説明

キャリアプレートの異形孔

【課題】従来のキャリアプレートでは貫通孔が真円形のものがほとんどであり、長方形のチップ部品を挿入するとチップ部品が傾斜しやすく、製造工程において不良率が高くなるので、チップ部品の形状に合わせたキャリアプレートの貫通孔形状として、真円形ではなく、長円形などの形状のキャリアプレートが望ましいが、金型などで製造すると製造コストが高くなり、実用的ではない。
【解決手段】キャリアプレートの貫通孔をドリルによって穿孔する方法にて製作し、金型を作らずに、長円形に近い形状の貫通孔を製造コストも高くならずに製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサー、抵抗器等のチップ部品を多数直立させて並べると共に、夫々に銀やパラジウム等の所望の電極面を施すキャリアプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
この種、キャリアプレートとして、先ず下記特許文献1,2が存在する。
即ち、金属製の矩形プレートの表面に単一の真円形貫通孔を縦横に多数並列して形成し、更に夫々の貫通孔の内周孔縁全周に弾性被膜壁を被着している。
而して、この特許文献1,2によると、キャリアプレートの主体となる矩形プレートはアルミニウム等にて形成され、更に弾性被膜壁材としてはシリコーンゴムが多用されている。
【0003】
特に、このキャリアプレートの製造は、特許文献4,5に示す如く、外周フレームと一体形成したプレートの貫通孔に、金型に配置した形成ピンを挿通設置した後、プレートの外側フレーム内にシリコーンゴムを流し込んで硬化させ、続いて表面を研磨して形成するか、外周フレームと一体形成してプレートの貫通孔にシリコーンゴムを流し込んで硬化させた後、塞がれた貫通孔をドリル加工により所定の貫通孔に穿孔している。
【0004】
ところで、単一真円形の貫通孔を形成する場合、多くに用いられる製造方法は、金型内に、単一真円形の成型ピンを多数保持して成形する方法と、更にシリコーンゴムをドリルで切削して成形する方法とがあるが、単一真円形以外の多数の貫通孔を形成する上で、成型ピンにて行う場合は金型費用が非常に高価になる問題と、また金型完成後の形状変更や寸法変更が困難となる問題が夫々存する。
【0005】
特に、ドリルで切削穿孔する場合、貫通孔相互間の寸法精度仕上げが容易ではない。
即ち、このドリルで切削加工して単一真円形貫通孔を形成するものにおいては、チップ部品の横断面が角型のものについては、その角部が貫通孔の弾性被膜壁に食い込み、多少の寸法精度のバラツキにおいても正常に保持でき、電極面を被着できるが、長方形のチップ部品を単一の真円形状の貫通孔で保持しようとするとチップ部品の全周が貫通孔の弾性被膜壁の内周に均等に全面接触しなければならず、僅かな精度誤差によっても、所定の位置からずれたり、また一方向に傾くことがあり、垂直に入らずして傾斜する場合があるため、端部電極面の被膜斑や肉厚のバラ付が生じ、品質が安定しない。
【0006】
また、近年、自動車の部品等で、エンジンや車両走行の制御システム、カーナビゲーションなどの車載システムを中心に電子化・ソフト化が進み、回路実装面積削減の意に反し、チップ部品の容量が大容量化するとともに、その寸法が大きくなる傾向にある。極大のチップ部品である5750(5.7×5.0×5.0mm)を超える寸法の積層セラミックコンデンサーやチップ部品の両端面が正方形ではなく長方形のチップ部品が出現してきている。
例えば極大のチップ部品である5750では通常は長さ5.7×縦5.0×横5.0mmで両端面が正方形であるが、長さ5.7×縦5.0×横2.7mmなど端部が長方形のチップ部品が例示される。これらの両端面が長方形のチップ部品をキャリアプレートに挿入する際に、従来の横180mm×縦280mm×厚さ9mmのキャリアプレートをマニュアルでハンドリングし、外部電極を塗布する装置(例えば、Termination Module2001(Electro Scientific Industries,Inc.(米国)製商品名)では、φ6.83mm程度の挿入孔形成がプレート強度保持の関係で最大径であり、1枚あたりの取り個数は608個(縦32個×横19個の孔を形成)が限度であった。従ってφ6.83mmを超えるφ7.00〜8.50mm程度の大きい径の貫通孔を要する極大チップ部品用のキャリアプレートでは、1枚あたりの取り個数が160個(縦16個×横10個の孔を形成)となってしまい、生産性が1/4と大幅に落ちてしまうので、取り個数の多いキャリアプレートが望まれている。
【0007】
