説明

キャビネットの保冷引き出し及び保冷棚

【課題】複雑な冷媒配管を施すことなく保冷の必要な収納空間のみを冷却し、しかも安価に製作し得るキャビネットの保冷引き出し及び保冷棚を提供すること。
【解決手段】キャビネットに設けた保冷引き出し4であって、保冷引き出し4は密閉空間をペルチェシステムにより冷却すると共に、密閉空間とは別に放熱室4cを備え、ペルチェシステムの発熱金属部5を放熱室4cに臨ませ、ペルチェシステムにより生起する排熱を放熱室4cより放熱室4c上部に形成した排熱スリット4c’を介して排出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネットに設けた保冷引き出し及びケコミ部を有するキャビネット設けた保冷棚に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャビネットに保冷収納部を設ける場合、圧縮機を利用した冷凍サイクルで生成した冷媒を保冷収納部まで延長配設したものが知られていた。保冷収納部が引出しの場合は、例えば冷却コイルで引出しの周囲を取り囲むように配設し、また、保冷棚の場合は、同様に棚に冷却コイルを這わせるようにして冷却していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、キャビネットの一部に根菜物等を保冷しておきたい収納スペースを設ける場合に、従来のように、圧縮機を利用した冷凍サイクルを用いる方法は装置が大がかりとなり、キャビネットに冷媒循環のための配管を施さなければならず、しかも設備コストが高くついた。
【0004】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、複雑な冷媒配管を施すことなく保冷の必要な収納空間のみを冷却し、しかも安価に製作し得るキャビネットの保冷引き出し及び保冷棚を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明のキャビネットの保冷引き出しは、
キャビネットに設けた保冷引き出しであって、前記保冷引き出しは密閉空間をペルチェシステムにより冷却すると共に、前記保冷引き出しは前記密閉空間とは別に放熱室を備え、前記ペルチェシステムの発熱金属部を前記放熱室に臨ませ、前記ペルチェシステムにより生起する排熱を前記放熱室より前記放熱室上部に形成した排熱スリットを介して排出させることを特徴としている。
この特徴によれば、複雑な冷媒配管を施すことなく、保冷すべき引き出しのみを冷却し、ペルチェシステムにより生起する排熱も放散することができるとともに、放熱室を介して排熱を効率よく放散させることが可能である。
【0006】
本発明のキャビネットの保冷棚は、
ケコミ部を有するキャビネットの最下部に設けた保冷棚であって、前記保冷棚はペルチェシステムにより冷却される冷却室を有し、前記保冷室の下端面に臨む吸熱金属部とこれに当接する前記ケコミ部側に臨む発熱金属部で構成され、前記ペルチェシステムにより生起する排熱を、前記保冷棚下面の前記発熱金属部側より、前記ケコミ部に設けた吸排気口より排出させることを特徴としている。
この特徴によれば、キャビネットに形成したケコミ部をペルチェシステムにより生起する排熱の放散に利用することができるとともに、放熱室を介して排熱を効率よく放散させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1実施例である保冷引き出しが適用されたキャビネットを示す斜視図である。
【図2】保冷引き出しの斜視図である。
【図3】本発明の第2実施例である保冷棚が適用されたキャビネットを示す斜視図である。
【図4】保冷棚の部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0009】
図1は本発明の第1実施例としての保冷引出しを含むキャビネットを示しており、キャビネットに保冷引き出しが最下段に適用された斜視図を示し、図2は保冷引き出しの斜視図を示している。
【0010】
図1のキャビネット1にはキッチン等に利用される皿や調理器具などが収納される扉と、利用者が所望の品を載置可能な収納棚2と、この収納棚2下方の食品等を収納可能な引き出し3とがあり、最下段には、利用者のつま先保護の為、若干キャビネット1の前面より凹没させたケコミ部7が施されている保冷引き出し4が配備されている。
【0011】
この最下段の保冷引き出し4は利用者の希望する品を保冷して収納しておくためのもので、冷却時に生じた排熱を、ケコミ部7右方に施された吸排気口7aより放散させるものである。
【0012】
図2を用いて、保冷引き出し4の構造を詳述する。この保冷引き出し4には根菜類を保冷収納するための根菜収納室4aと、米を保存するための米収納室4bとの2つの部屋に分離され、両収納室4a,4bにはそれぞれインナーケース6a,6bが嵌装されている。
【0013】
このインナーケース6a,6b前面側には保冷引き出し4をキャビネット1から引き出し易くするための2つの手掛け部6a−1、6b−1が形成され、その隣側には小物類を収納可能な小物収納部も6a−2、6b−2が形成されている。
【0014】
また根菜類や米などを保存する際、外部からの異物の侵入を防ぎかつ保存効率を高めるために内部が透視可能なプラスチック部材を用いた蓋が、両インナーケース6a,6bに適用され、根菜収納室4a側のインナーケース6aには全開型の根菜収納蓋6a−3、米収納室4b側には一部開口型の米びつ蓋6b−3が取付けられている。この両蓋6a−3、6b−3にはインナーケース6a,6bを閉蓋する場合に前記手掛け部6a−1、6b−1を塞がないように一部切り欠きが施されている。
【0015】
本実施例の保冷方法は2種類の金属をつなぎ、電流を流すことにより、一方の金属側が吸熱し、他方の金属側が放熱するペルチェ効果を利用したペルチェシステムを用いており、図2に示されているように、このペルチェシステムの一部である発熱金属部5が根菜収納室4aの隣の放熱室4c側に臨んでいる。一方、吸熱金属部は図示されていないが根菜収納室4a側に臨んでいる。
