説明

キャンディの製法

【課題】結晶化したキシリトールが望みの形状に成型され、綺麗な形状を有するとともに、キシリトールの冷涼感が発揮された美味しいキャンディを容易に工業的に連続的に製造できる方法の提供。
【解決手段】主成分のキシリトールと、主成分のキシリトールに対して所定量の単糖類、二糖類およびそれらを還元した糖アルコール類から選ばれる少なくとも1つの成分、並びに食用乳化剤を含む粘度低下剤とを必須成分として含有する層状のキシリトール結晶部2を、対応する2つの層状の公知のキャンディ部分3の間にサンドイッチ積層する。粘度低下剤の量は、キシリトールの量に対して0.01〜20質量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規キャンディの製法に関するものであり、さらに詳しくは、綺麗な形状を有し、商品価値が高く、キシリトールの冷涼感が発揮された、美味しい新規キャンディの製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、キシリトールは味質の良さに加えて、キシリトールは結晶性の糖アルコールであるので、結晶の溶解熱で舐めている時に冷涼感が得られることや虫歯予防効果の点でキャンディ業界で注目されている原料であり、キシリトールを含有するキャンディも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、キシリトールを含有するキャンディを製造する際に、溶融状態のキシリトールなどの成分に種結晶を投入した直後、あるいは攪拌によりキシリトールの微細結晶を析出させた直後から、キシリトールの結晶化、すなわち溶融状態にあったキャンディの固化が不可逆的かつ非常に短時間に進行するため、流動性がなくなり加工性が悪化するために、キャンディを工業的に連続して大量生産することは不可能であった。キシリトールの急激な結晶化の進行をコントロールするためには、極めて厳密な温度コントロールが要求されるので、通常のキャンディの工業的生産設備では、事実上非常に困難なものであった。
【0004】
前記加工性の悪さの問題を回避するため、キシリトールに対してソルビトールを配合することにより、工業的大量生産が可能な方法が本発明者らによって提案されている(例えば、特許文献2参照)。すなわちソルビトールを配合したキシリトール成分を溶融した後、融点以下の温度に冷却し、結晶を析出させた後、型に流し込み冷却固化する方法である。
【0005】
しかしながら、この方法によると、ソルビトールを配合したキシリトール成分を溶融した後、融点以下の温度に冷却し、少なくとも一部のキシリトールの結晶を析出させて得られるスラリーは、当初は流動性があるものの、粘度が高くかつ不安定であるので、加工性が悪く、加工性を維持するためには温度を±5℃に制御しなければならないので工業的には難しく、このスラリーを例えば型に流し込んでデポジットして常温まで冷却して固化して得られる結晶化したキシリトールは望みの形状に成型できず、変形したものになり、綺麗な形状のキャンディを工業的に安定して連続的に得られないという問題があった。
【0006】
図6は、従来のキャンディの例を模式的に説明する断面説明図である。図7は、従来のキャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。図6および図7において、1Eおよび1Fはそれぞれ従来のキャンディの例を示す。公知のキャンディ組成物を溶融混合後、型にデポジットし、その上に主成分のキシリトールに対してソルビトールを配合し、溶融混合した後、キシリトールの少なくとも一部を結晶化させたスラリーをデポジットし、さらにその上に公知のキャンディ組成物を溶融混合後デポジットし、常温まで冷却して固化して、キシリトール結晶部2Eを公知のキャンディ部分3でサンドイッチ積層した3層構造のキャンディ1Eおよびキャンディ1Fが得られる。しかし得られた従来のキャンディ1Eおよびキャンディ1Fのキシリトール結晶部2Eおよびキシリトール結晶部2Fはそれぞれ図6および図7に示したように、変形したものになってしまい、綺麗な形状のキャンディが得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−47222号公報
