キャブマウント構造
【課題】エンジンの振動に起因したキャブの室内の騒音悪化を防止することが可能なキャブマウント構造の提供。
【解決手段】
前後の第2クッションラバー89,90は、ストライカ支持ブラケット54の前側舌状板部88の後面とキャブロックブラケット15の前フランジ部63の前面との間、及びストライカ支持ブラケット54の後フランジ部85の後面とキャブロックブラケット15の後側板状板部65との間にそれぞれ介在して弾性変形し、キャブロックブラケット15を前後から弾性支持する。
【解決手段】
前後の第2クッションラバー89,90は、ストライカ支持ブラケット54の前側舌状板部88の後面とキャブロックブラケット15の前フランジ部63の前面との間、及びストライカ支持ブラケット54の後フランジ部85の後面とキャブロックブラケット15の後側板状板部65との間にそれぞれ介在して弾性変形し、キャブロックブラケット15を前後から弾性支持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チルト可能なキャブをシャシ側にロックして支持するキャブマウント構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、前端部側のチルト軸を中心としてチルト可能なキャブを備えたキャブオーバー型車両には、非チルト状態のキャブをシャシ側にロックして支持するキャブマウント構造が設けられる。
【0003】
このようなキャブマウント構造には、ストライカ支持ブラケット、ストライカと、キャブロックブラケットと、キャブロックフックと、左右のクッションラバーとを備えたものがある。ストライカ支持ブラケットは、上面部と、上面部の車幅方向両端縁から上方へ拡がるように傾斜して延びる左右1対の傾斜面部とを有し、シャシ側に支持される。ストライカは、ストライカ支持ブラケットの上面部に固定されて上方へ延びる。キャブロックブラケットは、底板部と、底板部の車幅方向両端縁から上方へ拡がるように傾斜して延びる左右1対の傾斜板部と、底板部に形成されたストライカ挿通孔とを有し、キャブの後端部に対して固定される。キャブロックフックは、キャブロックブラケットに対して移動自在に支持され、キャブロックレバーの動きに連動して少なくとも初期位置とロック位置との間を移動する。キャブロックフックは、キャブが非チルト状態であるとき、ロック位置ではストライカ挿通孔を挿通するストライカと係合してキャブをシャシ側へロックし、初期位置ではストライカから外れてキャブのシャシ側へのロックを解除する。左右のクッションラバーは、キャブロックフックがストライカと係合したロック状態で、ストライカ支持ブラケットの左右の傾斜面部とキャブロックブラケットの左右の傾斜板部との間にそれぞれ介在し、キャブロックブラケットを斜め下方から弾性支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−223371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の構造では、キャブがシャシ側にロックされた状態において、キャブ側のキャブロックブラケットは左右のクッションラバーによって弾性支持されている。この左右のクッションラバーは、ストライカ支持ブラケットの左右の傾斜面部とキャブロックブラケットの左右の傾斜板部との間にそれぞれ介在し、キャブロックブラケットを車幅方向の斜め下方から弾性支持するため、前後方向におけるキャブの支持剛性が低く、ストライカとキャブロックフックとの係合部分を回転中心として発生する前後振動の周波数(マウント共振周波数)は、比較的低い周波数(例えば、90Hz付近)となる。
【0006】
これに対し、エンジンの回転2次成分の周波数も比較的低い周波数領域で発生するため、エンジンの回転2次成分の周波数領域にマウント共振周波数が含まれると、マウント共振周波数で振動伝達率が増幅されてしまい、エンジンからの振動がキャブに伝わり易くなり、キャブの室内の騒音悪化を招くおそれが生じる。
【0007】
そこで、本発明は、エンジンの振動に起因したキャブの室内の騒音悪化を防止することが可能なキャブマウント構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明は、前端部側を中心としてチルト可能なキャブの後端部側を、非チルト状態でシャシ側にロックするキャブオーバー型車両のキャブマウント構造であって、ストライカ支持ブラケットと、ストライカと、キャブロックブラケットと、キャブロックフックと、左右の第1弾性支持部材と、1対の前側対向面部と、1対の後側対向面部と、前後の第2弾性支持部材とを備える。
【0009】
ストライカ支持ブラケットは、上面部と、上面部の車幅方向両端縁から上方へ拡がるように傾斜して延びる左右1対の傾斜面部とを有し、シャシ側に支持される。ストライカは、ストライカ支持ブラケットの上面部に固定されて上方へ延びる。キャブロックブラケットは、底板部と、底板部の車幅方向両端縁から上方へ拡がるように傾斜して延びる左右1対の傾斜板部と、底板部に形成されたストライカ挿通孔とを有し、キャブの後端部に対して固定される。キャブロックフックは、キャブロックブラケットに対して移動自在に支持され、キャブロックレバーの動きに連動して少なくとも初期位置とロック位置との間を移動し、キャブが非チルト状態であるとき、ロック位置ではストライカ挿通孔を挿通するストライカと係合してキャブをシャシ側へロックし、初期位置ではストライカから外れてキャブのシャシ側へのロックを解除する。左右の第1弾性支持部材は、キャブロックフックがストライカと係合したロック状態でストライカ支持ブラケットの左右の傾斜面部とキャブロックブラケットの左右の傾斜板部との間にそれぞれ介在し、キャブロックブラケットを車幅方向の斜め下方から弾性支持する。
【0010】
1対の前側対向面部は、ストライカ支持ブラケットの前部及びキャブロックブラケットの前部の一方及び他方にそれぞれ固定的に設けられ、ロック状態において前後で相対向する。1対の後側対向面部は、ストライカ支持ブラケットの後部及びキャブロックブラケットの後部の一方及び他方にそれぞれ固定的に設けられ、ロック状態において前後で相対向する。前後の第2弾性支持部材は、ロック状態で1対の前側対向面部の間と1対の後側対向面部の間とにそれぞれ介在し、キャブロックブラケットを前後から弾性支持する。
【0011】
上記構成では、ロック状態において、前後の第2弾性支持部材がキャブロックブラケットを前後から弾性支持するので、前後方向におけるキャブの支持剛性が高くなり、ストライカとキャブロックフックとの係合部分を回転中心として発生する前後振動の周波数(マウント共振周波数)も、比較的高くなる。従って、第2弾性支持部材の材質や形状等を適宜設定することによって、マウント共振周波数をエンジンの回転2次成分の周波数領域よりも高めることが可能となり、エンジンの振動に起因するキャブの室内の騒音悪化を防止することができる。
【0012】