【0016】
発熱金属部5から放熱室4cに貯留した排熱は、ケコミ部7の前面側に設けた吸排気口7aにより外部へ放出される。この排熱をより積極的に放出させるためには、放熱室4cの上面に開口溝が複数施された排熱スリット4c’を形成するとよい。
【0017】
このように、本実施例のペルチェシステムでは排熱スリット4c’は必ずしも必要ではないが、より冷却能力の高いペルチェシステムを保冷引き出し4に適用する場合には排熱スリット4c’設けて、放熱を積極的に行うようにする。なお外部と連通する吸排気口7a等にファンをつければ、更に放熱効果を高めることが可能である。また、本実施例では、放熱室4cを設けているが、引き出しの底面とケコミ部との空間を利用して排熱を吸排気口7aを介して排出してもよい。
【0018】
図3は本発明の第2実施例としての保冷棚を含むキャビネット10を示しており、キャビネット10に保冷棚が適用された斜視図を示し、図4は保冷棚の部分拡大斜視図を示している。
【0019】
図3のキャビネット10は利用者が所望の品を載置可能な収納棚12が設けられ、その最下段には、ケコミ部17を閉蓋するように保冷棚15(後述において詳述する)が形成されており、この保冷棚15の上面には矩形筐体の保冷室15aが載置されている。
【0020】
図4を用いて、保冷室15aの説明をすると、図2の保冷引き出し4と同様にこの保冷室15aにもインナーケース16が適用されており、インナーケース16は利用者所望の品を収納可能な冷却収納部16−1と小物類を収納可能な小物収納部16−2とが形成され、透過部材を用いた全面開放型の冷却収納蓋16−3で冷却収納部16−1及び小物収納部16−2を閉蓋できるようになっている。
【0021】
冷却収納部16−1の内部を冷却する保冷棚15の構造を詳述すると、本第2実施例でも第1実施例と同様にペルチェ効果を利用したもので、保冷棚15の保冷室15aの下端面に臨む吸熱金属部とこれに当接するケコミ部17側に臨む略同面積の発熱金属部で構成され、冷却収納部16−1内部の熱を吸熱し、その生起する熱を保冷棚15下端面の発熱金属部側より排熱するものである。
【0022】
そして該排熱を保冷棚15,ケコミ部17と両側板18、18床面19に囲まれた放熱室(図示省略)に発熱金属部に貯留した排熱を外部と連通するケコミ部7に形成した吸排気口17aから外部に放出させることで、効率よく冷却収納部16−1を冷却できる。
【0023】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、例えば、第2実施例において、ペルチェシステムは保冷棚15の一部に適用されている構造であるが保冷棚5の全面に適用してもよく、夏場など利用者が飲料(ビン,カンなど)を保冷室15aの冷却収納部16−1以外の保冷棚5へ一時的に載置し、暖まらないようにして置いておくこともでき、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0024】
本発明は以下の効果を奏する。
【0025】
(a)請求項1項の発明によれば、複雑な冷媒配管を施すことなく、保冷すべき引き出しのみを冷却し、ペルチェシステムにより生起する排熱も放散することができるとともに、放熱室を介して排熱を効率よく放散させることが可能である。
【0026】
)請求項項の発明によれば、キャビネットに形成したケコミ部をペルチェシステムにより生起する排熱の放散に利用することができるとともに、放熱室を介して排熱を効率よく放散させることが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 キャビネット
2 収納棚
3 引き出し
4 保冷引き出し
4a 根菜収納室
4b 米収納室
4c 放熱室
4c’ 排熱スリット
5 発熱金属部
6a,6b インナーケース
6a−1、6b−1 手掛け部
6a−2,6b−2 小物収納部
6a−3,6b−3 蓋
7 ケコミ部
7a 吸排気口
10 キャビネット
12 収納棚
15 保冷棚
15a 保冷室
16 インナーケース
16−1 冷却収納部
16−2 小物収納部
16−3 冷却収納蓋
17 ケコミ部
18 側板
19 床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネットに設けた保冷引き出しであって、前記保冷引き出しは密閉空間をペルチェシステムにより冷却すると共に、前記保冷引き出しは前記密閉空間とは別に放熱室を備え、前記ペルチェシステムの発熱金属部を前記放熱室に臨ませ、前記ペルチェシステムにより生起する排熱を前記放熱室より前記放熱室上部に形成した排熱スリットを介して排出させることを特徴とする保冷引き出し。
【請求項2】
ケコミ部を有するキャビネットの最下部に設けた保冷棚であって、前記保冷棚はペルチェシステムにより冷却される冷却室を有し、前記保冷室の下端面に臨む吸熱金属部とこれに当接する前記ケコミ部側に臨む発熱金属部で構成され、前記ペルチェシステムにより生起する排熱を、前記保冷棚下面の前記発熱金属部側より、前記ケコミ部に設けた吸排気口より排出させることを特徴とする保冷棚。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−17530(P2011−17530A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201902(P2010−201902)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【分割の表示】特願2001−136613(P2001−136613)の分割
【原出願日】平成13年5月7日(2001.5.7)
【出願人】(000002222)サンウエーブ工業株式会社 (196)
【Fターム(参考)】