説明

キャリヤテープ製造装置およびキャリヤテープ製造法

【課題】 テープ各部の寸法精度を高め凹部突出部の形状を損なうことのない多連の紙製プレスキャリヤテープの製造装置及び紙製プレスキャリヤテープ製造法を提供する。
【解決手段】 多連のプレス成型手段によりプレス成型された多数の凹部列を有する紙製基材を送り方向で裁断する手段において、図1に示すように紙製基材の幅方向の両端を挟むパイロットと凹部突出部を通過させるに十分な溝をダイプレート上に設置することで、該パイロットにより移送の際の紙製基材の横ぶれや裁断時に刃が押し付けられる際の紙製基材の幅方向の広がりを防止しテープ各部の寸法精度を高めるとともに、該溝により裁断手段を移送する際に凹部突出部の形状を維持することができる紙製プレスキャリヤテープ製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を収納して搬送するキャリヤテープの製造方法、およびその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に使用されているチップ部品(以後部品と呼ぶ)は、長さと幅が年々小型化されてきた。現在ではこのような小型の部品は、人手によって電子機器に装着することが困難であるため、自動実装装置が開発された。しかし、上記のような小型の部品を自動実装装置によって正確で、しかも短時間に取り付けられるようにするためには、自動実装装置だけではなく、キャリヤテ―プの寸法精度や強度および紙粉やケバがないなどの品質も問題になる。従来、電子部品を収納して搬送する紙製キャリヤテープとして、紙製基材に貫通穴を成型し、この貫通孔内に電子部品を収納した状態で基材の両面に蓋材を取付けたものが知られている。この場合、基材の両面に蓋材を取付けているが、基材の両面に蓋材を取付けることは煩雑となる。最近紙製基材に凹部をパンチによりプレス成型し、基材の片面だけ蓋材を取付ける構造の簡単な紙製キャリヤテープがある。以後紙製プレスキャリヤテープと呼ぶ。この場合送り方向に沿って配置された多数の収納凹部に小部品を収納し、収納凹部の表面を被覆テープで覆って小部品を包装する紙製キャリヤテープである。 同時に凹部列の横にテープを移送するための搬送用貫通孔の列を成型する。
【0003】
上記のプレス成型手段は紙製基材の送り方向に一列の凹部と貫通孔を成型し紙製プレスキャリヤテープを製造するものであった。単連のプレスキャリヤ製造装置と呼ぶ。紙製基材からパンチにより凹部を成型する場合、原料の紙が被圧縮性であることや紙繊維の性質から成型した凹部の形状が一定せず、また成型時の紙粉などが電子部品の収納、実装時に悪影響を与えることが指摘されている。これまで上記課題を解決すべく種々のプレス成型手段が開発されてきた。
【0004】
電子部品が年々小型化し、大量使用されてきており、プレスキャリヤテープもさらに製造効率を上げ大量生産することで製造コストを下げる目的で、広幅の紙製基材テープの幅方向に多数の収納凹部を成型する金型を設置したプレス成型手段と該紙製基材を収納凹部と搬送用貫通孔を持つように送り方向に裁断(スリットと呼ぶ)する裁断手段により紙製プレスキャリヤテープを製造する製造法および製造装置が検討されてきた。幅方向に多数の収納凹部を成型する手段と裁断する手段を有するキャリヤテープ製造装置を多連のプレスキャリヤテープ製造装置と呼ぶ。幅方向に多数の収納凹部を成型する手段を多連のプレス成型手段と呼ぶ。
【0005】
しかしながら多連の紙製プレスキャリヤテープ製造装置ではキャリヤテープ側面から貫通孔の中心までの距離(E寸と呼ぶ)および凹部などのテープ各部の寸法精度の低下が問題となる。E寸および凹部の寸法精度の低下は自動電子部品収納・実装上問題となり、多連のプレス金型を設置しても必ずしも多連から期待される製造効率および生産量の向上につながらなかった。鋭意原因を解明した結果、裁断手段において、紙製基材の送りによる紙製基材の横ぶれおよび紙製基材に刃を押し付け送り方向に裁断を行う際の紙製基材の幅方向での広がりにより紙製プレスキャリヤテープのE寸などの寸法精度が単連に比べ低下することが判明した。プレス成型された紙製基材が裁断手段を移送される際に、紙製基材の他の底面よりの突出部(以後凹部突出部と呼ぶ。)がダイプレート表面と接触することにより凹部の形状が損なわれ寸法精度が低下することも判明した。最近はさらに電子部品が微細化してきており、寸法精度のさらなる向上が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
