説明

キメラフラビウイルスワクチン

【課題】フラビウイルスによって起こる疾病のワクチンとして有用な感染性弱毒化ウイルスの提供。
【解決手段】黄熱ウイルスを含有する感染性弱毒化キメラ生ウイルスであって、プロテインprM-Eをコードするヌクレオチド配列が欠失、短縮、または突然変異のいずれかを受けた結果、機能性プロテインprM-Eが発現されず、第二の異なるフラビウイルスのプロテインprM-Eをコードするヌクレオチド配列が黄熱ウイルスのゲノムに組み込まれ、その結果第二のフラビウイルスのプロテインprM-Eが発現されるキメラウイルス。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
本発明はフラビウイルスによって起こる疾病のワクチンとして有用な感染性弱毒化ウイルスに関する。
【0002】
フラビウイルス科のあるウイルスは現在世界中の人々の健康を脅かす、または潜在的に脅かしつつある。例えば、日本脳炎は極東で数百万人の人々が危険にさらされている深刻な公衆衛生問題である。原発性デング熱の場合は世界中で年間1億人、デング出血熱の場合は450,000人以上が発症すると推定されているデングウイルスは、節足動物が媒介する唯一の最も重要なヒト疾患として問題となっている。他のフラビウイルスは依然として、変動しやすい自然に特有の病気を引き起こしており、気候の変化や媒介動物数、人間の活動による環境変動の結果として新しい地域にも発生するおそれがある。これらのフラビウイルスには、例えば、米国中西部、南東部および西部において散発性であるが深刻な急性疾患を起こすセントルイス脳炎ウイルス;発熱性の病気、場合によっては急性脳炎合併症を起こし、アフリカ、中東、旧ソ連およびヨーロッパ各国を通じて広く分布している西ナイルウイルス;オーストラリアに特有の神経系疾病を起こすムレーバレー(Murray Valley)脳炎ウイルス;ならびに、旧ソ連および東欧の至る所に分布しており、これらの地域においてはマダニ科(ixodid)ダニ媒介動物がはびこっていて重篤型の脳炎の原因となっているダニ媒介脳炎ウイルスが含まれる。
【0003】
C型肝炎ウイルス(HCV)は、上記フラビウイルスと似てはいるが同じではない、ゲノム構成と複製ストラテジーを有するフラビウイルス科のもう一つのウイルスである。HCVは殆どの場合非経口的曝露により運ばれ、肝硬変および肝細胞癌に進行することがある慢性肝炎に関連しており、かつ、米国における同所移植が必要な肝疾患の主な原因となっている。
【0004】
フラビウイルス科はアルファウイルス(例えば、WEE, VEE, EEE, SFVなど)とは異なっており、現在、フラビウイルス属、ペストウイルス属およびC型肝炎ウイルス属という三つの属を含んでいる。フラビウイルスの完全にプロセシングされた成熟ビリオンは、エンベロープ(E)、キャプシド(C)および膜(M)という三つの構造タンパク質と、七つの非構造タンパク質(NS1, NS2A, NS2B, NS3, NS4A, NS4BおよびNS5)とを含んでいる。感染細胞にある未熟なフラビ・ビリオンはプロテインMの前駆体であるプレメンブラン(prM)プロテインを含んでいる。
【0005】
宿主細胞レセプターにビリオンが結合すると、プロテインEは、エンドソームの酸性pHへの曝露により不可逆性のコンホメーション変化を受けて、ビリオンおよびエンドサイトーシス小胞のエンベロープ二重層の間に融合が生じ、こうしてウイルスゲノムが宿主サイトソルに放出される。prM含有ダニ媒介脳炎(TBE)ウイルスは融合能がないことから、融合能があり完全感染性であるビリオンの発生にはprMのタンパク分解プロセシングが必要であることが示される(Guirakhoo et al., J. Gen. Virol. 72 (Pt. 2): 333-338, 1991 (非特許文献1))。ウイルス複製サイクル後期に塩化アンモニウムを用いて、prM含有ムレーバレー脳炎(MVE)ウイルスを生産し、融合能がないことが示された。配列特異的ペプチドおよびモノクローナル抗体を使用することにより、prMがプロテインEの200〜327アミノ酸と相互作用することが証明された。この相互作用は、エキソサイトーシス経路の酸性小胞成熟により起こる不可逆性コンホメーション変化からプロテインEを保護するために必要である(Guirakhoo et al., Virology 191: 921-931, 1992(非特許文献2))。
【0006】
フューリン(furin)様細胞プロテアーゼによりビリオンが放出される少し前に、prMがプロテインMに分解される(Stadler et al., J. Virol. 71:8475-8481, 1997 (非特許文献3))。これは、赤血球凝集作用、フゾジェニック(fusogenic)活性およびビリオンの感染性を活性化するのに必要である。プロテインMは、コンセンサス配列R-X-R/K-R(Xは可変)に続くその前駆体プロテイン(prM)の切断によって生じ、プロテインEと一緒にウイルスリピッドエンベロープに取り込まれる。
【0007】
切断配列はフラビウイルス内だけでなく、その他の、マウスコロナウイルスのPE2、アルファウイルスのPE2、インフルエンザウイルスのHA、そしてレトロウイルスのp160のような無関係なウイルスのタンパク質内にも保存されている。前駆体タンパク質の切断はウイルス感染に必須ではあるが、粒子の形成には必須ではない。TBE-デング4キメラの場合、prM切断サイトの変化はこのキメラの神経ビルレンスを減少させ(Pletnev et al., J. Virol. 67: 4956-4963, 1993 (非特許文献4))、完全感染性にはprMの効率的なプロセシングが必要であるというこれまでの観察(Guirakhoo et al., 1991, 前記 (非特許文献1)、1992, 同前記 (非特許文献2); Heinz et al., Virology 198:109-117, 1994 (非特許文献5))と一致することが分かった。プロテインprMの抗体は、若干の切断されていないprMを含有する、明らかに放出されたビリオンの中和により、防御免疫を伝達することができる。VEE(4個のアミノ酸)のPE2のタンパク分解切断部位は感染性クローンの部位特異的突然変異誘発により欠失を起こした(Smith et al., ASTMH 会議, 1997年12月7-11日 (非特許文献6))。高性能かつプロテインPE2で複製された欠失変異体は粒子に組み込まれた。この変異体は非ヒト霊長類において測定され100%の血清型変換をもたらすことが示されており、致死量の抗原を投与した場合でも、免疫されたすべてのサルが防御された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Guirakhoo et al., J. Gen. Virol. 72 (Pt. 2): 333-338, 1991
【非特許文献2】Guirakhoo et al., Virology 191: 921-931, 1992
【非特許文献3】Stadler et al., J. Virol. 71:8475-8481, 1997
【非特許文献4】Pletnev et al., J. Virol. 67: 4956-4963, 1993
【非特許文献5】Heinz et al., Virology 198:109-117, 1994
【非特許文献6】Smith et al., ASTMH 会議, 1997年12月7-11日
【発明の概要】
【0009】
