説明

キャッチャーアームの把持力調整機構

【課題】アームの開閉機構及び把持力の調整を簡易な機構で行えるキャッチャーアームの把持力調整機構を提供する。
【解決手段】モータ10の時計方向の回転によりシリンダ15が下降しアーム17はアーム軸18を支点に開く。モータ10の反時計方向の回転によりシリンダ15は上昇しアーム17は閉じ、キャッチャーフレーム20の側面で制限を受けて停止する。さらにシリンダ15が上昇し、コイルスプリング16が伸びてアーム17の把持力が増加する。モータ10の把持力発生開始から停止させるまでの駆動時間を予め選択することにより、アームの把持力を調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、景品獲得ゲーム機において景品を獲得するキャッチャーアーム開閉機構の把持力を調整する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンゲーム機において把持力の調整機構を備えたクレーンキャッチャーが提案されている。
図6は従来のクレーンキャッチャーの把持力調整機構の例を示す機構正面図である。
モーター132により移動部材134が上下に移動する。上方への移動限界はリミットスイッチ139で制限し、下方への移動限界はモーターの回転数によって制御している。アーム104で景品108を掴むときの把持力は移動部材134が最上位置にあるときに、バネ141の押す力によって決定される。把持力の調整は、調整ネジ144を回してバネ受け143を上下に移動させバネ141の押す力を変化させることにより行う。
【0003】
従来のクレーンキャッチャーの把持力調整機構は、このように把持力の調整をバネ受け部材に螺合されたネジで調整するように構成されており、そのため、部品点数が増加し、機構が複雑になるという問題があった。
【0004】
図7は従来のクレーンキャッチャーの把持力調整機構の他の例を示す機構正面図、図8は図7のアーム機構の部分図である。
モータ150によってウォーム152が回転し、このウォーム152の回転に連動してウォームホイール142、146が回転し突出部147,145が上下に動く。突出部147,145が下に動くと、当接されたアーム130,131が押し出され開く。突出部147,145が上に動くと、アーム130,131に係止されたスプリング156,157が引っ張られ把持力を増加させる。把持力の調整は、突出部147,145の上下の移動量によって行なわれている。
【0005】
この従来のクレーンキャッチャーの把持力調整機構はモータの回転からアームを押す突出部までに回転軸→ウォーム→ウォームホイール→突出部(アームを開閉させる機構)と何点かの機構を経由する構成である。また、ウォームホイールなどを用いているために、上記従来例と同様、更に部品を必要とし、部品点数が増加し、機構が複雑になってしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−227474号公報
【特許文献2】特開2005−034249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、アームの開閉機構及び把持力の調整を簡易な機構で行えるキャッチャーアームの把持力調整機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために本発明の請求項1は、景品を掴むアームを開閉するキャッチャーアーム機構において、それぞれ押し当て部と係止部を有する複数個のアームと、前記複数個のアームをそれぞれ回動可能に支持するアーム軸と、一端が前記アームの係止部に係止し、前記アーム軸を支点に該アームを閉じる方向に付勢する付勢手段と、駆動源の駆動力により駆動させられる駆動部材と前記駆動部材に係合して上下方向に移動し、上端部に前記付勢手段の他端を係止する係止部を持つシリンダとを有する上下移動手段とを含み、前記駆動源の一方向の駆動で前記シリンダを下降させ前記シリンダの下端で前記複数個のアームの押し当て部を押すことにより発生する前記付勢手段の張力に抗して前記アームを開口させ、前記駆動源の反対方向の駆動で前記シリンダを上昇させ、前記付勢手段の張力により前記アームを閉じ、前記シリンダの下端を前記アームの押し当て部から分離し、さらに前記付勢手段の他端を前記シリンダの上端部で上昇させることにより前記付勢手段の張力を増加させて前記アームに把持力を与え、前記シリンダの下端が前記アームの押し当て部から分離した後の、前記シリンダの上昇する量を変化させることにより前記複数個のアームの把持力を調整可能に構成したことを特徴とする。
本発明の請求項2は請求項1記載の発明において前記駆動源はモータであることを特徴とする。