5連以上の多連のプレスキャリヤテープ製造装置において解決しようとする課題として下記のものがあげられる。(1)裁断手段において、紙製基材の送りにより紙製基材が横ぶれし、紙製プレスキャリヤテープのE寸などの寸法精度が単連に比べ低下する。(2)裁断手段において、紙製基材に刃を押し付け、送り方向に多数の裁断を行う際に紙製基材が幅方向に広がり紙製プレスキャリヤテープのE寸などの寸法精度が単連に比べ低下する。(3)裁断手段において、凹部突出部がダイプレートと接し凹部の形状が崩れ凹部の寸法精度が低下する。以上にあげた課題を解決して多連プレス金型を用いて紙製プレスキャリヤテープを精度よく安価に大量生産する製造法及び製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は多連のプレス成型手段により幅方向に凹部の列を多数成型された広幅の紙製基材を送り方向に裁断する手段において、紙製基材の幅方向の両端にパイロットを設置するとともに凹部の突出部が通過するに十分な形状と寸法を有する溝をダイプレートに設置することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は請求項1のパイロットが下降する上型に設置され、その形状が送り方向に長い直方体であって下降時に紙製基材と接する部分が底面から上部に向かって傾斜するテーパー面であり、テーパー面以外の側面が紙製基材の厚み以上の高さを有する平面である角形パイロットであることと下降する該テーパー面を収納するに十分な空隙部をダイプレートに設置することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は請求項1のパイロットが下降する上型に設置され、下降時に紙製基材と接する部分が底面から上部に向かって傾斜するテーパー面であり、テーパー面以外の側面が紙製基材の厚み以上の高さを有する平面である角柱が2本以上並んだ形状であることと下降する該テーパー面部分を収納するに十分な空隙部をダイプレートに設置することを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は紙製基材を掴んでダイプレートに送り出し保持する工程と、紙製基材の幅方向に多数並んだ角パンチ列により基材に凹部を成型し同時に同数の丸パンチ列により貫通孔を成型する工程と、成型された紙製基材を送り方向で裁断する工程を備え、裁断工程では紙製基材の幅方向の両端にパイロットを設け、凹部の突出部が通過するに十分な溝をダイプレートに設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、多数の凹部の列と貫通孔の列を幅方向に持つ広幅紙製基材を裁断する際に起こる以下の課題を解決する。(1)裁断手段において紙製基材の送りの際に紙製基材をパイロットにてはさむことにより横ぶれが発生せず、E寸などの寸法精度を低下させない。(2)裁断手段において、刃が紙製基材を押しつけ送り方向に裁断する際に紙製基材をはさむパイロットが幅方向に紙製基材が広がることを抑え、E寸などの寸法精度を低下させない。(3)裁断手段を紙製基材が通過する際にダイプレートに溝を設置することで、凹部突出部がダイプレート表面とすれて凹部の寸法精度を損なうことなく裁断することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、送り方向に長い直方体のパイロットが下降する上型に設置されおり多連のプレス成型と一体になって裁断手段での紙製基材の広がり及び横ぶれを抑えることで寸法精度を高めることができる。下降時に紙製基材と接する部分がテーパー面であり、さらに下降する際にはテーパー面を有する直方体の下部はダイプレートに設置した空隙部に収納され上部の平面部で紙製基材と接するために寸法精度を向上するとともに紙製基材の巾方向の動きに伴う摩擦を軽減し紙製基材の端面の損傷を無くすことができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、角柱形状で下降時に紙製基材と接する部分がテーパー面であるパイロットが2本以上送り方向に並ぶことにより、低い摩擦で端面の損傷が少なく寸法精度を向上することができる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、多連のプレスキャリヤテープの製造を大量に安価に実施することができるとともに製品の寸法精度や凹部の形状を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】多連金型概略図。本図は実施例1の20連金型である。