本発明は、生きた(live)感染性弱毒化キメラウイルスであって、該ウイルスがそれぞれ
(a)プロテインprM-Eのヌクレオチド配列の欠失、短縮(truncation)または突然変異のいずれかにより第一フラビウイルスの機能的プロテインprM-Eが発現されない、弱毒化生ワクチンウイルスを示す第一の黄熱ウイルス(例えば、17D株)からなり、且つ
(b)第二の異なるフラビウイルスのウイルスエンベロープ(プロテインprM-E)をコードするヌクレオチド配列が第一のフラビウイルスのゲノムに組み込まれ、その結果第二のフラビウイルスのプロテインprM-Eが第一のフラビウイルスの改変されたゲノムから発現されることを特徴とする。
【0010】
従ってキメラウイルスは、第一のフラビウイルスに属する細胞内複製を起こす遺伝子および遺伝子産物と、第二のフラビウイルス・エンベロープの遺伝子および遺伝子産物とからなる。ウイルスのエンベロープは抗体の中和を誘導する抗原決定基のすべてを含んでいるため、キメラウイルスで感染させると、第二のフラビウイルスに対してのみそのような抗体が生じる。
【0011】
本発明のキメラウイルスにおいて第一のフラビウイルスとして使用するのに好ましい生(live)ウイルスは黄熱ウイルスである。少なくとも一つのワクチンでは既にこの弱毒化生ウイルスが使われている。そのワクチンはYF17Dとして公知であり、ヒト免疫に50年以上も使われてきた。YF17Dワクチンは、Smithburnら(「黄熱予防接種(Yellow Fever Vaccination)」、世界保健機構, p. 238, 1956)、およびFreestone (in Plotkin ら編, Vaccines, 第2版, W.B. Saunders, Philadelphia, 1995)による文献をはじめとする多数の刊行物に記載されている。さらに、黄熱ウイルスは遺伝子レベルでの研究も行われており(Rice et al., Science 229:726-733, 1985)、遺伝子型および表現型の相関情報が確立されている(Marchevsky et al., Am. J. Trop. Med. Hyg. 52:75-80, 1995)。
【0012】
本発明のキメラウイルスにおいて第二のフラビウイルスとして使用するのに好ましいフラビウイルスであり、従って免疫原である抗原の供給源となるフラビウイルスには、日本脳炎(JE)ウイルス、デング(DEN、例えば、デング1〜4型すべて)ウイルス、ムレーバレー脳炎(MVE)ウイルス、セントルイス脳炎(SLE)ウイルス、西ナイル(WN)ウイルス、ダニ媒介脳炎(TBE)ウイルス、およびC型肝炎(HCV)ウイルスが含まれる。第二のフラビウイルスとして使用する別のフラビウイルスとしては、クンジンウイルス、中央ヨーロッパ脳炎ウイルス、ロシア春夏脳炎ウイルス、ポワサンウイルス、キャサヌル森林病ウイルス、およびOmsk出血熱ウイルスが挙げられる。本発明の好ましいキメラウイルスにおいて、第二のフラビウイルスのプロテインprM-Eコード配列は生黄熱ウイルスのプロテインprM-Eコード配列に置き換えられている。好ましいキメラウイルスにおいては、プロテインprM-Eコード配列はワクチン株などの弱毒化ウイルス株から誘導される。また以下に述べるように、プロテインのprM部分は、成熟膜タンパク質を生じる切断を妨げる突然変異を含むことができる。
【0013】
本発明はまた、本発明のキメラフラビウイルスをヒトなどの哺乳類に投与することによって哺乳類のフラビウイルス感染を予防または治療する方法;フラビウイルス感染の予防または治療を目的とする医薬品の製造における本発明のキメラフラビウイルスの使用;本発明のキメラフラビウイルスをコードする核酸分子;および本発明のキメラフラビウイルスの製造法を含む。
【0014】
本発明によりいくつかの利点が提供される。例えば、本発明のキメラウイルスは生きており複製を行うため、持続性防御免疫を得るのに用いることができる。本ウイルスは弱毒化ウイルスの複製遺伝子をもっている(例えば、黄熱17D)ので、得られたキメラウイルスはヒトに対して安全に使える程度に弱毒化される。
本発明のその他の特徴および利点は以下の詳細な説明、図面および請求の範囲から明らかとなると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の黄熱/日本脳炎(YF/JE)キメラウイルスを構築するために行った遺伝子操作工程の概略図である。
【図2】図2は、ヒトワクチンの製造に利用できる培養細胞における本発明のキメラYF/JEウイルスの増殖曲線セットである。
【図3】図3は、MRC-5細胞におけるRMS (Research Master Seed、YF/JE SA14-14-2)およびYF-Vax間の増殖比較を示すグラフである。
【図4】図4は、本発明のYF/JEキメラウイルスを用いて行ったマウスの神経ビルレンス解析の結果を表すグラフと表である。
【図5】図5は、キメラYF/DEN-2ウイルスに対する二プラスミドシステムの概略図である。このストラテジーは本質的にYF/JEキメラウイルスについて記載の通りである。
【図6】図6は、内部リボソームエントリー部位(IRES)の制御下で、プロテインNS1の一部を欠失させる、および/または外来タンパク質を発現するようデザインされた改変YFクローンの構造を示す概略図である。本図は、ウイルスゲノムのE/NS1領域だけを示す。翻訳停止コドンはエンベロープ(E)プロテインのカルボキシ末端に導入されている。下流の翻訳は、IRES-1による遺伝子間オープンリーディングフレーム(ORF)内で開始され、外来タンパク質(例えば、HCVプロテインE1および/またはE2)を発現させる。第二のIRES(IRES-2)は、YF非構造領域の翻訳開始を制御し、そこでネスト化され短縮されたプロテインNS1(例えば、NS1del-1, NS1del-2またはNS1del-3)が発現される。NS1欠失のサイズはIRES-1にリンクしたORFのそれに反比例する。
【図7】図7は、YF/JE SA14-14-2キメラワクチンで免疫されたマウスの中和抗体反応を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
本発明はフラビウイルス感染に対するワクチン接種法に使用することができるキメラウイルスを提供するものである。黄熱ウイルスと、日本脳炎(JE)、デング1〜4型(DEN 1〜4)、ムレーバレー脳炎(MVE)、セントルイス脳炎(SLE)、西ナイル脳炎(WN)、ダニ媒介脳炎(TBE)およびC型肝炎(HCV)ウイルスとのキメラのような、本発明のキメラフラビウイルスの構築および分析について以下に説明する。
【0017】
フラビウイルスプロテインは、単一の長鎖オープンリーディングフレーム(特に構造タンパク質であるキャプシド(C)、プレメンブラン(pr-M)およびエンベロープ(E)ならびに非構造タンパク質をコードする)の翻訳と翻訳後のタンパク分解性切断との複合系によって製造される。上記したように、本発明のキメラフラビウイルスは、一つのフラビウイルスのプロテインpr-MとプロテインEが他のフラビウイルスのプロテインpr-MとプロテインEにより置き換えられたものを含む。従って、これらのキメラフラビウイルスの作製は、二つの相異なるフラビウイルスの、キャプシドプロテインとプレメンブランプロテインとの間、エンベローププロテインと非構造領域(NS1)との間に、新しい結合を作ることを含む。これらプロテイン(Cとpr-MおよびEとNS1)の組合せそれぞれの切断は、フラビウイルスプロテインの自然タンパク分解性プロセシング過程で起こり、切断部位の結合部位に隣接するシグナル配列の存在を必要とする。