【特許文献2】特許第3460187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来の問題を解決し、結晶化したキシリトールは望みの形状に成型でき、綺麗な形状を有するとともに、キシリトールの冷涼感が発揮された美味しいキャンディを容易に工業的に連続的に製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解消するための本発明の請求項1に記載の発明は、主成分のキシリトールに対して単糖類、二糖類およびそれらを還元した糖アルコール類から選ばれる少なくとも1つの成分と、食用乳化剤を含む粘度低下剤と、を同時にあるいは分けて溶融混合して主成分のキシリトールに前記粘度低下剤を分散状態で存在させた後、キシリトールの少なくとも一部を結晶化させた流動性スラリーとし、この流動性スラリーを型にデポジットして常温まで冷却して固化して、結晶部と非結晶部とを含むキシリトール結晶部を備えたキャンディを製造する工程を有し、
前記粘度低下剤の量は、キシリトールの量に対して0.01〜20質量%であるキャンディの製法である。
【0010】
本発明の請求項2に記載の発明は、キャンディ組成物を溶融混合後、型にデポジットし、その上に主成分のキシリトールに対して単糖類、二糖類およびそれらを還元した糖アルコール類から選ばれる少なくとも1つの成分と、食用乳化剤を含む粘度低下剤とを同時にあるいは分けて溶融混合して主成分のキシリトールに前記粘度低下剤を分散状態で存在させた後、キシリトールの少なくとも一部を結晶化させた流動性スラリーをデポジットして常温まで冷却して固化して、結晶部と非結晶部とを含むキシリトール結晶部を備えた2層構造のキャンディを製造するか、あるいはキャンディ組成物を溶融混合後、型にデポジットし、その上に前記流動性スラリーをデポジットし、さらにその上にキャンディ組成物を溶融混合後デポジットし、常温まで冷却して固化して、結晶部と非結晶部とを含むキシリトール結晶部を備えた3層構造のキャンディを製造する工程を有し、
前記粘度低下剤の量は、キシリトールの量に対して0.01〜20質量%であるキャンディの製法である。
【0011】
本発明の請求項3に記載の発明において、前記食用乳化剤のHLBが0〜8である。
【0012】
本発明の請求項4に記載の発明において、前記単糖類がグルコース、フラクトース、エリトロース、キシロースから選ばれる少なくとも1つであり、前記二糖類がシュークロース、マルトース、ラクトース、パラチノースから選ばれる少なくとも1つであり、前記糖アルコール類がソルビトール、エリスリトール、マルチトール、還元パラチノース、ラクチトール、マンニトールから選ばれる少なくとも1つである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載の製法で製造される新規キャンディは、主成分のキシリトールと、主成分のキシリトールに対して所定量の単糖類、二糖類およびそれらを還元した糖アルコール類から選ばれる少なくとも1つの成分および粘度低下剤とを必須成分として含有するキシリトール結晶部を備えたことを特徴とするものであり、粘度低下剤を配合したのでこれらの成分を溶融した後、融点以下の温度に冷却し、少なくとも一部のキシリトールの結晶を析出させて得られるスラリーの粘度が低下し、安定的な流動性および優れた加工性を付与することができ、このスラリーを例えば型に流し込んでデポジットして常温まで冷却して固化して得られる結晶化したキシリトールは望みの形状に成型できるので、綺麗な形状を有するとともに、キシリトールの冷涼感が発揮され、商品価値が高く、美味しい新規キャンディが得られるという、顕著な効果を奏する。
【0014】
また、前記粘度低下剤が食用乳化剤から選ばれる粘度低下剤であることを特徴とするものであり、前記スラリーの粘度を確実に低下させ、安定的な流動性および優れた加工性を付与することができる上、食用乳化剤から選ばれる粘度低下剤を用いたので安全性が高く、入手が容易で安価であるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0015】
また、主成分のキシリトールに対して0.01〜20質量%の前記粘度低下剤を含有することを特徴とするものであり、スラリーの粘度を確実に低下させ、安定的な流動性および優れた加工性を付与することができるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0016】
本発明の請求項1に記載の製法によれば、以上のように、綺麗な形状を有するとともに、キシリトールの冷涼感が発揮され、商品価値が高く、美味しい新規キャンディを容易に工業的に連続的に製造できるという、顕著な効果を奏する。
【0017】
本発明の請求項2に記載の製法で製造されるキャンディは、口腔内で舐めた時に層状のキシリトール結晶部が融解する吸熱作用により、キシリトールを単純に公知のキャンディに混合するだけでは得られないキシリトールの冷涼感が格段に発揮されるとともに、積層した公知のキャンディ部分の美味しさも同時にあるいは舐め初めと終わりでは食感が異なるなど時間をおいて変化する美味しさを味わうことができ、綺麗な形状を有するとともに、商品価値が高く、美味しい新規キャンディを容易に工業的に連続的に製造できるという、顕著な効果を奏する。