【図2】多連金型概略図。本図は実施例2の20連金型である。
【図3】紙製プレスキャリヤテープ体。
【図4】実施例1のパイロット形状図。
【図5】実施例2のパイロット形状図。
【図6】実施例1のプレス模式図。
【図7】実施例2のプレス模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面を参照して本発明の実施例を説明する。本発明の実施例では、限定した紙製基材、装置、金型を使用したが本発明の実施形態では記載した内容に限定するものではないことは自明である。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の実施例1について、図1、図4及び図6を参照し、図3に示した紙製キャリヤテープ製造について具体的に説明する。
【0018】
実施例1に使用した多連のプレス成型手段は両端に14ストリッパーと接する15ハイトブロックと20列からなる貫通孔成型用のダイを設置した12ダイプレートと、開孔した14ストリッパーと、20列の凹部成型用17角パンチと20列の貫通孔成型用16丸パンチを設置した13パンチプレートを有する金型より構成されている。該金型は本発明では耐久性を向上するために図1に示したように、9紙製基材の送り方向に8個のダイを幅方向に4列持つブロック面を送り方向に重ならないように交互に5面有する12ダイプレートと9紙製基材の送り方向に凹部成型用17角パンチが16個および並列に貫通孔成型用16丸パンチが8個並んだ列を9紙製基材の幅方向に各4列持つブロック面を9紙製基材の送り方向に重ならないように交互に5面有する。
【0019】
王子製紙製HJ60(S)(幅164mm、厚み0.60mm)を紙製基材ロールより送り出し、多連プレス金型に移送する。図1に示した14ストリッパーが下降する際に12ダイプレートに設置した15ハイトブロックと接し12ダイプレートと14ストリッパーの間に空隙を形成し、9紙製基材を載置した。図6に示した模式図のごとく13パンチプレートが下降し17角パンチが9紙製基材を押し込み16個の凹部を20列成型した。同時に貫通孔成型用16丸パンチが9紙製基材を打ち抜き、8個の21貫通孔を20列成型した(図示せず)。
【0020】
20列の22凹部と20列の21貫通孔を有する9紙製基材をスリット手段に移送し図1に示した18スリットカットパンチを9紙製基材に押し付け裁断する。裁断する際には図4に示したテーパー面を持つ送り方向に長い直方体でありあらかじめ角を面取り(図示せず)した11a角パイロットAが下降し下部の30aテーパー面Aで9紙製基材を摩擦なく12ダイプレートに載置し上部の31a平面部分Aで挟みスリット中の9紙製基材の幅方向の広がり及び横ぶれを抑えた。また成型した25凹部突出部は図1に示したスリット手段での12ダイプレートに設置した20a溝Aの中を通過した。
【0021】
実施例1で製造した紙製キャリヤテープのスリット巾とE寸寸法および凹部の縦、横、深さ寸法を含むテープ寸法を画像測定機で30倍拡大し、自動計測した。すべて規格値内であった。
【実施例2】
【0022】
実施例2について、図2、図5及び図7を参照し、図3に示した紙製キャリヤテープ製造を説明する。
【0023】
実施例2に使用した多連のプレス成型手段は図2に示した多連プレス金型で構成する。該金型は9紙製基材の送り方向に8個のダイを幅方向に4列持つブロック面を送り方向に重ならないように交互に5面有する12ダイプレートと9紙製基材の送り方向に凹部成型用17角パンチが16個および並列に貫通孔成型用16丸パンチが8個並んだ列を9紙製基材の幅方向に各4列持つブロック面を9紙製基材の送り方向に重ならないように交互に5面有する。図2に示したように12ダイプレートには20b溝Bを設置し、プレス成型手段において17角パンチが9紙製基材を押しこみ、スリット手段において25凹部突出部が通過する。
【0024】
王子製紙製HJ42(S)(幅164mm、厚み0.42mm)を紙製基材ロールより送り出し、12ダイプレートに載置する。図7に示した模式図のごとく、13パンチプレートが下降し17角パンチが9紙製基材を12ダイプレートに設置した20b溝Bに押し込み16個の22凹部を20列成型した。同時に貫通孔成型用16丸パンチが9紙製基材を打ち抜き、8個の21貫通孔を20列成型した(図示せず)。