本発明の請求項3は請求項2記載の発明において前記シリンダの上昇する量を変化させる手段は、前記シリンダの下端が前記アームの押し当て部から分離し前記シリンダが上昇して停止するまでの前記モータの駆動回路の駆動時間を変更することにより行うことを特徴とする。
本発明の請求項4は請求項2記載の発明において前記シリンダの上昇する量を変化させる手段は、前記シリンダの下端が前記アームの押し当て部から分離し前記シリンダが上昇して停止するまでの前記モータの回転数を変更することにより行うことを特徴とする。
本発明の請求項5は請求項2,3または4記載の発明において前記シリンダは内周にネジ部を有し、前記駆動部材は前記モータにより回動させられるスクリューであり、前記シリンダのネジ部を前記スクリューに噛合することにより、前記シリンダを上下移動させることを特徴とする。
本発明の請求項6は請求項1,2,3,4または5記載の発明において前記付勢手段はコイルスプリングであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記構成によれば、簡易な構成で把持力の調整を容易に行える。また、アームの開閉機構がモータの回転軸→スクリュー→シリンダ(アームを開閉させる機構)とモータからの回転を少ない部品で伝達することができ、アームの本数(1本〜多数本)によらず、機構が単純化して実施できるため従来のキャッチャー把持調整機構に比較し小型のものを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明によるキャッチャーアームの把持力調整機構を適用したクレーンゲーム機の外観を示す斜視図である。
【図2A】本発明によるキャッチャーアームの把持力調整機構の実施の形態を示す図で、アーム駆動初期の状態を示している。
【図2B】シリンダの詳細を説明するための図である。
【図3】本発明によるキャッチャーアームの把持力調整機構の実施の形態を示す図で、アームが開いた状態を示している。
【図4】本発明によるキャッチャーアームの把持力調整機構の実施の形態を示す図で、アームが開いてから閉じる状態を示している。
【図5】本発明によるキャッチャーアームの把持力調整機構の実施の形態を示す図で、閉じたアームに把持力を与えた状態を示している。
【図6】従来のクレーンキャッチャーの把持力調整機構の例を示す機構正面図である。
【図7】従来のクレーンキャッチャーの把持力調整機構の他の例を示す機構正面図である。
【図8】図7のアーム機構の部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳しく説明する。
図1は、本発明によるキャッチャーアームの把持力調整機構を適用したクレーンゲーム機の外観を示す斜視図である。
クレーンゲーム機1筐体内に3個のアームを備えたクレーンキャッチャー2が左右前後移動および下降上昇可能に吊架されている。筐体下部に景品(図示しない)を載置する景品載置フィールド3、該景品載置フィールド3の手前位置に景品獲得口6を備えている。操作パネル面4にプレイヤがクレーンキャッチャーを操作するための操作部7およびコイン投入口8が配置されている。操作パネル面4の下方に景品を払い出すための景品払い出し口5が設けられている。
【0012】
プレイヤが操作部7によってクレーンキャッチャー2を左右方向および前後方向に移動させて停止させると、クレーンキャッチャー2は下降し、景品載置フィールド3の景品を把持する開閉動作を行う。開閉動作の後上昇し景品獲得口6の上に移動停止し、開閉動作を行う。景品を掴んでいれば、景品は景品獲得口6に落下し、景品払い出し口5より払い出される。
クレーンキャッチャー2の景品を把持する力は、コイルスプリング16(図2A参照)の張力とアームを閉じるときのモータの駆動時間により決められる。したがって、モータの駆動時間を管理者が予め設定することにより把持力を調整することができる。
【0013】
図2Aは本発明によるキャッチャーアームの把持力調整機構の実施の形態を示す図で、アーム駆動初期の状態を示している。
クレーンキャッチャー2を吊架し伸縮する伸縮部28の下端にセンサフレーム26が取り付けられている。センサフレーム26は矩形体形状であり、内部にモータ10およびマグネットセンサ24a,24bを収容する。センサフレーム26内にはマグネットセンサ24a,24bで検知されるマグネット23を取り付けたマグネットプレート22が上下方向に移動可能に収容されている。マグネットプレート22はシリンダ15に固定され、シリンダ15の上昇下降に従って上昇し下降する。
【0014】
センサフレーム26の下部はキャッチャーフレーム20の上部に固定されている。キャッチャーフレーム20も矩形体形状しており、本発明によるキャッチャー開閉機構および把持調整機構を収容している。