また、上記ストライカは、前後方向に延びる棒体状の係合シャフトを有してもよく、上記キャブロックフックは、ロック位置で係合シャフトの外周面に下方から係合する係合面を有してもよい。キャブロックフックの係合面と係合シャフトの外周面とは、ロック状態において両者の前後方向の相対移動を規制する凹凸形状を有してもよい。
【0013】
上記構成では、キャブロックフックの係合面及び係合シャフトの外周面の凹凸形状によっても前後方向におけるキャブの支持剛性が高くなるので、マウント共振周波数をエンジンの回転2次成分の周波数領域よりもさらに確実に高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エンジンの振動に起因したキャブの室内の騒音悪化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るキャブマウント構造を備えたキャブオーバートラックの概略を示す側面図であり、(a)は非チルト状態を、(b)はチルト状態をそれぞれ示す。
【図2】図2のキャブの背面構造を示す外観斜視図である。
【図3】図2のキャブマウント構造の斜視図である。
【図4】図3のキャブマウント構造の分解斜視図である。
【図5】図3のキャブマウント構造の側断面図である。
【図6】図3のキャブロック装置の分解斜視図である。
【図7】図6のキャブロック装置を組み立てた状態を示す斜視図である。
【図8】図4のストライカ支持ブラケットの斜視図である。
【図9】図4のキャブロックブラケットの斜視図である。
【図10】図4の係合シャフトとキャブロックフックとを示す拡大斜視図である。
【図11】本発明の他の態様を示す側断面図である。
【図12】本発明のさらに他の態様を示す側断面図である。
【図13】本発明のさらに他の態様を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図中FRは車両前方を、UPは車両上方をそれぞれ示している。また、以下の説明における左右方向は、車両前方を向いた状態での左右方向である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の車両は、キャブ1の前端部側がシャシ側2に対しチルト軸80を中心としてチルト可能に支持されたキャブオーバートラックである。
【0018】
図2に示すように、キャブ1の背面1aの車幅方向の左右両側には、非チルト状態のキャブ1の後端部側をシャシ側2にロックするキャブロック装置3がそれぞれ固定されている。また、各キャブロック装置3に対応して、シャシ側2の左右両側には、ストライカ4がそれぞれ固定されている。
【0019】
キャブ1の背面1aの車幅方向一側(本実施形態では左側)には、キャブロックレバー8が設けられている。キャブロックレバー8の一端側(上端側)は、キャブ1に対して回転自在に支持されている。このキャブロックレバー8の一端側と、後述するキャブロック装置3のリンク11とは、車幅方向に沿って延びるロッド9を介して連結されている。キャブロックレバー8の他端側(下端側)を車幅方向内側(右側)へ回転させると、ロッド9はロック方向(左方向)へ移動し、反対に車幅方向外側(左側)へ回転させると、ロッド9はロック解除方向(右方向)へ移動する。なお、キャブ1側には、キャブロック装置3が完全なロック状態となるロック位置とロック状態が完全に解除された初期位置(ロック解除位置)との少なくとも2カ所の位置において、ロックレバー8の回転を解除自在に阻止するロックレバー固定部(図示外)が設けられている。
【0020】
左右のキャブマウント構造は、ほぼ同様の構成であるため、以下一方(右側)について説明し、その他方(左側)についての説明を省略する。
【0021】
図3〜図10に示すように、キャブロック装置3の下方には、ゴム等の弾性材からなるラバー部50と、このラバー部50の下方とシャシ側2とを連結してラバー部50を下方から支持するラバー部支持ブラケット(図示省略)と、ラバー部50の軸芯を貫通する連結軸52と、ラバー部50の上方に配置され連結軸52及びこれと螺合するナット53によってラバー部50に固定される金属板製のストライカ支持ブラケット54とが設けられている。
【0022】
ストライカ支持ブラケット54の上部は、上面部81と、上面部81の車幅方向両端縁から上方へ拡がるように傾斜して延びる左右1対の傾斜面部82,83と、上面部81及び傾斜面部82,83の前端縁から下方へ曲折して延びる前フランジ部84と、上面部81及び傾斜面部82,83の後端縁から下方へ曲折して延びる後フランジ部85とを一体的に備えている。前フランジ部84と後フランジ部85とは前後で相対向し、前フランジ部84の下端部と後フランジ部85の下端部とを連結軸52が貫通する。左右の傾斜面部82,83の上面には、ゴム等の弾性材からなる板状の左右の第1クッションラバー(第1弾性支持部材)86,87がそれぞれ固着されている。前フランジ部84には、前側舌状板部88の下端部が固着されている。前側舌状板部88は、その下端部の上端から斜め前上方へ曲折し、さらに曲折して上方へ延びる。前側舌状板部88の上部の後面と後フランジ部85の後面とには、ゴム等の弾性材からなる板状の第2クッションラバー(第2弾性支持部材)89,90がそれぞれ固着されている。
【0023】
ストライカ4は、その下端部がストライカ支持ブラケット54の上面部81に固定されて上方へ延びる。ストライカ4は、車両前後方向に離間して相対向する支持プレート5,6と、支持プレート5,6の上端部同士を連結する棒体状の係合シャフト7とを備え、係合シャフト7は、前後方向に延びる。
【0024】
キャブロック装置3は、ベース10とリンク11とキャブロックフック12とバネ部材40とスペーサ41とを備えている。リンク11は、ベース10に対し第1回転軸17を中心としてロック方向及びロック解除方向へ回転自在に支持される。キャブロックフック12は、リンク11に対し第2回転軸24を中心として回転自在に支持され、ベース10に対してロック方向及びロック解除方向へ移動自在となる。リンク11がロック方向へ回転するとキャブロックフック12もロック方向へ移動し、リンク11がロック解除方向へ回転するとキャブロックフック12もロック解除方向へ移動する。
【0025】
キャブ1の背面1aには、ベース10が固定されるキャブロックブラケット15が設けられている。キャブロックブラケット15は、略枠形状に屈曲形成された金属板製であり、ベース10は、その主要部分がキャブロックブラケット15の内側に収容された状態でキャブロックブラケット15に締結固定される。キャブロックブラケット15の下部は、底板部60と、底板部60の車幅方向両端縁から上方へ拡がるように傾斜して延びる左右1対の傾斜板部61,62と、底板部60の前端縁から上方へ曲折して延びる前フランジ部63と、底板部60及び傾斜板部61,62の後端縁から下方へ曲折する後フランジ部64と、後フランジ部64のうち底板部63の後縁部分から連続して下方へ延びる後側舌状板部65と、を一体的に備えている。前フランジ部63の左右両側は、左右の傾斜板部61,62の前端縁からそれぞれ曲折されている。底板部60には、キャブ1が非チルト状態のときにストライカ4の前後の支持プレート部5,6の上部と係合シャフト7とが挿通されるストライカ挿通孔16が形成されている。
