘導することができる。得られた芽を植えて栽培することができる。
【0298】
上記形質転換法のいずれかによって得られた、形質転換された植物細胞を培養して、形質転換された遺伝子型を有する、したがって望ましい表現型を有する、完全な植物体を再生させることができる。こうした再生技術は、組織培養増殖培地中の特定の植物ホルモンの操作に依存するが、典型的には、望ましいヌクレオチド配列とともに導入された殺生物剤および/または除草剤マーカーに依存する。培養されたプロトプラストからの植物の再生は、Evans et al., Protoplasts Isolation and Culture, Handbook of Plant Cell Culture, pp. 124176, Macmillian Publishing Company, New York (1983); およびBinding, Regeneration of Plants, Plant Protoplasts, pp. 21-73, CRC Press, Boca Raton, (1985)に記載されている。再生は、植物のカルス、外植片、体細胞胚(Dandekar et al. (1989) J Tissue Cult Meth 12:145; McGranahan et al. (1990) Plant Cell Rep 8:512)、器官、またはそれらの一部から得ることができる。こうした再生技術は、Klee et al. (1987) Ann Rev Plant Physiol 38:467-486に全般的に記載されている。
【0299】
他の組み換え促進技術の併用
さらに好ましい実施形態において、形質転換系の効率は、相同組み換えを促進する系の併用によって高められる。こうした系は報告されており、たとえば、RecAなどのタンパク質の発現、またはPARP阻害剤による処理が含まれる。タバコ植物における染色体内相同組み換えは、PARP阻害剤を使用することによって高めることができることが示された(Puchta H et al. (1995) Plant J. 7:203-210)。こうした阻害剤を用いて、配列特異的DNA二本鎖切断の誘導後の、組み換えカセットにおける相同組み換え率、およびそれによる導入遺伝子配列の欠失の有効性を、さらに増加させることができる。さまざまなPARP阻害剤をこの目的に使用することができる。好ましくは、3-アミノベンズアミド、8-ヒドロキシ-2-メチルキナゾリン-4-オン(NU1025)、1,11b-ジヒドロ-(2H)ベンゾピラノ(4,3,2-デ)イソキノリン-3-オン(GPI 6150)、5-アミノイソキノリノン、3,4-ジヒドロ-5-(4-(1-ピペリジニル)ブトキシ)-1(2H)-イソキノリノン、またはWO 00/26192, WO 00/29384, WO 00/32579, WO 00/64878, WO 00/68206, WO 00/67734, WO 01/23386およびWO 01/23390に記載の化合物などの阻害剤が含まれる。
【0300】
さらに、大腸菌RecA遺伝子を発現させることによって、植物において、さまざまな相同組み換え反応の頻度を高めることができた(Reiss B et al. (1996) Proc Natl Acad Sci USA 93(7):3094-3098)。また、そのタンパク質の存在は、相同DSB修復と非正統的DSB修復の比率を、相同修復に有利に変化させる(Reiss B et al. (2000) Proc Natl Acad Sci USA 97(7):3358-3363)。植物における相同組み換えを増加させるための、WO 97/08331に記載の方法に言及することもできる。組み換え系の有効性のいっそうの増加は、RecA遺伝子、または相同組み換えの有効性を高める他の遺伝子の、同時発現によって達成できるかもしれない(Shalev G et al. (1999) Proc Natl Acad Sci USA 96(13):7398-402)。相同組み換えを促進する上記の系は、組み換え構築物を、真核生物のゲノム内に、相同組み換えを用いて部位特異的に導入すべき場合にも、有利に使用することができる。
【0301】
キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを提供する方法:
本発明は、上記のようなキメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを提供する方法を提供する。
【0302】
その方法は下記のステップを含んでなる:
a. 少なくとも1つのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼコード領域を提供するステップ、
b. 少なくとも1つの異種DNA結合ドメインコード領域を提供するステップ、
c. ステップa)の1つもしくは複数のLAGLIDADGエンドヌクレアーゼの、1つもしくは複数の潜在的DNA認識配列を有し、かつ、ステップb)の1つもしくは複数の異種DNA結合ドメインの、1つもしくは複数の潜在的認識配列を有する、ポリヌクレオチドを提供するステップ、
d. ステップa)のすべてのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼコード領域、およびステップb)のすべての異種DNA結合ドメインの翻訳融合物を作製するステップ、
e. ステップd)で作製された翻訳融合物からキメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを発現させるステップ、
f. ステップe)で発現されたキメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼの、ステップc)のポリヌクレオチドの切断について調べるステップ。
【0303】
使用目的に応じて、方法のステップa)、b)、c)、およびd)は順序を変更して用いることができる。たとえば、本方法を用いて、少なくとも1つのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼ、および少なくとも1つの異種DNA結合ドメインの、特定の組み合わせを提供することができ、その後、潜在的DNA認識部位および潜在的認識部位を含有するポリヌクレオチドが与えられるが、それは、少なくとも1つのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼ、および少なくとも1つの異種DNA結合部位が翻訳融合物において配置された順序を反映するものであり、さらにキメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼのポリヌクレオチドに対する切断活性が調べられるが、このポリヌクレオチドは、キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼに含まれるLAGLIDADGエンドヌクレアーゼおよび異種DNA結合ドメインに対する、潜在的DNA認識部位および潜在的認識部位を有しており、その結果、キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼにより切断される少なくとも1つのポリヌクレオチドが選択される。
