説明

キャスティングロッド

【課題】撓んだ際の異音を防止できるキャスティングロッドを提供する。
【解決手段】繊維強化樹脂製竿杆10を挿通させ、柔軟な部材によって構成したグリップG1の前側に、繊維強化樹脂製竿杆を挿通させると共に、前記グリップよりも硬質な部材によるリール脚固定装置本体12Hを具備するリール脚固定装置を設け、該グリップとリール脚固定装置本体との間に、グリップよりも硬質な部材によるリング部材14を配設したキャスティングロッドにおいて、前記リール脚固定装置本体と前記リング部材との境界であって外部に露出した境界部に、前記リール脚固定装置本体の部材よりも柔軟であって、更に前記リング部材よりも柔軟な部材16を介在させるよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャスティングロッドに関し、通常のもの以外にも、スピニングリールを使用する船竿用のキャスティングロッドも含む。
【背景技術】
【0002】
キャスティングロッドでは、細身の竿杆を挿通させて、リールを装着固定するリール脚固定装置本体を設け、その直ぐ後側に、竿杆の外側にコルク材やEVA等の発泡性樹脂材によるグリップ部材を設けてグリップとした構成が採用されている。前記リール脚固定装置本体の後端とグリップの前端との境界に細幅の装飾用リング部材を配設することもあり、このリング部材でグリップ前端部の欠損を防止する他、この境界部の美観を向上させている。リール脚固定装置本体とリング部材とグリップ部材との各当接面は接着剤によって接合されている。こうした形態が下記特許文献に例示されている。
【特許文献1】特開2001−037380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
然しながら、各部材、即ち、リール脚固定装置本体とリング部材とグリップ部材は、夫々、その外径の大きいことが主たる要因となって、細径竿杆の撓みに対して必ずしも充分には追随できない大きさの撓み剛性を有している。従って、ロッドが大撓みをする場合、上記の接着剤が前記大撓みに耐え得る接合力を有していないと、剥離に至る場合がある。なお、グリップを形成する部材はコルク材やEVA等の発泡性樹脂材であるため、ABS樹脂やナイロン等の通常硬さの合成樹脂材又は金属で形成するリール脚固定装置本体や、金属や通常硬さの合成樹脂材で形成するリング部材よりは撓みに追随し易い傾向がある。従って、リング部材との接合境界では、グリップとの間よりもリール脚固定装置本体との間の方が剥離の可能性が高い。従って、主としてリング部材上方部の前面側に隙間が生じるようになる。即ち、リール脚固定装置本体の後端面に対してリング部材が傾斜するのである。一方、リング部材の後面側にも隙間を生じてグリップ部材の前端面に対しても傾斜することはあるが、グリップを形成する部材はコルク材やEVA等の発泡性樹脂材であるため、ABS樹脂やナイロン等の通常硬さの合成樹脂材又は金属で形成するリール脚固定装置本体や、金属や通常硬さの合成樹脂材で形成するリング部材よりは撓みに追随し易い。従って、リング部材は、グリップとの間よりもリール脚固定装置本体との間の方が剥離の可能性が高い。
リール脚固定装置本体とリング部材とは共に硬質な部材であるため、このリング部材の傾斜によって両部材の端面同士が擦れ合ったり当たったりすることで異音が発生することがある。一方、リング部材とグリップ部材との間が剥離しても、グリップ部材が柔軟な部材であるため、殆ど異音は発生しない。
なお、生じる隙間に掌や指を挟まれることもあり、また、美観上も好ましくない。
依って解決しようとする課題は、撓んだ際の異音を防止できるキャスティングロッドの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の発明では、繊維強化樹脂製竿杆を挿通させ、柔軟な部材によって構成したグリップの前側に、繊維強化樹脂製竿杆を挿通させると共に、前記グリップよりも硬質な部材によるリール脚固定装置本体を具備するリール脚固定装置を設け、該グリップとリール脚固定装置本体との間に、グリップよりも硬質な部材によるリング部材を配設したキャスティングロッドにおいて、前記リール脚固定装置本体と前記リング部材との境界であって外部に露出した境界部に、前記リール脚固定装置本体の部材よりも柔軟であって、更に前記リング部材よりも柔軟な部材を介在させたことを特徴とするキャスティングロッドを提供する。
【発明の効果】
【0005】
第1の発明では、リール脚固定装置本体とリング部材との間に、これらの部材よりも柔軟な部材を介在させるため、硬質部材同士の接触による異音を防止できる。更には、介在する柔軟な部材の変形によって隙間を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明につき図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係るキャスティングロッドの正面図、図2は従来のキャスティングロッドが撓んだ状態を示す要部図であるが、リール脚固定装置12等は図1のものと同じである。図3は図1の要部の断面図である。エポキシ樹脂等の合成樹脂を炭素繊維等の強化繊維で強化した繊維強化樹脂製の竿管(竿杆の一種)10の所定位置にはリール脚固定装置12が設けられている。リール脚固定装置12の後側には、後方に延伸した竿管10を囲むように、コルクやEVA等の発泡性樹脂材からなるグリップG1が接着固定によって設けられている。更には、リール脚固定装置12の前側には、前側グリップG2が設けられている。
