説明

キメラ抗CD20抗体を用いた、循環腫瘍細胞に関連した血液学的悪性疾患の治療

【課題】多数の循環腫瘍細胞に関連した血液学的悪性疾患を治療する方法の提供。
【解決手段】キメラ抗CD20抗体を投与することにより、血液学的悪性疾患を治療する。これら悪性疾患には、とりわけB−プロリンパ球性白血病(B−PLL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、およびトランスフォーム(transformed)非ホジキンリンパ腫が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、B細胞表面抗原Bp35(CD20)に結合するキメラ抗体もしくはヒト化抗体を治療上有効な量投与することにより、多数の循環腫瘍細胞に関連した血液学的悪性疾患を治療することに関する。
【0002】
発明の背景
B細胞リンパ腫の診断薬および/または治療薬として抗CD20抗体を使用することは、以前に報告されている。CD20抗原は、悪性B細胞(即ち、衰えない増殖によりB細胞リンパ腫に至るB細胞)の表面に非常に高い濃度で発現するため、B細胞リンパ腫の有効なマーカーもしくはターゲットである。
【0003】
CD20もしくはBp35は、初期プレB細胞発達の間に発現し、プラスマ細胞分化まで存在するBリンパ球限定分化抗原である。CD20分子は、細胞周期の開始および分化に必要なB細胞活性化プロセスの一工程を制御し得ると考えられている。更に、記載されるとおり、CD20は、新生物性(腫瘍性)B細胞において非常に高いレベルで発現する。
【0004】
これまでに報告された抗CD20抗体を伴う療法は、治療用抗CD20抗体を単独もしくは第二の放射性標識抗CD20抗体と組み合わせて投与するか、あるいは化学療法剤と組み合わせて投与していた。
【0005】
実際、Food and Drug Administrationは、以前に治療を受け再発した低悪性度非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療に使用するために、このような治療用抗CD20抗体、RITUXAN(登録商標)の治療学的使用を承認した。また、放射性標識マウス抗CD20抗体と組み合わせたRITUXANの使用が、B細胞リンパ腫の治療に関して提案されている。
【0006】
しかし、抗CD20抗体、特にRITUXANは、非ホジキンリンパ腫のようなB細胞リンパ腫の治療に効果的であることが報告されているが、他の悪性疾患の効果的な抗体治療が開発された場合、それが有益であろう。すなわち、抗CD20抗体が他のタイプの悪性疾患を治療するために使用できた場合、それが有益であろう。
【0007】
簡単な説明
上記目的に対して、本発明者らは、血液中の多数の腫瘍細胞により特徴付けられる血液学的悪性疾患の新規治療法であって、抗CD20抗体を治療上有効な量投与することを伴う治療法を開発した。好ましい態様において、前記抗CD20抗体は、キメラ、ヒト化、もしくはヒトの抗ヒトCD20抗体を含む。前記血液学的悪性疾患の例には、B−プロリンパ球性白血病(B−PLL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、およびトランスフォーム(transformed)非ホジキンリンパ腫が含まれる。
【0008】
従って、本発明の目的は、抗CD20抗体を投与することを含む、血液学的悪性疾患の新規治療法を提供することである。
【0009】
本発明のより具体的な目的は、抗CD20抗体を投与することを含む、B−プロリンパ球性白血病(B−PLL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、もしくはトランスフォーム(transformed)非ホジキンリンパ腫の新規治療法を提供することである。
【0010】
本発明の更に具体的な目的は、治療上有効な量のRITUXAN(登録商標)を投与することを含み、B−プロリンパ球性白血病(B−PLL)、もしくは慢性リンパ球性白血病(CLL)を治療することにある。
【0011】
詳細な説明
本発明は、血液学的悪性疾患、特に血液中の多数の腫瘍細胞により特徴付けられる悪性疾患が、治療用抗CD20抗体の投与により治療され得るという発見を包含する。これら悪性疾患には、とりわけCLL、B−PLL、およびトランスフォーム非ホジキンリンパ腫が含まれる。
【0012】