【0304】
本方法を用いて、キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを、あらかじめ選択されたポリヌクレオチドに対する切断活性のためにデザインすることができ、それは、はじめに特定の配列を有するポリヌクレオチドを提供すること、その後少なくとも1つのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼ、および少なくとも1つの異種DNA結合ドメインを選択するが、これはオーバーラップのない潜在的DNA認識部位および潜在的認識部位をポリヌクレオチドのヌクレオチド配列内に有するものであること、少なくとも1つのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼおよび少なくとも1つの異種DNA結合ドメインからなる翻訳融合物を作製すること、前記翻訳融合物によりコードされるキメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを発現させること、ならびにキメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼの、あらかじめ選択されたポリヌクレオチド配列に対する切断活性を調べること、そしてそうした切断活性を有するキメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを選択することによって可能である。
【0305】
本方法を用いて、特定のポリヌクレオチドに対して強められた切断活性を有するキメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼをデザインすることができ、たとえば、ポリヌクレオチドがヌクレアーゼのDNA認識部位を有する場合、異種DNA結合ドメインの潜在的認識部位を同定することが可能であって、それを用いて、ヌクレアーゼおよび異種DNA結合ドメインを含んでなるキメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを作製するができる。
【0306】
あるいはまた、本方法を用いて、異種DNA結合ドメインの認識部位を含有する特定のポリヌクレオチドに対して切断活性を有するキメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを作製することもできる。たとえば、その特定のポリヌクレオチドが異種DNA結合ドメインと結合していることが判明している場合、同定された異種DNA結合ドメインの認識部位と近接しているが重なり合ってはいない、潜在的DNA認識部位を有するLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを同定することができる。翻訳融合物を作製し、同定されたLAGLIDADGエンドヌクレアーゼ、および異種DNA結合ドメインを含んでなるキメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを発現させることによって、キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼの、前記のあらかじめ選択されたポリヌクレオチドに対する切断活性を調べることができる。
【0307】
適当なエンドヌクレアーゼおよび異種DNA結合ドメインは、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼのDNA認識部位、およびZn2C6転写因子などのDNA結合タンパク質の認識部位を含む、データベースを検索することによって特定することができる。
【0308】
さらに、I-SceI、I-CreI、I-DmoIまたはI-MsoIのようなLAGLIDADGエンドヌクレアーゼのアミノ酸配列を変異させて、新たな結合およびDNA切断活性を生じさせることができる。エンドヌクレアーゼI-SceI、I-CreI、I-DmoIもしくはI-MsoI、および異種DNA結合ドメインを含有するキメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを作製することによって、このようなあらかじめ選択されたポリヌクレオチドと結合し、これを切断するキメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを作製することができる。
【0309】
キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを用いた相同組み換えおよび標的変異方法
本発明はポリヌクレオチドの相同組み換え方法を提供するが、その方法は下記を含んでなる:
a. 相同組み換えに適した細胞を提供すること、
b. 両端に配列Aおよび配列Bが配置された組み換えポリヌクレオチドを含んでなる、ポリヌクレオチドを提供すること、
c. 配列Aおよび配列Bに対して相同で、十分長い、配列A'およびB'を含んでなるポリヌクレオチドであって、前記細胞において相同組み換えを可能にする前記ポリヌクレオチドを提供すること、および
d. キメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼ、またはキメラLAGLIDADGエンドヌクレアーゼをコードする発現カセットを提供すること、
e. 前記細胞内で、b)、c)、およびd)を組み合わせること、ならびに
f. b)およびc)の組み換えられたポリヌクレオチドを検出すること、またはb)およびc)の組み換えられたポリヌクレオチドを含有する細胞を選択し、または増殖させること。
【0310】
本発明のある実施形態において、ステップb)で与えられるポリヌクレオチドは、少なくとも1つのキメラ認識部位、好ましくは、配列番号13、14、15、16、26、27、28、29、43、44、45または46で表される配列の一群から選択されるキメラ認識部位を含んでなる。
【0311】
本発明のある実施形態において、ステップc)で与えられるポリヌクレオチドは、好ましくは、配列番号13、14、15、16、26、27、28、29、43、44、45または46で表される配列の一群から選択される、少なくとも1つのキメラ認識部位を含んでなる。
【0312】
本発明のある実施形態において、ステップb)で与えられるポリヌクレオチド、およびステップc)で与えられるポリヌクレオチドは、好ましくは、配列番号13、14、15、16、26、27、28、29、43、44、45または46で表される配列の一群から選択される、少なくとも1つのキメラ認識部位を含んでなる。