【0026】
キャブロック装置3のベース10は、相対向して離間する前後のプレート部(前プレート部13と後プレート部14)を有する。前プレート部13及び後プレート部14には、車両前後方向に沿って延びる第1回転軸17が挿通され支持される第1回転軸支持孔18が形成されている。前プレート部13の下部には、キャブ1が非チルト状態のときにストライカ4の係合シャフト7を受け入れる係合シャフト収容凹部19が形成されている。
【0027】
リンク11は、相対向して離間する板状の前後のリンク部材(前リンク部材20と後リンク部材21)と、両リンク部材20,21を連結する連結部22と、を有し、ベース10の前後のプレート部13,14の間に収容される。前後のリンク部材20,21の中間部には、第1回転軸17が挿通される第1回転軸挿通孔23がそれぞれ形成され、リンク11は、キャブ1の背面1aに対して第1回転軸17を中心として回転自在に支持される。
【0028】
前リンク部材20及び後リンク部材21の一端側(図6の上端側)には、車両前後方向に沿って延びる第2回転軸24が挿通され支持される第2回転軸支持孔25がそれぞれ形成されている。後リンク部材21の一端側には、ロッド9が連結されるロッド連結軸27が後方へ突設されている。
【0029】
ロッド9は、後リンク部材21の後方で、ブラケット43を介してロッド連結軸27に連結される。キャブロックレバー8(図1に示す)の他端側(図1の下端側)が車幅方向内側(図1の右側)へ回転し、ロッド9がロック方向(図1の左方向)へ移動すると、リンク11は、キャブロックレバー8の動きに連動し、第1回転軸17を中心として、初期位置からロック位置まで、ロック方向(図7の矢印70方向)へ回転する。反対に、キャブロックレバー8の他端側が車幅方向外側へ回転し、ロッド9がロック解除方向(図1の右方向)へ移動すると、リンク11は、キャブロックレバー8の動きに連動し、第1回転軸17を中心として、ロック位置から初期位置まで、ロック解除方向(図7の矢印71方向)へ回転する。
【0030】
キャブロックフック12は、略L状の板形状を有し、リンク3の前後のリンク部材20,21の間に配置される。キャブロックフック12の一端側(図6の上端側)には、第2回転軸24が挿通される第2回転軸挿通孔28が形成され、キャブロックフック12は、リンク3に対して第2回転軸24を中心として回転自在に支持される。すなわち、キャブ1に対するキャブロックフック12の移動軌跡は、第1回転軸17を中心とした回転と第2回転軸24を中心とした回転とにより規定される。また、キャブロックフック12の他端側(図6の下端側)には、上方が開放された凹状の係合面30を有するフック部29が形成されている。
【0031】
第2回転軸24の外周には、コイル状のバネ部材40とスペーサ41とが配置される。バネ部材40の一側40aはキャブロックフック12と係合し、他側40bはリンク11の連結部22と係合する。係るバネ部材40によって、キャブロックフック12は、リンク11に対してロック方向へ付勢される。また、特に図示していないが、リンク11には、キャブロックフック12のロック解除方向への移動範囲を規制するストッパが設けられている。このため、キャブロックフック12に外力が加わっていない状態(リンク11が初期位置にある状態を含む)では、バネ部材40とストッパとによって、キャブロックフック12はリンク11に対して所定位置に維持される。
【0032】
キャブ1が非チルト状態であり、キャブロックレバー8の他端側(下端側)が車幅方向内側(右側)へ回転し、ロッド9がロック方向(左方向)へ移動し、リンク11が第1回転軸17を中心として初期位置からロック位置まで回転すると、キャブロックフック12は、リンク11の回転に伴って初期位置からロック位置までロック方向(図7の矢印70方向)へ移動する。
【0033】
初期位置からロック方向へ移動開始直後のキャブロックフック12は、バネ部材40とストッパとによってリンク11に対して所定位置に維持されたまま、第1回転軸17を中心として初期位置からロック方向へ回転する。
【0034】
キャブロックフック12のロック方向への移動が進み、キャブロックフック12の内側縁がストライカ4と当接すると、バネ部材40の付勢力を受けているキャブロックフック12は、ストライカ4に当接したままリンク11のロック方向への回転に伴ってロック方向へ移動する。係るロック方向への移動時において、ストライカ4からキャブロックフック12へロック解除方向(図7の矢印71方向)への力が加わると、キャブロックフック12は、バネ部材40の付勢力に抗してリンク11に対し第2回転軸24を中心としてロック解除方向へ回転する。この第2回転軸24を中心とした回転を伴うことにより、フック部29は、ロック方向への移動に伴って下方からストライカ4の係合シャフト7へ近づく。
【0035】
キャブロックフック12のロック方向への移動がさらに進むと、ロック位置の直前でフック部29の係合面30が係合シャフト7に下方から係合し、ロック位置でフック部29が係合シャフト7に対して上方への引張力を付与する。このため、キャブロックフック12がロック位置に達した状態では、キャブ1がシャシ側2に確実且つ堅牢にロックされる。
【0036】
一方、キャブロックレバー8の他端側が車幅方向外側へ回転し、ロッド9がロック解除方向(図1の右方向)へ移動し、リンク11が第1回転軸17を中心としてロック位置からロック解除方向へ回転すると、キャブロックフック12は、上記ロック方向への移動時と反対の移動軌跡を通り、初期位置へ戻る。
【0037】
キャブロックフック12がストライカ4と係合したロック状態において、左右の第1クッションラバー86,87は、ストライカ支持ブラケット54の左右の傾斜面部82,83とキャブロックブラケット15の左右の傾斜板部61,62との間にそれぞれ介在して弾性変形し、キャブロックブラケット15を車幅方向の斜め下方から弾性支持する。
【0038】
またロック状態において、前後の第2クッションラバー89,90は、ストライカ支持ブラケット54の前側舌状板部88の後面とキャブロックブラケット15の前フランジ部63の前面との間、及びストライカ支持ブラケット54の後フランジ部85の後面とキャブロックブラケット15の後側板状板部65との間にそれぞれ介在して弾性変形し、キャブロックブラケット15を前後から弾性支持する。すなわち、ストライカ支持ブラケット54の前側舌状板部88とキャブロックブラケット15の前フランジ部63とは、ストライカ支持ブラケット54の前部及びキャブロックブラケット15の前部の一方及び他方にそれぞれ固定的に設けられ、ロック状態において前後で相対向する1対の前側対向面部を構成する。また、ストライカ支持ブラケット54の後フランジ部85とキャブロックブラケット15の後側板状板部65とは、ストライカ支持ブラケット54の後部及びキャブロックブラケット15の後部にそれぞれ固定的に設けられ、ロック状態において前後で相対向する1対の後側対向面部を構成する。