以前に治療を受け再発した低悪性度の非ホジキンリンパ腫を治療する上で、RITUXAN(登録商標)が偉大な成功を収めたという報告にもかかわらず、本発見は驚くべきものである。特に、本発見は、このような患者に観察される非常に多数の腫瘍細胞によれば、並びに、このような悪性細胞(例えばCLL細胞)が、幾つかのB細胞リンパ腫(例えば、以前に治療を受け再発した低悪性度の非ホジキンリンパ腫)に特徴的な高い濃度でCD20抗原を一般には発現しないという事実によれば、驚くべきことである。その結果、CD20抗原が、このような悪性疾患の治療学的抗体療法の適切なターゲットを構成することは、当然予測され得ない。
【0013】
本発明による血液学的悪性疾患(例えばCLL、B−PLL、およびトランスフォーム非ホジキンリンパ腫)の治療は、治療上有効な量の抗CD20抗体の投与を包含し、ここで投与は、単独で、あるいは化学療法、放射線治療(例えば、全身照射、もしくは放射性標識抗体による治療)などの他の治療と組み合わせて実行され得る。更に、サイトカインとの併用療法は、リンパ腫細胞の表面上でCD20をアップレギュレートするのに有効であり得る。
【0014】
好ましい態様において、抗CD20抗体は、高い親和性(即ち、10-5〜10-9M)でCD20を結合する。好ましくは、抗CD20抗体は、キメラ抗体、霊長類抗体、霊長類化(primatized(登録商標))抗体、ヒト抗体、ヒト化(humanized)抗体を含む。また、本発明は、抗体断片、例えば、Fab’s、Fv’s、Fab’s、F(ab)2、およびその集合体の使用を含む。
【0015】
キメラ抗体は、非ヒト可変領域とヒト定常領域を有する抗体、最も典型的には齧歯類の可変領域とヒト定常領域を有する抗体のことをいう。
【0016】
霊長類化(登録商標)抗体は、霊長類の可変領域(例えば、CDR’s)とヒト定常領域を有する抗体のことをいう。好ましくは、前記霊長類の可変領域は、旧世界サルに由来するものである。
【0017】
ヒト化抗体は、実質的にヒトの構造(framework)と定常領域、および非ヒト相補性決定領域(CDRs)を有する抗体のことをいう。「実質的に」とは、ヒト化抗体が、(CDRsが由来する非ヒト親抗体の)少なくとも幾つかのドナー残留構造を一般的に保持しているという事実を指す。
【0018】
キメラ抗体、霊長類抗体、霊長類化(登録商標)抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体を作成する方法は、当該分野で周知である。例えば、Queenらにより発行された米国特許第5,530,101号、Winterらにより発行された米国特許第5,225,539号、BossらおよびCabillyらによりそれぞれ発行された米国特許第4,816,397号および第4,816,567号を参照されたい。これら全ての特許は、その全体を参照により本明細書の開示内容の一部とする。
【0019】
ヒト定常領域の選択は、本願の抗CD20抗体の治療効果にとって重要であり得る。好ましい態様において、本願の抗CD20抗体は、ヒトガンマ1もしくはガンマ3定常領域を含み、より好ましくはヒトガンマ1定常領域を含む。ガンマ1抗CD20抗体の治療としての使用は、Robinsonらにより発行された米国特許第5,500,362号に開示されている。
【0020】
また、ヒト抗体を作成する方法は公知であり、例としてSCIDマウスでの作成、およびインビトロ免疫処置を含む。
【0021】
記載されるとおり、特に好ましいキメラ抗CD20抗体は、RITUXAN(登録商標)であり、これはキメラガンマ1抗ヒトCD20抗体である。この抗体の全アミノ酸配列および対応する核酸配列は、米国特許第5,736,137号に見出すことができ、これらの配列は、その全体を参照により本明細書の開示内容の一部とする。IDEC Pharmaceuticals Corporationにより商品化された専売のCHO細胞発現システムで産生されるこの抗体は、12301 Parklawn Drive, Rockville, MD 20852に位置するAmerican Type Culture Collectionにブダペスト条約の規定に従って1992年11月4日に寄託されたCHO細胞トランスフェクトーマ(transfectoma)により作成される。この細胞系は、生存が確認されているが、万一寄託期間中に生存しなくなった場合には取り換えられる。この細胞系は、第5,736,137号特許の発行により必然的に入手可能になり、ATCCから制限なく入手することができる。また、この細胞系は、本出願に基づいて発行され得る特許期間のあいだ制限なく入手できるであろう。
【0022】
本願の抗CD20抗体は、種々の投与ルートにより投与され、一般には、腸管外ルートにより投与される。これには、静脈内、筋内、皮下、直腸、膣ルートの投与が含まれるが、静脈内注入による投与が好ましい。
【0023】
