説明

キャビネット

【課題】蝶番の真上に配置される収納容器の深さを深くすることのできるキャビネットを提供する。
【解決手段】キャビネット2の前面上部に、蝶番7を介し、起立状態から上端側が前方へ開口可能な幕板5が設けられ、この幕板5の裏側に収納容器6が取り付けられてなるキャビネット2であって、蝶番7は、収納容器6の下の横桟10に埋め込み状に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉可能な幕板が前面上部に設けられているキャビネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているような洗面化粧台が存在する。
この洗面化粧台は、キャビネットの前面上部に幕板を備え、この幕板の裏側にトレーが設けられており、幕板は、蝶番によって起立状態から上端側が前方へ開口するように開閉可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−115470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている洗面化粧台では、蝶番の真上に位置するトレーは、蝶番が邪魔になるため浅いトレーとする必要があり、幕板の横幅方向に複数のトレーを設ける際に、浅いトレーと深いトレーを列設させる必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、蝶番の真上位置においても深さの深い収納容器を設けることのできる開閉可能な幕板を備えたキャビネットの提供を目的とし、この目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明は、キャビネットの前面上部に、蝶番を介し、起立状態から上端側が前方へ開口可能な幕板が設けられ、該幕板の裏側に収納容器が取り付けられてなるキャビネットであって、
前記蝶番は、前記収納容器の下に埋め込み状に設けられていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のキャビネットでは、蝶番は収納容器の下に埋め込み状に設けられているため、蝶番が邪魔にならず、蝶番の真上の収納容器の深さを深いものとすることができる。
【0007】
また、本発明のキャビネットにおいて、前記蝶番の真上に配置される収納容器の深さは、前記幕板の左右方向中央付近に配置される収納容器の深さと同等またはそれ以上に設定されているものとすることもできる。
こうすれば、収納容器を長尺の一体成形物とすることができ、この長尺の一体成形物の収納容器では、収納容器の差込片を複数箇所または長尺にすることができ、幕板の係止部材に対する嵌合寸法を長くすることができるから、収納容器の幕板に対する取り付け強度を向上させることができるものとなる。
【0008】
また、本発明のキャビネットにおいて、深さの深い収納容器内に、深さの浅い或いは中間深さの別の収納容器を入れて、収納容器の深さを変更できるように構成することもできる。
こうすれば、収納物の変化に良好に対応でき、使用者のニーズに合わせた収納が可能となる。
【0009】
また、本発明のキャビネットにおいて、複数の収納容器を深さを同一にして横長一体状に形成し、一部の収納容器は棚板などを設けて底上げすることで深さを浅くしたものとすることもできる。
こうすれば、複数の収納容器全体を深いものに設定して、強度を確保して幕板に取り付けることができ、一部の収納容器に棚板などを設けて底上げし、良好に深さの浅い収納部を形成できるものとなり、収納物の大きさに対応させた収納が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】開閉可能な幕板を有するキャビネットを備えた洗面化粧台の斜視構成図である。
【図2】開閉可能な幕板を有する引出しタイプのキャビネットを備えた洗面化粧台の斜視構成図である。
【図3】カウンターを取り除いたキャビネットの平面構成図である。
【図4】キャビネットにおける幕板の背面図である。
【図5】キャビネットの幕板周辺の縦断面拡大構成図である。
【図6】図5の状態から幕板を前方側へ開口させた状態の縦断面構成図である。
【図7】深い収納容器内に別の中型の収納容器を入れ込んだ状態の縦断面拡大構成図である。
【図8】深型の収納容器を入れ込んだ状態の縦断面拡大構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
図1は、幕板を有するキャビネットを備えた洗面化粧台の斜視構成図である。
洗面化粧台1は、キャビネット2の上面に、洗面ボウル3aを有するカウンター3が載置されて構成されており、キャビネット2の前面には、扉4,4が設けられ、この扉4,4の上方に開閉可能な幕板5が設けられ、この幕板5の裏側に複数の収納容器6,6,6が取り付けられている。