モータ10の出力軸にギアヘッド11が固定され、ギアヘッド11のギア出力軸にスクリュー取付軸12が取り付けられている。スクリュー取付軸12にスクリュー13がピン14により固定されている。スクリュー13は減速されたモータ10の回転出力により回転させられる。
スクリュー13の外周歯13aはシリンダ15の内周歯15aに噛合させられている。
【0015】
シリンダ15は図2Bに示すように円筒形状であり、上端面に3つのフックプレート27をそれぞれ固定するネジ孔29a,29b,29cを有している。各フックプレート27の先端にそれぞれコイルスプリング16の一端が係止されている。
アーム17はキャッチャーフレーム20に固定されたアーム軸18に回動可能に取り付けられている。アーム17のアーム軸18の回動部分付近にスプリング係止孔19を有し、その外側部分に押し当て部17aが設けられている。スプリング係止孔19に上記コイルスプリング16の他端が係止されている。さらにアーム軸18の回動部分付近の下側に回転制限部17bが設けられている。
【0016】
押し当て部17aはシリンダ15の下端により押され、シリンダ15の下降によりアーム17は開く方向に動作させられる。また回転制限部17bはシリンダ15が上昇するとアームが閉じる方向に移動するが、所定位置までアームが閉じると回転制限部17bはキャッチャーフレーム20の側面に突き当たり、アームの回転に制限を加える。これはアーム同士の干渉を防止するため、および把持力を発生させるためのアーム17の回転停止位置を定めるものである。
【0017】
図3は本発明によるキャッチャーアームの把持力調整機構の実施の形態を示す図で、アームが開いた状態を示している。
図2Aのアームが閉じた状態からアームを開くために、CPU36からの指示に従ってアーム開閉モータ駆動回路37が制御され、モータ10が時計方向に回転させられる。モータ10の時計方向の回転により、シリンダ15は下降し、シリンダ15の下端が押し当て部17aを押し下げるためコイルスプリング16に抗してアーム17は開く方向に回転させられる。
マグネット23が下降し、マグネットセンサ24aで検知されると、その検知情報はCPU36に伝達される。CPU36はこの情報を受けてアーム開閉モータ駆動回路37に駆動停止の信号を送出する。これによりモータの回転は停止し、この停止した位置がアームの開く最大の角度となる。
【0018】
図4は本発明によるキャッチャーアームの把持力調整機構の実施の形態を示す図で、アームが開いてから閉じる状態を示している。
上述したように検知情報によりモータが停止すると、つぎはCPU36はアーム開閉モータ駆動回路37に反時計方向の回転指示を出し、シリンダ15は上昇を開始する。マグネット23がマグネットセンサ24bの位置まで上昇すると、アーム17の回転制限部17bはキャッチャーフレーム20の側面に突き当たるためアーム17の回転は停止する。これによりアーム同士の干渉が防止されるとともに把持力が発生する。
【0019】
図5は本発明によるキャッチャーアームの把持力調整機構の実施の形態を示す図で、閉じたアームに把持力を与えた状態を示している。
図4の状態からモータ10が反時計方向に回転し、さらにシリンダ15は上昇を続ける。しかしながら、アーム17は回転制限部17bがキャッチャーフレーム20の側面に突き当たり、これ以上閉じることができないため、コイルスプリング16が伸びて張力が発生しアーム17の把持力が増加していく。
把持力の強さはシリンダの上昇時間、すなわち図4の状態の把持力発生開始からモータ10が反時計方向に回って上昇する時間によりコントロールされる。
【0020】
把持力は把持力設定部35で、LV1=0.1S,LV2=0.2S,LV3=0.3S,LV4=0.4というようにゲーム管理者側が設定できるようになっている。上記LV1=0.1S,LV2=0.2S,LV3=0.3S,LV4=0.4はそれぞれ0.1秒,0.2秒,0.3秒,0.4秒把持力発生開始から駆動し停止する設定であり、時間が長ければ、その時間に比例して把持力を大きくすることができる。例えば把持力設定部35でLV2=0.2Sと設定すれば、CPU36は把持力設定部35より、その情報が送られるため、モータ10を把持力発生開始から0.2秒駆動して停止させるようにアーム開閉モータ駆動回路37を制御し、アーム17に設定対応の把持力を発生させる。
【0021】
図5の状態で設定通りの把持力を発生させた後、クレーンキャッチャー2は上昇し水平方向に移動して景品獲得口6の上で停止する。シリンダ15は下降を開始し、それに伴いマグネット23が下降し、マグネット23がマグネットセンサ24aで検知され、CPU36はこの情報を受けてアーム開閉モータ駆動回路37に駆動停止の信号を送出しアーム17を図3に示すように開放させる。景品を把持していれば、景品獲得口6に景品が落下し景品払い出し口5に払い出される。この後、シリンダ15は上昇を開始しアーム17を閉じる方向に駆動する。そしてマグネット23がマグネットセンサ24bで検知されると、モータ10はシリンダ15の上昇を停止させ、図2Aの状態に移行させる。