【0018】
本発明のキメラフラビウイルスにおいては、キメラを構成するウイルスのシグナル配列が実質的に保持されてプロテインCとプロテインpr-M間およびプロテインEとプロテインNS1間に適切な切断が効率的に起こることが好ましい。これらのシグナル配列は以下に記載のキメラに保持されている。または、多数の公知のシグナル配列のどれでもよいが、遺伝子操作してキメラのプロテインCとプロテインpr-M、もしくはプロテインEとプロテインNS1とを結合することができる(例えば、von Heijne, Eur. J. Biochem. 133:17-21, 1983; von Heijne, J. Mol. Viol. 184:99-105, 1985参照)。または、例えば、公知のガイダンス配列を用いて、当業者は本発明のキメラに使用することができる他のシグナル配列をデザインすることができる。典型的には、例えば、シグナル配列はその最後の残基として、アラニン、グリシン、セリン、システイン、スレオニンまたはグルタミンのような、小さな非荷電側鎖をもつアミノ酸を含むと考えられる。シグナル配列についてのその他の要件は当技術分野では公知である(例えば、von Heijne, 1983, 前記; von Heijne, 1985, 前記参照)。さらに、キメラを構成するウイルスのうちいずれかのシグナル配列は保持することができるか、または実質的に保持することができ、その結果適正な切断が起こる。
【0019】
YF/JEキメラウイルスの作製用cDNA鋳型の構築
以下に記載する本発明のYF/JEキメラ用全長cDNA鋳型の誘導には、YF複製の分子遺伝学的解析のためにcDNAからYF17Dを再生するのに先人研究者らが使用したのと同様のストラテジーを用いた。このストラテジーは例えば、ネストロウィクツ(Nestorowicz)らにより報告されている(Virology 199:114-123, 1994)。
簡単に説明すると、本発明のYF/JEキメラを誘導するには以下の操作を行う。ヌクレオチド1〜2,276位と8,279〜10,861位 (YF5'3'IV)由来、および1,373〜8,704(YFM5.2)由来のYF配列をコードする二つのプラスミド(YF5'3'IVおよびYFM5.2)においてYFゲノム配列を増殖させる(Rice et al., The New Biologist 1:285-296, 1989)。これらのプラスミドから誘導された適当な制限断片のライゲーションによって全長cDNA鋳型を作製する。この方法は、YF配列の安定的な発現および高い特異的感染性をもつRNA転写物生成を確実にする最も信頼性の高い方法であった。
キメラを構築するための本発明者らのストラテジーは、YF5'3'IVおよびYFM5.2プラスミド内のYF配列を、プロテインprM(ヌクレオチド478位、アミノ酸128位)の開始点からE/NS1切断部位(ヌクレオチド2,452位、アミノ酸817位)までの対応するJE配列によって置換することを含む。JE cDNAのクローニングに加えて、インビトロでライゲーションを行うYF配列およびJE配列の両方に制限サイトを導入または除去するためにはいくつかの段階が必要であった。キメラYF(C)/JE(prM-E)ウイルスを再生する鋳型の構造を図4に示す。全JE構造領域(C-prM-E)をコードする第二のキメラは同様のストラテジーを用いて遺伝子操作して構築された。
【0020】
JEウイルス構造領域の分子クローニング
JE SA14-14-2株(JE弱毒化生ワクチン株)から標準(authentic)JE構造タンパク質遺伝子のクローンを得た。この株の生物学的性質および分子の特性について十分な資料があるからである(例えば、Eckels et al., Vaccine 6:513-518, 1988参照; JE SA14-14-2ウイルスはコロラド州フォートコリンズの疾病管理センターおよびコネチカット州ニューヘブンのエール大学エールアルボウイルス研究ユニットから入手できる。いずれも合衆国における世界保健機構指定のアルボウイルス・レファレンスセンターである)。継代レベルPDK-5のJE SA14-14-2ウイルスが得られ、LLC-MK2細胞に継代されてcDNAクローニングに十分な量のウイルスを得た。本発明者らが用いたストラテジーは、次いでインビトロライゲーションに使用できるNHeI部位(JEヌクレオチド1,125)でオーバーラップする二つの断片に構造領域をクローニングすることを含む。
感染LLC-MK2細胞の単層からRNAを抽出し、まずpBluescript II KS(+)、次にYFM5.2(NarI)にそれぞれクローニングするための、ネスティッドXbaIおよびNarI制限部位を含むマイナスセンスプライマー(JEヌクレオチド配列2,456〜71)をもつ逆転写酵素を用いて、マイナスセンスcDNAの第一ストランド合成を行った。第一のストランドcDNA合成に続き、同一のマイナスセンスプライマーと、それぞれpBluescriptおよびYFM5.2(NarI)にクローニングするための、ネスティッドXbaIおよびNsiI制限部位を含むプラスセンスプライマー(JEヌクレオチド配列1,108〜1,130位)を用いて、ヌクレオチド1,108〜2,471位のJE配列のPCR増幅を行った。JE配列は、制限酵素消化とヌクレオチドシーケンシングによって確認した。ヌクレオチド1〜1,130位のJEヌクレオチド配列は、JEヌクレオチド1,116〜1,130位に相当するマイナスセンスプライマーとJEヌクレオチド1〜18位に相当するプラスセンスプライマーとを用い、マイナス鎖JE cDNAのPCR増幅により誘導した。なおプライマーは両方ともEcoRI制限部位を含んでいる。PCR断片をpBluescriptにクローニングし、ヌクレオチドシーケンシングによってJE配列を確認した。同時に、これはヌクレオチド1〜2,471位(アミノ酸1〜792位)からのJE配列のクローニングを示している。
【0021】
YF5'3'IV/JEおよびYFM5.2/JE誘導体の構築
YF E/NS1切断部位にJEエンベローププロテインのC末端を挿入するため、E/NS1切断部位(YFヌクレオチド2,447〜2,452位、アミノ酸816〜817位)にシグナラーゼ配列のオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発により、YFM5.2プラスミドにユニークなNarI制限部位を導入してYFM5.2(NarI)を作製した。この変化を組み込んでいる鋳型から誘導された転写物の感染力をチェックし、親鋳型と同程度の特異的感染力を得た(転写物250ナノグラムにつき約100個のプラーク形成単位)。ヌクレオチド1,108〜2,471由来のJE配列は、ユニークなNsiIおよびNarI制限部位を用いて、いくつかの別のPCR誘導pBluescript/JEクローンからYFM5.2(NarI)へサブクローニングされた。JE prM-E領域に隣接するYF 5'非翻訳領域(ヌクレオチド1〜118)を含むYF5'3'IV/JEクローンはPCR増幅により誘導した。