【0012】
図2の斜視図で示す洗面化粧台1は、扉4に代えて、キャビネット2に引出し21,22を設けたものであり、下方に深さの深い引出し22が設けられ、上方に浅い引出し21が設けられて、この引出し21の上方に、裏側(キャビネット2の収納空間S側)に収納容器6を取り付けた開閉可能な幕板5が設けられている。
なお、図3は、カウンター3を取り除いた状態のキャビネット2の平面構成図であり、また、図4は、幕板5の部分を裏側から見た背面図である。
【0013】
キャビネット2内には左右の側板2a,2b間に収納空間Sが形成されており、この収納空間Sの上部の幕板5の裏側に複数の収納容器6,6,6が取り付けられている。
本例では、複数の収納容器6,6,6は横長状に一体形成されたものであり、左右方向に間隔をおいた仕切板6a,6a,6aにより各収納容器6,6,6が仕切られており、各収納容器6は上面が開口された有底箱状に形成されている。
このように複数の収納容器6,6,6を同一深さにして横長一体状に形成したものでは、製造コストを低減させて複数の収納容器6,6,6を形成することができるものである。
【0014】
なお、図4に示すように、左右端側の収納容器6,6内には、高さの異なる位置に複数の棚板6b,6bを水平状に一体形成させておき、この棚板6bにより左右側の収納容器6,6の底上げが成されており、複数の棚板6bのうち上側の棚板6bを取り去れば、下側の棚板6bにより中間深さの収納容器6となり、また、上側の棚板6bをそのまま残して使用すれば、深さの浅い収納容器6として、ヘアピンや髪止め,ゴムなどの小物を良好に収納することができる。
【0015】
なお、図5は、幕板周辺のキャビネット2の縦断面拡大構成図であり、図6は、幕板5を開けた状態の縦断面拡大構成図である。
幕板5は、蝶番7を介してその上端側を前方へ開くことができるように構成されており、蝶番7を構成する固定側部材7aは、キャビネット2の左右の側板2a,2b間に横設された横桟10の前端側に埋め込み状に固定されており、また、蝶番7を構成する可動側部材7bは、幕板5の下端側に埋め込み状に固定されている。
この蝶番7は、ドロップ蝶番と呼ばれるものであり、羽根状の固定側部材7aと可動側部材7bを連結する軸が、固定側部材7aと可動側部材7bを水平にした時に、上に突出しないようなタイプのものであり、埋め込み状態では、固定側部材7aの上端は横桟10の上面とほぼ面一状をなし、この横桟10の上面すれすれに収納容器6の底面が配置されるものであり、収納容器6は深さの深いものとすることができる。
【0016】
なお、幕板5の裏面(キャビネット2の収納空間S側)には、横長板状の係止部材8がビス等で固定されており、収納容器6の前面側に略L字状に一体形成した差込片9を、係止部材8の上縁側より、係止部材8と幕板5の裏面間に差し込んで嵌合させ、収納容器6を幕板5の裏面に取り付け固定できるものであり、深さの深い収納容器6が複数一体形成されたタイプのものでは、収納容器6の差込片9を複数箇所または長尺にすることができ、幕板5の係止部材8に対する嵌合寸法を長くすることができるから、幕板5に対する収納容器6の取り付け強度を確保することができるものとなり、使用中に収納容器6が外れにくいものとなる。
なお、幕板5の上端には取っ手5aが起立状に設けられており、この取っ手5aに指を掛けて前方側へ引き出すことで、幕板5を蝶番7を介し良好に開閉させることができるものである。この取っ手5aは、ハンドル,つまみ形状のものであっても良い。
【0017】
幕板5が閉じた状態は図5に示し、開いた状態は図6に示すが、この時に、幕板5の一端側とキャビネットの側板2a内側を連結するステー14により幕板5の開き角度が良好に規制されるものであり、例えば幕板5は最大45°程度の角度に上端側が開かれるものである。
なお、ステー14はダンパー付きの開閉装置であり、幕板5の開閉がゆっくりとなるように2枚の回転板間にグリースを使用したものとか、油や空気を狭い通路を通過させるピストン式等の公知のものが用いられている。
なお、図中12は、カウンター3の下面側に横設された横桟であり、図中13は、カウンター3とキャビネット2を固定する固定金具である。また、図中18は、カウンター3とキャビネット2を固定するための補強木であり、図中19は、カウンター3とキャビネット2を固定するための固定ビスである。
【0018】
なお、図5および図6においては、一部の収納容器6内に、上面側が開口した深さの浅い別体の浅型収納容器11を入れ込んだ場合を示しており、この別体の浅型収納容器11を深さの深い収納容器6内に上方側から差し込んで入れることで、深さの深い収納容器6の深さを浅くして使用することができるものとなり、この浅型収納容器11内にはヘアピンなどの雑多な小物を良好に収納させることができ、また、この浅型収納容器11は取り外して、底側の脚部11aをカウンター3の上に置いて使用することも可能である。
