説明

キャップ付ストッパ

【課題】被覆架線の切分け工事に用いられ、少ない部品点数で被覆部の抜落ち防止と芯線の露出に伴う危険の防止を行うことができ、また、取付け作業の手間を削減できるキャップ付ストッパを提供すること。
【解決手段】キャップ付ストッパ1は、固定掴持部21を有する本体2と、固定掴持部21に対して進退駆動される可動掴持部3と、可動掴持部3に連結されて本体2に螺合するネジ軸部4と、ネジ軸部4を操作するための操作部5と、固定掴持部21と可動掴持部3との間の掴持スペースに開口66が臨むように本体2に固定された鞘部6とを備える。被覆架線9の切断端部の芯線11にキャップ付ストッパ1を装着し、遠隔棒で操作部5を回転操作して可動掴持部3を固定掴持部21側に駆動し、芯線11の外側面を可動掴持部3と固定掴持部21で圧迫挟持する。従来の別体のキャップ及びストッパよりも固定用部品の点数を削減できると共に、取付け作業を簡易にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆架線の切り分け工事に用いられるキャップ付ストッパに関する。
【背景技術】
【0002】
被覆架線の切り分け工事では、図11に示すように、被覆架線9の2箇所を一対の掴線器12a、12bで掴持し、これらの掴線器12a、12bに両端が接続された伸縮器13を収縮駆動して被覆架線9を湾曲させ、この被覆架線9の湾曲部を切断し、2つの切断端部を振り分け器14a、14bによって振り分けている。切断端部では、図12に拡大して示すように、被覆部10を皮剥ぎして芯線11を露出させ、この芯線11に、被覆部10の切断端面に隣接する位置にストッパ17を固定している。このストッパ17により、被覆部10の掴線器12bで掴持された部分が被覆部10の他の部分から引き千切られることがあっても、その掴持された部分の移動を阻止して、引き千切られた被覆部10が芯線11から抜け落ちてしまう不都合を防止している(例えば、特許文献1参照)。皮剥ぎによって露出した芯線11の先端部分には、危険防止のためのキャップ18を取り付けている。
【0003】
上記ストッパ17は、固定掴持部71が一体形成されたストッパ本体72と、固定掴持部71に向かって進退駆動される可動掴持部73と、この可動掴持部73に連結されてストッパ本体72に螺合したネジ軸部74と、このネジ軸部74の先端に固定された操作部75を備える。
【0004】
また、上記キャップ18は、図13(a)の側面図及び図13(b)の正面図に示すように、芯線11の先端部分を収容する鞘部81と、この鞘部81の開口側の端部に一体形成されたクリップ支持部82と、このクリップ支持部82に取り付けられたクリップ片83,83を備える。クリップ支持部82は、鞘部81の軸線上に位置して芯線11が挿入される挿入開口82aと、鞘部81の軸直角方向に突出してクリップ片83,83の揺動軸84を支持する軸支持部82bを有する。クリップ片83は、クリップ支持部82内に収容された挟持部83aと、クリップ支持部82から外側に突出した操作部83bとを有し、この挟持部83aと操作部83bとの間の部分が揺動軸84に枢着されている。2つのクリップ片83は、揺動軸84に挿通された捩りバネ85によって、挟持部83aが互いに近づく方向に付勢されている。
【0005】
上記ストッパ17及びキャップ18は、次のようにして芯線11に取り付ける。
【0006】
まず、皮剥ぎをした被覆部10の切断端面に隣接するようにストッパ17を芯線11に配置し、図示しない遠隔棒を操作部75に係合させて、遠隔棒で操作部75を回転操作する。これにより、可動掴持部73を固定掴持部71に向かって駆動し、この固定掴持部71と可動掴持部73とで芯線11を圧迫挟持して、ストッパ17を芯線11に固定する。
【0007】
この後、キャップ18の2つのクリップ片83の操作部83bを図示しない遠隔棒で挟み、図13(a)において想像線で示すように、捩りバネ85の付勢力に抗して2つのクリップ片83を揺動させて、2つの挟持部83aを互いに離隔する。この状態で、芯線11の先端を挿入開口82aから2つの挟持部83aの間を通して鞘部81内に挿通させて、芯線11の先端部分にキャップ18を装着する。この後、遠隔棒を操作してクリップ片83の操作部83bの挟み操作を解除し、捩りバネ85の付勢力によって芯線11を2つの挟持部83aで挟んで、キャップ18を芯線11に固定する。