【0039】
また、キャブロックフック12の係合面30と係合シャフト7の外周面とは、ロック状態において両者の前後方向の相対移動を規制する凹凸形状を有する。具体的には、キャブロックフック12の係合面30の中間部分が凸状に湾曲し、係合シャフト7の中間部分の外周面がキャブロックフック12の凸状に合わせて凹状に湾曲している。
【0040】
本実施形態によれば、ロック状態において、左右の第1クッションラバー86,87がキャブロックブラケット15を車幅方向の斜め下方から弾性支持するので、車幅方向(左右方向)におけるキャブ1の支持剛性は高くなる。
【0041】
また、前後の第2クッションラバー86,87がキャブロックブラケット15を前後から弾性支持するので、前後方向におけるキャブ1の支持剛性も高くなる。さらに、キャブロックフック12の係合面30及び係合シャフト7の外周面の凹凸形状によっても、前後方向におけるキャブの支持剛性が高くなる。このため、ストライカ4とキャブロックフック12との係合部分(係合シャフト7)を回転中心として発生する前後振動の周波数(マウント共振周波数)を、エンジンの回転2次成分の周波数領域よりも確実に高めることが可能となる。従って、第2クッションラバー86,87の材質や形状等を適宜設定することによって、マウント共振周波数をエンジンの回転2次成分の周波数領域よりも高めて、エンジンの振動に起因するキャブの室内の騒音悪化を防止することができる。
【0042】
例えば、エンジンの回転2次成分が90Hzにピークを持つ場合のエンジン回転数は2700rpmであり、この回転数はトラック用エンジンの常用回転域内となる。エンジンの最高回転数が3200rpmの場合、その時のエンジン回転2次成分は107Hzであるので、マウント共振周波数を107Hz以上に設定することにより、キャブの室内の騒音悪化を防止することができる。
【0043】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定をされるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲では適宜の変更が可能である。
【0044】
例えば、1対の前側対向面部と1対の後側対向面部とは、上記形態に限定されるものではない。一例として、図11に示すように、キャブロックブラケット15の底板部60の前端縁から下方へ曲折して延びる前側舌状板部91とストライカ支持ブラケット54の前フランジ部84とによって1対の前側対向面部を構成し、キャブロックブラケット15の底板部60の後端縁から上方へ曲折して延びる後フランジ部92とストライカ支持ブラケット54の後フランジ部85に固着されて上方へ延びる後側舌状板部93とによって1対の後側対向面部を構成してもよい。また、図12に示すように、キャブロックブラケット15の底板部60の前端縁から上方へ曲折して延びる前フランジ部63とストライカ支持ブラケット54の前フランジ部84に固着されて上方へ延びる前側舌状板部88とによって1対の前側対向面部を構成し、キャブロックブラケット15の底板部60の後端縁から上方へ曲折して延びる後フランジ部92とストライカ支持ブラケット54の後フランジ部85に固着されて上方へ延びる後側舌状板部93とによって1対の後側対向面部を構成してもよい。さらに、図13に示すように、キャブロックブラケット15の底板部60の前端縁から下方へ曲折して延びる前側舌状板部91とストライカ支持ブラケット54の前フランジ部84とによって1対の前側対向面部を構成し、キャブロックブラケット15の底板部60の後端縁から下方へ曲折して延びる後側舌状板部65とストライカ支持ブラケット54の後フランジ部85とによって1対の後側対向面部を構成してもよい。
【0045】
また、キャブロックフック12の係合面30の中間部分が凹状に湾曲し、係合シャフト7の中間部分の外周面がキャブロックフック12の凹状に合わせて凸状に湾曲していてもよい(図11参照)。
【符号の説明】
【0046】
1:キャブ
2:シャシ側
3:キャブロック装置
4:ストライカ
7:係合シャフト
12:キャブロックフック
15:キャブロックブラケット
16:ストライカ挿通孔
29:フック部
30:係合面
50:ラバー部
52:連結軸
54:ストライカ支持ブラケット
60:底板部
61,62:傾斜板部
63:前フランジ部
64:後フランジ部
65:後側舌状板部
81:上面部
82,83:傾斜面部
84:前フランジ部
85:後フランジ部
86,87:第1クッションラバー(第1弾性支持部材)
88:前側舌状板部
89,90:第2クッションラバー(第2弾性支持部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、チルト可能なキャブをシャシ側にロックして支持するキャブマウント構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、前端部側のチルト軸を中心としてチルト可能なキャブを備えたキャブオーバー型車両には、非チルト状態のキャブをシャシ側にロックして支持するキャブマウント構造が設けられる。
【0003】
このようなキャブマウント構造には、ストライカ支持ブラケット、ストライカと、キャブロックブラケットと、キャブロックフックと、左右のクッションラバーとを備えたものがある。ストライカ支持ブラケットは、上面部と、上面部の車幅方向両端縁から上方へ拡がるように傾斜して延びる左右1対の傾斜面部とを有し、シャシ側に支持される。ストライカは、ストライカ支持ブラケットの上面部に固定されて上方へ延びる。キャブロックブラケットは、底板部と、底板部の車幅方向両端縁から上方へ拡がるように傾斜して延びる左右1対の傾斜板部と、底板部に形成されたストライカ挿通孔とを有し、キャブの後端部に対して固定される。キャブロックフックは、キャブロックブラケットに対して移動自在に支持され、キャブロックレバーの動きに連動して少なくとも初期位置とロック位置との間を移動する。キャブロックフックは、キャブが非チルト状態であるとき、ロック位置ではストライカ挿通孔を挿通するストライカと係合してキャブをシャシ側へロックし、初期位置ではストライカから外れてキャブのシャシ側へのロックを解除する。左右のクッションラバーは、キャブロックフックがストライカと係合したロック状態で、ストライカ支持ブラケットの左右の傾斜面部とキャブロックブラケットの左右の傾斜板部との間にそれぞれ介在し、キャブロックブラケットを斜め下方から弾性支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−223371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の構造では、キャブがシャシ側にロックされた状態において、キャブ側のキャブロックブラケットは左右のクッションラバーによって弾性支持されている。この左右のクッションラバーは、ストライカ支持ブラケットの左右の傾斜面部とキャブロックブラケットの左右の傾斜板部との間にそれぞれ介在し、キャブロックブラケットを車幅方向の斜め下方から弾性支持するため、前後方向におけるキャブの支持剛性が低く、ストライカとキャブロックフックとの係合部分を回転中心として発生する前後振動の周波数(マウント共振周波数)は、比較的低い周波数(例えば、90Hz付近)となる。