【0313】
本発明のある実施形態において、ステップe)は、ステップc)で与えられるポリヌクレオチドに含まれるポリヌクレオチドの欠失をもたらす。
【0314】
本発明のある実施形態において、ステップc)で与えられるポリヌクレオチドに含まれる欠失したポリヌクレオチドは、マーカー遺伝子、またはマーカー遺伝子の一部をコードしている。
【0315】
本発明のある実施形態において、ステップb)で与えられるポリヌクレオチドは、少なくとも1つの発現カセットを含有する。
【0316】
本発明のある実施形態において、ステップb)で与えられるポリヌクレオチドは、選択マーカー遺伝子またはレポーター遺伝子の発現をもたらす、少なくとも1つの発現カセットを含有する。
【0317】
本発明のある実施形態において、ステップb)で与えられるポリヌクレオチドは、選択マーカー遺伝子またはレポーター遺伝子の発現をもたらす、少なくとも1つの発現カセットを含有し、さらに少なくとも1つのDNA認識部位または少なくとも1つのキメラ認識部位を含有する。
【0318】
本発明の他の実施形態は、ポリヌクレオチドの標的変異のための方法を提供するが、その方法は下記を含んでなる:
a. 好ましくは、配列番号13、14、15、16、26、27、28、29、43、44、45または46で表される配列の一群から選択される、キメラ認識部位を含んでなるポリヌクレオチドを含有する細胞を提供すること、
b. キメラエンドヌクレアーゼ、たとえば、配列番号2, 3, 5, 7, 8, 9, 10, 50, 51, 52, 53, 54, 55, および56で表される配列の一群から選択される、配列を有するエンドヌクレアーゼを含んでなり、ステップa)のキメラ認識部位を切断する能力を有する、キメラエンドヌクレアーゼを提供すること、
c. 前記細胞においてa)およびb)を組み合わせること、ならびに
d. 変異したポリヌクレオチドを検出する、または変異したポリヌクレオチドを含有する増殖細胞を選択すること。
【0319】
本発明は、別の実施形態において、上記のような相同組み換えのための方法、または上記のようなポリヌクレオチドの標的変異のための方法を提供するが、それは下記を含んでなる:
キメラエンドヌクレアーゼとキメラ認識部位を、生物の交雑により、細胞の形質転換により、またはキメラエンドヌクレアーゼと融合したSecIVペプチドによって、組み合わせること、ならびにキメラ認識部位を含有する細胞を、キメラエンドヌクレアーゼを発現する生物と接触させること、ならびにキメラエンドヌクレアーゼと融合したSecIVペプチドを認識することができるSecIV輸送複合体を発現させること。
【0320】
(実施例)
一般的方法
オリゴヌクレオチドの化学合成は、たとえば、ホスホアミダイト法を用いた既知の方法で、実行することができる(Voet, Voet, 2nd edition, Wiley Press New York, pages 896-897)。本発明の目的のために実行されるクローニングステップ、たとえば、制限酵素切断、アガロースゲル電気泳動、DNA断片の精製、ニトロセルロースおよびナイロン膜への核酸の転写、DNA断片の結合、大腸菌細胞の形質転換、細菌培養、ファージの増殖、および組み換えDNAの配列分析は、Sambrook et al. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press; ISBN 0-87969-309-6により記載されたように行われる。組み換えDNA分子は、Sangerの方法(Sanger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74 (1977), 5463-5467)にしたがって、ALF Expressレーザー蛍光DNAシークエンサー(Pharmacia, Upsala [sic], Sweden)を用いて配列決定した。
【実施例1】
【0321】
大腸菌での発現ための配列特異的DNAエンドヌクレアーゼ発現カセットを含有する構築物
(実施例1a):基本構築物
この実施例において、大腸菌での形質転換に適した「構築物I」と称される、ベクターの概要を提示する。このベクターの概要は、選択のためのアンピシリン耐性遺伝子、大腸菌のための複製開始点、およびアラビノース誘導性転写調節因子をコードするaraC遺伝子を含んでなる。シークエンスプロトコールの配列中の"NNNNNNNNNN"の配列範囲は、さまざまなタイプの配列特異的DNAエンドヌクレアーゼをコードする遺伝子のためのプレースホルダーとなるよう意図されたものである。さまざまな遺伝子は、アラビノース誘導性pBADプロモーターから発現することができ(Guzman et al., J Bacteriol 177: 4121-4130 (1995))、さまざまなヌクレアーゼ型をコードする遺伝子の配列は、次の実施例で与えられる。
【0322】
コントロール構築物では、プレースホルダーがI-SceI(配列番号18)で置き換えられているが、これはVC-SAH40-4と呼ばれる。
【0323】
(実施例1b):I-SceI - AlcR融合構築物
Gene 73 (2), 385-396 (1988)において、Felenbokらは、A. nidulansの転写活性化因子としてAlcRタンパク質を記載した。AlcRコード配列は、リジン1つをリンカーとして用いて、I-SceI配列のC末端に融合させた。リンカーは、結果として得られる融合タンパク質が、I-SceIおよびAlcRの結合部位の組み合わせに相当する、同系の結合部位を認識するように設計した。AlcRの機能は、エタノールの添加によって制御することができる。このことから、融合タンパク質の活性もしくはDNA結合親和性を同様に制御できる可能性がある。結果として得られたプラスミドをVC-SAH51-40と称した。構築物の配列は、構築物Iの配列と同一であるが、配列"NNNNNNNNNN"は、配列番号19で表される配列で置き換えられた。
【0324】
後者の構築物に加えて、NLS配列を含有する同様の構築物を作製した。その結果得られたプラスミドをVC-SAH50-37と称した。構築物の配列は、構築物Iの配列と同一であるが、配列"NNNNNNNNNN"は、配列番号20で表される配列で置き換えられた。
【0325】
AlcRの最初の60アミノ酸は、そのタンパク質のDNA結合ドメインに相当するので、別の構築物を作製したが、この場合、その最初の60アミノ酸だけをI-SceIのC末端に融合させて、I-SceI - AlcR (1-60)融合物を作製した。その結果得られたプラスミドは、VC-SAH49-1と称された。構築物の配列は、構築物Iの配列と同一であるが、配列"NNNNNNNNNN"は、配列番号21で表される配列で置き換えられた。
【0326】