そこで、キャリアプレートの弾性壁からなる貫通孔を単一の真円形とせず、長方形や鼓形にすることにより端面が長方形のチップ部品に対応できるが、反面ドリル等にて切削加工して貫通孔を形成する製造方法は適用できず、金型内に成形ピンを保持して、成型時に貫通孔を形成する必要があるが、成型ピンを円筒状ではなく長方形あるいは鼓形にしなくてはならず、成型ピンのコストが極端に高くなり実用に即しないという不具合があった。
【0008】
【特許文献】特公昭62−11488号・・・・・文献1 特公平3−76778号・・・・・・文献2 特許開平2004−17549号・・文献3 特開2006−344826号・・・文献4 特開2009−39850号・・・・文献5
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
キャリアプレートの表面に並列して複数形成される単一真円形の貫通孔を多数の成型ピンにて行うことに伴う金型費用の問題点及び当該金型完成後の形状変更や寸法調整の問題点、更には長方形のチップ部品を単一の真円形状の貫通孔にて保持することによるチップ部品全周が貫通孔の弾性被膜壁の内周に均等に全面接触することの難易性及び精度誤差、更には位置ずれに伴う一方向への傾きから生じる端部への電極面の被着斑や肉厚のバラ付等、諸々の課題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、金属製の矩形プレートと、該矩形プレートの表面に縦横に並列して複数貫通形成された第1貫通孔と、該第一貫通孔と部分的に重畳させて稜線を形成する第2貫通孔と、更に第1貫通孔と第2貫通孔の内周孔縁全周及び稜線に亘って被着されたシリコーンゴム、合成樹脂等の弾性被膜壁と、前記縦横貫通孔に夫々挿入直立して整列支持されるコンデンサー、抵抗器等の角形チップ部品とで成し、而も角型チップ部品を挿入直立した際、該角型チップ部品の平面外壁を前記第1貫通孔と第2貫通孔との稜線における弾性被膜壁に点接圧させ、且つ角型チップ部品の端面に電極面を付着させたことを特徴とするものである。
【0011】
更に本発明は、第1貫通孔と第2貫通孔とを同一径として、角型チップ部品は第1貫通孔と第2貫通孔に亘る長方形としたことを特徴とするものである。
【0012】
更に本発明は、第1貫通孔と第2貫通孔とに、更に中間に第3貫通孔を介在させ、角形チップ部品は第1貫通孔、第2貫通孔、第3貫通孔に亘る長方形としたことを特徴とするものである。
【0013】
また本発明は、第1貫通孔を大径とし、その円周上に複数小径の第2貫通孔を配列したことを特徴とするものである。
【0014】
また本発明は、第1貫通孔と第2貫通孔とを同一径として部分的に重畳させた相互間の距離比率を、1:0.25〜1:0.95としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
(1)請求項1により、角型チップ部品の平面外壁が第1貫通孔と第2貫通孔との稜線における弾性被膜壁に点接圧して多少の自由性、即ち例え貫通孔が傾斜した状態に形成されても、その傾きに強制されず、所定の位置を保持し、チップ部品が一方向に傾いたり、更には所定位置から傾斜することもない。
特に、角型チップ部品の傾きによって、角型チップ部品の端面への薄膜である電極面の被着形成においても、その傾斜によって肉厚にバラツキが生じることもなく、品質の安定化が図れる。
【0016】
(2)請求項2により、第1貫通孔と第2貫通孔とは同一径ドリルにて穿孔できるから、異径ドリルによる穿孔作業に比し、効率化が図れる。
【0017】
(3)請求項3により、角型チップ部品の更なる長方形に対応できる。
【0018】
(4)請求項4により、各貫通孔を同一径にしたものに比し、小径の貫通孔によって、孔間の距離を狭くでき、同一径の貫通孔を複数形成位置させるものに比し、キャリアプレートへのチップ部品を多く直立させることができ、生産性が向上する。
【0019】
(5)請求項5により、長方形のチップを最適な直立状態に維持セットできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】 本発明キャリアプレートの一部切欠斜視図
【図2】 同上の異なる実施例を示す拡大部分斜視図
【図3】 同上の拡大部分断面図
【図4】 角形チップ部品の拡大斜視図
【図5】 貫通孔を示す拡大図
【図6】 同上の異なる実施例を示す拡大図
【図7】 同上の異なる実施例を示す拡大図
【図8】 同上の異なる実施例を示す拡大図
【図9】 同上の異なる実施例を示す拡大図
【図10】 同上の異なる実施例を示す拡大図
【図11】 第1貫通孔と第2貫通孔との重畳図
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下本発明を実施例と掲げた図面に基づいて説明すると、図1は本発明キャリアプレートの一部切欠斜視図であって、主体となる矩形プレート1はアルミニウム等の金属製となっている。