【0006】
これに対し、エンジンの回転2次成分の周波数も比較的低い周波数領域で発生するため、エンジンの回転2次成分の周波数領域にマウント共振周波数が含まれると、マウント共振周波数で振動伝達率が増幅されてしまい、エンジンからの振動がキャブに伝わり易くなり、キャブの室内の騒音悪化を招くおそれが生じる。
【0007】
そこで、本発明は、エンジンの振動に起因したキャブの室内の騒音悪化を防止することが可能なキャブマウント構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明は、前端部側を中心としてチルト可能なキャブの後端部側を、非チルト状態でシャシ側にロックするキャブオーバー型車両のキャブマウント構造であって、ストライカ支持ブラケットと、ストライカと、キャブロックブラケットと、キャブロックフックと、左右の第1弾性支持部材と、1対の前側対向面部と、1対の後側対向面部と、前後の第2弾性支持部材とを備える。
【0009】
ストライカ支持ブラケットは、上面部と、上面部の車幅方向両端縁から上方へ拡がるように傾斜して延びる左右1対の傾斜面部とを有し、シャシ側に支持される。ストライカは、ストライカ支持ブラケットの上面部に固定されて上方へ延びる。キャブロックブラケットは、底板部と、底板部の車幅方向両端縁から上方へ拡がるように傾斜して延びる左右1対の傾斜板部と、底板部に形成されたストライカ挿通孔とを有し、キャブの後端部に対して固定される。キャブロックフックは、キャブロックブラケットに対して移動自在に支持され、キャブロックレバーの動きに連動して少なくとも初期位置とロック位置との間を移動し、キャブが非チルト状態であるとき、ロック位置ではストライカ挿通孔を挿通するストライカと係合してキャブをシャシ側へロックし、初期位置ではストライカから外れてキャブのシャシ側へのロックを解除する。左右の第1弾性支持部材は、キャブロックフックがストライカと係合したロック状態でストライカ支持ブラケットの左右の傾斜面部とキャブロックブラケットの左右の傾斜板部との間にそれぞれ介在し、キャブロックブラケットを車幅方向の斜め下方から弾性支持する。
【0010】
1対の前側対向面部は、ストライカ支持ブラケットの前部及びキャブロックブラケットの前部の一方及び他方にそれぞれ固定的に設けられ、ロック状態において前後で相対向する。1対の後側対向面部は、ストライカ支持ブラケットの後部及びキャブロックブラケットの後部の一方及び他方にそれぞれ固定的に設けられ、ロック状態において前後で相対向する。前後の第2弾性支持部材は、ロック状態で1対の前側対向面部の間と1対の後側対向面部の間とにそれぞれ介在し、キャブロックブラケットを前後から弾性支持する。
【0011】
上記構成では、ロック状態において、前後の第2弾性支持部材がキャブロックブラケットを前後から弾性支持するので、前後方向におけるキャブの支持剛性が高くなり、ストライカとキャブロックフックとの係合部分を回転中心として発生する前後振動の周波数(マウント共振周波数)も、比較的高くなる。従って、第2弾性支持部材の材質や形状等を適宜設定することによって、マウント共振周波数をエンジンの回転2次成分の周波数領域よりも高めることが可能となり、エンジンの振動に起因するキャブの室内の騒音悪化を防止することができる。
【0012】
また、上記ストライカは、前後方向に延びる棒体状の係合シャフトを有してもよく、上記キャブロックフックは、ロック位置で係合シャフトの外周面に下方から係合する係合面を有してもよい。キャブロックフックの係合面と係合シャフトの外周面とは、ロック状態において両者の前後方向の相対移動を規制する凹凸形状を有してもよい。
【0013】
上記構成では、キャブロックフックの係合面及び係合シャフトの外周面の凹凸形状によっても前後方向におけるキャブの支持剛性が高くなるので、マウント共振周波数をエンジンの回転2次成分の周波数領域よりもさらに確実に高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エンジンの振動に起因したキャブの室内の騒音悪化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るキャブマウント構造を備えたキャブオーバートラックの概略を示す側面図であり、(a)は非チルト状態を、(b)はチルト状態をそれぞれ示す。
【図2】図2のキャブの背面構造を示す外観斜視図である。
【図3】図2のキャブマウント構造の斜視図である。
【図4】図3のキャブマウント構造の分解斜視図である。
【図5】図3のキャブマウント構造の側断面図である。
【図6】図3のキャブロック装置の分解斜視図である。
【図7】図6のキャブロック装置を組み立てた状態を示す斜視図である。
【図8】図4のストライカ支持ブラケットの斜視図である。
【図9】図4のキャブロックブラケットの斜視図である。
【図10】図4の係合シャフトとキャブロックフックとを示す拡大斜視図である。
【図11】本発明の他の態様を示す側断面図である。
【図12】本発明のさらに他の態様を示す側断面図である。
【図13】本発明のさらに他の態様を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図中FRは車両前方を、UPは車両上方をそれぞれ示している。また、以下の説明における左右方向は、車両前方を向いた状態での左右方向である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の車両は、キャブ1の前端部側がシャシ側2に対しチルト軸80を中心としてチルト可能に支持されたキャブオーバートラックである。
【0018】
図2に示すように、キャブ1の背面1aの車幅方向の左右両側には、非チルト状態のキャブ1の後端部側をシャシ側2にロックするキャブロック装置3がそれぞれ固定されている。また、各キャブロック装置3に対応して、シャシ側2の左右両側には、ストライカ4がそれぞれ固定されている。
【0019】
キャブ1の背面1aの車幅方向一側(本実施形態では左側)には、キャブロックレバー8が設けられている。キャブロックレバー8の一端側(上端側)は、キャブ1に対して回転自在に支持されている。このキャブロックレバー8の一端側と、後述するキャブロック装置3のリンク11とは、車幅方向に沿って延びるロッド9を介して連結されている。キャブロックレバー8の他端側(下端側)を車幅方向内側(右側)へ回転させると、ロッド9はロック方向(左方向)へ移動し、反対に車幅方向外側(左側)へ回転させると、ロッド9はロック解除方向(右方向)へ移動する。なお、キャブ1側には、キャブロック装置3が完全なロック状態となるロック位置とロック状態が完全に解除された初期位置(ロック解除位置)との少なくとも2カ所の位置において、ロックレバー8の回転を解除自在に阻止するロックレバー固定部(図示外)が設けられている。