【0019】
なお、図7に縦断面拡大図で示すものは、一部の収納容器6内に中間程度の深さを有する別体の中型収納容器15を入れ込んだ場合である。
この中型収納容器15は、上面側が開口した箱体状に形成されており、底側には脚部15aが設けられている。
この図7のように、別体の中型収納容器15を一部の収納容器6内に入れ込んで使用すれば、中間深さの小物を良好にこの中型収納容器15内に入れることができる。
このように、浅型収納容器11或いは中型収納容器15を深さの深い収納容器6内に入れることで、深さを良好に変更させて収納物に対応させることができ、使用者のニーズに合わせた収納が可能なものとなる。
【0020】
なお、図8の断面拡大図で示すものは、収納容器6内に深さの深い深型収納容器16を入れ込んだ場合である。
なお、このような深型収納容器16は、幕板5の裏側に直接取り付けることができるものであり、このような別体の深型収納容器16を幕板5の裏側に複数横方向に列設状に取り付けて使用することもでき、この場合において、蝶番7が邪魔しないために、左右側に一対配置されている蝶番7,7のそれぞれの真上に深型収納容器16を設置することができる。
このように、蝶番7は埋め込み状に設けられているため、蝶番7上に配置される収納容器16は深さを深くすることができ、幕板5の左右方向中央付近に配置される収納容器の深さと同等またはそれ以上の深さにすることができるものであり、深型収納容器16の底面は蝶番の固定側部材7aの真上の近接した位置に配置されるために、蝶番7には水がかかりにくいものとなり、蝶番7の機能不良の発生を良好に抑えることができるものとなる。
【0021】
本発明では、幕板5の裏側に取り付けられる収納容器6において、特に蝶番7の真上位置に配置される収納容器の深さを深くすることができ、深さの深い収納容器6では係止部材8に対する差込片9の嵌合寸法が長くなり、強固に幕板5の裏側に取り付けることができ、しかも、蝶番7に水がかかりにくいものとなる。
【0022】
また、複数の収納容器を横長一体状に深さを同一にして形成しておく場合には、一部の収納容器6内に浅型収納容器11或いは中型収納容器15を上方側から入れ込んで、収納容器の深さを使用者のニーズに合わせて変化させることができ、更には、一部の収納容器6内に高さの異なる位置に棚板6bを設けておき、この棚板6bにより深さを変更させることができ、深さの深い収納容器16と深さの浅い収納容器11,15で収納物を良好に使い分けることができるものとなる。
なお、幕板5が閉じた状態から不意に幕板5が開かないように、幕板5の裏面にローラーキャッチャーやマグネットキャッチャーを設け、キャビネット2の側板2a,2bに設けたローラーやマグネットに嵌合や引き寄せるようにしても良い。
【符号の説明】
【0023】
1 洗面化粧台
2 キャビネット
2a,2b 側板
3 カウンター
3a 洗面ボウル
4 扉
5 幕板
5a 取っ手
6 収納容器
6a 仕切板
6b 棚板
7 蝶番
7a 固定側部材
7b 可動側部材
8 係止部材
9 差込片
10 横桟
11 浅型収納容器
14 ステー
15 中型収納容器
16 深型収納容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネットの前面上部に、蝶番を介し、起立状態から上端側が前方へ開口可能な幕板が設けられ、
該幕板の裏側に収納容器が取り付けられてなるキャビネットであって、
前記蝶番は、前記収納容器の下に埋め込み状に設けられている
ことを特徴とするキャビネット。
【請求項2】
前記蝶番の真上に配置される収納容器の深さは、前記幕板の左右方向中央付近に配置される収納容器の深さと同等またはそれ以上に設定されている請求項1に記載のキャビネット。
【請求項3】
深さの深い収納容器内に、深さの浅い或いは中間深さの別の収納容器を入れて、収納容器の深さを変更できるように構成した請求項1または請求項2に記載のキャビネット。
【請求項4】
複数の収納容器を深さを同一にして横長一体状に形成し、一部の収納容器は棚板などを設けて底上げすることで深さを浅くしたことを特徴とする請求項1に記載のキャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−39164(P2013−39164A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176436(P2011−176436)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)