説明

キャビネット

【課題】 本発明は扉の落下を防止し、且つ異常を使用者に伝える機構を備えたキャビネットを提供する。
【解決手段】 前面に開口部を備えた収納部と、前記開口部を覆う扉と、前記扉と前記収納部とを連結し、前記扉を前記開口部に対して開閉自在となす連結部材と、を備えたキャビネットであって、前記連結部材は、前記扉を固定する扉固定部を有し、前記扉固定部が、前記扉と前記扉固定部との固定に際して、前記扉を前記扉固定部に固定する扉固定ネジと、前記扉固定ネジが前記扉から抜けた際に、前記扉固定部に対して前記扉がずれた位置で前記扉を支持して、前記扉の前記扉固定部からの離脱を防止する離脱防止機構と、を備えたことを特徴とするキャビネットが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前面を開口している収納部を有するキャビネットで、その開口された前面に扉を開閉自在となす連結部材を備えたキャビネットに関し、詳しくは、扉の脱落防止に関する。
【背景技術】
【0002】
トールキャビネット、シンクキャビネット、吊り戸棚等の建具或いは食器棚、書棚、下駄箱等の家具などに装備される扉体の開閉装置として、リンク機構の揺動に連れて扉体を閉止位置と開放位置とに択一的に保持する弾性付勢機構が設けられている扉体開閉装置が記載されている。(特許文献1を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−241902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうしたリンク機構などの連結部材に固定され、収納部の開口を開閉する扉は、開閉の頻度が多くなると、リンク機構などの連結部材に扉を固定しているネジが緩み、脱落し、そのため、扉が連結部材から離脱して落下してしまうことがあった。
本発明は扉の落下を防止し、また異常を使用者に認知させる機構を備えたキャビネットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、前面に開口部を備えた収納部と、前記開口部を覆う扉と、前記扉と前記収納部とを連結し、前記扉を前記開口部に対して開閉自在となす連結部材と、を備えたキャビネットであって、前記連結部材は、前記扉を固定する扉固定部を有し、前記扉固定部が、前記扉と前記扉固定部との固定に際して、前記扉を前記扉固定部に固定する扉固定ネジと、前記扉固定ネジが前記扉から抜けた際に、前記扉固定部に対して前記扉がずれた位置で前記扉を支持して、前記扉の前記扉固定部からの離脱を防止する離脱防止機構と、を備えたことを特徴とするキャビネットが提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、扉を固定しているネジが破損・脱落した場合の扉の落下を防止し、且つ使用者に異常が発生していることを認知させるキャビネットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るキャビネットを示す模式図である。
【図2】本発明のキャビネットの扉と扉固定部の固定方法を扉の裏面側から見て示す模式図である。
【図3】本発明の扉と扉固定部を横から見た模式図を示す図である。
【図4】本発明の脱落防止ネジ8を示す図である。
【図5】本発明の第一の実施形態の変形例を示す図である。
【図6】本発明の第一の実施形態の変形例を示す図である。
【図7】本発明の第二の実施形態を横から見た図である。
【図8】本発明の第二の実施形態を横から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明をする。
図1は、本発明の第一の実施形態に係るキャビネットを示す模式図である。
【0009】
図1に示すように、キャビネット1は、前面を開口した開口部(図示せず)を有する収納部2に、扉3が一対の連結部材4によって、開閉自在に設けられている。扉3と連結部材4との連結は、連結部材4の一端に設けられた扉固定部(アームステー)5を介して、扉固定ネジ6によって扉3の裏面の両サイドに固定される。扉固定ネジ6は扉固定部5に対して、複数個で固定されるが、本実施例では扉固定部5に対して3本とした。
【0010】