後者の構築物に加えて、NLS配列を含有する同様の構築物を作製した。その結果得られたプラスミドをVC-SAH48-8と称した。構築物の配列は、構築物Iの配列と同一であるが、配列"NNNNNNNNNN"は、配列番号22で表される配列で置き換えられた。
【実施例2】
【0327】
大腸菌においてI-SceI活性をモニターするためのヌクレアーゼ認識配列/標的部位を含有する構築物
(実施例2a):基本構築物
この実施例において、大腸菌での形質転換に適した「構築物II」と称される、ベクターの概要を提示する。このベクターの概要は、選択のためのカナマイシン耐性遺伝子、大腸菌のための複製開始点を含んでなるが、これは構築物Iのoriに対応する。配列番号23は”NNNNNNNNNN"の配列範囲を示す。これは、配列特異的DNAエンドヌクレアーゼのさまざまなタイプおよびタンパク質融合物について、さまざまな認識/標的部位のためのプレースホルダーとなるよう意図されたものである。コントロール構築物において、プレースホルダーは、I-SceIの天然の標的配列を含む配列範囲(配列番号24)で置き換えられており、この構築物はVC-SAH6-1と命名された。標的部位を持たないコントロールプラスミドは、VC-SAH7-1と称することとした(配列番号25)。
【0328】
次の実施例においてさまざまな組み合わせの標的部位が与えられる。
【0329】
(実施例2b):I-SceI認識配列およびAlcR結合配列の組み合わされた標的部位
Structure 9, 827-36 (2001)において、Cahuzacらは、同系の認識配列と複合したAlcRのDNA結合ドメインを記載した。この情報に基づいて、組み合わせた標的部位を作製したが、それはヌクレアーゼI-SceIおよびAlcRの標的部位からなる。それぞれの部位がさまざまな距離をとる、種々の組み合わせの標的部位を作製した。同系のI-SceI融合タンパク質によってもっともよく認識される標的部位を特定することを目標とした。結果として得られたプラスミドは、VC-SAH56-1、VC-SAH57-2、VC-SAH58-2、VC-SAH59-1と称することとした。構築物の配列は、構築物IIの配列と同一であるが、配列"NNNNNNNNNN"は、それぞれ配列番号26、27、28、29で表される配列で置き換えられた。
【実施例3】
【0330】
DNAエンドヌクレアーゼをコードする構築物、およびヌクレアーゼ認識配列を保有する構築物の同時形質転換
異なる選択マーカーを有する同一濃度の2つのプラスミドを、メーカーの説明書にしたがって化学的にコンピテントにした大腸菌Top10細胞に形質転換した。それぞれの選択用の抗生物質を含むLB上に細胞を蒔き、37℃にて一晩増殖させた。
【0331】
この方法で、配列特異的DNAエンドヌクレアーゼ発現カセットを保有する構築物、およびヌクレアーゼ認識配列/標的配列を保有する同系構築物を、同じ形質転換体において組み合わせて、ヌクレアーゼ活性をモニターできるようにした。
【実施例4】
【0332】
大腸菌におけるエンドヌクレアーゼ活性の実証
一方はヌクレアーゼもしくはヌクレアーゼ融合物(構築物I)をコードし、他方は適合する標的部位(構築物II)を保有する、二つのプラスミドを組み合わせて保持する同時形質転換体を、アンピシリンおよびカナマイシン含有LB中で一晩増殖させた。培養物を1:100に希釈し、OD600=0.5に達するまで増殖させた。構築物Iからの融合タンパク質の発現は、3〜4時間アラビノースを添加することにより誘導された。pBADプロモーターは用量依存性であると報告されている(Guzman 1995)ので、培養物をさまざまな量に分割し、タンパク質の発現を0.2%から0.0002%までさまざまの濃度のアラビノースで誘導した。それぞれの分割量から5μlを、アンピシリンおよびカナマイシンを添加したLB固形培地上に蒔いた。プレートは、37℃にで一晩インキュベートし、細胞増殖は半定量的に分析した。活性ヌクレアーゼ融合物は、標的部位を保有する構築物を切断した。このことは、カナマイシン耐性を与える、構築物IIまたは構築物IIIの損失を招いた。したがって、融合タンパク質の活性は、同時形質転換体がカナマイシン含有培地上で増殖する能力を失ったことにより、観察された。
【0333】
結果:
結果を簡略化して表9にまとめた。++ および+ は、非常に強い、および強い増殖を表すが、それは、発現された、それぞれの標的配列に対するヌクレアーゼの活性がない、またはほとんどないことを示す。- および-- は、増殖の低下もしくは増殖しないことを表すが、それは、それぞれの標的部位に対するヌクレアーゼ活性が高い、または非常に高いことを示す。
【表9】

【実施例5】
【0334】
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の形質転換
シロイヌナズナ(A. thaliana)の植物体を、開花するまで土壌で生育させた。当該の構築物で形質転換されたアグロバクテリウム・ツメファシエンス(菌株C58C1 [pMP90])を、培養液がOD600 0.8-1.0に達するまで、500 mL液体YEB培地(5 g/L 牛肉エキス、1 g/L 酵母エキス (Duchefa)、5 g/L ペプトン (Duchefa)、5 g/L ショ糖 (Duchefa)、0,49 g/L MgSO4 (Merck))中で増殖させた。細菌の細胞を遠心分離(15分、5000 rpm)によって集め、500 mL浸透溶液(5% ショ糖、0.05% SILWET L-77 [発売Lehle seeds、カタログ番号VIS-02])中に再懸濁した。開花した植物をアグロバクテリウム溶液中に10-20秒間浸漬した。その後、植物を1日暗下に置いた後、種子が収穫できるまで温室内で維持した。表面を滅菌した種子を、nptII耐性マーカー遺伝子を保有する植物用には50 mg/Lカナマイシン、ならびにpat遺伝子を保有する植物用には10 mg/Lホスフィノトリシンをそれぞれ添加した増殖培地A(4.4g/L MS塩類 [Sigma-Aldrich]、0.5g/L MES [Duchefa]; 8g/L Plant Agar [Duchefa])上に蒔くことによって、トランスジェニック種子を選択した。生存する植物を土壌に移し、温室内で生育させた。
【実施例6】
【0335】
シロイヌナズナ(A. thaliana)のための配列特異的DNAエンドヌクレアーゼ発現カセットを含有する構築物
(実施例6a):基本構築物
この実施例において、植物の形質転換に適した「構築物IV」と称される、バイナリーベクターの概要を提示する。このバイナリーベクターの概要は、p-Mas1del100::cBAR:: t-Ocs1カセットを有するT-DNAを含んでなるが、これは、植物ゲノムに組み込まれたとき、ホスフィノトリシンによる選択を可能にするものである。配列番号31は”NNNNNNNNNN"の配列範囲を示す。これは、さまざまなタイプの配列特異的DNAエンドヌクレアーゼをコードする遺伝子ためのプレースホルダーとなるよう意図されたものである。後者の配列は、次の実施例で与えられる。