抗CD20抗体は、標準的な手法、例えば、薬学的に許容される緩衝液(例えば、無菌食塩水、無菌緩衝水、プロピレングリコール、およびその組み合わせ)の添加により、治療用に製剤化される。
【0024】
有効な投薬量は、他の要因のなかでも、具体的な抗体、患者の状態、年齢、体重、もしくは任意の他の治療に依存する。一般に有効な投薬量は、約0.001〜約30 mg/kg体重であり、より好ましくは約0.01〜約25 mg/kg体重、最も好ましくは約0.1〜約20 mg/kg体重の範囲である。
【0025】
この投与は、種々のプロトコールにより、例えば、週に1回、2週間に1回、月に1回、投与された投薬量および患者の応答に応じて実行され得る。また、この投与を他の治療、例えば、放射線治療、ターゲット有りおよびターゲット無しの化学治療、およびリンフォカインもしくはサイトカイン投与(例えば、インターロイキン、インターフェロン、TNF’s、コロニー刺激因子など)と組み合わせることが望ましい。
【0026】
一般に、治療は、約2〜10週にわたって週に1回、より一般的には約4週にわたって週に1回で実行される。特に好ましい投薬プログラム(regimen)は、週に1回約375 mg/kgの投与を、全4回注入することである。また、ステップアップ服用スケジュールが、更に好ましい。
【0027】
治療用抗CD20抗体と組み合わせて放射線を使用する場合、我々が利用した、米国特許第5,736,137号に開示されているようなイットリウム標識抗CD20抗体が好ましい。この米国特許は、その全体を参照により本明細書の開示内容の一部とする。この抗体、2B8-MX-DTPAは、B細胞リンパ腫の治療における薬効が報告されている。2B8抗体を産生する細胞系は、American Type Culture Collectionにブダペスト条約の規定に従って1993年6月22日に寄託されており、米国特許第5,736,137号の発行により必然的に何の制限もなく入手可能になった。このように細胞系は生存が確認されているが、万一生存しなくなった場合には、本出願に基づいて発行される特許期間のあいだは、同様に取り換えられる。
【0028】
本願の抗体免疫療法と組み合わせて使用され得る特に好ましい化学療法プログラム(regimen)には、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾンを組み合わせて投与するCHOP免疫療法が含まれる。他の既知の化学療法には、メトトレキサート、シスプラチン、トレミフェンおよびタモキシフェンが含まれる。
【0029】
以下の実施例は、本発明を限定することを意図していないし、本発明を限定するものと解釈してはならない。以下の実施例は、本発明の効果を裏付ける臨床証拠を提供することを意図している。
【0030】
例1
重篤な肺動脈注入関連中毒および血小板減少症に関連した、血液腫瘍細胞の急激な減少が観察された2人の患者について研究を行った。また、RITUXAN(登録商標)治療に関して逆の症状を提出した医師の報告から、更に2人の患者を集めた。これら患者の治療前の特徴には、B−プロリンパ球性白血病(B−PLL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、もしくはトランスフォーム非ホジキンリンパ腫と診断された平均年齢60歳(幅26〜73歳)が含まれる。これらの患者全ては、血液腫瘍の関与、巨大腺症、および臓器巨大症の結果、白血球数が増大した。4人の患者全てが、低酸素血症を伴う発熱、悪寒、気管支痙攣により特徴付けられる、特有の重篤な注入関連応答症候群に発展し、これはRITUXAN治療の一時的な中断を必要とする。これらの症状と同時に、循環腫瘍細胞の急激な減少が、マイルドな電解質を供給し(治療前平均98×103L;幅73〜132に対して、治療後平均11×103L;幅37〜24.6)、急激な腫瘍溶解の証拠となる。RITUXAN治療と関連して一般に見られる血小板減少症が、4人の患者全てにおいて観察され(治療前平均145×103L;幅57〜277に対して、治療後平均Sn×109/L;幅2〜120)、これはある場合には輸血を必要とする。この症状は入院を必要とするが、協力的看護で解決される。その後のRITUXAN治療は、全ての患者において充分な耐性を示した。後の2人のCLL患者は、血小板減少症、微小注入関連中毒で効果が実証されているステップアップ服用(1日100 mg、その後1日の治療の休息)を利用して、血液腫瘍数の多さが治療された。血液腫瘍細胞と関係のある血液学的悪性疾患の患者に対するRITUXANの投与は、重篤な初期の注入関連応答および血小板減少症の頻度の高さと関連があり得、これは綿密な臨床モニタリングを必要とする。これらの患者においてRITUXANの予備的活性が得られたため、ステップアップ服用スケジュールを利用したCLLおよびPLLの将来的研究が行われている。