【0020】
左右のキャブマウント構造は、ほぼ同様の構成であるため、以下一方(右側)について説明し、その他方(左側)についての説明を省略する。
【0021】
図3〜図10に示すように、キャブロック装置3の下方には、ゴム等の弾性材からなるラバー部50と、このラバー部50の下方とシャシ側2とを連結してラバー部50を下方から支持するラバー部支持ブラケット(図示省略)と、ラバー部50の軸芯を貫通する連結軸52と、ラバー部50の上方に配置され連結軸52及びこれと螺合するナット53によってラバー部50に固定される金属板製のストライカ支持ブラケット54とが設けられている。
【0022】
ストライカ支持ブラケット54の上部は、上面部81と、上面部81の車幅方向両端縁から上方へ拡がるように傾斜して延びる左右1対の傾斜面部82,83と、上面部81及び傾斜面部82,83の前端縁から下方へ曲折して延びる前フランジ部84と、上面部81及び傾斜面部82,83の後端縁から下方へ曲折して延びる後フランジ部85とを一体的に備えている。前フランジ部84と後フランジ部85とは前後で相対向し、前フランジ部84の下端部と後フランジ部85の下端部とを連結軸52が貫通する。左右の傾斜面部82,83の上面には、ゴム等の弾性材からなる板状の左右の第1クッションラバー(第1弾性支持部材)86,87がそれぞれ固着されている。前フランジ部84には、前側舌状板部88の下端部が固着されている。前側舌状板部88は、その下端部の上端から斜め前上方へ曲折し、さらに曲折して上方へ延びる。前側舌状板部88の上部の後面と後フランジ部85の後面とには、ゴム等の弾性材からなる板状の第2クッションラバー(第2弾性支持部材)89,90がそれぞれ固着されている。
【0023】
ストライカ4は、その下端部がストライカ支持ブラケット54の上面部81に固定されて上方へ延びる。ストライカ4は、車両前後方向に離間して相対向する支持プレート5,6と、支持プレート5,6の上端部同士を連結する棒体状の係合シャフト7とを備え、係合シャフト7は、前後方向に延びる。
【0024】
キャブロック装置3は、ベース10とリンク11とキャブロックフック12とバネ部材40とスペーサ41とを備えている。リンク11は、ベース10に対し第1回転軸17を中心としてロック方向及びロック解除方向へ回転自在に支持される。キャブロックフック12は、リンク11に対し第2回転軸24を中心として回転自在に支持され、ベース10に対してロック方向及びロック解除方向へ移動自在となる。リンク11がロック方向へ回転するとキャブロックフック12もロック方向へ移動し、リンク11がロック解除方向へ回転するとキャブロックフック12もロック解除方向へ移動する。
【0025】
キャブ1の背面1aには、ベース10が固定されるキャブロックブラケット15が設けられている。キャブロックブラケット15は、略枠形状に屈曲形成された金属板製であり、ベース10は、その主要部分がキャブロックブラケット15の内側に収容された状態でキャブロックブラケット15に締結固定される。キャブロックブラケット15の下部は、底板部60と、底板部60の車幅方向両端縁から上方へ拡がるように傾斜して延びる左右1対の傾斜板部61,62と、底板部60の前端縁から上方へ曲折して延びる前フランジ部63と、底板部60及び傾斜板部61,62の後端縁から下方へ曲折する後フランジ部64と、後フランジ部64のうち底板部63の後縁部分から連続して下方へ延びる後側舌状板部65と、を一体的に備えている。前フランジ部63の左右両側は、左右の傾斜板部61,62の前端縁からそれぞれ曲折されている。底板部60には、キャブ1が非チルト状態のときにストライカ4の前後の支持プレート部5,6の上部と係合シャフト7とが挿通されるストライカ挿通孔16が形成されている。
【0026】
キャブロック装置3のベース10は、相対向して離間する前後のプレート部(前プレート部13と後プレート部14)を有する。前プレート部13及び後プレート部14には、車両前後方向に沿って延びる第1回転軸17が挿通され支持される第1回転軸支持孔18が形成されている。前プレート部13の下部には、キャブ1が非チルト状態のときにストライカ4の係合シャフト7を受け入れる係合シャフト収容凹部19が形成されている。
【0027】
リンク11は、相対向して離間する板状の前後のリンク部材(前リンク部材20と後リンク部材21)と、両リンク部材20,21を連結する連結部22と、を有し、ベース10の前後のプレート部13,14の間に収容される。前後のリンク部材20,21の中間部には、第1回転軸17が挿通される第1回転軸挿通孔23がそれぞれ形成され、リンク11は、キャブ1の背面1aに対して第1回転軸17を中心として回転自在に支持される。
【0028】
前リンク部材20及び後リンク部材21の一端側(図6の上端側)には、車両前後方向に沿って延びる第2回転軸24が挿通され支持される第2回転軸支持孔25がそれぞれ形成されている。後リンク部材21の一端側には、ロッド9が連結されるロッド連結軸27が後方へ突設されている。
【0029】
ロッド9は、後リンク部材21の後方で、ブラケット43を介してロッド連結軸27に連結される。キャブロックレバー8(図1に示す)の他端側(図1の下端側)が車幅方向内側(図1の右側)へ回転し、ロッド9がロック方向(図1の左方向)へ移動すると、リンク11は、キャブロックレバー8の動きに連動し、第1回転軸17を中心として、初期位置からロック位置まで、ロック方向(図7の矢印70方向)へ回転する。反対に、キャブロックレバー8の他端側が車幅方向外側へ回転し、ロッド9がロック解除方向(図1の右方向)へ移動すると、リンク11は、キャブロックレバー8の動きに連動し、第1回転軸17を中心として、ロック位置から初期位置まで、ロック解除方向(図7の矢印71方向)へ回転する。
【0030】
キャブロックフック12は、略L状の板形状を有し、リンク3の前後のリンク部材20,21の間に配置される。キャブロックフック12の一端側(図6の上端側)には、第2回転軸24が挿通される第2回転軸挿通孔28が形成され、キャブロックフック12は、リンク3に対して第2回転軸24を中心として回転自在に支持される。すなわち、キャブ1に対するキャブロックフック12の移動軌跡は、第1回転軸17を中心とした回転と第2回転軸24を中心とした回転とにより規定される。また、キャブロックフック12の他端側(図6の下端側)には、上方が開放された凹状の係合面30を有するフック部29が形成されている。
【0031】
第2回転軸24の外周には、コイル状のバネ部材40とスペーサ41とが配置される。バネ部材40の一側40aはキャブロックフック12と係合し、他側40bはリンク11の連結部22と係合する。係るバネ部材40によって、キャブロックフック12は、リンク11に対してロック方向へ付勢される。また、特に図示していないが、リンク11には、キャブロックフック12のロック解除方向への移動範囲を規制するストッパが設けられている。このため、キャブロックフック12に外力が加わっていない状態(リンク11が初期位置にある状態を含む)では、バネ部材40とストッパとによって、キャブロックフック12はリンク11に対して所定位置に維持される。