【特許文献1】特開2002−27624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記ストッパ17及びキャップ18は、芯線11への固定部品をそれぞれ備えるので部品点数が多く、コスト高になりやすいという問題がある。また、芯線11にストッパ17及びキャップ18を取り付ける際、ストッパ17を配置して固定する操作と、キャップ18を配置して固定する操作を順次行う必要があるので、作業に手間がかかるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明の課題は、被覆架線の切り分け工事に用いられ、少ない部品点数で被覆部の抜け落ち防止と芯線の露出に伴う危険の防止を行うことができ、また、取り付け作業の手間を削減できるキャップ付ストッパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のキャップ付ストッパは、固定掴持部を有する本体と、本体の固定掴持部に対して進退駆動される可動掴持部と、本体に螺合すると共に可動掴持部に連結され、この可動掴持部に対して回転自在かつ軸方向に一体移動可能なネジ軸部と、ネジ軸部に連結され、このネジ軸部を回転駆動する操作を受ける操作部と、固定掴持部と可動掴持部との間の掴持スペースに開口が臨むように本体に固定された鞘部とを備えることを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、被覆架線の切り分け工事に用いられる場合、まず、被覆架線が一対の掴線器で掴持され、この一対の掴線器が伸縮器で引き寄せられて被覆架線の湾曲部分が形成され、この被覆架線の湾曲部分が切断される。この被覆架線の切断端部の被覆部が皮剥ぎされて露出した芯線に、上記構成のキャップ付ストッパが取り付けられる。まず、切断端部の芯線の先端を、固定掴持部と可動掴持部との間の掴持スペースを通して、この掴持スペースに臨む開口から鞘部内に収容して、この芯線の先端部分にキャップ付ストッパを装着する。このとき、本体の鞘部と反対側の側面が被覆部の切断端面に接するように、芯線の長さを予め設定しておく。続いて、遠隔棒を操作部に係合させて、この遠隔棒によって操作部を回転操作する。これにより、ネジ軸部が回転駆動され、可動掴持部がネジ軸部の軸方向に移動することにより、可動掴持部が固定掴持部に向かって駆動される。可動掴持部が固定掴持部に向かって駆動されるに伴い、可動掴持部と固定掴持部は、掴持スペースに位置する芯線の外側面に当接し、この芯線の外側面を圧迫して、この芯線を挟持する。こうして、キャップ付ストッパが芯線に固定される。
【0012】
このキャップ付ストッパは、被覆部の切断端面に本体が隣接した状態で芯線に固定されるので、例えば被覆部の掴線器で掴持された部分が被覆部の他の部分から引き千切られることがあっても、この被覆部の掴持された部分の移動を阻止して、引き千切られた被覆部が芯線から抜け落ちてしまう不都合を防止できる。また、鞘部で芯線の先端部分を覆うので、感電等の危険を防止できる。
【0013】
このキャップ付ストッパは、固定掴持部及び可動掴持部で芯線に固定できるので、固定用部品をそれぞれ備えた従来の別体のストッパ及びキャップよりも、部品点数を少なくできて、コスト低減を行うことができる。
【0014】
また、このキャップ付ストッパは、芯線の先端部分に配置した後、操作部を例えば遠隔棒で操作するのみによって固定できるので、従来のようにストッパを配置して固定する操作と、キャップを配置して固定する操作を順次行うよりも、取り付け作業の手間を削減できる。
【0015】
一実施形態のキャップ付ストッパは、鞘部は開口側端部にフランジを有し、このフランジが本体の側面にネジ止めされている。
【0016】
上記実施形態によれば、簡易な構成によって鞘部を本体に固定できるので、容易に組み立てることができ、コストを削減できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被覆架線の切り分け工事において、少ない部品点数で被覆部の抜け落ち防止と、芯線の露出による危険の防止ができ、さらに、芯線への取り付け作業の手間を削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態としてのキャップ付ストッパを示す斜視図である。図2はキャップ付ストッパを示す正面図であり、図3はキャップ付ストッパを示す平面図である。図4はキャップ付ストッパを示す左側面図であり、図5はキャップ付ストッパを示す右側面図である。図6はキャップ付ストッパを示す背面図であり、図7はキャップ付ストッパを示す底面図である。図8は、キャップ付ストッパを、鞘部の軸線とネジ部の軸線とを含む平面で切断し、正面から見た様子を示す正断面図である。
【0019】