【0018】
本発明の請求項3に記載の発明は、前記食用乳化剤のHLBが0〜8であることを特徴とするものであり、キシルトールへの混合、分散性が向上し攪拌などの分散手段により容易にキシルトール中へ分散できるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0019】
本発明の請求項4に記載の発明は、前記単糖類がグルコース、フラクトース、エリトロース、キシロースから選ばれる少なくとも1つであり、前記二糖類がシュークロース、マルトース、ラクトース、パラチノースから選ばれる少なくとも1つであり、前記糖アルコール類がソルビトール、エリスリトール、マルチトール、還元パラチノース、ラクチトール、マンニトールから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とするものであり、キシリトールの急激な結晶化を確実に抑制できる上、取り扱い性がよく、入手が容易で安価であるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の製法で製造される新規キャンディの1例を模式的に説明する断面説明図である。
【図2】本発明の製法で製造される新規キャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。
【図3】本発明の製法で製造される新規キャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。
【図4】本発明の製法で製造される新規キャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。
【図5】本発明の製法で製造される新規キャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。
【図6】従来のキャンディの例を模式的に説明する断面説明図である。
【図7】従来のキャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に本発明を図を用いて実施の形態に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の新規キャンディの1例を模式的に説明する断面説明図である。図1において、1は本発明の新規キャンディを示し、2は、主成分のキシリトールと、主成分のキシリトールに対して所定量の単糖類、二糖類およびそれらを還元した糖アルコール類から選ばれる少なくとも1つの成分および粘度低下剤とを必須成分として含有する層状のキシリトール結晶部を示し、3は層状の公知のキャンディ部分を示し、層状のキシリトール結晶部2が対応する2つの層状の公知のキャンディ部分3の間にサンドイッチされている。キシリトール結晶部2は望みの形状に成型されており、本発明の新規キャンディ1は商品価値の高い綺麗な形状を有している。
【0022】
図2は、本発明の新規キャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。図2において、1Aは本発明の新規キャンディを示し、2は図1に示した層状のキシリトール結晶部を示し、3は図1に示した層状の公知のキャンディ部分を示し、層状のキシリトール結晶部2が対応する層状の公知のキャンディ部分3に積層されている。層状のキシリトール結晶部2は望みの形状に成型されており、本発明の新規キャンディ1Aは商品価値の高い綺麗な形状を有している。
【0023】
図3は、本発明の新規キャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。図3において、1Bは本発明の新規キャンディを示し、2は球状のキシリトール結晶部を示し、3は2の球状のキシリトール結晶部を被覆する公知のキャンディ部分を示す。球状のキシリトール結晶部2は望みの形状に成型されており、本発明の新規キャンディ1Bは商品価値の高い綺麗な形状を有している。
【0024】
図4は、本発明の新規キャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。図4において、1Cは本発明の新規キャンディを示し、2は柱状のキシリトール結晶部を示し、3は2の柱状のキシリトール結晶部の外周を被覆する筒状の公知のキャンディ部分を示す。柱状のキシリトール結晶部2は望みの形状に成型されており、本発明の新規キャンディ1Cは商品価値の高い綺麗な形状を有している。