【0031】
例2
非標識免疫グロブリン(Mab)は、補体(CDC)もしくは効果器細胞(ADCC)と細胞傷害を仲介し得るため;アポプトーシスを起こし得るため; 毒素もしくは薬剤結合Mabより毒性が低く、免疫原性が低く、おそらく効果的であり得るため;放射性標識Mab治療(RIT)に必要な複雑な手法を必要とせず、高い投与量のRITに典型的な骨髄サプレッション(myelosuppression)を起こし得ないため、NHLの治療において注目されている。最近まで、血液学的悪性疾患の治療におけるMabの使用は制限されていた。しかし、キメラ抗CD20Mab、RITUXAN(登録商標)は、低毒性プロフィールおよび有意な臨床効果を示し、現在Food and Drug Administration(US FDA 11/97;EU 6/98)により、再発もしくは治療抵抗性、低悪性度もしくは濾胞性(R=LG/F)NHLの治療について承認されている。単一薬剤の臨床試験(PIII)において、週に1回375 mg/m2のRITUXANで4回の注入にわたって治療されたR-LG/F NHLの166人の患者に関して(研究102-05)、全応答率(ORR)は、48%(6%CRおよび42%PR)であった。応答者の平均進行時間は13.1ヶ月であり、応答期間は11.2ヶ月であった。平均循環Bリンパ球数は、最初の投与後ゼロまで低下した。CD3、CD4、CD8、およびNK細胞数は変化しなかった。末梢血液におけるB細胞の回復は6〜9ヶ月で始まり、9〜12ヶ月で完了した。血清補体レベルに有意な変化は観察されなかった。作用メカニズムは、CDC、ADCC、アポプトーシス、および/または考察中のその他とともに未解決である。臨床/研究室の相関関係がないにもかかわらず、CDCの関与を見過ごすことはできない。我々は、ベースラインにおけるNK細胞の絶対数の高さとMabに対する応答との相関関係を見出した。
【表1】

【0032】
注:N=研究102-05の166人の患者、および102-06の37人の患者。Abs. Count:NK、CD3=細胞/mm3;ANC、Pts.=細胞×10e3/mm3。P値はAbs. Countsとの間の差異。
【0033】
ADCCは、RITUXANで治療した患者にみられる臨床活性のための重要なメカニズムであり得る。効果器細胞の数および活性を増大させる薬剤は、Mabと相乗作用し得る。また、サイトカイン(例えば、IL−2、G−CSF、GM−CSF、INF)と組み合わせたRITUXANの研究は、継続中である。
【0034】
例3
CLLにおけるRITUXAN(登録商標)の第I/II相研究
RITUXAN(登録商標)は、CD20をターゲッティングするモノクローナル抗体であり、低悪性度リンパ腫(LGL)の治療に有意な活性を示す。375 mg/m3の投与量で週に1度4回投与すると、再発した患者における応答率(PTS)は43%であった(McClaughlin et al, KOO, Vol. 14, 1998)。小リンパ球性リンパ腫を有する患者は、他のサブタイプのLGLを有する患者より低い応答率(13%)を示し、RITUXANの低い血清レベルを示した。SLLにみられる低い応答は、CD20抗原濃度の低さおよび/または循環B細胞数の多さに関連しているであろう。両因子が、CLLで観察される応答に対して(負の)影響を及ぼすことが予想される。CLLにおいて活性を最大にするために、我々は第I/II相研究を行う。注入により再発する副作用を最小限にするため、全患者にまず375 mg/m3の投与量を投与する。その後、毎週の投薬(3)を同様に維持し、投与レベルを増大させて投与する。16人の患者が、500〜1500 mg/m3の投薬量で治療を受けた。平均年齢は66歳(幅、25〜78歳)であった。81%が末期のIII〜IV疾患であった。平均白血球数は40×109/L(幅、4〜200×109/L)、Hgbは11.6 g/dL(幅、7.7〜14.7 g/dL)、血小板は75×109/L(幅、16〜160×109/L)、平均β2免疫グロブリンは4.5 mg/L(幅、3.1〜9.2 mg/L)であった。治療前の平均値は2.5(幅、1〜9)であった。患者の60%が治療に抵抗性を示した。2人の患者は、最初の投与(375 mgm3)で重篤な高血圧症に発展し、他の患者は更なる治療を受けた。その後の漸増する投薬量における毒性は、中程度であったが、1500 mg/m3の投与レベルでの患者は、充分に評価されていない。8人の患者は、治療を終えた(500 mg/m3で4回、650 mg/m3で3回、825 mg/m3で1回)。560 mg/m3で治療を受けた1人の患者は、完全な寛解期に達した。1人の患者は、治療に対して進行性リンパ球増加症に罹患し、他の全ての患者は、末梢血液においてリンパ球増加症が軽減されたが、リンパ節にはほとんど効果を示さなかった。投与量エスカレーション研究は、継続中である。