【0336】
(実施例6b):I-SceI-AlcR融合構築物
「構築物IV」の”NNNNNNNNNN"の配列範囲を、実施例1bに記載の3つの異なる型のI-SceI-AlcR融合物をコードする遺伝子で別々に置き換えた。その結果得られたプラスミドは、VC-SAH91-1 (NLS - I-SceI - AlcR(1-60))、VC-SAH92-1 (I-SceI - AlcR(1-60))、VC-SAH103-3 (NLS - I-SceI - AlcR) および VC-SAH104-22 (I-SceI - AlcR)と称することとした。
【実施例7】
【0337】
シロイヌナズナ(A. thaliana)においてヌクレアーゼ活性をモニターするためのヌクレアーゼ認識配列/標的部位を含有する構築物
(実施例7a):基本構築物
この実施形態において、シロイヌナズナの形質転換に適した「構築物V」と称される、バイナリーベクターの概要を提示する。このバイナリーベクターの概要は、nos-プロモーター::nptII::nos-ターミネーターカセットを有するT-DNAを含んでなるが、これは、植物ゲノムに組み込まれたとき、カナマイシン耐性を与えるものである。
【0338】
T-DNAは、uidA (GUS)遺伝子の一部("GU"と称する)および別のuidA遺伝子の一部("US"と称する)も含んでいる。GUおよびUSの間の”NNNNNNNNNN"の範囲は、配列番号32に示される。これは、配列特異的DNAエンドヌクレアーゼのさまざまなタイプ、およびタンパク質融合物について、さまざまな認識/標的部位ためのプレースホルダーとなるよう意図されたものである。
【0339】
認識配列がそれぞれのヌクレアーゼで切断されるならば、部分的にオーバーラップした、機能的でない半分のGUS遺伝子(GUおよびUS)は、染色体内相同組み換え(ICHR)の結果として回復することになる。これは組織化学的GUS染色によってモニターすることができる(Jefferson et al. (1987) EMBO J 6:3901-3907)。
【0340】
(実施例7b):ヌクレアーゼ認識配列およびAlcR結合配列を組み合わせた標的部位
ヌクレアーゼI-SceIおよびAlcRの標的部位からなる、組み合わせた標的部位を作製した。それぞれの部位がさまざまな距離をとる、さまざまな組み合わせの標的部位を作製した。同系のI-SceI融合タンパク質によってもっともよく認識される標的部位を特定することを目標とした。結果として得られたプラスミドは、VC-SAH52-21、VC-SAH111、VC-SAH112、VC-SAH55-22と称することとした/呼ばれている。構築物の配列は、構築物Vの配列と同一であるが、配列"NNNNNNNNNN"は、それぞれ配列番号33、34、35、36で表される配列で置き換えられた。
【実施例8】
【0341】
配列特異的DNAエンドヌクレアーゼをコードする構築物によるシロイヌナズナ(A. thaliana)の形質転換
プラスミドVC-SAH87-4、VC-SAH91-1、VC-SAH92-1、VC-SAH103-3、VC-SAH105、VC-SAH140、VC-SAH139-20、VC-SAH89-10、VC-SAH90を用いて、実施例5に記載のプロトコールにしたがって、シロイヌナズナを形質転換した/する。選択されたトランスジェニック系(T1世代)を温室内で生長させ、花を用いて交雑させた/させる(下記を参照されたい)。
【実施例9】
【0342】
組み換えをモニターすることができる組み合わされた標的部位を含有する構築物による、シロイヌナズナ(A. thaliana)の形質転換
プラスミドVC-SAH52-21, VC-SAH111, VC-SAH112, VC-SAH55-22, VC-SAH113, VC-SAH114, VC-SAH115, VC-SAH16-4, VC-SAH17-8, VC-SAH18-7およびVC-SAH19-15を用いて、実施例5に記載のプロトコールにしたがってシロイヌナズナを形質転換した/する。選択されたトランスジェニック系(T1世代)を温室内で生長させ、花を用いて交雑させた/させる(実施例10を参照されたい)。
【実施例10】
【0343】
シロイヌナズナ(A. thaliana)におけるヌクレアーゼ融合物の活性のモニタリング
配列特異的DNAエンドヌクレアーゼをコードするT-DNAを保持するシロイヌナズナのトランスジェニック系を、対応する組み合わされた標的部位を有するGU-USレポーター構築物を有するT-DNAを保持するシロイヌナズナの系と交雑させた/させる。標的部位に対するI-SceI活性の結果として、染色体内相同組み換え(ICHR)により機能的GUSが回復されることになる。組織化学的GUS染色によってこれをモニターすることができる(Jefferson et al. (1987) EMBO J 6:3901-3907)。
【0344】
AlcR融合物のI-SceI活性を可視化するために、ヌクレアーゼをコードする構築物VC-SAH91-1およびVC-SAH87-4のT-DNAを保有するシロイヌナズナのトランスジェニック系を、標的部位を有する構築物VC-SAH52-21、VC-SAH55-22およびVC-SCB734-4のT-DNAを保有するシロイヌナズナの系統と交雑させた。追加のAlcR融合物の活性を可視化するために、ヌクレアーゼをコードする構築物VC-SAH91-1、VC-SAH92-1およびVC-SAH103-3のT-DNAを保有するシロイヌナズナのトランスジェニック系を、標的部位を有する構築物VC-SCB743-4、VC-SAH52-21およびVC-SAH55-22のT-DNAを保有するシロイヌナズナの系統と交雑させた。
【0345】
交雑種のF1種子を収穫した。種子を表面滅菌し、それぞれの抗生物質および/または除草剤を添加した培地A上で生育させた。葉を集めて、組織化学的GUS染色に使用した/使用する。青い染色を示す植物のパーセンテージは、ICHRの頻度、したがってI-SceI活性の指標となる。
【0346】
さまざまな融合タンパク質の活性は、これらの交雑のICHR事象数の比較によって決定される。天然のヌクレアーゼに関するI-SceI融合物の特異性の高まりは、上記の結果を対照交雑物と比較することによって観測することができる。このために、I-SceIのさまざまな融合物をコードする構築物のT-DNAを保有するシロイヌナズナのすべてのトランスジェニック系は、天然のI-SceI標的部位を保持する構築物(VC-SAH743-4)のT-DNAを保有するシロイヌナズナの系統と交雑させた。
【0347】
これらの植物の次の世代の、完全に青色の苗を分析する。
【0348】
結果