【0022】
以上の実施の形態は、シリンダの位置を検出する手段としてマグネットセンサを設けた例について説明したが、フォトセンサ、リミットスイッチなどの他のセンサやスイッチを用いても良い。
また、実施の形態に用いているシリンダは円筒状であるためアームの本数は部品同士が接触しない限り何本でも設けることが可能である。
さらに把持力の調整は、把持力発生開始からモータ駆動の時間の経過によって調整する例を説明したが、時間以外、モータの回転数による制御方法も可能である。例えばLV1=1回転、LV2=2回転・・・というように設定して把持力を調整することができる。回転数が大きくなる程把持力は大きくなる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
ゲームセンタやイベント会場などに設置されるクレーンゲーム機である。
【符号の説明】
【0024】
1 クレーンゲーム機
2 クレーンキャッチャー
3 景品載置フィールド
4 操作パネル面
5 景品払い出し口
10 モータ
11 ギアヘッド
12 スクリュー取付軸
13 スクリュー
14 ピン
15 シリンダ
16 コイルスプリング
17 アーム
18 アーム軸
19 スプリング係止孔
20 キャッチャーフレーム
21 モータフレーム
22 マグネットプレート
23 マグネット
24a,24b マグネットセンサ
25 ツメ部
26 センサフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
景品を掴むアームを開閉するキャッチャーアーム機構において、
それぞれ押し当て部と係止部を有する複数個のアームと、
前記複数個のアームをそれぞれ回動可能に支持するアーム軸と、
一端が前記アームの係止部に係止し、前記アーム軸を支点に該アームを閉じる方向に付勢する付勢手段と、
駆動源の駆動力により駆動させられる駆動部材と前記駆動部材に係合して上下方向に移動し、上端部に前記付勢手段の他端を係止する係止部を持つシリンダとを有する上下移動手段と、
を含み、
前記駆動源の一方向の駆動で前記シリンダを下降させ前記シリンダの下端で前記複数個のアームの押し当て部を押すことにより発生する前記付勢手段の張力に抗して前記アームを開口させ、
前記駆動源の反対方向の駆動で前記シリンダを上昇させ、前記付勢手段の張力により前記アームを閉じ、前記シリンダの下端を前記アームの押し当て部から分離し、さらに前記付勢手段の他端を前記シリンダの上端部で上昇させることにより前記付勢手段の張力を増加させて前記アームに把持力を与え、
前記シリンダの下端が前記アームの押し当て部から分離した後の、前記シリンダの上昇する量を変化させることにより前記複数個のアームの把持力を調整可能に構成したことを特徴とするキャッチャーアームの把持力調整機構。
【請求項2】
前記駆動源はモータであることを特徴とする請求項1記載のキャッチャーアームの把持力調整機構。
【請求項3】
前記シリンダの上昇する量を変化させる手段は、前記シリンダの下端が前記アームの押し当て部から分離し前記シリンダが上昇して停止するまでの前記モータの駆動回路の駆動時間を変更することにより行うことを特徴とする請求項2記載のキャッチャーアームの把持力調整機構。
【請求項4】
前記シリンダの上昇する量を変化させる手段は、前記シリンダの下端が前記アームの押し当て部から分離し前記シリンダが上昇して停止するまでの前記モータの回転数を変更することにより行うことを特徴とする請求項2記載のキャッチャーアームの把持力調整機構。
【請求項5】
前記シリンダは内周にネジ部を有し、
前記駆動部材は前記モータにより回動させられるスクリューであり、
前記シリンダのネジ部を前記スクリューに噛合することにより、前記シリンダを上下移動させることを特徴とする請求項2,3または4記載のキャッチャーアームの把持力調整機構。
【請求項6】
前記付勢手段はコイルスプリングであることを特徴とする請求項1,2,3,4または5記載のキャッチャーアームの把持力調整機構。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−158462(P2010−158462A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3516(P2009−3516)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(310009993)株式会社タイトー (207)