【0025】
20列の22凹部と20列の21貫通孔を有する9紙製基材をスリット手段に移送し、18スリットカットパンチを9紙製基材に押し付け裁断する。裁断する際には図5に示した30bテーパー面Bを持ちあらかじめ角を面取り(図示せず)した2本の11b角パイロットBが下降し下部の30bテーパー面Bで9紙製基材を摩擦なく12ダイプレートに載置し上部31b平面部分Bで挟みスリット中の9紙製基材の幅方向の広がり及び横ぶれを抑えた。また成型した25凹部突出部は図2に示したスリット手段での12ダイプレートに設置した20b溝Bの中を通過した。
【0026】
実施例2で製造した紙製キャリヤテープのスリット巾とE寸寸法および凹部の縦、横、深さ寸法を含むテープ寸法を画像測定機で30倍拡大し、自動計測した。すべて規格値内であった。
【0027】
実施例ではパイロットを上型に設置してストリッパーの下降時に紙製基材をはさみ巾方向の広がりや横ぶれを抑えたがダイプレートにパイロットを設置してもよい。実施例では直方体および角柱形パイロットを例示したが、円柱形のパイロットを複数設置しても同等の効果を期待できる。ダイプレートに設置した溝の形状はプレス成型した凹部の形状に合わせ変えることができる。あらかじめ凹部突出部の寸法以上の形状溝形にすることも可能である。図1および図2に例示したように多連の金型にエアー配管することで紙粉を除去して、後の電子部品収納工程や実装工程でのトラブルを解消することができた。
【産業上の利用可能性】
【0028】
電子部品を収納する凹部と搬送する貫通孔を有する紙製プレスキャリヤテープの製造を大量、安価にかつ精度よく生産することができる。さらに紙製テープ材料の生産に広く応用することができる。
【符号の説明】
【0029】
9 紙製基材
10 紙製キャリヤテープ
11a 角パイロットA
11b 角パイロットB
12 ダイプレート
13 パンチプレート
14 ストリッパー
15 ハイトブロック
16 丸パンチ
17 角パンチ
18 スリットカットパンチ
19 エアー配管
20a 溝A
20b 溝B
21 貫通孔
22 凹部
23 凹部底面
24 紙製基材底面
25 凹部突出部
30a テーパー面A
30b テーパー面B
31a 平面部分A
31b 平面部分B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多連のプレス成型手段により幅方向に凹部の列を多数成型された広幅の紙製基材を送り方向に裁断する手段において、紙製基材の幅方向の両端にパイロットを設置するとともに凹部の突出部が通過するに十分な形状と寸法を有する溝をダイプレートに設置することを特徴とする紙製プレスキャリヤテープ製造装置。
【請求項2】
請求項1のパイロットが下降する上型に設置され、その形状が送り方向に長い直方体であって下降時に紙製基材と接する部分が底面から上部に向かって傾斜するテーパー面であり、テーパー面以外の側面が紙製基材の厚み以上の高さを有する平面である角形パイロットであることと下降する該テーパー面部分を収納するに十分な空隙部をダイプレートに設置することを特徴とする請求項1の紙製プレスキャリヤテープ製造装置。
【請求項3】
請求項1のパイロットが下降する上型に設置され、下降時に紙製基材と接する部分が底面から上部に向かって傾斜するテーパー面であり、テーパー面以外の側面が紙製基材の厚み以上の高さを有する平面である角柱が2本以上並んだ形状であることと下降する該テーパー面部分を収納するに十分な空隙部をダイプレートに設置することを特徴とする請求項1の紙製プレスキャリヤテープ製造装置。
【請求項4】
紙製基材を掴んでダイプレートに送り出し載置する工程と、紙製基材の幅方向に多数並んだ角パンチ列により基材に凹部を成型し同時に丸パンチ列により貫通孔を成型する工程と、成型された紙製基材を送り方向で裁断する工程を備え、裁断工程では紙製基材の幅方向の両端にパイロットを設け、凹部の突出部が通過するに十分な溝をダイプレートに設置することを特徴とする紙製プレスキャリヤテープ製造法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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