【0025】
図5は、本発明の新規キャンディの他の例を模式的に説明する断面説明図である。図5において、1Dは本発明の新規キャンディを示し、楕円状のキシリトール結晶部2のみから形成されている。楕円状のキシリトール結晶部2は望みの形状に成型されており、本発明の新規キャンディ1Dは商品価値の高い綺麗な形状を有している。
【0026】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、主成分のキシリトールに対して所定量の単糖類、二糖類およびそれらを還元した糖アルコール類から選ばれる少なくとも1つの成分および粘度低下剤とを必須成分として配合することにより、これらの成分を溶融して主成分のキシリトールに前記粘度低下剤を分散状態で存在させた後、融点以下の温度に冷却し、少なくとも一部のキシリトールの結晶を析出させて得られるスラリーは粘度が低下し、安定的な長時間流動性および優れた加工性を付与できることを見出した。このスラリーを例えば型に流し込んでデポジットして常温まで冷却して固化して得られる結晶化したキシリトールは望みの形状に成型できるので、綺麗な形状を有するとともに、キシリトールの冷涼感が発揮され、商品価値が高く、美味しい新規キャンディを得ることができる。
【0027】
本発明で用いる糖質としては、主成分のキシリトールに加熱時に均質混合でき、分子量の小さい単糖類と二糖類と糖アルコール類が好ましい。
【0028】
本発明で用いる単糖類は炭素原子3個以上のポリヒドロキシアルデヒドまたはポリヒドロキシケトン誘導体であり、具体的には例えば、グルコース、フラクトース、エリトロース、キシロース、ソルボース、ガラクトース、その他異性化糖などを挙げることができ、これらは単独で使用することもできるが、2つ以上の混合物を使用することもできる。単糖類として、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フラクトース)、エリトロース、木糖(キシロース)から選ばれる少なくとも1つを用いると結晶化制御効果が高く、取り扱い性がよく、入手が容易で安価であるので好ましい。
【0029】
本発明で用いる二糖類は単糖が2個結合した形のポリヒドロキシアルデヒドまたはポリヒドロキシケトン誘導体であり、具体的には例えば、シュークロース、マルトース、ラクトース、パラチノース、その他異性化糖などを挙げることができ、これらは単独で使用することもできるが、2つ以上の混合物を使用することもできる。二糖類としてブドウ糖と果糖が結合してできた砂糖(シュークロース)および麦芽糖(マルトース)、乳糖(ラクトース)、パラチノースから選ばれる少なくとも1つを用いると結晶化制御効果が高く、取り扱い性がよく、入手が容易で安価であるので好ましい。
【0030】
三糖類やオリゴ糖類も使用することが可能であるが分子量が大きく、加熱時の糖液粘度が高いことや、前述した結晶化温度の低下効果が低いことから、使用量は制限される。
【0031】
本発明で用いる糖アルコールは糖類のアルデヒドやケトンのカルボニル基を還元(水素添加)して得られる鎖状多価アルコールであり、具体的には例えば、ソルビトール、エリスリトール、マンニトール、ガラクチトール、マルチトール、還元バラチノース、ラクチトールなどを挙げることができ、これらは単独で使用することもできるが、2つ以上の混合物を使用することができる。糖アルコール類も結晶化制御性が高く効果的である。キシリトールも単糖類のキシロースを還元反応させた糖アルコールであり、砂糖並の甘味を保持しており、飲食で血糖値を上昇させ難いことや、虫歯の原因になり難いなどの特長があるので、本発明で使用できる。糖アルコール類は一般的に同様の特長が認められる。
【0032】
糖アルコールとしてはブドウ糖を還元反応したソルビトール、異性体としてのマンニトール、エリトロースを還元反応させたエリスリトールなどの単糖類を原料とする糖アルコールが本発明において効果的である。麦芽糖(マルトース)を還元反応した還元麦芽糖(マルチトール)、パラチノースを還元反応した還元バラチノース、乳糖(ラクトース)を還元反応したラクチトールなども本発明において効果的である。
【0033】
本発明において、主成分のキシリトール1モルに対する前記成分の混合モル比が0.5を越えるとキシリトールの結晶性が大幅に損なわれ、結晶化時間の増加や結晶化程度が悪く冷涼感が低下するなどの問題があり、混合モル比は出来るだけ小さく0.3以下0.02以上にすることが望ましい。0.02未満では結晶化制御が困難となる恐れがあり、0.3を超えても多くすることによるメリットはほとんどない。0.02〜0.3であるとキシリトールの急激な結晶化を確実に抑制できる。
【0034】