YFキャプシドとJE prMとの結合部位を含む配列を誘導するため、この領域に及ぶマイナスセンスキメラプライマーを、YF5'3'IVヌクレオチド6,625〜6,639位に対応するプラスセンスキメラプライマーと一緒に用い、PCR断片を作製した。これらの断片は次いで、EcoRI部位上流のpBluescriptベクター配列に相補的なプラスセンスプライマーと結合して、マイナスセンスPCRプライマーとして用いられ、ヌクレオチド477位(プロテインprMのN末端)からヌクレオチド1,125位のNheI部位までのJE配列(pBluescriptベクターにおいて逆方向にコードされる)を増幅する。得られたPCR断片は、NotIおよびEcoRI制限部位を用いてYF5'3'IVプラスミドに挿入された。この構築物は、配列YF(C)JE(prM-E)が後に続く、YF 5'非翻訳領域に先行するSP6プロモーターを含み、かつインビトロでのライゲーションに必要なNheI部位(JEヌクレオチド1,125)を含んでいる。
【0022】
インビトロ・ライゲーション用制限部位を入れるためのYFM5.2およびYF5'3'IVの遺伝子工学的処理
JEエンベロープ配列内のNheI部位を5'インビトロ・ライゲーション部位として使用するために、YFM5.2プラスミド(ヌクレオチド5,459)において重複するNheI部位を除去した。これはヌクレオチド5,461位(T→C;アラニン、アミノ酸1820位)におけるYF配列のサイレント変異によって行われた。適当な制限断片のライゲーションによってこの部位をYFM5.2に組み込み、キメラYF/JE配列をコードするNsiI/NarI断片の交換によりYFM5.2(NarI)/JEに導入した。
インビトロライゲーション用のユニークな3'制限部位を作製するため、YF5'3'IVとYFM5.2とから全長鋳型を作製するために通常使われるAatII部位の下流でBspEI部位を遺伝子工学的に組み込んだ(JE構造配列には複数のAatII部位があり、インビトロライゲーション用のこの部位を使えなくしている)。YFヌクレオチド8,581位(A→C;セリン、アミノ酸2,860位)のサイレント変異によってBspEI部位を作り、適当な制限断片の交換によりYFM5.2に導入した。XbaI/SphI断片の交換によって、上記のユニーク部位をYFM5.2/JEに組み込み、これら親のプラスミドから、およびヌクレオチド1位と6,912位のEcoRI部位間のYF配列を欠失させるYFM5.2(BspEI)の誘導体からの適当な制限断片の三片ライゲーションにより、YF5'3'IV/JE(prM-E)プラスミドへ組み込んだ。
【0023】
JEナカヤマcDNAのYF/JEキメラプラスミドへの交換
キメラウイルスに関連して適切に機能するPCR誘導JE SA14-14-2構造領域のキャパシティについては不確かであるため、本発明者らは発現実験において、また、防御免疫を誘発するその能力について十分に特徴分析されているJEナカヤマ株のクローンから得たcDNAを用いた(例えば、McIda et al., Virology 158:348-360, 1987参照; JEナカヤマ株はコロラド州フォートコリンズの疾病管理センターおよびコネチカット州ニューヘブンのエール大学エールアルボウイルス研究ユニットから入手できる)。入手可能な制限部位を用いて、ナカヤマcDNAをYF/JEキメラプラスミドに挿入し(HindIIIからPvuII、BpmIからMunIへ)二プラスミドシステムにおいて、49位の単一アミノ酸、セリンを除く全てのprM-E領域を置換した。セリンは、インビトロライゲーション用NheI部位を利用するため、もとのままにしておかれた。ナカヤマクローンの全JE領域をシーケンシングして、置換されたcDNAが真正であることを確認した(表2)。
【0024】
全長cDNA鋳型の作製、RNAトランスフェクションおよび感染性ウイルスの回収
全長cDNA鋳型の作製法は基本的にRiceら(The New Biologist 1:285-96, 1989)に記載の通りである(図1参照)。キメラ鋳型の場合、プラスミドYF5'3'IV/JE(prM-E)およびYFM5.2/JEをNheI/BspEIで消化し、T4 DNAリガーゼの存在下、50ナノグラムの精製断片を用いて、インビトロライゲーションを行う。XhoIでライゲーション生成物を線状にしてランオフ転写を行わせる。50ナノグラムの精製鋳型を用いて、SP6転写物を合成し、3H-UTPを取り込ませることにより定量する。非変性アガロースゲル電気泳動により、RNAが完全な状態であることを確認する。この方法を用いる場合のRNAの収量は、1反応につき、5〜10マイクログラムの範囲であり、その大部分は全長転写物として存在している。Riceら(前記)に記載の通り、カチオン性リポソームの存在下、YF17DについてRNA転写物のトランスフェクションを行う。本発明者らはYFおよびJEの親株について複製もプラーク形成も可能であることを確認していたので、最初の実験においては、ウイルスのトランスフェクションおよび定量にLLC-MK2細胞を用いた。表1は、トランスフェクション媒体としてリポフェクチン(GIBCO/BRL)を用いたトランスフェクション実験の代表的な結果を示すものである。ベロ細胞株は感染性ウイルスストックの製造、標識プロテインの特性化、および中和試験にも日常的に使用されている。
【0025】
キメラcDNA鋳型のヌクレオチド・シーケンシング
キメラYF/JE cDNA含有プラスミドをクローンのJE部分について配列解析を行い、SA14-14-2およびナカヤマエンベローププロテインの正確な配列を同定した。報告されている配列(McAdaら、前記)と比較して、これら構築物間のヌクレオチド配列の違いを表2に示す。
【0026】
キメラYF/JEウイルスの構造および生物学的特性
トランスフェクション実験で回収されたキメラYF/JEウイルスのゲノム構造を、単層感染細胞から得られたウイルスRNAのRT/PCRによる分析で確認した。これらの実験は、ウイルスストックがトランスフェクション処理中に汚染された可能性を排除するために行われる。トランスフェクションされた残留ウイルスRNAの存在によって生じるおそれのある人工産物を除くために、これらの実験に対しては、最初の継代ウイルスを使用して感染サイクルを開始させた。大きさ約1 kbの2つのPCR生成物として全構造領域を回収できるYFおよびJE特異的プライマーを用い、YF/JE(prM-E)-SA14-14-2またはYF/JE(prM-E)-ナカヤマキメラのいずれかに感染させた細胞の全RNA抽出物をRT/PCRに付した。これらの生成物を次いで、JE SA14-14-2内の推定部位と、これらウイルスを分化させるナカヤマ配列とを用いる制限酵素消化によって分析した。この方法を使い、ウイルスRNAはキメラであることが示され、回収されたウイルスは適切な制限部位をもつことが確認された。次にキメラYF/JE C-prM結合を横切るサイクルシーケンシング法により、実際のC-prM境界が配列レベルにおいて無変化であることが確認された。
JE特異的抗血清の免疫沈降法でも、YFおよびJE特異的抗血清を用いるプラーク減少中和試験によっても、二個のキメラ中にJEエンベローププロテインが存在することが確認された。プロテインJE Eのモノクローナル抗体を用いて上記キメラで感染させたLLC-MK2細胞の35S標識抽出物の免疫沈降法によって、エンベローププロテインJEが55 kDのプロテインとして回収できるのに対し、同じ抗血清はYF感染細胞からのタンパク質を免疫沈降できないことが示された。JEおよびYF高度免疫血清は両方とも二個のエンベローププロテインに対して交差反応性を示したが、プロテイン(YF=53 kD, グリコシル化されていない;JE=55 kD, グリコシル化されている)間には再現性をもってサイズ差が観察された。YFモノクローナル抗体の使用は、この免疫沈降条件下では満足のいくものではなかった。従って、本分析においては、特異性はJEモノクローナル抗体に依存していた。YFおよびJE特異的高度免疫腹水(ATCC)とYF特異的精製IgG(モノクローナル抗体2E10)とを用い、キメラウイルスと、YFおよびJE SA14-14-2ウイルスとについて、プラーク減少中和試験(PRNT)を行った。これらの実験において対照ウイルスと比較したとき、上記キメラについては抗血清の50%プラーク減少力価に有意差が観察された(表3)。したがって、中和に必要なエピトープが感染性キメラYF/JEウイルスで発現される。