ヌクレアーゼをコードする構築物VC-SAH91-1 ( NLS-I-SceI - AlcR(1-60) )のT-DNAを保有する3つの独立した系統を、ヌクレアーゼをコードする構築物VC-SAH743-4 ( 天然型I-SceI部位)のT-DNAを保有する3つの独立した系統、ならびにヌクレアーゼをコードする構築物VC-SAH55-22 (標的部位I-SceI - AlcR)のT-DNAを保有する3つの独立した系統と、交雑させた。
【0349】
葉を収穫し、組織化学的GUS染色に使用した。I-SceI-AlcR(1-60)とも称されるNLS - I-SceI - AlcR(1-60)と、複合標的部位(#55とも呼ばれるSAH55-22)との組み合わせは、49%の青色の植物をもたらしたのに対して、天然のI-SceI部位との交雑はわずかに3%しか青色の植物を生じなかった。
【0350】
これに対して、wt I-SceIとも称される天然型のヌクレアーゼI-SceIは、組み換え活性をごくわずかしか示さなかった(天然型(wt)標的部位について0%、および複合標的部位SAH55-22に含まれる天然標的部位については8%)。図2を参照されたい。
(実施例20)
【0351】
AlcRと融合したI-SceIの安定化型
(実施例20a):大腸菌で発現するために、AlcRと融合したI-SceIのC末端短縮型をコードする、配列特異的DNAエンドヌクレアーゼ発現カセットを保有する構築物
特異性および安定性の高まったI-SceIバリアントを作製するために、AlcRと、提示されたC末端PEST配列(アミノ酸228-236)が変化したタイプのI-SceIとの間で融合タンパク質を作製した。二つの異なるC末端の変更が選択されたが、第1のC末端(C term mod #1)では、C末端は配列番号37で置き換えら、第2のC末端(C term mod #2)では、C末端は配列番号38で置き換えられた。
【0352】
結果として得られたプラスミドは、実施例1a)に記載の構築物に基づくものであって、プレースホルダーはさまざまなI-SceI融合物をコードする遺伝子で置き換えられた。VC-SAH128-3というプラスミドにおいて、NNNNNNはNLS - I-SceI C term mod #1 AlcR (1-60)(配列番号39)で置き換えられた。VC-SAH129-1と称するプラスミドでは、NNNNNNは、NLS - I-SceI C term mod #2 AlcR (1-60) (配列番号40)で置き換えられた。
【0353】
全長型のAlcRを有するプラスミドも作製した。これらはVC-SAH130-30およびVC-SAH131-6と称するが、前者のNNNNNNは、NLS - I-SceI C term mod #1 AlcR (配列番号41)で置き換えられ、後者のNNNNNNはNLS - I-SceI C term mod #2 AlcR (配列番号42)で置き換えられた。
【0354】
C末端PEST配列(アミノ酸228-236)を欠失したI-SceIのN末端への、AlcR(1-60)の融合物をコードする類似の構築物を作製した。
【0355】
3つのバリアントを作製した:直接融合物VC-SAH186-5、アミノ酸1つのリンカーを有するタイプのVC-SAH185-1、および3アミノ酸のリンカーを有するタイプのVC-SAH187-10(配列番号47、48、および49)。
【0356】
これらのAlcRのI-SceIに対するN末端融合物を調べるために、追加の標的部位を作製する必要があった。結果として得られた標的ベクターは次の通りであった:
VC-SAH181-1 (CGTGCGGATCATTACCCTGTTATCCCTA) (配列番号43)
VC-SAH182-2 (CGTGCGGATCNATTACCCTGTTATCCCTA) (配列番号44)
VC-SAH183-3 (CGTGCGGATCNNATTACCCTGTTATCCCTA) (配列番号45)
VC-SAH184-2 (CGTGCGGATCNNNATTACCCTGTTATCCCTA) (配列番号46)
(実施例20b):大腸菌におけるエンドヌクレアーゼ活性の実証
実施例20aに記載のプラスミドによりコードされる、AlcRのC末端融合を有するタイプのヌクレアーゼを、大腸菌において、複合標的部位をコードするベクターVC-SAH56-1, VC-SAH57-2, VC-SAH58-2, VC-SAH59-1とともに同時形質転換した。これらのタイプのI-SceIの活性および特異性を実施例3および4に記載のように分析した。
【0357】
結果:
大腸菌において、実施例20aに記載のC末端I-SceI - AlcR融合物は、実施例4、表1に示すVC-SAH48〜VC-SAH51と同様に機能した。
【0358】
VC-SAH128-3、VC-SAH129-1、VC-SAH130-30、SAH131-6はいずれも、もっとも効率の高いVC-SAH59-1によってコードされる複合標的部位を切断した。一方。天然のI-SceI標的部位に対する活性は、天然型ヌクレアーゼよりはるかに低かった。
【0359】
(実施例20c):シロイヌナズナ(A. thaliana)における発現のための、AlcRと融合したC末端短縮型I-SceIをコードする、配列特異的DNAエンドヌクレアーゼ発現カセットを有する構築物
実施例20aに記載のそれぞれのタイプのI-SceI-AlcR融合物を構築物IVに入れてクローニングした。VC-SAH126-1と称するプラスミドにおいて、プレースホルダーはNLS - I-SceI C term mod #1 AlcR (1-60) (配列番号39)で置き換えられた。VC-SAH127-1と称するプラスミドにおいて、NNNNNNはNLS - I-SceI C term mod #2 AlcR (1-60) (配列番号40)で置き換えられた。
【0360】
AlcRの全長型を有するプラスミドも作製した。これらは、VC-SAH137-1およびVC-SAH138-2と称するが、前者のNNNNNNはNLS - I-SceI C term mod #1 AlcR (配列番号41)で置き換えられ、後者のNNNNNNはNLS - I-SceI C term mod #2 AlcR (配列番号42)で置き換えられた。
【0361】
(実施例20d):シロイヌナズナ(A. thaliana)におけるエンドヌクレアーゼ活性の実証
実施例5に記載のように、プラスミドSAH126-1およびVC-SAH127-1でシロイヌナズナを形質転換した。植物は、実施例7bに記載のように、同系の標的部位を含むレポーター構築物を有するT-DNAを保有する系統と交雑させた。同様に、VC-SAH137-1およびVC-SAH138-2を用いてシロイヌナズナを形質転換した。植物は、実施例7bに記載のように、同系の標的部位を含むレポーター構築物を有するT-DNAを保有する系統と交雑させた。これらのタイプのヌクレアーゼの活性および特異性を、実施例10に記載のように分析する。
【0362】