【0032】
キャブ1が非チルト状態であり、キャブロックレバー8の他端側(下端側)が車幅方向内側(右側)へ回転し、ロッド9がロック方向(左方向)へ移動し、リンク11が第1回転軸17を中心として初期位置からロック位置まで回転すると、キャブロックフック12は、リンク11の回転に伴って初期位置からロック位置までロック方向(図7の矢印70方向)へ移動する。
【0033】
初期位置からロック方向へ移動開始直後のキャブロックフック12は、バネ部材40とストッパとによってリンク11に対して所定位置に維持されたまま、第1回転軸17を中心として初期位置からロック方向へ回転する。
【0034】
キャブロックフック12のロック方向への移動が進み、キャブロックフック12の内側縁がストライカ4と当接すると、バネ部材40の付勢力を受けているキャブロックフック12は、ストライカ4に当接したままリンク11のロック方向への回転に伴ってロック方向へ移動する。係るロック方向への移動時において、ストライカ4からキャブロックフック12へロック解除方向(図7の矢印71方向)への力が加わると、キャブロックフック12は、バネ部材40の付勢力に抗してリンク11に対し第2回転軸24を中心としてロック解除方向へ回転する。この第2回転軸24を中心とした回転を伴うことにより、フック部29は、ロック方向への移動に伴って下方からストライカ4の係合シャフト7へ近づく。
【0035】
キャブロックフック12のロック方向への移動がさらに進むと、ロック位置の直前でフック部29の係合面30が係合シャフト7に下方から係合し、ロック位置でフック部29が係合シャフト7に対して上方への引張力を付与する。このため、キャブロックフック12がロック位置に達した状態では、キャブ1がシャシ側2に確実且つ堅牢にロックされる。
【0036】
一方、キャブロックレバー8の他端側が車幅方向外側へ回転し、ロッド9がロック解除方向(図1の右方向)へ移動し、リンク11が第1回転軸17を中心としてロック位置からロック解除方向へ回転すると、キャブロックフック12は、上記ロック方向への移動時と反対の移動軌跡を通り、初期位置へ戻る。
【0037】
キャブロックフック12がストライカ4と係合したロック状態において、左右の第1クッションラバー86,87は、ストライカ支持ブラケット54の左右の傾斜面部82,83とキャブロックブラケット15の左右の傾斜板部61,62との間にそれぞれ介在して弾性変形し、キャブロックブラケット15を車幅方向の斜め下方から弾性支持する。
【0038】
またロック状態において、前後の第2クッションラバー89,90は、ストライカ支持ブラケット54の前側舌状板部88の後面とキャブロックブラケット15の前フランジ部63の前面との間、及びストライカ支持ブラケット54の後フランジ部85の後面とキャブロックブラケット15の後側板状板部65との間にそれぞれ介在して弾性変形し、キャブロックブラケット15を前後から弾性支持する。すなわち、ストライカ支持ブラケット54の前側舌状板部88とキャブロックブラケット15の前フランジ部63とは、ストライカ支持ブラケット54の前部及びキャブロックブラケット15の前部の一方及び他方にそれぞれ固定的に設けられ、ロック状態において前後で相対向する1対の前側対向面部を構成する。また、ストライカ支持ブラケット54の後フランジ部85とキャブロックブラケット15の後側板状板部65とは、ストライカ支持ブラケット54の後部及びキャブロックブラケット15の後部にそれぞれ固定的に設けられ、ロック状態において前後で相対向する1対の後側対向面部を構成する。
【0039】
また、キャブロックフック12の係合面30と係合シャフト7の外周面とは、ロック状態において両者の前後方向の相対移動を規制する凹凸形状を有する。具体的には、キャブロックフック12の係合面30の中間部分が凸状に湾曲し、係合シャフト7の中間部分の外周面がキャブロックフック12の凸状に合わせて凹状に湾曲している。
【0040】
本実施形態によれば、ロック状態において、左右の第1クッションラバー86,87がキャブロックブラケット15を車幅方向の斜め下方から弾性支持するので、車幅方向(左右方向)におけるキャブ1の支持剛性は高くなる。
【0041】
また、前後の第2クッションラバー86,87がキャブロックブラケット15を前後から弾性支持するので、前後方向におけるキャブ1の支持剛性も高くなる。さらに、キャブロックフック12の係合面30及び係合シャフト7の外周面の凹凸形状によっても、前後方向におけるキャブの支持剛性が高くなる。このため、ストライカ4とキャブロックフック12との係合部分(係合シャフト7)を回転中心として発生する前後振動の周波数(マウント共振周波数)を、エンジンの回転2次成分の周波数領域よりも確実に高めることが可能となる。従って、第2クッションラバー86,87の材質や形状等を適宜設定することによって、マウント共振周波数をエンジンの回転2次成分の周波数領域よりも高めて、エンジンの振動に起因するキャブの室内の騒音悪化を防止することができる。
【0042】
例えば、エンジンの回転2次成分が90Hzにピークを持つ場合のエンジン回転数は2700rpmであり、この回転数はトラック用エンジンの常用回転域内となる。エンジンの最高回転数が3200rpmの場合、その時のエンジン回転2次成分は107Hzであるので、マウント共振周波数を107Hz以上に設定することにより、キャブの室内の騒音悪化を防止することができる。
【0043】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定をされるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲では適宜の変更が可能である。
【0044】
例えば、1対の前側対向面部と1対の後側対向面部とは、上記形態に限定されるものではない。一例として、図11に示すように、キャブロックブラケット15の底板部60の前端縁から下方へ曲折して延びる前側舌状板部91とストライカ支持ブラケット54の前フランジ部84とによって1対の前側対向面部を構成し、キャブロックブラケット15の底板部60の後端縁から上方へ曲折して延びる後フランジ部92とストライカ支持ブラケット54の後フランジ部85に固着されて上方へ延びる後側舌状板部93とによって1対の後側対向面部を構成してもよい。また、図12に示すように、キャブロックブラケット15の底板部60の前端縁から上方へ曲折して延びる前フランジ部63とストライカ支持ブラケット54の前フランジ部84に固着されて上方へ延びる前側舌状板部88とによって1対の前側対向面部を構成し、キャブロックブラケット15の底板部60の後端縁から上方へ曲折して延びる後フランジ部92とストライカ支持ブラケット54の後フランジ部85に固着されて上方へ延びる後側舌状板部93とによって1対の後側対向面部を構成してもよい。さらに、図13に示すように、キャブロックブラケット15の底板部60の前端縁から下方へ曲折して延びる前側舌状板部91とストライカ支持ブラケット54の前フランジ部84とによって1対の前側対向面部を構成し、キャブロックブラケット15の底板部60の後端縁から下方へ曲折して延びる後側舌状板部65とストライカ支持ブラケット54の後フランジ部85とによって1対の後側対向面部を構成してもよい。