本実施形態のキャップ付ストッパ1は、被覆架線の切り分け工事において、被覆電線の切断端部に固定されて、被覆部の芯線からの脱落防止と芯線の露出に伴う危険の防止を行うものである。このキャップ付ストッパ1は、固定掴持部21を有する本体2と、この本体2の固定掴持部21に対して進退駆動される可動掴持部3と、この可動掴持部3に連結されて本体2に螺合するネジ軸部4と、このネジ軸部4を操作するための操作部5と、本体2に固定された鞘部6とで大略構成されている。
【0020】
上記本体2は、側面視において概ねC字形状を有し、上部の背面側から正面側に向かって突出する部分が固定掴持部21になっている。固定掴持部21の下側面には、芯線11を保持するための浅いV字溝22が設けられている。また、本体2の内側面には、固定掴持部21の付け根の近傍に、芯線11を保持するための浅い丸溝23が設けられている。本体2の下部には、固定掴持部21に向かって延びる貫通穴24が形成され、この貫通穴24の内側面に設けられた雌ネジに、ネジ軸部4の外周面の雄ネジが螺合している。
【0021】
上記可動掴持部3は、正面視において長方形の下端両側の角が面取りされたような六角形状を有し、上側面が固定掴持部21の下側面に対向するように配置されている。可動掴持部3の上側面には、芯線11を保持するための浅い丸溝31が形成されている。可動掴持部3の下側面には、上側面に向かって延びる有底孔32が形成され、この有底孔32内にネジ軸部4の上端部が収容されて連結されている。
【0022】
上記ネジ軸部4は、上半が可動掴持部3の有底孔32内に収容される小径部41と、この小径部41の下端に連なり、外周面に雄ねじが設けられたネジ切り部42と、このネジ切り部42の下端に連なり、操作部5が外嵌する大径部43を有する。小径部41の外周面の上端近傍には、図8に示すように、周方向に延びる係合溝41aが設けられている。可動掴持部3には、正面から有底孔32と交差して内周面の接線方向に延びる係合ネジ孔が設けられている。可動掴持部3の有底孔32内にネジ軸部4の小径部41が収容された状態で、係合ネジ45が係合ネジ孔に挿通され、ネジ軸部4の係合溝41aと平面視において弦をなすように係合している。これにより、ネジ軸部4が可動掴持部3に対して回転可能に連結されている。ネジ軸部4の小径部41の可動掴持部3から突出した部分には、外側にワッシャ44が配置されている。
【0023】
上記操作部5は、ネジ軸部4の大径部43に外嵌固定される小径筒部51と、この小径筒部51の下端に連なる大径筒部52を有する。大径筒部52の正面側と背面側に、概ねT字状を有して遠隔棒に係合される係合溝52aがそれぞれ設けられている。
【0024】
上記鞘部6は、一端から他端に向かって順に、小径筒部61と、他端に向かって径が拡大する円錐筒部62と、筒状の大径筒部63と、フランジ部64とを有する。フランジ部64には2つのネジ孔64a,64aが設けられており、このネジ孔64aに挿通された取り付けネジ65によって、鞘部6が本体2の側面に固定されている。これにより、鞘部6のフランジ64の内側に位置する開口66が、本体2の固定掴持部21と可動掴持部3との間の掴持スペースに臨んでいる。
【0025】
上記構成のキャップ付ストッパ1は、被覆架線の切り分け工事において、図9及び10に示すように使用される。
【0026】
まず、被覆架線9の2箇所を一対の掴線器12a、12bで掴持し、これらの掴線器12a、12bに両端が接続された伸縮器13を収縮駆動して、被覆架線9の掴線器12a、12bで掴持された2箇所の間の部分を湾曲させる。続いて、この被覆架線9の湾曲部を切断し、2つの切断端部を、振り分け器14a、14bによって伸縮器13の軸回りに例えば180°の角度差をなすように振り分ける。この後、切断端部の被覆部10を皮剥ぎして芯線11を露出させる。
【0027】
ここで、芯線11の露出長さは、芯線11にキャップ付ストッパ1が装着されたとき、被覆部10の切断端面に、本体2の鞘部6が固定された側面と反対の側面が接する長さに調整しておく。つまり、芯線11の露出長さを、本体2の幅方向の寸法と、鞘部6内において芯線11を挿入可能な軸方向距離との合計よりも短くしておく。
【0028】