次に本発明で用いる粘度低下剤について説明する。主成分のキシリトールに対して所定量の単糖類、二糖類およびそれらを還元した糖アルコール類から選ばれる少なくとも1つの成分および本発明で用いる粘度低下剤を必須成分として配合し、これらの成分を溶融して主成分のキシリトールに前記粘度低下剤を分散状態で存在させた後、融点以下の温度に冷却し、少なくとも一部のキシリトールの結晶を析出させて得られるスラリーの粘度が低下し、安定的な長時間流動性および優れた加工性を付与できるものであればよく、本発明で用いる粘度低下剤は特に限定されるものではない。
【0035】
食用油脂類および食用乳化剤から選ばれる少なくとも1種の粘度低下剤は、前記スラリーの粘度を確実に低下させ、安定的な流動性および優れた加工性を付与できる上、安全性が高く、入手が容易で安価であるので好ましく使用できる。
【0036】
本発明で用いる食用油脂類としては、具体的には、例えば大豆油、綿実油、落花生油、ヒマワリ油、サフラワー油、トウモロコシ油、ゴマ油、米油、米糠油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、菜種油、カカオ脂、アマニ油、ヒマシ油などの植物油脂類や牛脂、豚脂、羊脂、山羊脂、馬脂、魚油、乳脂、鯨油などの動物油脂類およびこれらの食用油脂を水素添加して得られる硬化油類などを挙げることがでる。これらは単独で使用することもできるが、2つ以上の混合物を使用することもできる。
【0037】
本発明で用いる食用乳化剤としては、具体的には、例えばショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチンなどを挙げることができる。これらは単独で使用することもできるが、2つ以上の混合物を使用することもできる。
【0038】
本発明で用いる粘度低下剤として、前記食用油脂と食用乳化剤を組み合わせて使用することもできる。
【0039】
本発明で用いる粘度低下剤として融点35〜80℃の食用油脂類を用いると、キシルトールの融点が94℃であるので、得られる前記スラリーの粘度を確実に低下させることができ、安定的な長時間流動性および優れた加工性を付与することができるので好ましく使用できる。
【0040】
食用油脂類は融点80℃以下であれば、前記スラリーの粘度を確実に低下させることができるが、融点35〜40℃の硬化油を使用した方が、口溶けのよいキャンディを作成することができるのでさらに好ましく使用できる。
【0041】
本発明で用いる食用乳化剤のHLBが0〜8であると、キシルトールへの混合、分散性が向上し攪拌などの分散手段により容易にキシルトール中へ分散でき、得られる前記スラリーの粘度を確実に低下させることができ、安定的な長時間流動性および優れた加工性を付与することができるので好ましく使用できる。食用乳化剤のHLBが8を超えて高くなり親水性となった場合には、食用乳化剤が水溶性の前記成分(糖質)中に溶解してしまい前記スラリーの粘度低下効果が得られない恐れがある。
【0042】
食用乳化剤を単独で使用する場合には、HLB3〜8の食用乳化剤を用いた方がキシリトールへの分散性が向上し攪拌などの分散手段による操作が容易となるので好ましい。
【0043】
本発明において、主成分のキシリトールに対して0.01〜20質量%、好ましくは1〜10質量%、更に好ましくは0.5〜5質量%の前記粘度低下剤を含有させれば、前記スラリーの粘度を確実に低下させ、安定的な流動性および優れた加工性を付与することができる。粘度低下剤の含有量が0.01質量%未満の場合には、前記スラリーの粘度を確実に低下させにくく、20質量%を超えると食用糖類や食用乳化剤の臭が生じるため、味質に影響を及ぼすため好ましくない。
【0044】
本発明で用いる単糖類、二糖類、糖アルコール類、キシリトール、粘度低下剤などは、それぞれ食品および食品添加物として、厚生省告示の「食品、添加物等の規格基準」にその性状など規格が定められている。これらは固形物あるいは液状物(水溶液)が市販されているが、いずれも使用可能である。
【0045】
キシリトールと前記成分および粘度低下剤以外の成分については、通常キャンディの生産に用いられるもの、たとえば酸味料、香料、着色料、果汁、乳製品、各種薬効成分など特に限定はないが、キシリトールの結晶化に影響を与えない範囲にとどめるべきである。
【0046】
本発明の新規キャンディを製造する方法は特に限定されるものではない。具体的には次のような方法を挙げることができる。