【0027】
細胞培養における増殖性
霊長類および蚊由来の両細胞株において、キメラの増殖能を定量的に調べた。図2は、低多重感染(0.5プラーク形成単位/細胞)後のLLC-MK2細胞について、キメラの累積増殖曲線を示す。本実験では、比較用にYF5.2iv(クローニングされた誘導体)およびJE SA14-14-2(クローニングされていない)ウイルスを使用した。キメラウイルスは両方ともいずれの親ウイルスよりも約一対数高いウイルスの最大収量に達した。YF/JE SA14-14-2キメラの場合、ウイルス産生のピークは、YF/JEナカヤマキメラの12時間後であった(50時間対38時間)。YF/JEナカヤマキメラは、本細胞株のYF/JE SA14-14-2キメラよりも相当大きい細胞変性効果を示した。低多重感染(0.5プラーク形成単位/細胞)後のC6/36細胞について同様の実験を行った。図2はまた、この無脊椎動物細胞株におけるウイルスの増殖速度曲線を示す。本実験のウイルス回収に使われた全時点において同様のウイルス収量が得られ、キメラウイルスは複製効率を損なわないとの見解をさらに証明ししている。
【0028】
MRC-5細胞におけるRMS(YF/JE SA14-14-2)とYF 17Dワクチンの増殖速度曲線の比較
ヒトワクチンとして許容される細胞株で増殖するワクチン候補の能力を評価する実験を行った。市販の黄熱17Dワクチン(YF-Vax(登録商標))はペンシルバニア州スイフトウォーター、コンノート研究所から入手した。MRC-5(二倍体ヒト胎児性肺細胞)はATCC(171-CCL, Batch#: F-14308, 18継代)から購入し、EMEM、2 mM L-グリシン、1.5 g/Lの重炭酸ナトリウム、0.1 mMの非必須アミノ酸および10%FBSを含むように調整したEarl's BSSで増殖させた。
RMS (Research Master Seed、YF/JE SA14-14-2)およびYF-Vax(登録商標)の増殖速度曲線を比較するため、細胞を90%コンフルエントまで増殖させ、0.1 pfuのMOIでRMSまたはYF-Vax(登録商標)に感染させた。MRC-5細胞は一般にゆっくり増殖するため、これらの細胞は接種後10日間保持された。サンプルは7〜10日間毎日凍結して、ベロ細胞におけるプラークアッセイにより感染力を測定した。
MRC-5細胞におけるYF-Vax(登録商標)およびYF/JEキメラを中程度の力価まで増殖させた(図3)。ピーク力価は、YF-Vax(登録商標)については2日目に達成された〜4.7 log10 pfuであり、RMSについては6日後の、これよりやや低い4.5 log10 pfuであった。
【0029】
正常成熟マウスにおける神経ビルレンス試験
YF/JE SA14-14-2キメラのビルレンス性を若い成熟マウスの脳内接種によって解析した。10匹のマウス群(4週齢の雌雄ICRマウス、各群5匹ずつ)を、10,000プラーク形成単位のYF/JE SA14-14-2キメラ、YF5.2ivまたはJE SA14-14-2で接種し、3週間毎日観察した。本実験の結果を図4に示す。YF5.2iv親株を投与したマウスは接種後約1週間で死亡した。JE SA14-14-2親またはそのキメラのいずれかを投与したマウスでは死亡も病気も見られなかった。実験に使用した接種物は注射時に力価を測定し、中和抗体の存在について生存マウスの一サブグループを試験して、感染が起こっていることを確認した。試験されたものの中で、JE SA14-14-2ウイルスに対する力価は本株またはそのキメラを投与した動物と同程度であった。
マウスにおけるYF/JE SA14-14-2キメラの神経ビルレンスを調べる実験をさらに行い、その結果を表4に示す。これらの実験では、YF5.2ivを接種したマウスはすべて7〜8日以内に死亡した。これに対し、YF/JE SA14-14-2を接種したところ、接種後2週間にわたる観察期間にマウスの死亡は見られなかった。
YF/JEキメラの神経侵襲性および病原性を調べた実験結果を表5に示す。これらの実験では、キメラウイルスを、投与量を10,000〜100万プラーク形成単位の間で変えて3週齢のマウスに腹腔内経路で接種した。接種後3週間にわたって観察したが、YF/JEナカヤマ株またはYF/JE SA14-14-2を接種したマウスの死亡は見られなかった。これは、当該ウイルスが末梢へ接種された後には病気を引き起こすことが出来ないことを示している。YF/JE SA14-14-2を接種したマウスはJEウイルスに対する中和抗体を生成した(図7)。
【0030】
黄熱ウイルス/デング(YF/DEN)キメラウイルスの作製用cDNA鋳型の構築
以下に黄熱ウイルス/デング(YF/DEN)ウイルスの誘導法を記載するが、これは原則として、上記したYF/JEキメラの構築と同じように行う。他のフラビウイルスキメラも天然の、もしくは遺伝子操作された制限部位および、例えば、表6に示すようなオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、同様のストラテジーにより遺伝子操作により作製することができる。
【0031】
YF/DENキメラウイルスの構築
デングウイルスについてはいくつかの分子クローンが開発されているが、いずれもプラスミドシステムにおけるウイルスcDNAの安定性および回収されたウイルスの複製効率の問題に遭遇している。本発明者らは、オーストラリア、クレイトン、モナシュ大学、微生物学部のピーター・ライト(Peter Wright)博士が開発したDEN-2のクローンを使うことにした。このシステムがウイルス再生に比較的効率的であり、かつ、本発明者ら自身の方法論に似た二プラスミドシステムを使用しているためである。このDEN-2クローンの完全配列は入手可能であり、また、YFクローンをほんの少し変更するだけで良いためキメラYF/DEN鋳型の構築は容易であった。
YF5.2ivおよびYF/JEウイルスの二プラスミドシステムと同様に、YF/DENシステムも二個のプラスミド―以下YF5'3'IV/DEN(prM-E')およびYFM5.2/DEN(E'-E)と称する―内の構造領域(prM-E)の増殖の分岐点としてDEN-2エンベローププロテイン(E)内のユニークな制限部位を用いている(図5参照)。このキメラ鋳型のインビトロライゲーションに対する二個の制限部位はAatIIおよびSphIである。プロテインDEN E配列の3'位の受容体プラスミドはYFM5.2(NarI[+]SphI[-])である。このプラスミドは、プロテインJE Eのカルボキシ末端の挿入に使われたE/NSI結合部位にNarI部位を含んでいる。部位特異的サイレント変異誘発によってプロテインNS5領域内の余分のSphI部位を除去することによりさらに改変した。これにより、単一方向クローニング(simple directional cloning)によってユニークなSphI部位からNarI部位までのDEN-2配列が挿入された。適当なDEN-2 cDNAフラグメントは、ライト(Wright)博士により提供されたDEN-2クローンMON310からPCRにより誘導した。PCRプライマーは、SphI部位に隣接する5'プライマー、およびE/NSI結合部位のシグナラーゼ部位のすぐ上流にあってDEN-2ヌクレオチドに相同であり、かつ新しい部位を形成するがNarI部位も導入する置換によってシグナラーゼ部位を置換する3'プライマーを含んでいた。次いで得られた1,170塩基対PCR断片をYFM5.2(NarI[+]SphI[-])に導入した。