このような露出長さに調整した芯線11に、キャップ付ストッパ1を装着する。キャップストッパ1においては、予め可動掴持部3を固定掴持部21から離隔させて、固定掴持部21と可動掴持部3との間に掴持スペースを設けておく。この掴持スペースを通して、開口66から鞘部6内に芯線11の先端を挿通させて、芯線11にキャップ付ストッパ1を装着する。このようにして、本体2の側面が被覆部10の切断端面に接するようにキャップ付ストッパ1を芯線11に装着した後、操作部5の係合溝52aに遠隔棒のフックを係合させて、この遠隔棒を介して操作部5を回転操作する。これにより、ネジ軸部4を回転させて螺進させ、可動掴持部3を固定掴持部21に向かって駆動して、芯線11の外側面を可動掴持部3と固定掴持部21で圧迫する。こうして、キャップ付ストッパ1が芯線11に固定される。
【0029】
本実施形態のキャップ付ストッパ1は、被覆部10の切断端面に本体2の側面が接した状態で芯線11に固定されるので、例えば被覆部10の掴線器12aで掴持された部分が被覆部10の他の部分から引き千切られることがあっても、この被覆部10の掴持された部分の移動を阻止することができる。したがって、引き千切られた被覆部10や掴線器12a等が芯線11から脱落して落下する不都合を防止できる。また、鞘部6で芯線11の先端部分を覆うので、芯線11の露出に起因する感電等の危険を防止できる。
【0030】
また、本実施形態のキャップ付ストッパ1は、可動掴持部3と固定掴持部21で芯線11に固定できる。したがって、従来のように別体に形成されて、固定部品としての固定掴持部71と可動掴持部73を有するストッパ17と、固定用部品としてのクリップ支持部82とクリップ片83と揺動軸84と捩りバネ85を有するキャップ18とを用いるよりも、部品点数を大幅に削減でき、コスト削減ができる。
【0031】
また、本実施形態のキャップ付ストッパ1は、芯線11に装着する操作と、遠隔棒による操作部5の回転操作のみによって芯線11に固定できる。したがって、従来のようにストッパ17を芯線11に装着して遠隔棒で操作部75を回転操作して固定し、さらに、キャップ18の操作部18eを遠隔棒で挟んだ状態でキャップ18を芯線11に装着した後、操作部18eの挟み操作を解除して固定するよりも、取り付け作業の手間を大幅に削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態としてのキャップ付ストッパを示す斜視図である。
【図2】キャップ付ストッパを示す正面図である。
【図3】キャップ付ストッパを示す平面図である。
【図4】キャップ付ストッパを示す左側面図である。
【図5】キャップ付ストッパを示す右側面図である。
【図6】キャップ付ストッパを示す背面図である。
【図7】キャップ付ストッパを示す底面図である。
【図8】キャップ付ストッパを、鞘部の軸線とネジ部の軸線とを含む平面で切断し、正面から見た様子を示す正断面図である
【図9】被覆架線の切り分け工事におけるキャップ付ストッパの使用状態を示す図である。
【図10】キャップ付ストッパが取り付けられた被覆架線の切断端部を拡大して示す図である。
【図11】被覆架線の切り分け工事における従来のストッパ及びキャップの使用状態を示す図である。
【図12】従来のストッパ及びキャップが取り付けられた被覆架線の切断端部を拡大して示す図である。
【図13】図13(a)は従来のキャップを示す側面図であり、図13(b)は従来のキャップを示す正面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 キャップ付ストッパ
2 本体
3 可動掴持部
4 ネジ軸部
5 操作部
6 鞘部
9 被覆架線
10 被覆部
11 芯線
21 固定掴持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定掴持部を有する本体と、
本体の固定掴持部に対して進退駆動される可動掴持部と、
本体に螺合すると共に可動掴持部に連結され、この可動掴持部に対して回転自在かつ軸方向に一体移動可能なネジ軸部と、
ネジ軸部に連結され、このネジ軸部を回転駆動する操作を受ける操作部と、
固定掴持部と可動掴持部との間の掴持スペースに開口が臨むように本体に固定された鞘部とを備えることを特徴とするキャップ付ストッパ。
【請求項2】
請求項1に記載のキャップ付ストッパにおいて、
鞘部は開口側端部にフランジを有し、このフランジが本体の側面にネジ止めされていることを特徴とするキャップ付ストッパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−232524(P2009−232524A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72717(P2008−72717)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(591083772)株式会社永木精機 (65)