配列特異的DNAエンドヌクレアーゼをコードするT-DNAを保有するシロイヌナズナのトランスジェニック系を、対応する複合標的部位を有するGU-USレポーター構築物を有するT-DNAを保持するシロイヌナズナ系統と交雑させる。標的部位に対するI-SceI活性の結果として、染色体内相同組み換え(ICHR)によって機能的GUSが回復されることになる。これは、組織化学的GUS染色によりモニターすることができる(1987) EMBO J 6:3901-3907)。
【0363】
AlcR融合物のI-SceI活性を可視化するために、ヌクレアーゼをコードする構築物VC-SAH126-1およびVC-SAH127-1のT-DNAを保有するシロイヌナズナのトランスジェニック系を、標的部位を有する構築物VC-SAH55-22、およびVC-SCB734-4のT-DNAを保有するシロイヌナズナの系統と交雑させた。
【0364】
交雑種のF1種子を収穫した。種子を表面滅菌し、それぞれの抗生物質および/または除草剤を添加した培地A上で生育させた。葉を集めて、組織化学的GUS染色に使用した。青い染色を示す植物のパーセンテージは、ICHRの頻度、したがってI-SceI活性の指標となる。
【0365】
さまざまな融合タンパク質の活性は、これらの交雑のICHR事象数の比較によって決定される。天然のヌクレアーゼに対するI-SceI融合物の特異性の高まりは、上記の結果を対照交雑物と比較することによって観測することができる。これまでにテストした、I-SceIのさまざまな融合物をコードする構築物のT-DNAを保有するシロイヌナズナのすべてのトランスジェニック系を、天然のI-SceI標的部位を保持する構築物(VC-SAH743-4)のT-DNAを保有するシロイヌナズナ系統と交雑させた。
【0366】
これらの植物の次の世代の、完全に青色の苗を分析する。
【0367】
結果:
ヌクレアーゼをコードする構築物VC-SAH126-1(NLS-I-SceI C term mod #1 AlcR(1-60))のT-DNAを保有する3つの独立した系統、ならびにヌクレアーゼをコードする構築物VC-SAH127-1(NLS-I-SceI C term mod #2 AlcR(1-60))のT-DNAを保有する3つの独立した系統を、ヌクレアーゼをコードする構築物VC-SAH743-4 ( 天然型I-SceI部位)のT-DNAを保有する3つの独立した系統、ならびにヌクレアーゼをコードする構築物VC-SAH55-22 (標的部位I-SceI - AlcR)のT-DNAを保有する3つの独立した系統と、交雑させた。
【0368】
葉を収穫し、組織化学的GUS染色に使用した。I-SceI#1-AlcR(1-60)とも称されるNLS - I-SceI C term mod #1- AlcR(1-60)と、複合標的部位(#55とも呼ばれるSAH55-22)との組み合わせは、100%の青色の植物をもたらしたのに対して、天然のI-SceI部位との交雑は0%の青色の植物を与えた。
【0369】
I-SceI#2-AlcR(1-60)とも称されるNLS - I-SceI C term mod #2 - AlcR(1-60)と、複合標的部位(SAH55-22)との組み合わせは、76%の青色の植物をもたらしたのに対して、天然I-SceIとの交雑は0%の青色の植物を与えた。図2を参照されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼ、および1つもしくは複数のZn2C6ジンクフィンガーを含有する少なくとも1つの異種DNA結合ドメインを含んでなる、キメラエンドヌクレアーゼ。
【請求項2】
少なくとも1つのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼが、配列番号1、2、または3で表されるポリペプチドに対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含有する、請求項1に記載のキメラエンドヌクレアーゼ。
【請求項3】
少なくとも1つのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼが、遺伝子操作された、もしくは最適化されたエンドヌクレアーゼである、または最適化型の遺伝子操作されたエンドヌクレアーゼである、請求項1に記載のキメラエンドヌクレアーゼ。
【請求項4】
転写因子由来の、1つもしくは複数のZn2C6ジンクフィンガーを含有する異種DNA結合ドメインを含んでなる、請求項1〜3のいずれか1つに記載のキメラエンドヌクレアーゼ。
【請求項5】
異種DNA結合ドメインが、配列番号57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120または121のいずれか1つに記載のポリペプチドに対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する、少なくとも1つのポリペプチドを含んでいる、請求項1〜4のいずれか1つに記載のキメラエンドヌクレアーゼ。
【請求項6】
キメラエンドヌクレアーゼが最適化されたエンドヌクレアーゼを含んでいる、請求項1〜5のいずれか1つに記載のキメラエンドヌクレアーゼ。
【請求項7】
DNA二本鎖切断を引き起こす活性を有するエンドヌクレアーゼ、および異種DNA結合ドメインがリンカーポリペプチドを介して連結されている、請求項1〜6のいずれか1つに記載のキメラエンドヌクレアーゼ。
【請求項8】
リンカーポリペプチドが少なくとも3つのアミノ酸からなり、このリンカーポリペプチドのアミノ酸配列中のアミノ酸の少なくとも3分の1が、グリシン、もしくはセリン、もしくはアラニン、またはグリシン、セリン、およびアラニンの組み合わせである、請求項1〜7のいずれか1つに記載のキメラエンドヌクレアーゼ。
【請求項9】
少なくとも1つのNLS配列を含有する、請求項1〜8のいずれか1つに記載のキメラエンドヌクレアーゼ。
【請求項10】
異種DNA結合ドメインのDNA結合活性が誘導することができるものである、請求項1〜9のいずれか1つに記載のキメラエンドヌクレアーゼ。
【請求項11】
エンドヌクレアーゼの、DNA二本鎖切断を引き起こす活性が、二量体もしくはヘテロ二量体LAGLIDADGエンドヌクレアーゼの第2のモノマーの発現により誘導可能である、請求項1〜10のいずれか1つに記載のキメラエンドヌクレアーゼ。
【請求項12】
少なくとも1つのSecIIIまたはSecIV分泌シグナルをさらに含有する、請求項1〜11のいずれか1つに記載のキメラエンドヌクレアーゼ。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1つに記載のキメラエンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項13に記載のヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドであって、その単離されたポリヌクレオチドの配列は、