【0045】
また、キャブロックフック12の係合面30の中間部分が凹状に湾曲し、係合シャフト7の中間部分の外周面がキャブロックフック12の凹状に合わせて凸状に湾曲していてもよい(図11参照)。
【符号の説明】
【0046】
1:キャブ
2:シャシ側
3:キャブロック装置
4:ストライカ
7:係合シャフト
12:キャブロックフック
15:キャブロックブラケット
16:ストライカ挿通孔
29:フック部
30:係合面
50:ラバー部
52:連結軸
54:ストライカ支持ブラケット
60:底板部
61,62:傾斜板部
63:前フランジ部
64:後フランジ部
65:後側舌状板部
81:上面部
82,83:傾斜面部
84:前フランジ部
85:後フランジ部
86,87:第1クッションラバー(第1弾性支持部材)
88:前側舌状板部
89,90:第2クッションラバー(第2弾性支持部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端部側を中心としてチルト可能なキャブの後端部側を、非チルト状態でシャシ側にロックするキャブオーバー型車両のキャブマウント構造であって、
上面部と、この上面部の車幅方向両端縁から上方へ拡がるように傾斜して延びる左右1対の傾斜面部とを有し、シャシ側に支持されるストライカ支持ブラケットと、
前記ストライカ支持ブラケットの上面部に固定されて上方へ延びるストライカと、
底板部と、この底板部の車幅方向両端縁から上方へ拡がるように傾斜して延びる左右1対の傾斜板部と、前記底板部に形成されたストライカ挿通孔とを有し、前記キャブの後端部に対して固定されるキャブロックブラケットと、
前記キャブロックブラケットに対して移動自在に支持され、キャブロックレバーの動きに連動して少なくとも初期位置とロック位置との間を移動し、前記キャブが非チルト状態であるとき、前記ロック位置では前記ストライカ挿通孔を挿通する前記ストライカと係合して前記キャブをシャシ側へロックし、前記初期位置では前記ストライカから外れて前記キャブのシャシ側へのロックを解除するキャブロックフックと、
前記キャブロックフックが前記ストライカと係合したロック状態で前記ストライカ支持ブラケットの左右の傾斜面部と前記キャブロックブラケットの左右の傾斜板部との間にそれぞれ介在し、前記キャブロックブラケットを車幅方向の斜め下方から弾性支持する左右の第1弾性支持部材と、
前記ストライカ支持ブラケットの前部及び前記キャブロックブラケットの前部の一方及び他方にそれぞれ固定的に設けられ、前記ロック状態において前後で相対向する1対の前側対向面部と、
前記ストライカ支持ブラケットの後部及び前記キャブロックブラケットの後部の一方及び他方にそれぞれ固定的に設けられ、前記ロック状態において前後で相対向する1対の後側対向面部と、
前記ロック状態で前記1対の前側対向面部の間と前記1対の後側対向面部の間とにそれぞれ介在し、前記キャブロックブラケットを前後から弾性支持する前後の第2弾性支持部材と、を備えた
ことを特徴とするキャブマウント構造。
【請求項2】
請求項1に記載のキャブオーバー型車両のキャブマウント構造であって、
前記ストライカは、前後方向に延びる棒体状の係合シャフトを有し、
前記キャブロックフックは、前記ロック位置で前記係合シャフトの外周面に下方から係合する係合面を有し、
前記キャブロックフックの係合面と前記係合シャフトの外周面とは、前記ロック状態において両者の前後方向の相対移動を規制する凹凸形状を有する
ことを特徴とするキャブマウント構造。
【請求項1】
前端部側を中心としてチルト可能なキャブの後端部側を、非チルト状態でシャシ側にロックするキャブオーバー型車両のキャブマウント構造であって、
上面部と、この上面部の車幅方向両端縁から上方へ拡がるように傾斜して延びる左右1対の傾斜面部とを有し、シャシ側に支持されるストライカ支持ブラケットと、
前記ストライカ支持ブラケットの上面部に固定されて上方へ延びるストライカと、
底板部と、この底板部の車幅方向両端縁から上方へ拡がるように傾斜して延びる左右1対の傾斜板部と、前記底板部に形成されたストライカ挿通孔とを有し、前記キャブの後端部に対して固定されるキャブロックブラケットと、
前記キャブロックブラケットに対して移動自在に支持され、キャブロックレバーの動きに連動して少なくとも初期位置とロック位置との間を移動し、前記キャブが非チルト状態であるとき、前記ロック位置では前記ストライカ挿通孔を挿通する前記ストライカと係合して前記キャブをシャシ側へロックし、前記初期位置では前記ストライカから外れて前記キャブのシャシ側へのロックを解除するキャブロックフックと、
前記キャブロックフックが前記ストライカと係合したロック状態で前記ストライカ支持ブラケットの左右の傾斜面部と前記キャブロックブラケットの左右の傾斜板部との間にそれぞれ介在し、前記キャブロックブラケットを車幅方向の斜め下方から弾性支持する左右の第1弾性支持部材と、
前記ストライカ支持ブラケットの前部及び前記キャブロックブラケットの前部の一方及び他方にそれぞれ固定的に設けられ、前記ロック状態において前後で相対向する1対の前側対向面部と、
前記ストライカ支持ブラケットの後部及び前記キャブロックブラケットの後部の一方及び他方にそれぞれ固定的に設けられ、前記ロック状態において前後で相対向する1対の後側対向面部と、
前記ロック状態で前記1対の前側対向面部の間と前記1対の後側対向面部の間とにそれぞれ介在し、前記キャブロックブラケットを前後から弾性支持する前後の第2弾性支持部材と、を備えた
ことを特徴とするキャブマウント構造。
【請求項2】
請求項1に記載のキャブオーバー型車両のキャブマウント構造であって、
前記ストライカは、前後方向に延びる棒体状の係合シャフトを有し、
前記キャブロックフックは、前記ロック位置で前記係合シャフトの外周面に下方から係合する係合面を有し、
前記キャブロックフックの係合面と前記係合シャフトの外周面とは、前記ロック状態において両者の前後方向の相対移動を規制する凹凸形状を有する
ことを特徴とするキャブマウント構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−35503(P2013−35503A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175160(P2011−175160)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
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