キメラPCRプライマーを用いて、プロテインEのprMおよびアミノ末端部を含むDEN-2クローンの5'部分を、YF5'3'IVプラスミドへと遺伝子工学的に組み込んだ。マイナスセンスプロテインYF Cの3'末端およびプロテインDEN-2 prMの5'末端を組み込んだキメラプライマーを、YF5'3'IVプラスミドのSP6プロモーターに隣接するプラスセンスプライマーと一緒に使用して、DEN-2 prM配列を示す20塩基延長した771塩基対PCR生成物を生成させた。次いで、このPCR生成物を用いて、1,501位〜1,522位のDEN-2配列を表しSphIに隣接する3'プライマーと共にDEN-2プラスミドをプライミングし、NotI部位からSP6プロモーターまでのYF配列、YF 5'非翻訳領域、およびDEN-2 prM-E1522配列に隣接するYF Cプロテインを含む1,800塩基対のPCR最終産物を生成させた。PCR生成物は、NotIおよびSphI部位を使用してYF5'3'IVにライゲーションしてYF5'3'IV/DEN(prM-E)プラスミドを得た。
【0032】
その他のフラビウイルス用キメラ鋳型の構築
キメラYF/MVE, YF/SLE, YF/WNおよびYF/TBEウイルスをコードする全長cDNA鋳型を作製する方法は、YF/DEN-2システムについて上記した方法と同様である。表6にYF17Dを基にしたキメラウイルスの作製ストラテジーの要点を示す。インビトロライゲーションに使用したユニークな制限部位およびC/prMとE/NSI結合部位を遺伝子操作により組み込んだキメラプライマーも同表に示す。これら異種フラビウイルスのcDNA源は容易に入手可能である(MVE: Dalgarno et al., J. Mol. Biol. 187:309-323, 1986; SLE: Trent et al., Virology 156:293-304, 1987; TBE: Mandl et al., Virology 166:197-205, 1988; Dengue 1: Mason et al., Virology 161: 262-267, 1987; Dengue 2: Deubel et al., Virology 155:365-377, 1986; Dengue 3: Hahn et al., Virology 162: 167-180, 1988; Dengue 4: Zhao et al., Virology 155: 77-88, 1986)。
さらにキメラウイルスを遺伝子操作する他のアプローチとして、C/prM結合部位に該当する両末端と、YF5'3'IVまたはpBS-KS(+)などの中間体プラスミドに導入するための適当な制限部位に隣接する5'および3'末端とをもつ、PCR誘導制限断片の平滑末端ライゲーションによってこのC/prM結合を作製することが挙げられる。キメラオリゴヌクレオチドを使用するかまたは平滑末端ライゲーションを使用するかの選択は、問題のウイルスのエンベローププロテインをコードする領域内でユニークな制限部位が利用できるかどうかによって変わる。
【0033】
HCV抗原をコードするYFウイルスの構築
HCVの構造タンパク質E1およびE2は上記フラビウイルスの構造タンパク質に相同ではない。これらのタンパク質の発現ストラテジーには、ゲノムの非必須領域内への挿入が含まれ、その結果、感染細胞においてウイルスが複製される間にこれらタンパク質の全てが黄熱タンパク質と同時発現される。プロテインを挿入するターゲットとなる領域は、プロテインNS1全体がウイルス複製に必要とされないため、プロテインNS1のN末端部分である。ゲノムの正常なサイズ(約10,000個のヌクレオチド)を超える異種配列の存在下YFゲノムの安定性については潜在的な問題があり、以下に述べる検出ストラテジーを利用することができる。さらに上記のキメラYF/フラビウイルスシステムにおいてはNS1を欠失させることが有利である。このプロテインを部分的に欠失させると、NS1の抗体に伴うYFの免疫を消失させることができ、従って、指定レシピエントに複数のキメラワクチンが必要となる場合またはYFワクチンが以前に与えられたかもしくは将来必要になるような場合にベクター免疫の問題を回避できるからである。
このストラテジーは、E末端に翻訳終始コドンを遺伝子工学的に組み込むことと連係して、YFM5.2プラスミドのNS1コード領域内における一連のインフレーム欠失、および一連の二IRES(内部リボソームエントリー部位)の作製を含む。一つのIRESは終始コドンのすぐ下流にあって、EとNS1との間の領域内にあるオープンリーディングフレームを発現させる。第二のIRESは短縮型(truncation)プロテインNS1からの翻訳を開始して、YF非構造ポリプロテインの残部を発現させる。これらの誘導体については感染性ウイルスの回収試験を行い、最大の欠失を有する構築物を第一IRESの外来配列(例えば、プロテインHCV)を挿入するのに使用する。この特定の構築物は、上記した通り、prM-Eを発現するYF/フラビキメラウイルスに関連して、NS1の欠失がベクター特異的免疫に影響を与えるかどうかを判断する根拠としても機能しうる。
プロテインE1、E2、および/またはE1プラスE2 HCVをコードするヌクレオチドの挿入は、プロテインNS1に寛容な欠失のサイズによって制限される。このため、短縮型プロテインHCVを使用して改変されたYFクローンの安定性を高めることができる。プロテインHCVは、IRESの直後にN末端シグナル配列を、およびC末端に終止コドンを組み込む。この構築により、プロテインHCVは小胞体へと向けられ、細胞から分泌されると考えられる。本構築に対するストラテジーの概略を図6に示す。遺伝子型IのプロテインHCVをコードするプラスミドはこれらの構築、例えば、ワシントン大学のチャールズ・ライス博士(Grakoui et al., J. Virology 67:1385-1395, 1993)から入手したHCVプラスミドの構築に使用することができる。博士はプロセシング系において、かつ、複製-補体全長HCVクローン内で、このウイルス領域を発現させている。
【0034】
フラビウイルスワクチン候補を弱毒化するprM開裂欠失変異体
本発明に含まれるさらに他のキメラウイルスは、prM開裂部位での突然変異のようなprM開裂を妨げる突然変異を含む。例えば、デングやTBE、SLEなど問題のフラビウイルス感染性クローンのprM開裂部位は部位特異的突然変異誘発によって突然変異させることができる。上記のような、開裂部位にあるアミノ酸はどれでも、または全部を欠失もしくは置換することができる。次いで、突然変異prM-E遺伝子を含む核酸断片を、前記方法を用いて黄熱ウイルスベクターに挿入することができる。prM欠失を他の弱毒化突然変異、例えば、プロテインEの突然変異と共に、または突然変異させずに使用して、黄熱ウイルスに挿入することができる。欠失配列を復帰させビルレンスを復活させることはほとんど不可能であるため、これらの変異体はワクチン候補としては単一の置換突然変異体よりも有利である。