(1)前記各成分を加熱溶融し、溶融状態の成分に粘度低下剤を投入し、主成分のキシリトールに分散状態で前記粘度低下剤を存在させて、キシリトールなどの結晶化を進めて流動性スラリーとした後、あるいは溶融状態の成分に粘度低下剤を投入し、主成分のキシリトールに分散状態で前記粘度低下剤を存在させて、撹拌により微細結晶を析出させながらキシリトールなどの結晶化を進めて流動性スラリーとした後、所定の成型を行い、冷却固化する。
(2)粘度低下剤を含む前記各成分を加熱溶融し、主成分のキシリトールに分散状態で前記粘度低下剤を存在させて、得られた溶融液をキシリトールの融点以下でかつその流動性が維持される温度に保持して、キシリトールの少なくとも一部を結晶化させて流動性スラリーとし、この流動性スラリーを所望の形状に成型し、得られた成型体を室温まで冷却する。
【0047】
(2)の方法で本発明の新規キャンディを製造するためには、まず、粘度低下剤を含む前記各成分を、溶融状態にし、主成分のキシリトールに分散状態で前記粘度低下剤を存在させる。その場合、粉体状のキシリトールと糖類を混合し、これを加熱溶融した後に残りの他の成分を添加混合してもよいし、粉体状のキシリトールに水溶液状の糖類と適量の水を混合し加熱溶解した後、さらに加熱および減圧濃縮によって水分を蒸発させ、これに他の成分を添加混合してもよく、各成分が均一に混合されかつ溶融状態になっていればよい。
【0048】
次に溶融状態の組成物をキシリトールの融点以下まで冷却し、含有するキシリトールの少なくとも一部を結晶化させ、加工性の優れた流動性スラリーとする。結晶を析出させる温度は、キシリトールの含有量に対する糖類の種類や含有量の割合によってその最適値は異なるが、およそ60〜85℃の範囲が好適である。本発明の新規キャンディは含有するキシリトールの少なくとも一部を結晶化させ加工性の優れた流動性スラリーとした後、引き続きおよそ60〜85℃の温度を保つことによって、結晶部分の割合が一定の範囲に維持され、任意の形に自由に成型できる流動性を長時間保持することができる。この流動性スラリーを用いて所定の成型を行い、成型後室温まで冷却すれば速やかに固化する。
【0049】
本発明の新規キャンディの成型方法は特に限定されないが、含有するキシリトールの少なくとも一部を結晶化させた加工性の優れた流動性スラリーとした状態で、保温により十分な流動性を保持できることから、型に流し込むことにより成型する方式に非常に適している。他の成型方式としては、例えば、流し込み成型後の型押成型にも採用できる。
【実施例】
【0050】
次に実施例および比較例により本発明を詳しく説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
市販の結晶状のキシリトール(商品名「キシリトールC」、カルタ−フードサイエンス株式会社製)285gとソルビトール(商品名「ソルビットW−パウダー」、東和化成工業株式会社製)15gを粉体混合し、120℃まで加熱し溶解した。
この溶液に粘度低下剤としてショ糖脂肪酸エステル(商品名「S−370」、HLB=3、三菱化学フーズ株式会社製)0.9gを添加し、主成分のキシリトールに分散状態でショ糖脂肪酸エステルを存在させた。
この糖溶融液を90℃まで冷却し、粉末状のキシリトール(商品名「キシリトールCM」、カルタ−フードサイエンス株式会社)15gを加えた後よく撹拌し、キシリトールの結晶を析出させ、流動性スラリーを得た。
この流動性スラリーを90℃に保ち、15分間撹拌を行った後、粘度測定を行った。粘度測定には、ビスコテスター
VT−04(リオン株式会社)を使用した。測定結果を表1に示した。
この流動性スラリーは流動可能な状態が長時間保持できた。
この流動性スラリーをシリコンゴム製の型に流し込み、20℃にて5分間冷却固化した後型から取り出し、本発明の新規キャンディを得た。
得られた本発明の新規キャンディはキシリトール結晶部が望みの形状に成型されており、綺麗な形状を有するとともに、キシリトールの冷涼感が発揮され、商品価値が高く、美味しかった。
【0052】
(実施例2)
粘度低下剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル(商品名「リョートポリグリエステルER−60D、HLB=5、三菱化学フーズ株式会製)0.9gを用いた以外は実施例1と同様に実施し粘度測定を行い測定結果を表1に示すとともに、本発明の新規キャンディを得た。得られた流動性スラリーは流動可能な状態が長時間保持できた。得られた本発明の新規キャンディはキシリトール結晶部が望みの形状に成型されており、綺麗な形状を有するとともに、キシリトールの冷涼感が発揮され、商品価値が高く、美味しかった。
【0053】
(実施例3)