【0007】
リール脚固定装置12は、ABS樹脂等によるリール脚固定装置本体12Hが竿管10を取り囲むように該竿管に接着固定して設けられている。このリール脚固定装置本体12Hの後方部には固定フードF1が形成されており、一方、前方部には雄ネジ部12HNを形成しており、この雄ネジ部にナット部材12Nが螺合して移動フードF2を前後に移動させることができる。この固定フードと移動フードによってリールR(ここでは両軸受型リール)の脚を装着固定できる。更には、このリールの脚を装着固定する載置側とは径方向反対側の後方部にトリガーTが形成されている。
【0008】
上記の硬質な部材からなるリール脚固定装置本体12Hと柔軟な部材のグリップG1との間に、ステンレス材等の金属や硬質な合成樹脂材製の環状の装飾用リング部材14が配設されており、そのリング部材の外周面が外部から視認できる。この硬質な部材であるリング部材14と、他の硬質な部材であるリール脚固定装置本体12Hとの間に、これらの何れの部材よりも柔軟な、ゴム板部材、O−リング、コルクシート、発泡材シート、ウレタンシート等からなる板部材又はO−リングである環状の介在部材16を介在させるが、この例では板部材を使用している。これにより、硬質部材同士の接触を防止してロッドが撓んだ際の異音を防止する。また、撓み時の隙間を低減する。相対的な意味での硬質な部材か柔軟な部材かが争われることがあった場合は、市販のゴム・プラスチック硬度計等により測定した硬度の大小で判断する。
【0009】
図4は、本発明に係る第2形態例のキャスティングロッドの要部断面図である。図3の形態例では、グリップG1の前端は竿管10の長手方向に対して直交する一平面に形成されているが、第2形態例では、グリップG1の先端部G1Tが前方に突な筒状に構成されており、リール脚固定装置本体12Hの後端部に入り込んでいる。しかし、装飾用リング部材14は外周面が外部に露出した単純形状の環状体(短い円筒体)であり、該リング部材14とリール脚固定装置本体12Hとの間の介在部材16も同様に単純形状の環状板部材である。この他、介在部材16としてO−リングを使用してもよい。
【0010】
図5は、本発明に係る第3形態例のキャスティングロッドの要部断面図である。第2形態例と対比させると、グリップG1の先端部G1T’は前方に突出していると共に、リール脚固定装置本体12Hの後端部に入り込んでいるが、その径方向にも隙間があり、装飾用リング部材14が断面矩形状の単純形状の環状体ではなく、断面L字状の環状体であり、ロッドが撓んだ際に、リール脚固定装置本体12Hとの間に隙間が生じても、外部から視認すると、リング部材14の内方円筒部の外周面が視認される構造となっている。
【0011】
従って、この第3形態例の場合、リング部材14とリール脚固定装置本体12Hとの境界における接触を完全に防止するには、介在部材16を図示の如き断面L字状の環状体とすることが好ましい。然しながら、ロッドが撓んだ際の異音の主たる発生源は、竿管10の長手方向に対して直交する面同士の接触であるため、図5の場合の変形例として、介在部材16を図4の場合と同様な断面矩形状の単純形状の環状体、又はO−リングにしてもよい。
【0012】
以上のキャスティングロッドは両軸受型リールを固定する通常タイプのキャスティングロッドであるが、本発明はスピニングリールを装着させる船竿としてのキャスティングロッドにも同様に適用できる。
また、磯竿や船竿において、必ずしもグリップとの間に挟持されてはいないが、合成樹脂製リール脚固定装置本体の前後端部に硬質な装飾用リングを接着接合しているものがあるが、このリングとリール脚固定装置本体との間に、既述の本願の柔軟な介在部材を介在させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明はキャスティングロッドに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明に係るキャスティングロッドの正面図である。
【図2】図2は従来のキャスティングロッドが撓んだ状態を示す要部図である。
【図3】図3は図1の要部の断面図である。
【図4】図4は図3に対応する第2形態例の図である。
【図5】図5は図3に対応する第3形態例の図である。
【符号の説明】
【0015】
10 竿管
12H リール脚固定装置本体
14 装飾用リング部材
16 柔軟な介在部材
G1 グリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化樹脂製竿杆を挿通させ、柔軟な部材によって構成したグリップの前側に、繊維強化樹脂製竿杆を挿通させると共に、前記グリップよりも硬質な部材によるリール脚固定装置本体を具備するリール脚固定装置を設け、該グリップとリール脚固定装置本体との間に、グリップよりも硬質な部材によるリング部材を配設したキャスティングロッドにおいて、
前記リール脚固定装置本体と前記リング部材との境界であって外部に露出した境界部に、前記リール脚固定装置本体の部材よりも柔軟であって、更に前記リング部材よりも柔軟な部材を介在させた
ことを特徴とするキャスティングロッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−104414(P2008−104414A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290707(P2006−290707)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】