以下に示す本発明のキメラフラビウイルスはブダペスト条約に従って米国メリーランド州ロックビルのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託され、1998年1月6日付けの寄託日を付与された:キメラ黄熱17D/デング2型ウイルス(YF/DEN-2; ATCC寄託番号ATCC VR-2593)およびキメラ黄熱17D/日本脳炎SA14-14-2ウイルス(YF/JE A1.3; ATCC寄託番号ATCC VR-2594)。
【0035】
表1
YF/JEキメラの特徴分析

【0036】
表2
JE株とYF/JEキメラの配列比較

【0037】
表3
YF/JEキメラのプラーク減少中和力価

【0038】
表4
YF/JE SA14-14-2キメラの神経ビルレンス
3週齢雄性ICRマウス

【0039】
表5
YF/JEキメラの神経侵襲性
3週齢雄性ICRマウス

【0040】
表6
YF/フラビウイルスキメラの遺伝子操作

1,2:この欄はC/prMまたはE/NS1結合に対応するキメラYF/フラビウイルスプライマーを作るのに使用したオリゴヌクレオチドを示す(本文参照)。X=YFキャプシドのカルボキシ末端コード配列。下線部はNarI部位(アンチセンス- ccgcgg)のすぐ上流の標的異種配列に相当する。この部位によりPCR生成物が全長cDNA鋳型の生成に必要なYfm5.2(NarI)プラスミドに挿入される。他のヌクレオチドは異種ウイルスに特異的である。オリゴヌクレオチドプロテインは5'から3'へ記載されている。
3,4:単離してインビトロライゲーションを行い全長キメラcDNA鋳型を生成することができる制限断片を生成するのに使用されるユニークな制限部位が記載されている。いくつかの配列は都合のよい部位をもっていないので、適当な部位を組み込むことが必要な場合もある(脚注5)。
5:括弧内は、YF骨格または異種ウイルスのいずれかを作製して効率的なインビトロライゲーションを行わなければならない制限酵素部位である。括弧の中に無い部位は除去しなければならない。こうした修飾はすべて各クローンについてcDNAのサイレント変異誘発によって行われる。空欄はcDNAクローンの修飾が不要であることを示す。
【0041】
その他の態様
その他の態様は以下の請求の範囲に含まれる。例えば、医学的に重要な他のフラビウイルスのプロテインprM-E遺伝子は黄熱ワクチンウイルス骨格に挿入して、医学的に重要な他のフラビウイルスに対するワクチンを作製することができる(例えば、Monath et al., 「フラビウイルス(Fraviviruses)」、In Virology, Fields編、Raven-Lippincott, New York, 1995, Volume I, 961-1034)。
本発明のキメラベクターに挿入すべき遺伝子から得られるフラビウイルスの他の例としては、例えば、クンジンウイルス、中央ヨーロッパ脳炎ウイルス、ロシア春夏脳炎ウイルス、ポワサンウイルス、キャサヌル森林病ウイルス、およびOmsk出血熱ウイルスがある。さらに遠縁のウイルスでもその遺伝子を黄熱ワクチンウイルスに挿入して新規なワクチンを構築することができる。
【0042】
ワクチン製造とその使用
本発明のワクチンは、当業者が容易に決定できる用量および方法により投与される。本ワクチンは、例えば黄熱17Dワクチンと同様に、例えば、感染ニワトリ胚組織の清澄浮遊液またはキメラ黄熱ウイルスに感染させた培養細胞から得られた培養液として投与し処方することができる。従って、弱毒化キメラ生ウイルスは0.1〜1.0 mlの用量で100乃至1,000,000感染単位(例えば、プラーク形成単位または組織培養感染量)を含有する無菌水溶液として処方し、例えば、筋内、皮下、または皮内経路により投与される。さらに、フラビウイルスは経口のような粘膜経路によりヒト宿主に感染する能力がある(Gresikova et al., 「ダニ媒介脳炎(Tick-borne Encephalitis)」、In The Arboviruses, Ecology and Epidemiology, Monath編、CRC Press, Boca Raton, Florida, 1988, Volume IV, 177-203)ため、ワクチンウイルスを粘膜経路で投与して防御免疫反応を得ることができる。本発明のワクチンは、フラビウイルスに感染するおそれはあるが、一次予防接収剤として成人または子供に投与することができる。本ワクチンはまた、フラビウイルスに対する免疫反応を刺激することによってフラビウイルス感染患者の治療を行う二次薬剤としても用いることができる。
【0043】
一種のウイルス(例えば、日本脳炎ウイルス)に対する宿主を免疫する黄熱ワクチンベクターシステムとして使用し、その後異なるキメラ構築物を用い第二または第三のウイルスに対して同一個体を再免疫することが望ましい。キメラ黄熱システムがもたらす重要な利点は、このベクターが自分自身に対し強い免疫を誘発しない点にある。黄熱ウイルスの事前免疫が異種遺伝子発現ベクターとしてキメラワクチンの使用を妨げることもない。これらの利点は、黄熱の中和(防御)抗原をコードする黄熱ワクチン遺伝子E部分を除去し、黄熱に対する交差防御を与えない別の異種遺伝子と置換したことによるものである。YF17Dウイルス非構造タンパク質は、例えば、感染細胞の補体依存性抗体媒介溶菌に関わるNS1抗体を生じさせることにより(Schlesinger et al., J. Immunology 135:2805-2809, 1985)、または、NS3やそのウイルスの他のタンパク質に対する細胞毒性T細胞反応を誘発することによって防御の役割を果たすことはあるが、これらの反応が生ウイルスワクチンの能力を失わせて中和抗体を刺激するとは考えられない。このことは、(1)JEウイルス感染既往歴がある個体は、YF17Dのワクチン注射に対してJE感染既往歴のない個体と同様に反応すること、および(2)YF17Dワクチン注射を受けたことのある個体は中和抗体力価が上昇するにつれて再ワクチン注射に反応するという事実(Sweet et al., Am. J. Trop. Med. Hyg. 11:562-569, 1962)により裏付けられる。従って、キメラベクターは、事前の自然感染またはワクチン注射により黄熱に免疫性である集団に用いることができ、しかも繰り返して、または、例えば、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、または西ナイル脳炎ウイルスに由来する挿入断片を有する黄熱キメラを含む、数種類の異なる構築物で同時に、もしくは順次免疫するのに使用することができる。
【0044】
ワクチン施用に際しては、当業者に公知のアジュバントを使用することができる。キメラワクチンの免疫原性を高めるのに使用できるアジュバントとしては、例えば、リポソーム処方、またはサポニン(例えば、QS21)、ムラミルジペプチド、モノホスホリルリピドAのような合成アジュバント、またはポリホスファジンがある。これらのアジュバントは不活性化ワクチンに対する免疫反応を高めるために用いるのが典型的であるが、これらはまた生ワクチンと一緒に使用することもできる。例えば、経口のような粘膜経路により送達されるキメラワクチンの場合、大腸菌(LT)もしくはLT突然変異誘導体の易熱性トキシンなどの粘膜アジュバントは有用なアジュバントである。さらに、アジュバント活性をもつサイトカイン類をコードする遺伝子を黄熱ベクターに挿入することができる。従って、GM-CSF, IL-2, IL-12, IL-13またはIL-5のようなサイトカイン類をコードする遺伝子を異種フラビウイルス遺伝子と一緒に挿入して免疫反応を高めるワクチンを製造することができ、または、細胞性、体液性、もしくは粘膜性免疫に対してさらに特異的になるよう免疫を調節することができる。当業者であれば容易に理解できるように、本発明のベクターは、ワクチン施用のほか、患者細胞に治療用遺伝子生成物を導入するための遺伝子治療法に使用することができる。これらの方法では、治療用遺伝子生成物をコードする遺伝子を、例えば、プロテインprM-Eをコードする遺伝子の代わりにベクターへ挿入する。