a. コドン最適化され、
b. RNA不安定性モチーフの含有量が少なく、
c. コドンリピートの含有量が少なく、
d. 潜在的スプライス部位の含有量が少なく、
e. 選択すべき開始コドンの含有量が少なく、
f. 制限酵素部位の含有量が少なく、
g. RNA二次構造の含有量が少なく、
h. a)、b)、c)、d)、e)、f)、またはg)の任意の組み合わせを有する、
前記単離されたポリヌクレオチド。
【請求項15】
請求項13または14に記載の単離されたポリヌクレオチドを、プロモーターおよび転写終結配列とともに機能的に組み合わせて含む、発現カセット。
【請求項16】
約15から約300ヌクレオチドの長さを有するキメラ認識配列であって、
a. LAGLIDADGエンドヌクレアーゼの認識配列、および
b. 1つもしくは複数のZn2C6ジンクフィンガーを含有する異種DNA結合ドメインの認識配列、
を含有する前記キメラ認識配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項17】
前記異種DNA結合ドメインの認識配列が、配列番号57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む少なくとも1つのDNA結合ドメインにより結合され得るものである、請求項16に記載のキメラ認識配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項18】
直接連結された、または1から10ヌクレオチドの配列によって連結された
a. I-SceIのDNA認識配列、および
b. AlcRまたはAlcR (1-60)の認識配列、
を含有する、請求項16または17に記載の、キメラ認識配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項19】
配列番号13、14、15、16、43、44、45、または46のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド配列を含有する、請求項16〜19のいずれか1つに記載のキメラ認識配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項20】
a. 請求項1〜12のいずれかに記載のキメラエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、または
b. 請求項13または14に記載の単離されたポリヌクレオチド、または
c. 請求項15に記載の発現カセット、または
d. 請求項16〜19のいずれか1つに記載のキメラ認識配列を含む、単離されたポリヌクレオチド、または
e. a)、b)、c)、およびd)の任意の組み合わせ
を含有する、ベクター、宿主細胞、または非ヒト生物。
【請求項21】
非ヒト生物が植物である、請求項20に記載の非ヒト生物。
【請求項22】
キメラエンドヌクレアーゼを提供するための方法であって、
a. 少なくとも1つのエンドヌクレアーゼコード領域を提供するステップ、
b. 少なくとも1つの異種DNA結合ドメインコード領域を提供するステップ、
c. ステップa)の1つもしくは複数のエンドヌクレアーゼの、1つもしくは複数の潜在的DNA認識配列を有し、かつ、ステップb)の1つもしくは複数の異種DNA結合ドメインの、1つもしくは複数の潜在的認識配列を有する、ポリヌクレオチドを提供するステップ、
d. ステップa)のすべてのエンドヌクレアーゼのコード領域、およびステップb)のすべての異種DNA結合ドメインの翻訳融合物を作製するステップ、
e. ステップd)で作製された翻訳融合物からキメラエンドヌクレアーゼを発現させるステップ、
f. ステップc)のポリヌクレオチドの切断について、ステップe)で発現されたキメラエンドヌクレアーゼをテストするステップ、
を含む、前記方法。
【請求項23】
ポリヌクレオチドの相同組み換えのための方法であって、
a. 相同組み換えに適した細胞を提供すること、
b. 配列Aおよび配列Bが両側に配置された、請求項16〜19のいずれか1つに記載の単離されたポリヌクレオチドを含んでなるポリヌクレオチドを提供すること、
c. 配列A'およびB'を含んでなるポリヌクレオチドであって、配列Aおよび配列Bに対して十分長くて相同的であり、前記細胞における相同組み換えを可能にする前記ポリヌクレオチドを提供すること、
d. 請求項1〜12のいずれか1つに記載のキメラエンドヌクレアーゼ、または請求項15に記載の発現カセットを提供すること、
e. 前記細胞においてb)、c)のポリヌクレオチドと、d)のキメラエンドヌクレアーゼを組み合わせること、ならびに
f. b)とc)の組み換えられたポリヌクレオチドを検出する、またはb)とc)の組み換えられたポリヌクレオチドを有する細胞を選択する、および/または増殖させること
を含む、前記方法。
【請求項24】
請求項23に記載のポリヌクレオチドの相同組み換えのための方法であって、相同組み換えの際に、ステップa)のコンピテント細胞に含まれるポリヌクレオチド配列がステップf)の増殖細胞のゲノムから欠失する、前記方法。
【請求項25】
ポリヌクレオチドの標的変異のための方法であって、
a. キメラ認識部位を含有するポリヌクレオチドを含んでいる細胞を提供すること、
b. ステップa)のキメラ認識部位を切断することができる、請求項1〜12のいずれか1つに記載のキメラエンドヌクレアーゼを提供すること、
c. 前記細胞においてa)のポリヌクレオチドとb)のキメラエンドヌクレアーゼを組み合わせること、ならびに
d. 変異したポリヌクレオチドを検出する、または変異したポリヌクレオチドを含有する増殖細胞を選択すること、
を含む、前記方法。
【請求項26】
請求項23〜25のいずれか1つに記載の相同組み換え、または標的変異のための方法であって、キメラエンドヌクレアーゼと融合されたSec IIIもしくはSecIVペプチドを介した輸送により、形質転換により、または生物の交雑により、キメラエンドヌクレアーゼおよびキメラ認識部位を少なくとも1つの細胞内で組み合わせる、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−511978(P2013−511978A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540533(P2012−540533)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【国際出願番号】PCT/IB2010/055452
【国際公開番号】WO2011/064750
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(512005634)ビーエーエスエフ プラント サイエンス カンパニー ゲーエムベーハー (8)
【Fターム(参考)】