扉固定部5は2面が上面視L字状をしており、一面は連結部材4が連結される連結部材取付け面であり、もう一面は扉3の裏面に取付けられる扉固定面からなる。
【0011】
図2は、キャビネットの扉と扉固定部の固定方法を扉の裏面側から見て示す模式図である。
扉3の裏面の両サイドに、一対の連結部材の扉固定部5が取付けられている。
取付けるにあたっては、扉3の裏面に扉固定部5を介して、扉固定ネジ6が扉に締め込まれ、扉固定ネジ6の傘の部分が扉固定部5に押し付けられることにより、扉3が扉固定部5に固定される。尚、扉3の裏面に樹脂ブッシュ7を埋め込み扉固定ネジで締め込んでもよい。また、ブッシュは金属製であってもよい。
【0012】
一方、脱落防止用の台座付きネジ8は、扉固定ネジ6が取付けられる位置の上方に、扉固定部5の長穴の通し穴9を介して、扉3の裏面に対して取り付けられる。取り付けに際しては、ネジ部分は扉3に締め込まれるが、ネジの首下の部分が長く、ネジの傘が扉固定部5に対して隙間があるように取り付けられる。
【0013】
ここで、扉固定部5の長穴の通し穴9の位置は扉3の水平方向で中心より上がよい。また、台座付きネジ8と通し穴9との関係は、台座付きネジ8が長穴の下方に位置するのがよい。水平方向で中心より上にあると、扉固定ネジ6が抜けた際に、扉3が前かがみになり難く、また、台座付きネジ8が通し穴9の下方にあると、扉固定ネジ6が抜けた際に扉が長穴の通し穴9の長さの分扉3が下がり、扉が閉じた際に、扉3の上端に隙間が空くなど目視により、使用者に異常を気付かせることが可能となる。
【0014】
図3は、扉と扉固定部を横から見た模式図を示す図である。
図3a)は正常時を示しており、扉3は扉固定部5に扉固定ネジ6で固定されている。この時、脱落防止ネジである台座付きネジ8は傘から下の首下が長く、傘が扉固定部5から離間している。
【0015】
図3b)は異常時を示している。リンク機構などの連結部材に固定されている扉の開閉にあっては、扉を固定しているネジが少し緩んだ程度では、緩みに気付き難い。そのまま気付かずに使用を続けていると、扉3を固定している扉固定ネジ6がさらに緩み、もしくは扉固定ネジ6で締め込まれた扉3の裏面が破損し、扉固定ネジ6が脱落する。この時、台座付きネジ8の傘が扉固定部5から離間している長さの分だけ、扉3ががたつくことになる。また、長穴の長さ分、扉3が下がり、扉の位置が正常時と異なることに使用者が気付き、異常を発見できる。
【0016】
これまでの図では、扉固定部5は連結部材4に対して回動可能に示しているが、連結部材4と扉固定部5にあっては、回動可能とされていなくてもよく、また、連結部材4と扉固定部5とが一体になっていてもよい。
【0017】
図4を用いて、脱落防止ネジである台座付きネジ8を説明する。
台座付きネジ8は扉3の裏面に締め込まれるネジ部81と、ネジ部81より大きく扉固定部5の長穴の通し穴の横幅より狭い台座部82と、扉固定部5の長穴の通し穴の横幅より大きい傘部83とからなる。台座部82はネジ部81より大きい内径で長穴の通し穴の横幅より小さい外径のスペーサーでもよい。
【0018】
台座付きネジ8を扉固定部5の長穴を介して扉3の裏面に締め込んでいくと、台座部82の端面が扉3の裏面に当接しそれ以上回らなくなる。この時、台座部は長穴の幅より狭く、傘部83の下面が扉固定部5から離間する長さを有しているので、傘部83は扉固定部5に固定はされないようになっている。そのため、扉3の開閉の際に脱落防止ネジ8に力が加わることがないため、台座付きネジ8により扉3の裏面が破損することもなく、また、扉固定ネジ6と比べて緩み難くなっている。
【0019】
扉3の開閉で扉固定ネジ6が緩み、破損もしくは脱落した場合、扉固定部5の長穴の通し穴の上端が脱落防止ネジ8の台座部82に引っ掛かり、扉3の落下を防止し、且つ使用者に異常が発生していることを認知させることができる。
【0020】
第一の実施形態の変形例として、連結部材が上下一対になっている例を図5、図6に示す。
キャビネット1は、前面に開口部を有する収納部2に、扉3が上下一対の連結部材4によって、開閉自在に設けられている。扉3と連結部材4との連結は、連結部材4に設けられた扉固定部5を介して、扉固定ネジ6によって扉3の裏面の片側上下に固定される。扉固定ネジ6は扉固定部5に対して、複数個で固定されるが、本実施例では扉固定部5に対して2本とした。
扉固定部5は平板状であり、扉3の裏面に取付けられる。