粘度低下剤としてモノグリセリン脂肪酸エステル(商品名「エマルジーHRO」、HLB=4、理研ビタミン株式会社製)0.9gを用いた以外は実施例1と同様に実施し粘度測定を行い測定結果を表1に示すとともに、本発明の新規キャンディを得た。得られた流動性スラリーは流動可能な状態が長時間保持できた。得られた本発明の新規キャンディはキシリトール結晶部が望みの形状に成型されており、綺麗な形状を有するとともに、キシリトールの冷涼感が発揮され、商品価値が高く、美味しかった。
【0054】
(実施例4)
粘度低下剤としてショ糖脂肪酸エステル(商品名[S−370]、HLB3、三菱化学フーズ株式会社製)0.5gとショ糖脂肪酸エステル(商品名「S−770」、HLB=7、三菱化学フーズ株式会社製)0.4gを混合して用いた以外は実施例1と同様に実施し粘度測定を行い測定結果を表1に示すとともに、本発明の新規キャンディを得た。得られた流動性スラリーは流動可能な状態が長時間保持できた。得られた本発明の新規キャンディはキシリトール結晶部が望みの形状に成型されており、綺麗な形状を有するとともに、キシリトールの冷涼感が発揮され、商品価値が高く、美味しかった。
【0055】
(参考例)
粘度低下剤としてエコナLS(H)(食用油、花王株式会社製、融点42℃)0.9g用いた以外は実施例1と同様に実施し粘度測定を行い測定結果を表1に示すとともに、本発明の新規キャンディを得た。得られた流動性スラリーは流動可能な状態が長時間保持できた。得られた本発明の新規キャンディはキシリトール結晶部が望みの形状に成型されており、綺麗な形状を有するとともに、キシリトールの冷涼感が発揮され、商品価値が高く、美味しかった。
【0056】
(実施例6)
粘度低下剤としてショ糖脂肪酸エステル(商品名「S−370」、HLB3、三菱化学フーズ株式会社製)0.5gとエコナLS(H)(花王株式会社製、融点42℃)0.4gを混合して用いた以外は実施例1と同様に実施し粘度測定を行い測定結果を表1に示すとともに、本発明の新規キャンディを得た。得られた流動性スラリーは流動可能な状態が長時間保持できた。得られた本発明の新規キャンディはキシリトール結晶部が望みの形状に成型されており、綺麗な形状を有するとともに、キシリトールの冷涼感が発揮され、商品価値が高く、美味しかった。
【0057】
(実施例7)
実施例1で使用したキシリトール240gと同ソルビトール60gを粉体混合し、120℃まで加熱し溶解した。
この溶液に粘度低下剤として蔗糖脂肪酸エステル(商品名「s−370」、HLB=3、三菱化学フーズ株式会社製)0.9gを添加した。
この糖溶融液を80℃まで冷却し、粉末状のキシリトール(商品名「キシリトールCM」、カルタ−フードサイエンス株式会社製)15gを加えた後よく撹拌し、キシリトールの結晶を析出させ、流動性スラリーを得た。
この流動性スラリーを80℃に保ち、15分間撹拌を行った後、粘度測定を行った。粘度測定には、ビスコテスター
VT−04(リオン株式会社)を使用した。その測定結果を表2に示した。
この流動性スラリーは流動可能な状態が長時間保持できた。
この流動性スラリーをシリコンゴム製の型に流し込み、20℃にて5分間冷却固化した後型から取り出し、本発明の新規キャンディを得た。
得られた本発明の新規キャンディはキシリトール結晶部が望みの形状に成型されており、綺麗な形状を有するとともに、キシリトールの冷涼感が発揮され、商品価値が高く、美味しかった。
【0058】
(実施例8)
粘度低下剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル(商品名「リョートポリグリエステルER−60D、HLB=5、三菱化学フーズ株式会製)0.9gを用いた以外は実施例7と同様に実施し粘度測定を行い測定結果を表2に示すとともに、本発明の新規キャンディを得た。得られた流動性スラリーは流動可能な状態が長時間保持できた。得られた本発明の新規キャンディはキシリトール結晶部が望みの形状に成型されており、綺麗な形状を有するとともに、キシリトールの冷涼感が発揮され、商品価値が高く、美味しかった。
【0059】
(実施例9)
粘度低下剤としてモノグリセリン脂肪酸エステル(商品名「エマルジーHRO」、HLB=4、理研ビタミン株式会社製)0.9gを用いた以外は実施例7と同様に実施し粘度測定を行い測定結果を表2に示すとともに、本発明の新規キャンディを得た。得られた流動性スラリーは流動可能な状態が長時間保持できた。
得られた本発明の新規キャンディはキシリトール結晶部が望みの形状に成型されており、綺麗な形状を有するとともに、キシリトールの冷涼感が発揮され、商品価値が高く、美味しかった。
【0060】
(比較例1)
粘度低下剤を添加しなかった以外は実施例1と同様に実施し粘度測定を行い測定結果を表1に示す。実施例1と同様にしてキャンディを得ようとしたが、粘度測定後、結晶化が進行し、流動性がない状態となってしまったため、流し込み方式でキャンディを得ることは困難であった。