【0035】
例4
CD20の発現をアップレギュレートするためのサイトカインの使用
CLL患者における応答を改善する別のアプローチとして、サイトカインを用いてCD20抗原をアップレギュレートすることがある。インビトロの研究において、CLL患者に由来する単核性細胞を、種々のサイトカインと24次間インキュベートした。フローサイトメトリーの結果より、IL−4、GM−CSF、およびTNF−アルファによる有意なアップレギュレーションが示された。Venugopal P, Sivararnan S, Huang X, Chopra H, O’Brein T, Jajeh A, Preisler H。インビトロでのサイトカインへの暴露による、慢性リンパ球性白血病(CLL)細胞におけるCD20発現のアップレギュレーション、Blood 1998; 10: 247a。実際、最近のデータにより、CLL細胞上で観察されるCD20のアップレギュレーションは腫瘍細胞に限定され得ることが示唆されている(Venogopal et al. Poster − Panpacific Lymphoma meeting, June 1999. 慢性リンパ球性白血病(CLL)細胞におけるCD20抗原発現のサイトカイン誘導性アップレギュレーションは、腫瘍細胞に限定され得る)。また、予備データにより、インターフェロンアルファも、500〜1000 U/mLの濃度で投与したわずか24時間後に、CLL細胞上でCD20をアップレギュレートすることが示唆されている。
【0036】
このように、Rituximab(登録商標)の投与前もしくは投与と同時に、CLL患者にある種のサイトカインを投与することにより、悪性B細胞の表面におけるCD20発現がアップレギュレートされ、これにより、CD19のような他の細胞表面マーカーに加えて、CD20が免疫療法に対して注目度の高いターゲットになり得る。
【0037】
CD20アップレギュレーションに最適なサイトカイン投与量についてインビボで試験を行うために共同研究が開始された。この研究プロトコールは、250 mcg/m2 SQ QD X 3でGM−CSFにより最初に10人の患者を治療すること、4mcg/kg SQ QD X 3でILにより10人の患者を治療すること、並びに5mcg/kg SQ QD X 3でG−CSFにより10人の患者を治療することを含む。単核性細胞を、アポプトーシス研究のためにFicon Hypaque遠心により分離し、CD20のアップレギュレーションが、Rituximabにより腫瘍細胞の殺傷を高めるかどうかを測定する。
【0038】
例5
抗体と化学療法の組み合わせプロトコール
CLLの抗体治療は、CLLの治療に有効であることが既知の他の慣用的な化学療法治療と組み合わせることができる。最も頻繁に使用される単一のCLL用薬剤は、クロラムブシル(ロイケラン(leukeran))であり、毎日0.1 mg/kgもしくは4週ごとに0.4〜1.0 mg/kgで投与される。クロラムブシルは、自己免疫性血球減少症の処置に有効な経口プレドニゾン(30〜100 mg/m2/d)としばしば併用される。シクロホスファミドは、クロラムブシルの代わりとなり、その通常の投与量は、ビンクリスチンおよびステロイドとともに3〜4週ごとに1〜2g/m2である(例えば、COPプログラム)。
【0039】
種々の薬剤の組み合わせがCLLのために使用されており、COP(シクロホスファミド、オンコビン、およびプレドニゾン)、およびCHOP(これら3つの薬剤とドキソルビシン)などがある。フルダラビン(fludarabine)は、CLLの治療に効果を示し、3〜4週おきに25〜30 mg/m2/dで治療された患者グループにおいて50%のORRを得た。http://www.cancernetwork.com。しかし、何人かの患者は、フルダラビンに対して治療抵抗性を有することが示された。このような患者は、フルダラビンに治療抵抗性のある患者がしばしば2-CDAにも治療抵抗性を有するため、2-CdAにも耐性であり得る(O’Brien et al. N.Engl.J.Med. 330: 319-322 (1994))。
【0040】
従って、抗CD20抗体治療は、治療抵抗性を有する患者もしくは化学療法薬剤で治療後に再発した患者に特に有効である。また、これらの患者には、Rituximab(登録商標)治療を放射線治療と組み合わせてもよい。75〜150cGyの全投与量に対して15cGyの低分画サイズでのTBIが、患者の約3分の1に効果的であることが示された。