【0021】
一方、脱落防止用の台座付きネジ8は、扉固定ネジ6が取付けられる位置の側方に、扉固定部5の長穴の通し穴9を介して、扉3の裏面に対して取り付けられる。
扉固定ネジ6による扉3と扉固定部5の固定方法、また、脱落防止ネジの固定方法ならびにその効用は、前述第一の実施形態と同様である。
【0022】
次に、図7に本発明の第二の実施形態を示す。
扉の裏面で扉固定部5の上方には、下方に開放された引っ掛け具20がネジにより扉3の裏に固定されている。この引っ掛け具20は扉に固定される固定片21と下方に開放している係止片22とからなる。係止片22の開放は、扉3の裏面から扉固定部5の厚み分に対して嵌合する隙間分開放されている。
【0023】
図8に通常扉固定状態(a)、と扉固定ネジ破損抜け状態(b)を示す。
通常扉固定状態(a)では、係止片22の先端の一部が扉固定部5の上端を覆うように設けられ、また、係止片22の開放部の下端と扉固定部5の上端との間に隙間22を開けて取付けられている。
扉固定ネジ6が抜けた場合、図8(b)に示すように、係止片22の開放部位が扉固定部5の上部に嵌合して支持され、扉3が落下するのを防止し、また、使用者に異常であることを認知し易くできる。
【0024】
本発明では、第一の実施形態と第二の実施形態を合せて実施してもよく、その場合、図6に示すように、引っ掛け具20を扉固定部5の上側に設け、台座付きネジ8を少なくとも扉固定部5の下側に設けるとよい。
【0025】
以上のように、本発明によると、扉を固定しているネジが緩み、破損もしくは脱落した場合であっても、扉の落下を防止し、使用者に異常を認知し易いキャビネットを提供できる。
【符号の説明】
【0026】
1 キャビネット
2 収納部
3 扉
4 連結部材
5 扉固定部
6 扉固定ネジ
7 樹脂ブッシュ
8 台座付きネジ(脱落防止ネジ)
9 通し穴
20 引っ掛け具(脱落防止金具)
21 固定片
22 係止片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口部を備えた収納部と、
前記開口部を覆う扉と、
前記扉と前記収納部とを連結し、前記扉を前記開口部に対して開閉自在となす連結部材と、
を備えたキャビネットであって、
前記連結部材は、前記扉を固定する扉固定部を有し、
前記扉固定部が、前記扉と前記扉固定部との固定に際して、前記扉を前記扉固定部に固定する扉固定ネジと、
前記扉固定ネジが前記扉から抜けた際に、前記扉固定部に対して前記扉がずれた位置で前記扉を支持して、前記扉の前記扉固定部からの離脱を防止する離脱防止機構と、
を備えたことを特徴とするキャビネット。
【請求項2】
前記離脱防止機構は、前記扉固定部から前記扉が離間した位置で前記扉を支持することを特徴とする請求項1に記載のキャビネット。
【請求項3】
前記離脱防止機構は、
前記扉固定部に形成された通し穴と、
該通し穴を介して前記扉に取付けられ、かつ、前記扉固定部に固定されない台座付ネジと、
からなることを特徴とする請求項2に記載のキャビネット。
【請求項4】
前記通し穴が長穴であることを特徴とする請求項3に記載のキャビネット。
【請求項5】
前記台座付ネジがネジ部と台座部と傘部とからなり、前記台座部は前記ネジ部より大きく、前記通し穴の大きさより小さいことを特徴とする請求項3または4に記載のキャビネット。
【請求項6】
前記離脱防止機構は、前記扉の裏側で前記扉固定部の上方に取付けられ、下方に開放された引っ掛け具を有し、前記扉固定ネジが前記扉から抜けた際に、前記引っ掛け具が前記扉固定部の上部に支持されることを特徴とする請求項1に記載のキャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−225157(P2012−225157A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−180344(P2012−180344)
【出願日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【分割の表示】特願2008−181264(P2008−181264)の分割
【原出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】