【0061】
(比較例2)
粘度低下剤を添加しなかった以外は実施例7と同様に実施し粘度測定を行い測定結果を表2に示す。実施例7と同様にしてキャンディを得ようとしたが、粘度測定後、結晶化が進行し、流動性がない状態となってしまったため、流し込み方式でキャンディを得ることは困難であった。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の製法で製造される新規キャンディは、粘度低下剤を配合したので各成分を溶融して主成分のキシリトールに前記粘度低下剤を分散状態で存在させた後、融点以下の温度に冷却し、少なくとも一部のキシリトールの結晶を析出させて得られるスラリーは粘度が低下し、安定的な流動性および優れた加工性を有し、このスラリーを例えば型に流し込んでデポジットして常温まで冷却して固化して得られる結晶化したキシリトールは望みの形状に成型できるので、綺麗な形状を有するとともに、キシリトールの冷涼感が発揮され、商品価値が高く、かかる低粘度化剤は糖の甘味、風味に大きい影響を与えないので美味しく、食品工業での応用範囲は広く、産業上の利用価値が高い。また、本発明の製法により、綺麗な形状を有するとともに、キシリトールの冷涼感が発揮され、商品価値が高く、美味しいキャンディを容易に工業的に連続的に製造できるという、顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0065】
1、1A、1B、1C、1D 本発明の新規キャンディ
1E、1F 従来のキャンディ
2、2E、2F キシリトール結晶部
3 公知のキャンディ部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分のキシリトールに対して単糖類、二糖類およびそれらを還元した糖アルコール類から選ばれる少なくとも1つの成分と、食用乳化剤を含む粘度低下剤と、を同時にあるいは分けて溶融混合して主成分のキシリトールに前記粘度低下剤を分散状態で存在させた後、キシリトールの少なくとも一部を結晶化させた流動性スラリーとし、この流動性スラリーを型にデポジットして常温まで冷却して固化して、結晶部と非結晶部とを含むキシリトール結晶部を備えたキャンディを製造する工程を有し、
前記粘度低下剤の量は、キシリトールの量に対して0.01〜20質量%であるキャンディの製法。
【請求項2】
キャンディ組成物を溶融混合後、型にデポジットし、その上に主成分のキシリトールに対して単糖類、二糖類およびそれらを還元した糖アルコール類から選ばれる少なくとも1つの成分と、食用乳化剤を含む粘度低下剤とを同時にあるいは分けて溶融混合して主成分のキシリトールに前記粘度低下剤を分散状態で存在させた後、キシリトールの少なくとも一部を結晶化させた流動性スラリーをデポジットして常温まで冷却して固化して、結晶部と非結晶部とを含むキシリトール結晶部を備えた2層構造のキャンディを製造するか、あるいはキャンディ組成物を溶融混合後、型にデポジットし、その上に前記流動性スラリーをデポジットし、さらにその上にキャンディ組成物を溶融混合後デポジットし、常温まで冷却して固化して、結晶部と非結晶部とを含むキシリトール結晶部を備えた3層構造のキャンディを製造する工程を有し、
前記粘度低下剤の量は、キシリトールの量に対して0.01〜20質量%であるキャンディの製法。
【請求項3】
前記食用乳化剤のHLBが0〜8である請求項1又は2記載のキャンディの製法。
【請求項4】
前記単糖類がグルコース、フラクトース、エリトロース、キシロースから選ばれる少なくとも1つであり、前記二糖類がシュークロース、マルトース、ラクトース、パラチノースから選ばれる少なくとも1つであり、前記糖アルコール類がソルビトール、エリスリトール、マルチトール、還元パラチノース、ラクチトール、マンニトールから選ばれる少なくとも1つである請求項1から3いずれか記載のキャンディの製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−45390(P2011−45390A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271113(P2010−271113)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【分割の表示】特願2005−101324(P2005−101324)の分割
【原出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(508293162)三星食品株式会社 (4)
【Fターム(参考)】