【0041】
第2相試験は、現在CLL患者においてCALGBにより行われている。フルダラビンの導入療法後にRituximabの投与を行うのに対して、Rituximabとフルダラビンを同時投与した後にRituximabの地固め療法を行う。
【0042】
この研究の目的は、(1)フルダラビン治療を受けたCLL患者において、完全応答(CR)率を測定すること、並びに併用療法とRituximab地固め療法(Arm I)の毒性プロフィール、およびRituximab地固め療法(Arm II)の毒性プロフィールを測定すること;(2)Rituximabとフルダラビンの併用療法を受けた患者(Arm Iの導入期)においてCR率を評価すること;(3)Rituximab地固め療法を受けたCLL患者において、部分的応答(PR)のCRへの変換率、安定疾患のPRもしくはCRへの変換率を評価すること;(4)免疫学的マーカーCD4、CD8、IgG、IgA、およびIgMに対するRituximabとフルダラビンの治療効果を追跡すること;並びに(5)Arm IおよびArm IIにおける非進行性の生存率および全生存率を調査することである。
【0043】
本発明は、明確さと理解を目的として、実例および実施例によりある程度詳細に説明されているが、ある種の変更および改変が、実質的に添付の特許請求の範囲内であることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CD20抗体もしくはその断片を治療上有効な量投与することにより、多数の循環腫瘍細胞に関連した血液学的悪性疾患を治療する方法。
【請求項2】
前記悪性疾患が白血病である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記悪性疾患がB−プロリンパ球性白血病(B−PLL)もしくは慢性リンパ球性白血病(CLL)である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体がキメラ、ヒト化、もしくはヒトの抗CD20抗体である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体が0.1〜30 mg/kgの投薬量で投与される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記投薬量が約2〜10週にわたって週に1回投与される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体がRITUXAN(登録商標)である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体が放射線、化学療法、および/またはリンフォカイン投与と組み合わせて投与される請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体が全4週にわたって週に1回、375 mg/kgの投薬量で注入により投与される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記リンフォカインがIL−4、GM−CSF、TNF−アルファ、およびインターフェロンアルファから成る群より選択される請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記化学療法がクロラムブシル(ロイケラン(leukeran))、プレドニゾン、シクロホスファミド、COP、CHOP、およびフルダラビン(Fludarabine)から成る群より選択される請求項8に記載の方法。
【請求項12】
抗CD20抗体もしくはその断片を治療上有効な量投与することにより、化学療法に対して治療抵抗性を有する多数の循環腫瘍細胞に関連した血液学的悪性疾患を治療する方法。

【公開番号】特開2010−285439(P2010−285439A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−163041(P2010−163041)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【分割の表示】特願2000−580657(P2000−580657)の分割
【原出願日】平成11年11月9日(1999.11.9)
【出願人】(398050098)バイオジェン・アイデック・インコーポレイテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】Biogen Idec Inc.
【Fターム(参考)】