この矩形プレート1の表面には、横線X−Xと縦線Y−Yの夫々の交点には矩形プレート1の厚み方向に貫通して複数の貫通孔2を形成している。
而して、この貫通孔2は第1貫通孔2aと、該第1貫通孔2aと部分的に重畳させて稜線Hを形成する第2貫通孔2bとより成っている。
勿論、この横線X−Xと、縦線Y−Yは、実施例における説明上、仮想して図面に記したものであって、特定するものではない。
【0022】
図3は、矩形プレート1を厚み方向に断面した拡大断面図であって、貫通孔2、即ち第1貫通孔2aと第2貫通孔2bの内周孔縁全周R及び稜線Hに亘って被着されたシリコーンゴム、合成樹脂等の弾性被膜壁3を被着している。
この弾性被膜壁3は、矩形プレート1の上下表面を凹状に形成し、この凹部1aにシリコーンゴム、合成樹脂等の弾性材料を流し込み、所定位置をドリルにより穿孔して弾性被膜壁3を被着形成する。
図4は貫通孔2に挿入直立されるコンデンサー、抵抗器等の角型チップ部品4を示しており、銀、パラジウム等の所望の電極面5をメッキ蒸着等によって付着形成している。
【0023】
而して、図5に示す如く、この角型チップ部品4の平面外壁4aが第1貫通孔2aと第2貫通孔2bとの部分的に重畳して形成された稜線H部分の弾性被膜壁3に点接圧し、その接圧は弾性被膜壁3により弾性的に保持されることとなる。
即ち、その弾性許容範囲内において、角型チップ部品4の直立状態が是正され、所定のセット状態を保持される。
【0024】
図5は、第1貫通孔2aと第2貫通孔2bとを同一径とした実施例を示す、図6は、更に同一径の第3貫通孔2cを連ねたものであり、図7は、第3貫通孔2cを小径としたもの、図8は、角型チップ部品4の長方形タイプに適合する様に、第2貫通孔2bを小径として四隅に夫々位置させたもの、図9は、図8に類して角型チップ部品4の正方形タイプに対応したもの、図10は、図9に類したものである。
【0025】
図11は、特に図1における第1貫通孔2aと第2貫通孔2bとを同一径Rとし、その重畳させた相互間の距離Pの比率を1:0.25〜1:0.95とすることが最適であるとしている。
【0026】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、中心間距離などはチップサイズに併せて変更することができる。また形状も例えば、達磨状配設では二孔だけではなく直列に並んだ三孔でもよいし、縦横二個づつ並んだ四孔でもよい。
【発明の効果】
【0027】
このように本発明のキャリアプレートは、両端面が長方形のチップ部品においても効率よく生産できる等の効果を奏する。
【符号の説明】
1 プレート本体
2 電子部品支持体
3 外側フレーム
4 プレート体の孔
5 貫通孔
6 位置決め孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の矩形プレートと、該矩形プレートの表面に縦横に並列して複数貫通形成された第1貫通孔と、該第1貫通孔と部分的に重畳させて稜線を形成する第2貫通孔と、更に第1貫通孔と第2貫通孔の内周孔縁全周及び稜線に亘って被着されたシリコーンゴム、合成樹脂等の弾性被膜壁と、前記縦横貫通孔に夫々挿入直列して整列支持されるコンデンサー、抵抗器等の角型チップ部品とで成し、而も角型チップ部品を挿入直立した際、該角型チップ部品の平面外壁を前記第1貫通孔と第2貫通孔との稜線における弾性被膜壁に点接圧させ、且つ角型チップ部品の端面に電極面を付着させたことを特徴とするキャリアプレート。
【請求項2】
前記第1貫通孔と第2貫通孔は、同一径として、角型チップ部品は第1貫通孔と第2貫通孔に亘る長方形としたことを特徴とする請求項1記載のキャリアプレート。
【請求項3】
前記第1貫通孔と第2貫通孔は、更に中間に第3貫通孔を介在させ、角型チップ部品は第1貫通孔、第2貫通孔、第3貫通孔に亘る長方形としたことを特徴とする請求項2記載のキャリアプレート。
【請求項4】
前記第1貫通孔と第2貫通孔は、第1貫通孔を大径とし、その円周上に複数小径の第2貫通孔を配列したことを特徴とする請求項1記載のキャリアプレート。
【請求項5】
前記第1貫通孔と第2貫通孔は、同一径として部分的に重畳させた相互間の距離比率を、1:0.25〜1:0.95としたことを特徴とする請求項1記載のキャリアプレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−42100(P2013−42100A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187953(P2011−187953)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(511211933)長谷川精機株式会社 (1)
【Fターム(参考)】