【0045】
フラビウイルスが細胞の細胞質で複製を行う結果、ウイルス複製ストラテジーが宿主細胞へのウイルスゲノム組み込みを伴わない点(Chambers et al. (1999) 「フラビウイルスゲノムの構成、発現、および複製(Flavivirus Genome Organization, Expression, and Replication)」、In Annual Review of Microbiology 44:649-688)は、黄熱ベクターシステムのさらなる利点であり、これにより重要な安全性の基準が提供される。
本明細書中に引用した文献はすべてその全文が参照として本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテインprM-Eをコードするヌクレオチド配列が欠失、短縮(truncation)、または突然変異のいずれかを受けた結果、機能性黄熱ウイルスプロテインprM-Eが発現されず、かつ、
第二の異なるフラビウイルスのプロテインprM-Eをコードするヌクレオチド配列が該黄熱ウイルスのゲノムに組み込まれ、その結果該第二のフラビウイルスのプロテインprM-Eが発現される黄熱ウイルスからなる感染性弱毒化キメラ生ウイルス。
【請求項2】
第二のフラビウイルスが日本脳炎(JE)ウイルスである、請求項1記載のキメラウイルス。
【請求項3】
第二のフラビウイルスがデング型1〜4からなる群より選択されるデングウイルスである、請求項1記載のキメラウイルス。
【請求項4】
第二のフラビウイルスが、ムレーバレー脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、クンジンウイルス、中央ヨーロッパ脳炎ウイルス、ロシア春夏脳炎ウイルス、ポワサンウイルス、キャサヌル森林病ウイルス、およびOmsk出血熱ウイルスからなる群より選択される、請求項1記載のキメラウイルス。
【請求項5】
第二の異なるフラビウイルスのプロテインprM-Eをコードするヌクレオチド配列が黄熱ウイルスのプロテインprM-Eをコードするヌクレオチドに置換されている、請求項1記載のキメラウイルス。
【請求項6】
第二の異なるフラビウイルスのプロテインprM-Eをコードするヌクレオチド配列がプロテインMを生成するprM開裂を妨げる突然変異を含む、請求項1記載のキメラウイルス。
【請求項7】
C/prMとE/NS1との結合部位におけるシグナル配列がキメラフラビウイルスの構造中に保持される、請求項1記載のキメラウイルス。
【請求項8】
患者のフラビウイルス感染の予防または治療を目的とする医薬品の調製における感染性弱毒化キメラ生ウイルスの使用であって、該感染性弱毒化キメラ生ウイルスが、
プロテインprM-Eをコードするヌクレオチド配列が欠失、短縮、または突然変異のいずれかを受けた結果、機能性黄熱ウイルスプロテインprM-Eが発現されず、かつ、
第二の異なるフラビウイルスのプロテインprM-Eをコードするヌクレオチド配列が該黄熱ウイルスのゲノムに組み込まれ、その結果該第二のフラビウイルスのプロテインprM-Eが発現される黄熱ウイルスからなる使用。
【請求項9】
第二のフラビウイルスが日本脳炎(JE)ウイルスである、請求項8記載の使用。
【請求項10】
第二のフラビウイルスがデング型1〜4からなる群より選択されるデングウイルスである、請求項8記載の使用。
【請求項11】
第二のフラビウイルスが、ムレーバレー脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、クンジンウイルス、中央ヨーロッパ脳炎ウイルス、ロシア春夏脳炎ウイルス、ポワサンウイルス、キャサヌル森林病ウイルス、およびOmsk出血熱ウイルスからなる群より選択される、請求項8記載の使用。
【請求項12】
第二の異なるフラビウイルスのプロテインprM-Eをコードするヌクレオチド配列が黄熱ウイルスのプロテインprM-Eをコードするヌクレオチドに置換されている、請求項8記載の使用。
【請求項13】
第二の異なるフラビウイルスのプロテインprM-Eをコードするヌクレオチド配列がプロテインMを生成するprM開裂を妨げる突然変異を含む、請求項8記載の使用。
【請求項14】
C/prMとE/NS1との結合部位におけるシグナル配列がキメラフラビウイルスの構造中に保持される、請求項8記載の使用。
【請求項15】
感染性弱毒化キメラ生ウイルスをコードする核酸分子であって、該ウイルスが
プロテインprM-Eをコードするヌクレオチド配列が欠失、短縮、または突然変異のいずれかを受けた結果、機能性黄熱ウイルスプロテインprM-Eが発現されず、かつ、
第二の異なるフラビウイルスのプロテインprM-Eをコードするヌクレオチド配列が該黄熱ウイルスのゲノムに組み込まれ、その結果該第二のフラビウイルスのプロテインprM-Eが発現される黄熱ウイルスからなる核酸分子。
【請求項16】
第二のフラビウイルスが日本脳炎(JE)ウイルスである、請求項15記載の核酸分子。
【請求項17】
第二のフラビウイルスがデング型1〜4からなる群より選択されるデングウイルスである、請求項15記載の核酸分子。
【請求項18】
第二のフラビウイルスが、ムレーバレー脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、クンジンウイルス、中央ヨーロッパ脳炎ウイルス、ロシア春夏脳炎ウイルス、ポワサンウイルス、キャサヌル森林病ウイルス、およびOmsk出血熱ウイルスからなる群より選択される、請求項15記載の核酸分子。
【請求項19】
第二の異なるフラビウイルスのプロテインprM-Eをコードするヌクレオチド配列が黄熱ウイルスのプロテインprM-Eをコードするヌクレオチドに置換されている、請求項15記載の核酸分子。
【請求項20】
第二の異なるフラビウイルスのプロテインprM-Eをコードするヌクレオチド配列がプロテインMを生成するprM開裂を妨げる突然変異を含む、請求項15記載の核酸分子。
【請求項21】
C/prMとE/NS1との結合部位におけるシグナル配列がキメラフラビウイルスの構造中に保持される、請求項15記載の核酸分子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−57496(P2010−57496A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247641(P2009−247641)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【分割の表示】特願平10−537907の分割
【原出願日】平成10年3月2日(1998.3.2)
【出願人】(503389389)サノフィ パスツール バイオロジクス カンパニー (17)
【出願人】(509039013)セントルイス ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】